以下に添付図面を参照して、本発明にかかる検体分注方法および分析装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる検体分注方法を使用する自動分析装置を示す概略構成図である。図1に示すように、自動分析装置1は、検体と試薬との間の反応物を通過する光を測定する測定機構9と、測定機構9を含む自動分析装置1全体の制御を行なうとともに、測定機構9における測定結果の分析を行なう制御機構10とを備える。自動分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の分析を自動的に行なう。
まず、測定機構9について説明する。測定機構9は、大別して検体テーブル2と、反応テーブル3と、試薬テーブル4と、検体分注装置5と、試薬分注装置7と、分注プローブ洗浄装置6および8とを備えている。
検体テーブル2は、円盤状のテーブルを有し、該テーブルの周方向に沿って等間隔で複数配置された検体容器収納部21を備えている。各検体容器収納部21には、検体を収容した検体容器22が着脱自在に収納される。検体容器22は、上方に向けて開口する開口部22aを有している。また、検体テーブル2は、検体テーブル2の中心を通る鉛直線を回転軸として検体テーブル駆動部(図示せず)によって図1に矢印で示す方向に回転する。検体テーブル2が回転すると検体容器22は、検体分注装置5によって検体が吸引される検体吸引位置に搬送される。
なお、検体容器22には、収容された検体の種類や分析項目に関する検体情報を有する識別ラベル(図示せず)が貼り付けてある。一方、検体テーブル2は、検体容器22の識別ラベルの情報を読み取る読取部23を備えている。
反応テーブル3は、円環状のテーブルを有し、該テーブルの周方向に沿って等間隔で複数配置された反応容器収納部31を備えている。各反応容器収納部31には、検体と試薬を収容する透明な反応容器32が上方に向けて開口した形態で着脱自在に収納される。また、反応テーブル3は、反応テーブル3の中心を通る鉛直線を回転軸として反応テーブル駆動部(図示せず)によって図1に矢印で示す方向に回転する。反応テーブル3が回転すると反応容器32は、検体分注装置5によって検体が吐出される検体吐出位置や、試薬分注装置7によって試薬が吐出される試薬吐出位置に搬送される。
測光装置33は、光源33aおよび受光部33bを有している。光源33aは、所定波長の分析光を出射し、受光部33bは、光源33aから出射されて、反応容器32に収容された検体と試薬が反応した反応液を透過した光束を測定する。測光装置33は、前記光源33aと受光部33bが反応テーブル3の反応容器収納部31を挟んで半径方向に対向する位置に配置されている。なお、反応テーブル3は、測定後の反応液を反応容器32から排出し、該反応容器32を洗浄する反応容器洗浄装置34を備えている。
試薬テーブル4は、円盤状のテーブルを有し、該テーブルの周方向に沿って等間隔で複数配置された試薬容器収納部41を備えている。各試薬容器収納部41には、試薬を収容した試薬容器42が着脱自在に収納される。試薬容器42は、上方に向いて開口する開口部42aを有している。また、試薬テーブル4は、試薬テーブル4の中心を通る鉛直線を回転軸として試薬テーブル駆動部(図示せず)によって図1に矢印で示す方向に回転する。試薬テーブル4が回転すると試薬容器42は、試薬分注装置7によって試薬が吸引される試薬吸引位置に搬送される。
なお、試薬容器42には、収容された試薬の種類や収容量に関する試薬情報を有する識別ラベル(図示せず)が貼り付けてある。一方、試薬テーブル4は、試薬容器42の識別ラベルの情報を読み取る読取部43を備えている。
検体分注装置5は、検体の吸引および吐出を行なう分注プローブが先端部に取り付けられ、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。検体分注装置5は、検体テーブル2と反応テーブル3との間に設けられ、検体テーブル2によって所定位置に搬送された検体容器22内の検体を分注プローブによって吸引し、アームを旋回させ、反応テーブル3によって所定位置に搬送された反応容器32に分注して検体を所定タイミングで反応テーブル3上の反応容器32内に移送する。
試薬分注装置7は、試薬の吸引および吐出を行なう分注プローブが先端部に取り付けられ、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。試薬分注装置7は、試薬テーブル4と反応テーブル3との間に設けられ、試薬テーブル4によって所定位置に搬送された試薬容器42内の試薬を分注プローブによって吸引し、アームを旋回させ、反応テーブル3によって所定位置に搬送された反応容器32に分注して試薬を所定タイミングで反応テーブル3上の反応容器32内に移送する。
図2は、検体分注装置5(試薬分注装置7も同様である)の概略構成図である。検体分注装置5は、図2に示すように分注プローブ50を有している。分注プローブ50は、ステンレスなどによって棒管状に形成されたもので、先端側はテーパー形状をとる。先端を下方に向けて上方の基端がアーム51の先端に取り付けてある。アーム51は、水平配置され、その基端が支軸52の上端に固定してある。支軸52は、鉛直配置されており、分注プローブ移送部53によって鉛直軸Oを中心として回転する。支軸52が回転すると、アーム51が水平方向に旋回して、分注プローブ50を水平方向に移動させる。また、支軸52は、分注プローブ移送部53によって鉛直軸Oに沿って昇降する。支軸52が昇降すると、アーム51が鉛直方向に昇降して、分注プローブ50を鉛直(上下)方向であって分注プローブ50の長手方向に昇降させる。
分注プローブ50の基端には、チューブ54aの一端が接続される。このチューブ54aの他端は、シリンジ55に接続される。シリンジ55は、チューブ54aの他端が接続された筒状のシリンダー55aと、シリンダー55aの内壁面に摺動しながらシリンダー55a内を進退可能に設けられたプランジャー55bとを有する。プランジャー55bは、プランジャー駆動部56に接続される。プランジャー駆動部56は、例えばリニアモーターを用いて構成され、シリンダー55aに対するプランジャー55bの進退移動を行うものである。シリンジ55のシリンダー55aには、チューブ54bの一端が接続される。このチューブ54bの他端は、押し出し液L1を収容するタンク57に接続される。また、チューブ54bの途中には、電磁弁58およびポンプ59が接続される。なお、押し出し液L1としては、蒸留水や脱気水などの非圧縮性流体が適用される。この押し出し液L1は、分注プローブ50の内部の洗浄を行う洗浄液としても適用される。
検体分注装置5は、ポンプ59を駆動し、電磁弁58を開状態にすることでタンク57に収容されている押し出し液L1が、チューブ54bを経てシリンジ55のシリンダー55a内に充填され、さらにシリンダー55aからチューブ54aを経て分注プローブ50の先端まで満たされる。このように押し出し液L1が分注プローブ50の先端まで満たされた状態で、電磁弁58を閉状態にし、ポンプ59を止めておく。そして、検体や試薬の吸引を行う場合、プランジャー駆動部56を駆動してプランジャー55bをシリンダー55aに対して後退移動させることにより、押し出し液L1を介して分注プローブ50の先端部に吸引圧が印加され、この吸引圧によって検体や試薬が吸引される。一方、検体や試薬の吐出を行う場合には、プランジャー駆動部56を駆動してプランジャー55bをシリンダー55aに対して進出移動させることにより、押し出し液L1を介して分注プローブ50の先端部に吐出圧が印加され、この吐出圧によって検体や試薬が吐出される。
なお、検体分注装置5は、分注プローブ50で分注する検体および試薬の液面を検知する図示しない液面検知機能を備えている。液面検知機能には、例えば分注プローブ50が検体や試料に接した際の静電容量の変化によって液面を検知するものがある。
分注プローブ洗浄装置6は、検体テーブル2と反応テーブル3との間であって、検体分注装置5における分注プローブ50の水平移動の軌跡の途中位置に設けられ、検体間のキャリーオーバー防止のために、分注プローブ50により検体の分注を行なうたびに該分注プローブ洗浄装置6にて分注プローブ50の洗浄を行なう。洗浄槽に貯留した洗浄水に分注プローブ50を浸漬、またはシャワー等の噴射圧力を用いて外壁面を洗浄し、内壁面は、押し出し液L1を分注プローブ50から噴出させることにより洗浄する。分注プローブ洗浄装置8は、試薬テーブル4と反応テーブル3との間であって、試薬分注装置7における分注プローブ50の水平移動の軌跡の途中位置に設けられ、試薬間のキャリーオーバー防止のために、分注プローブ50により試薬の分注を行なうたびに該分注プローブ洗浄装置8にて分注プローブ50の洗浄を行なう。
このような構成の自動分析装置1では、反応容器32に対して検体分注装置5が、検体容器22から検体を分注する。また、反応容器32には、試薬分注装置7が試薬容器42から試薬を分注する。そして、検体および試薬が分注された反応容器32は、反応テーブル3によって周方向に沿って搬送される間に検体と試薬とが攪拌されて反応し、光源33aと受光部33bとの間を通過する。このとき、光源33aから出射され、反応容器32内の反応液を通過した分析光は、受光部33bによって測光されて成分濃度などが分析される。そして、分析が終了した反応容器32は、反応容器洗浄装置34によって測定後の反応液が排出されて洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
つぎに、制御機構10について説明する。図1に示すように、制御機構10は、制御部101、入力部102、分析部103、記憶部104、出力部105、送受信部107および分注順序決定部108を備える。制御機構10が備える各部は、制御部101に電気的に接続されている。制御部101は、CPU等を用いて構成され、自動分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部101は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。分析部103は、制御部101を介して測光装置33に接続され、受光部33bが受光した光量に基づいて検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部101に出力する。入力部102は、制御部101へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。
記憶部104は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部104は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。また、記憶部104は、分析可能なすべての分析項目についての分析に要する情報、たとえば、検体分注量、検体吸引量等の分析条件を記憶する。ここで、検体分注量は、実際の分析に要する検体量を意味し、検体吸引量は、分析に要する検体量に、押し出し液での検体の薄まりを考慮して余分に吸引した検体量(以下「ダミー検体」と呼ぶ)を加えたものである。実際に吸引する量である検体吸引量に基づき分注順序を決定するのが好ましいが、一般的に検体分注量により検体吸引量は決定されるため、検体分注量により分注順序を決定することもできる。したがって、検体分注量、検体吸引量の両方またはいずれか一方が記憶部104に記憶される。また、検体吸引量は、検体分注量とダミー吸引量の和として算出できるため、検体吸引量ではなくダミー吸引量として記憶させてもよい。
出力部105は、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、制御部101の制御のもと、分析に関する諸情報を出力する。出力部105は、ディスプレイ等を用いて構成された表示部106を備える。表示部106は、分析内容や警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。入力部102および表示部106はタッチパネルによって実現するようにしてもよい。送受信部107は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報の送受信を行なうインターフェースとしての機能を有する。分注順序決定部108は、各分析項目に要する検体分注量または検体吸引量に基づき1検体における各分析項目の分注の順序を決定する。
また、制御部101には、上述した検体分注装置5(試薬分注装置7も同様)の各部、分注プローブ移送部53、プランジャー駆動部56、電磁弁58、およびポンプ59が接続されている。制御機構10は、自動分析装置1の各処理にかかわる各種プログラムを用いて、検体分注装置5の動作処理の制御を行なう。
以上のように構成される自動分析装置1において、入力部102により検査オーダー受付後、オーダーされた各分析項目の検体分注量または検体吸引量に基づき、1検体における各分析項目の分注順は分注順序決定部108により決定され、決定された順番により検体の分注は行なわれる。反応テーブル3によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器32に、検体分注装置5によって検体テーブル2に保持された検体容器22から、分注の順番に基づき所定量の検体が分注され、試薬分注装置7により試薬容器42から試薬が分注される。検体分注後の分注プローブ50は、検体間のキャリーオーバーや検体成分による分注プローブの詰まりや汚れ付着を防止すべく、分注が行なわれる度に分注プローブ洗浄装置6により洗浄される。
次に、本発明の実施の形態1にかかる検体分注方法について、図3〜8を参照して詳細に説明する。図3は実施の形態1における検体分注方法の分注動作を示すフローチャートである。まず、自動分析装置1は分析をスタートする際、各検体の検査オーダーを受付ける(ステップS100)。検査オーダーは、検体番号と分析項目とを含み、たとえば、図4に示す検査オーダー表によれば、検体No.1の分析項目は項目A、項目Bおよび項目Cの3項目であり、検体No.2の分析項目は項目A、項目Dおよび項目Eの3項目である。図4のような検査オーダー表に基づき、入力部102を介して検査オーダーが受付けられ、記憶部104に検査オーダーが記憶される。次に各分析項目の分注量情報を抽出する(ステップS101)。自動分析装置1には分析可能なすべての分析項目についての分析に要する情報、たとえば、検体分注量および試薬分注量、分析条件等が分析項目毎に記憶部104に記憶されているので、記憶部104から各分析項目の分注量情報を抽出する。当該ステップにより、検体分注量、たとえば、分析項目Aは3.0μL、分析項目Bは2.5μL、分析項目Cは10.0μL、分析項目Dは5.0μL、分析項目Eは8.0μLといった分析項目毎の分注量情報を得る(図5参照)。
分析項目毎に分注量情報を取得した後、分注順序決定部108により、1検体中における各分析項目の分注の順番を決定する(ステップS102)。実施の形態1では、検体分注量の大きいものから分注を行なう。図6は、分注プローブの検体吸引状態を示す図である。図6(a)、(b)、(c)はそれぞれ、分注プローブ50が検体を3.0μL(分析項目A分析用)、2.5μL(分析項目B分析用)、10.0μL(分析項目C分析用)吸引した状態を示す。分注プローブ50は、検体を収容する検体容器22中に降下されたとき、当該分注プローブ50が検体に接触した際の静電容量の変化により液面を検知する液面検知機構(図示せず)を備えており、液面検知後、検体を確実に吸引するために数mm程度検体中にさらに下降させて検体を吸引する。これによれば、分注プローブ50の外壁面が検体と接触する面積はごく僅かであって検体分注量にかかわらず略一定であり、その後の洗浄も行ないやすいため、外壁面からのキャリーオーバーの防止は比較的容易である。これに対し、分注プローブ50の内壁面と検体の接触面積は分注量によって大きく変化し(図6参照)、分注プローブの形状的な要因(細径)もあり、内壁面からの短時間での検体の除去は外壁面からの除去に比し困難であるため、内壁面からのキャリーオーバーの防止が非常に重要となる。
分注プローブからのキャリーオーバーは分注する検体の変更に伴い起こりうるものであるが、検体由来成分による分注プローブの詰まりや汚れを防止するために、検体の変更時だけでなく、各分析項目の分注終了の度に分注プローブ洗浄装置6で分注プローブ50の洗浄を行なっている(図7参照、分注プローブ洗浄(1)〜(3)により分注プローブ50の内外壁面を洗浄)。検体分注量が多く、分注プローブ50の内壁面との接触が大きい分析項目を先に分注することにより、その後に複数回行なわれる洗浄の効果も得ることができるので、限られた洗浄時間でキャリーオーバーの低減が可能になる。簡単に図7を参照して説明する。図7は、分注プローブによる検体No.1の分注シーケンスを表す図である。検体No.1の分注量が最も多い分析項目C用の検体を最初に分注した場合(検体1吸引(1))、その直後の分注プローブ洗浄(1)による洗浄だけでなく、分注プローブ洗浄(2)および(3)によっても検体除去の効果が得られる。分注の順番を検体分注量の多い順番とすると、検体No.1の最後の分注(検体1吸引(3))は分析項目Aとなり、分注量は最も少なく、検体と分注プローブ50の接触面積も最も少なくなる。したがって、検体No.1吸引(3)による最後の検体1の吸引後の洗浄は分注プローブ洗浄(3)による洗浄の1回のみとなるが、検体残存量が少ないので同じシーケンスでは最も効果的にキャリーオーバーを低減することが可能になる。
図8は、ステップS102において、分注順序決定部108が検体分注量の多い順番に検体の分析項目を並べ直したものである。検体No.1は分析項目C、A、Bの順、検体No.2は分析項目E、D、Aの順に分注を行なうことで効果的にキャリーオーバーを防止できる。その後、制御部101は、次検体の検査オーダーの有無を確認し、新たな検査オーダーがない場合は(ステップS103、No)、分注動作に移行して、分注プローブ50で検体の吸引を行ない(ステップS104)、新たな検査オーダーがある場合は(ステップS103、Yes)、検査オーダーの受付のステップS100に戻って1検体における各分析項目の分注順序が決定される。吸引された検体は反応容器32に吐出され(ステップS105)、その後、吐出された検体を、試薬と反応させ、測光分析が行なわれる。その後、分注プローブ50は次の分析項目の分注のために、分注プローブ洗浄装置6で洗浄され(ステップS106)、受け付けられた検査オーダーの分注が終了するまで(ステップS107、No)、ステップS104〜ステップS106が繰り返される。
なお、実施の形態1は、1検体における各分析項目の順番を検体分注量の大きい順番とするものであるが、1検体における各分析項目の順番が検体分注量の多項式近似曲線が減少方向とする分注順であっても、検体間のキャリーオーバーを効果的に低減できる。また、検体分注量と検体間キャリーオーバー量は略比例関係にあることから、検体間のキャリーオーバーのさらなる低減のため、分注順序決定部108により決定された1検体における各分析項目の分注順の、最後の分析項目用の検体分注量が10μLより大きいか否かを判定し、大きい場合は、次検体への分注移行前に分注プローブの洗浄を追加して行なってもよい。
(実施の形態2)
次に、1検体における各分析項目の分注の順番を検体吸引量に基づき決定する実施の形態2について説明する。実施の形態1は、分析に要する検体量のみを検体分注装置で分注する場合の検体分注量に基づき分注の順番を決定する検体分注方法であるのに対し、実施の形態2は、分析に要する検体量に、検体の押し出し液での薄まりを考慮して余分に吸引した検体量(ダミー検体)を加えた検体吸引量に基づき分注の順番を決定する。
図9は実施の形態2の検体分注装置の分注動作を示すフローチャートである。まず、自動分析装置1は分析をスタートする際、各検体の検査オーダーを受付ける(ステップS200)。検査オーダーは、図4に示すように検体番号と分析項目からなり、入力部102を介して検査オーダーが受付けられ、記憶部104に記憶される。次に各分析項目の検体分注量情報およびダミー吸引量情報を抽出する(ステップS201)。自動分析装置1には、分析可能なすべての分析項目についての分析に要する情報、たとえば、検体分注量および試薬分注量、分析条件等が分析項目毎に記憶部104に記憶されているので、記憶部104から各分析項目の検体分注量情報およびダミー吸引量情報を取得する。図10は、ステップS201により抽出された各分析項目の検体分注量情報とダミー吸引量情報を表す図であり、図11は、検体分注量とダミー吸引量を合算することにより算出した検体吸引量を分析項目毎に示した図である。ダミー吸引量はすべての分析項目において設定されているものではなく、分析項目Aのように0に設定されているものも存在し、このような項目では検体吸引量は検体分注量に等しい。
分析項目毎に検体吸引量を算出した後、分注順序決定部108は、1検体中における各分析項目の分注の順番を決定する(ステップS202)。実施の形態2では、検体吸引量の大きいものから分注を行なう。キャリーオーバーの起こり易さは検体が分注プローブに接触する面積に最も影響されるため、ダミー検体が吸引される場合は実際に吸引される量である検体吸引量に基づき分注の順番を決定する。したがって、検体分注量の大小ではなく、ダミー吸引量を加えた検体吸引量が多い分析項目から分注を行なう。図12は、検体吸引量に基づき、1検体における各分析項目の分注の順序を並べ替えた図である。検体分注量により分注の順番を決定する実施の形態1では、検体1の分析順は分析項目C、分析項目A、分析項目Bとなるが(図8参照)、実施の形態2では、検体吸引量に基づき決定するため、分析項目C、分析項目B、分析項目Aの順となる(図12参照)。
制御部101は、次検体の検査オーダーの有無を確認し、新たな検査オーダーがない場合は(ステップS203、No)、分注動作に移行して、分注プローブ50で検体の吸引を行ない(ステップS204)、新たな検査オーダーがある場合は(ステップS203、Yes)、検査オーダーの受付のステップに戻って1検体における各分析項目の分注順序が決定される。吸引された検体は反応容器32に吐出され(ステップS205)、その後、吐出された検体中に試薬を分注し、検体と試薬との反応物の測光分析が行なわれる。分注プローブ50は次の分析項目の分注のために、分注プローブ洗浄装置6で洗浄され(ステップS206)、受け付けられた検査オーダーの分注が終了するまで(ステップS207、No)、ステップS204〜ステップS206が繰り返される。
なお、検体吸引量が同量の分析項目が存在する場合は、ダミー吸引量が大きい項目を優先的に分注、分析する。これは、ダミー検体が分注プローブ内により長く留まり、検体間キャリーオーバーに影響を与えるためである。なお、実施の形態2は、1検体における各分析項目の順番を検体吸引量の大きい順番とするものであるが、1検体における各分析項目の順番が検体吸引量の多項式近似曲線が減少方向とする分注順であっても、検体間のキャリーオーバーを効果的に低減できる。また、検体吸引量と検体間キャリーオーバー量は略比例関係にあることから、検体間のキャリーオーバーのさらなる低減のため、分注順序決定部108により決定された1検体における各分析項目の分注順の、最後の分析項目用の検体吸引量が10μLより大きいか否かを判定し、大きい場合は、次検体への分注移行前に分注プローブの洗浄を追加して行なってもよい。
(実施の形態3)
次に、1検体における各分析項目の分注の順番を、予め記憶部104に記憶させた分注序列表に定められた順番で行なう実施の形態3について説明する。実施の形態3の検体分注方法は、自動分析装置1が保持する検体分注量情報およびダミー吸引量情報に基づき、搭載全分析項目の分析序列表を予め作成、保持し、検査オーダー受付時に当該分析序列表と対照させて分注の順番を決定することを特徴とする。
図13は実施の形態3の検体分注装置の分注動作を示すフローチャートである。まず、自動分析装置1は分析をスタートする際、各検体の検査オーダーを受付ける(ステップS300)。検査オーダーは、図4に示すように検体番号と分析項目からなり、入力部102を介して検査オーダーが受付けられ、記憶部104に記憶される。記憶部104は、自動分析装置1の搭載全分析項目についての分析情報を記憶しており、図14に示す分析項目毎の検体分注量情報およびダミー吸引量情報を有している。実施の形態3では、図15に示すような分注序列表が予め記憶部104に記憶される。図15の分注序列表は、図14に示す分析項目毎の検体分注量およびダミー吸引量を合算した検体吸引量を予め算出し、当該検体吸引量に基づいて分注順序を決定したものであり、検体吸引量が多い順に分注順序が定められている。まず、ステップS300で受付けられた検査オーダーと前記分注序列表を照合して1検体における各分析項目の分注の順序を決定する(ステップS301)。図16は、図4の検査オーダーを図15の分注序列表と照合して分注順序を抽出したものである。検体No.1の分析項目A、分析項目B、分析項目Cの図15における分注順序はそれぞれ8、6、2という分注序列であり、数字の小さい順番、すなわち、分析項目C、分析項目B、分析項目Aの順番に分注が行なわれる(図17参照、ステップS301)。検体No.2の分析項目A、分析項目D、分析項目Eは図15の分注順序はそれぞれ8、4、3という分注序列であり、分析項目E、分析項目D、分析項目Aの順番に分注が行なわれる。
分注序列表と照合して分注順序を決定した後、制御部101は、次検体の検査オーダーの有無を確認し、新たな検査オーダーがない場合は(ステップS302、No)、分注動作に移行して分注プローブ50で検体の吸引を行ない(ステップS303)、新たな検査オーダーがある場合は(ステップS302、Yes)、検査オーダーの受付のステップに戻って分注順序が決定される。吸引された検体は反応容器32に吐出され(ステップS304)、その後、吐出された検体を試薬と反応させ、測光分析が行なわれる。分注プローブ50は次の分析項目の分注のために、分注プローブ洗浄装置6で洗浄され(ステップS305)、受け付けられた検査オーダーの分注が終了するまで(ステップS306、No)、ステップS303〜ステップS305が繰り返される。
(実施の形態4)
次に、1検体の分析項目の分注の順番を、最初に分注する分析項目の検体吸引量が最後に分注する分析項目の検体吸引量より大きいものとし、その他の順番は受付順とする実施の形態4について説明する。同じシーケンス内で最も検体間キャリーオーバーを低減しうるのは、検体吸引量を大きなものから順に分注していく実施の形態2または3の検体分注方法であるが、同一検体の分注の最初の検体吸引量を最後の検体吸引量より大きくするだけで、まったく分注の順序を変更しない場合より大幅にキャリーオーバーを低減できる。
図18は実施の形態4の検体分注装置の分注動作を示すフローチャートである。まず、自動分析装置1は分析をスタートする際、各検体の検査オーダーを受付ける(ステップS400)。検査オーダーは、図19に示すように検体番号と分析項目からなり、入力部102を介して検査オーダーが受付けられ、記憶部104に記憶される。次に各分析項目の分注量情報およびダミー吸引量情報を抽出する(ステップS401)。自動分析装置1には、分析可能なすべての分析項目についての分析に要する情報、たとえば、検体分注量および試薬分注量、分析条件等が分析項目毎に記憶部104に記憶されているので、記憶部104から各分析項目の分注量情報およびダミー吸引量情報を抽出する。これによって、図20に示すように各分析項目の分注量情報とダミー吸引量情報を取得し、検体分注量とダミー吸引量を合算した検体吸引量を算出する。図21は、各分析項目の検体吸引量を示す図である。
分析項目毎に検体吸引量を算出した後、分注順序決定部108により、1検体中の各分析項目の分注の順番を決定する(ステップS402)。実施の形態4では、最初に分注する分析項目の検体吸引量が最後に分注する分析項目の検体吸引量より大きいものとし、その他の順番は受付順とする。検査オーダーの受付がされた検体No.1は分析項目がA〜Eの5項目であり(図19参照)、最初に受付けられた分析項目Aの検体吸引量は3.0μL、最後に受付られた分析項目Eの検体吸引量は13.0μLである(図21参照)。最初と最後の分析項目の検体吸引量を比較し、大きいものを最初とし、小さいものを最後とする。したがって、検体No.1の分注順は、図22に示すように、分析項目E、B、C、D、Aの順番となる。同一検体の分注の最初の検体吸引量が最後に分注する分析項目の検体吸引量より大きいものとするだけで、分注の順序を変更しない場合より大幅にキャリーオーバーの低減が可能となる。
分注順序を決定した後(ステップS402)、制御部101は次検体の検査オーダーの有無を確認し、新たな検査オーダーがない場合は(ステップS403、No)、分注動作に移行して分注プローブ50で検体の吸引を行ない(ステップS404)、新たな検査オーダーがある場合は(ステップS403、Yes)、検査オーダーの受付のステップに戻って分注順序が決定される。吸引された検体は反応容器32に吐出され(ステップS405)、その後、吐出された検体は試薬と反応させ、測光分析が行なわれる。分注プローブ50は次の分析項目の分注のために、分注プローブ洗浄装置6で洗浄され(ステップS406)、受け付けられた検査オーダーの分注が終了するまで(ステップS407、No)、ステップS404〜ステップS406が繰り返される。
(実施の形態5)
次に、1検体の分析項目の分注の順番を、検体吸引量が最大量の分析項目を最初に、最小量のものを最後とし、その他の順番は受付順とする実施の形態5について説明する。同じシーケンス内で最も検体間キャリーオーバーを低減しうるのは、検体吸引量を大きなものから順に分注していく実施の形態2または3の検体分注方法であるが、同一検体の分注の最初と最後の分注を最大量と最小量に変更するだけで、まったく分注の順序を変更しない場合より大幅にキャリーオーバーを低減できる。
図23は実施の形態5の検体分注装置の分注動作を示すフローチャートである。まず、自動分析装置1は分析をスタートする際、各検体の検査オーダーを受付ける(ステップS500)。検査オーダーは、図19に示すように検体番号と分析項目からなり、入力部102を介して検査オーダーが受付けられ、記憶部104に記憶される。次に各分析項目の分注量情報およびダミー吸引量情報を抽出する(ステップS501)。自動分析装置1には、分析可能なすべての分析項目についての分析に要する情報、たとえば、検体および試薬分注量、分析条件等が分析項目毎に記憶部104に記憶されているので、記憶部104から各分析項目の分注量情報およびダミー吸引量情報を抽出する。これによって、図20に示すように各分析項目の分注量情報とダミー吸引量情報を取得し、検体分注量とダミー吸引量を合算した検体吸引量を算出する。図21は、各分析項目の検体吸引量を示す図である。
分析項目毎に検体吸引量を算出した後、分注順序決定部108により、1検体中の各分析項目の分注の順番を決定する(ステップS502)。実施の形態5では、検体吸引量が最大量の分析項目を最初に、最小量のものを最後とし、その他の順番は受付順とする。検査オーダーの受付がされた検体No.1は分析項目がA〜Eの5項目であり(図19参照)、各分析項目の検体吸引量は、分析項目Aが3.0μL、分析項目Bが5.5μL、分析項目Cが15.0μL、分析項目Dが10.0μL、分析項目Eが13.0μLである(図21参照)。検体No.1の分析項目のうち、検体吸引量が最大となるのは分析項目Cであり、最小であるのは分析項目Aであるので、検体吸引量が最大量の分析項目Cを最初に、最小量の分析項目Aを最後に分注し、その他の分析項目は受付順となる。したがって、検体No.1の分注順は、図24に示すように、分析項目C、B、D、E、Aの順番となる。同一検体の分注の最初に検体吸引量が最大の分析項目の分注を行い、最後に検体吸引量が最小の分析項目を分注するだけで、分注の順序を変更しない場合より大幅にキャリーオーバーの低減が可能となる。
分注順序を決定した後(ステップS502)、制御部101は次検体の検査オーダーの有無を確認し、新たな検査オーダーがない場合は(ステップS503、No)、分注動作に移行して分注プローブ50で検体の吸引を行ない(ステップS504)、新たな検査オーダーがある場合は(ステップS503、Yes)、検査オーダーの受付のステップに戻って分注順序が決定される。吸引された検体は反応容器32に吐出され(ステップS505)、その後、吐出された検体は試薬と反応させ、測光分析が行なわれる。分注プローブ50は次の分析項目の分注のために、分注プローブ洗浄装置6で洗浄され(ステップS506)、受け付けられた検査オーダーの分注が終了するまで(ステップS507、No)、ステップS504〜ステップS506が繰り返される。
(実施の形態6)
実施の形態6は、実施の形態1〜5において分注順序決定部108が決定した1検体における各分析項目の分注の順番に試薬コンタミネーションの組み合わせが存在する場合、そのまま分注を行なうと試薬コンタミネーションが発生し、分析結果の信頼性が損なわれることになる。したがって、実施の形態6は、ユーザーにより指定された試薬コンタミネーションの組み合わせが1検体における各分析項目の分注の順番中に存在する場合は分注順序変更部110により試薬コンタミネーションの組み合わせにかかる分析項目の分注の順番を入れ替えることにより、検体間のキャリーオーバーを低減しつつ試薬コンタミネーションも防止することを目的とする。
実施の形態6の検体分注方法について、図25〜図32を参照して詳細に説明する。図25は、実施の形態6にかかる自動分析装置1Bを示す概略構成図である。図26は、実施の形態6にかかる検体分注方法の分注動作を示すフローチャートである。図27は、実施の形態6にかかる検査オーダーを示す図である。図28は、実施の形態6における記憶部から抽出した分析項目毎の検体分注量およびダミー吸引量を示す図である。図29は、実施の形態6における検体分注量およびダミー吸引量から合算した検体吸引量を分析項目毎に示した図である。図30は、実施の形態6における1検体における各分析項目の分注の順番を示す図である。図31は、図30の分注順を試薬コンタミネーションの組み合わせの分析項目の順番を入れ替えて示す図である。図32は、図31において検体間の試薬コンタミネーションがある場合の分析項目の順番を入れ替えて示す図である。
実施の形態6にかかる自動分析装置1Bは、図25に示すように、分注順序決定部108Bが、試薬コンタミネーション判定部109と、分注順序変更部110とを備え、制御部101Bが洗浄制御部111を備える点で実施の形態1〜5にかかる自動分析装置1と異なる。試薬コンタミネーション判定部109は、分注順序決定部108Bにより実施の形態1〜5のようにして決定された1検体における各分析項目の分注の順番に、ユーザーにより設定された試薬コンタミネーションの組み合わせが存在するか否かを判定する。分注順序変更部110は、試薬コンタミネーション判定部109により、試薬コンタミネーションの組み合わせが存在すると判定された場合に、試薬コンタミネーションの組み合わせを回避するよう1検体における各分析項目の分注の順番を変更する。さらに、分注順序変更部110は、前検体の最終分析項目と分注順序決定部108Bが決定した1検体における各分析項目の分注の順番の最初の分析項目とが、試薬コンタミネーションの組み合わせに該当するか否かについても判定する。試薬コンタミネーションの組み合わせの回避は、基本的に、該当する分析項目の順番を入れ替えることにより行なう。洗浄制御部111は、1検体における各分析項目の分注の順番において、最後の分析項目用の検体分注量または検体吸引量が10μLより大きい場合、次検体への分注移行前に分注プローブの洗浄を追加して行なうよう制御する。
ここで、試薬コンタミネーションの組み合わせとは、各分析に使用される試薬が次の分析項目用の試薬中に分注プローブ50を介して持ち込まれた場合、ごく微量であっても分析に悪影響を及ぼすことが知られている組み合わせをいい、例えば、(1)ZTT(クンケル混濁試験)、Zn(亜鉛)、(2)Mg(マグネシウム)、TP(総蛋白)、(3)CK(クレアチンキナーゼ)、CHE(コリンエステラーゼ)、(4)TTT(チモール混濁試験)、IgG(免疫グロブリンG)などが例示される。上記の例は、順番が上記と同じ場合にのみ該当し、例えば、Znの後にZTTが分析される場合には該当せず、また各分析項目間に少なくとも1項目他の分析項目を挟む場合には、試薬コンタミネーションは発生しない。上記の例に加えて、試薬コンタミネーションの組み合わせはユーザーにより追加され、入力部102を介して記憶部104に記憶される。
図26を参照して、実施の形態6について説明する。まず、回避すべき試薬コンタミネーションの組み合わせについて、ユーザーにより入力部102を介して入力され、記憶部104に記憶される(ステップS600)。その後、各検体の検査オーダーが受け付けられる(ステップS601)。検査オーダーは、図27に示すように検体番号と分析項目からなり、入力部102を介して検査オーダーが受付けられ、記憶部104に記憶される。次に各分析項目の検体分注量情報およびダミー吸引量情報を抽出する(ステップS602)。自動分析装置1Bには、分析可能なすべての分析項目についての分析に要する情報、たとえば、検体分注量および試薬分注量、分析条件等が分析項目毎に記憶部104に記憶されているので、記憶部104から各分析項目の検体分注量情報およびダミー吸引量情報を取得する。図28は、ステップS602により抽出された各分析項目の検体分注量とダミー吸引量情報を表す図であり、図29は、検体分注量とダミー吸引量を合算することにより算出した検体吸引量を分析項目毎に示した図である。ダミー吸引量はすべての分析項目において設定されているものではなく、分析項目Aのように0に設定されているものも存在し、このような項目では検体吸引量は検体分注量に等しい。
分析項目毎に検体吸引量を算出した後、分注順序決定部108Bは、1検体中における各分析項目の分注の順番を決定する(ステップS603)。上記した実施の形態1〜5のいずれに記載の分注順でもよいが、実施の形態6では、検体吸引量の大きいものから分注を行なう実施の形態2の分注順で行なう。図30に示すように、1検体における各分析項目の分注の順序を検体吸引量の大きい順に並べ替えると、検体No.1の分注の順番は、項目C、項目A、項目B、項目Dの順となり、検体No.2の分注の順番は、項目C、項目E、項目F、項目G、項目Bの順となる。次に、試薬コンタミネーション判定部109は、分注順序決定部108Bが並び替えた1検体の分注順に、ステップS600でユーザーが入力した試薬コンタミネーションの組み合わせが存在するか否かを判定する(ステップS604)。例えば、ユーザーにより項目Cと項目A、項目Gと項目B、項目Dと項目Cとがそれぞれ試薬コンタミネーションとして指定されている場合、その組み合わせが1検体の分注順に存在するか否かを判定する。
図30に示すように、検体No.1の分注順の1番目と2番目は項目Cと項目Aであり、検体No.2の分注順の4番目と5番目は項目Gと項目Bであるから、試薬コンタミネーション判定部109は、検体No.1および検体No.2について試薬コンタミネーションの組み合わせありと判定する。試薬コンタミネーション判定部109が試薬コンタミネーションの組み合わせありと判定した場合(ステップS604、Yes)、さらに試薬コンタミネーション判定部109は、存在する試薬コンタミネーションの組み合わせは、分注順の最後であり、かつ、その検体の分析項目数が3以上か否かも確認する(ステップS605)。最後の分析項目について分注順をそのまま前後に入れ替えると、分析項目数が少ない検体などは最終分析項目の検体吸引量が非常に大きくなってしまう場合がある。したがって、試薬コンタミネーションの組み合わせは分注順の最後であり、かつその検体の分析項目数が3以上のときに限り、分注順序変更部110は、試薬コンタミネーションの組み合わせにかかる分析項目の分注順を前後に入れ替えるのではなく、試薬コンタミネーションの組み合わせの前の分析項目を、組み合わせにかかる分析項目間に挟むように入れ替える(ステップS607)。たとえば、検体No.2の分注順に存在する試薬コンタミネーションの組み合わせである項目Gと項目Bは、検体No.2の中で分注順が4、5であるから分注順は最後であり、検体No.2の分析項目数は5であるから分析項目数が3以上である(ステップS605、Yes)。したがって、項目Gと項目Bの分注順を前後に入れ替えるのではなく、項目Gと項目Bの前の分析項目の項目Fを、項目Gと項目Bの間に挟むよう入れ替える(図31参照)。
存在する試薬コンタミネーションの組み合わせが、分注順の最後ではないか、あるいはその検体の分析項目数が3以上でない場合は(ステップS605、No)、分注順序変更部110は、試薬コンタミネーションの組み合わせを生じる分析項目を前後に入れ替える(ステップS606)。たとえば、検体No.1の分注順に存在する試薬コンタミネーションの組み合わせである項目Cと項目Aは、検体No.1の4つの分析項目中、分注順は1番目と2番目であって分注順は最後でないから(ステップS605、No)、試薬コンタミネーションの組み合わせを生じる分析項目である項目Cと項目Aの順番を前後に入れ替える(図31参照)。
一方、試薬コンタミネーション判定部109が試薬コンタミネーションの組み合わせなしと判定した場合(ステップS604、No)、分注順序決定部108Bが決定した分注順(図30)のまま分注が行なわれる。なお、たとえば、項目Aと項目Dが試薬コンタミネーションとして指定されている場合は、分注順序決定部108Bにより決定された検体No.1の分注の順番中(図30参照)、項目Bが項目Aと項目Dの間に挟まれるので、試薬コンタミネーション判定部109は試薬コンタミネーションと判定しない。また、項目Fと項目Eが試薬コンタミネーションとして指定されている場合、分注順序決定部108Bにより決定された検体No.2の分注の順番中(図30参照)、項目Eの次に項目Fが分注されるが、試薬コンタミネーションはその順番が重要であって、後の項目用の試薬に先の項目用の試薬の持ち込みを回避するものであるから、これも試薬コンタミネーション判定部109は試薬コンタミネーションと判定しない。
上記により、1検体中の分注順における試薬コンタミネーションの有無は判定できるが、分注する検体の変更の際にも試薬コンタミネーションが発生しうる。したがって、試薬コンタミネーション判定部109は、前検体の最終分析項目と後検体の最初の分析項目とが試薬コンタミネーションの組み合わせに該当するか否かについても判定する(ステップS608)。前検体の最終分析項目と後検体の最初の分析項目とが試薬コンタミネーションの組み合わせである場合は(ステップS608、Yes)、後検体の分注順の1番目と2番目を入れ替える(ステップS609)。たとえば、図31に示す例において、検体No.1の最終分析項目Dと検体No.2の最初の分析項目Cとが試薬コンタミネーションの組み合わせである場合(ステップS608、Yes)、検体No.1と検体No.2の分注を続けて行なうと試薬コンタミネーションが発生する。したがって、後検体である検体No.2の分注順の1番目と2番目、すなわち、項目Cと項目Eの入れ替えを行なうことにより試薬コンタミネーションを回避する。入れ替え後の分注順を図32に示す。なお、図26に示すフローチャートには示さないが、ステップS609の分注順の入れ替えにより新たに検体No.2中で試薬コンタミネーションの組み合わせが生じる場合は、入れ替えを行なわず(図31の分注順)、検体変更の際、すなわち、検体No.1から検体No.2に分注が移行する際、分注プローブ50の追加の洗浄を行なうよう洗浄制御部111により制御する。
その後、制御部101Bは、次検体の検査オーダーの有無を確認し(ステップS610)、新たな検査オーダーがない場合は(ステップS610、No)、分注動作に移行して、分注プローブ50により検体の吸引を開始し(ステップS611)、新たな検査オーダーがある場合は(ステップS610、Yes)、検査オーダーの受付のステップに戻って1検体における各分析項目の分注順序を、ステップS602〜ステップS609を繰り返して決定する。吸引された検体は反応容器32に吐出され(ステップS612)、その後、吐出された検体に試薬を分注し、検体と試薬との反応物について測光分析が行なわれる。分注プローブ50は次の分析項目の分注のために、分注プローブ洗浄装置6で洗浄される(ステップS613)。
つぎに、ステップS612で反応容器32に吐出した検体が、1検体についての最終の分析項目用の検体分注か否かを確認する(ステップS614)。1検体についての最終の検体分注である場合(ステップS614、Yes)、さらに検体吸引量が10μLより大きいか否かを確認する(ステップS615)。検体吸引量が10μLより大きい場合(ステップS615、Yes)、洗浄制御部111の制御のもと、次の検体へのキャリーオーバーを低減すべく分注プローブ50の洗浄を追加して行なう(ステップS616)。一方、図32に示す検体No.1や検体No.2のように、最終分析項目の検体吸引量が10μL以下である場合は(ステップS615、No)、追加の洗浄は省略される。1検体についての最終の分析項目の検体吸引量と次検体への検体間キャリーオーバー量とは、略比例関係にあり、1検体についての最終の分析項目の検体吸引量が少なければ少ないほどキャリーオーバー量も少なくなる。実施の形態6では、最終の分析項目の検体吸引量が10μL以下である場合、分注プローブ50のルーチン洗浄で次検体への検体間キャリーオーバー量が許容範囲となることから、最終の分析項目の検体吸引量が10μLを超える場合にのみ追加の洗浄を行なうこととしている。
ステップS612で反応容器32に吐出した検体が1検体についての最終の検体分注でない場合(ステップS614、No)、すべての分析項目の分注が終了したか否かを確認し(ステップS617)、受け付けられたすべての検査オーダーの分注が終了するまで(ステップS617、Yes)、ステップS611〜ステップS616が繰り返される。
実施の形態6では、1検体についての最終の分析項目の検体吸引量が10μLを超える場合に分注プローブ50の追加の洗浄を行なうこととしているが、変形例として、これに替えて、あるいはこれに加えて、1検体の最初の分析項目の検体分注量または検体吸引量が所定量より小さい場合、前検体から後検体への分注移行の際に分注プローブの洗浄を追加して行なってもよい。1検体の最初の分析項目の検体分注量または検体吸引量が大きければ大きいほど、キャリーオーバーの影響が低減されるからである。また、実施の形態6では、試薬コンタミネーションの組み合わせは、ユーザーが入力部102を介し入力して記憶部104に記憶させることとしているが、予め所定の試薬コンタミネーションの組み合わせを記憶部104に記憶させてもよい。
(実施の形態7)
上述した実施の形態では、生化学的分析項目または免疫学的分析項目のみを分析対象とする分析装置での検体分注方法について説明したが、近年、生化学的分析装置に免疫学的分析項目に対応するモジュールを搭載した兼用装置が開発されている。免疫学的分析項目は正常値および異常値間の数値差が極めて大きく、生化学的分析項目では問題にならない程度の微量の検体間キャリーオーバーが存在する場合でも、当該キャリーオーバーにより擬陽性判定を招いてしまうおそれがある。したがって、従来の兼用装置では、免疫学的分析項目がオーダーされている検体と当該検体の直前の検体の間の分注プローブの洗浄を、洗剤を使用して行なったり、洗浄時間を長くするなどの特別洗浄を行なっている。これに対して、実施の形態7では、生化学的分析装置に免疫学的分析項目に対応するモジュールを搭載した兼用装置において、実施の形態2に示した検体吸引量に基づき1検体における各分析項目の分注の順番を決定する検体分注方法を導入するものである。
次に実施の形態7の検体分注方法について、図9および図33〜図38を参照して詳細に説明する。図9は、実施の形態7の検体分注装置の分注動作を示すフローチャートであり、図33は、実施の形態7の自動分析装置1Aを示す概略構成図である。自動分析装置1Aは、生化学的分析モジュール11、免疫学的分析モジュール12、検体容器移送機構40および制御機構10からなる。生化学的分析モジュール11は、検体容器移送機構40、検体分注装置5Aが同モジュール外に設けられ、試薬テーブル4、4A、ならびに試薬分注装置7、7Aを各2持つ以外は、上述した自動分析装置1と同様の機構を有する。
免疫学的分析モジュール12は、大別して、免疫反応テーブル24と、BFテーブル25と、試薬テーブル26、27と、試薬分注装置28、29と、酵素反応テーブル30と、測光部37および反応容器移送部35、36とからなる。
検体容器移送機構40は、図33に示すように、配列された複数の検体ラック22bを矢印方向に沿って1つずつ歩進させながら移送する。検体ラック22bは、検体を収容した複数の検体容器22を保持している。ここで、検体容器22は、検体容器移送機構40によって移送される検体ラック22bの歩進が停止するごとに、検体分注装置5Aによって検体が各反応容器32および32Aへ分注される。
検体分注装置5Aは、生化学的分析モジュール11および免疫学的分析モジュール12の検体分注装置を兼用するものであり、受け付けられた1検体の分析項目すべての分注を行なう。検体分注装置5Aは、検体の吸引および吐出を行なう分注プローブが先端部に取り付けられ、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。検体分注装置5Aは、検体容器移送機構40によって所定位置に搬送された検体容器22内の検体を分注プローブによって吸引し、アームを旋回させ、反応テーブル3によって所定位置に搬送された反応容器32、または免疫反応テーブル24によって所定位置に搬送された反応容器32Aに分注する。分析項目毎の検体分注が終了する度、検体分注装置5Aは分注プローブ洗浄装置44により洗浄が行なわれる。図33では、分注プローブ洗浄装置44は生化学的分析モジュール11内に設置されているが、免疫学的分析モジュール12に設置されていてもよく、また各モジュールにそれぞれ設定されていてもよい。
まず、自動分析装置1Aは分析をスタートする際、各検体の検査オーダーを受け付ける(ステップS200)。検査オーダーは、図34に示すように検体番号と分析項目(生化学、免疫の区別あり)からなり、入力部102を介して検査オーダーが受け付けられ、記憶部104に記憶される。次に各分析項目の検体分注量情報およびダミー吸引量情報を抽出する(ステップS201)。自動分析装置1Aには、分析可能なすべての分析項目についての分析に要する情報、たとえば、検体分注量および試薬分注量等の分析条件が分析項目毎に記憶部104に記憶されているので、記憶部104から各分析項目の検体分注量情報およびダミー吸引量情報を取得する。図35は、ステップS201により抽出された各分析項目の検体分注量とダミー吸引量を表す図であり、図36は、検体分注量とダミー吸引量を合算することにより算出した検体吸引量を分析項目毎に示した図である。
分析項目毎に検体吸引量を算出した後、分注順序決定部108は、1検体中における各分析項目の分注の順番を決定する(ステップS202)。図37は、実施の形態7における検体の分注シーケンスを表す図である。同図は、分注プローブ50により、検体No.1およびNo.2を、検査オーダーの分析項目に応じて分注する際のシーケンスであり、検体の吸引、吐出および分注プローブ洗浄が連続的に行なわれる。検体No.1については3つの分析項目がオーダーされているため3回連続して行なわれ、検体No.2については2つの分析項目がオーダーされているため2回連続して行なわれる。従来の兼用装置における検体分注方法では、検体間キャリーオーバーを防止するために、免疫学的分析項目がオーダーされている検体と当該検体の直前の検体の間の分注プローブの洗浄を、洗剤を使用して行なったり、洗浄時間を長くするなどの特別洗浄を行なっていた。図34に示すように、検体No.2についてオーダーされる分析項目Lが免疫学的分析項目である場合、従来方法では、検体No.2の分注前に特別洗浄が行なわれるものであり、たとえば、図37の検体1吸引(3)後の分注プローブ洗浄(3)は、従来洗剤を用いて行なわれたり、洗浄時間を長くして行なわれていた。
これに対し実施の形態7では、1検体における各分析項目の分注の順番を検体吸引量の大きい順番とすることにより、検体間キャリーオーバーを低減することが可能となる。図38は、検体吸引量に基づき、図36の各検体における各分析項目の分注の順序を並べ替えた図である。検体分注量により分注の順番を決定する実施の形態7では、検体No.1の分析順は分析項目C、分析項目B、分析項目Aの順番となり、検体No.2の分析順は分析項目E、分析項目Lの順となる。検体の分注の順番を検体吸引量の大きさの順とすることにより、免疫学的分析項目Lを分析項目として含む検体No.2の直前の検体吸引量を最小とできるので検体No.1の分注プローブへの残存量が低減でき、従来行なっていた特別洗浄の時間の短縮が可能となる。
その後、制御部101は、次検体の検査オーダーの有無を確認し、新たな検査オーダーがない場合は(ステップS203、No)、分注動作に移行して、分注プローブ50で検体の吸引を行ない(ステップS204)、新たな検査オーダーがある場合は(ステップS203、Yes)、検査オーダーの受付のステップに戻って1検体における各分析項目の分注順序が決定される。吸引された検体は反応容器32に吐出され(ステップS205)、その後、吐出された検体に試薬を分注し、検体と試薬との反応物について測光分析が行なわれる。分注プローブ50は次の分析項目の分注のために、分注プローブ洗浄装置44で洗浄され(ステップS206)、受け付けられた検査オーダーの分注が終了するまで(ステップS207、No)、ステップS204〜ステップS206が繰り返される。