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JP5364545B2 - 平ベルト及びそれを備えたベルト式無段変速機 - Google Patents

平ベルト及びそれを備えたベルト式無段変速機 Download PDF

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JP5364545B2 JP2009273237A JP2009273237A JP5364545B2 JP 5364545 B2 JP5364545 B2 JP 5364545B2 JP 2009273237 A JP2009273237 A JP 2009273237A JP 2009273237 A JP2009273237 A JP 2009273237A JP 5364545 B2 JP5364545 B2 JP 5364545B2
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Description

ここに開示する技術は、特に円錐状のプーリ間に巻き掛けられると共に、その走行位置をプーリ回転軸方向に変更することによって変速比を無段階に変更するベルト式無段変速機に好適な平ベルト、及び、それを備えたベルト式無段変速機に関する。
例えば特許文献1には、駆動及び従動の一対のコーンプーリを備え、それらを互いに逆向きに配置すると共に、その一対のコーンプーリ間に平ベルトを巻き掛けることによって構成されたベルト式無段変速装置が開示されている。この無段変速装置では、平ベルトをプーリ幅方向に往復移動させることによって平ベルトが巻き掛けられているプーリ径が変更されるため、変速比を無段階に変更することが可能になっている。この無段変速装置ではまた、平ベルトの伝動面を、プーリ面の傾斜に対応するような二つの傾斜面によって構成しており、平ベルトの二つの傾斜面が、互いに逆向きに傾斜した駆動及び従動コーンプーリのプーリ面に対しそれぞれ当接することで、ベルト伝動効率を向上させるようにしている。
実公昭37−6739号公報
ところで、本願発明者らが検討したところ、前記特許文献に開示のような無段変速装置では、平ベルトが縦裂きにより破損し易いことに気づいた。そこで、本願発明者らが検討を重ねたところ、このような平ベルトの破損は、平ベルトの伝動面を二つの傾斜面によって構成しているため、各プーリに対しては幅方向の半分の領域でしか接触をせず、しかも駆動プーリ及び従動プーリにおいてそれぞれ接触する側が反対になるというこの特異な伝動形態に起因していることが判明した。つまり、平ベルトには、そのベルト幅方向に不均一な張力が作用し、その結果、平ベルトに対して幅方向に引っ張る力が作用して、最悪の場合、平ベルトが縦裂きにより破損してしまうのである。
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、縦裂きを確実に防止し得る平ベルト、及び、それを備えたベルト式無段変速機を提供することにある。
従来より、平ベルトの幅方向強度を高める目的で、いわゆるすだれ織物と呼ばれる織物や、一方向に配向した短繊維を含有する補強層を平ベルトに設けることが行われている。本願発明者らは、前記ベルト式無段変速機用の平ベルトにおいても、こうした補強層を設ける点に着目したが、補強層による補強効果を最大限に引き出す上での指標については、これまでは何の知見もなかった。そこで本願発明者らは、数値解析や実験を繰り返すことによって、補強効果を十分に発揮し得る、最適な補強層の構成を見出したものである。
具体的に、ここに開示する平ベルトは、傾斜した二つの傾斜面によって構成されることで、横断面V字状となった伝動面を有する本体と、前記本体の内部に埋設された抗張体によって構成されかつ、前記本体に抗張力を付与する抗張体層と、前記本体内に設けられかつ、前記本体の幅方向に対する補強を行う補強層と、を備え、前記抗張体層と前記補強層とは、前記本体の厚み方向に近接して配置されている。
すなわち本願発明者らの検討によると、抗張体層と補強層とは、ベルトの厚み方向に対して同じ位置に配置したときに、補強層による補強効果、換言すれば縦裂き防止効果が最大化する。従って、実際上は抗張体層と補強層とは同じ位置に配置できないことから、抗張体層と補強層とは、ベルトの厚み方向に対して可及的に近づけて配置することが、補強層による補強効果、換言すれば縦裂き防止効果を得る上で有利になる。
前記抗張体層と前記補強層とは、実質的に当接して配置されている、としてもよい。
前記補強層は、前記抗張体層よりも前記伝動面側に配置されている、としてもよい。本願発明者らの検討によると、抗張体層を間に挟んだベルトの伝動面側と背面側とを比較したときに、補強層は、伝動面側に配設した方がその補強効果がより高まることが判明したのである。
前記補強層の幅方向に対する引張り剛性は、前記抗張体の長手方向に対する引張り剛性の1/100以上に設定されている。
補強層は幅方向に対する引張り剛性が高ければ高いほど、本体の補強効果は高くなるものの、本願発明者らの検討によると、補強層の幅方向に対する引張り剛性が抗張体の長手方向に対する引張り剛性に対して1/100よりも小さいときには、補強効果が大幅に低減するとの知見が得られた。このため、補強効果を効果的に得る上では、補強層の幅方向に対する引張り剛性は、抗張体の長手方向に対する引張り剛性に対して1/100以上とすることが好ましい。
ここに開示するベルト式無段変速機は、前記の平ベルトと、プーリ面がプーリ回転軸に対して傾斜した円錐状の駆動プーリと、前記駆動プーリのプーリ面とは傾斜方向が逆向きとなるように配置された円錐状の従動プーリと、前記駆動プーリ及び従動プーリに巻き掛けられた前記平ベルトを、前記プーリ回転軸方向に往復移動させることによって、変速比を無段階に変更するベルト制御手段と、を備えている。
前述したように、前記の平ベルトは、補強層による補強効果が十分に得られるから、円錐状のプーリを利用したベルト式の無段変速機に適用した場合、換言すれば、幅方向に引き剥がそうとする力が作用することにより縦裂きが生じ易い条件で使用される平ベルトにおいて、その縦裂きの発生を抑制する上で有利になる。
以上説明したように、前記の平ベルト及びベルト式無段変速機によると、抗張体層と補強層とをベルトの厚み方向に近接して配置することによって、補強層による十分な補強効果を得る上で有利になり、平ベルトの縦裂きを効果的に抑制し得る。
ベルト式無段変速機の概略構成を示す斜視図である。 変速制御プーリの断面図である。 変速制御プーリの正面図である。 図3のIV矢視図である。 図3のV矢視図である。 平ベルトの断面図である。 補強層の配設位置に対する、平ベルトに作用する応力比の関係を示す解析結果である。 補強層と抗張体との引張剛性比に対する、平ベルトに作用する応力比の関係を示す解析結果である。
以下、ベルト式無段変速機の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。図1は、一例としてのベルト式無段変速機1(以下、単に無段変速機ともいう)の概略構成を示している。無段変速機1は、駆動プーリ21と、従動プーリ22と、駆動プーリ及び従動プーリ間に巻き掛けられた平ベルト3と、平ベルト3に張力を付与するように平ベルト3の背面に押し当てられると共に、平ベルト3の走行位置をプーリの回転軸方向に変更し得る変速制御プーリ5と、を備えて構成されている。
駆動プーリ21は、そのプーリ面211がプーリ回転軸方向に対して傾斜する円錐形状を有しており、図示は省略する駆動源に駆動連結されることで回転軸X1周りに駆動回転するように構成されている。
従動プーリ22は、回転軸X2周りに回転可能に構成されていると共に、前記駆動プーリ21と同様に、プーリ面221がプーリ回転軸方向に対して傾斜する円錐形状を有している。ここで、プーリ面221の傾斜角度は、駆動プーリ21と従動プーリ22とで互いに同じである。円錐形状の従動プーリ22は、その回転軸X2が駆動プーリ21の回転軸X1に対して、所定の間隔を空けて互いに平行となるように配置されていると共に、プーリ面221の傾斜方向が、駆動プーリ21とは逆向きになるように配置されている。つまり、駆動プーリ21は、図1における右奥から左手前の方向に向かって先細となるように配置されている一方で、従動プーリ22は、図1における左手前から右奥の方向に向かって先細となるように配置されている。
平ベルト3は、駆動プーリ21と従動プーリ22との間に巻き掛けられており、この平ベルト3を介して、駆動プーリ21から従動プーリ22へトルクが伝達される。平ベルト3の詳細な構成については後述するが、図6に示すように、この平ベルト3は、プーリ21,22のプーリ面に当接する伝動面(図6における下面)が、2つの傾斜面30,30によって構成されている。2つの傾斜面30,30は、プーリ幅方向の両側からその中央に向かって下向きに、同じ傾斜角度で傾斜するように構成されており、これにより平ベルト3の伝動面は扁平なV字状を成している。ここで、各傾斜面30の傾斜角度は、駆動及び従動プーリ21,22のプーリ面211,221の傾斜角度に対応する角度に設定されており、これによって平ベルト3は、一方の傾斜面30が駆動プーリ21のプーリ面に当接する一方、他方の傾斜面30が従動プーリ22のプーリ面に当接するようになり、ベルト伝動効率を向上させる上で有利になる。尚、このように伝動面がV字状を成している平ベルト3もまた、Vベルトのようなプーリに対するくさび効果を発現せず、プーリとの間の摩擦のみにより走行するベルトである点で、平らな伝動面を有する一般的な平ベルトと同じであることを、確認的に記載する。
前記変速制御プーリ5は、前述したように、平ベルト3の走行位置をプーリ回転軸方向に変更する機能を有しており、例えば本願出願人による先の出願である特開2006−10072号公報に開示されたプーリと同様の構成を採用することが可能である。この実施形態においては、変速制御プーリ5は、具体的に図2,3に示すように構成されている。尚、図3においては、平ベルト3の厚みを省略して示している。
この変速制御プーリ5は、平ベルト3が巻き掛けられる円筒状の本体部51と、該本体部51をベアリング52によって、プーリ回転軸C1周りに回転自在に支持する筒状の軸部材53と、該軸部材53を、前記本体部51と共に、後述する枢軸C2周りに揺動自在に支持する支持部材と、を備えて構成されている。
支持部材は、支持ロッド54と、支持ロッド54に対して固定されたピン55とを含んで構成されている。この内、支持ロッド54の基端部は、図示は省略するが、この支持ロッド54を含む変速制御プーリ5の全体を、前記プーリ回転軸C1方向に往復移動させる移動機構に取り付け支持されている。移動機構の構成に特に制限はなく、一例として、前記特開2006−10072号公報に開示しているバキュームシリンダを採用することが可能である。またその動力源も、モータ、リニアモータ、ソレノイド、油圧シリンダ等、種々のデバイスを利用可能である。
支持ロッド54の先端部は、図2にように、筒状の軸部材53に内挿されている。この支持ロッド54の先端部は、図3に示すように、断面円形ロッドの直径方向に対応する部位をD字状にカットして形成されており、このDカットによって互いに平行になった平坦な摺動面541,541が形成されている。従って、支持ロッド54の先端部は、相対向する平坦な摺動面541,541と、この摺動面541,541の側縁同士を結ぶ両側の円弧面とを備えて、断面形状が略長方形状とされている。
一方、軸部材53の筒孔は、支持ロッド54の先端部の断面形状に対応して断面略長方形状に形成されている。すなわち、軸部材53の内面には、図3に端的に示すように、支持ロッド54の摺動面541,541が摺動自在に接触する平坦な摺動面531,531が相対向するように形成され、また、この摺動面531,531の両側縁を結ぶ両側の円弧面が形成されている。
ピン55は、支持ロッド54の先端部に形成された貫通孔に嵌められ、該ピン55の両端は軸部材53に形成された支持孔に嵌められている。より詳細にピン55は、支持ロッド54の摺動面541に直交するように、支持ロッド54に対して固定されていると共に、図2に示すように、本体部51のプーリ面においては、その幅方向の中央付近となる位置に配置されている。
そうして、支持ロッド54の先端部の両側の円弧面と軸部材53の筒孔の両側の円弧面との間には、ピン55を軸として軸部材53が本体部51と共に揺動することを許容する隙間56,56が形成されている。これによって本体部51は、前述したように、プーリ回転軸C1周りに回転自在にかつ、このプーリ回転軸C1に直交する枢軸C2周りに揺動自在に支持される。
この変速制御プーリ5は、前述したように、駆動プーリ21と従動プーリ22との間で、平ベルト3の背面に押し当てられることで、この平ベルト3に張力を付与するように配設されている。さらに変速制御プーリ5は、図3に示すように、軸部材53に作用する軸荷重Lの方向を基準として、枢軸C2の方向が、ベルト走行方向Aの手前側に角度αだけ傾倒するように配設される。この状態で変速制御プーリ5は、前述したように、図示省略の移動機構によって、プーリ回転軸C1方向に往復移動をする(図1の仮想線の矢印参照)。
このベルト式無段変速機1の変速動作について、図を参照しながら説明する。先ず図1に実線で示すように、平ベルト3が駆動プーリ21及び従動プーリ22に対してそのプーリ幅方向の略中央位置に巻き掛けられているとする。このとき、変速制御プーリ5は平ベルト3が巻き掛けられる位置、より詳細には、図4に実線で示すように、ピン55が平ベルト3における幅方向の略中央に位置するような位置に配置されている。この状態から、図外の移動機構により変速制御プーリ5を、プーリ回転軸C1方向の一側、つまり、図1においては左手前側であって、図4,5においては左側に移動させると、図4に仮想的に示すように、平ベルト3は、本体部51の中央位置からその幅方向の端(図4における右端)に相対的に片寄ることなる。この片寄りにより、本体部51に作用する軸荷重Lは、ピン55の位置から本体部51の片側にずれて軸部材53に作用するようになる。ここで、ピン55(枢軸C2)が、軸荷重Lの方向に対して角度αだけ傾いているため、軸部材53に対してはピン55を中心とする回転モーメントが働いて、軸部材53が本体部51と共に、ピン55(枢軸C2)の周りに回転変位する。結果として、本体部51は、図4に仮想線で示すように、平ベルト3が相対的に片寄ってきた側(図4の右側)の端部が反対側(図4の左側)の端部に比べてベルト走行方向Aの先側になるように、平ベルト3に対して斜交い状態になり、また、図5に仮想線で示すように、本体部51は、平ベルト3が片寄ってきた側(図5の右側)の端部が反対側(図5の左側)の端部に比べて軸荷重Lの方向に高くなるように傾斜する。これにより、平ベルト3には、本体部51が斜交い状態になることによる片寄りを戻す力と、本体部51が傾斜することによる戻し力とが働き、平ベルト3は本体部51上でピン55の位置へと移動する(図4,5の矢印参照)。
つまり、変速制御プーリ5を平ベルト3に対して相対的に移動させたときには、その平ベルト3には、本体部51上でピン55の位置へ移動しようとする力が働くため、平ベルト3は変速制御プーリ5に追従して移動をし、その走行位置を変更することになる。平ベルト3の走行位置が当初の、駆動及び従動プーリ21,22のプーリ幅方向の略中央位置から、図1における左手前側に変更することにより、その平ベルト3が巻き掛けられた駆動プーリ21の径は当初よりも小に、従動プーリ22の径は当初よりも大になるため、変速比は当初よりも減速になる。
逆に、変速制御プーリ5が、プーリ回転軸C1方向の他側、つまり、図1においては右奥側に移動したときには、変速制御プーリ5の本体部51が前記とは逆方向に回転変位することになるから、平ベルト3は、変速制御プーリ5に追従して図1における右奥側に移動する。このことにより、平ベルト3が巻き掛けられた駆動プーリ21の径は大に、従動プーリ22の径は小になるため、変速比は増速になる。こうして、このベルト式無段変速機1では、変速制御プーリ5が、平ベルト3の走行位置を変更することにより、その変速比が無段階に変更される。
尚、変速制御プーリ5の構成は、前記の構成に限らず、例えば本願出願人の先の出願である特開2006−9987号公報に開示されたプーリのように、ピンのみを、本体部に対して相対的に、プーリ回転軸方向に往復移動させる構成を採用したり、又は、特開2004−144245号公報に開示されたプーリのように、本体部をソレノイドによって強制的に傾ける構成を採用したりしてもよい。さらに、平ベルト3の走行位置を変更する手段としては、前記のようなプーリを利用することに限定されず、その他の様々な手段を採用することが可能である。
次に、平ベルト3の構成について、図6を参照しながらさらに詳細に説明する。この平ベルト3は、例えばゴム組成物からなる本体31に対して、抗張体層32と、補強層33とを設けた積層式の平ベルト3である。抗張体層32は、本体31内に、抗張体34(心体)としてのコードを、例えば幅方向に所定ピッチで螺旋状に埋設することで構成されており、これによってこの平ベルト3は、いわゆるコード平ベルトとされている。抗張体層32は、ベルトの厚み方向に対しては、例えばピッチライン上に配置されている。
補強層33は、幅方向の強度を高め、それによって平ベルト3の縦裂きの発生を防止するための層である。前述したように、この平ベルト3は、その伝動面が二つの傾斜面30,30によって構成され、駆動プーリ21に対しては一方の傾斜面30しか、また、従動プーリ22に対しては他方の傾斜面30しか接触しないため、幅方向の半分の領域でしか駆動及び従動プーリ21,22に対し接触しないと共に、その接触領域は、駆動及び従動プーリ21,22に対して互いに逆側になるという、特異な伝動形態となる。このことに起因して、平ベルト3には幅方向に不均一な張力が作用することになり、平ベルト3のコード34を幅方向に互いに引き剥がそうとする力が発生する。これが、平ベルト3の縦裂きを生じさせる原因となる。そこで、この平ベルト3では、補強層33を設けることによって、縦裂きを防止せんとする。補強層33としては、種々の構成を採用することが可能であり、一例としては、いわゆるすだれ織物によって補強層33を構成してもよいし、一方向に配向した短繊維が混入したゴム層によって補強層33を構成してもよい。
この平ベルト3において最も特徴的な点は、前記の抗張体層32と補強層33とを、ベルトの厚み方向に近接させている点にある。これは、抗張体層32と補強層33とを、厚み方向に近接させることによって、補強層33による補強効果が高まるとの知見に基づくものである。この点につき、本願発明者らが行った数値解析結果及び実験結果に基づいて説明する。図7は、数値解析を行うことによって得られた、抗張体層32に対する補強層33の相対位置を厚み方向に変更したときの、平ベルト3に作用する応力比の変化を示す図である。ここでの応力比は、ベルトの幅方向に作用する最大応力に関し、補強層を設けない場合に生じる応力値を基準にしたときの、補強層を設けた場合に生じる応力値の比である。従って、応力比が低いほど、補強層33の補強効果が高いことを意味する。ここで、横軸の0(mm)は、補強層33の位置が抗張体層32の位置と厚み方向に同じ位置に位置していることを意味し、プラスの値は、補強層33の位置が抗張体層32の位置よりもベルト背面側に、マイナスの値は、補強層33の位置が抗張体層32の位置よりもベルト伝動面側にあることを意味する。同図によると、補強層33の位置が抗張体層32の位置と厚み方向に同じ位置に位置しているときに、補強層33による補強効果が最も高くなり、補強層33の位置が抗張体層32の位置から離れれば離れる程、補強効果が低下することが判る。従って、補強層33の位置と抗張体層32の位置とを同じにすることが望ましいが、実際の平ベルト3では、補強層33と抗張体層32とを同じ位置に設けることは不可能であるため、補強層33と抗張体層32とは可及的に近接して配置することが好ましい。例えば補強層33と抗張体層32とのずれ量(図6の一点鎖線参照)は、抗張帯層の厚みをt1、補強層の厚みをt2としたときに、(t1+t2)/2に基づいて設定すればよく、例えば(t1+t2)/2×αとして、係数αの値を1以上の適宜の値に設定すればよい。αの取り得る値としては、例えば1≦α<2、又は、1≦α<1.5、又は、1≦α<1.3としてもよい。尚、α=1として、ずれ量が(t1+t2)/2のときは、補強層33と抗張体層32とは実質的に当接した状態になる。
また、同図によると、マイナス側の方が補強効果の低減幅が小さいことから、補強層33は、図6に例示するように、抗張体層32よりもベルト伝動面側に配置することが好ましい。
図8は、補強層33による幅方向の引張り剛性と、抗張体層32による長手方向の引張り剛性との比(つまり横剛性/縦剛性の剛性比)を変化させた場合の、補強層33による補強効果の変化(圧力比の変化)を示している。同図によると、補強層33による幅方向の引張り剛性が高いときには補強効果が高くなる一方で、前記剛性比が0.01よりも小さくなると、補強効果が大きく低下することが判る。この結果から、補強層33による幅方向の引張り剛性は、抗張体層32による長手方向の引張り剛性に対して1/100以上とすることが好ましく、この関係が満たされるように、抗張体層32の構成及びその材料(抗張体34の配置及びその材料)と、補強層33の構成及びその材料と、をそれぞれ決定すればよい。
このように、前記の平ベルト3では、補強層33の構成及び配置を最適化して、ベルト幅方向に対する補強効果を十分に得ることができるため、平ベルト3の縦裂きを防止する上で有利である。特に伝動面が二つの傾斜面30,30で構成されると共に、円錐状のプーリ21,22に巻き掛けられることによって縦裂きが生じ易い条件で使用される平ベルト3において、縦裂きの発生を効果的に防止する上で有効である。また、幅方向に十分に補強されることで平ベルト3の抗張帯層32に作用する幅方向の引張応力が低減して、平ベルト3の幅方向の張力分布の不均一性が緩和される。このことにより、平ベルト3の耐久寿命の向上も期待し得る。
以上説明したように、ここに開示した平ベルトは、特に円錐状プーリによって構成されたベルト式無段変速機等に用いられる平ベルトとして有用である。
1 ベルト式無段変速機
21 駆動プーリ
22 従動プーリ
3 平ベルト
30 傾斜面
31 本体
32 抗張体層
33 補強層
34 抗張体
5 変速制御プーリ(ベルト制御手段)

Claims (4)

  1. 傾斜した二つの傾斜面によって構成されることで、横断面V字状となった伝動面を有する本体と、
    前記本体の内部に埋設された抗張体によって構成されかつ、前記本体に抗張力を付与する抗張体層と、
    前記本体内に設けられかつ、前記本体の幅方向に対する補強を行う補強層と、を備え、
    前記抗張体層と前記補強層とは、前記本体の厚み方向に近接して配置され
    前記補強層の幅方向に対する引張り剛性は、前記抗張体の長手方向に対する引張り剛性の1/100以上に設定されている平ベルト。
  2. 請求項1に記載の平ベルトにおいて、
    前記抗張体層と前記補強層とは、実質的に当接して配置されている平ベルト。
  3. 請求項1又は2に記載の平ベルトにおいて、
    前記補強層は、前記抗張体層よりも前記伝動面側に配置されている平ベルト。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の平ベルトと、
    プーリ面がプーリ回転軸に対して傾斜した円錐状の駆動プーリと、
    前記駆動プーリのプーリ面とは傾斜方向が逆向きとなるように配置された円錐状の従動プーリと、
    前記駆動プーリ及び従動プーリに巻き掛けられた前記平ベルトを、前記プーリ回転軸方向に往復移動させることによって、変速比を無段階に変更するベルト制御手段と、を備えているベルト式無段変速機。

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