JP5374416B2 - 母材金属の表面処理方法及び該方法を用いた航空機構造部材並びにその製造方法 - Google Patents
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Description
前記エッチング洗浄工程および前記陽極酸化工程を2回繰り返し、
1回目の前記陽極酸化工程で前記母材金属の表面にポーラス面基礎地部分を含む第1被膜を生成し、1回目の前記陽極酸化工程の後に、1回目の前記陽極酸化工程で生成された前記ポーラス面基礎地部分を残すように前記第1被膜を2回目の前記エッチング洗浄工程で除去し、2回目の前記エッチング洗浄工程の後に、1回目の前記陽極酸化工程よりも通電条件を強める2回目の前記陽極酸化工程で前記ポーラス面基礎地部分の上に第2被膜を生成することを特徴とする。
また、強アルカリ溶液を用いてエッチング洗浄を行っているので、エッチング洗浄を行う処理槽の設備費用を低減させることができる。また、エッチング洗浄をした後の強アルカリ溶液は、薬剤処理で中和させることによって廃却可能であるので、処理費用を抑えることができる。
これにより、極短時間で電圧を印加することで、母材金属の表面に生成される陽極酸化被膜の溶解および成長過程の平衡状態を回避することができるので、空隙が無く厚いポーラス面を有する陽極酸化被膜が生成されやすくなる。よって、接着強度が向上し、高温高湿度環境での耐久性も向上する。
本明細書において、「ポーラス面基礎地部分」とは、陽極酸化工程によって生成され、陽極酸化被膜のポーラス面成長の核となる層のことを示す。また、「通電条件を強める」とは、電圧および電流値が大きく、処理時間が長くなるように設定されることを示す。
これにより、母材金属の表面全体を十分に腐食させることができるので、効率よく母材金属の表面に生成された酸化被膜を除去することができる。
これにより、軽量かつ高強度で機械加工性に優れた母材金属の表面処理を行うことができる。
この航空機構造部材の製造方法では、空隙がなくポーラス面を有する陽極酸化被膜が表面に生成された母材金属を用いているので、母材金属と接着剤との接着強度を向上させて母材金属と軽量高剛性材料とを接着することができる。
この航空機構造部材では、空隙がなくポーラス面を有する陽極酸化被膜が表面に生成された母材金属を用いているので、母材金属と接着剤との接着強度が向上する。よって、航空機構造部材の耐久性が向上する。
また、強アルカリ溶液を用いてエッチング洗浄を行っているので、エッチング洗浄を行う処理槽の設備費用を低減させることができる。また、エッチング洗浄をした後の強アルカリ溶液は、薬剤処理で中和させることによって廃却可能であるので、処理費用を抑えることができる。
なお、母材金属1は、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金のうちのいずれかであることが好ましい。例えば、Ti−6Al−4Vやジュラルミンであってもよい。これらは、軽量かつ高強度で機械加工性に優れているため、航空機の動翼の構造部材に適している。
これにより、母材金属1の表面全体を十分に腐食させることができるので、効率よく母材金属1の表面に生成された酸化被膜を除去することができる。また、強アルカリ溶液は、従来のフッ酸や硝酸にくらべて取扱いが容易であるので、段取り時間を短くでき、大きな部材の処理にも適用することができる。
なお、陰極は、炭素棒やプラチナを用いてもよい。
陽極酸化処理の電解質溶液として一般的に用いられる酸液では、陽極酸化被膜の六角柱形状組織が微細で非常に均一になる。この場合、陽極酸化被膜は、微細な凹凸を均一に有するか、または粗大な凹凸を均一に有することになる。微細な凹凸は、接着剤が完全に入り込まないと、簡単に剥離してしまうという問題がある。一方、粗大な凹凸では、接着剤が入り込みすいものの、接着面積が不足してしまうために接着強度が弱くなってしまう。
そのため、本実施形態では、電解質溶液10として強アルカリ溶液を用いる。強アルカリ溶液を電解質溶液として用いることにより、陽極酸化被膜の六角柱形状組織が不均一になり、微細な凹凸と粗大な凹凸とが混在するようになる。このように、陽極酸化被膜に微細な凹凸と粗大な凹凸とが混在するので、上述の酸液を用いた場合のデメリットを相殺し、接着下地層として最適化できる。
電解質溶液 0.1〜10mol/Lの水酸化カリウム溶液
析出物量 1〜10g/L
電圧 1〜30V
通電時間 5秒〜10分
これにより、電源12により極短時間で電圧を印加することで、母材金属1の表面に生成される陽極酸化被膜の溶解および成長過程の平衡状態を回避することができるので、空隙が無く厚い陽極酸化被膜が生成されやすくなる。よって、接着強度が向上し、高温高湿度環境での耐久性も向上する。
図3は、図1に示す表面処理方法の変形例を示すブロック図である。図3は、エッチング洗浄処理および陽極酸化処理を2回繰り返す点を除けば、図1に示す上述の実施形態と同一であるので、その他の詳細な説明を省略する。
図4は、図3に示す表面処理方法の変形例を説明する概略図である。
その後、1回目の陽極酸化処理で生成されたポーラス面基礎地部分17を残すように第1被膜16を2回目のエッチング洗浄処理で除去する。
2回目のエッチング洗浄処理の後に、1回目の陽極酸化工程よりも通電条件を強める2回目の陽極酸化処理で、ポーラス面基礎地部分17の上に第2被膜18を生成する。なお、通電条件を強めるとは、電圧および電流値が大きく、処理時間が長くなるように設定されることを示す。
これにより、母材金属1の表面にポーラス面基礎地部分17を予め生成することで、陽極酸化被膜のポーラス面が整列して成長しやすくなり、より厚いポーラス面を有する陽極酸化被膜が生成されるので、接着強度をさらに向上させることができる。
2 ワイパー布
4 処理槽
6 強アルカリ溶液
8 処理槽
10 電解質溶液
12 電源
14 陰極
16 第1被膜
17 ポーラス面基礎地部分
18 第2被膜
Claims (6)
- 母材金属の表面に炭素繊維強化プラスチックからなる軽量高剛性材料を接着する前に、前記母材金属に陽極酸化被膜を生成する母材金属の表面処理を行う際に、
前記母材金属を脱脂する脱脂工程と、
前記脱脂工程の後に、前記母材金属を強アルカリ溶液に浸漬して前記母材金属の表面に生成された酸化被膜を除去するエッチング洗浄工程と、
前記エッチング洗浄工程の後に、前記酸化被膜を除去した前記母材金属を陽極とし、前記陽極酸化被膜を構成する析出物を予め電解質溶液に溶解させ、前記析出物を溶解させた前記電解質溶液に前記母材金属を浸して通電して、前記母材金属の表面に前記陽極酸化被膜を生成する陽極酸化工程とを備え、
前記エッチング洗浄工程および前記陽極酸化工程を2回繰り返し、
1回目の前記陽極酸化工程で前記母材金属の表面にポーラス面基礎地部分を含む第1被膜を生成し、1回目の前記陽極酸化工程の後に、1回目の前記陽極酸化工程で生成された前記ポーラス面基礎地部分を残すように前記第1被膜を2回目の前記エッチング洗浄工程で除去し、2回目の前記エッチング洗浄工程の後に、1回目の前記陽極酸化工程よりも通電条件を強める2回目の前記陽極酸化工程で前記ポーラス面基礎地部分の上に第2被膜を生成することを特徴とする母材金属の表面処理方法。 - 前記陽極酸化工程では、前記母材金属と前記母材金属の対極との間にパルス電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の母材金属の表面処理方法。
- 前記強アルカリ溶液は、水酸化カリウム溶液または水酸化ナトリウム溶液、若しくは前記水酸化カリウム溶液と前記水酸化ナトリウム溶液の混合水溶液であることを特徴とする請求項1又は2に記載の母材金属の表面処理方法。
- 前記母材金属は、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の母材金属の表面処理方法。
- 請求項1乃至4の何れか1項に記載の母材金属の表面処理方法によって表面処理された前記母材金属を用い、該母材金属の表面を洗浄してプライマーを塗布し、その後、前記プライマーを塗布した前記母材金属に接着剤を塗布し、前記接着剤を介して前記母材金属と前記軽量高剛性材料とを接着することを特徴とする航空機構造部材の製造方法。
- 請求項1乃至4の何れか1項に記載の母材金属の表面処理方法によって表面処理された前記母材金属と前記軽量高剛性材料とが接着剤を介して接着して製造されることを特徴とする航空機構造部材。
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