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JP5396941B2 - 金属板のレーザ溶接方法およびレーザ溶接装置 - Google Patents

金属板のレーザ溶接方法およびレーザ溶接装置 Download PDF

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JP5396941B2 JP2009062731A JP2009062731A JP5396941B2 JP 5396941 B2 JP5396941 B2 JP 5396941B2 JP 2009062731 A JP2009062731 A JP 2009062731A JP 2009062731 A JP2009062731 A JP 2009062731A JP 5396941 B2 JP5396941 B2 JP 5396941B2
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Description

本発明は、金属板のレーザ溶接方法およびその装置に関し、詳しくは溶接時に発生するスパッタが被溶接材に付着することによる溶接品質の低下を抑制する金属板のレーザ溶接方法およびその装置に関する。
レーザ溶接は、高密度エネルギ光線であるレーザビームを光学部品により集光し、被溶接材に照射し、被溶接材を溶融させる溶接法である。レーザ溶接によれば、アーク溶接などの他の溶接法と比べ、高速溶接が可能であり、かつ、その熱影響範囲が小さいという特徴を有する。
レーザ溶接は、このような特徴を活かし、例えば、自動車の組み立て溶接やテーラードブランク溶接などの部材溶接への適用例が見られる。そのほか、金属板を連続処理する例えば酸洗ラインや冷間圧延ラインなどの連続ラインにおいて、途切れることなく金属板を連続ラインへ供給するために、先行する金属板の後端面と、後行する金属板の先端面とを突き合わせ溶接する、いわゆるコイル継ぎ溶接工程に適用される例も見られる。
コイル継ぎ溶接工程のように端面同士を突き合わせて溶接する装置では、先行する被溶接材の端面と後行する被溶接材の端面とを精度良く溶接するため、前処理として溶接装置に取り付けた切断装置で先行被溶接材の端と後行被溶接材の端を切断する。このとき、突き合わせ部を形成する端部は平らな表面ではなく微小な形状のばらつきを生じ得るとともに、切断端面にはかえりが発生する場合がある。このような端部の形状がばらついたり、かえりが発生した状態でレーザ溶接を行うと端面の突き合わせギャップの変化により段差溶接または穴あき溶接等の形状不良が生じるという問題がある。
そこで、切断装置と溶接機との間に上下一対の整形ロールを設け、切断した後の突き合わせ部を整形ロールで押圧することにより、切断によって生じるかえりや切断形状のばらつき等の突き合わせ部における形状不良を矯正することができる。さらには、切断精度の限界から生じる突き合わせ時の隙間を小さくし、溶接工程において均一で安定した溶接部が得られることが知られている。なお、このロールを前方整形ロールと呼ぶ。
一方、先行被溶接材の板厚と後行被溶接材の板厚とが異なる場合、溶接部において母材との間に段差が生じる。また、溶接工程により溶接部にビード盛り上がり等の表面凹凸変形が生じる。このような段差や表面凹凸変形が生じた状態で、被溶接材が後工程である連続ラインに供給され繰り返し曲げを受ける場合、溶接部に曲げ応力が作用してこの溶接部で破断するという問題がある。
そこで、溶接機の下流側に上下一対の整形ロールを設け、この整形ロールで溶接部を押圧することで、段差や表面凹凸変形を矯正する方法が知られている。この整形ロールを後方整形ロールと呼ぶ。
ところで、レーザ溶接においては、高密度エネルギを照射するが故に急激な金属の溶融を伴い、形成された溶融池から溶融金属が飛散することがある。これは、被溶接材の品質を確保する上で問題となることがある。この飛散する溶融金属をスパッタという。
上記したように、コイル継ぎ溶接で被溶接材に付着したスパッタは、例えば、次の圧延工程で圧延ロールにより圧延されるが、スパッタにより圧延ロールに凹み疵が生じ、以後の圧延において、金属板表面に圧延ロールから凹み疵が転写され、製品の外観品質を損なう。また、金属板表面に付着したスパッタが金属板内部に押し込まれ、以後の圧延工程における板破断の要因となる。このように、被溶接材に付着したスパッタは、被溶接材の品質を低下させるため研削などの必要が生じ、生産効率の阻害要因となる。
このような、溶接時に発生するスパッタの付着に対する対策として特許文献1〜5が開示されている。特許文献1にはスパッタ遮蔽板と高速気流によるスパッタの付着防止方法が開示されている。これによれば遮蔽板によりスパッタを遮蔽し、遮蔽板中の通光孔を通過するスパッタは高速気流により吹き飛ばすことができる。特許文献2には、レーザ加工ヘッドの先端を二重管状のノズルとし、外側のノズルで遮蔽カーテンを形成することが開示されている。特許文献3には、センターコーンから供給されるガス圧に対して0.6〜1.2倍のガス圧力のガスをサイドに設けたノズルから鋭角上方より噴射してスパッタを飛散させる方法が開示されている。これによれば、溶融池から飛散したスパッタに対し、離脱直後にサイドガス流により方向性を与え、レーザヘッド内に侵入するスパッタ量を低減させることができる。特許文献4には、保護ガラスによる保護に加え、加工ヘッド内に超音波ガスを流すこと、および加工ノズル先端を漏斗形状とすることで、ノズル先端部の孔からスパッタを吸い込む能力を向上させ、加工ノズル内部で飛散するスパッタを効率良く吹き飛ばすことが開示されている。特許文献5には管の円周溶接を対象としてレーザ加工ノズルと被溶接材との間に横方向から流体を噴射する技術が開示されている。
特開平6−170577号公報 特開平11−123578号公報 特開平10−328876号公報 特開平9−164495号公報 特開2003−334686号公報
しかしながら、レーザ溶接機の前後に整形ロールを備えた溶接装置による溶接方法では、特許文献1〜5に記載された方法でも、スパッタの付着による表面品質の低下防止は不十分で、問題となることが判った。
そこで、本発明は、金属板のレーザ溶接方法およびレーザ溶接装置に関し、詳しくは、レーザ溶接機本体の前方や後方に整形ロールを備えた溶接装置によるレーザ溶接において、溶接時に発生するスパッタによる被溶接材の外観品質の低下を防止することができる金属板のレーザ溶接方法およびレーザ溶接装置を提供することを課題とする。
発明者らは、鋭意検討の結果、以下の知見を得て発明を完成させた。
(1)外観品質を損なう凹み傷の原因の1つは、溶融池から飛散したスパッタが前方整形ロールと被溶接材との間や後方整形ロールと被溶接材との間に巻き込まれることにある。すなわち、スパッタが前方整形ロールと被溶接材との間や後方整形ロールと被溶接材との間に巻き込まれると、被溶接材の特に溶接部やその周辺部にスパッタの押し込みによる凹み傷が生じ、外観品質を損なう。また、スパッタの巻き込みにより整形ロール表面に凹み傷が生じると、被溶接材に転写され、製品の外観品質を損なう。さらに、被溶接材の凹み傷は外観品質を損なうだけでなく、溶接部の強度低下を招き、次の工程で溶接部破断の要因となる。
(2)前方整形ロールや後方整形ロールと被溶接材との間に巻き込まれるスパッタ、すなわち整形ロールに押圧される直前のスパッタは、溶接材に固着していないスパッタ(非固着スパッタ)と固着しているスパッタ(固着スパッタ)に分類される。
(3)溶融池から飛散するスパッタに対して、横方向から気体を吹き付けることにより、スパッタは気体の噴射方向に吹き飛ばされる。これにより、スパッタが被溶接材の表面に付着するまでの飛散時間が長くなり、スパッタの表面が十分に冷却され、また、溶融池からより離れた、鋼板温度が低い部分に飛散するため、金属板表面への固着が抑制される。すなわち固着スパッタの数が大幅に減少するため、固着スパッタの整形ロールへの巻き込みが抑制される。
(4)整形ロールに巻き込まれる直前のスパッタに向けて、気体を吹き付けることにより、被溶接材表面上の非固着スパッタは容易に吹き飛ばされ、非固着スパッタの整形ロールへの巻き込みを防止できる。
(5)前方整形ロールとレーザ溶接機本体との間に溶接する前の被溶接材の突き合わせ部を加熱する誘導加熱コイルなどの加熱手段を設ける場合や、レーザ溶接機本体と後方整形ロールとの間に、溶接部を加熱する誘導加熱コイルなどの加熱手段を設ける場合も、同様に適用できる。
ここで、本発明は、複数の金属板の端部同士を突き合わせ、突き合わせた金属板の突き合わせ部分にレーザビームを照射して突き合わせ部分を溶接して溶接部を有する溶接金属板を得る金属板のレーザ溶接方法であって、溶接前の突き合わせ部分を板厚の上下方向から押圧することにより突き合わせ部分の金属板表裏面を整形する前方整形ロールに噛み込む直前の金属板の表面に気体を噴射し、および/または溶接後の溶接部を板厚の上下方向から押圧することによって溶接部を整形する後方整形ロールに噛み込む直前の金属板の表面に向けて気体を噴射して、金属板上のスパッタを吹き飛ばしながらレーザビームを照射して溶接することを特徴とする金属板のレーザ溶接方法である。
この発明では、さらに、レーザビームの照射により形成される金属板の溶融池から飛散するスパッタに向け、溶融池の直上を横切って気体を噴射することが望ましい。
また、本発明は、複数の金属板の端部同士を突き合わせ、突き合わせた金属板の突き合わせ部分にレーザビームを照射して突き合わせ部分を溶接して溶接部を有する溶接金属板を得る金属板のレーザ溶接装置であって、レーザビームを発振する発振機と、該発振機から放出されるレーザビームを伝送する光ファイバと、光ファイバが接続された光学系を有するレーザ溶接機本体と、を備え、突き合わせ部分を板厚の上下方向から押圧することにより突き合わせ部分の金属板表面を整形する前方整形ロール、および/または溶接部を板厚の上下方向から押圧することによって溶接部を整形する後方整形ロールを具備し、さらに、前方整形ロール、および後方整形ロールの少なくとも一方には、該前方整形ロール、または後方整形ロールに噛み込む直前の金属板の表面に向けて気体を噴射する整形ロール気体噴射手段を有することを特徴とする金属板のレーザ溶接装置である。
この発明では、さらに、レーザビームの照射により形成される金属板の溶融池から飛散するスパッタに向け溶融池の直上を横切って気体を噴射する溶接部気体噴射手段を有することが望ましい。
これらの発明では、整形ロール気体噴射手段は、前方整形ロール、および/または後方整形ロールのロール幅方向の両側のそれぞれに配置されることが望ましい。
本発明によれば、レーザ溶接の突き合わせ溶接において、溶接時に発生するスパッタによる被溶接材の外観品質の低下を防止することができる。すなわち、溶融池から飛散したスパッタが整形ロールに巻き込まれるのが抑制されるので、被溶接材の凹み疵の発生を防止できる。また、凹み疵の発生抑制に伴い、後工程における溶接部の破断が減少する。
第一実施形態にかかる溶接装置の各構成を模式的に示した図である。 前方気体噴射ノズルの配置を説明するための図である。 図1の溶接装置の溶接手段の構成を模式的に示した図である。 第二実施形態にかかる溶接装置の各構成を模式的に示した図である。 図4の溶接装置の溶接手段および溶接部気体噴射ノズルの構成を模式的に示した図である。 溶接部気体噴射ノズルの他の配置例を説明するための図である。 溶接部気体噴射ノズルの他の例を説明するための図である。
本発明の上記した作用および利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。なお、以下の説明は、金属板として鋼板を例示するが、これに限定されるものでない。
最初に、第一の実施形態に係るレーザ溶接装置10について説明する。図1は、レーザ溶接装置10の構成を模式的に示す説明図で、レーザ溶接装置10を製造ラインに配置した場面において該製造ラインの上流工程側からレーザ溶接装置10を見た図である。従って、図1に示した被溶接材である鋼板1(図では鋼板は突き合わされる2つのうち一方しか表れない。)は、紙面手前から紙面奥方向に製造ラインを移動する。鋼板の幅方向は紙面の左右方向であり、鋼板の突き合わせ部分は当該幅方向に沿って形成される。レーザ溶接装置10は、フレーム11、切断手段12、上下一対の前方整形ロール20、整形ロール気体噴射手段としての前方気体噴射ノズル21、レーザ溶接機本体であるレーザ溶接手段30、上下一対の後方整形ロール40、および整形ロール気体噴射手段としての後方気体噴射ノズル41を備えている。
以下、図1を参照しつつ各構成について説明する。これら各構成要素において、切断手段12、前方整形ロール20、前方気体噴射ノズル21、レーザ溶接手段30、後方整形ロール40および後方気体噴射ノズル41の各々は、フレーム11に固定され、一体に形成されている。
フレーム11は、図1に示した視点において上部部材11a、下部部材11b、立設部材11c、および開口部11dを有する略コ字形状とされており、その内側に各構成要素を包含することができるように形成されている。従って、各構成要素を精度よく保持するための所定の剛性、および強度を備えている。またフレーム11は、鋼板1が移動する方向に略直交する水平方向(図中の矢印Y)に移動可能とされている。これによりフレーム11に取り付けられた各構成要素を鋼板1の表裏面の真下、真上に移動し、適切に作用させることができる。フレーム11の移動とこれに伴う構成要素の各動作は後で詳しく説明する。移動の速度は、後述する溶接を適切におこなうことができれば特に限定されるものではないが、通常、1.0m/分〜15m/分程度とされる。
また、レーザ溶接装置10の上記各構成である切断手段12、前方整形ロール20、前方気体噴射ノズル21、レーザ溶接手段30、後方整形ロール40、および後方気体噴射ノズル41は、フレーム11の移動の軌道に平行に、該軌道に沿って並べられている。本実施形態ではフレーム11はコ字形状を有しているが、鋼板1の移動や、各構成要素の適切な動作が確保されるものであればこれに限定されるものではない。
切断手段12は、フレーム11の内側における立設部材11c近傍に配置され、接合される2つの鋼板の端部を切り揃えるための手段である。通常、鋼板の長手方向端部は圧延加工において自由端なので、2つの該鋼板の端部同士を突き合わせて溶接するためには突き合わせの際に大きな隙間が発生しないように精度よく切断する必要があるので、切断手段12はそのためのものである。従って、切断手段12の種類は特に限定されるものではなく、鋼板の製造に用いられる通常の切断手段を適用することができる。
前方整形ロール20および後方整形ロール40の基本構造は同じであり、図1に示すように、前方整形ロール20は上部前方整形ロール20aと下部前方整形ロール20bとを備え、後方整形ロール40は上部後方整形ロール40aと下部後方整形ロール40bとを備えている。さらに上部前方整形ロール20a、上部後方整形ロール40aは、これを上下方向に駆動するシリンダ(図示せず)を具備している。上部前方整形ロール20aと下部前方整形ロール20bとは上下に配置され、同様に上部後方整形ロール40aと下部後方整形ロール40bとが上下に配置されている。また、上部前方整形ロール20aと上部後方整形ロール40aとはY方向に向かって直線上に配置されており、同様に下部前方整形ロール20bと下部後方整形ロール40bもY方向に向かって直線上に配置されている。そして、シリンダにより上部前方整形ロール20aと下部前方整形ロール20bとの上下間隔を調整することができ、同様に、上部後方整形ロール40aと下部後方整形ロール40bとの上下間隔を調整することが可能である。また、前方整形ロール20(20a、20b)および後方整形ロール40(40a、40b)は各々支持軸(図示せず)を中心に回転する構造を有する。
前方気体噴射ノズル21と後方気体噴射ノズル41は、整形ロール気体噴射手段として機能し、その基本構造は同じである。前方気体噴射ノズル21は、上部前方整形ロール20aに噛みこまれる直前の被溶接材の表面に気体を所定の方向に吹き付ける噴射口を有するノズルである。一方、後方気体噴射ノズル41は、上部後方整形ロール40aに噛みこまれる直前の被溶接材の表面に気体を所定の方向に吹き付ける噴射口を有するノズルである。ここで所定の方向は、当該吹き付けによりスパッタを鋼板上から除外するように気流を形成して気体を吹き付ける方向である。当該気流により上部前方整形ロール20a、および上部後方整形ロール40aの軌道上からスパッタを除去できればよい。ただし、スパッタを鋼板上から完全に除外することが最も好ましい。ノズルの種類は特に限定されるものではなく、あらゆる形態のノズルを適用することが可能である。これには例えば矩形の噴射口を有するフラットノズルや円管による丸管ノズル等を挙げることができる。
図2は、前方気体噴射ノズル21の取付けについて説明する模式図であり、破線Aはノズルの軸線で気体噴射方向を示し、点線Bで挟まれた範囲は噴流が流れる領域を示す。図2(a)は、側面側から見た図、図2(b)は正面側から見た図、および図2(c)は、上方から見た図である。なお、後方気体噴射ノズル41についても同様であり、ここでは説明を省略する。また、図2は、下部前方整形ロール20bは省略している。
図2からわかるように、前方気体噴射ノズル21、21は、2つ設けられており、各前方気体噴射ノズル21、21の軸線(A、A)がD点近傍を通るように、上部前方整形ロール20aの左右両側のそれぞれに傾斜角θ2で設置されている。ここで、D点は、被溶接材表面に垂直で上部前方整形ロール20aの外周に接する線(一点鎖線Cで表した。)と被溶接材との交点を意味する。また、それぞれの前方気体噴射ノズル21、21は、被溶接材の進行方向に対して傾斜角θ1で傾斜して設けられる。傾斜角θ2は45°以上90°未満とするのが望ましく、傾斜角θ1は30°以上60°以下とするのが望ましい。
ここでは、上部前方整形ロール20a、および上部後方整形ロール40aについてのみ説明したが、鋼板の下面(裏面)におけるスパッタ除去の観点から、下部前方整形ロール20bや下部後方整形ロール40bの両側にも気体噴射ノズルを設けることが望ましい。これにより、鋼板を噛み込む直前の鋼板の下面(裏面)に向けて気体を噴射することができる。
レーザ溶接手段30は、レーザ発振機31、光ファイバ32および光学系34を備える。図3に模式図を示した。レーザ発振機31は、溶接熱源となるレーザを発振する装置である。溶接装置30でレーザ溶接に用いるレーザの種類は、光ファイバ32で伝送可能であれば特に限定されず、そのようなレーザを発振することができればよい。これには例えば、YAGレーザ、ディスクレーザ、ファイバレーザなどの発振機を挙げることができる。これらは半導体レーザなどの励起エネルギ源により励起されてレーザ光を放出する。このように光ファイバで伝送することができるとともに、高出力を得ることが可能なレーザの使用により効率よく溶接をすることができる。レーザ出力は特に限定されるものではないが、高出力であるほど本発明の効果が顕著となる。
レーザ発振機31としては、発振媒体がファイバ状またはディスク状の結晶体であることが好ましい。これによれば、ファイバ状またはディスク状の結晶体は容易に並列配置することが可能であるため、例えば出力6kW以上の高出力を容易に得ることができる。
光ファイバ32は、レーザ発振機31から光学系34にレーザを伝送する手段である。光ファイバ32の適用により容易にレーザを伝送することができ、維持も容易なレーザ溶接装置10を提供できる。光ファイバの径は特に限定されるものではないが、通常1.0mm以下のものが用いられ、集光光学系のサイズとエネルギ密度の観点から径は小さい方がよく、0.6mm以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.2mm以下である。
光学系34は、光ファイバの出力端33に接続され、伝送されたレーザを導入し、該レーザを溶接に適するように制御して溶接部に出射する手段である。光学系34にはコリメートレンズ35と集光レンズ36とが含まれ、上述した光ファイバ32の径、および両レンズ35、36の焦点距離の比により焦点径が決まる。例えば、ファイバ径をDfiber、コリメートレンズの焦点距離をF1、集光レンズの焦点距離をF2としたときに、焦点位置におけるスポット径Dsは、Ds=Dfiber・(F2/F1)で表される。
次に、第二の実施形態に係るレーザ溶接装置110について説明する。図4は、レーザ溶接装置110の構成を模式的に表した図である。レーザ溶接装置110は、フレーム11、切断手段12、上下一対の前方整形ロール20、整形ロール気体噴射手段としての前方気体噴射ノズル21、レーザ溶接手段30、上下一対の後方整形ロール40、整形ロール気体噴射手段としての後方気体噴射ノズル41、および溶接部気体噴射手段としての溶接部気体噴射ノズル117を備えている。なお、以下の説明では、溶接部気体噴射ノズル117以外の構成は第一の実施形態と同様であり省略する。
溶接部気体噴射ノズル117は、いわゆる噴射口を備える通常のノズルであり、その噴射口から気体を所定の方向に向けて噴射することができるものである。ここでノズルの種類は特に限定されるものではなく、あらゆる形態のノズルを適用することが可能である。これには例えば矩形の噴射口を有するフラットノズルや円管による丸管ノズル等を挙げることができる。
図5に、溶接部気体噴射ノズル117の配置等について説明する図を示した。図5からわかるように、溶接部気体噴射ノズル117は、レーザ溶接手段30の近傍に配置される。図5に符号Pで示した破線は溶接部気体噴射ノズル117の気体噴射方向の軸線、符号Qで示した点線で囲まれた範囲は噴流が流れる領域を示している。符号Pkは溶接部気体噴射ノズル117の噴射口の下端に沿う延長線を示し、符号Qで示した噴流の流れる領域の下端と概ね一致する。また、符号Rで示した部位は被溶接材である鋼板1における溶融池Rが形成される部位である。このように、溶接装置110では、溶接部気体噴射ノズル117の軸線Pおよび上記延長線Pkが溶融池Rの真上を通るように構成されるとともに、該軸線Pおよび延長線Pkが鋼板1の上面に略平行である。
当該軸線Pおよび延長線Pkと溶接方向とは必ずしも一致する必要はないが、より効率的なスパッタ付着防止のため、軸線Pおよび延長線Pkと溶接方向とは一致することが好ましい。また、図5に示した溶接部気体噴射ノズル117のように延長線Pkが鋼板1の上面に平行になるように配置する場合の他、図6に、溶接部気体噴射ノズル117’、延長線P’k、または溶接部気体噴射ノズル117’’、延長線P’’kで示したように配置しても良い。すなわち、溶接部気体噴射ノズル117’は延長線P’kが延長線Pkに対して上向きにθ’傾いており、溶接部気体噴射ノズル117’’は延長線P’’kが延長線Pkに対して下向きにθ’’傾くように配置されている。ここでθ’、θ’’の大きさは特に限定されるものではないが、噴射ノズルの配置等の観点からθ’、θ’’ともに0度〜30度であることが好ましく、特にθ’’が0度〜20度であることがさらに好ましい。
溶接部気体噴射ノズル117の幅(溶接進行方向と鋼板の板厚方向に直交する方向の噴射口幅)は、溶融池Rを覆うことのできるように、鋼板1表面位置における溶融池Rの幅の1倍程度以上とする。好ましくは3倍以上である。噴射ノズルの厚さ(幅に直角方向の噴射口寸法)は、噴射流量や噴射圧力により適宜設定される。
溶接部気体噴射ノズル117の高さ方向(図5、図6の紙面上下方向)位置は、後述するように溶接部気体噴射ノズル117の噴射口の下端に沿う延長線Pk、P’k、P’’kと、溶融池Rとの垂直距離(図5、図6にSで示した距離)が3mm以下となるように調整されることが好ましい。
図7は、溶接部気体噴射ノズルの形状例である溶接部気体噴射ノズル127を説明するための図で、図7(a)は溶接部気体噴射ノズル127を噴射口側から見た図、図7(b)は、溶接部気体噴射ノズル127が溶接装置に取り付けられた姿勢で上面側から見た図で、軸線や噴流を模式的に表している。図7からわかるように、溶接部気体噴射ノズル127は、基部127aに2つの並列する噴射口127b、127cを有していることが特徴である。従って溶接部気体噴射ノズル127は2つの軸線P2、P3を有する2つの噴流Q2、Q3を出射することが可能である。ここで溶接部気体噴射ノズル127の溶接装置への配置は、各噴射口127b、127cが被溶接材の面から同じ高さ位置となるように配置される。また、2つの軸線P2、P3の中間線であるP4が溶融部の真上を通るように設置される。そしてこの場合にも溶接部気体噴射ノズル127の噴射口127b、127cの下端に沿う延長線と、溶融池との垂直距離は3mm以下となるように調整されることが好ましい。
図7(a)において、Liで示した噴射口の内側の間隔は、溶融池幅に対し狭くなり過ぎると、溶融池直上の噴射速度が大きく、溶融池から溶融金属が流出してスパッタが増加し、逆に溶融池幅よりも広いと、溶融池から飛散するスパッタを吹き飛ばすことができないため、溶融池幅に対し0.5倍以上1倍以下とすることが好ましい。また、Loで示した噴射口の外側の間隔は溶融池を覆うことのできるように、溶融池幅の1倍以上で、好ましくは3倍以上である。
次に、本発明の溶接方法について説明する。判りやすさのため、ここでは上記した溶接装置10、110を用いて溶接することを説明するが、本発明の溶接方法はこれに限定されることはなく、本発明の効果を奏するあらゆる装置を用いることができる。
第一実施形態にかかる溶接方法M1は、例えば第一の実施形態に係る溶接装置10を用いて溶接されることによりおこなわれる。すなわち、溶接方法M1は、突き合わせられた鋼板1にレーザビームを照射して溶接する際において、前方気体噴射ノズル21は、上部前方整形ロール20aに噛みこまれる直前の被溶接材の表面に気体を所定の方向に吹き付ける。一方、後方気体噴射ノズル41は、上部後方整形ロール40aに噛みこまれる直前の被溶接材の表面に気体を所定の方向に吹き付ける。ここで所定の方向は、当該吹き付けによりスパッタを鋼板上から除外するように気流を形成して気体を吹き付ける方向である。当該気流により上部前方整形ロール20a、および上部後方整形ロール40aの軌道上からスパッタを除去できればよい。ただし、スパッタを鋼板上から完全に除外することが最も好ましい。これにより、上部前方整形ロール20aおよび上部後方整形ロール40aに噛み込まれるスパッタが抑制され、被溶接材の凹み疵の発生が抑制される。
気体を吹き付ける範囲は、図2(c)に、Eで示した斜線の領域を含む範囲とするのが望ましい。すなわち、斜線の領域Eは、溶接方向に上部前方整形ロール20aの中心線から溶接前方に向かって(図2(c)にFで示した方向)、ロール径Lの1倍程度であり、溶接直角方向(図2(c)にGで示した方向)にはロールセンタを中央に、ロール幅Wの3倍程度とするのが望ましい。また傾斜角θ1は30°〜60°で、傾斜角θ2は45°〜90°であることが望ましい。
吹き付ける気体の種類は特に限定されるものではないが、圧縮空気や不活性ガスなどを用いることができる。吹き付けの条件としては例えば圧縮空気で圧力0.3MPa〜0.7MPaで流量100L/分〜300L/分であることが望ましい。なお、上記説明は、上部前方整形ロール20aと上部後方整形ロール40aの両方を備え、前方気体噴射ノズル21と後方気体噴射ノズル41の両方を用いる場合であるが、必ずしもこの形態に限定されるものではない。いずれか一方でもよい。
また、ここでは、上部前方整形ロール20a、上部後方整形ロール40aについてのみ説明したが、鋼板の下面(裏面)におけるスパッタ除去の観点から、下部前方整形ロール20bや下部後方整形ロール40bの両側にも気体噴射ノズルを設け、同様に鋼板を噛み込む直前の鋼板の下面(裏面)に向けて気体を噴射することが望ましい。
第二実施形態に係る溶接方法M2は、例えば第二実施形態に係る溶接装置110を用いて行われる。すなわち、溶接方法M2では、溶接方法M1に加えて、レーザビームの照射により形成される溶融池Rから飛散するスパッタに向け、溶融池Rの直上を横切って気体を噴射する。例えば、溶接部気体噴射ノズル117の噴射口下端に沿う延長線Pkと、溶接池Rとの垂直距離(図5、6のS)が3mm以内とするのが望ましい。これにより、スパッタとして飛散した溶融金属は、噴流の方向に吹き飛ばされる。その結果、スパッタが被溶接材の表面に付着するまでの飛散時間が長くなり、スパッタの表面が十分に冷却される。また、溶融池Rからより離れた、鋼板温度が低い部分に飛散するため、鋼板表面への固着が抑制される。すなわち固着スパッタの数が大幅に減少するため、固着スパッタの整形ロールへの巻き込みが抑制される。噴流は、溶融池Rの上面に対してほぼ水平であることが好ましいが、これに限定されることはなく、溶融池の上面に対して離れる、または近づく方向に角度を有していてもよい。なお、噴流が溶融池に吹きかけられると、溶融金属が流出してスパッタが増加するため、後方整形ロール40が備えられている場合は、噴流により飛ばされたスパッタが後方整形ロール40に衝突し、ロールと溶接材に巻き込まれるので、これを防ぐために気体の噴射方向は溶接方向前方とすることが望ましい。
なお、ここまで被溶接材として鋼材を例に説明したが、これに限定されることはなく、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム等の他の金属の板材にも適用可能である。
次に実施例によりさらに詳しく説明する。ただし、本発明は本実施例に限定されるものではない。
実施例では、図4に示した基本構成を備えるレーザ溶接装置を用いて、様々な条件で鋼板の突き合わせ溶接を行い、そのときのスパッタ付着状況を評価した。
<条件>
各例における共通の条件は次の通りである。
・供試鋼板(供試金属板):低炭素鋼(C:0.02質量%)、板厚6.0mm
・溶接長:1250mm
・レーザ発振機:ファイバレーザ発振機、出力10kW
・コリメートレンズ:焦点距離125mm
・集光レンズ:焦点距離200mm
・スポット条件:デフォーカス量5mm
・溶接速度:3.4m/分
ここで、前方気体噴射ノズル21および後方気体噴射ノズル41として、内径4mm、外径6mmの丸管ノズルを用いた。傾斜角は、図2におけるθ1を45°、θ2を45°として取付け、0.5MPaの圧縮空気を噴射量100L/分で噴射した。
噴射ノズルは、図7に示した溶接部気体噴射ノズル127とし内径4mm、外径6mmの丸管2本を水平方向に隣接した丸管隣接ノズルを被溶接材表面にほぼ平行に、かつ、噴射ノズル先端位置がレーザ光路より12mm離れた位置となるように配置した。噴射ノズル下端の延長線と溶融池との距離は2mmとし、噴流が溶融池直上を横切るように0.5MPaの圧縮空気を噴射量100L/分で噴射した。なお、溶融池直上の噴射速度が大きいと、溶融池から溶融金属が流出し、スパッタが増加するが、この丸管隣接ノズルを使用することで、噴流の横断面において中央の速度が遅い速度分布をえることができるので溶融池からのスパッタの飛散を抑制することができる。
<評価>
溶接の評価は、溶接を10回行い、被溶接材へのスパッタの押込まれた回数で行った。押込まれた回数が、0回は「◎」、1〜2回は「○」、3〜5回は「△」、6〜10回は「×」の4水準で評価し、前から順に、「特に良好」、「良好」、「可」、「不良」とした。結果を表1に示す。
Figure 0005396941
表1からわかるように、本発明例の溶接では、いずれも被溶接材へのスパッタ付着回数を少なく抑えることができ、「可」以上であった。前方気体噴射ノズルおよび後方気体噴射ノズルのいずれかを用いると「可」で、両方を用いると「良好」で、さらに噴射ノズルを用いると「特に良好」であった。
以上、現時点において実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う、レーザ溶接方法、およびその装置も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
10 レーザ溶接装置
20 前方整形ロール
20a 上部前方整形ロール
20b 下部前方整形ロール
21 前方気体噴射ノズル(整形ロール気体噴射手段)
30 溶接手段
40 後方整形ロール
40a 上部後方整形ロール
40b 下部後方整形ロール
41 後方気体噴射ノズル(整形ロール気体噴射手段)
110 レーザ溶接装置
117 溶接部気体噴射ノズル(溶接部気体噴射手段)

Claims (5)

  1. 複数の金属板の端部同士を突き合わせ、突き合わせた前記金属板の突き合わせ部分にレーザビームを照射して前記突き合わせ部分を溶接して溶接部を有する溶接金属板を得る金属板のレーザ溶接方法であって、
    溶接前の前記突き合わせ部分を板厚の上下方向から押圧することにより前記突き合わせ部分の前記金属板表裏面を整形する前方整形ロールに噛み込む直前の金属板の表面に気体を噴射し、および溶接後の前記溶接部を板厚の上下方向から押圧することによって前記溶接部を整形する後方整形ロールに噛み込む直前の金属板の表面に向けて気体を噴射して、前記金属板上のスパッタを吹き飛ばしながらレーザビームを照射して溶接することを特徴とする金属板のレーザ溶接方法。
  2. さらに、前記レーザビームの照射により形成される前記金属板の溶融池から飛散するスパッタに向け、前記溶融池の直上を横切って気体を噴射する請求項1に記載の金属板のレーザ溶接方法。
  3. 複数の金属板の端部同士を突き合わせ、突き合わせた前記金属板の突き合わせ部分にレーザビームを照射して前記突き合わせ部分を溶接して溶接部を有する溶接金属板を得る金属板のレーザ溶接装置であって、
    レーザビームを発振する発振機と、該発振機から放出されるレーザビームを伝送する光ファイバと、前記光ファイバが接続された光学系を有するレーザ溶接機本体と、を備え、
    前記突き合わせ部分を板厚の上下方向から押圧することにより前記突き合わせ部分の金属板表面を整形する前方整形ロール、および前記溶接部を板厚の上下方向から押圧することによって前記溶接部を整形する後方整形ロールを具備し、
    さらに、前記前方整形ロール、および前記後方整形ロールには、それぞれ該前方整形ロール、前記後方整形ロールに噛み込む直前の前記金属板の表面に向けて気体を噴射する整形ロール気体噴射手段を有することを特徴とする金属板のレーザ溶接装置。
  4. さらに、前記レーザビームの照射により形成される前記金属板の溶融池から飛散するスパッタに向け前記溶融池の直上を横切って気体を噴射する溶接部気体噴射手段を有する請求項3に記載の金属板のレーザ溶接装置。
  5. 前記整形ロール気体噴射手段は、前記前方整形ロール、および前記後方整形ロールのロール幅方向の両側のそれぞれに配置される請求項3または4に記載の金属板のレーザ溶接装置。
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