JP5233098B2 - ハードコート膜の表面改質方法、光学フィルムの製造方法 - Google Patents
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例えば、液晶ディスプレイに代表される各種ディスプレイの表面は、基材フィルム上に耐擦傷性機能を有するハードコート膜が設けられ、さらに外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するための反射防止膜がハードコート膜に積層されている場合が多い。しかし、ハードコート膜と反射防止膜との組成分が大きく異なると、充分な密着性が得られにくくなった。
特許文献1の手法によれば、接着面を強アルカリ液に浸漬させて密着性を向上させている。このようなアルカリ処理は、処理に要する時間が短時間であり、処理効果も高い。
特許文献2の手法によれば、上述したアルカリ処理の他、フィルムを電極間に設置してコロナ放電を行うコロナ処理や、フィルムの共存下、UV光を放射できる高圧水銀ランプにてオゾンの発生と励起を行うUVオゾン処理によって密着性を向上させている。このようなコロナ処理やUVオゾン処理は、常温の空気中で乾式の処理ができ、特に、コロナ処理は、高速走行処理が可能であった。
特許文献3の手法によれば、被処理物の被処理面に対して紫外光を照射することにより処理物の洗浄又は改質を行う。なお、このような紫外線処理によって被処理面の改質が行われると、密着性も向上する。
また特許文献2に記載のコロナ処理やUVオゾン処理では、アルカリ処理のような環境や安全面での問題や工程の複雑化といった問題は比較的少ないものの、コロナ処理は、密着性の効果が弱いという欠点があった。また、UVオゾン処理は、処理時間が遅いという欠点があった。
また、特許文献3に記載の紫外線処理では、環境や安全面の問題は比較的少ないものの、被処理物によっては劣化することもあった。
すなわち、本発明のハードコート膜の表面改質方法は、ハードコート膜の表面に紫外線処理を施すハードコート膜の表面改質方法であって、紫外線照射雰囲気中の酸素濃度が3〜10%、紫外線ランプ直下での紫外線の積算光量が800〜2000mJ/cm2であることを特徴とする。
ここで、前記酸素濃度が10%であることが好ましい。
ハードコート膜は、後述する基材フィルムの表面の硬度を向上させ、光学フィルムとした際の機械的強度を改善するために、基材フィルムの表面に形成される。なお、ハードコート膜上には、後述する機能膜がさらに形成される。
ハードコート膜を構成する成分としては、特に制限されないが、溶剤系であることが好ましい。例えば、活性エネルギー線硬化単量体を硬化した活性エネルギー線硬化樹脂、有機ケイ素や金属アルコキシドを熱硬化した硬化物、アニオン重合によって得られたエポキシ樹脂などが挙げられ、中でも活性エネルギー線硬化樹脂が好ましい。なお、活性エネルギー線硬化樹脂を構成する活性エネルギー線硬化単量体とは、活性エネルギー線が照射された際に光重合開始剤によって重合し、硬化するものである。
活性エネルギー線硬化樹脂単量体としては、たとえば、多価アルコールのアクリル酸又はメタクリル酸エステル等の多官能性のアクリレート樹脂、ジイソシアネート、多価アルコール及びアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル等から合成される多官能性のウレタンアクリレート樹脂等の活性エネルギー線硬化樹脂を構成する単量体が挙げられる。
(式1) 0.01×Q−1.5<logP<0.01×Q+2.0
(式2) 0.025×Q−4.25<logP
ただし、P>0、Q>0である。
こうして得られるハードコート膜の厚さは、1〜10μmであることが好ましい。
通常、有機系被照射物に紫外線を照射すると、被処理面の分子の結合が切断されると共に、照射雰囲気中に含まれる酸素が紫外線を吸収することで生成する酸素ラジカル(活性酸素)が被処理面に作用して、切断された被処理面の分子と結合し、親水性の高い官能基(例えば、−OH、−COH、−COOH等。)に変換され、処理面が親水化される。
なお、ここでいう「液体」とは、後述する機能膜を構成する組成分を含む塗液のことである。
図1は、本発明の光学フィルムの一例を示す断面図である。この光学フィルム10は、基材フィルム11と、基材フィルム11上に形成されたハードコート膜12と、ハードコート膜12上に形成された機能膜13とを有するものである。この光学フィルム10において、ハードコート膜12は、上述した本発明のハードコート膜である。
また、基材フィルム11は、単層からなってもよいし、複数の層からなってもよい。
基材フィルム11の厚さは、10〜500μmであることが好ましい。
なお、上記一般式Si(OR)4表される有機珪素化合物としてはSi(OCH3)4、Si(OC2H5)4 、Si(OC3H7)4 、Si〔OCH(CH3)2〕4、Si(OC4H9)4 等が例示でき、それらを単独にあるいは2種類以上併せて用いても良い。
このような成分から構成される機能膜13は、単層からなってもよいし、複数の層からなってもよい。
また、機能膜13の厚さは、0.01〜1μmであることが好ましい。
中空シリカ微粒子の平均粒径は0.5〜200nmが好ましい。平均粒径が上記範囲より大きいと機能膜13の表面においてレイリ−散乱によって光が散乱し、白っぽく見えるようになり、透明性が低下する。また、平均粒径が上記範囲より小さいと中空シリカ微粒子が凝集しやすくなる。
なお、基材フィルム11上にハードコート膜12を形成する際の塗布方法としては、ウエットコーティング法(ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアードクターコーティング法、ブレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファーロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等)などを採用できる。
なお、ハードコート膜12上に機能膜13を形成する際の塗布方法としては、ウエットコーティング法(ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアードクターコーティング法、ブレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファーロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等)などを採用できる。
また、上述したように、紫外線処理されたハードコート膜12の表面は親水化されるため、機能膜13を構成する成分が水系であっても、充分な密着性が得られる。
なお、浸透層12cの厚さは5〜100nmが好ましく、6〜30nmがより好ましい。
こうして得られる光学フィルム10は、例えば、高硬度、反射防止、防眩などの機能を発現する。
<光学フィルムの製造>
以下のようにして基材フィルム上にハードコート膜を成膜した。
まず、アクリル酸誘導体(共栄社製、「ライトアクリレートDPE−6A」)80質量部と光重合開始剤である1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティケミカルズ社製、「イルガキュア184」)5質量部とを、メチルエチルケトン50質量部中で混合して塗液を調製した。
次いで、この塗液を、基材フィルムとして厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(150mm×200mm)上にワイヤーバーで塗布し、70℃で1分間乾燥させた後、紫外線硬化させることで、ハードコート膜を形成した。
その後、紫外線照射雰囲気中の酸素濃度3%、紫外線の積算光量1271mJ/cm2にて、形成したハードコート膜表面にエキシマ紫外線を照射した。エキシマ紫外線装置としては、UEEX503(岩崎電気(株)製)を用い、大気圧下、ランプハウス窓面とフィルムとの距離を3mmに設定した。また、なお、紫外線ランプ直下における紫外線の積算光量は、ダイヤモンド紫外線モニタEVUV−200(岩崎電気(株)社製)を用いて測定した。
別途、テトラエトキシシラン40質量部と、低屈折率材料としてシリカフィラー20質量部と、触媒として1.0N−HCl20質量部とを、イソプロピルアルコール20質量部中で混合して低屈折率塗液(機能膜の塗液)を調整し、該塗液を紫外線処理を施したハードコート膜に塗布し、120℃で5分間乾燥させ、反射防止膜(機能膜)を形成させ、光学フィルムを得た。
得られた光学フィルムにおける、ハードコート膜と反射防止膜との密着性の評価を、以下の方法にて実施した。
スチールウール(#0000)により、加重250gで10往復擦り、傷のつき方を目視評価した。傷のつき方は、以下の4段階で評価した。なお、傷を入れる箇所は5箇所とし、各箇所の評価の平均値を、密着性の指数とした。結果を表1と図4に示す。
4:傷を確認することが出来ない。
3:数本の傷を確認できる。
2:十数本の傷を確認できる。
1:多数の傷を確認できる。
碁盤目テープ(クロスカット)法により、100マスのうち剥離しなかった数(残存数)を数えた。結果を表1に示す。
透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製、「H−8000」)による断面観察により、浸透層の厚さを測定した。結果を表1に示す。
酸素濃度を表1に示す値に変化させた以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを製造し、ハードコート膜と反射防止膜との密着性の評価を行った。スチールウールテストの結果を表1と図4に、その他の結果を表1に示す。
酸素濃度と積算光量を表1に示す値に変化させた以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを製造し、ハードコート膜と反射防止膜との密着性の評価を行った。スチールウールテストの結果を表1と図4に、その他の結果を表1に示す。
基材フィルム上に形成したハードコート膜表面に施す処理を、以下に示す2つの処理方法にした以外は、光学フィルムの製造1の同様にして光学フィルムを製造し、ハードコート膜と反射防止膜との密着性の評価を行った。結果を表1に示す。
比較例15では、グロー放電によるプラズマ処理を行った。グロー放電によるプラズマ処理は、ADMASTER−350b(イー・スクエア社製)を用い、大気圧下でプラズマガス(窒素とクリーンドライエア、比率4000:3)を流した。
比較例16では、アルカリ処理を行った。アルカリ処理は、40℃の1.5N−NaOH溶液に5分間浸漬させ、その後、水洗し乾燥させた。
また、実施例で得られた光学フィルム(紫外線処理)は、比較例18で得られた光学フィルム(アルカリ処理)と同程度の密着性が得られたことから、アルカリ処理のもつ環境負荷や安全面での問題を解消でき、より簡略化された設備で表面改質を行うことが可能となった。
Claims (3)
- ハードコート膜の表面に紫外線処理を施すハードコート膜の表面改質方法であって、
紫外線照射雰囲気中の酸素濃度が3〜10%、紫外線ランプ直下での紫外線の積算光量が800〜2000mJ/cm2であることを特徴とするハードコート膜の表面改質方法。 - 前記酸素濃度が10%であることを特徴とする請求項1に記載のハードコート膜の表面改質方法。
- 基材フィルム上にハードコート膜を形成する工程と、ハードコート膜の表面を紫外線処理する工程と、ハードコート膜上に機能膜を形成する工程とを有し、
前記ハードコート膜の表面を紫外線処理する工程にて、紫外線照射雰囲気中の酸素濃度を3〜10%、紫外線ランプ直下での紫外線の積算光量を800〜2000mJ/cm2とすることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
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