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JP5388956B2 - 振動抑制方法 - Google Patents

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JP5388956B2
JP5388956B2 JP2010141865A JP2010141865A JP5388956B2 JP 5388956 B2 JP5388956 B2 JP 5388956B2 JP 2010141865 A JP2010141865 A JP 2010141865A JP 2010141865 A JP2010141865 A JP 2010141865A JP 5388956 B2 JP5388956 B2 JP 5388956B2
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Description

本発明は、加速または減速運動に伴って運動体に生じる振動を抑制する振動抑制方法に関するものであり、特に、上記運動中に運動体自体の姿勢が変化する場合に、運動体に生じる、少なくとも1自由度かつ時変の振動を抑制する振動抑制方法に関する。
様々な作業を行うために運動動作を行うロボットアームは、モータとアームの間に減速機を用いている。減速機はねじりばねとして振る舞うため、モータ停止後もアームの振動が残留する。その結果、振動が収まるまで次の作業に移ることができず、作業効率を向上させることができない。
このような残留振動に伴う課題は、ロボットアームだけに限られず、加速または減速運動を含む運動動作を行う運動体、例えば、工作機械やクレーン等についても共通する。
フィードバック制御で振動を抑える場合は検出器が必要となるため、検出器が不要なフィードフォワード制御で振動を抑える方法が求められている。
フィードフォワード制御での振動抑制方法としては、インプットシェイピング法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。このインプットシェイピング法は、工作機械などのように、固有振動数が変化しない場合に有効な振動抑制方法であり、様々な提案がなされている。
特開2009−29617号公報
Neil C. Singer and Warren P. Seering : Preshaping Command Inputs to Reduce System Vibration, Trans.ASME Journal of Dynamic Systems, Measurement, and Control, Vol.112, No.1, 76-82 (1990) Pyung Hun Chang and Hyung-Soon Park : Time-varying input shaping technique applied to vibration reduction of an industrial robot, Control Engineering Practice 13 (2005) 121-130
ロボットアームは、様々な作業に対応可能とするために、一般に多関節および多自由度を有している。そのため、ロボットアームにおいて、一の関節が駆動された運動動作を行っている間に他の関節が駆動されると、運動動作を行っているアーム自体の姿勢が変化する。そのため、アームの固有振動数が時間によって変化することになる。このような場合にあっては時変の振動系となるため、時不変の振動系を対象として従来のインプットシェイピング法を単に適用するだけでは、振動抑制に対応することができない。
このような時変の振動系において振動を抑制する方法としては、いくつかの提案がなされている(例えば、特許文献1および非特許文献2参照)。しかしながら、時変の振動抑制に対して、インプットシェイピング法を効果的に適用できる振動抑制方法が求められている。
従って、本発明の目的は、上記課題を解決することにあって、加速または減速運動に伴って運動体に生じる、少なくとも1自由度かつ時変の振動を、インプットシェイピング法を効果的に適用して抑制する振動抑制方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の一態様によれば、加速または減速運動が行われる運動体において、加速または減速運動に伴って運動体に生じる、少なくとも1自由度かつ時変の振動を抑制する振動抑制方法において、運動体に付加された第1のインパルス入力によって運動体に生じる第1のインパルス応答に、第1のインパルス応答の変位が0となる時刻において、第2のインパルス入力を運動体に付加して生じる第2のインパルス応答を重ね合わせて、互いに打ち消し合うインプットシェイピング法を適用する場合に、加速または減速運動を行っている間に運動体自体の姿勢が変化することにより生じるコリオリの力がした仕事を考慮して、第1のインパルス入力に対する第2のインパルス入力の大きさを決定する、振動抑制方法を提供する。
本発明によれば、加速または減速運動に伴って運動体に生じる、少なくとも1自由度かつ時変の振動を、インプットシェイピング法を用いて抑制する場合に、運動体自体の姿勢変化に伴って生じるコリオリの力がする仕事を考慮して、第2のインパルス入力の大きさを決定しているため、時間によって第1のインパルス応答の振幅が変化する時変の振動系に対して、第2のインパルス応答を重ね合わせることで効果的に振動を抑制することができる。
本発明の実施の形態1にかかる振動抑制方法が適用されるロボットアームの模式図 ロボットアームの運動における加速度変化を示す図 ロボットアームの運動における速度変化を示す図 時不変におけるインパルス応答の変位と時間の関係図 時変におけるインパルス応答の変位と時間の関係図 時変におけるインパルス応答の変位と時間の関係図 時変におけるインパルス応答の変位と時間の関係図 実施例1の振動抑制方法を適用するモデルの模式図 アームの面内方向の運転パターンの図 慣性モーメントの変化を示す図 モデルに生じるインパルス応答を示す図 インパルス入力の大きさの割合αの算出結果を示す図 固有周期の変化による補正を考慮してインパルス入力の大きさの割合γの算出結果を示す図 インパルス応答の重ね合わせ結果を示す図 強制加振力の継続時間と振動レベルとの関係を示す図 振動抑制を行うための加速度パターンを示す図 振動抑制を行うための強制加振力パターンを示す図 強制加振力の継続時間と振動レベルとの関係を示す図 振動抑制方法を適用して駆動装置により運動体の運転を行う手順のフローチャート 本発明の実施の形態2にかかる振動抑制方法において、インパルス入力の大きさの割合α(t)の算出結果を示す図 インパルス入力の時間幅の割合β(t)について、1/β(t)の算出結果を示す図 インパルス入力の大きさの割合γ(t)の算出結果を示す図 アームの動作の全継続時間における運転パターンを示す図であり、(a)は外力パターンを示す図、(b)は加速度パターンを示す図、(c)は速度パターンを示す図
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1にかかる運動体の振動抑制方法について、運動体の一例であるロボットアーム10を用いて説明する。また、このロボットアームの模式図を図1に示す。
図1に示すように、ロボットアーム10は、複数のアームと、それぞれのアームを回転運動可能に連結する複数の関節と、先端のアームに取り付けられたハンドツールとを備えている。具体的には、ロボットアーム10には、関節11a、11b、11cと、アーム12a、12bと、アーム12bの先端に取り付けられたハンドツール13とが備えられている。さらに、それぞれの関節11a〜11cにおいて、アーム12a、12bを回転駆動させる駆動装置(例えば、モータ等、図示せず)と、この駆動装置からの駆動力をそれぞれの関節に伝達させる減速機(図示せず)とが備えられている。
図1のロボットアーム10において、関節11aは、鉛直方向の回転軸14a周りにアーム12aを旋回(旋回角度θ)させることができ、関節11bは、水平方向の回転軸14b周りにアーム12aを回転運動(回転角度ψ)させることができ、関節11cは、水平方向の回転軸14c周りにアーム12bを回転運動(回転角度ψ)させることができる。
そのため、ロボットアーム10の動きは、垂直方向の回転軸14a周りの旋回運動(以降、「旋回方向の動き」とする。)と、水平方向の回転軸14bおよび14c周りの回転運動(以降、「面内(垂直面内)方向の動き」とする。)に分けることができる。ロボットアーム10において、旋回方向の動きと面内方向の動きとが同時に行われて、加速または減速運動が行われると、その後、旋回方向と面内方向に自由振動が生じることになる。本実施の形態1では、説明の理解を容易にするために、一例として、旋回方向における振動について取り扱うものとする。
本実施の形態1の振動抑制方法を説明するにあたって、このようなロボットアーム10をモデルとして、旋回方向に対するアーム(アーム12a、12b)の運動方程式についてまず説明する。
時間をt、旋回方向の慣性モーメントをJ(ただし、Jは時間の関数とする。)、減速機の回転ばね定数をk、減速機の目標角度をθ、回転軸14aの回転角度をθとすると、旋回方向における角運動量の変化は外力のモーメントに等しいので、式(1)のように表すことができる。ここで、式(1)中の「・」は時間による微分を表す。
Figure 0005388956
この式(1)より、式(2)に示す運動方程式を導くことができる。
Figure 0005388956
さらに、式(2)にて、相対角変位を式(3)のようにおいて整理すると、式(4)を導くことができる。
Figure 0005388956
Figure 0005388956
なお、式(4)における左辺の第2項はコリオリの力であり、詳細については後述する。
このようなロボットアーム10において、図2に示すようにアームの加速運動、等速運動、その後減速運動が行われるような場合、駆動装置(モータ等)は図3に示すような台形速度則に沿って運転される。なお、図2は、加速度(縦軸)と時間(横軸)との関係を示すグラフであり、図3は、速度(縦軸)と時間(横軸)との関係を示すグラフである。
駆動装置の動きによって生じる強制加振力(モーメント)Fを式(5)とすれば、式(4)にて表される運動方程式は、式(6)に示すように駆動装置の動きによって生じる強制加振力Fが加わる振動系に相当することが分かる。
Figure 0005388956
Figure 0005388956
さらに、このように台形速度則を前提にすると強制加振力Fが既知関数となり、インパルス応答との積分で相対角度変位を次の式(7)のように表すことができる。
Figure 0005388956
ここで、H(t,τ)は、時変のインパルス応答関数であり、時刻τにインパルス入力を与えた特の時刻tにおける応答の値である。
次に、インプットシェイピング法の考え方について説明する。
インプットシェイピング法は、工作機械のように係数が定数となる1自由度の振動系に対して、一定外力を有限時間与えた場合の自由振動を抑制する方法である。上述した式(4)において、旋回方向の慣性モーメントJを定数、すなわち時間によって変化しないものとすると、次の式(8)を導くことができる。
Figure 0005388956
ここで、インプットシェイピング法におけるインパルス応答の重ね合わせの考え方を図4に示す。なお、図4はインパルス応答の変位(振動量:縦軸)と時間(横軸)との関係を表している。
図4に示すように、ある時刻tにロボットアームなどの運動体が受けた外力(強制加振力、第1のインパルス入力P)により生じた自由振動(第1のインパルス応答Q:実線にて示す。)を、この第1のインパルス応答Pの固有周期Tの半周期(T/2)後である時刻tに運動体に対して外力(強制加振力、第2のインパルス入力Q)を与えることにより生じた第2のインパルス応答Q(破線にて示す。)を重ね合わせる。この重ね合わせにより、時刻t以降において、第1のインパルス応答Qと第2のインパルス応答Qとが互いに打ち消し合って、インパルス応答を0にすることができる。
また、式(8)よりこのような振動を生じさせる外力である加振力は、駆動装置による運動体の加速運動または減速運動が行われる際に生じることが分かる。さらに、この振動系において短い時間系を考えて実質的な減衰がないものとした場合において、第1のインパルス応答Qを、第2のインパルス応答Qにより打ち消し合うようにするためには、第1のインパルス応答Qの半周期後に、第1のインパルス入力Pと同じ大きさの第2のインパルス入力Pを与え続ければ良い。したがって、駆動装置による運動体の加速運動または減速運動が行われる際に、第2のインパルス入力Pを付加するような一定加速度を、固有周期Tの区間に渡って運動体に対し与えることにより、自由振動を抑えることができる。なお、このような考え方は、固有周期Tの整数倍についても同じことが言える。
次に、本実施の形態1の振動抑制方法、すなわち、時変の振動系に対する制御則について詳細に説明する。
ロボットアームの旋回方向の動きが行われる際に、面内方向の動きも行われてロボットアームの姿勢が変化すると慣性モーメントJも変化する。すなわち、ロボットアーム10において、アーム12a、12bが旋回方向に運動される際に、例えば、アーム12aが面内方向に運動されると、アーム12bに対するアーム12aの相対的な姿勢が変化することになり、それに伴ってロボットアーム10の慣性モーメントJも変化することになる。このロボットアーム、すなわち運動体に対して、時刻tに大きさAのインパルス入力を与えるとすると、式(6)に示す運動方程式を、デルタ関数δ(t)を用いて、式(9)のように表すことができる。
Figure 0005388956
慣性モーメントが時間とともに増加するとして、インパルス応答を計算したものを図5に示す。なお、図5では、インパルス応答の変位(振動量:縦軸)と時間(横軸)との関係を表している。図5においては、時刻t=0に第1のインパルス入力Pを運動体に対して与えることにより生じる第1のインパルス応答Q(実線)と、この第1のインパルス応答Qが変位0となる時刻をt(j=1,2...)とおき、時刻t=tに第2のインパルス入力Pを運動体に対して与えることにより生じる第2のインパルス応答Q(破線)とを示している。図5に示すように、第1のインパルス応答Qと第2のインパルス応答Qは、変位が0となる時刻は同じであるが、変位の振幅が異なっている。
次に、式(9)の運動方程式に「φの時間による微分」を乗じて時間で積分することにより、次の式(10)のエネルギの関係式が得られる。
Figure 0005388956
ここで、式(10)のエネルギの関係式における右辺の項は、時刻tでのインパルス入力により運動体に与えられたエネルギであり、一定値となる。ただし、この値はインパルス入力を与える時刻tによって異なるため、右辺の項を次の式(11)のようにおく。
Figure 0005388956
また、式(10)のエネルギの関係式における左辺の3つの項の和は一定となり、左辺の第2項はコリオリの力がする仕事に相当し、時間によりその値が変化するため、次の式(12)のようにおいて式(10)を整理すると、式(13)のようになる。
Figure 0005388956
Figure 0005388956
この式(13)より、運動エネルギとポテンシャルエネルギの和は、時間によって変化することが分かる。
ここで、時刻0に大きさAの第1のインパルス入力を与えた時の第1のインパルス応答をφ(t)、時刻tに大きさAの第2のインパルス入力を与えた時の第2のインパルス応答をφ(t)とする。第1および第2のインパルス応答において、変位が0となる時刻ではポテンシャルエネルギkφ/2は0となるため、式(14)、式(15)、式(16)を導くことができる。
Figure 0005388956
Figure 0005388956
Figure 0005388956
また、第2のインパルス入力は、時刻tで変位が0である運動体に対して、式(17)にて示す初期速度を与えることに等しく、また、第1のインパルス応答は、時刻tで変位が0である運動体に対して、式(18)にて示す初期速度を与えることに等しい。したがって、式(19)に示すような関係が成り立つことで、第1のインパルス応答と第2のインパルス応答とが互いに打ち消し合うことが可能となる。
Figure 0005388956
Figure 0005388956
Figure 0005388956
そこで、第1のインパルス入力の大きさAと、第2のインパルス入力の大きさAとの関係を、A=αAとし、2つのインパルス応答が互いに打ち消し合うような入力の割合αを設定する。具体的には、式(16)は、式(14)より、αを用いて、次の式(20)のように表すことができる。
Figure 0005388956
式(15)および式(20)より、第1のインパルス入力の大きさAに対する第2のインパルス入力の大きさAの割合(比)αは、次の式(21)のように表すことができる。
Figure 0005388956
ここで、E(0)は、時刻t=0にて第1のインパルス入力により運動体に与えられるエネルギであり、J(0)は、時刻t=0にて運動体が有する運動エネルギであり、J(t)は、時刻t=tにて運動体が有する運動エネルギであり、C(t)は、時刻t=tにて運動体においてコリオリの力がする仕事である。
このように、式(21)を用いることで、第1のインパルス入力の大きさAに対する第2のインパルス入力の大きさAの割合αを算出することができる。その結果、算出された割合αを用いて、第2のインパルス入力の大きさAを決定して、時刻t=tにおいて、予め決定された大きさAの第2のインパルス入力を運動体に付加することで、第1のインパルス応答と第2のインパルス応答とを互いに打ち消し合うことができる。したがって、時変の振動系において、インパルス応答の振幅が時変する場合であっても、第2のインパルス入力の大きさを適切に設定することで、振動を効果的に抑制することができる。
次に、本実施の形態1の振動抑制方法において、固有周期が変化した場合に補正する方法について説明する。
図5において、強制加振力が時刻0から時刻tまで運動体に対して働いたとすると、運動体に生じる振動は、式(7)を用いて、次の式(22)のように表すことができる。
Figure 0005388956
これまでは半周期遅れたインパルス応答の重ね合わせによる打ち消しを考えてきたが、時変の振動系のインパルス応答では固有周期が変化する場合が考えられる。そのため、図6に示すように、所定の時間だけ一定の外力を連続的に運動体に対して与え続けた時のインパルス応答の重ね合わせを考える。
具体的には、図6に示すように、時刻0から時間幅ΔTの間に大きさAの第1のインパルス入力Pを運動体に対して連続的に与えることによって、運動体に生じる第1のインパルス応答Qを、時刻tから時間幅(β・ΔT)の間に、適切な大きさ(A・γ)の第2のインパルス入力Pを運動体に対して連続的に与えることによって、運動体に生じる第2のインパルス応答Qで、打ち消すことを考える。分かり易く簡略化して表現すれば、図6において、時刻0から時間幅ΔTの間に大きさAの第1のインパルス入力Pが連続的に付加されることにより、運動体が受け取るエネルギ(ここでは、インパルス入力の大きさと時間との積とする。)(A・ΔT)と、時刻tから時間幅(β・ΔT)の間に大きさ(A・γ1)の第2のインパルス入力Pが連続的に付加されることにより、運動体が受け取るエネルギ{(A・γ)×(β・ΔT)}とが略同じとなるように、時間幅の割合(比)βとインパルス入力の大きさの割合(比)γとを設定する、という考え方である。すなわち、上述のそれぞれのエネルギのブロック同士を互いに相殺するという考え方を用いている。この考え方を式で示すと、次の式(23)のように表すことができる。
Figure 0005388956
このような考え方に基づくインパルス応答の打ち消しを時刻0から時刻tまでにわたって考えると、t>t(すなわち、時刻t以降の時間帯)で式(22)の値を0にすることができる。なお、時間幅ΔTは、インパルス応答の周期に比して十分に小さいものと仮定することができ、さらに、インパルス入力を発生させる駆動装置(モータ等)の駆動を制御するサンプリング時間は、インパルス応答の周期に比して十分に短い時間である。したがって、時間幅ΔTを過大に長くとらない限り、上述のようなブロック同士を相殺するという考え方を適用することができる。
したがって、式(23)および図6にて示すような所定の時間幅を考慮したインパルス応答の重ね合わせの考え方を用いて、まず時間幅ΔTを設定することで、時間幅の割合βとインパルス入力の大きさの割合γとを設定することができ、さらに設定された割合β、γを用いて、運動体に対して第2のインパルス入力Pの大きさおよび付加する時間幅を決定して、インパルス応答の重ね合わせを行うことで、時変の振動系のインパルス応答において固有周期が変化する場合であっても、確実に振動を抑制することができる。
また、このように時変の振動系のインパルス応答において、固有周期の変化に加えて、振幅の変化を伴うような場合には、式(23)で示す考え方に式(21)にて示す割合αを併用することが望ましい。具体的には、図6に示すように、時刻0にて第1のインパルス入力Pを運動体に対して与えた時の第1のインパルス応答Qは、時刻tにて変位が0となるのに対して、時刻ΔT(すなわち、0+ΔT)にて第1のインパルス入力P’を運動体に対して与えた時の第1のインパルス応答Q’は、時刻(t+β・ΔT)で変位が0となる。これらより、時刻tにおける割合α(t)と、割合β、γとは、次の式(24)のような関係となる。
Figure 0005388956
インパルス応答の周期だけが変化する場合には、式(24)において、β=1と置けば良く、また、インパルス応答の振幅だけが変化する場合には、式(24)において、α(t)=1と置けば良い。なお、βおよびγは、式(23)および式(24)を満たす範囲で適切に設定すれば良い。このようにして、α(t)、β、γを設定することができる。
上述の説明では、図5および図6に主に示すように、時間の経過に伴って、インパルス応答の振幅が減少し、かつ、固有周期が長くなるような場合を例として説明したが、本実施の形態1の振動抑制方法は、このような場合についてのみ限定されるものではない。このような場合に代えて、例えば、図7に示すように、時間の経過に伴って、インパルス応答の振幅が増大し、かつ、固有周期が短くなるような場合であっても、本実施の形態1の振動抑制方法を適用することができる。
具体的には、図7において、時刻t=0において、第1のインパルス入力Pを運動体に対して与えることにより生じた第1のインパルス応答Qにおいて、時間の経過に伴って、振幅が減少し、かつ、固有周期が短くなるような場合であっても、時刻t=tにおいて、第2のインパルス入力Pを運動体に対して与えることにより生じた第2のインパルス応答Qを重ね合わせることで、インパルス応答を互いに打ち消すことができる。また、このインパルス応答の重ね合わせを行う際に、式(21)、式(23)、および式(24)を適用することができる。
(実施例1)
次に、本実施の形態1のインプットシェイピング法を利用した時変の振動系の振動抑制方法を、適用した実施例について説明する。
本実施例1では、図8に示すようなロボットアームを模擬した長さL、重さmのアーム21の先端に重さmの搬送物22があるモデル20を用いる。モデル20において、駆動装置24により垂直方向の回転軸23a周りにアーム21および搬送物22が一体的に旋回方向の動作(旋回角度θ)が行われる際に、駆動装置25により水平方向の回転軸23b周りにアーム21および搬送物22が一体的に面内方向の動作(回転角度ψ)が行われる場合を考える。なお、本実施例1のモデル20の動作は、図1に示すロボットアーム10において、面内方向の動きのうちの回転角度ψは変化せずに、回転角度ψだけが変化する場合に相当する。また、モデル20では、アーム21および搬送物22が運動体の一例となっている。
具体的には、図8のモデル20において、アーム21の旋回方向の動きにより生じる慣性モーメントが大きく変化する場合を想定して、アーム21の面内方向の回転角度ψが、10°から90°に0.2秒で変化する運転パターンを考える。ただし、加速運動および減速運動を行う時間をそれぞれ0.05秒、定速運動を行う時間を0.1秒とする。ここで、図9にアーム21の面内方向の運転パターンを示し、図10に慣性モーメントの変化を示す。また、振動抑制方法を適用するにあたって、計算に用いた各種パラメータを表1に示す。
Figure 0005388956
このモデル20において、図9および図10に示す運転パターンにしたがって、旋回方向の動きおよび面内方向の動きを行った場合に、アーム21に生じるインパルス応答(第1のインパルス応答)を図11に示す。図11では、インパルス応答における変位が0となる時刻をt(j=1,2,3...)としている。アーム21の面内方向の運転は0.2秒で終了するため、旋回方向の運転もそれに合わせて0.2秒前後で終了させる。旋回方向の運転は、加速、定速、減速の3区間に分類され、それぞれの区間において自由振動が発生するが、本実施例1では、実際の運動において最も問題となる減速区間のみを対象として自由振動を考える。具体的には、減速時間をt≦t≦tとし、初期条件としてt=tの時点で振動が生じていないものとして減速終了後の自由振動を扱う。
まず、1自由度かつ時変のインパルス応答における振幅の変化による補正を考える。図11に示すインパルス応答に重ね合わせるべきインパルス応答を生じさせる入力の大きさの割合α(t)(ただし、減速時間t≦t≦tについて)を、式(21)を用いて求めた結果を図12に示す。ここで、インパルス応答の重ね合わせにより打ち消し合うために考えなければならない区間は、t≦t≦tの区間であるので、t≦t≦tの区間についてはα(t)=1としている。
次に、1自由度かつ時変系のインパルス応答における固有周期の変化による補正を考える。ΔTが有限の値であるため、インパルス入力の大きさの割合γ(t)は近似となる。ΔT=0.005秒で計算して、時間幅の割合βを求め、式(24)にて表すγ=α(t)/βからγ(t)を求めたものを図13に示す。
図12および図13にて求めたそれぞれの割合αおよびγ(t)を用いて、旋回方向の減速時間t≦t≦tで、F(t)=Aγ(t)の強制加振力をアーム21に対して与えた時の応答、すなわち、残留振動を抑制するように、第1のインパルス応答に対して、第2のインパルス応答の重ね合わせを行った結果を図14に示す。なお、図14では、縦軸に相対角変位(φ[rad]:振幅)、横軸に時間(s)を示している。
図14に示すように、減速時間t≦t≦tの区間で生じる振幅の最大値(すなわち、振動の最大角変位)Rに対して、減速運動終了後の時間t≦tの区間で生じる残留振動の振幅Rはかなり低く抑えられていることが分かる。図14において、最大変位は、時刻t=tまで増大し、時刻t=t以降で減少に転じ、時刻t=tでは理想的に減少されている。
次に減速時間t≦t≦tで、このようなF(t)=Aγ(t)の強制加振力をアーム21に対して与えた時に残留振動が抑えられることをさらにデータ解析を行うことにより確認する。
加振力の継続時間をTiとして、t≦t≦Tで強制加振力をアーム21に対して与えた場合の残留振動の振幅を比較したものを、図15に示す。ただし、t≦t≦Tの区間でF(t)=Aγ(t)、t6<tの区間でF(t)=A、Ti<tの区間でF(t)=0とする。また、図15の横軸は強制加振力の継続時間Tiを表し、縦軸は強制加振力の入力終了後の相対角変位φ(t)の最大値を、入力終了後の相対角変位φ(t)の最大値が一番大きい時(T=tの時)の値を基準としたデシベルで表したもの(振動レベル)である。図15から明らかなように、T=t付近でよく振動が抑制されていることが分かる。
上述の式(5)にて示したように、このような強制加振力は次の式(25)のように表すことができる。
Figure 0005388956
そこで、図13に示すインパルス入力の大きさの割合γに基づいて、振動を抑えることができる強制加振力を求め、求められた強制加振力を発生できるように駆動装置(モータ)による加速度パターンを計算したものと図16に示す。なお、図16では、縦軸が加速度(rad/s)、横軸が時間(s)となっている。また、この図16に示す加速度パターンに基づいて駆動装置が駆動された時に、アーム21に対して付加される強制加振力を図17に示す。なお、図17では、縦軸が強制加振力F(t)、横軸が時間(s)となっている。さらに、図15と同様に外力の継続時間Tを変化させて入力終了後の相対角変位(残留振動)の大きさを比較したもの(振動レベル:デシベル表示)を図18に示す。
図16、図17、および図18に示すように、減速時間t≦t≦tの区間に、図16にて示す加速度パターンに沿った加速度を与えることにより、減速運動終了後における旋回方向の残留振動を効果的に抑制できることが分かる。
ここで、本実施の形態1および実施例1にて説明した振動抑制方法を、加速または減速運動を行う運動体に生じる、1自由度かつ時変の振動を抑制するように適用して、駆動装置を用いて運動体の運転を行うための手順について、図19に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、図19のフローチャートのステップS1において、駆動装置を用いて運転される運動体の運転条件の設定を行う。このような運転条件としては、例えば、運動体の運転開始位置および目標位置の空間座標、動作に要する時間的な制約条件、ならびに搬送物の有無などの条件がある。さらに、運動体の自重や駆動装置の駆動力を運動体に伝達するための減速機の仕様(回転ばね定数)なども運転条件として設定する。
次に、ステップS2において、運動体の運転パターンを設定する。この運転パターンの設定は、ステップS1にて設定された運転条件に基づいて行われる。具体的には、運動体の運転開始位置、目標位置、動作時間、および重量などの運転条件から、運動体の加速、定速、減速の運転区間や時間を設定するとともに、2つの異なる運動体の動作、例えば、旋回方向の動きと面内方向の動きとのそれぞれの運転パターンを設定する。
次に、ステップS3において、設定された運動体の運転パターンに基づいて、残留振動を抑制するような駆動装置による運動体の加速度パターンの計算を行う。この加速度パターンの計算は、運動体における慣性モーメントの変化に伴う、コリオリの力がした仕事を考慮して、上述した式(21)、式(23)、および式(24)などを用いて、α(t)、β、γなどを算出することにより行う。また、この加速度パターンの計算は、特に自由振動が問題となる可能性が高い減速区間において行うことが望ましい。
その後、ステップS4において、計算された加速度パターンの情報に基づいて、駆動装置を駆動して、運動体の加速、定速、減速運転を実施する。運動体において、残留振動が抑制された運転を実施することができる。
なお、ステップS1〜S4までの条件設定や計算処理は、例えば、駆動装置の駆動動作を制御する制御装置において実施することができる。また、このような場合に代えて、上述の計算処理を行うプログラムがインストールされたコンピュータ装置を用いて、ステップS1〜S3の条件設定や計算処理を行い、計算された加速度パターンの情報を、駆動装置の制御装置に入力して、駆動装置の駆動動作が制御装置により制御されても良い。
また、運動体が複数の運転パターンを有するような場合にあっては、個々の運転パターン毎に、残留振動を抑制するような駆動装置による加速度パターンを計算して、制御装置に入力しておき、選択された運転パターンに対応する加速度パターンにて駆動装置の駆動動作を制御することもできる。この運転パターンの選択の際には、適切な運転パターンを選択する手段(例えば、センサなどを用いた手段など)を用いることもできる。
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、時変の振動系において短い時間系を考えて実質的な減衰がないものとした場合の振動抑制方法について説明したが、減衰を考慮した場合の時変の振動系における振動抑制方法について、本実施の形態2にて説明する。例えば、ロボットアームにおいて減速機が用いられている場合には、減速機において摩擦などにより生じる熱エネルギがこのような減衰となる。
時変の振動系において減衰を考慮する場合には、実質的な減衰を考慮しない場合と比して、式(21)のα、すなわち第1のインパルス入力の大きさAに対する第2のインパルス入力の大きさAの割合(比)αが相違することになる。ただし、固有周期の変化に対する補正する方法(式(22)、式(23)、式(24)など)については、実質的な減衰を考慮しない場合と同様に考えることができる。したがって、本実施の形態2では、減衰を考慮した場合のαについてのみ説明する。
時変の振動系において減衰を考慮した場合、式(6)の運動方程式に減衰係数cの項を加えた運動方程式を考え、この運動方程式において時刻tに大きさAのインパルス入力を与えるとすると、式(26)のように表すことができる。
Figure 0005388956
次に、この式(26)の運動方程式に「φの時間による微分」を乗じて時間で積分すると次の式(27)のように表すことができ、式(28)のエネルギの関係式が得られる。
Figure 0005388956
Figure 0005388956
ここで、式(28)のエネルギ関係式における左辺第2項は、減衰により損失するエネルギに相当し、時間により値が変化するため、同第2項を次の式(29)のようにおく。
Figure 0005388956
さらに、式(29)を式(28)に代入して整理すると、次の式(30)のようになる。
Figure 0005388956
ここで、変位が0となる時刻では、ポテンシャルエネルギ(式(30)における左辺第2項)は0となるため、式(30)は次の式(31)のように表すことができる。
Figure 0005388956
また、インパルス入力を与えた時刻では、コリオリの力がする仕事C(t)および減衰による損失エネルギD(t)も0となるため、次の式(32)、式(33)、式(34)、式(35)を導くことができる。
Figure 0005388956
Figure 0005388956
Figure 0005388956
Figure 0005388956
ここで、第1のインパルス入力の大きさAに対する第2のインパルス入力の大きさAの関係をA=αAで表すときに、第1のインパルス応答と第2のインパルス応答とが互いに打ち消し合うような割合αは、式(33)および式(34)より、次の式(36)のように表すことができる。
Figure 0005388956
ここで、次の式(37)の関係を満たせば、第1のインパルス応答と第2のインパルス応答とは互いに打ち消し合うことが可能となる。したがって、減衰を考慮した場合における第1のインパルス入力の大きさAに対する第2のインパルス入力の大きさAの割合αは、次の式(38)のように表すことができる。
Figure 0005388956
Figure 0005388956
したがって、時変の振動系において減衰を考慮した場合には、式(38)で表される割合αを用いることにより、インパルス応答の重ね合わせにより、振動を効果的に抑制することができる。
また、このような減衰の考慮は、例えば、運動体の駆動装置において、減速機などが用いられている場合に実施することが好ましい。一方、駆動装置において、直結モータなどが使用されて減速機が用いられていないような場合であり、かつ減衰が比較的小さいと判断できるような場合には、実質的な減衰は生じないものと判断して、上記実施の形態1の式(21)を適用しても良い。
(実施の形態3)
次に本発明の実施の形態3は、上述した実施の形態1または2の時変の振動系における振動抑制方法を採用して振動を抑制することに加えて、さらに運動体を目的の位置に精度良く移動させることができる振動抑制方法である。
上述したそれぞれの実施の形態1または2におけるインプットシェイピング法を利用した時変の振動系の振動抑制方法では、例えば、半周期遅れたインパルス応答の重ね合わせによる打ち消しを行う場合に、コリオリの力がする仕事を考慮して、インパルス応答の振幅の変化および固有周期の変化に応じたインパルス入力を大きさおよび連続的な付加時間を決めて、振動の抑制を行うものである。しかしながら、時変系の場合は、インパルス応答の振幅と固有周期が変化することに加えて、外力(インパルス入力)の大きさも一定ではないため、大部分のインパルス応答を打ち消し合うことはできるものの、完全に打ち消し合うことは難しい。一方、このような運動体、例えば、ロボットアームの先端に取り付けられたハンドツールでは、目的の位置に精確に移動できるようにその動作制御を行う必要がある。
このような観点から、本実施の形態3では、時変の振動系においてインプットシェイピング法を利用して運動体に生じる振動を抑制しながら、運動体を目的の位置に精度良く移動させることができる振動抑制方法について説明する。なお、本実施の形態3では、上述の実施例1で用いた図8のロボットアームのモデル20において、アーム21および搬送物22の一体的なの旋回方向の動作が行われるとともに、アーム21および搬送物22の一体的な面内方向の回転角度ψが、10°から90°に0.2秒で変化する運転パターン(図9、図10、図11参照)を例として説明する。
アーム21の旋回方向の動作の継続時間を、t=0からt=t、t、tなどインパルス応答が0(ゼロ)になる偶数番目の時刻までに設定する(図11参照)。図8のモデル20の例では、アーム21の旋回方向の動作の継続時間は、0≦t≦tとなる。
次に、図11に示す時変系のインパルス応答において、半周期ごとの一対の隣接する区間、すなわち、区間0≦t≦tと区間t≦t≦tとが、区間t≦t≦tと区間t≦t≦tとが、区間t≦t≦tと区間t≦t≦tとが、それぞれ互いに打ち消し合うようにする。隣接せず離れた区間同士を打ち消し合わせるようにすることも可能ではあるが、隣接区間同士であれば、打ち消し合うインパルス応答の誤差の拡大量が少ないため、より効果的に打ち消し合うことができる。
また、隣接する一対の区間の前半または後半のいずれか一方の区間において、アーム21が上述の運転パターンを実施するために必要な加速度をアーム21に対して与え、他方の区間において付与する加速度は、重ね合わせるべきインパルス応答を生じさせる入力の大きさの割合γに基づいて決定する。通常は、隣接する一対の区間において、前半区間に運転パターン実施のための加速度を与え、重ねるべきインパルス応答を考慮して後半区間の加速度を計算により決定することが好ましい。
具体的には、まず、時変系のインパルス応答における振幅の変化による補正を考える。アーム21の旋回方向の動作の継続時間0≦t≦tにおける3つの一対の区間において、図11に示すインパルス応答に重ね合わせるべきインパルス応答を生じさせる入力の大きさの割合α(t)、入力の時間幅の割合β(t)について、図20、図21に示す。なお、図21では、1/β(t)について示している。
図20、図21に示すように、それぞれの一対の区間における前半区間において、α(t)=1、1/β(t)=1と設定し、後半区間においてインパルス応答の打ち消し合いを考慮したα(t)、1/β(t)を算出している。なお、このインパルス応答の打ち消し合いを考慮したα(t)、1/β(t)を算出は、上述の実施の形態1にて説明した手法により行うことができる。
次に、時変系のインパルス応答における固有周期の変化による補正を考える。図20、図21にて算出したα(t)および1/β(t)を用いて、インパルス入力の大きさの割合γ(t)を算出すると、それぞれの一対の区間におけるγ(t)は、図22に示すようになる。なお、γ(t)の算出は、式(24)を用いて行うことができる。
ここで、それぞれの一対の区間におけるインパルス応答を打ち消し合うためのインパルス入力(強制加振力(外力))F(t)の大きさは、前半区間と後半区間とにおいて図22に示す割合γ(t)の比を満たしていれば良く、必ずしも図22に示すγ(t)の形をした外力パターンに設定する必要はない。
図22に示すそれぞれの一対の区間におけるインパルス入力の大きさの割合γ(t)に基づいて算出されたアーム21に対して付加する外力F(t)のパターンを図23(a)に示す。
さらに、図23(a)の外力F(t)に基づいて、次の式(39)を用いて、それぞれの一対の区間における加速度を算出する。算出された加速度パターンを図23(b)に示す。
Figure 0005388956
また、算出された加速度パターンから、次の式(40)を用いて、その時刻における速度(駆動装置におけるモータの速度)を算出する。ただし、速度は1データ前、すなわち時間間隔Δt前のデータを用いる。速度の算出においては、時刻t、tにおいて連続するように算出する。また、アーム21の運動の開始時(t=0)は静止状態となるため速度ゼロとなり、アーム21の動作の継続時間の最終時刻(t=t)は停止状態となるため速度ゼロとなる。算出された速度パターンを図23(c)に示す。
Figure 0005388956
このようにして、アーム21の旋回方向の動作の全継続時間において、図23(c)に示すように速度パターンが算出されると、時間・速度の関係(すなわち、図23(c)のグラフの面積)よりアーム21の移動距離を算出する。この算出された移動距離が、アーム21の静止位置から目標の位置までの移動距離(すなわち制御指令値)に一致するように、それぞれの一対の区間で与えた加速度パターンを調節する。具体的には、算出された移動距離と制御指令値である移動距離との比を算出して、この比を相似比として用いて、図23(b)に示す全継続時間における加速度パターンおよび図23(a)に示す全継続時間における外力パターンを相似変形させる(すなわち相似比を乗じる)ことで、加速度パターンの調整および外力パターンの調整を行う。
このように調整された加速度パターンおよび外力パターンを用いて、アーム21の動作を行うことで、時変系の振動を抑制することができるとともに、アーム21を精度良く目的の位置に移動させることができる。
なお、選定できる加速度の大きさは、駆動装置の能力(モータの能力など)により制限があるため、加速度パターンを相似変形させる限度は、駆動装置の能力の範囲内とする必要がある。そのため、駆動装置の能力を超えるような場合には、一対の区間の数を増大、すなわち動作の継続時間を増大させて、速度パターン、加速度パターンを再度算出する。
また、時変系では、運動体が一定速度で運動している場合でも加振力が生じるため、一対の隣接区間の前半区間において加速度をゼロと設定し、後半区間で前半区間の振動を打ち消すように加減速値を決めても良い。
本実施の形態3にて説明した条件設定や計算処理は、例えば、駆動装置の駆動動作を制御する制御装置において実施することができる。また、このような場合に代えて、これらの計算処理を行うプログラムがインストールされたコンピュータ装置を用いて、条件設定や計算処理を行い、計算された加速度パターンの情報を、駆動装置の制御装置に入力して、駆動装置の駆動動作が制御装置により制御されるようにしても良い。
上述の実施の形態の説明では、加速または減速運動を行う際に、運動体自体の姿勢の変化(例えば、慣性モーメントの変化)を伴う運動体において生じる、1自由度かつ時変の振動を、インプットシェイピング法を利用して抑制する方法について説明した。このような運動体の代表的な例であるロボットアームでは、その運動動作の自由度を高めるために、多関節の自由度の高い構造が採用されている。そのため、現実的には、ロボットアームが駆動される場合には、複数の自由度かつ時変の振動が発生する。一方、このような運動体において、最も問題となるのは低周波振動である。そのため、このように複数の自由度についての時変の振動が生じるような場合には、複数の自由度の振動の中で、最も低い周波数の振動に対して、本実施の形態の振動抑制方法を適用すれば良い。
また、本実施の形態の振動抑制方法は、運動体が加速運動または減速運動を行うことにより生じる振動に対して適用することができるが、定速運動中において運動体の姿勢が変化することによりコリオリの力が仕事を行うような場合には、このような定速運動を行うことにより生じる振動に対しても適用できる。
また、本実施の形態および実施例では、旋回方向の動きと面内方向の動きとが同時に行われる場合を例として、主に回転運動が行われる場合について説明したが、回転運動以外の運動にも適用することができる。
本発明によれば、加速または減速運動に伴って運動体に生じる、少なくとも1自由度かつ時変の振動を、インプットシェイピング法を用いて抑制する場合に、運動体の姿勢変化に伴って生じるコリオリの力がする仕事を考慮して、第2のインパルス入力の大きさを決定しているため、時間によって第1のインパルス応答の振幅または周期が変化する時変の振動系に対して、第2のインパルス応答を重ね合わせることで効果的に抑制することができる。したがって、ロボットアーム、工作機械、およびクレーンなど、その動作中に姿勢変化を伴うような動作を行う運動体に生じる振動を、フィードフォワード制御にて効果的に抑制することができる。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
10 ロボットアーム(運動体)、11a〜11c 関節、12a〜12b アーム、13 ハンドツール、14a〜14c 回転軸、20 モデル、21 アーム、22 搬送物、24 駆動装置、P 第1のインパルス入力、P 第2のインパルス入力、Q 第1のインパルス応答、Q 第2のインパルス応答

Claims (9)

  1. 加速または減速運動が行われる運動体において、加速または減速運動に伴って運動体に生じる、少なくとも1自由度かつ時変の振動を抑制する振動抑制方法において、
    運動体に付加された第1のインパルス入力によって運動体に生じる第1のインパルス応答に、第1のインパルス応答の変位が0となる時刻において、第2のインパルス入力を運動体に付加して生じる第2のインパルス応答を重ね合わせて、互いに打ち消し合うインプットシェイピング法を適用する場合に、加速または減速運動を行っている間に運動体自体の姿勢が変化することにより生じるコリオリの力がした仕事を考慮して、第1のインパルス入力に対する第2のインパルス入力の大きさを決定する、振動抑制方法。
  2. 駆動装置による外力が付加されて、加速または減速運動が行われる運動体において、加速または減速運動に伴って運動体に生じる、少なくとも1自由度かつ時変の振動を抑制する振動抑制方法であって、
    時刻0において、運動体に付加された大きさAの第1のインパルス入力によって運動体に生じる第1のインパルス応答を、第1のインパルス応答の変位が0となる時刻tにおいて、第1のインパルス入力の大きさAとは異なる大きさAの第2のインパルス入力を運動体に付加して生じる第2のインパルス応答により、互いに打ち消し合う場合において、
    時刻0にて第1のインパルス入力により運動体に与えられるエネルギをE(0)とし、時刻0にて運動体が有する運動エネルギをJ(0)とし、時刻tにて運動体が有する運動エネルギをJ(t)とし、時刻tにて運動体においてコリオリの力がする仕事をC(t)として、第1のインパルス入力の大きさAに対する第2のインパルス入力の大きさAの割合αを数1により算出し、
    算出された割合αを用いて、第2のインパルス入力の大きさAを決定して、時刻tにおいて第2のインパルス入力が運動体に付加されるように、駆動装置により運動体に付加される外力を制御する、振動抑制方法。
    Figure 0005388956
  3. 駆動装置による外力が付加されて、加速または減速運動が行われる運動体において、加速または減速運動に伴って運動体に生じる、少なくとも1自由度かつ時変の振動を抑制する振動抑制方法であって、
    時刻0から時間幅ΔTの間に、連続的に付加された大きさAの第1のインパルス入力によって運動体に生じる第1のインパルス応答を、時刻tから時間幅(β・ΔT)の間に、大きさ(A・γ)の第2のインパルス入力を連続的に付加して生じる第2のインパルス応答により、互いに打ち消し合う場合において、
    時刻0にて第1のインパルス入力により運動体に与えられるエネルギをE(0)とし、時刻0にて運動体が有する運動エネルギをJ(0)とし、時刻tにて運動体が有する運動エネルギをJ(t)とし、時刻tにて運動体においてコリオリの力がする仕事をC(t)として、時間幅ΔTの間における第1のインパルス入力の総入力(A・ΔT)に対する時間幅(β・ΔT)における第2のインパルス入力の総入力(A・γ・β・ΔT)の割合αを数2により算出するとともに、時間幅の割合βと、インパルス入力の大きさの割合γとを、数3を満たすように設定し、
    設定された時間幅の割合βおよび大きさの割合γを用いて、第2のインパルス入力の付加時間幅および大きさを決定して、第2のインパルス入力が運動体に連続的に付加されるように、駆動装置により運動体に付加される外力を制御する、振動抑制方法。
    Figure 0005388956
    Figure 0005388956
  4. 駆動装置による外力が付加されて、加速または減速運動が行われる運動体において、加速または減速運動に伴って運動体に生じる、少なくとも1自由度かつ時変の振動を抑制する振動抑制方法であって、
    時刻0において、運動体に付加された大きさAの第1のインパルス入力によって運動体に生じる第1のインパルス応答を、第1のインパルス応答の変位が0となる時刻tにおいて、第1のインパルス入力の大きさAとは異なる大きさAの第2のインパルス入力を運動体に付加して生じる第2のインパルス応答により、互いに打ち消し合う場合において、
    時刻0にて第1のインパルス入力により運動体に与えられるエネルギをE(0)とし、時刻0にて運動体が有する運動エネルギをJ(0)とし、時刻tにて運動体が有する運動エネルギをJ(t)とし、時刻tにて運動体においてコリオリの力がする仕事をC(t)とし、時刻tにて減衰による損失エネルギをD(t)として、第1のインパルス入力の大きさAに対する第2のインパルス入力の大きさAの割合αを数4により算出し、
    算出された割合αを用いて、第2のインパルス入力の大きさAを決定して、時刻tにおいて第2のインパルス入力が運動体に付加されるように、駆動装置により運動体に付加される外力を制御する、振動抑制方法。
    Figure 0005388956
  5. 駆動装置による外力が付加されて、加速または減速運動が行われる運動体において、加速または減速運動に伴って運動体に生じる、少なくとも1自由度かつ時変の振動を抑制する振動抑制方法であって、
    時刻0から時間幅ΔTの間に、連続的に付加された大きさAの第1のインパルス入力によって運動体に生じる第1のインパルス応答を、時刻tから時間幅(β・ΔT)の間に、大きさ(A・γ)の第2のインパルス入力を連続的に付加して生じる第2のインパルス応答により、互いに打ち消し合う場合において、
    時刻0にて第1のインパルス入力により運動体に与えられるエネルギをE(0)とし、時刻0にて運動体が有する運動エネルギをJ(0)とし、時刻tにて運動体が有する運動エネルギをJ(t)とし、時刻tにて運動体においてコリオリの力がする仕事をC(t)とし、時刻tにて減衰による損失エネルギをD(t)として、時間幅ΔTの間における第1のインパルス入力の総入力(A・ΔT)に対する時間幅(β・ΔT)における第2のインパルス入力の総入力(A・γ・β・ΔT)の割合αを数5により算出するとともに、時間幅の割合βと、インパルス入力の大きさの割合γとを、数6を満たすように設定し、
    設定された時間幅の割合βおよび大きさの割合γを用いて、第2のインパルス入力の付加時間幅および大きさを決定して、第2のインパルス入力が運動体に連続的に付加されるように、駆動装置により運動体に付加される外力を制御する、振動抑制方法。
    Figure 0005388956
    Figure 0005388956
  6. 第1および第2のインパルス入力の大きさに基づいて運動体の加速または減速運動による移動距離を算出し、当該算出された移動距離に対する運動体の加速または減速運動による目標移動距離の比を算出し、当該比を相似比として第1および第2のインパルス入力値に乗じて第1および第2のインパルス入力の大きさを調整して決定する、請求項2から5のいずれか1つに記載の振動抑制方法。
  7. 加速および減速運動に加えて、運動体が定速運動する場合においても、第2のインパルス入力を付加して、運動体に生じる、少なくとも1自由度かつ時変の振動を抑制する、請求項1から6のいずれか1つに記載の振動抑制方法。
  8. 運動体に生じる時変の振動系が、複数の自由度を有する場合には、最も低い周波数の自由度の振動系に対して、第2のインパルス入力を運動体に付加して振動を抑制する、請求項1から7のいずれか1つに記載の振動抑制方法。
  9. 予め設定された加速または減速運動における運動体の運転条件および運転パターンの情報に基づいて、運転中に運動体に付加される第1のインパルス入力および第1のインパルス応答を算出するとともに、算出された第1のインパルス応答を打ち消すような第2のインパルス入力を算出し、
    算出された第1のインパルス入力および第2のインパルス入力を発生させる駆動装置の加速度パターンの情報を作成し、
    作成された加速度パターンの情報に基づいて、駆動装置により運動体の加速または減速運動を行う際に、駆動装置より運動体に付加される外力を制御する、請求項1から8のいずれか1つに記載の振動抑制方法。
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