以下、本発明に係る電動式建設機械の実施の形態を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1ないし図18は本発明の第1の実施の形態に係る電動式建設機械を示している。
図中、1は電動式の油圧ショベルを示し、この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載され、該下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体3とを備えている。上部旋回体3の前部側には、土砂の掘削作業等を行うスイング式の作業装置4が設けられ、該作業装置4は、スイングポスト4A、ブーム4B、アーム4C、バケット4D、ブームシリンダ4E、アームシリンダ4F、バケットシリンダ4G等により構成されている。
ここで、本実施の形態による上部旋回体3は、図4に示すように、前部側に位置する前部車体5と、該前部車体5の後端側に取付けられる後述の後部車体10とにより構成されている。
前部車体5は、後述する前部フレーム13を有し、該前部フレーム13の左側には、オペレータが着席する運転席6と、該運転席6を上方から覆うキャノピ6Aとが配置されている。また、前部フレーム13の右側には、電動モータ7、油圧ポンプ8、作動油タンク9等が配設され、電動モータ7によって油圧ポンプ8を駆動することにより、作動油タンク9に貯溜された作動油が、走行用および旋回用の油圧モータ(いずれも図示せず)、作業装置4を構成する各シリンダ4E,4F,4G等の油圧機器に向けて供給される構成となっている。
次に、10は前部車体5の後端側に取付けられる後部車体を示し、該後部車体10は、前部車体5と共に上部旋回体3を構成するものである。
後部車体10は、後述する後部フレーム20を有し、該後部フレーム20には、後述するバッテリ収納構造体28を介して多数のバッテリ29が搭載されている。そして、これら各バッテリ29によって電動モータ7への給電が行われる構成となっている。
11は上部旋回体3のベースとなる車体フレームとしての旋回フレームを示し、該旋回フレーム11は、図5に示すように、前部車体5のベースとなる後述の前部フレーム13と後部車体10のベースとなる後述の後部フレーム20とを連結ピン12等を用いて連結することにより構成されている。即ち、本実施の形態による旋回フレーム11は、別部材として形成された前部フレーム13と後部フレーム20とを一体に連結することにより構成されている。
次に、旋回フレーム11の前部側を構成する前部フレーム13について説明する。この前部フレーム13は、前部車体5のベースとなるもので、上述した運転席6、キャノピ6A、電動モータ7、油圧ポンプ8、作動油タンク9等が搭載されるものである。
ここで、前部フレーム13は、図6に示すように、厚肉な鋼板等を用いて形成され前,後方向に延びた底板14と、該底板14の上面側に立設され左,右方向で対面しつつ前,後方向に延びた左縦板15,右縦板16と、左張出しビーム17Aを介して底板14および左縦板15の左側に配設され前,後方向に延びた左サイドフレーム17と、右張出しビーム18Aを介して底板14および右縦板16の右側に配設され前,後方向に延びた右サイドフレーム18とにより大略構成されている。
左縦板15と右縦板16の前端側には段付き円筒状のスイングブラケット19が固定され、該スイングブラケット19によって作業装置4のスイングポスト4Aを揺動可能に支持する構成となっている。左縦板15の後端側には左,右方向に貫通するピン挿通孔15Aが設けられ、右縦板16の後端側には左,右方向に貫通するピン挿通孔16Aが設けられ、これら各ピン挿通孔15A,16Aにそれぞれ連結ピン12が挿通される構成となっている。
次に、旋回フレーム11の後部側を構成する後部フレーム20について説明する。この後部フレーム20は、後部車体10のベースとなるもので、図7に示すように、後述するベースフレーム部21と、外周フレーム部22と、左,右の支柱23,24と、ガードパイプ26とにより大略構成されている。そして、後部フレーム20は、連結ピン12等を用いて前部フレーム13の後端側に着脱可能に取付けられ、後述のバッテリ収納構造体28を支持するものである。
21は後部フレーム20のベースとなるベースフレーム部を示し、該ベースフレーム部21は、左,右方向に延びる長方形状の前面板21Aと、該前面板21Aと前,後方向で対面する後面板21Bと、前面板21Aと後面板21Bとを挟んで左,右方向で対面する左側面板21C,右側面板21Dと、これら前面板21A、後面板21B、左側面板21C、右側面板21Dの下端側を閉塞する底板21Eとにより、全体として前,後方向に延びる長方形の枠状に形成されている。
左側面板21Cの上端側は、右側面板21Dとは反対方向に水平に折曲げられた左水平フランジ板21Fとなり、該左水平フランジ板21Fの上面側には、後述の各弾性支持部材27を取付けるための取付板21F1が固着されている。一方、右側面板21Dの上端側は、左側面板21Cとは反対方向に水平に折曲げられた右水平フランジ板21Gとなり、この右水平フランジ板21Gの上面側にも取付板21G1が固着されている。
また、左側面板21Cの後端側には左,右方向に貫通するピン挿通孔21Hが設けられ、右側面板21Dの後端側にも左,右方向に貫通するピン挿通孔21Jが設けられ、これらピン挿通孔21H,21Jには連結ピン12が挿通される構成となっている。さらに、前面板21A、後面板21B、左側面板21C、右側面板21Dからなるベースフレーム部21の内面21Kには、後述のスライドプレート35が取付けられている。
22はベースフレーム部21の後端側に設けられた外周フレーム部を示し、該外周フレーム部22は、例えば上部旋回体3の旋回中心を中心とした円弧状に形成されている。ここで、外周フレーム部22は、図7に示すように、ベースフレーム部21の後面板21Bと、左側面板21Cおよび右側面板21Dの後部側とに対面しつつ円弧状に湾曲した外面板22Aと、外面板22Aの下端側からベースフレーム部21側に張出し、ベースフレーム部21の後面板21B、左側面板21Cおよび右側面板21Dに溶接等の手段を用いて固着された底面板22Bとにより構成されている。
23は後部フレーム20の後端側に設けられた左支柱を示し、該左支柱23は、ベースフレーム部21を構成する左側面板21Cの後側に配置されている。この左支柱23は、断面四角形状の中空な角筒体からなり、ベースフレーム部21の後端部および外周フレーム部22の底面板22B等に溶接されることにより上,下方向に伸長している。
24は左支柱23と対をなして後部フレーム20の後端側に設けられた右支柱を示し、該右支柱24は、ベースフレーム部21を構成する右側面板21Dの後側に配置されている。この右支柱24も断面四角形状の中空な角筒体からなり、ベースフレーム部21の後端部および外周フレーム部22の底面板22B等に溶接されることにより上,下方向に伸長している。そして、左支柱23の上端側と右支柱24の上端側との間は、断面L字型の連結梁25によって連結され、該連結梁25を介して左支柱23と右支柱24とが一体化されている。
26は左,右の支柱23,24から外周フレーム部22に沿って前方へと延びるガードパイプを示し、該ガードパイプ26は、例えば中空な丸パイプ材を用いて形成されている。このガードパイプ26は、外周フレーム部22に沿って湾曲しつつ外周フレーム部22の左端側と左支柱23との間に架渡された左ガード部26Aと、外周フレーム部22に沿って湾曲しつつ外周フレーム部22の右端側と右支柱24との間に架渡された右ガード部26Bとにより構成されている。そして、ガードパイプ26は、図3に示すように、後述するバッテリ収納構造体28に搭載された多数のバッテリ29を外側から取囲むことにより、これら各バッテリ29を保護するものである。
そして、図5に示すように、前部フレーム13を構成する左縦板15の後端側と右縦板16の後端側とにより、後部フレーム20のベースフレーム部21を左,右方向から挟込み、左縦板15のピン挿通孔15Aとベースフレーム部21を構成する左側面板21Cのピン挿通孔21Hとに連結ピン12を挿通すると共に、右縦板16のピン挿通孔16Aとベースフレーム部21を構成する右側面板21Dのピン挿通孔21Jとに連結ピン12を挿通した状態で、前部フレーム13と後部フレーム20とをボルト等(図示せず)を用いて締結することにより旋回フレーム11が形成されている。
次に、27は後部フレーム20を構成するベースフレーム部21の周囲に設けられた複数の弾性支持部材(マウント部材)を示している。これら各弾性支持部材27は、ベースフレーム部21に対して後述のバッテリ搭載台30を弾性的に支持するものである。ここで、弾性支持部材27は、例えばゴム等の弾性体により円筒状に形成され、その上端側には取付ボルト27Aが突設されている。そして、弾性支持部材27は、ベースフレーム部21を構成する左水平フランジ板21Fの取付板21F1上に前,後方向に間隔をもって複数個(例えば4個)設けられると共に、右水平フランジ板21Gの取付板21G1上に前,後方向に間隔をもって複数個(例えば4個)設けられている。
次に、後部フレーム20のベースフレーム部21に取付けられるバッテリ収納構造体について説明する。
28は後部フレーム20のベースフレーム部21上に各弾性支持部材27を介して弾性的に支持されたバッテリ収納構造体を示し、該バッテリ収納構造体28は、多数のバッテリ29を効率良く収納した状態で後部フレーム20に取付けられるものである。ここで、バッテリ収納構造体28は、図9に示すように、後述のバッテリ搭載台30と、バッテリテーブル31とにより構成されている。
30はバッテリ収納構造体28のベースとなるバッテリ搭載台で、該バッテリ搭載台30は、各弾性支持部材27を介して後部フレーム20のベースフレーム部21上に弾性的に支持されるものである。このバッテリ搭載台30は、左,右方向に延びる長方形状の前面板30Aと、該前面板30Aと前,後方向で対面する後面板30Bと、前面板30Aと後面板30Bとを挟んで左,右方向で対面する左側面板30C,右側面板30Dと、底板30Eとにより、全体として後部フレーム20のベースフレーム部21よりも一回り小さな長方形の枠状に形成され、底板30E上には複数のバッテリ29が搭載される構成となっている。
左側面板30Cの上端側は、ベースフレーム部21の左水平フランジ板21Fと上,下方向で対面する左水平フランジ板30Fとなり、右側面板30Dの上端側は、ベースフレーム部21の右水平フランジ板21Gと上,下方向で対面する右水平フランジ板30Gとなっている。左水平フランジ板30Fには、弾性支持部材27の取付ボルト27Aが挿通される4個のボルト挿通孔30F1と、後述する左ストッパ部材36のスペーサ36Aが挿通される1個のスペーサ挿通孔30F2とが、前,後方向に間隔をもって穿設されている。右水平フランジ板30Gにも、左水平フランジ板30Fと同様に、4個のボルト挿通孔30G1と1個のスペーサ挿通孔30G2とが、前,後方向に間隔をもって穿設されている。
そして、図10に示すように、ベースフレーム部21の内側にバッテリ搭載台30を配置し、ベースフレーム部21の左水平フランジ板21Fに設けた各弾性支持部材27の取付ボルト27Aを、バッテリ搭載台30の左水平フランジ板30Fに設けたボルト挿通孔30F1に挿通してナット締めすると共に、ベースフレーム部21の右水平フランジ板21Gに設けた各弾性支持部材27の取付ボルト27Aを、バッテリ搭載台30の右水平フランジ板30Gに設けたボルト挿通孔30G1に挿通してナット締めする。これにより、バッテリ搭載台30は、複数(合計8個)の弾性支持部材27を介してベースフレーム部21に弾性的に支持され、各弾性支持部材27が弾性変形する範囲内でベースフレーム部21に対して上,下方向に移動できる構成となっている。
次に、31はバッテリ搭載台30上に取付けられるバッテリテーブルを示し、該バッテリテーブル31は、後述する下段テーブル32と、中段テーブル33と、上段テーブル34とにより構成されている。そして、バッテリテーブル31を構成する各段のテーブル32,33,34によって多数のバッテリ29を保持することができる構成となっている(図8参照)。
32はバッテリ搭載台30上に着脱可能に取付けられた下段テーブルを示している。この下段テーブル32は、図9に示すように、角パイプ等を用いて枠状に形成されたベースとなる下枠組み部材32Aと、下枠組み部材32Aの左,右方向の中央部に配置され前,後方向に延びた中央プレート32Bと、下枠組み部材32Aの左側に配置された左側プレート32Cと、下枠組み部材32Aの後部右側に配置された右側プレート32Dと、下枠組み部材32Aの後部側に立設された矩形の枠状をなす上枠組み部材32Eとにより大略構成されている。
そして、下段テーブル32は、下枠組み部材32Aがバッテリ搭載台30上にボルト等を用いて締結されることにより当該バッテリ搭載台30上に固定され、中央プレート32B、左側プレート32C、右側プレート32D上には、それぞれ複数個のバッテリ29が搭載される構成となっている。
33は中段テーブルを示し、該中段テーブル33は、下段テーブル32上に着脱可能に取付けられるものである。この中段テーブル33も、角パイプ等を用いて枠状に形成された下枠組み部材33Aと、下枠組み部材33Aの中央部に配置された中央プレート33Bと、下枠組み部材33Aの左側に配置された左側プレート33Cと、下枠組み部材33Aの後部右側に配置された右側プレート33Dと、下枠組み部材33Aの後部側に立設された上枠組み部材33Eとにより大略構成されている。また、下枠組み部材33Aの前端側には、複数本の下向き取付脚33Fが下向きに突設され、下枠組み部材33Aの左,右方向の両端側には、上向き取付脚33Gが上向きに突設されている。
そして、中段テーブル33は、下枠組み部材33Aを1段目の下段テーブル32の上枠組み部材32E上に載置した状態で、下向き取付脚33Fの下端部を下段テーブル32の下枠組み部材32Aにボルト等を用いて締結することにより、下段テーブル32上に固定され、中央プレート33B、左側プレート33C、右側プレート33D上には、それぞれ複数個のバッテリ29が搭載される構成となっている。
34は上段テーブルを示し、該上段テーブル34は、中段テーブル33上に着脱可能に取付けられるものである。この上段テーブル34は、角パイプ等を用いて枠状に形成され左,右方向に延びる枠組み部材34Aと、枠組み部材34Aの中央部に配置された中央プレート34Bと、枠組み部材34Aの左側に配置された左側プレート34Cと、枠組み部材34Aの右側に配置された右側プレート34Dとにより大略構成されている。
そして、上段テーブル34は、枠組み部材34Aを中段テーブル33の上枠組み部材33E上に載置した状態で、枠組み部材34Aの左,右方向の両端部を中段テーブル33の上向き取付脚33Gにボルト等を用いて締結することにより、中段テーブル33上に固定され、中央プレート34B、右側プレート34D上には、それぞれ複数個のバッテリ29が搭載される構成となっている。また、枠組み部材34Aの後端部中央には、後述する連結機構38のテーブル側ブラケット40が取付けられている(図14参照)。
次に、バッテリ搭載台30が後部フレーム20に対して前,後方向および左,右方向に移動するのを制限するスライドプレートと、後部フレーム20に対するバッテリ搭載台30の上,下方向の移動量を制限するストッパ部材について説明する。
即ち、35は後部フレーム20のベースフレーム部21の内面21Kとバッテリ搭載台30の外面30Hとの間に設けられた複数個のスライドプレートを示し、該各スライドプレート35は、バッテリ搭載台30が前,後方向および左,右方向に移動するのを制限するものである。ここで、各スライドプレート35は、図11および図12に示すように、例えば樹脂材料を用いて長方形の平板状に形成され、ベースフレーム部21の前面板21Aにボルト締めされた2個の前スライドプレート35Aと、後面板21Bにボルト締めされた2個の後スライドプレート35Bと、左側面板21Cにボルト締めされた3個の左スライドプレート35Cと、右側面板21Dにボルト締めされた3個の右スライドプレート35Dとにより構成されている。
この場合、前スライドプレート35Aとバッテリ搭載台30の前面板30Aとの間、後スライドプレート35Bとバッテリ搭載台30の後面板30Bとの間、左スライドプレート35Cとバッテリ搭載台30の左側面板30Cとの間、右スライドプレート35Dとバッテリ搭載台30の右側面板30Dとの間には、それぞれ適度な隙間が形成されている。
そして、これら各スライドプレート35A,35B,35C,35Dは、ベースフレーム部21上でバッテリ搭載台30を支持する弾性支持部材27が弾性変形したときに、バッテリ搭載台30の外面30Hが衝合することにより、バッテリ搭載台30がベースフレーム部21に対して上,下方向に移動するのを許し、ベースフレーム部21に対して前,後方向および左,右方向に移動するのを制限するものである。
36はベースフレーム部21の左水平フランジ板21Fとバッテリ搭載台30の左水平フランジ板30Fとの間に設けられた左ストッパ部材を示し、37はベースフレーム部21の右水平フランジ板21Gとバッテリ搭載台30の右水平フランジ板30Gとの間に設けられた右ストッパ部材を示している。これら左,右のストッパ部材36,37は、ベースフレーム部21に対するバッテリ搭載台30の上,下方向の移動量を制限するものである。
左ストッパ部材36は、図13に示すように、左水平フランジ板30Fのスペーサ挿通孔30F2に挿通された円筒状のスペーサ36Aと、スペーサ36Aの上端に当接した状態で左水平フランジ板30Fの上面側に配置された略U字状のストッパ板36Bと、ストッパ板36Bとスペーサ36Aとに挿通され下端側がベースフレーム部21の左水平フランジ板21Fに螺合したボルト36Cと、スペーサ36Aの外周側に配置され左水平フランジ板30Fとストッパ板36Bとの間に設けられた円筒状の緩衝ゴム36Dとにより大略構成されている。
右ストッパ部材37は、左ストッパ部材36と同様に、右水平フランジ板30Gのスペーサ挿通孔30G2に挿通されたスペーサ37Aと、スペーサ37Aの上端に当接した状態で右水平フランジ板30Gの上面側に配置されたストッパ板37Bと、ストッパ板37Bとスペーサ37Aとに挿通され下端側がベースフレーム部21の右水平フランジ板21Gに螺合したボルト37Cと、右水平フランジ板30Gとストッパ板37Bとの間に設けられた緩衝ゴム37Dとにより大略構成されている。
そして、ベースフレーム部21の振動によってバッテリ搭載台30がベースフレーム部21に対して上方に大きく移動した場合には、バッテリ搭載台30の左水平フランジ板30Fが左ストッパ部材36のストッパ板36Bに衝合すると共に、右水平フランジ板30Gが右ストッパ部材37のストッパ板37Bに衝合する。これにより、ベースフレーム部21に対するバッテリ搭載台30の上,下方向の移動量を、左,右のストッパ部材36,37によって制限することができ、各弾性支持部材27が弾性限度を超えて変形するのを抑える構成となっている。
次に、後部フレーム20の左,右の支柱23,24とバッテリテーブル31との間を連結する連結機構について説明する。
即ち、38は左,右の支柱23,24の上端側を連結する連結梁25とバッテリテーブル31の上段テーブル34との間に設けられた連結機構を示している。この連結機構38は、図14ないし図16に示すように、後述のフレーム側ブラケット39と、テーブル側ブラケット40と、リンク41とにより大略構成され、バッテリテーブル31が左,右の支柱23,24に対して上,下方向に移動するのを許し、前,後方向および左,右方向に移動するのを制限するものである。
39は左支柱23と右支柱24の上端側を連結する連結梁25に設けられたフレーム側ブラケットを示している。このフレーム側ブラケット39は、断面L字状をなす山形鋼を用いて形成され、連結梁25の左,右方向の中央部にボルト締めされた取付基板39Aと、該取付基板39Aに溶接等の手段を用いて固着され、左,右方向に間隔Aをもって対面する左ブラケット体39Bおよび右ブラケット体39Cとにより構成されている。左ブラケット体39Bと右ブラケット体39Cの中央部には、それぞれ後述のフレーム側連結ピン42が挿通されるピン挿通孔が穿設され、右ブラケット体39Cのうち左ブラケット体39Bとは反対側となる外側面には、円筒状の鍔部39Dが固着されている。
40はフレーム側ブラケット39に対応して上段テーブル34に設けられたテーブル側ブラケットを示している。このテーブル側ブラケット40は、上段テーブル34を構成する枠組み部材34Aの後端縁部に溶接等の手段を用いて固着され、左,右方向に間隔Aをもって対面する左ブラケット体40Aと右ブラケット体40Bとにより構成されている。左ブラケット体40Aと右ブラケット体40Bの中央部には、それぞれ後述のテーブル側連結ピン43が挿通されるピン挿通孔が穿設され、右ブラケット体40Bのうち左ブラケット体40Aとは反対側となる外側面には、円筒状の鍔部40Cが固着されている。
41はフレーム側ブラケット39とテーブル側ブラケット40との間を連結するリンクを示し、該リンク41は、フレーム側ボス筒体41Aと、テーブル側ボス筒体41Bと、連結体41Cとにより大略構成されている。
フレーム側ボス筒体41Aは、フレーム側ブラケット39を構成する左,右のブラケット体39B,39Cの間隔Aよりも僅かに小さい長さ寸法(軸方向寸法)を有する円筒体からなり、テーブル側ボス筒体41Bは、テーブル側ブラケット40を構成する左,右のブラケット体40A,40Bの間隔Aよりも僅かに小さい長さ寸法(軸方向寸法)を有する円筒体からなっている。そして、フレーム側ボス筒体41Aとテーブル側ボス筒体41Bとは、平板状の連結体41Cを介して一体に連結されている。
リンク41のフレーム側ボス筒体41Aは、フレーム側連結ピン42を介してフレーム側ブラケット39に上,下方向に揺動可能にピン結合され、テーブル側ボス筒体41Bは、テーブル側連結ピン43を介してテーブル側ブラケット40に上,下方向に揺動可能にピン結合されている。
また、フレーム側連結ピン42は、フレーム側ブラケット39の鍔部39Dに径方向に挿通された抜止めボルト44により、フレーム側ブラケット39に対して抜止めおよび廻止めされ、テーブル側連結ピン43は、テーブル側ブラケット40の鍔部40Cに径方向に挿通された抜止めボルト45により、テーブル側ブラケット40に対して抜止めおよび廻止めされている。
従って、後部フレーム20の振動によって各弾性支持部材27が弾性変形すると、図17および図18に示すように、フレーム側ブラケット39にピン結合されたリンク41のフレーム側ボス筒体41Aを支点として、テーブル側ブラケット40にピン結合されたリンク41のテーブル側ボス筒体41Bが上,下方向に円弧状に移動(揺動)する。これにより、テーブル側ブラケット40が固定された上段テーブル34は、左,右の支柱23,24に対し、中段テーブル33および上段テーブル32を伴って専ら上,下方向に移動するようになり、バッテリテーブル31全体の前,後方向および左,右方向への移動が制限できる構成となっている。
この場合、図16に示すように、リンク41のフレーム側ボス筒体41Aは、フレーム側ブラケット39を構成する左,右のブラケット体39B,39Cの間隔Aよりも僅かに小さい長さ寸法を有し、リンク41のテーブル側ボス筒体41Bは、テーブル側ブラケット40を構成する左,右のブラケット体40A,40Bの間隔Aよりも僅かに小さい長さ寸法を有している。これにより、フレーム側ブラケット39に対するリンク41の左,右方向へのがたつきと、テーブル側ブラケット40に対するリンク41の左,右方向へのがたつきとを抑えることができ、バッテリテーブル31の左,右方向への移動を連結機構38によって確実に制限することができる構成となっている。
また、図11に示すように、連結機構38のうちリンク41の揺動動作の中心となるフレーム側連結ピン42の中心P1と、ベースフレーム部21の前面板21Aとバッテリ搭載台30の前面板30Aとの間に配置された前スライドプレート35Aの高さ方向の中心P2とを結ぶ仮想線を連結線Lとし、バッテリテーブル31にバッテリ29を搭載したときの重心位置をGとし、ベースフレーム部21の底板21Eから連結機構38(フレーム側連結ピン42の中心P1)までの高さ寸法をHとすると、この高さ寸法Hは、バッテリテーブル31の重心位置Gが連結線Lよりも下側に位置する寸法に設定されている。
これにより、後部フレーム20の各支柱23,24とバッテリテーブル31との間を、できるだけ高い位置で連結機構38を介して連結することができ、下段テーブル32、中段テーブル33、上段テーブル34を積上げたバッテリテーブル31の重心位置Gが高くなる場合においても、このバッテリテーブル31の上端側を連結機構38によって安定した状態で支持することができる構成となっている。
なお、46は運転席6を取囲んで前部フレーム13上に配設された外装カバーを示し、該外装カバー46は、前部フレーム13上に搭載された電動モータ7、油圧ポンプ8、作動油タンク9等の搭載機器を収容するものである。47は後部フレーム20上に配設された後部カバーを示し、該後部カバー47は、後部フレーム20上に取付けられたバッテリ収納構造体28と該バッテリ収納構造体28に搭載された多数のバッテリ29を収容するものである。
本実施の形態による電動式の油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、この油圧ショベル1は、バッテリ収納構造体28を介して後部フレーム20に搭載された多数のバッテリ29からの電力によって電動モータ7を回転させ、油圧ポンプ8を駆動する。そして、運転席6に着席したオペレータが操作レバーを操作することにより、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4によって土砂等の掘削作業を行うことができる。
ここで、作業装置4を用いた掘削作業時には、作業装置4が取付けられた前部フレーム13から後部フレーム20に大きな振動が伝わるが、バッテリ収納構造体28のベースとなるバッテリ搭載台30は、複数個の弾性支持部材27を介して後部フレーム20のベースフレーム部21に弾性的に支持されている。
このため、後部フレーム20の振動は各弾性支持部材27が弾性変形することにより吸収されるので、バッテリ収納構造体28に搭載された各バッテリ29に対し、後部フレーム20の振動が直接的に伝わるのを防止することができ、各バッテリ29の性能を確保すると共に、その寿命を延ばすことができる。
ここで、油圧ショベル1の掘削作業時の振動によって各弾性支持部材27が弾性変形を生じることにより、バッテリ収納構造体28のバッテリ搭載台30が、後部フレーム20に対して前,後方向または左,右方向(水平方向)に大きく移動した場合には、バッテリテーブル31に搭載された各バッテリ29が、後部フレーム20の左,右の支柱23,24、ガードパイプ26等と干渉する虞れがある。
これに対し、本実施の形態では、後部フレーム20を構成する枠状のベースフレーム部21の内側に、バッテリ収納構造体28のバッテリ搭載台30を配置し、バッテリ搭載台30の外面30Hと全周に亘って対面するベースフレーム部21の内面21Kに、前,後,左,右のスライドプレート35A,35B,35C,35Dを設ける構成としている。このため、弾性支持部材27の弾性変形により、バッテリ搭載台30が前,後方向および左,右方向に移動しようとしたときには、バッテリ搭載台30の外面30Hが、各スライドプレート35A,35B,35C,35Dのいずれかに衝合する。この結果、バッテリ搭載台30は、弾性支持部材27の弾性変形に伴って専ら上,下方向に移動し、バッテリ搭載台30が前,後方向および左,右方向に移動するのを各スライドプレート35A,35B,35C,35Dによって制限することができる。
一方、本実施の形態では、後部フレーム20に立設した左,右の支柱23,24間を連結する連結梁25と、バッテリ搭載台30上に取付けられたバッテリテーブル31の上段テーブル34との間を、フレーム側ブラケット39、テーブル側ブラケット40、リンク41によって構成された連結機構38を介して連結する構成としている。
このため、後部フレーム20の振動によって各弾性支持部材27が弾性変形すると、図17および図18に示すように、フレーム側ブラケット39にピン結合されたリンク41のフレーム側ボス筒体41Aを支点として、テーブル側ブラケット40にピン結合されたリンク41のテーブル側ボス筒体41Bが上,下方向に円弧状に揺動する。これにより、テーブル側ブラケット40が固定された上段テーブル34は、左,右の支柱23,24に対し、中段テーブル33および上段テーブル32を伴って上,下方向に移動するので、バッテリテーブル31全体の前,後方向および左,右方向への移動を制限することができる。
この場合、リンク41の揺動動作の中心となるフレーム側連結ピン42の中心P1と、前スライドプレート35Aの高さ方向の中心P2とを結ぶ仮想線を連結線Lとし、バッテリテーブル31にバッテリ29を搭載したときの重心位置をGとすると、ベースフレーム部21の底板21Eから連結機構38のフレーム側連結ピン42の中心P1までの高さ寸法Hは、バッテリテーブル31の重心位置Gが連結線Lよりも下側に位置となる寸法に設定されている(図11参照)。
これにより、後部フレーム20の各支柱23,24とバッテリテーブル31との間を、できるだけ高い位置で連結機構38を介して連結することができ、下段テーブル32、中段テーブル33、上段テーブル34を積上げたバッテリテーブル31の重心位置Gが高くなる場合においても、このバッテリテーブル31の上端側を連結機構38によって安定した状態で支持することができる。
このように、バッテリ収納構造体28の下端側に配置されたバッテリ搭載台30の前,後方向および左,右方向への移動を、後部フレーム20のベースフレーム部21とバッテリ搭載台30との間に設けた各スライドプレート35A,35B,35C,35Dによって制限すると共に、バッテリ収納構造体28の上端側に配置された上段テーブル34の前,後方向および左,右方向への移動を、後部フレーム20の各支柱23,24と上段テーブル34との間に設けた連結機構38によって制限することができる。
この結果、油圧ショベル1の作動時における振動により、バッテリ収納構造体28が後部フレーム20に対して前,後方向および左,右方向に移動するのを確実に制限し、安定して支持することができるので、バッテリ収納構造体28、あるいはバッテリ収納構造体28に搭載された各バッテリ29が、後部フレーム20の左,右の支柱23,24、ガードパイプ26等と干渉するのを確実に防止することができる。この結果、バッテリ収納構造体28の周囲に干渉防止用の空間を確保する必要がなく、この分、バッテリ収納構造体28に搭載されるバッテリ29の搭載量を増大させることができるので、油圧ショベル1の連続的な稼働時間を延ばすことができる。
また、例えば上部旋回体3の旋回動作を停止させた場合に、多数のバッテリ29を搭載したバッテリ収納構造体28が、弾性支持部材27の弾性変形によって旋回方向への揺れ、揺戻しを生じる挙動(旋回ジャーキング)を抑えることができる。この結果、旋回動作の停止時における上部旋回体3の姿勢を安定させることができ、オペレータによる油圧ショベル1の操作性を高めることができる。
しかも、本実施の形態によれば、ベースフレーム部21の左水平フランジ板21Fとバッテリ搭載台30の左水平フランジ板30Fとの間に左ストッパ部材36を設けると共に、ベースフレーム部21の右水平フランジ板21Gとバッテリ搭載台30の右水平フランジ板30Gとの間に右ストッパ部材37を設ける構成としている。
このため、例えば後部フレーム20に伝わった振動によってバッテリ搭載台30が上方に大きく移動した場合には、バッテリ搭載台30の左水平フランジ板30Fが左ストッパ部材36のストッパ板36Bに衝合すると共に、右水平フランジ板30Gが右ストッパ部材37のストッパ板37Bに衝合する。このように、左,右のストッパ部材36,37が、各弾性支持部材27の過剰な変形を抑えることにより、各弾性支持部材27を保護することができ、これら各弾性支持部材27によってバッテリ収納構造体28を長期に亘って安定して支持することができる。
次に、図19ないし図21は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、後部フレームに設けた支柱とバッテリテーブルとの間を連結する連結機構を、上,下方向に軸挿通孔が設けられたリング部材と、リング部材の軸挿通孔に移動可能に挿通される軸体とにより構成したことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、51は後部フレーム20の左,右の支柱23,24とバッテリテーブル31の上段テーブル34との間に設けられた連結機構を示し、この連結機構51は、第1の実施の形態による連結機構38に代えて本実施の形態に用いたものである。ここで、連結機構51は、後述のリング部材52と、軸体55とにより大略構成され、バッテリテーブル31が左,右の支柱23,24に対して上,下方向に移動するのを許し、前,後方向および左,右方向に移動するのを制限するものである。
52は左支柱23と右支柱24との間を連結する連結梁25に設けられたリング部材を示している。このリング部材52は、長方形状をなす基端部52Aと、円環状をなす先端部52Bとを有する厚肉な板体により形成され、先端部52Bの中央部には上,下方向に貫通する軸挿通孔52Cが穿設されている。そして、リング部材52の基端部52Aは、断面L字型の取付基板53に溶接等の手段を用いて固着され、取付基板53は、連結梁25の左,右方向の中央部にボルト締めされている。
54は上段テーブル34の後端側に固定された軸体ブラケットで、該軸体ブラケット54は、左,右方向に延びる長方形状の平板からなり、上段テーブル34を構成する枠組み部材34Aの後端縁部にボルト締めされた固定板54Aと、該固定板54Aの左,右方向の中間部に固着されリング部材52に向けて後方に突出した突出板54Bとにより、全体としてT字状に形成されている。そして、突出板54Bの下面側には後述の軸体55が固着されている。
55はリング部材52に対応して上段テーブル34に設けられた軸体を示している。この軸体55は、リング部材52に設けられた軸挿通孔52Cの孔径よりも僅かに小さな直径を有する円柱状に形成され、軸体ブラケット54の突出板54Bの下面に溶接等の手段を用いて固着されている。そして、軸体55は、軸体ブラケット54の突出板54Bから下向きに突出することにより、リング部材52の軸挿通孔52Cに上,下方向に移動可能に挿通されている。
第2の実施の形態による油圧ショベルは、後部フレーム20の各支柱23,24とバッテリテーブル31の上段テーブル34との間を、上述のリング部材52と軸体55とを備えた連結機構51によって連結したもので、その基本的作用については第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
然るに、本実施の形態においては、後部フレーム20の振動によって弾性支持部材27が弾性変形すると、リング部材52の軸挿通孔52Cに挿通された軸体55は、リング部材52によって前,後方向および左,右方向への移動が制限され、軸挿通孔52Cに沿って上,下方向に移動するようになる。これにより、軸体55が取付けられた上段テーブル34は、中段テーブル33、下段テーブル32を伴って専ら上,下方向に移動するので、バッテリテーブル31の前,後方向および左,右方向への移動を確実に制限することができる。
なお、上述した各実施の形態では、上部旋回体3が前部車体5と後部車体10とにより分離可能に構成された油圧ショベル1を例に挙げ、上部旋回体3のベースとなる旋回フレーム11を、互いに別部材からなる前部フレーム13と後部フレーム20とを連結して構成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば前部フレームと後部フレームとが一体化された単一の旋回フレームを用いる構成としてもよい。
また、上述した実施の形態では、バッテリ収納構造体28を、互いに別部材からなるバッテリ搭載台30にバッテリテーブル31を取付けることにより構成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばバッテリテーブルの下端側に枠状のバッテリ搭載台が一体に設けられたバッテリ収納構造体を用いる構成としてもよい。
また、上述した各実施の形態では、後部フレーム20を構成するベースフレーム部21の前面板21A、後面板21B、左側面板21C、右側面板21Dに、前スライドプレート35A,後スライドプレート35B,左スライドプレート35C,右スライドプレート35Dを取付けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図22に示す第1の変形例のように、バッテリ収納構造体28を構成するバッテリ搭載台30の前面板30A、後面板30B、左側面板30C、右側面板30Dに各スライドプレート35A,35B,35C,35Dを取付けてもよい。
また、図23に示す第2の変形例のように、ベースフレーム部21の前面板21Aとバッテリ搭載台30の前面板30Aとの両方に前スライドプレート35Aを取付け、ベースフレーム部21の後面板21Bとバッテリ搭載台30の後面板30Bとの両方に後スライドプレート35Bを取付け、ベースフレーム部21の左側面板21Cとバッテリ搭載台30の左側面板30Cとの両方に左スライドプレート35Cを取付け、ベースフレーム部21の右側面板21Dとバッテリ搭載台30の右側面板30Dとの両方に右スライドプレート35Dを取付ける構成としてもよい。
また、上述した実施の形態では、バッテリテーブル31の重心位置Gが、連結機構38を構成するフレーム側連結ピン42の中心P1と前スライドプレート35Aの高さ方向の中心P2とを結ぶ仮想の連結線Lよりも下側に位置するように、ベースフレーム部21の底板21Eから連結機構38までの高さ寸法Hを設定した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、バッテリテーブル31の重心位置Gが、上記連結線L上となるように、ベースフレーム部21の底板21Eから連結機構38までの高さ寸法Hを設定してもよい。
さらに、上述した各実施の形態では、電動式建設機械として油圧ショベル1を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイールローダ、油圧クレーン等の他の建設機械にも広く適用することができるものである。