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JP5343087B2 - 内燃機関の運転方法、及び内燃機関 - Google Patents

内燃機関の運転方法、及び内燃機関 Download PDF

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Description

本発明は、内燃機関の運転方法と、その方法に従って運転可能な内燃機関に関するものである。
資源保護及び環境汚染低減の関係についての内燃機関の開発目的は、特に自動車で利用可能な燃料消費の低減、及び/又は、効率の改善とされ、この効率とは、ここではクランクシャフトに由来の機械的エネルギーについての燃焼消費とされる。
従来のレシプロピストン型の内燃機関の特徴は、全ての熱力学プロセス(吸気、圧縮、燃焼及び排気)が1つの(単一の)シリンダーの中で発生し、これは燃料の燃焼エネルギーの有用性について実質的に妥協した結果とされる。例えばUS 2005/0268609 A1からは、全ての熱力学プロセスを2つのシリンダーに分配する試みが公知である。この公知の内燃機関では、一定の内部容量との一時的な接続によって、圧縮シリンダーからパワーシリンダーへと新鮮な燃料が圧送される。この圧送により、一方で圧力差が高まり、このため温度ロス及び流量ロスによって効率が不満足なものとなる。
近代のレシプロピストン型の内燃機関の別の特徴は、燃料噴射技術の中にあり、その燃料噴射技術によって、ガソリン又はディーゼル燃料が燃焼チャンバー内へと直接的に噴射される。スパーク点火エンジンでは、この技術は高い噴射圧力を必要としないが、以下のような燃焼噴射時期及び燃料噴射量の非常に正確な制御、汚染を極力最小限にするよう最適燃焼を考慮した燃焼チャンバー形状、及び高コストの排気ガスの後処理を要する。ディーゼル機関の運転では、煤煙を低減させるために、(2000[bar]の圧力をこえる)非常に高い噴射圧力と、ディーゼル粒子フィルター含有する排気ガスの値段の高い後処理を要する。
蓄熱室及び空気噴射装置を有する内燃機関が、DE 600 21 901 T2に開示されている。圧縮シリンダーは、蓄熱室を介してパワーシリンダーに接続されている。圧縮シリンダーと蓄熱室との間の接続部において所定のバルブが作動する。この蓄熱室は、排気バルブを通じて排気に接続されている。
DE 3433619 A1には、貫流チャンバーを介して互いに接続された第1シリンダー及び第2シリンダーを有する内燃機関が開示されている。第1シリンダーから貫流チャンバーへの接続部に所定のバルブが配置されている。容積が一定とされたその貫流チャンバーは、第2シリンダーに常時に接続されている。
DE 577740には、空気圧調整された内燃機関が開示されており、その内燃機関では、圧縮シリンダーとパワーシリンダーとの間に貫流チャンバーRが配置されており、その貫流チャンバーの容積が一定とされている。
US 1,771,335には、6ストロークサイクルで運転され、複数のシリンダーを有する内燃機関が開示されている。内燃機関のシリンダーヘッドには、それぞれ2つのシリンダーに通じる複数の吸気マニボールド管が形成されている。更に、各シリンダー用に排気マニホールド管が設けられている。吸気マニホールド経路と排気マニホールド経路との間の接続がバルブによって制御される。更に、シリンダーヘッドには、全てのシリンダーに連通しシリンダーとの接続がバルブによって制御される補助的なマニホールドが設けられている。
圧縮シリンダー及びパワーシリンダーを有する内燃機関が、JP 57091324 Aに開示されており、これらシリンダーが貫流チャンバーによって接続されている。圧縮ピストン及びパワーピストンは、同時に上死点に配置される。貫流チャンバーにおけるフレッシュチャージの点火後に、吸気バルブがパワーシリンダー内へと開放され、これにより燃焼フレッシュチャージがパワーシリンダー内へと広がる。
本出願の独立請求項の前文は、US 2007/0157894 A1が参照される。この刊行物には、圧縮シリンダー内で圧縮ピストンが動作され、パワーピストン内でパワーピストンが動作される内燃機関が開示されている。圧縮チャンバーの吸気口でフレッシュチャージ吸気バルブが作動する。圧縮シリンダーの圧縮チャンバーは、貫流チャンバーを介してパワーシリンダーのパワーチャンバーに接続されており、圧縮チャンバーからのその分岐部に、チェックバルブとして形成された貫流バルブが配置されている。貫流チャンバーの開口部にてパワーチャンバー内へと吸気バルブが配置されている。パワーチャンバーは、排気バルブを介して内燃機関の排気マニホールドに接続されている。例えば、クランクシャフトに接続されたカムシャフト上に形成されたカムによってバルブが駆動され、これによりこれらが共に回転する。クランクシャフトは、ピストンロッドを介してピストンに接続されている。パワーピストンは、圧縮ピストンに対して10度から40度の位相角で進んでおり、圧縮ピストンがその上死点に向けて移動する際に、パワーピストンがその上死点から離間するように移動し、従って圧縮空気の実質的に同一の質量がパワーピストンから貫流チャンバー内へ、また貫流チャンバーからパワーチャンバー内へと移るように、この位相角が選択される。パワーピストンが更に、特に上死点の後に10度から30度の範囲で下方へと移動する際に、パワーチャンバーのチャージが点火される。全動作の間に、チェックバルブとして形成された貫流バルブとパワーチャンバー内の吸気バルブは、チャージが点火される圧縮バルブと少なくとも同様の高さのバルブにおいて、ガス圧が貫流チャンバー内で保持される。
本発明の目的は、従来の内燃機関に対して効率が改善された状態で作動する内燃機関、及び当該内燃機関の運転方法を提供することに基づいている。
請求項1は、本発明の目的を達成するための内燃機関を示している。
燃焼チャンバーのフレッシュエアーを高温のパワーシリンダーの外部で圧縮することによって、また、各運転サイクルにおいて圧縮され貫流チャンバー内へと押し込まれ、必要に応じて各運転サイクルにおいて更に圧縮されたフレッシュチャージの少なくとも大部分を、好ましくは少なくとも概ね全体をパワーチャンバー内へと押し出して燃焼に使用することによって、同時の良好な充填で圧縮仕事が低下し、これによって内燃機関の効率が高められる。
本発明の内燃機関は、請求項2から13の特徴を有する有利な形態で更に改善される。
請求項14は、本発明の目的を達成するための方法を示している。
従属請求項15から24によって、本発明の方法の有利な実施形態が示唆されている。
本発明の方法及び/又は内燃機関では、実質的に全ての種類の気体燃料及び液体燃料が燃焼可能とされる。例えば、燃焼チャンバー上流へ、又はフレッシュエアーの圧縮チャンバーへと導入された気体燃料又は液体燃料は、圧縮シリンダーの中で生じる圧縮の間にフレッシュエアーと共に処理され、その後に、良好な可燃性混合物として貫流チャンバー内へと貫流し、貫流チャンバーからパワーチャンバー内へと高圧状態で押し出され、好ましくはそこでスパーク点火することなく自然燃焼する。このようにして、高い噴射圧を要することなくディーゼル燃料が使用可能とされ、スパーク点火することなくガソリンが使用可能とされ、良好な混合物の調製によって汚染度の低いガスも実現される。
本発明は、定置型の内燃機関用として、また車両、船舶等に搭載される内燃機関用として使用することができ、以下に、図面を参照しつつ詳細に典型的な形態で説明される。
図1は、圧縮シリンダー、貫流シリンダー及びパワーシリンダーを有する本発明の内燃機関の一部を示す断面図である。 図2は、図1と同様の図を異なる作動状態にて示す図である。 図3は、図1と同様の図を異なる作動状態にて示す図である。 図4は、図1と同様の図を異なる作動状態にて示す図である。 図5は、図1と同様の図を異なる作動状態にて示す図である。 図6は、図1と同様の図を異なる作動状態にて示す図である。 図7は、図1と同様の図を異なる作動状態にて示す図である。 図8は、図1と同様の図を異なる作動状態にて示す図である。 図9は、クランクシャフトの位置に応じた容積推移を示す図である。 図10は、クランクシャフトの位置に応じたバルブの開放時間及び閉止時間の推移を示す図である。 図11は、典型的なバルブ機構の斜視図である。 図12は、貫流バルブを有する貫流ピストンの一部を示す図である。 図13は、上下逆にした吸気バルブの斜視図である。 図14は、貫流ピストンを駆動するためのローラーカムフォロワーの斜視図である。 図15は、図13及び図14の構成要素を使用したバルブ機能の一実施形態を示す図である。 図16は、吸気マニホールド燃焼噴射がなされる内燃機関の概要を示す図である。 図17は、本発明のマルチシリンダー型の内燃機関を上方から視た平面図である。 図18は、図17の内燃機関のシリンダーユニットのピストンをクランクシャフトと共に示す斜視図である。
図1によれば、本発明の内燃機関(「エンジン」ともいう)は、隣接する2つのクランクを有するクランクシャフト10を含み、当該クランクはそれぞれ、ピストン連結ロッド(「ピストンロッド」ともいう)12及び14を介して、圧縮ピストン16及びパワーピストン18に連結されている。圧縮ピストン16は、圧縮シリンダー20内を移動可能とされている。パワーピストンは、パワーシリンダー22内を移動可能とされ、好ましくはパワーシリンダー22にシリンダーライナー24が内張りされる。
シリンダーは、共通のシリンダーハウジング28内に形成されるのが好ましく、シリンダーヘッド30によって上方からシールされ、当該シリンダーヘッドは、2つのシリンダー20及び22が重なり合う領域に、他の部位に比べて相対的に薄肉の端壁部32を含んでおり、この端壁部32は、シリンダー20及び22の一部を上方から塞いでおり、またシリンダーヘッド30の中に形成された貫流シリンダー33を下方から塞いでいる。
圧縮ピストン16とシリンダーヘッド30との間に、圧縮チャンバー(「圧縮室」ともいう)34が形成される(図3参照)。パワーピストン18とシリンダーヘッド30との間に、パワーチャンバー(「パワー室」ともいう)36が形成され、パワーチャンバー36内へと噴射バルブ(燃焼噴射バルブ)38が突出している。
貫流ピストン40は、貫流シリンダー33の中を移動可能とされており、この貫流ピストン40が貫流チャンバー(「貫流室」ともいう)42を規定している。
シリンダーヘッド30の中にはフレッシュエアー及び/又はフレッシュチャージの吸気マニホールド44が形成されており、フレッシュチャージ吸気バルブ46は、マニホールド44の中で作動し、またフレッシュチャージ吸気マニホールド44と圧縮チャンバー34との間の接続を制御する。ここでいう「フレッシュチャージ」との記載には、実質的に純粋なフレッシュエアー(新鮮空気)や、燃料及び/又はそれに加えられる残留ガス(混合気)を有するフレッシュエアー(新鮮空気)が包含される。
シリンダーヘッド30の中には排気マニホールド48も形成されており、排気バルブ50は、排気マニホールド48の中で作動し、またパワーチャンバー36と排気マニホールド48との間の接続を制御する。
圧縮チャンバー34を貫流チャンバー42に接続する貫流開口が端壁部32に形成されており、貫流バルブ(「ディスクバルブ」ともいう)52は、その貫流開口の中で作動して、圧縮チャンバーから離間する動作で開放する。貫流バルブ52のシャフトは、貫流ピストン40の中をシール状態で移動可能に誘導され、貫流バルブ42は、スプリング(「バネ」ともいう)53の荷重(「弾性付勢力」ともいう)に抗して還流ピストン40内へと移動可能とされ、また好ましくは制限されたストロークで貫流ピストン40外へと移動可能とされる。
吸気バルブ54は、端壁部32の別の開口において作動し、当該開口が貫流チャンバー42をパワーチャンバー36に接続し、吸気バルブ54のシャフトは、貫流ピストン40を通じてシール状態で移動可能に誘導される。
フレッシュチャージカム56、排気カム58及び吸気カム60は、バルブ46,50,54をそれぞれ駆動する機能を果たす。貫流ピストン40は、貫流カム62によって駆動される。
カムは、適宜の形態で1つ又はそれ以上の数のカムシャフト上に形成され、当該カムシャフトは、好ましくはクランクシャフト10によってこのクランクシャフトの回転速度と同一の回転速度で駆動される。
その基本構造について記載された内燃機関の機能は、以下に図2から図8を参照しつつ説明され、これらの図面には、明瞭化の目的で幾つかの参照符号のみが記載されている。
図2には、圧縮ピストン16がその上死点に到達し、圧縮チャンバーの容積が最小(ほぼ、ゼロ)になった状態の内燃機関が示されている。貫流ピストン40は、その上死点の手前の近傍に配置されている(貫流ピストン40の上死点として規定された位置は、貫流チャンバー42が最小容積(ほぼ、ゼロ)となる位置とされる)。パワーピストン18は、その上死点を既に離れている。この典型的な実施形態では、幾つかの段階によって圧縮ピストン16に関して進歩しており、これらクランクシャフト10の関連するクランクが適切にオフセットされることによって達成される。
フレッシュチャージ吸気バルブ46は閉止されている。貫流バルブ52は閉止されている。吸気バルブ54は開放され、また排気バルブ50は閉止されている。
図2の状態は、フレッシュチャージの吸気、及び/又は、フレッシュチャージによる圧縮チャンバー34の充填が開始され、貫流チャンバー42内に含まれる圧縮されたフレッシュチャージが、パワーチャンバー36内へと完全に流れなかった(貫流しなかった)状態に概ね一致している。
図3には、圧縮チャンバー34のフレッシュチャージによる充填が実質的に終了した状態が図示されており、圧縮ピストン16がその下死点の近傍に配置され、貫流ピストン40は、その上死点に、即ちその最小容積の位置に配置され、またパワーピストン18は、パワーストロークの端部に配置され、フレッシュチャージが燃焼される図2の状態の後直ぐに開始されている。フレッシュチャージ吸気バルブ46は未だ開放されており、貫流バルブ52は、スプリング53の荷重に抗して実質的に貫流ピストン40内へと移動しており、また吸気バルブ54及び排気バルブ40は閉止されている。
図4には、フレッシュチャージの圧縮が、燃焼したチャージの吐出とほぼ同時に開始される状態が示されている。圧縮ピストン16は、その下死点の通過後に圧縮チャンバー34でフレッシュチャージを圧縮するべく上方へと移動する。貫流ピストン40はまた、その上死点の領域に配置されている。
貫流バルブ52及び吸気バルブ54は閉止されている。パワーピストン18は、その上方への動作を開始する。排気バルブ50は開放されている。
図5には、圧縮チャンバー34で圧縮された圧縮チャージが貫流チャンバー42へと貫流を開始する状態が示されている。
フレッシュチャージ吸気バルブ46が未だ閉止された状態で、圧縮ピストン16がその上死点に接近している。貫流ピストン40は、その上死点から離間するように移動し、貫流バルブ52は、スプリング53の荷重にしたがって貫流ピストン40から外れるように移動し、また圧縮チャンバー34の圧力によって開放される。その結果、圧縮されたフレッシュチャージは、貫流チャンバー42内へと貫流可能とされ、吸気バルブ54が閉止される。パワーピストン18は、その上死点の近傍に到達し、排気バルブ50は、排気ストロークの端部において未だ開放されている。
図6には、内燃機関の図5の状態の少し後の状態が示されており、圧縮ピストン16は、その上死点へと移動すると共に、更にフレッシュチャージ吸気バルブ46が閉止し、パワーピストン18は既にその上死点に到達している。貫流バルブ52は、貫流ピストン40が概ねその下死点に配置されたときに大きく開放され、その開放動作は、貫流バルブ52が貫流ピストン40から外れて貫流ピストン40のフルストロークまで移動可能となるのが許容されず、これにより貫流ピストンの動作によってそのシート(弁座)からその下死点へと持ち上がる。圧縮ピストン16によって圧縮されたフレッシュチャージは、貫流チャンバー42へと流れる。
圧縮チャンバー34の容積は、圧縮ピストン16の上死点で最小となり、また公差のために必要な大きさのみが有利とされる。
図7には、圧縮ピストンがその上死点の領域に未だ配置され、パワーピストン18がその上死点に既に持ち上がっている状態が示されている。
フレッシュチャージ吸気バルブ46は閉止されている。貫流チャンバー42の容積が低下する一方で、貫流ピストン40はその上死点に向けて移動し、圧縮チャンバー34の圧力不足によって貫流バルブ52が閉止され、また吸気バルブ54が開放され、これにより貫流チャンバー42の圧縮されたフレッシュチャージは、パワーチャンバー36内へと押し込まれ、既に下方へと移動しているパワーピストン18のためにそのパワーチャンバー容積が増加する。排気バルブ50は閉止している。
図8には、図7に状態のすぐ後の状態が示されており、貫流ピストン40はその上死点に配置されると共に、貫流バルブ52が閉止され、また吸気バルブ54が再度閉止され、圧縮されたチャージ全部がパワーチャンバー36に送られ、また排気バルブ50が未だ閉止された状態で、直前に噴射されたディーゼル燃料の自己点火によって燃焼が開始される。直噴型のスパーク点火エンジンの実施形態では、図8の状態の直前に噴射され、ほぼ図8の状態で点火される。直噴型のスパーク点火エンジンでない実施形態では、フレッシュチャージ吸気バルブ46よりも前で、或いは例えば貫流チャンバー42の領域において、混合気が形成される。
貫流チャンバー42の容積は、貫流チャンバーの上死点において最小となり、また公差で必要となる大きさのみが有利とされる。その容積は、(貫流ピストンが下死点にあるときの)貫流チャンバーの最大容積の15[%]よりも小さく、10[%]よりも小さい場合に有利とされ、5[%]よりも小さい場合に更に有利とされ、好ましくは1[%]よりも小さい。
図8の状態は、内燃機関が図2に示す状態の直後を想定した状態とされ、これによりサイクルが終了する。
貫流チャンバー42の圧縮されたフレッシュチャージのパワーチャンバー36への貫流初期(図6の状態から図7の状態への推移)に関しては、貫流チャンバー42とパワーチャンバー36との接続が、両チャンバー間に15[bar]よりも小さい、好ましくは10[bar]よりも小さい、更に有利には5[bar]よりも小さい僅かの圧力差のみがある場合に開始され及び/又は形成されるように、吸気バルブ54及び排気バルブ50のバルブ制御タイミングが選択されるのが有利とされる。これらのバルブは、単に典型例であって、これに限定されるものではない。少なくとも貫流チャンバー42とパワーチャンバー36との接続が、これら2つのチャンバーが概ね等しい圧力であるときに生じるのが特に有利とされる。排気バルブ50は、パワーピストン18の上死点よりも前で閉止され、これにより一定量の残留ガスがパワーチャンバー36に残留する。上述のようにパワーチャンバー36と貫流チャンバー42との間に僅かな圧力差が生じ、或いは圧力が概ね均等になり、排気バルブ50が開閉した場合に、吸気バルブ54が未だ閉止されているのが有利とされ、これにより効果的な形態で、及び/又は、熱力学的に有利な形態で、狭所の貫流チャンバー42からパワーチャンバー36へとフレッシュチャージが押し込まれる。
前述の内容から明らかなように、特に最大負荷領域では、圧縮リンダー20内に好ましくは低温のフレッシュチャージが充填されて圧縮される。貫流チャンバー42の容積が増加すると共に、圧縮された圧縮チャージは貫流チャンバー内へと押し込まれ、貫流チャンバーの容積が減少すると共に、圧縮された圧縮チャージはそこからパワーチャンバー内へと押し込まれ、機械仕事を行うべくパワーチャンバー内でチャージが燃焼される。圧縮チャンバー34内で圧縮された空気の貫流チャンバー42内への押し込み、またそこからパワーチャンバー36内への押し込みは、各チャンバー間の圧力差が微小とされたエネルギー的に有利な形態で生じる。
熱力学上の理由のため、圧縮チャンバー34が極力低温とされ、また効率を高めるためパワーチャンバー36が極力高温とされる。従って、圧縮シリンダー20は、パワーシリンダー22から極力断熱され、また極力冷却されるのが有利とされ、その反対にパワーシリンダーが極力冷却されるのが適切とされ、これにより材料が熱的に過度の応力を受けない。このことは、図示されない冷却マニホールドを適切に配置し、及び/又はパワーシリンダー冷却用の1つの冷却システム及び圧縮チャンバー冷却用の1つの冷却システムに冷却システムを分配することによって、また断熱されるライナーを圧縮シリンダー及び/又はパワーシリンダーに設けることによって達成される。高温のパワーチャンバー36に隣接するパワーピストン18は、好ましくは断熱用のサンドイッチ構造に包含され、或いは、例えばセラミックによって製造された断熱コーティングが設けられる。
圧縮されたフレッシュチャージをパワーチャンバー内へと押し込むことよってチャージが強制的にやり取りされる結果、パワーチャンバーを僅かに冷却することが必要となる。貫流バルブ52を貫流ピストン40と一体化することによって、空間が一定に保持され、さもなければ広い貫流断面を有する貫流バルブが形成可能とされる。
断熱のためには、貫流ピストン40は、例えば、別体の絶縁層を使用することによって、端壁部32に対向する対向面が断熱されるのが有利とされる。膨張シリンダーもまた、例えばライナーの挿入によって断熱されるのが有利とされる。パワーピストン18の上面が断熱された実施形態、またシリンダーヘッド30の下面のうち、端壁部32のうち少なくとも対応する部位を含みパワーピストンの上面に対向する部位が断熱された実施形態が特に有利とされる。
本発明の上述の典型的な実施形態では、パワーピストン18は、圧縮ピストン16に対して進行しており(進んでおり)、即ちパワーピストン18は、圧縮ピストン16がその上死点に到達する前に上死点に到達する。この結果、高圧下で貫流チャンバーからパワーチャンバー内へと押し込まれたフレッシュチャージは、パワーピストンによって更に圧縮されない。圧縮端温度を高め、また圧縮度合いを高めるためには、パワーピストンが圧縮チャンバーに対して僅かに遅れ、これにより貫流チャンバーからパワーチャンバー内へと押し込まれたフレッシュチャージが、更にパワーピストンによって圧縮され、そこでパワーチャンバーの壁熱が吸収されることによって更に圧縮される場合が有利とされる。これによっても、パワーシリンダーの冷却の必要性が低減される。
以下に、本発明の内燃機関の関連する典型的な実施形態が、図9及び図10を参照しつつ説明される。図9には、パワーチャンバー36、圧縮チャンバー34及び貫流チャンバー42の容積が、それぞれクランクシャフトの位置に対応して示されており、パワーピストンの上死点(パワーチャンバーの容積が最小となる点)が0(ゼロ)度として示されている。図10には、パワーチャンバー及び圧縮チャンバーでの圧力推移と、各バルブの典型的な開放時点(「開放時間」、「開放時期」、ないし「開放点」ともいう)及び閉止時点(「閉止時間」、「閉止時期」、ないし「閉止点」ともいう)が、クランクシャフトの位置に対応して示されている。
明らかなように、フレッシュチャージ吸気バルブ44は、クランク角が概ね−150度になったときに、即ち圧縮ピストンの下死点の直後に閉止される。圧縮チャンバーでの圧力(破線曲線)は、このとき圧縮チャンバー34の容積の減少と共に増加する。クランク角が概ね−100度になると、貫流ピストンはその上死点から離間するよう移動を開始し、これにより貫流チャンバー42の容積が増加する。貫流バルブ52は、概ね−95度で開放され、これにより圧縮されたフレッシュチャージは、貫流チャンバー42内へ押し込まれ、その一方で更に圧縮チャンバー34の容積が減少し、また貫流チャンバー42の容積が増加する。排気バルブ50は、概ね−75度で閉止され、このため燃焼されたチャージのパワーチャンバー36からの吐出が終了する。概ね−65度、即ち貫流チャンバー42がおよそ最大容積である場合に、吸気バルブ54が開放され、これにより圧縮空気が貫流チャンバーからパワーチャンバー内へと押し込まれ、ここで貫流チャンバーの圧力は、好ましくはパワーチャンバーの圧力とほぼ同じ圧力とされ、或いは圧力差が15[bar]よりも小さくなり、より有利には10[bar]よりも小さくなり、更に有利には5[bar]よりも小さくなる。圧縮された空気の押し込み及び押し出しは、圧縮チャンバー及び貫流チャンバーの容積が最小となるまで継続され、−20度に至るまで圧力が上昇し、その点で圧縮ピストン及び貫流ピストンが上死点に達し、また貫流バルブ52及び吸気バルブ54が閉止される。
パワーチャンバーの圧縮されたチャージが点火され、このためパワーチャンバー36には図10に示すような圧力推移が生じる。クランク角が約10度になると、フレッシュチャージ吸気バルブ44が開放され、これにより圧縮チャンバー34の充填が再び開始される。クランク角が概ね140度になると、排気バルブ50は、燃焼されたチャージを排気するべく開放される。
説明したプロセス制御によれば、パワーチャンバー36において壁温が継続して高くなるため、また残りの高温ガス中への噴射のため、自己点火プロセスでのディーゼル燃料のように、スパークプラグの助けによらずパワーチャンバー内への直噴プロセスでガソリンを燃焼させることも可能であり、これにより本発明によれば、ガソリンをディーゼル燃焼と同様に利用することができる。
前述の内容から導き出せるように、圧縮シリンダー22で圧縮されたフレッシュチャージの貫流チャンバー42内への押し込みと、そこからのパワーチャンバー内への押し込みは、種々の異なる方法で制御可能とされる。流動の観点からして、圧縮チャンバー34で圧縮されたフレッシュチャージが、その圧縮の間に既に初期の拡張された貫流チャンバー内へと押し込まれ、また少なくとも貫流チャンバーとパワーチャンバーとの間が実質的に平衡状態となったときに、そこからパワーチャンバー内へ押し出されるのがエネルギーに関して有利であり、押し出しの間に貫流チャンバーとパワーチャンバーとの間の平衡状態を実質的に維持することができる。その結果、押し込み及び押し出しの重複が可能とされる。圧縮チャンバーの容積が押し込みの最後に約0(ゼロ)となり、貫流チャンバーの容積が押し出しの最後に約0(ゼロ)となる場合には、パワーチャンバーの外部で圧縮されたフレッシュチャージ全部が確実にパワーチャンバー内へと到達する。パワーチャンバー内での燃焼状態に関しては、貫流の終了後に押し込みが開始されるのが有効とされ、貫流チャンバーの圧力は、そこに一時的に収容されたフレッシュチャージの加熱による排気ガスエネルギーによって増加し、また、そこから比較的短時間での押し出しが生じる。
更に、前述の内容から導き出せるように、フレッシュチャージの圧縮は、圧縮チャンバーの最大容積と、圧縮容積と、即ちパワーチャンバー36の最小容積との関係によって生じる。膨張は、排気バルブ50の開放時点でのパワーチャンバー36の容積と圧縮容積との関係によって生じ、従って圧縮よりも大きくなることができる。従って、本発明の内燃機関は、広範の膨張、即ち圧縮よりも大きく、熱力学上有利な膨張での運転が可能とされる。
フレッシュチャージの実際の圧縮、即ち各吸気ストローク間に吸入されるフレッシュチャージ容積とパワーチャンバーの最小容積との関係は、フレッシュチャージ吸気バルブ46の制御タイミングによって変更可能とされる。本出願の技術分野及びエンジンの負荷スペクトルによれば、部分的な負荷運転範囲のみにおいて拡張された膨張、即ち圧縮よりも大きな膨張での運転が適切とされる。このことは、例えば、圧縮ピストンの上死点よりも前に、或いは内燃機関の負荷が低下する圧縮ピストンの上死点の後で、フレッシュチャージ吸気バルブを次第に閉止して、フレッシュチャージバルブ46のバルブ制御タイミングを変更することによって達成することができ、これにより実際に吸入され、そこで圧縮されるフレッシュチャージ容積が低下する。そのような場合には、圧縮ピストン16及び圧縮シリンダー20を、パワーピストン18及びパワーシリンダー22と同一の幾何学寸法で、即ち同一のボア及びストロークで構成することができる。そのような実施形態においても、圧縮ピストンの上死点における圧縮チャンバーの容積がほぼ0(ゼロ)である場合に有利とされ、これによりフレッシュチャージ全部が貫流チャンバー内へと押し込まれる。
図11には、本発明のカム機構が典型的な形態で図示されている。シリンダーの端壁部のうちパワーチャンバー36の上方を塞ぐ部位(端壁部)が70で示されている。シリンダーの端壁部のうち圧縮チャンバー34の上方を塞ぐ部位(端壁部)が72で示されている。バルブ及びカムは、前述の図面の場合と同一の参照符号で示されている。
バルブ機構は、2つのカムシャフト74及び76を含み、ギア78が一方のシャフトで駆動され、チェーン又はカムベルトを介してクランクシャフトのギアに連結され、またクランクシャフトと同じ速度で回転される。カムシャフトは、エンジンに対して固定されるよう図示されていないベアリングで支持され、互いに噛み合うギアホイール80及び82を含み、これによりこれらギアホイールは、同じ速度で反対方向に回転する。2つのフレッシュチャージ吸気バルブ46はそれぞれ、カムシャフト74及び76のそれぞれに形成されたフレッシュチャージカム56によって駆動されるように構成されている。
図示された実施形態では、排気バルブ50は、カムシャフト74又は76の一方に形成された図示されていない排気カムによって駆動されるように構成されている。排気バルブ50は両方のカムシャフトに形成されたカムによって駆動可能とされ、或いは2つの排気バルブを設けることが可能とされる。
吸気バルブ54は、カムシャフト74に形成された吸気カム60によって駆動され、吸気バルブのシャフトは、貫流ピストン40を通じて誘導されると共に、図1から明らかなようにシールされる。貫流ピストン40は、圧縮チャンバー34及びパワーチャンバー36に重なり合い、上面視が楕円形状とされ、また図示の実施例のように4つのシャフトと一体構造とされ、ローラー84はシャフトの自由端で支持され、それぞれカムシャフト74及び76のそれぞれに形成された貫流カム62に当接する。ローラー84は、スプリング62によって貫流カム62上への当接が促進されており、エンジンハウジングと貫流ピストン40のうち参照符号のないシャフトとの間に支持され、即ちスプリングは、図1中の貫流ピストン40を貫流チャンバー42が最大容積となる位置へと上方へ押圧している。カム62は、これらカムがカムベース円に当接する際、貫流ピストン40がスプリングの荷重に抗して、貫流チャンバー42の容積が最小に及び/又はほぼゼロになる位置へと下方へ押圧されるような輪郭を描く。カムに輪郭が傾斜しており、これにより貫流ピストンは、図9中に示す2倍長の破線に対応したストロークを遂行し、貫流チャンバー内の圧力がスプリング86の荷重を促進する。説明した構造によれば、従来のカム駆動のようにカム機構に高い面圧を生じさせない構造が達成される。
図12には、吸気バルブ54を有する貫流ピストン40と、それに収容された貫流バルブ52の断面構造が示されている。貫流ピストン40は、1つの又はそれよりも多い数のシール90を介して上方及び下方へと移動可能とされると共に、シリンダーヘッド30でシールされている(図1)。吸気バルブ54のシャフトはスリーブ92内で誘導されると共に、それに対してシールされ、今度はスリーブ92が貫流ピストン40内で誘導されると共に、それに対してシールされている。
貫流バルブ52のシャフトは、シールされた状態で移動可能に誘導され、貫流ピストン40は、貫流ピストンのカラーに上端が支持され、且つ貫流バルブ52に固定状に連結されたカラーに下端が支持されるスプリング94によって、図12のように下方へと押圧されている。スリーブ96は、シャフトの上端に取り付けられ、貫流ピストン40の最大ストロークよりも相当に小さい移動量hで貫流ピストン40に対して移動可能なカラーを含んでいる。
図示されたピストンでは、貫流ピストン40は、貫流チャンバー42の容積が最小となり、また貫流バルブ52のバルブプレートが、端壁部32(図1)に形成されたバルブシート98に当接する位置を想定している。
既に説明したように、貫流バルブ52は、最初に貫流ピストン40のその上死点からストロークhまでの動作の間は閉止状態に維持可能とされ、またそこでバルブシート98から有効に持ち上がる(離間する)機能を果たす。スプリング94の寸法により、貫流ピストン40がストロークhで動作する前に既に、圧縮チャンバー34の圧力がその荷重に打ち勝ち、これにより貫流ピストン40がその上死点から離間動作を開始した後すぐに、貫流バルブ52が既に開放される。
典型的に述べた本発明の内燃機関は、種々の方法での変更が可能とされる。
貫流バルブ52は、エンジンハウジングに支持されたスプリングの荷重に抗して圧縮チャンバー34の圧力のみによって開放される簡便なチェックバルブ(逆止弁)として形成可能とされ、それに応じてスプリングの荷重が調節される。
貫流バルブは、貫流ピストン自体が適切な態様で形成されるときには、それ自体の構成要素として省略が可能である。
貫流ピストン40は、フレッシュチャージをパワーチャンバー36内へと押し込んだ後すぐに、その下死点に向けて移動可能とされ、吸気バルブ54が閉止し、その一方で貫流チャンバー42の容積が増加し、これにより圧縮ピストン16は、上方への動作の開始後すぐに貫流チャンバー42内へとフレッシュチャージを移送する。
各バルブの開放時点及び閉止時点を運転状態に対応させるべく、位相調節装置を設けることができる。更に、内燃機関の図示されていないクランクシャフトの回転によってはバルブを直接的に駆動せず、適切に制御されるバルブ自体のバルブ駆動部を設けることが可能とされる。実際の圧縮状態及び点火状態が排気バルブの閉止時点により影響を受けることができ、この閉止時点を、適切な調節装置によって適宜に異なる運転状態に適合可能とされる。
触媒コンバーターを暖機開始時及び暖機の間に加熱するという目的のために、触媒コンバーターを速やかに加熱するべく早期に開放するよう調節可能なバルブ機構を用いて、バルブ50を駆動するのが有利とされる。同じ目的のために、フレッシュチャージがもっと後でパワーチャンバー内へと押し込まれるように、及び/又は、極力遅れて燃焼が生じるように触媒コンバーターを加熱するべく、貫流バルブ52を駆動するのが適切とされる。
パワーチャンバー36内への激しいチャージ動作に対応するべく、吸気バルブ54をマスキング(遮蔽)するのが有利となり得る。
カム機構の代わりに、特に貫流ピストン40を確実に駆動するべく、油圧式、空気圧式、又は電気式の駆動部を設けることができる。
貫流ピストンの動作は、圧縮ピストンの圧縮ストロークの最初に、貫流チャンバーの容積が最大になる位置の近傍に少なくとも配置されるように、制御可能とされる。貫流バルブは、実質的に圧縮ピストンの全圧縮ストロークの間に開放され、これによりフレッシュチャージの圧縮及び貫流チャンバー内へのその押し込みは、同時に、或いは少なくとも実質的に重複して発生する。
予定のモータ構造及びエンジン特性結果に依存する場合、圧縮シリンダー及び/又はパワーシリンダーが幾何学的圧縮を変更するためのシステムと共に装備されることが、或いはバルブ制御時間の適切な変更によって実際の圧縮を変更することが有利になり得る。同様に、圧縮ピストンと関連するパワーピストンとの動作間の位相差を変更可能とするシステムを設けることが適切とされ得る。
例えば、カムシャフトギアホイール78(図11)を駆動するチェーン又はカムシャフトに交互に高荷重が作用するため、クランクシャフトとカムシャフトとの間に中間シャフトを設けるのが有利とされ、その中間シャフトは、シリンダーヘッドの構造上の高さを抑えるべく、図11におけるカムシャフト74及び76の下方に配置されるのが有利とされる。中間シャフトは、小径の駆動ギアを含み、これによりこの中間シャフトは、カムシャフトよりも高い回転速度で回転される。2つのカムシャフトが、中間シャフト上のギアホイールを介して反対方向に駆動されるのが好ましく、カムシャフトのギアホイールは、相対的に大きく、これによりクランクシャフトとカムシャフトとの間に1で伝達比が達成される。第1の配置状態(2つの圧縮シリンダー/パワーシリンダーユニットを備えた4シリンダー装置の配置状態)の質量モーメントを補正するために、クランクシャフトに対して反対方向に回転するカムシャフト上に補正質量が配置されるのも有利とされ、補正質量は、例えばクランクシャフトの両端に配置され、また互いに180度オフセットされる。
ピストン及びピストンストロークの幾何学形状は、熱力学上の因子の観点での要請にしたがって構成され、低い圧縮仕事及び貫流仕事によって圧縮チャンバー36の充填度合いが極力高められ、また外部スパーク点火なしに内燃機関が運転される場合に、パワーピストン18の上死点の領域において、直噴燃料又は直接導入されたガスが確実な形態で、自然に点火する温度に達する。ガソリンによる外部スパーク点火のためには、圧縮端温度をそれに応じてより低くするこができる。
本発明の内燃機関は、吸入エンジンとして、或いは所定のチャージ形態での運転が可能とされる。
(頭部に制御されるバルブを備えた2サイクルエンジンに類似の)別のパージバルブを利用することによって、パワーシリンダーへのチャージ混合物に作用することが、即ち、残留ガスの押し出しを促進することが有利とされ、このため「排気閉止」で温度レベルがより低下したときに、より多くのフレッシュエアーがパワーシリンダー内に流入する。
図9及び図10のグラフと、図11及び図12の図面に関連する典型的なエンジンは、以下のような特性を有する。
Figure 0005343087
このエンジンの過膨張は約2.5であり、これは最大負荷効率のために最適とされる。過膨張がそれよりも低い値、例えば1.8では、一部の付加範囲において効率を最適化するのに有利とされ、即ちパワーピストンをより小さくすることが可能となる。
本発明のエンジンによれば、実際に20[bar]を超える中間圧力が、ディーゼル燃料と同様にガソリンの直噴において達成されており、また実際に55[%]を超える効率が達成されている。
パワーチャンバーと貫流チャンバーとの容積比は、それぞれ関連するピストンの死点において、25から60の間にあるのが有利とされる。パワーチャンバーと貫流チャンバーとの容積比は、それぞれ関連するピストンの下死点において、15から25の間とされる。パワーチャンバーの幾何学上の圧縮比は、25から40の間が有利とされる。貫流バルブがその上死点に達したときに閉止する吸気バルブは、パワーピストンの上死点の前でクランク角が20から5度の間の範囲で閉止するのが有利とされる。上述の値は、単なる典型例であり、これに限定されるものではない。
外部スパーク点火でない運転では、低温時の始動性を促進するべく、グロープラグを装着することもできる。
内燃機関は、パワーシリンダー22(噴射バルブ38)内へと直噴されるように上述したが、外部スパーク点火を用いることなく、実質的に流体燃料又は気体燃料のいずれでも運転が可能とされる。
前述の内容では、直噴時期については詳細に説明されていないが、直噴の時間推移は、公知の時間推移として選択が可能であり、燃料噴射は、パワーピストンの上死点の前で生じるプレ噴射と、上死点の領域で或いは上死点の後の領域で発生するメイン噴射に再分割される。本発明によれば、パワーチャンバー内への燃料噴射が可能とされ(流体燃料)、或いは時点BとC(図10)との間で導入可能とされ(気体燃料)、即ちパワーチャンバー内へと燃料を供給可能とされ、その一方で残留ガスのみがパワーチャンバー内に存在する。この残留ガスは、供給された燃料と共に圧縮され、高温にために燃料と残留ガスとが良好に均質化され、これにより燃料は、ディーゼル燃料を使用した場合であっても時点Cでは完全にガスの形態で存在し、この時点では、吸気バルブが開放され、また自然点火によって、圧縮されたフレッシュエアーと共に完全燃焼する。パワーチャンバー内の残留ガス量は、排気バルブの閉止時点Bによって定まる。吸気バルブの開放時点C及び吸気バルブの閉止時点Dは、圧縮チャンバー、貫流チャンバー及びパワーチャンバーの容積と、またパワーピストンが上死点にあるときのパワーチャンバーの容積と共に、点火状態が参照され、パワーピストンの上死点の後において、空気−燃料−残留ガスのガス混合物の実質的な燃焼が生じる。圧縮されたフレッシュエアーの導入前に、先に論じた燃料−残留ガスのガス混合物の均質化が適切な形態で生じるよう、時点B(排気バルブ閉止)と時点C(吸気バルブ開放)との間の期間が選択される。パワーピストンの上死点近傍での直噴に比べて、本発明における残留ガス中への燃料の噴射及び/又は導入は、燃料を良好に均質化できる点で有利なだけでなく、より低い圧力レベルで噴射が生じるという点で有利とされ、このため噴射機器のための費用が低減される。フレッシュエアーを含むパワーチャンバー内に燃料が慣習的に噴射されるのに対して、本発明によれば、圧縮されたフレッシュエアーは、可燃性でない燃料−残留ガスのガス混合物が存在するパワーチャンバー内へと供給される。
特に、以下の説明のように、内燃機関が、パワーチャンバー外の外部混合構成で運転される場合には、貫流チャンバー42からパワーチャンバー26内へのフレッシュチャージの押し込みは、貫流チャンバー42内の圧力がパワーチャンバー36内の圧力よりも高くなるように、パワーチャンバー36内での燃焼が参照されなければならない。各パワーサイクルに(定量制御で)供給されたフレッシュエアーの量が負荷上昇とともに上昇したときに、貫流チャンバー42内の圧力が上昇する。一方では、吸気バルブ54が開放されたときにパワーチャンバー36内に形成される圧力は、負荷に殆ど依存しない。従って、図13に示すように、上下反転した形態で吸気バルブ54を形成するのが適切とされる。
図13に示すように、吸気バルブ54は、上方からスプリングによって、シリンダーヘッドの内壁部(端壁部)32(図1)に配置されたバルブシートに当接するように下方へと押圧され、即ち吸気バルブ(「ディスクバルブ」ともいう)54のディスクは、下方に向けて先細状とされたシート面で形成されている。吸気バルブ54の開放は、ローラーロッカーアーム(「ローラーカムフォロワー」ともいう)102を介して生じ、当該ローラーロッカーアームは、ローラーロッカーアーム102のスプリング100との係合部と、ローラーロッカーアームのうちエンジンハウジングに取り付けられたカウンターベアリング104上の吸気カム60との当接部の間に支持されており、カウンターベアリング104は、バルブクリアランスの補正要素として有利に形成されている。ローラーロッカーアーム102は、明白なように、バルブを開放するべく、吸気カム60によってスプリング100の荷重(「弾性付勢力」ともいう)に抗して反時計方向に回転され、その結果、吸気バルブ54がパワーチャンバー内の圧力によって開放される。
バルブシートは、パワーチャンバーの壁面上に残留ガス絶縁のコーティングが形成されるよう構成されるのが有利とされる。
図11を参照しつつ既に説明のように、パワーチャンバー内へフレッシュチャージを押し込むために、貫流ピストンを駆動するのに相当の大きさの荷重が必要とされる。バルブ機能への過度の負担なしにこの荷重に対応するためには、1つ又は必要に応じてそれよりも多い数の図14に示すようなローラーカムフォロワー106を使用して貫流ピストン40を駆動するのが有利とされる。ローラーカムフォロワー106は、必要に応じて108においてバルブクリアランスの補正要素を使用することによって、エンジンハウジング上に支持される。ベアリング108から離間する端部では、ローラーカムフォロワーのローラー110が貫流カム62に当接している。ローラーカムフォロワー106上のローラー110とベアリング108との間にカムフォロワー112が挿入されており、このカムフォロワー112が貫流ピストン40を駆動する(図1)。この構造によって生じるテコの作用の結果、カムフォロワー112が遂行するストロークを、ローラー110のストロークよりも小さくすることが可能とされ、またカムフォロワー112から貫流ピストンへと伝達される荷重は、対応する形態で増加が可能とされる。
図15には、図13及び図14の構成要素を有するバルブ機構が示されており、その構造は、使用されている参照符号を参照することによって明白であり、従って詳細については記載しない。図13及び図14における構造は、単独で、或いはその組み合わせによって使用可能とされる。
図16を参照することによって、この内燃機関が外部混合構造でも運転可能であることが以下に説明される。
図16には、圧縮シリンダー20、貫流シリンダー33及びパワーシリンダー22からなるユニットの原理の概観が示されている。(燃料)噴射バルブ126は、圧縮シリンダー20に通じるフレッシュチャージ吸気マニホールド44の中に配置されており、噴射バルブは、従来の吸気マニホールド燃料噴射として公知のように、流体燃料又は可燃性ガスをフレッシュチャージ吸気マニホールド44内へ噴射し、フレッシュチャージ吸気マニホールド44は、エアフィルターを通じてフレッシュエアーを吸気し、或いはチャージ装置の圧縮機に接続される。特に、マルチシリンダー型内燃機関用の圧縮シリンダー20に通じる各フレッシュチャージ吸気マニホールド44の中に、1つ又はそれよりも多い数の噴射バルブ126が配置され、燃料噴射は好ましくは連続的ではなく、むしろ単に時間周期で行われ、その間に圧縮チャンバー34は開放されたフレッシュチャージ吸気バルブ46(図18には図示されていない)を通じてフレッシュエアーで充填される。
どの種類の流体燃料又は気体燃料でも噴射バルブ126を通じて供給可能とされる。不揮発性のディーゼル燃料も噴射可能とされ、発生した混合物は、圧縮チャンバー34での圧縮の間に少なくとも実質的に完全に気化し、またその後に貫流チャンバー42を介してパワーチャンバー36内へと押し込まれ、良好な形態で前処理され、また均質化される。パワーチャンバー内へと押し出された混合物は、パワーチャンバー内の高い壁温によって、またパワーチャンバー内の高温の残留ガスとの流通混合の形態(流通しつつ混合される形態)によって点火状態になる。その結果、ディーゼル燃料−空気の混合物も、ガソリン運転でのガソリン−空気の混合物も、或いは気体燃料でのガス−空気の混合物も直ぐには自然に点火せず、むしろ混合物の押し込みの時間的な推移によって図10に示すような比較的円滑な燃焼が生じ、従来のガソリンエンジン車、又は従来のディーゼル車での運転変動で生じるような、外部噴射及びパワーチャンバー内への直噴による圧力変動が生じることなく圧力が推移する。この円滑な燃焼の結果、負荷を受けている構成要素の寸法を縮小することが可能なり、またエンジンの耐用年数が増える。本発明の方法で達成される別の利点として、特にディーゼル燃料の吸気マニホールド噴射のために、微粒子フィルターを省略でき、また安価な触媒による従来の排気ガス後処理によって、厳しい排気ガス排出規制の履行が可能となる。例えば低温始動や不完全な低負荷のような所定の運転状態に対処するべく、スパークプラグやグロープラグのような点火補助装置をパワーチャンバー内に設けることが適切とされ得る。
上述の内燃機関によって達成されるトルク及びパワー特性は、パワーチャンバー内へ燃料を直噴する運転であるか、或いは外部燃料噴射の運転であるかには関係するものではなく、外部燃料噴射では、システム圧力(噴射バルブの上流の圧力)が3から8[bar]の間にあれば足りる。
噴射バルブ126又は複数の噴射バルブが圧縮チャンバー34の上流に配置される必要はない。圧縮チャンバー34内へ、或いは貫流チャンバー42内への直接噴射が可能とされる。
本発明で達成される実質的な効率は、本質的に以下の要素の少なくとも1つにより改善される。
圧縮の一部が燃焼チャンバー及び/又はパワーチャンバーの外部で発生し、このため低温で圧縮が生じ、圧縮仕事が低下する。排気ガスエネルギーの一部は、相当に或いは僅かに加熱された圧縮フレッシュチャージを高温の燃焼チャンバー及び/又は高温のパワーチャンバー内へと供給するのに、またそこで熱エネルギーを吸収するのに使用される。排気ガスの熱を使用する更なる改良では、排気マニホールド48から流出する排気ガスは、そのガスを例えば当該ピストンに沿って或いは当該ピストンを通じて貫流ピストン40の背面に誘導することによって、及び/又は、貫流シリンダー33の周壁を加熱することによって、貫流チャンバー42の加熱に使用できる。この場合、貫流ピストンは貫流チャンバーに対して断熱されない。2つの貫流シリンダーでの運転も可能とされ、その貫流チャンバーには、排気ガスと圧縮されたフレッシュチャージが交互に供給される。燃焼チャンバーの温度が極力上昇しないように貫流チャンバーが加熱される。貫流チャンバー内へと押し込まれた圧縮フレッシュチャージの加熱の際に、更に熱により圧縮され、吸気バルブの開放時点がそれに応じて適合される。
圧縮機に対して断熱されたパワーチャンバーは、僅かな冷却のみが必要とされ、或いはパワーチャンバーは外部冷却を完全にやめることができるため、壁部の熱ロスが低減される。
プロセスステップは拡張された膨張で生じる。
本発明のエンジンの更なる別の利点は、その円滑な運転及びその種々の燃料性能にある。流体燃料、気体燃料、及び粉体状の固形燃料での運転が可能とされる。
図17には、本発明の3シリンダー型の内燃機関が図示されており、圧縮シリンダー20、貫流シリンダー33及びパワーシリンダー22からなる個別のシリンダーユニットが一列に連続状に配置されている。圧縮ピストン16及びパワーピストン18は、ピストンロッド120,122(図18)を介して共通のクランクシャフト124に連結可能とされ、その回転軸が図17に二点鎖線で示されている。それぞれのユニットの、圧縮ピストン16のピストンロッド120と、パワーピストン18のピストンロッド122とは、共通のクランクでの作動が可能とされ、当該クランクは、互いにオフセットされた2つのクランプピンセグメントを有するクランプピンを含み、またクランクシャフト124の長手方向に関して連続状に配置されており、クランプピンセグメントを用いることによって、パワーピストン18の動作と圧縮ピストン16の動作との間に所望の位相オフセットが形成される。パワーピストン18及び圧縮ピストン16は、パワーピストンと圧縮ピストンとの間に所望の位相オフセットを形成させるべく、それら自体のそれぞれのオフセットで、及び/又はカムでの作動も可能とされ、そのオフセットはゼロとも成り得る。
例えば、図11又は図15にしたがって、全てのバルブのために、また貫流ピストンのために、所定のカム機構が設けられ、このカム機構は、内燃機関全体に沿って延在している。
圧縮ピストン、貫流ピストン、及びパワーピストンを有する本発明のシリンダーユニットは、従来のエンジンでの公知のように、如何なる数や如何なる配置でも実現可能とされる。
エンジンの熱歪みを最小とするためには、2つの圧縮シリンダー及び2つのパワーシリンダーを有する実施形態が特に有利とされ、エンジンの外部端面、即ち制御機構側及びフライホイール側にパワーシリンダーを配置し、またそれらの間に圧縮シリンダーを配置する。一方で、考えられるチャージシステムにおいて最適なトルクバランス及び短い導管経路のためには、端面に圧縮シリンダーを設け、それらの間に高温シリンダーを設けるのが有利とされる。
本発明の内燃機関は、空気−燃料の混合物の理論混合比(λ=1)で、或いは直噴用と吸気マニホールド燃料噴射用の純粋に負荷依存の燃料噴射量での運転が可能とされる。第1のケースでは、空気量が負荷依存の形態で制御され計量されなければならず、これにより燃料噴射量を空気流量に転換することができる。内燃機関の運転ポイントに依存して、1つの運転モードから別の運転モードへの変更が可能とされる。各運転モードでは、排気ガス後処理に利用される触媒、及び排気ガス循環量のような排気ガス後処理用の別の重要なパラメータが公知の形態で定められる。
本発明の内燃機関は、多くの燃料に対して有効とされ、即ち、当該内燃機関は、説明のように実質的に全てのタイプの流体燃料及び気体燃料での運転が可能とされる。それぞれ利用され及び/又は補給される燃料は公知の形態で定められ、また個別のバルブ制御タイミングは、最適なバルブ駆動システムを用いることによって、それぞれに燃料に適用可能とされる。特には、排気バルブの開放時点を変更することによって、またクランクシャフトの回転に対する貫流ピストンの動作の位相を変更することによって、パワーピストンの上死点の時点で達するパワーチャンバー内の温度が影響を受ける。
吸気マニホールド燃料噴射の低温始動性能を改善するには、噴射バルブの向かいに一時的に加熱される加熱要素を配置するのが適しており、低温状態では混合気がこの加熱要素によって支援される。更に、パワーチャンバー内に一時的に加熱される加熱要素、例えばグロープラグを配置するのが適している。
特に直噴運転の際、異なる燃料では、バルブの同一の制御時間で内燃機関を運転可能とされ、また噴射時間を変更するのみによって燃料タイプに対処でき、電気的制御が可能な噴射バルブによる簡便な方法でこの変更を行うことができる。
前述のパワーチャンバーへの直噴又は燃料導入の方法では、フレッシュエアーを含む圧縮ガスに燃料が導入され、或いは空気及び/又は酸素を含まない残留ガスに燃料が導入され、或いは未圧縮の又は圧縮されたフレッシュエアーにパワーシリンダーの上流へ燃料が導入され、これらを互いに組み合わせることができ、これにより燃料比率が、異なる方法にしたがって設定される。この比率は、例えば負荷依存又は温度依存の形態で変更することができる。
本発明の内燃機関の上述の実施形態では、その中で負荷制御及び燃料導入に関する以下の実施形態が可能とされる。
ガソリン又はディーゼル燃料の形態の気体燃料又は流体燃料が包囲された状態、或いは低い正圧の下では、吸気マニホールド内への燃料噴射は、例えばマルチポイント燃料噴射システムを介して可能とされる。この目的のため、ラムダ(理論混合比)を1とする制御、或いはリーンバーン(希薄燃焼)制御は、定量制御を用いる場合と同様に、吸気マニホールド内のスロットルバルブを介して、或いはバルブ制御時間が可変とされたフレッシュチャージ吸気バルブを介して可能とされる。更に、流体燃料は、圧縮シリンダー内に、必要に応じては貫流シリンダー内にも直接的に噴射可能とされ、所定のスロットルバルブを介して、有利にはバルブ制御時間が可変とされたフレッシュチャージ吸気バルブを介して負荷を制御することができ、ラムダ(理論混合比)を1とする制御が、リーンバーン(希薄燃焼)制御と同様に可能とされる。燃料の量によって負荷を設定することもできる。
代わりの実施形態では、ガソリン又はディーゼル燃料を高温のパワーシリンダー内へ直接的に噴射することもでき、燃料噴射量によって負荷が有利に調節される。
吸気マニホールド内又は圧縮チャンバー内への燃料導入の間では、フレッシュチャージ吸気バルブの可変制御タイミングを使用してフレッシュエアーの流量を制御することによって、負荷制御が有利に行われる。圧縮チャンバーに対するパワーチャンバーの容積比を、例えば1から3の間とすることができ、この容積比は、乗用車の内燃機関として使用される場合には、貨物自動車として使用される場合よりも小さくすることが可能とされ、また最大負荷で主に稼動する定置機関として使用される場合が最も大きい。
パワーチャンバー内の残留ガスの量は、排気バルブの可変制御タイミングによって制御可能とされ、排気バルブのこの可変制御タイミングは、最大負荷で主に稼動する際には固定して設定することができる。
パワーピストンと圧縮ピストンとの間の位相差は、例えばクランク角で−5度と+10度との間とすることができ、高温のパワーピストンは、低温の圧縮ピストンに対して遅れる(遅延する)のが有利とされる。
上述の出願では、フレッシュチャージ吸気バルブは、圧縮ピストンの上死点の後で、例えば圧縮ピストンの上死点の後で20度に至ると有利に開放され、また圧縮ピストンの下死点の後で、例えばその下死点の後で20度に至ると有利に閉止される。
貫流バルブは、圧縮ピストンの上死点の相当に前で、例えば上死点の前の90度で有利に開放され、また圧縮ピストンの上死点の領域で閉止される。
貫流チャンバーとパワーチャンバーとを接続する吸気バルブは、パワーピストンの上死点の前で、例えばその上死点の前10度で有利に開放される。その吸気バルブは、高温のパワーピストンの上死点の後で、例えばその上死点の後35度で閉止され、パワーチャンバー内へと押し込まれたフレッシュチャージの燃焼は、吸気バルブの開放期間にわたって実質的に維持される
排気バルブは、高温のパワーピストンの上死点の相当に後で、例えばその上死点の後150度で有利に開放され、またパワーピストンの上死点の前で、例えばその上死点の前70度で有利に閉止される。
貫流ピストンは、圧縮ピストンの上死点の相当に前で、例えばその上死点の前90度で、その動作を有利に開始する。貫流ピストンは、低温の圧縮ピストンの上死点の後で、例えばその上死点の後30度でその動作を有利に終了する。
上記の値は典型例であって、これに限定されるものではなく、また例えば外部混合構造に適用される。
10 クランクシャフト
12 ピストンロッド
14 ピストンロッド
16 圧縮ピストン
18 パワーピストン
20 圧縮シリンダー
22 パワーシリンダー
24 シリンダーライナー
28 シリンダーハウジング
30 シリンダーヘッド
32 端壁部
33 貫流シリンダー
34 圧縮チャンバー
36 パワーチャンバー
38 燃料噴射バルブ
40 貫流ピストン
42 貫流チャンバー
44 フレッシュチャージ吸気マニホールド
46 フレッシュチャージ吸気バルブ
48 排気マニホールド
50 排気バルブ
52 貫流バルブ
53 スプリング
54 吸気バルブ
56 フレッシュチャージカム
58 排気カム
60 吸気カム
62 貫流カム
70 端壁部
72 端壁部
74 カムシャフト
76 カムシャフト
78 ギア
80 ギアホイール
82 ギアホイール
84 ローラー
86 スプリング
90 シール
92 スリーブ
94 スプリング
96 スリーブ
98 バルブシート
100 スプリング
102 ローラーカムフォロワー
104 カウンターベアリング
106 ローラーカムフォロワー
108 ベアリング
110 ローラー
112 カムフォロワー
120 ピストンロッド
122 ピストンロッド
124 クランクシャフト
126 (燃料)噴射バルブ

Claims (24)

  1. パワーピストン(18)によって規定されるパワーチャンバー(36)と、吸気バルブ(54)及び排気バルブ(50)を有する少なくとも1つのパワーシリンダー(22)と、
    圧縮ピストン(16)によって規定される圧縮チャンバー(34)と、フレッシュチャージ吸気バルブ(46)及び貫流バルブ(52)を有する少なくとも1つの圧縮シリンダー(20)と、
    前記貫流バルブの開放時に前記圧縮チャンバーに接続され、前記吸気バルブの開放時に前記パワーチャンバーに接続される貫流チャンバー(42)と、
    前記パワーピストン及び前記圧縮ピストンに接続されるクランク機構(10)と、
    バルブ作動制御を行うための制御装置(53,56,58,60,62)を備え、
    前記貫流チャンバーは、上死点と下死点との間を移動可能な貫流ピストン(40)によって規定され、前記貫流ピストンが上死点にあるときの前記貫流チャンバーの容積は、前記貫流ピストンが下死点にあるときの前記貫流チャンバーの容積の15[%]よりも小さく、また、前記貫流ピストンの動作が、前記圧縮ピストン(16)及び/又は前記パワーピストン(18)の動作に関連しており、
    前記制御装置は、前記圧縮チャンバー内へフレッシュチャージが流入すると共に前記圧縮チャンバーの容積が増加し、前記圧縮チャンバー内のフレッシュチャージが圧縮されると共に前記圧縮チャンバーの容積が減少し、圧縮されたフレッシュチャージが前記貫流チャンバー内へ押し込まれ、前記貫流チャンバー内の圧縮されたフレッシュチャージが前記パワーチャンバーへと押し出され、前記パワーチャンバー内のフレッシュチャージが燃焼されると共に前記パワーチャンバーの容積が増加し、熱エネルギーが物理的出力に変換され、燃焼したチャージが吐出されると共に前記パワーチャンバーの容積が減少するよう、バルブ作動制御を行い、
    前記圧縮シリンダー(20)及び前記パワーシリンダー(22)が互いに隣接して配置され、前記貫流ピストン(40)が貫流シリンダー(33)内で作動し、前記貫流シリンダーは、前記圧縮ピストン(16)及び前記パワーピストン(18)の動作方向に関する視野では、前記圧縮シリンダー及び前記パワーシリンダーと重なり合うと共に、前記圧縮シリンダー及び前記パワーシリンダーの上方の端壁部に共通な端壁部(32)によって規定され、前記端壁部の開口は、前記貫流チャンバーと前記圧力チャンバー及び前記パワーチャンバーを連通するように形成されている内燃機関であって、
    前記端壁部は、前記貫流チャンバー(42)の下方の端壁部(32)を構成し、前記開口の一つは、前記吸気バルブ(54)によって閉止可能であり、前記吸気バルブは、ディスクバルブとして形成され、そのディスクは、前記貫流チャンバー(42)内に配置されて、前記端壁部(32)に向けて移動する際に閉止され、また、前記吸気バルブは。シャフトを有して形成され、そのシャフトは、前記貫流ピストン(40)を通じてシールされた状態で延在しており、他の開口は、前記貫流バルブ(52)によって閉止可能であり、前記貫流バルブは、ディスクバルブとして形成され、当該ディスクバルブは、前記圧縮チャンバー(34)から離間する方向に移動する際に開放され、また、そのシャフトが前記貫流ピストン(40)の中をシール状態で誘導されることを特徴とする内燃機関。
  2. 請求項1に記載の内燃機関であって、
    前記貫流バルブ(52)は、前記貫流ピストン(40)が上死点に配置されたときに閉止され、また前記貫流ピストン内に配置されたスプリング(53)の荷重によって前記貫流ピストン外へと移動可能とされていることを特徴とする内燃機関。
  3. 請求項1または2に記載の内燃機関であって、
    前記圧縮ピストン(16)及び前記パワーピストン(18)は、共通のクランクシャフト(10)に連結されていることを特徴とする内燃機関。
  4. 請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の内燃機関であって、
    前記クランク機構(10)で駆動されるカム機構(74,76)によって、前記貫流ピストン(40)が駆動されることを特徴とする内燃機関。
  5. 請求項4に記載の内燃機関であって、
    前記カム機構(74,76)は、前記貫流ピストン(40)を駆動する複数のカム(62)を含むことを特徴とする内燃機関。
  6. 請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の内燃機関であって、
    前記パワーシリンダー(22)及び前記圧縮シリンダー(20)は、互いに断熱されており、前記パワーシリンダーの温度レベルが前記圧縮シリンダーの温度レベルよりも高いことを特徴とする内燃機関。
  7. 請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の内燃機関であって、
    複数のシリンダーユニットを含み、当該シリンダーユニットは、一列に配置されると共に、それぞれ圧縮シリンダー(20)、パワーシリンダー(22)、及び貫流シリンダー(33)を有し、前記圧縮シリンダー及び前記パワーシリンダーはそれぞれ、2つの隣接する列の1つに配置され、前記圧縮ピストン及び前記パワーピストンは共通のクランクシャフトに連結され、前記貫流ピストン(40)は少なくとも1つの共通のカムシャフトによって駆動されることを特徴とする内燃機関。
  8. 請求項1から7のうちのいずれか一項に記載の内燃機関であって、
    燃料供給装置は、前記フレッシュチャージ吸気バルブ(46)の上流に配置された噴射バルブ(126)を含むことを特徴とする内燃機関。
  9. 請求項8に記載の内燃機関であって、
    前記燃料供給装置は、噴射された液体燃料を気化させるための加熱装置を含むことを特徴とする内燃機関。
  10. 請求項1からのうちのいずれか一項に記載の内燃機関であって、
    燃料供給装置は、前記パワーチャンバー(36)内への噴射のための燃料噴射バルブ(38)を含むことを特徴とする内燃機関。
  11. 請求項1から10のうちのいずれか一項に記載の内燃機関であって、
    前記燃料供給装置は、ディーゼル燃料、又はガソリン、又は気体燃料を噴射することを特徴とする内燃機関。
  12. 請求項1から11のうちのいずれか一項に記載の内燃機関であって、
    燃料の種類を検出するための検出装置と、バルブの位相及び開放時間を変更するための装置を備え、これによってバルブの位相及び開放時間、及び/又は、前記クランクシャフトの回転に対する前記貫流ピストン(40)の動作が、利用される燃料に応じて変更可能とされていることを特徴とする内燃機関。
  13. 請求項1から12のうちのいずれか一項に記載の内燃機関であって、
    空気−燃料比率を検出するための検出装置と、当該内燃機関の回転速度を検出するための検出装置と、バルブの位相及び開放時間、及び/又は、前記クランクシャフトの回転に対する前記貫流ピストン(40)の動作を、前記空気−燃料比率及び前記回転速度に応じて変更可能とする装置とを備えることを特徴とする内燃機関。
  14. 請求項1に記載されている内燃機関の運転方法であって、
    前記貫流チャンバー及び前記パワーチャンバーが概ね圧力平衡状態の場合に、前記貫流チャンバーにある圧縮されたフレッシュチャージの押し出しが開始されることを特徴とする方法。
  15. 請求項14に記載の方法であって、
    前記排気バルブは、前記パワーピストンの上死点の前で閉止されることを特徴とする方法。
  16. 請求項14又は15に記載の方法であって、
    圧縮されたフレッシュチャージの、前記貫流チャンバー(42)への押し込みと前記貫流チャンバーからの押し出しは、一時的に重複することを特徴とする方法。
  17. 請求項14から16のうちのいずれか一項に記載の方法であって、
    前記燃料は、同じ相でフレッシュチャージに加えられることを特徴とする方法。
  18. 請求項14から16のうちのいずれか一項に記載の方法であって、
    前記パワーチャンバー(36)内へ燃料が直接導入されることを特徴とする方法。
  19. 請求項18に記載の方法であって、
    燃焼したチャージの吐出後及び圧縮されたフレッシュチャージの前記パワーチャンバーへの押し込み前に、前記パワーチャンバー(36)内へ燃料が供給されることを特徴とする方法。
  20. 請求項18又は19に記載の方法であって、
    圧縮されたフレッシュエアーは、前記貫流チャンバー(42)から前記パワーチャンバー(36)内へと押し出され、更に燃焼開始前に前記パワーピストン(18)によって圧縮されることを特徴とする方法。
  21. 請求項14から20のうちのいずれか一項に記載の方法であって、
    前記貫流シリンダー(33)は、内燃機関の排気ガスによって加熱されることを特徴とする方法。
  22. 請求項14から21のうちのいずれか一項に記載の方法であって、
    前記パワーシリンダー(22)の外部でのフレッシュエアーの幾何圧縮は、前記パワーシリンダー(22)への導入時と、前記パワーシリンダー内で作動するピストン(18)が上死点に達する前との間でフレッシュエアーが受ける幾何圧縮よりも大きいことを特徴とする方法。
  23. 請求項14から22のうちのいずれか一項に記載の方法であって、
    前記圧縮シリンダー(20)は、フレッシュエアーの圧縮の間に生じる熱の少なくとも一部を散逸するべく冷却されることを特徴とする方法。
  24. 請求項14から23のうちのいずれか一項に記載の方法であって、
    前記パワーピストンの上死点における前記パワーチャンバーの容積に対する、流入ストロークの間に流入するフレッシュチャージの容積の比率は、前記パワーピストンの上死点における前記パワーチャンバーの容積に対する、前記排気バルブの開放時における前記パワーチャンバーの容積の比率よりも小さいことを特徴とする方法。
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