以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
本発明は、本発明に係る一般式(1)で表される化合物であるフッ素ペンタエリスリトール誘導体をインクジェット記録用インク組成物に含むことを特徴とする。
本発明においては、特に本発明に係る一般式(1)で表される化合物であるフッ素ペンタエリスリトール誘導体をインクジェット記録用インク組成物に含ませることにより、ノズル撥液性に優れ、低表面張力で、特に、インクの経時安定性に優れ、経時後もノズル撥液性に優れて吐出安定性に優れ、長期に渡って高画質な画像を形成可能なインクジェット記録用インク組成物が得られる。
本発明に係る一般式(1)で表される化合物であるフッ素ペンタエリスリトール誘導体はフッ素系界面活性剤であり、該本発明に係るフッ素系界面活性剤は、疎水性基であるヘキサフルオロプロペン3量体置換基を少なくとも3つ以上有することで、非水系/水系のいずれの場合でも溶解させることができ、かつインク組成物の表面張力を効果的に低下させることが可能である。インク組成物を低表張化にすることで、画像の白スジを抑制し、良好な画像を形成することが可能となる。
本発明に係るフッ素系界面活性剤をインク中に含有させることにより、接液によるノズル面の撥液性低下を抑制し、長期間安定した吐出を可能とする。撥液性の低下は、インク中の汚れ成分がノズル面に付着して撥液性を劣化させることが原因であり、この汚れ成分とは、インク構成成分のいずれかまたは、インク構成成分が経時で変化したものであると推測され、例えば活性光線硬化型インクの場合、経時で暗反応が進行して生成した極微量分の重合物である。このような汚れ成分を含むインクは、粘度や粒子径といった各物性に変化はないにも関わらず、ノズル面に付着して撥液性を劣化させる。本発明に係るフッ素系界面活性剤はその特異的構造を有することにより、インク中で汚れ成分である重合物に吸着して、ノズル面との親和性を低下させるので付着を防止できると推測される。また、水系インクの汚れ成分とは、顔料や分散剤のうちの極微量分が経時でノズル面に付着し蓄積したものであり、同じようにインク中の本発明に係るフッ素系界面活性剤によって付着を防止されていると推測される。
以下、本発明を詳細に説明する。
(一般式(1)で表される化合物)
前記一般式(1)において、Aはアルキレン基を表す。n1〜n4はそれぞれ独立に、n1は1〜80の整数を表し、n2〜n4は0〜79の整数を表す。且つn1+n2+n3+n4=4〜80を満たす。X1〜X4はそれぞれ独立に、水素原子または上記置換基(F−1)を表し、X1〜X4のうち少なくとも3つは該置換基(F−1)である。
Aで表されるアルキレン基としては、エチレン基またはプロピレン基が挙げられる。好ましくはエチレン基である。
n1〜n4は好ましくはn1+n2+n3+n4=4〜40であり、より好ましくはn1+n2+n3+n4=4=30である。
本発明に係る一般式(1)で表される化合物の中でも、前記一般式(2)で表される化合物を好ましく用いることができる。
一般式(2)において、n1〜n4はそれぞれ独立に、n1は1〜30の整数を表し、n2〜n4は0〜29の整数を表す。且つn1+n2+n3+n4=4〜30を満たす。
本発明に係る一般式(1)で表される化合物の中でも好ましく用いられる化合物として例えば、下記の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
(平均値:1H−NMRスペクトル測定において、3.4〜4.2ppmで示されるエチレン基のシグナルの積分値を意味する。)
上記、本発明に係る一般式(1)で表される化合物は特開2008−133245号段落番号[0038]〜[0049]に記載の方法に準じて合成することができる。
(インクジェット記録用インク組成物)
本発明のインクジェット記録用インク組成物(以下、単にインク組成物またはインクともいう。)とは、一般式(1)で表される化合物を含有するインク組成物であることを特徴とする。該インク組成物中における水の構成比が10〜90質量%である水系のインク、または0.1〜10質量%の非水系のインクであることが好ましい。(以下、本発明の水系のインクまたは本発明の非水系のインクともいう。)。
以下、本発明の水系インク、ならびに非水系インクの詳細について説明する。
≪水系インク≫
本発明の水系インクについて説明する。
本発明の水系インクは、顔料、水溶性樹脂、有機溶剤、水、界面活性剤、等を含有することができる。
(顔料)
本発明の水系インクに使用できる顔料としては、従来公知のものを特に制限なく使用でき、水分散性顔料、溶剤分散性顔料等何れも使用可能であり、例えば、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料、及びカーボンブラック等の無機顔料を好ましく用いることができる。この顔料は、インク中で分散された状態で存在させ、この分散の方式としては、自己分散、界面活性剤を用いた分散、ポリマー分散、マイクロカプセル分散の何れでもよいが、マイクロカプセル分散がインクの長期保存安定性の点から特に好ましい。
不溶性顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、アゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
好ましく用いることのできる具体的顔料としては、以下の顔料が挙げられる。
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー15:3、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
本発明の水系インクに含有される顔料の分散状態の平均粒子径は、50nm以上、200nm未満であることが好ましい。顔料分散体の平均粒子径が50nm以上、200nm未満であると、顔料分散体の安定性や、インクの保存安定性の観点から好ましい。
顔料分散体の粒子径測定は、動的光散乱法、電気泳動法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができるが、動的光散乱法による測定が簡便でこの粒子径領域の精度がよく多用される。
顔料は、分散剤及びその他所望する諸目的に応じて必要な添加物と共に分散機により分散して用いることが好ましい。分散機としては、従来公知のボールミル、サンドミル、ラインミル、高圧ホモジナイザー等が使用できる。中でもサンドミルによる分散により製造されるインクの粒度分布がシャープであり好ましい。また、サンドミル分散に使用するビーズの材質はビーズ破片やイオン成分のコンタミネーションの点から、ジルコニアまたはジルコンが好ましい。さらに、このビーズ径としては0.3〜3mmが好ましい。
上記分散において高分子分散剤を用いることができる。本発明でいう高分子分散剤とは、分子量が5000〜200000の高分子成分を有する。高分子分散剤の種類としては、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体からなるブロック共重合体、ランダム共重合体及びこれらの塩、ポリオキシアルキレン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等を挙げることができる。
酸性の高分子分散剤の場合、中和塩基で中和して添加することが好ましい。ここで中和塩基は特に限定されないが、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン等の有機塩基であることが好ましい。
また、高分子分散剤の添加量としては、顔料に対し10〜100質量%であることが好ましい。
顔料分散物(顔料分散体)としては、顔料を樹脂で被覆したいわゆるカプセル顔料が特に好ましい。顔料を樹脂で被覆する方法としては公知の種々の方法を用いることができるが、好ましくは、展相乳化法や酸析法の他に、顔料を重合性界面活性剤を用いて分散し、そこへモノマーを供給し、重合しながら被覆する方法から選択することが好ましい。
より好ましい方法としては、水不溶性樹脂をメチルエチルケトン等の有機溶剤に溶解し、さらに塩基にて樹脂中の酸性基を部分的、もしくは完全に中和後、顔料及びイオン交換水を添加し、分散したのち、有機溶剤を除去、必要に応じて加水し作製する製造方法が好ましい。
顔料と樹脂の質量比率は、顔料:樹脂比で100:40〜100:150の範囲で選択することができる。特に画像耐久性と射出安定性やインク保存性が良好な点から100:60〜100:110の範囲であることが好ましい。
(水溶性樹脂)
本発明の水溶性インクには、少なくともカルボキシル基を有するセグメントと疎水セグメントをモノマー成分として重合した共重合体であり、アミンにより中和溶解した水溶性樹脂(以下、水溶性樹脂と略記)を用いることができる。水溶性樹脂は、前記理由からインク中では安定に溶解しているが、乾燥過程では疎水性となる樹脂が好ましい。
このような樹脂としては、樹脂中に疎水性成分と親水性成分を有するものを設計して用いることができる。この際、親水性成分としては、前記のカルボキシル基を有する不飽和ビニルモノマーであり、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド等が挙げられる。好ましく用いられる疎水セグメントとしては、アクリル酸エステル(アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等)、メタクリル酸エステル(メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル等)、スチレン等が挙げられる。
水溶性樹脂の分子量としては、平均分子量で、3000〜30000のものを用いることが好ましく、より好ましい分子量の範囲は7000〜20000である。
水溶性樹脂のTgは、−30〜100℃程度のものを用いることが好ましく、より好ましいTgの範囲は−10〜80℃である。
水溶性樹脂のより好ましい酸価としては、90〜250程度のものを用いることができ、重合方法としては、溶液重合を用いることが好ましい。
水溶性樹脂のカルボキシル基を有するセグメントは、部分的あるいは完全にアミンで中和されている必要がある。アミンとしては、アンモニア、トリエチルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジ−n−ブチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、2−アミノー2−メチル−1−プロパノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−メチルアミノエタノール等を好ましく用いることができる。
特に、沸点が200℃未満のアミン類で中和することは、乾燥時にアミンが揮発しやすく疎水性を速く高める点において好ましい。
水溶性樹脂は、遊離ポリマーとして0.5〜7.0質量%の範囲で用いることが好ましい。より好ましくは、1〜4質量%の範囲である。
本発明でいう遊離ポリマーとは、インク中において顔料に吸着していない水溶性ポリマーを示し、インクを30000rpmで2時間遠心分離した上澄液を用い、GPCにより遊離ポリマー量を測定することができる。
(有機溶剤)
本発明における水系インクには、以下に挙げる有機溶剤を適宜添加することが好ましい。例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のアセテート類、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールジアルキルエーテル類等が挙げられる。
特に好ましい有機溶剤は、グリコールジアルキルエーテル類であり、インクの保存安定性に優れている。最も好ましい有機溶剤はジエチレングリコールジエチルエーテルである。
有機溶剤の添加量としては、10〜35質量%の範囲で用いることが好ましく、より好ましくは15〜30質量%の範囲である。この範囲であれば、良好な斑耐性が得られる。なお、有機溶剤は単独で用いても、複数併用してもよい。
本発明の水系インクには、前記の有機溶剤以外にも有機溶剤を添加することができる。
具体的には、水性液媒体が好ましく用いられ、例として、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)等が挙げられる。
(水)
本発明の水系インクに用いられる水は、乾燥性とインクの保存安定性を高める観点から50質量%以上含有することが好ましく、より好ましい含有量は60質量%以上である。
(界面活性剤)
本発明の水系インクに用いることができる界面活性剤として、本発明の一般式(1)で表される化合物を用いることで、低表面張力且つノズル撥液性に優れ、長期に渡って安定に高画質な画像を形成可能なインクが得られるということが本発明者の検討で分かった。
表面張力は、30mN/m以下が好ましく、28mN/m以下に調整することが記録媒体への濡れ性を高め、高画質な画像を得るために好ましい。
本発明の水系インクに添加される本発明の一般式(1)で表される化合物は、0.01質量%〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05質量%〜0.3質量%である。添加量が0.05質量%以上であると本発明で所望する効果を得ることができる観点から好ましい。一方、0.3質量%以下であると、水系インク中における一般式(1)で表される化合物の溶解性の観点から好ましい。
本発明の水系インクでは、上記説明した以外に、必要に応じて、出射安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、多糖類、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、活性光線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができ、例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の活性光線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤等を挙げることができる。
上記構成からなる本発明の水系インクの粘度としては、25℃で1〜40mPa・sが好ましく、より好ましくは5〜40mPa・sであり、さらに好ましくは5〜20mPa・sである。
次に、本発明の非水系インクの詳細について説明する。
≪非水系インク≫
本発明の非水系インクとは、活性光線硬化型インクであり、重合性モノマー、光重合開始剤からなる活性光線硬化型組成物に対し、分散剤、色材及び適宜その他の添加剤を配合、分散して調製される。
本発明の非水系インクである活性光線硬化型インクにおける重合性モノマーの含有率は、好ましくは1〜97質量%であり、より好ましくは30〜95質量%である。
活性光線硬化型組成物としては、ラジカル重合性組成物およびカチオン重合性組成物を用いることができ、各組成物を構成する重合性モノマーおよび光重合開始剤は、例えば特開2008−23980号、WO2006/129530号、特願2007−169627号、特開2005−8758号等に記載されている化合物を挙げることができる。
以下、ラジカル重合性組成物およびカチオン重合性組成物について説明する。
<ラジカル重合性組成物>
本発明におけるラジカル重合性組成物について説明する。
ラジカル重合性組成物には、少なくとも、単官能モノマー、二官能モノマー等のラジカル重合性モノマーと、光重合開始剤を含有することができる。
(ラジカル重合性モノマー)
単官能モノマーとしては、各種(メタ)アクリレートモノマーを用いることができ、例えば、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ラクトン変性可とう性アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート等の単官能モノマー等が挙げられる。
二官能モノマーとしては、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート等の二官能モノマー等が挙げられる。
三官能以上の多官能モノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の三官能以上の多官能モノマーが挙げられる。
この他、重合性のオリゴマー類も、モノマー同様に配合可能である。重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、直鎖アクリルオリゴマー等が挙げられる。
なお、感作性、皮膚刺激性、眼刺激性、変異原性、毒性などの観点から、上記モノマーの中でも、特に、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、イソボルニルアクリレート、ラクトン変性可とう性アクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
更に、この中でも、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
ラジカル重合性組成物における、単官能モノマーの含有率は、35質量%以上であることが望ましく、インクの反応性の低下、感度低下や残留モノマーの増加、インク及び画像の臭気増大等を防止する観点から、70質量%以下が好ましい。
(光重合開始剤)
ラジカル重合性組成物における光重合開始剤としては、アリールアルキルケトン、オキシムケトン、チオ安息香酸S−フェニル、チタノセン、芳香族ケトン、チオキサントン、ベンジルとキノン誘導体、ケトクマリン類などの従来公知の光重合開始剤が使用できる。
光重合開始剤については、「UV・EB硬化技術の応用と市場」(シーエムシー出版、田畑米穂監修/ラドテック研究会編集)に詳しく記載されているが、中でも、アシルフォスフィンオキシドやアシルホスフォナートは、感度が高く、光重合開始剤の光開裂により吸収が減少するため、インクジェット方式のように1色当たり5μm〜12μmのインク厚みを有するインク画像において、内部硬化に特に有効である。特に本発明の様に開始剤の含有量が多いインクでは、内部硬化性を得るために非常に有効である。具体的には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドなどが好ましい。また、前述のモノマー同様、安全性を考慮した選択では、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア(登録商標)1173)が好適に用いられる。光重合開始剤の好ましい添加量は、単官能モノマーの20質量%以上である。
尚、光重合開始剤を増量することにより、インク或いはインク画像の臭気が強くなることを抑制する観点から、光重合開始剤の分子量を250以上に調整することが好ましく、分子量を250以上に調整することにより、光重合開始剤の揮発性はきわめて低くなり十分な臭気抑制効果が得られる。また、光重合開始剤の量子効率即ち硬化感度、モノマー溶解性の観点からは、分子量を2000以下に調整することが好ましい。
本発明では、インク膜の記録媒体への接着性・追従性を高める観点から、波長または強度を変えて2段階に活性光線の照射を分けることができる。また、光重合開始剤についても、吸光波長の異なる2種以上を併用することが内部硬化性を高められることから特に好ましい。
<カチオン重合性組成物>
本発明におけるカチオン重合性組成物について説明する。
カチオン重合性組成物には、少なくとも、カチオン重合性モノマーと光重合開始剤を含有することができる。
(カチオン重合性モノマー)
カチオン重合性モノマーとしては、オキシラン基を有する化合物を用いることが硬化時の収縮が少ない点で好ましい。オキシラン基を有する化合物としては、上述の単官能モノマーに加えて、あらゆる公知の脂環式エポキシ化合物を用いることができる。例えば、カチオン重合性モノマーとしては、特開平6−9714号、特開2001−31892号、特開2001−40068号、特開2001−55507号、特開2001−310938号、特開2001−310937号、特開2001−220526号に例示されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
カチオン重合性組成物においては、カチオン重合性モノマーとして、単官能または2官能のエポキシモノマーを用いることが好ましい。
エポキシ化合物としては、以下の芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシド等が挙げられる。
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルであり、例えば、ビスフェノールA、あるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロヘキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
また、カチオン重合性組成物においては、カチオン重合性モノマーとして、単官能または2官能のオキセタンモノマーを併用して用いることが好ましい。
オキセタン化合物としては、上述の単官能オキセタン化合物に加えて、特開2001−220526号公報、同2001−310937号公報に記載されている公知のあらゆる官能または2官能オキセタン化合物を使用できる。
さらにカチオン重合性組成物においては、以下に挙げるようなビニルエーテル化合物を用いることもできる。例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジまたはトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、i−プロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
これらのビニルエーテル化合物の内、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジまたはトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
(光重合開始剤)
カチオン重合性組成物における光重合開始剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物を用いることができる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C6F5)4 −、PF6 −、AsF6 −、SbF6 −、CF3SO3 −塩を挙げることができる。
本発明で用いることのできるオニウム化合物の具体的な例を、以下に示す。
第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができ、その具体的な化合物を、以下に例示する。
第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができ、以下にその具体的な化合物を例示する。
第4に、鉄アレン錯体を挙げることができる。
カチオン重合性組成物における光重合開始剤の好ましい添加量は、カチオン重合組成物の1〜10質量%の範囲であり、更に好ましくは2〜5質量%の範囲である。
次に、活性光線硬化型インクの詳細について説明する。
<活性光線硬化型インク>
本発明における活性光線硬化型インクは、上記ラジカル重合性組成物またはカチオン重合組成物と共に、顔料及び適宜その他の添加剤を含有する。
(顔料)
本発明における活性光線硬化型インクは、各種公知の有機顔料を含有することができる。特に、本発明においてカチオン/ラジカル重合性組成物に含有される少なくとも1種の有機顔料は、酸性処理、塩基性処理等の表面処理された有機顔料を含有することが好ましい。
本発明において、好ましく用いることのできる有機顔料としては、活性光線硬化型マゼンタインク用には、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 185、C.I.Pigment Red 202、C.I.Pigment Violet 19、活性光線硬化型イエローインク用には、C.I.Pigment Yellow 138、C.I.Pigment Yellow 120、C.I.Pigment Yellow 150、C.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 180、活性光線硬化型シアンインクには、C.I Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:4、等が挙げられ、これらの表面処理された有機顔料を複数回水洗処理、カラム吸着処理、等の精製処理をさらに加えることによって、インク中の4級アンモニウム塩の含有量を5〜500ppmに制御することが必要である。
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。
活性光線硬化型インクには、顔料としてカーボンブラック系顔料を0.1質量%以上、2質量%未満含有することが好ましい。
カーボンブラック系顔料としては公知のものが使用でき、例えば、C.I.Pigment Black 7等が挙げられる。さらに、三菱化学社製のNo.2300、No.900、MCF−88、No.33、No.40、No.45、No.52、No.44、No.47、MA7、MA8、MA11、MA100、No.2200B、コロンビア社製のRaven700、Raven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、キャボット社製のRegal400R、Regal330R、Regal660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400、デグサ社製ColorBlac k FW1、ColorBlack FW2、ColorBlack FW2V、ColorBlackFW18、ColorBlackFW200、ColorBlackS150、ColorBlackS160、ColorBlackS170、Printex35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Printex 140V、SpecialBlack6、SpecialBlack5、SpecialBlack4A、SpecialBlack4、NIPex35、NIPex60、NIPex70、NIPex90、NIPex150、関西熱化学(株)製のマックスソーブG−40、マックスソーブG−15、マックスソーブG−08等を使用することができる。
さらに、カーボンブラックとしては、BET比表面積が大きく、粒子径の小さなものが好ましく、200〜300m2/gのものが好ましい。BET比表面積が300m2/g以下であると顔料粒子径が小さくなりすぎず、分散安定性の観点から好ましく、逆に200m2/g以上であると、顔料粒子径が大きすぎず吐出安定性の観点から好ましい。
また、DBP吸油量としては50〜150ml/100g以下のものが好ましく、50〜100ml/100gのものがより好ましい。
また、カーボンブラック系顔料としては、上記市販のものの他、各種文献に記載されている公知のものが利用できる。文献に関してはカラーインデックス(The Society of Dyers and Colourists編)、「改訂新版顔料便覧」日本顔料技術協会編(1989年刊)、「最新顔料応用技術」CMC出版(1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版(1984年刊)W.Herbst,K.Hunger共著によるIndustrial Organic Pigments(V CH Verlagsgesellshaft、1993年刊)等がある。
(高分子分散剤)
また、顔料の分散を行う際に、本発明においては高分子分散剤を用いることが好ましい。高分子分散剤としては、酸価と塩基価を両方持ち、かつ、酸価が塩基価より大きいものを用いることがより安定な分散特性を得られ好ましく、例えば、味の素ファインテクノ社のPBシリーズ、川研ファインケミカルのヒノアクトシリーズ等が挙げられる。これらの高分子分散剤は、顔料100質量部に対し、1〜60質量部添加することが好ましい。さらに好ましくは顔料100質量部に対し、35〜60質量部添加することが好ましい。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤及び分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
分散媒体は、重合性化合物を用いて行うことが好ましい。また本発明でいう酸価あるいは塩基価は、電位差滴定により求めることができ、例えば、色材協会誌61,[12]692−698(1988)に記載の方法で測定することができる。顔料や分散剤を複数用いる場合は、その質量平均として表示することができる。
顔料の分散は、顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.25μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜5μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、高分子分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性を維持することができる。
本発明のインクにおいては、色材濃度としては、インク全体の0.5〜10質量%であることが好ましい。
顔料分散剤としては、塩基性のアンカー部を有するものを用いることが好ましく、かつ櫛形構造を有する高分子分散剤を用いることがさらに好ましい。
本発明で用いることのできる顔料分散剤の具体例としては、Avecia社製ソルスパース9000、同17000、同18000、同19000、同20000、同24000SC、同24000GR、同28000、同32000、味の素ファインテクノ社製アジスパーPB821、同PB822、楠本化成社製PLAAD ED214、同ED251、DISPARLON DA−325、同DA−234、EFKA社製EFKA−5207、同5244、同6220、同6225等が挙げられる。また、顔料分散剤と併せて顔料誘導体(シナジスト)を用いることができる、顔料誘導体の具体例としては、Avecia社製ソルスパース5000、同12000、同22000、EFKA社製EFKA−6746、同6750等が挙げられる。
(その他添加剤)
(環状エステル化合物、環状エーテル化合物)
活性光線硬化型インクは4〜10員環の脂肪族環状エステル化合物または5員環以上の環状エーテル化合物を含有することが、硬化性や各種基材への密着性が向上するため好ましい。
環状エステル化合物としては、4〜10員環の脂肪族環状エステル化合物である。具体的には、ε−カプロラクトン−6−ヒドロキシヘキサン酸−1,6ラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、α−メチル−β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタノラクトン、クマリン、テトロン酸、ピロン、フタリド、3−メチル−1,4−ジオキサ−2,5−ジオン、p−ジオキサノン、モリホリンジオン、モリホリン等である。また、その使用に当たってはそれらの混合物でも構わない。
環状エーテル化合物としては、5員環以上の環状エーテル化合物である。さらに好ましくは、炭酸エステル構造を有しない環状エーテル化合物である。具体的には、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン、クラウンエーテル(12−crown−4等)、1,2−ジメチルテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2−メチルジオキソラン、4−メチルジオキソラン等である。
4〜10員環の脂肪族環状エステル化合物及び5員環以上の環状エーテル化合物の含有量は、1〜10質量%であることが好ましい。
(塩基性化合物)
活性光線硬化型インクは、上記ラジカル/カチオン重合性組成物の他に、塩基性化合物を0.001質量%以上、0.05質量%未満含有することが好ましい。さらに好ましくは、0.001質量%以上、0.02質量%未満である。
塩基性化合物は保存安定性を改良する効果がある。また、塩基性化合物を含有することで、吐出安定性が良好となるばかりでなく、低湿下においても硬化収縮による皺の発生が抑制される。これらの目的には、公知のあらゆる塩基性化合物を用いることができるが、代表的なものとして塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミン等の塩基性有機化合物等が挙げられる。
塩基性アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属のアルコラート(ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等)が挙げられる。前記の塩基性アルカリ土類金属化合物としては、同様にアルカリ土類金属の水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、アルカリ金属のアルコラート(マグネシウムメトキシド等)が挙げられる。
塩基性有機化合物としては、アミンならびにキノリン及びキノリジン等含窒素複素環化合物等が挙げられるが、これらの中でも、光重合性モノマーとの相溶性の面からアミンが好ましく、例えば、オクチルアミン、ナフチルアミン、キシレンジアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルアニリン、キヌクリジン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン及びトリエタノールアミン等が挙げられる。
なお、塩基性化合物は単独で使用しても複数を併用して使用してもよい。
(その他)
活性光線硬化型インクには、上記説明した以外にさまざまな添加剤を用いることができる。例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。
(含水率)
活性光線硬化型インクは、カールフィッシャー法による含水率が0.1質量%以上、1.5質量%未満である状態で容器に密閉され保存されることが好ましい。含水率は、用いる重合性化合物により多少違いがでるが、例えば、30℃、80%RHの高湿下でインクを十分調湿した後に容器に密閉したり、25℃、60%RH程度の中湿下でインクを調液する場合には水を若干添加・溶解させることで、上記範囲の含水率にすることができる。0.1質量%以上であると保存によるインク粘度のバラツキが保たれ、記録ヘッドからの吐出安定性の観点から好ましい。特に、吐出するインク液滴量が小さい場合に好ましい。また、1.5質量%以下であると重合開始剤や活性剤の溶解性の観点から好ましい。
(粘度)
活性光線硬化型インクは、活性光線硬化型インクの25℃における粘度が7〜40mPa・sであることが、硬化環境(温度・湿度)に関係なく吐出が安定し、良好な硬化性を得るために好ましい。
(インクジェット記録方法)
以下、本発明の水系インク、あるいは非水系インクを用いた場合のインクジェット記録方法について説明する。
<水系インクを用いた場合のインクジェット記録方法>
(記録媒体)
本発明の水系インクは、普通紙、コート紙、インクジェット専用紙等、吸水性の記録媒体はもとより、ポリ塩化ビニルシート等の非吸収性媒体へのプリントに適している。
非吸水性記録媒体としては、高分子シート、ボード(軟質塩ビ、硬質塩ビ、アクリル板、ポリオレフィン系等)、ガラス、タイル、ゴム、合成紙等が挙げられる。
ポリ塩化ビニルからなる記録媒体の具体例としては、SOL−371G、SOL−373M、SOL−4701(以上、ビッグテクノス株式会社製)、光沢塩ビ(株式会社システムグラフィ社製)、KSM−VS、KSM−VST、KSM−VT(以上、株式会社きもと製)、J−CAL−HGX、J−CAL−YHG、J−CAL−WWWG(以上、株式会社共ショウ大阪製)、BUS MARK V400 F vinyl、LITEcal V−600F vinyl(以上、Flexcon社製)、FR2(Hanwha社製)LLBAU13713、LLSP20133(以上、桜井株式会社製)、P−370B、P−400M(以上、カンボウプラス株式会社製)、S02P、S12P、S13P、S14P、S22P、S24P、S34P、S27P(以上、Grafityp社製)、P−223RW、P−224RW、P−249ZW、P−284ZC(以上、リンテック株式会社製)、LKG−19、LPA−70、LPE−248、LPM−45、LTG−11、LTG−21(以上、株式会社新星社製)、MPI3023(株式会社トーヨーコーポレーション社製)、ナポレオングロス 光沢塩ビ(株式会社二樹エレクトロニクス社製)、JV−610、Y−114(以上、アイケーシー株式会社製)、NIJ−CAPVC、NIJ−SPVCGT(以上、ニチエ株式会社製)、3101/H12/P4、3104/H12/P4、3104/H12/P4S、9800/H12/P4、3100/H12/R2、3101/H12/R2、3104/H12/R2、1445/H14/P3、1438/One Way Vision(以上、Inetrcoat社製)、JT5129PM、JT5728P、JT5822P、JT5829P、JT5829R、JT5829PM、JT5829RM、JT5929PM(以上、Mactac社製)、MPI1005、MPI1900、MPI2000、MPI2001、MPI2002、MPI3000、MPI3021、MPI3500、MPI3501(以上、Avery社製)、AM−101G、AM−501G(以上、銀一株式会社製)、FR2(ハンファ・ジャパン株式会社製)、AY−15P、AY−60P、AY−80P、DBSP137GGH、DBSP137GGL(以上、株式会社インサイト社製)、SJT−V200F、SJT−V400F−1(以上、平岡織染株式会社製)、SPS−98、SPSM−98、SPSH−98、SVGL−137、SVGS−137、MD3−200、MD3−301M、MD5−100、MD5−101M、MD5−105(以上、Metamark社製)、640M、641G、641M、3105M、3105SG、3162G、3164G、3164M、3164XG、3164XM、3165G、3165SG、3165M、3169M、3451SG、3551G、3551M、3631、3641M、3651G、3651M、3651SG、3951G、3641M(以上、Orafol社製)、SVTL−HQ130(株式会社ラミーコーポレーション製)、SP300 GWF、SPCLEARAD vinyl(以上、Catalina社製)、RM−SJR(菱洋商事株式会社製)、Hi Lucky、New Lucky PVC(以上、LG社製)、SIY−110、SIY−310、SIY−320(以上、積水化学工業株式会社製)、PRINT MI Frontlit、PRINT XL Light weight banner(以上、Endutex社製)、RIJET 100、RIJET 145、RIJET165(以上、Ritrama社製)、NM−SG、NM−SM(日栄化工株式会社製)、LTO3GS(株式会社ルキオ社製)、イージープリント80、パフォーマンスプリント80(以上、ジェットグラフ株式会社製)、DSE 550、DSB 550、DSE 800G、DSE 802/137、V250WG、V300WG、V350WG(以上、Hexis社製)、Digital White 6005PE、6010PE(以上、Multifix社製)等が挙げられる。
(インクジェット記録方法)
本発明の水系インクでは、記録メディアを加熱してプリントすることが好ましい。記録メディアを加熱することで、インクの乾燥増粘速度が著しく向上し、高画質が得られるようになる。また、画像の耐久性も向上する。加熱温度としては、記録メディアの記録表面温度を40〜90℃になるように加熱することが好ましい。40℃以上であると、画質、画像耐久性、乾燥所要時間の観点から好ましく、90℃以下であると、インク射出の安定性、それによるプリント安定性の観点から好ましい。より好ましくは、記録メディアの記録表面温度を40〜60℃とすることである。
加熱方法としては、メディア搬送系もしくはプラテン部材に発熱ヒーターを組み込み、記録メディア下方より接触式で加熱する方法や、ランプ等により下方、もしくは上方から非接触で加熱方法を選択することができる。
本発明の水系インクを吐出して画像形成を行う際に使用するインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等、何れの吐出方式を用いても構わない。
<非水系インクを用いた場合のインクジェット記録方法>
(記録媒体)
本発明の非水系インク(活性光線硬化型インク)で用いることのできる記録媒体としては、通常の非コート紙、コート紙等の他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチック及びそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルムを挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類等が使用できる。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。これらの記録媒体の中でも、特に熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムへ画像を形成する場合に本発明の構成は、有効となる。これらの基材は、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱等により、フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、インク膜が基材の収縮に追従し難い。
これら、各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは大きく異なり、記録媒体によってインク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。本発明の構成では、表面エネルギーの低いOPPフィルム、OPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含む、表面エネルギーが35〜60mN/mの広範囲の記録媒体に良好な高精細な画像を形成できる。
本発明において、包装の費用や生産コスト等の記録媒体のコスト、プリントの作製効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)な記録媒体を使用する方が有利である。
(インク着弾後の総インク膜厚)
本発明の活性光線硬化型インクでは、記録材料上にインクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜20μmであることが好ましい。スクリーン印刷分野の活性光線硬化型インクジェット記録では、総インク膜厚が20μmを越えているのが現状であるが、記録材料が薄いプラスチック材料であることが多い軟包装印刷分野では、前述した記録材料のカール・皺の問題でだけでなく、印刷物全体のこし・質感が変わってしまうという問題が有るため、過剰な膜厚のインク吐出は好ましくない。尚、ここで「総インク膜厚」とは記録材料に描画されたインクの膜厚の最大値を意味し、単色でも、それ以外の2色重ね(2次色)、3色重ね、4色重ね(白インクベース)のインクジェット記録方式で記録を行った場合でも総インク膜厚の意味するところは同様である。
(インクの吐出条件)
本発明の活性光線硬化型インクを用いて画像形成する場合、インクの吐出条件としては、記録ヘッド及びインクを35〜100℃に加熱し、吐出することが吐出安定性の点で好ましい。活性光線硬化型インクジェットインクは、温度変動による粘度変動幅が大きく、粘度変動はそのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク温度を上げながらその温度を一定に保つことが必要である。インク温度の制御幅としては、設定温度±5℃、好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
(インク着弾後の光照射条件)
本発明の活性光線硬化型インクを用いた画像形成方法においては、活性光線の照射条件として、インク着弾後0.001秒〜1.0秒の間に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001秒〜0.5秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングが出来るだけ早いことが特に重要となる。
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明では画像形成方法において、これらの何れの照射方法も用いることができる。
(インクジェット記録装置)
以下、本発明に用いることができる記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。尚、図面の記録装置はあくまでも本発明に用いることができる記録装置の一態様であり、本発明に用いることができる記録装置はこの図面に限定されない。
図1は本発明に用いることができるインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す正面図である。記録装置1は、ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。この記録装置1は、記録材料Pの下にプラテン部5が設置されている。プラテン部5は、活性光線を吸収する機能を有しており、記録材料Pを通過してきた余分な活性光線を吸収する。その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
記録材料Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行う。
ヘッドキャリッジ2は記録材料Pの上側に設置され、記録材料P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
尚、図1ではヘッドキャリッジ2がホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)、ホワイト(W)の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行っているが、実施の際にはヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の色数は適宜決められるものである。
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された活性光線硬化型インクを、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録材料Pに向けて吐出する。記録ヘッド3により吐出されるUVインクは色材、重合性モノマー、開始剤等を含んで組成されており、活性光線の照射を受けることで開始剤が触媒として作用することに伴なうモノマーの架橋、重合反応によって硬化する性質を有する。
記録ヘッド3は記録材料Pの一端からヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に記録材料Pの他端まで移動するという走査の間に、記録材料Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対して、本発明の活性光線硬化型インクをインク滴として吐出し、該着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
上記走査を適宜回数行い、1領域の着弾可能領域に向けてインクの吐出を行った後、搬送手段で記録材料Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再びヘッド走査手段による走査を行いながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対して活性光線硬化型インクの吐出を行う。
上述の操作を繰り返し、ヘッド走査手段及び搬送手段と連動して記録ヘッド3から活性光線硬化型インクを吐出することにより、記録材料P上に活性光線硬化型インク滴の集合体からなる画像が形成される。
照射手段4は特定の波長領域の活性光線を安定した露光エネルギーで発光する活性光線ランプ及び特定の波長の活性光線を透過するフィルターを備えて構成される。ここで、活性光線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ、エキシマーレーザー、活性光線レーザー、冷陰極管、熱陰極管、ブラックライト、LED(light emitting diode)等が適用可能である。
照射手段4は、記録ヘッド3がヘッド走査手段の駆動による1回の走査によって活性光線硬化型インクを吐出する着弾可能領域のうち、記録装置(インクジェットプリンタ)1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。
照射手段4はヘッドキャリッジ2の両脇に、記録材料Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録材料Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録材料Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。又、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にすると更に好ましい。
ここで、照射手段4で照射される活性光線の波長は、照射手段4に備えられた活性光線ランプ又はフィルターを交換することで適宜変更することができる。
本発明のインクは、非常に吐出安定性が優れており、ラインヘッド方式のインクジェット記録装置を用いて画像形成する場合に、特に有効である。
図2は、ラインヘッド方式のインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す上面図である。図2で示したインクジェット記録装置は、ラインヘッド方式と呼ばれており、ヘッドキャリッジ2に、各色のインクジェット記録ヘッド3を、記録材料Pの全幅をカバーするようにして、複数個、固定配置されている。
一方、ヘッドキャリッジ2の下流側には、同じく記録材料Pの全幅をカバーするようにして、インク印字面全域をカバーするように配置されている照射手段4が設けられている。照明手段4に用いられる活性光線ランプは、図1に記載したのと同様のものを用いることができる。
このラインヘッド方式では、ヘッドキャリッジ2及び照射手段4は固定され、記録材料Pのみが、搬送されて、インク出射及び硬化を行って画像形成を行う。
図3は、本発明に用いることができるピエゾ型インクジェットノズルを備えたラインヘッド方式のインクジェット記録装置の一例を示す図である。
11はヘッドユニットを示し、111、112、113、114は各々記録ヘッドを示し、12は搬送機構を示し、13は加熱部を示し、14は温度制御プレートを示し、Pは記録材料を示す。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「部」あるいは「%」の表示は、「質量部」あるいは「質量%」を表す。
実施例1
≪顔料分散体の作製≫
以下の方法に従って、顔料を含む顔料分散液1を調製した。
下記の2種の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃ホットプレート上で加熱しながら1時間加熱、撹拌して溶解した。
PB824(味の素ファインテクノ社製、分散剤) 5質量部
OXT−221(東亞合成社製、オキセタン化合物) 80質量部
上記溶液を室温まで冷却した後、これに顔料としてカーボンブラックMA−7(三菱化学製)15質量部加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーで8時間を要して分散処理した後、ジルコニアビーズを除去した。
≪インク組成物の調製≫
(インク組成物1の調製)
以下の処方で混合撹拌後、プリンター目詰まり防止のため0.8μmメンブランフィルターで濾過して、インク組成物1を調製した。
顔料分散体 10質量部
オキセタン化合物OXT−221(東亞合成社製) 52質量部
オキセタン化合物OXT−212(東亞合成社製) 15質量部
エポキシ化合物(化合物E) 15質量部
光酸発生剤(50%PC溶液)(化合物F) 5質量部
重合禁止剤:2−(メチルアミノ)−エタノール 0.03質量部
増感剤DEA(9,10−ジブトキシアントラセン、川崎化成社製) 2質量部
界面活性剤(本発明の一般式(1)で表される化合物の例示化合物1−1)
0.1質量部
(インク組成物2〜11の調製)
インク組成物1の調製において、界面活性剤として例示化合物1−1の代わりに、表1記載の化合物(界面活性剤)を用いた以外は同様にしてインク組成物2〜11を調製した。
《評価》
(界面活性剤およびインク組成物の評価)
<溶解性>
各界面活性剤をOXT−221に混合撹拌し、混合液が均一になるかどうかを目視観察し、下記評価基準に基づいて評価した。
○:均一になる
×:均一にならない。
<低温保存性>
各インク組成物から顔料のみを除いた混合溶液(インク組成物)を4℃で7日保存し、析出物がないかどうかを目視観察し、下記評価基準に基づいて評価した。
○:析出物は全くない
×:析出物がみられる。
<表面張力>
各インク組成物の静的表面張力を、暗室かつ室温(20℃)下で表面張力計測器(協和界面化学社製)を用いて白金プレート法により測定した。
以上の結果を表1に示す。
表1中:
FS−300
CF3CF2(CF2CF2)m−CH2CH2O(CH2CH2O)nH
(m=6〜8、n=26以上)
(画像形成評価)
≪インクジェット画像形成方法≫
ピエゾ型インクジェットノズルを備えた図1に記載のインクジェット記録装置に、上記調製した各インク組成物1〜7を装填し、基材幅213mm、180m巻のロール状の白PETを使用して、記録媒体幅方向の解像度360dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数をあらわす。),記録媒体の送り方向の解像度360dpiで、印字率18%の文字画像を毎分30mの搬送速度で印字した。照射光源は、高圧水銀ランプを用い、積算光量が180mJ/cm2となるような光量にて活性光線照射してインクを硬化した。
≪経時安定性≫
インク組成物1〜11を暗所かつ密封状態で70℃、7日間保存させることにより強制劣化処理を施し、上記画像形成方法に従って3ヶ月間連続して印字作業を行った。連続運転3ヶ月後、インクジェットノズルより30分間連続して吐出させ、各インクジェットノズル、及び記録された画像について下記の各評価を行い、安定に画像を形成できるかを確認した。
<吐出安定性>
各インクジェットノズルからの射出状態を目視観察し、下記の基準に従って吐出安定性の評価を行った。
○:30分連続出射しても、ノズル欠、曲がりは発生しない。
△:30分連続出射でノズル曲がりは僅かに生じるものの、ノズル欠は発生せず、実用上問題ない。
×:30分連続出射で、数カ所以上のノズルでノズル欠が発生する。
<撥液性>
各インクジェットノズル面を目視観察し、下記の基準に従って撥液性の評価を行った。
○:インクの付着物が見られない。
△:インクの付着物が液滴状に僅かに見られるものの、ノズル口の部分には影響していない。
×:インクの付着がノズル面に多数見られ、ノズル口をふさいでいる。
<文字品質>
目標濃度で6ポイントMS明朝体文字のガサツキをルーペ(倍率:5倍)で拡大して観察し、下記の基準に則り文字品質の評価を行った。
◎:ガサツキなし
○:僅かにガサツキが見える
△:ガサツキが見えるが、文字として判別でき、ギリギリ使えるレベル
×:ガサツキがひどく、文字がかすれていて使えないレベル
以上により得られた各評価結果を表2に示す。
表1、表2から明らかなように、本発明のインク組成物1〜6は、インク組成物の表面張力を効果的に下げることができるだけでなく、経時後の吐出安定性、撥液性に優れ、高精細な画質を得ることが可能となった。一方、比較例として用いたインク組成物7〜11は、表面張力を下げることはできても、経時でインクジェットノズルの撥液性が劣化してしまい、その結果、文字品質の低下が起こることがわかる。
実施例2
≪インク組成物の調製≫
以下の処方で混合撹拌後、プリンター目詰まり防止のため0.8μmメンブランフィルターで濾過して、インク組成物12を調製した。
CAB−O−JET 300(キャボット社製) 3質量部
エチレングリコール 25質量部
2−ピロリドン 25質量部
グリセリン 15質量部
界面活性剤(本発明の一般式(1)で表される化合物の例示化合物1−2)
0.1質量部
イオン交換水 残部
インク組成物12の調製において界面活性剤として例示化合物1−2の代わりに、表3に示す各界面活性剤を用いた以外は同様にしてインク組成物12〜16を調製した。
《評価》
(界面活性剤およびインク組成物の評価)
実施例1の場合と同様にして、<表面張力>、<低温保存性>、<溶解性>の各評価を行った。
以上の結果を表3に示す。
(画像形成評価)
≪インクジェット画像形成方法≫
図3に記載のピエゾ型インクジェットノズルを備えたラインヘッド方式のインクジェット記録装置に、上記調製した各インク組成物10〜14を装填し、普通紙Type6200(リコー製)を用い、記録媒体幅方向の解像度360dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数をあらわす。)、記録媒体の送り方向の解像度360dpiで、印字率18%の文字画像を印字した。印字は搬送速度280mm/sで搬送しながら、記録媒体Pを加熱ユニット13または14を用いて画像形成面を50℃に加熱し、ヘッドユニット11よりインクを吐出することにより行った。なお、印刷用塗工紙の印字面温度は、非接触型の赤外温度計により測定を行った。
≪経時安定性の評価≫
インク組成物12〜16を暗所かつ密封状態で60℃、7日間保存させることにより強制劣化処理を施し、ノズル口径25μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度150dpiであるピエゾ型インクジェットノズルを用いて連続1時間出射を1ヶ月間繰り返し行った。1ヶ月間の連続運転後、同インクジェットノズルより30分間連続して吐出させ、各インクジェットノズル、及び記録された画像について下記の各評価を行い、安定に画像を形成できるかを確認した。
<吐出安定性>
各インクジェットノズルからの射出状態を目視観察し、下記の基準に従って吐出安定性の評価を行った。
○:30分連続出射しても、ノズル欠、曲がりは発生しない
△:30分連続出射でノズル曲がりは僅かに生じるものの、ノズル欠は発生せず、実用上問題ない
×:30分連続出射で、数カ所以上のノズルでノズル欠が発生する。
<撥液性>
各インクジェットノズル面を目視観察し、下記の基準に従って撥液性の評価を行った。
○:インクの付着物が見られない
△:インクの付着物が液滴状に僅かに見られるものの、ノズル口の部分には影響していない
×:インクの付着がノズル面に多数見られ、ノズル口をふさいでいる。
<文字品質>
目標濃度で6ポイントMS明朝体文字のガサツキをルーペ(倍率:5倍)で拡大して観察し、下記の基準に則り文字品質の評価を行った。
◎:ガサツキなし
○:僅かにガサツキが見える
△:ガサツキが見えるが、文字として判別でき、ギリギリ使えるレベル
×:ガサツキがひどく、文字がかすれていて使えないレベル
以上により得られた各評価結果を表4に示す。
表4に示すように、本発明によるインク組成物12は、水を主成分とするインク組成物においても表面張力を効果的に低下させることが可能であり、さらに経時後の吐出性、撥液性に優れており、高精細な画質を得ることが可能となった。