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JP5384395B2 - 分布定数型ノイズフィルタ - Google Patents

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JP5384395B2 JP2010029613A JP2010029613A JP5384395B2 JP 5384395 B2 JP5384395 B2 JP 5384395B2 JP 2010029613 A JP2010029613 A JP 2010029613A JP 2010029613 A JP2010029613 A JP 2010029613A JP 5384395 B2 JP5384395 B2 JP 5384395B2
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Description

本発明は複数の陽極端子を有し伝送線路構造を有するコンデンサ形式の分布定数型ノイズフィルタに関し、特に電荷供給能力に優れた分布定数型ノイズフィルタに関する。
デジタル技術はIT(Information Technology)産業を支える重要な技術である。最近ではコンピュータや通信関連機器だけではなく、家庭電化製品や車載用機器にもLSI等を用いたデジタル回路技術が使用されている。
多くのデジタル機器においては、クロックが供給されるLSIの動作に伴い発生する電流や電圧の高周波的な変化が供給電源系に対してノイズの発生源となる。LSIで発生した上記の電源ノイズは、LSI近傍にとどまらず、プリント回路基板等の実装回路基板内の広い範囲に伝達し、信号配線やグランド配線に誘導結合し、場合によってはプリント回路基板や信号ケーブルから電磁波として漏洩する。最近のデジタル回路に搭載されているLSIは動作周波数が高速化しており、更に、消費電流も増加傾向にある。一方で、LSIの高集積化によりその駆動電圧は低下傾向にある。このため、上記のような電源ノイズが引き起こす電磁干渉問題が深刻になってきている。
この対策には電源ノイズの発生源であるLSIを供給電源系から高周波的に分離すること、すなわち電源デカップリングの手法が有効である。電源デカップリングを行うためには2つの機能が求められる。
1つ目はクロック動作に伴うLSIに印加される電源電圧の変動を抑制する機能である。LSIの電源電圧の変動は、LSIがスイッチング動作を行う際に、電源ピンとグランドピンの間に流れる高周波電流と配線インダクタンスにより誘導される。配線インダクタンスは電源ピンおよびグランドピンから離れるほど大きくなるため、その抑制にはLSIの近くに電荷供給能力を持つコンデンサにより電源ラインをバイパスする方法が一般的に用いられる。従来から、このような電源電圧の変動の抑制のためのコンデンサとしては、LSIの近傍に配置できる小型のセラミックコンデンサが使用されてきた。
2つ目の機能はLSIのスイッチング動作で発生した電圧変動を供給電源系へ伝達するのを抑制する機能、すなわちノイズを吸収する機能である。上記のバイパスに用いるコンデンサもノイズ吸収効果があるが、インダクタンスもノイズ吸収効果があるため、一般的にはコンデンサだけでなく、フェライトビーズ等のインダクタンス素子とコンデンサを組み合わせて使われる。従来のノイズフィルタにおいては、広帯域の周波数の電源ノイズを除去するためには複数のコンデンサ素子とインダクタンス素子を組み合わせる必要があったが、近年では特許文献1等の分布定数型ノイズフィルタが提案されている。分布定数型ノイズフィルタは伝送線路構造を有する3端子コンデンサ形式のノイズフィルタであって、1つの素子でコンデンサやインダクタンス素子などの複数の素子を用いたノイズフィルタと同等以上のノイズ吸収能力を有する素子である。
図5は特許文献1に記載の従来の分布定数型ノイズフィルタの構成を示す図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は図5(a)のBB断面図である。図5(a)において、分布定数型ノイズフィルタ51は、直方体形状の分布定数回路形成部52の長辺方向に突出した一対の電極部53a、53bを備えた3端子コンデンサ構造を有する。図5(b)に示すように、分布定数回路形成部52は略平板形状の金属板54を誘電体層55を介在させて対向金属層56で挟んだストリップ線路と呼ばれる伝送線路構造となっている。金属板54の分布定数回路形成部52の両端から突出した部分が電極部53a、53bである。このような構成の分布定数型ノイズフィルタ素子は、電極部53a、53bがそれぞれ電極端子57および58を介して電源および負荷回路にそれぞれに接続されるとともに、対向金属層56が陰極端子59を介して接地電位等の固定電位に接続されることにより、周波数帯域の広いノイズフィルタとして機能する。
特開2002−164760号公報
しかしながら、従来の3端子コンデンサ形式の分布定数型ノイズフィルタはノイズ吸収特性に優れているものの、誘電体から突出している電極部の構造が従来の2端子型コンデンサと同じであるため、ノイズフィルタ単体の電荷供給能力は従来の2端子型コンデンサと同程度であった。分布定数型ノイズフィルタは、分布定数回路部を形成する物理的な寸法が必要なため、通常のセラミックコンデンサに比べ製品サイズが大きくなる。そのため、電源配線パターンによってはLSIから離して配置する必要がある。そこで、従来の分布定数型ノイズフィルタは、ノイズ吸収に関しては十分な効果を発揮するものの、電荷供給能力は十分ではないため、LSIに十分な電荷を供給するためには従来と同様に複数の小型セラミックコンデンサによりバイパスする必要があり、電源デカップリング回路全体のコストが高くなるという問題があった。
そこで、本発明の課題は、広い周波数領域においてノイズ吸収能力が優れ、かつ、従来の分布定数型ノイズフィルタに比べて電荷供給能力の優れた分布定数型ノイズフィルタを提供することにある。
上記課題を達成するため、本発明の分布定数型ノイズフィルタは、電源に接続される第1の電極部と電子部品に接続される第2の電極部とを端部に有する第1の導電体と、該第1の導電体の一部と誘電体を挟んで対向配置され、固定電位に接続される第2の導電体とを備え、前記第1の導電体と前記第2の導電体が対向配置された領域に形成された、伝送線路構造を有する分布定数回路形成部を備え、前記第1の電極部または前記第2の電極部から入力された電気信号が前記伝送線路構造を通過して前記第2の電極部または前記第1の電極部に出力するように構成された分布定数型のイズフィルタにおいて、前記第1の電極部または前記第2の電極部の少なくとも一方の電極部は、前記伝送線路構造に互いに異なる方向から電気信号が入力するように配置された少なくとも2つの部分電極からなることを特徴とする。
ここで、前記第1の電極部を構成する部分電極の少なくとも1つと前記第2の電極部を構成する部分電極の少なくとも1つが互いに隣接して配置され、該隣接して配置された2つの部分電極の間に前記分布定数回路形成部の一部が配置されていてもよい。
この場合、前記第1の電極部を構成する2つの部分電極が前記分布定数回路形成部を挟んで両側に対峙して配置され、前記第2の電極部を構成する2つの部分電極が前記分布定数回路形成部を挟んで両側に対峙して配置され、かつ、前記第1の電極部を構成する2つの部分電極と前記第2の電極部を構成する2つの部分電極が互いに隣接して配置され、前記分布定数回路形成部の一部が前記隣接して配置された前記第1の電極部の部分電極と前記第2の電極部の部分電極との間に配置され、前記分布定数回路形成部の平面形状が十字状であってもよい。
また、前記第1の電極部または前記第2の電極部から入力された電気信号が前記第2の電極部または前記第1の電極部に出力する経路の少なくとも一部において、該経路を構成する伝送線路構造を有する分布定数回路形成部の幅が前後の経路部分よりも狭い部分を有していてもよい。
この場合、前記第1の電極部および前記第2の電極部はそれぞれ2つの部分電極を有し、前記第1の電極部または前記第2の電極部から入力された電気信号が前記第2の電極部または前記第1の電極部に出力する経路の中央部分の前記電気信号の伝搬方向をX方向とするとき、前記第1の電極部および前記第2の電極部を構成する部分電極のX方向の長さは、互いに隣接する前記第1の電極部の部分電極と前記第2の電極部の部分電極との間のX方向の間隔よりも大きくてもよい。
具体的には、本発明による分布定数型ノイズフィルタは、陽極となる一つの金属板を誘電体が覆い、更にその外側に陰極となる金属膜が覆った分布定数回路形成部と上記の金属板の一部が分布定数回路形成部の端部方向に誘電体から突出して構成される入力および出力側の陽極となる電極部から構成され、その電極部となる突出部分を入力側または出力側の少なくとも一方の電極部において少なくとも2つ以上設け、この複数の突出部を部分電極としている。これらの複数の部分電極は複数の陽極端子にそれぞれ接続され、金属膜は陰極端子に接続される。
なお、本発明の分布定数型ノイズフィルタにおいても、従来と同様に、分布定数回路形成部の平面形状および分布定数回路形成部の実効厚さは分布定数回路形成部の誘電率に基づいて設計される。
以上のように、本発明によれば伝送線路構造を有する多端子のコンデンサ形式の分布定数型ノイズフィルタが得られる。すなわち、分布定数型ノイズフィルタにおいて電極取り出し部を複数設けることにより電荷供給能力の優れた分布定数型ノイズフィルタが得られ、バイパスコンデンサの数量を削減でき、結果的にデカップリング回路のコスト低減ができる。
すなわち、上記のように部分電極、すなわち陽極電極を複数設けることにより分布定数回路形成部に流入する電流経路が増えるため、分布定数回路形成部に電源電圧・電流、LSIの入出力電圧・電流などの電気信号を入出力する際のインピーダンス、すなわちインプットインピーダンスを下げることができる。更に分布定数回路を形成しているため、広帯域に渡って第1および第2の電極部間に電力を伝達する際のインピーダンス、すなわち伝達インピーダンスを低くすることができる。これにより、電荷供給能力が優れた分布定数型ノイズフィルタを提供することができる。
但し、本発明においては、従来の分布定数型ノイズフィルタに比べ、電気信号が第1の電極部から第2の電極部に到る間に通過する分布定数回路形成部の距離が短くなり、分布定数回路形成部を介さず第1と第2の電極部間で直接伝達する電力が僅かに増えるためノイズ吸収能力は若干低下するが、従来の2端子型コンデンサに比べると十分なノイズ吸収能力を有する。
また、本発明による分布定数型ノイズフィルタの構成の1つでは、隣接して配置された2つの部分電極の間に前記分布定数回路形成部の一部が配置される。例えば、分布定数回路形成部の形状を十字型に設定し、その一部を挟んで部分電極を配置することにより、部分電極間にもコンデンサを形成できるため、容量が大きく電荷供給時能力の大きな分布定数型ノイズフィルタを提供できる。
本発明の他の構成では、分布定数型ノイズフィルタにおいて、突出した電極幅を大きくして分布定数回路形成部への電荷供給能力を大きくし、この場合でも電気信号が伝搬する分布定数回路形成部の伝送路の長さが短くならないように、伝送路の途中にその幅が狭いくびれ部分を設けている。このような構成にすることにより、分布定数回路形成部の長さを短くすることなく電流経路を太くすることができるため、インプットインピーダンスを更に下げた分布定数型ノイズフィルタを提供することができる。
以上のように、本発明によれば、広い周波数領域においてノイズ吸収能力が優れ、かつ、従来の分布定数型ノイズフィルタに比べて電荷供給能力の優れた分布定数型ノイズフィルタが得られる。
本発明の第1の実施の形態における分布定数型ノイズフィルタの構成を示す図であり、図1(a)は斜視図、図1(b)は電源およびLSIとの接続状態を示す平面図、図1(c)は底面図、図1(d)は図1(b)のAA断面の分布定数回路形成部の部分を示す図。 本発明の第2の実施の形態の分布定数型ノイズフィルタの構成を示す斜視図。 本発明の第3の実施の形態の分布定数型ノイズフィルタの構成を示す斜視図。 比較例1に係る3端子型の分布定数型ノイズフィルタの斜視図。 従来の分布定数型ノイズフィルタの構成を示す図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は図5(a)のBB断面図。
本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態における分布定数型ノイズフィルタの構成を示す図であり、図1(a)は斜視図、図1(b)は電源およびLSIとの接続状態を示す平面図、図1(c)は底面図である。また、図1(d)は図1(b)のAA断面の分布定数回路形成部の部分を示す図である。本実施の形態の分布定数型ノイズフィルタは、図1(a)、図1(b)、図1(d)に示すように、DC電源に接続される第1の電極部40と電子部品に接続される第2の電極部41とを端部に有する第1の導電体である金属板6と、金属板6の一部と誘電体7を挟んで対向配置され、固定電位に接続される第2の導電体である金属膜9とを備え、金属板6と金属膜9が対向配置された領域に形成された、伝送線路構造を有する分布定数回路形成部2を備え、第1の電極部40または第2の電極部41から入力された電気信号が前記伝送線路構造を通過して第2の電極部41または第1の電極部40に出力するように構成されている。ここで、第1の電極部40は、前記伝送線路構造に互いに対向する方向から電気信号が入力するように配置された2つの部分電極11、12からなり、第2の電極部41も、前記伝送線路構造に互いに対向する方向から電気信号が入力するように配置された2つの部分電極13、14からなっている。
本実施の形態においては、分布定数回路形成部2は直方体形状を有し、部分電極11と12、および部分電極13と14は分布定数回路形成部2の互いに対向する短辺方向に突出した金属板6の端部に形成されている。すなわち、本実施の形態の分布定数型ノイズフィルタは4つの部分電極11、12、13、14を備えた5端子コンデンサ素子構造を有している。
また、本実施の形態の分布定数型ノイズフィルタは、4つの部分電極11、12、13、14がそれぞれ接続されるリードフレーム3、および陽極端子5と陰極端子15を有するプリント配線板4を備えている。図1(c)に示すように、プリント配線板4の4隅の陽極端子5同士は電気的に絶縁されている。陰極端子15には金属膜9が接続される。分布定数回路形成部2は、部分電極11、12、13、14が接続されていない部分においては、図1(d)に示すように、金属板6を誘電体7が覆い、更にその外側を導電性高分子層8および金属膜9で覆った同軸線路構造をしている。このような構成のノイズフィルタは第1の電極部40と第2の電極部41との間を伝達するノイズに対して高いノイズ吸収効果がある。
本実施の形態の分布定数型ノイズフィルタは、電源および電子部品に接続される実装基板に設置される。すなわち、分布定数型ノイズフィルタの部分電極11、12は実装基板上でDC電源に接続され、部分電極13、14はLSIにそれぞれ接続される。この時部分電極11と12および部分電極13と14は実装基板上で等電位となるように接続する。一方、陰極端子15はグランドに接続される。このように配置することにより本実施の形態の分布定数型ノイズフィルタは電荷供給能力に優れ、広い周波数帯域で高いノイズ吸収能力を有する。
図2は本発明の第2の実施の形態における分布定数型ノイズフィルタの構成を示す斜視図である。図2に示すように、本実施の形態の分布定数型ノイズフィルタは、分布定数回路形成部の形状以外の基本的な構成は第1の実施の形態と同じであるが、分布定数回路形成部21を挟んで両側に対峙して配置された第1の電極部22の部分電極22a、22bと第2の電極部23の部分電極23a、23bとの間に分布定数回路形成部21の一部が配置され、分布定数回路形成部21の平面形状が十字状となっている。
本実施の形態に係る分布定数型ノイズフィルタは、第1の実施の形態と同様なプリント配線板を実装基板として設置されるが、第1の実施の形態ではデッドスペースとなっている部分電極の間の領域10の部分にまで分布定数回路形成部、すなわちコンデンサとして機能する部分を形成しているため、容量性の高い分布定数型ノイズフィルタが実現できる。
図3は本発明の第3の実施の形態における分布定数型ノイズフィルタの構成を示す斜視図である。本実施の形態の分布定数型ノイズフィルタは、分布定数回路形成部の形状と部分電極の形状以外の基本的な構成は第1の実施の形態と同じである。図3に示すように、第1の電極部35から入力された電気信号が第2の電極部36に出力する経路の中央部分において、その経路を構成する分布定数回路形成部の幅がその前後の経路部分よりも狭いくびれ部分33を有している。
また、第1の電極部35から入力され第2の電極部36に出力する電気信号のくびれ部分33での伝搬方向をX方向とするとき、それぞれ第1および第2の電極部を構成する部分電極35a、35bおよび36a、36bのX方向の電極幅31は、互いに隣接する部分電極35a、36a間および35b、36b間の間隔よりも大きい。
すなわち、本実施の形態では、分布定数回路形成部への電荷供給能力を大きくするため部分電極の電極幅31を大きくし、その際に電気信号が伝搬する分布定数回路形成部の伝送路の長さが短くならないように、くびれ部分33を設けている。本実施の形態に係る分布定数型ノイズフィルタは、第1の実施の形態と同様なプリント配線板を実装基板として設置されるが、第1の実施の形態にくらべ電極幅31を大きく設計できる。これにより、分布定数型ノイズフィルタに入力される電流経路が太くなるためインプットインピーダンスを更に小さくすることができる。
以下に、上述した本発明の実施の形態の分布定数型ノイズフィルタの具体的な実施例について、固体アルミ電解コンデンサを使用した場合を例として説明する。
(実施例1)
図1に示す本発明の分布定数型ノイズフィルタを作製して、その特性を評価した。先ず、母材を作製するために、両面が拡面化された箔状のアルミニウム(アルミ箔)を用意し、その両面に陽極酸化により誘電体を形成した。このアルミ箔はアルミ電解コンデンサの電極用途として市販されているもので、公称化成電圧が5V、厚みが100μmである。このアルミ箔を、図1の部分電極と分布定数回路形成部の形状となるようなH型状に切断して母材とした。ここで各部分電極となる陽極電極の突出部の1つの幅は1.2mmとした。次いで作製したH型状の母材の陽極電極の突出部の先端から所定の部分、すなわち部分電極となる部分を残して分布定数回路形成部2までの間の母材を覆うように計4箇所の絶縁部42を形成した。この絶縁部はエポキシ樹脂を主成分とする絶縁樹脂を母材の両面(表裏)に線状に塗布し、120℃で乾燥・硬化させることにより形成したものである。
ここで両側を絶縁部で囲まれた母材の中央部の外側が陰極領域となるが、この領域の母材の両面に先ず導電性高分子であるポリピロールからなる導電性高分子層を塗布し、次いでその面上にグラファイト層、銀ペースト層をそれぞれ順に塗布した後、一定温度、時間の乾燥・固化を行い、同軸線路構造を有する分布定数回路形成部2を形成した。ここで分布定数回路形成部2の短辺の長さは2.2mm、分布定数回路形成部2の長辺の長さから2つの部分電極の幅を引いた長さを2.0mmとした。一方、絶縁部42の外側の部分電極となる領域では、母材両表面のうち片側の誘電体層および拡面化層をYAGレーザで除去し、得られた母材金属の露出面に陽極リードとして銅箔を超音波溶接によって接続した。銅箔の厚みは、陰極を形成している導電性高分子層およびグラファイト層、銀ペースト層の総厚みと同程度の厚みとした。以上の方法により5端子コンデンサ素子を得た。
次に厚さ100μmのFR−4からなるコア材と厚さ20μmの銅層からなる両面銅張板を用意し、通常のプリント配線板と同じ製法でケミカルエッチングを施し、素子搭載面と実装面にそれぞれ陽極端子および陰極端子を形成し、両面の端子間をスルーホールで電気的に接続することにより、外部端子である幅5.72mm、長さ5.0mmのプリント配線板4を作製した。
次いで、プリント配線板4の素子搭載面の陽極端子および陰極端子に銀ペーストを塗布し上記の5端子コンデンサ素子を接着した。その後、一定温度・時間で乾燥硬化した後、素子を覆うように外装樹脂による樹脂モールドを行い5端子型の分布定数型ノイズフィルタを得た。
なお、製品サイズとなるプリント配線板の外形サイズは後述の実施例2および3においても共通とした。
(実施例2)
図2に示す本発明の分布定数型ノイズフィルタを作製して、その特性を評価した。作製した分布定数型ノイズフィルタの素子部、すなわち5端子コンデンサ素子の基本構成は実施例1の場合と同様であり、プリント配線板の構成も同一である。実施例1との違いは分布定数回路形成部の形状である。すなわち、実施例1では分布定数回路形成部が直方体であるのに対し、実施例2では図2のように、直方体の中央部の両側に陽極電極の突出部と同じ寸法の凸部を設け、平面形状が十字状となるようにしている。なお、陽極電極の突出部と中央の分布定数回路形成部の突出部との間の間隔は0.5mmとし、分布定数回路形成部の突出部の幅を1.0mmとした。以上の構成により実施例1と同様に実施例2の5端子型の分布定数型ノイズフィルタを得た。
(実施例3)
図3に示す本発明の分布定数型ノイズフィルタを作製して、その特性を評価した。作製した分布定数型ノイズフィルタの素子部、すなわち5端子コンデンサ素子の基本構成は実施例1および2の場合と同様であり、プリント配線板の構成も同一である。実施例1および2との違いは図3のような分布定数回路形成部の形状と部分電極の形状である。実施例3では陽極電極の突出部の幅、すなわち部分電極の電極幅31を1.8mmとし、電気信号が通過する部分であるくびれ部分33の分布定数回路形成部の形状を、長さ34が2.0mm、幅32が0.8mmの矩形状となるようにした。以上の構成により実施例1および2と同様に実施例3の5端子型の分布定数型ノイズフィルタを得た。
(比較例1)
本発明の効果を確認するため、従来の構造を有する3端子型の分布定数型ノイズフィルタを作製し評価した。図4は比較例1に係る3端子型の分布定数型ノイズフィルタの斜視図である。コンデンサ素子の基本構造、製法は実施例1〜3の場合と同様である。アルミ箔の形状を幅2.2mm、長さ4.4mm、厚み100μmの直方体として3端子コンデンサ素子を作製した。なお、比較例1では長手方向の両側を絶縁部46で囲まれた母材の中央部が分布定数回路形成部45となるが、その形状は幅2.2mm、長さ1.85mmとした。また、3端子コンデンサ素子の外形と外部端子となるプリント配線板の外形との間のマージン部分は外装樹脂との接着面となるが、このマージン部分の幅が実施例1〜3と同じとなるようにプリント配線板の外形サイズを設定した。この時のプリント配線板の外形寸法は幅2.8mm、長さ5.0mmである。以上の設計に基づき比較例1の3端子型の分布定数型ノイズフィルタを作製した。
(比較例2)
比較例2では従来の2端子型のアルミ固体電解コンデンサを作製して、その特性を評価した。コンデンサ素子の基本構造、製法およびプリント配線板の製法は実施例1〜3と同様である。ただし、比較例2ではコンデンサ素子の形状を従来の2端子コンデンサ素子と同様とした。母材となるアルミ箔の形状は幅2.2mm、長さ3.8mm、厚み100μmの直方体であり、また母材から一端の陽極電極と絶縁部を除いた陰極領域は幅2.2mm、長さ2.6mmとした。また、素子外形から外部端子となるプリント配線板の外形までのマージン部分は、比較例1と同様に実施例1〜3と同じになるようにプリント配線板の外形サイズを設定した。この時のプリント配線板の外形寸法は幅2.8mm、長さ4.45mmである。以上の設計に基づき比較例2の2端子型の固体電界コンデンサを作製した。
以上の方法にて作製した実施例1〜3および比較例1の分布定数型ノイズフィルタおよび比較例2の2端子型固体電界コンデンサに関して電気特性として高周波領域におけるインプットインピーダンスおよび伝達インピーダンスを測定し、各インピーダンスの200MHzのリアクタンス値からESL(等価直列インダクタンス)を換算した。各インピーダンス特性は、高周波プローブおよびネットワークアナライザを用いて測定し、分布定数型ノイズフィルタについては、一端を終端接続した際の2ポートのSパラメータから算出した。また、今回の実施例1〜3、比較例1、2の試作品は高さが同一であるため、120Hzにおける容量を素子面積、すなわちプリント配線板の面積で割った値を容量密度とし、各実施例および比較例でその値を比較した。容量はLCRメータを用いて測定した。
5端子型の分布定数型ノイズフィルタである実施例1〜3および3端子型分布定数型ノイズフィルタである比較例1の高周波領域(200MHz)におけるインプットインピーダンスのESL、伝達インピーダンスのESLおよび容量密度を表1に示す。但しESLの値は比較例2を100%とした相対値であり、容量密度は比較例2を1とした場合の相対値である。
Figure 0005384395
表1の結果より、本発明における実施例の5端子型の分布定数型ノイズフィルタは比較例1の従来の3端子型の分布定数型ノイズの場合に比べインプットインピーダンスのESLが30%〜40%程度改善されており、電荷供給能力が向上している事がわかる。また、実施例1と2を比較すると、実施例2の方が容量密度が向上しており、同じ素子面積で容量が10%程度向上することがわかる。さらに実施例1と実施例3を比較するとインプットインピーダンスのESLが10%下がっており、電荷供給能力がさらに向上していることがわかる。実施例1〜3の伝達インピーダンスのESLに関しては、比較例1に比べ若干大きくなるが、比較例2の従来の2端子型コンデンサに比べ大幅に低減しており、広い周波数領域においてノイズ吸収能力が優れ、ノイズフィルタとして十分効果があることがわかる。
以上説明したように、本発明による分布定数型ノイズフィルタにより、広い周波数領域においてノイズ吸収能力が優れ、従来の分布定数型ノイズフィルタより電荷供給能力の優れたデバイスが得られる。すなわち、本発明をデカップリング回路に適用すれば、LSI等に使用する電荷供給用のバイパスコンデンサの数量を削減し、回路全体のコストを削減することができる。
なお、本発明は上記の実施の形態や実施例に限定されるものではないことはいうまでもなく、目的や用途に応じて分布定数回路形成部や部分電極の構造、形状などを設計可能である。例えば、第1および第2の電極部を構成する部分電極の数は3以上であってもよく、一方の電極部だけ2以上の部分電極を有していてもよい。また、部分電極の分布定数回路形成部に対する配置場所も任意に設計可能である。また、分布定数回路形成部の平面形状も矩形以外の円、楕円、多角形などの形状も可能である。
2、21、45、52 分布定数回路形成部
3 リードフレーム
4 プリント配線板
5 陽極端子
6、54 金属板
7 誘電体
8 導電性高分子層
9 金属膜
10 領域
11、12、13、14、22a、22b、23a、23b、35a、35b、36a、36b 部分電極
15、59 陰極端子
22、35、40 第1の電極部
23、36、41 第2の電極部
31 電極幅
32 幅
33 くびれ部分
34 長さ
42、46 絶縁部
51 分布定数型ノイズフィルタ
53a、53b 電極部
55 誘電体層
56 対向金属層
57、58 電極端子

Claims (5)

  1. 電源に接続される第1の電極部と電子部品に接続される第2の電極部とを端部に有する第1の導電体と、該第1の導電体の一部と誘電体を挟んで対向配置され、固定電位に接続される第2の導電体とを備え、前記第1の導電体と前記第2の導電体が対向配置された領域に形成された、伝送線路構造を有する分布定数回路形成部を備え、前記第1の電極部または前記第2の電極部から入力された電気信号が前記伝送線路構造を通過して前記第2の電極部または前記第1の電極部に出力するように構成された分布定数型ノイズフィルタにおいて、前記第1の電極部または前記第2の電極部の少なくとも一方の電極部は、前記伝送線路構造に互いに異なる方向から電気信号が入力するように配置された少なくとも2つの部分電極からなることを特徴とする分布定数型ノイズフィルタ。
  2. 前記第1の電極部を構成する部分電極の少なくとも1つと前記第2の電極部を構成する部分電極の少なくとも1つが互いに隣接して配置され、該隣接して配置された2つの部分電極の間に前記分布定数回路形成部の一部が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の分布定数型ノイズフィルタ。
  3. 前記第1の電極部を構成する2つの部分電極が前記分布定数回路形成部を挟んで両側に対峙して配置され、前記第2の電極部を構成する2つの部分電極が前記分布定数回路形成部を挟んで両側に対峙して配置され、かつ、前記第1の電極部を構成する2つの部分電極と前記第2の電極部を構成する2つの部分電極が互いに隣接して配置され、前記分布定数回路形成部の一部が前記隣接して配置された前記第1の電極部の部分電極と前記第2の電極部の部分電極との間に配置され、前記分布定数回路形成部の平面形状が十字状であることを特徴とする請求項2に記載の分布定数型ノイズフィルタ。
  4. 前記第1の電極部または前記第2の電極部から入力された電気信号が前記第2の電極部または前記第1の電極部に出力する経路の少なくとも一部において、該経路を構成する伝送線路構造を有する分布定数回路形成部の幅が前後の経路部分よりも狭い部分を有することを特徴とする請求項1に記載の分布定数型ノイズフィルタ。
  5. 前記第1の電極部および前記第2の電極部はそれぞれ2つの部分電極を有し、前記第1の電極部または前記第2の電極部から入力された電気信号が前記第2の電極部または第1の電極部に出力する経路の中央部分の前記電気信号の伝搬方向をX方向とするとき、前記第1の電極部および前記第2の電極部を構成する部分電極のX方向の長さは、互いに隣接する前記第1の電極部の部分電極と前記第2の電極部の部分電極との間のX方向の間隔よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の分布定数型ノイズフィルタ。
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