ここで、例えば、インストルメントパネルのロアパネル(以下、「インパネロアパネル」と称す。)の裏面側にエアバッグモジュールが配置されるタイプの車両用ニーエアバッグ装置の場合、エアバッグモジュールは、モジュールケースの左右両端側とインパネリインフォースメント等の車体とを一対のブラケットで連結することで、車体に支持されている。このため、クラッシャブルゾーンが短い車体構造に前記支持構造の車両用ニーエアバッグ装置を搭載した車両が前面衝突すると、以下の挙動を示すことが考えられる。
すなわち、前面衝突時、乗員の両膝がニーエアバッグに当接するが、この際、インパネロアパネルにおけるニーエアバッグが当たる部分の全体に両膝からの荷重が入る。ここで、ニーエアバッグにおける乗員の両膝が当たる部分の車両前方側には左右のブラケットが配置されているため、両膝からの荷重を充分に支持することができる。しかし、ニーエアバッグの中央部の車両前方側にはニーエアバッグを支持する部材が存在しない。このため、ニーエアバッグの中央部からインパネロアパネルに入る荷重を充分に支持することができない。従って、インパネロアパネルにおけるニーエアバッグの中央部が当たる部分が車両前方側へ変形することが考えられる。また、ニーエアバッグの中央部がインパネロアパネルを車両前方側へ押圧する押圧力は、インパネロアパネルを介して左右のブラケットに伝達されるが、その際左右のブラケットは内側へ捩れる方向に力を受ける。そのため、左右のブラケットは内側へ捩れ変形することが考えられる。このような二種類の変形挙動により、乗員の両膝がニーエアバッグに当接した際に充分な反力が得られず(反力が不足し)、乗員の両膝の拘束性能が低下し、乗員の腰の車両前方側への移動量が増加する可能性がある。
本発明は上記事実を考慮し、クラッシャブルゾーンが短い車両に搭載された場合にも、前面衝突時に充分な乗員拘束性能が得られる車両用ニーエアバッグ装置を得ることが目的である。
請求項1記載の本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置は、作動することによりガスを発生するガス発生手段と、折り畳み状態で格納されると共に前記ガス発生手段から発生したガスが供給されることにより膨張展開するニーエアバッグと、一方向に長い箱体形状に形成され、前記ガス発生手段及び前記ニーエアバッグを収容するモジュールケースと、前記モジュールケースの長手方向の両端部側からそれぞれ延出されると共に車体への取付用とされる一対のブラケットと、前記一対のブラケットを前記モジュールケースの長手方向に連結する連結部材と、を有している。
請求項2記載の本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置は、請求項1記載の発明において、前記連結部材は、金属製の一部品で構成されており、前記一対のブラケットを連結する連結部と、当該連結部の板厚方向に折り曲げられることにより形成された補強用の折り曲げ部と、を含んで構成されている、ことを特徴としている。
請求項3記載の本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置は、請求項1又は請求項2記載の発明において、一方の前記ブラケットは、インストルメントパネルの車両前方側に車両幅方向を長手方向として配置されたインパネリインフォースメントに直接又は部材を介して連結されており、他方の前記ブラケットは、前記インパネリインフォースメントと車体フロアとを連結する補強部材に直接又は部材を介して連結されている、ことを特徴としている。
請求項4記載の本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置は、請求項1又は請求項2記載の発明において、前記一対のブラケットは、インストルメントパネルの車両前方側に車両幅方向を長手方向として配置されたインパネリインフォースメントに直接又は部材を介して連結されている、ことを特徴としている。
請求項1記載の本発明によれば、モジュールケースの長手方向の両端部からは一対のブラケットが延出されており、これらのブラケットを介して車両用ニーエアバッグ装置は車体に取り付けられている。
ここで、クラッシャブルゾーンが短い車体構造でかつ上記構成の車両用ニーエアバッグ装置を搭載した車両、より具体的には例えば車両用ニーエアバッグ装置がインパネロアパネルの裏面側に配置されかつ一対のブラケットを介して車体に連結された構成を採用した車両が前面衝突した場合を考える。
この場合、乗員の両膝がニーエアバッグを車両前方側へ押圧すると、インパネロアパネルにおけるニーエアバッグとの接触部分の全体が車両前方側へ押圧される。このとき、ニーエアバッグにおける乗員の両膝が当接する位置では一対のブラケットによる反力が得られる。また、ニーエアバッグにおける乗員の両膝間に位置する部位では、連結部材による反力が得られる。このため、インパネロアパネルにおけるニーエアバッグの中央部に対応する部位が車両前方側へ変形することを抑制又は防止することができる。
さらに、一対のブラケットはモジュールケースの長手方向に連結する連結部材によって連結されているので、ニーエアバッグの中央部からインパネロアパネルを介して一対のブラケットを内側へ捩ろうとする捩り力が作用すると、連結部材がその長手方向に突っ張る。このため、捩り力に抗することができる。従って、一対のブラケットの内側への捩れ変形を抑制又は防止することができる。
上記二つの変形を抑制又は防止できる結果、前面衝突時に乗員の両膝をニーエアバッグで拘束するために充分な反力が得られ、乗員の両膝ひいては腰の車両前方側への移動量を極力減らすことができる。
請求項2記載の本発明によれば、連結部材が金属製の一部品で構成されているため、部品点数が増えることによるコスト増加、重量増加を回避することができる。また、連結部材には連結部の他に連結部の板厚方向に折り曲げられることにより形成された補強用の折り曲げ部が設けられているので、製造も容易であり、かつ連結部材の曲げ剛性を折り曲げ部の形成位置、形成長さ、個数等で調整することができる。
請求項3記載の本発明によれば、一方のブラケットはインパネリインフォースメントに直接又は部材を介して連結されており、他方のブラケットはインパネリインフォースメントと車体フロアとを連結する補強部材に直接又は部材を介して連結されている。このように本発明では、車両用ニーエアバッグ装置の近くに補強部材が設けられている場合に好適である。
請求項4記載の本発明によれば、一対のブラケットはいずれもインパネリインフォースメントに直接又は部材を介して連結されている。このように本発明では、車両用ニーエアバッグ装置の近くに補強部材が設けられていない場合に好適である。
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置は、クラッシャブルゾーンが短い車両に搭載された場合にも、前面衝突時に充分な乗員拘束性能が得られるという優れた効果を有する。
請求項2記載の本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置は、所期の目的を達成するために連結部材に要求される曲げ剛性を簡単に得ることができるという優れた効果を有する。
請求項3記載の本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置は、運転席側に設定し易いという優れた効果を有する。
請求項4記載の本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置は、助手席側に設定し易いという優れた効果を有する。
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図4を用いて、本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
図3には、本実施形態に係る車両用ニーエアバッグ装置を搭載した車両のインストルメントパネルを車室内側から見た斜視図が示されている。この図に示されるように、インストルメントパネル10は、車両幅方向及び略車両前後方向に沿って延在しインストルメントパネル10の上部側を構成するインストルメントパネルアッパパネル(以下、「インパネアッパパネル」と称す。)12と、インパネアッパパネル12の車両幅方向の中間部から車両後方側へ一体に延設されたフロアコンソールボックス14と、車両幅方向及び略車両上下方向に沿って延在されると共に運転席側及び助手席側に対向して設けられかつインストルメントパネル10の下部側を構成する左右一対のインパネロアパネル16、18と、を含んで構成されている。なお、図3に二点鎖線で示されるように、ステアリングホイール20は乗員側から見て左側に配置されており、所謂左ハンドル車とされている。また、インストルメントパネル10は樹脂製とされている。さらに、インストルメントパネル10を平面視で見たときの室内側の意匠ラインは、運転席側の方が助手席側よりも車両後方側へ膨らんだ左右非対称形とされている。
運転席側に配置されたインパネロアパネル16は、垂直面に対し後傾した状態(即ち、車両下方へ向うにつれて垂直面からパネル表面までの距離が長くなるように傾斜した状態)で配置されている。このインパネロアパネル16の中央部(ステアリングホイール20の直下)に車両用ニーエアバッグ装置22が配設されている。
図1及び図2に示されるように、車両用ニーエアバッグ装置22は、インパネロアパネル16の中央部に車両幅方向を長手方向として配置された矩形状のエアバッグドア24と、このエアバッグドア24の車両前方側に配設されたエアバッグモジュール26と、によって構成されている。
エアバッグモジュール26は、略直方体の箱体形状に形成された金属製のモジュールケース28を備えている。モジュールケース28は、その長手方向が車両幅方向となるように配置されている。また、モジュールケース28は、その開口部30が車両後方側を向くように配置されている。モジュールケース28の開口側周縁部の上縁及び下縁には、側面視でL字状に形成された複数のフック32が所定の間隔で一体に形成されている。
上記構成のモジュールケース28の底部28Aの下側には、円柱形状のガス発生手段としてのインフレータ34が配設されている。インフレータ34はその軸方向が車両幅方向となるように配置されている。
さらに、モジュールケース28内には、ニーエアバッグ36が折り畳み状態で格納されている。インフレータ34は略円筒形状に形成された図示しないディフューザ内に挿入された後、ディフューザと一緒にニーエアバッグ36内に挿入されて、モジュールケース28の底部28Aにニーエアバッグ36を間に挟んだ状態で締結固定されるようになっている。これにより、ニーエアバッグ36はモジュールケース28の底部28Aに固定されている。なお、本実施形態では、ニーエアバッグ36をロール折りで折り畳んでいるが、蛇腹折りで折り畳んでもよいし、ロール折りと蛇腹折りとを組み合わせて折り畳んでもよい。
また、上記ニーエアバッグ36の内部には、上下二段にテザー38、40が配設されている。テザー38、40は車両幅方向に細長い矩形状に形成されており、バッグ基布と同一の布材で構成されている。これら二枚のテザー38、40を上下二段に配置し、各々の前縁部及び後縁部をバッグ基布に縫製することにより、ニーエアバッグ36の内部を上下三つの膨張室42、44、46に仕切っている。なお、一例としてテザー38、40に連通孔を形成することにより、隣接する膨張室42、44、46が相互に連通するように構成されている。上記構成のニーエアバッグ36が膨張展開した状態では、ニーエアバッグ36がインパネロアパネル16の意匠面に沿って枕形状に膨張展開される構成である。
一方、エアバッグドア24は、モジュールケース28の開口部30(図1参照)を覆うことが可能な箱体形状に形成されている。また、エアバッグドア24はインパネロアパネル16の意匠面と連続する略矩形平板状の頂壁部24Aと、この頂壁部24Aの周縁部に配置される脚部24Bと、を備えている。上下に配置される脚部24Bには、モジュールケース28のフック32に対応する位置に複数の係止孔48が形成されている。これらの係止孔48内に対応するフック32が挿入されて、係止孔48の周縁部にフック32が係止されることにより、モジュールケース28の開口部30にエアバッグドア24が取り付けられている。
また、エアバッグドア24の頂壁部24Aの裏面(折り畳み状態のニーエアバッグ36と対向する面)には、ティア部50が形成されている。ティア部50は頂壁部24Aの裏面側から見て略H形状に形成されており、これにより頂壁部24Aには上下一対のドア部52が形成されている。ティア部50が形成された部位は周囲に比べて薄肉となっており、脆弱部となっている。そのため、頂壁部24Aの裏面に所定のバッグ膨張圧が作用すると、頂壁部24Aはティア部50に沿って破断し、一対のドア部52が車両上下方向に両開きに展開するようになっている。なお、本実施形態では、一対のドア部52を両開きに展開させたが、これに限らず、車両上方又は車両下方の一方向にドア部を展開させる片開き形式にしてもよいし、上下左右にドア部が展開する形式にしてもよい。また、本実施形態では、エアバッグドア24をインパネロアパネル16と別体で構成したが、これに限らず、エアバッグドアをインパネロアパネルと一体に構成してもよい。
ここで、図1及び図2に示されるように、上述したモジュールケース28の底部28Aの長手方向の両端部には、左右一対の外側ブラケット54及び内側ブラケット56が固定されている。外側ブラケット54は車両幅方向外側(図示しないサイドドア側)に配置されており、又内側ブラケット56は車両幅方向内側(図示しないフロアトンネル側或いはインストルメントパネル10のコンソールボックス14側)に配置されている。
外側ブラケット54及び内側ブラケット56は基本的には左右対称形状に形成されているため、外側ブラケット54についてのみ詳述し、内側ブラケット56についてはその説明を省略することにする。
外側ブラケット54を側面視で見ると、上部54Aに対し下部54Bが車両前方側へオフセットされた段差形状に形成されている。外側ブラケット54の下部54Bは、モジュールケース28の底部28Aの車両幅方向外側の端部に溶接により固定されている。一方、外側ブラケット54の上部54Aは、モジュールケース28の上方側へ延出されており、自由端とされている。なお、上部54Aは下部54Bに対して車両幅方向外側に張出すように延出されている。また、外側ブラケット54の車両幅方向内側の縁部には、折り曲げによるフランジ部58が形成されている。なお、内側ブラケット56の上部及び下部についても同様に符号56A、56Bを付すことにする。
外側ブラケット54の上端部は、インパネリインフォースメント60の大径部60Aから延出された部材としての長尺状の支持部材62の下端部にボルト及びウエルドナット等の締結手段によって締結固定されている。なお、インパネリインフォースメント60は、インストルメントパネル10の車両前方側に配置されかつ図示しない左右のフロントピラーを車両幅方向に連結するパイプ状の部材である。また、インパネリインフォースメント60は、運転席側に配置される大径部60Aと助手席側に配置される小径部60Bとを備えている。
支持部材62の上端部は、インパネリインフォースメント60の大径部60Aの外周面に溶接により固定されている。支持部材62の中間部はインパネリインフォースメント60の下方へ延出されており、更に支持部材の下端部は中間部に対して車両前方側へ所定の傾斜角度で折り曲げられている。上記支持部材62の両側部には、各々車両後方側へ折り曲げられた一対のフランジ部64が形成されている。支持部材62は、断面形状がコ字状(又はU字状)に形成されたことにより剛性が高められている。この支持部材62の下端部の一対のフランジ部64間に、上述したモジュールケース28の車両幅方向外側の端部からインパネリインフォースメント60側へ延出された外側ブラケット54の上端部が嵌合されて締結固定される構成である。
一方、内側ブラケット56は、インパネリインフォースメント60の小径部60Bから延びる補強部材としてのフロアブレース66に後述する上側ブラケット68を介して固定されている。フロアブレース66は長尺状の部材であり、上端部がインパネリインフォースメント60の小径部60Bに溶接されたブラケット65にボルト締結により固定されている。また、フロアブレース66の下端部は、車体フロア(図3参照)の車両幅方向中央部に形成されたトンネル部の側面にボルト締結により固定されている。
上記フロアブレース66の高さ方向中間部には、一端部がフロアブレース66に溶接により固定された部材としての上側ブラケット68が配設されている。上側ブラケット68はフロアブレース66から車両幅方向外側へ延出されており、先端部である他端部に前述した内側ブラケット56の上端部がボルト及びウエルドナット等の締結手段によって締結固定されている。なお、フロアブレース66の中間部には、上側ブラケット68とは別のブラケットである下側ブラケット70が固定されている。下側ブラケット70は乗員側から見てL字状に形成されており、その一端部はフロアブレース66に溶接により固定されている。下側ブラケット70はフロアブレース66から車両幅方向外側へ延出されており、モジュールケース28の車両幅方向内側の端部に溶接により固定されている。
上述した外側ブラケット54と内側ブラケット56とは、車両幅方向を長手方向として配置された長尺状の連結部材72によって連結されている。つまり、本実施形態のエアバッグモジュール26には、左右の外側ブラケット54と内側ブラケット56とを繋ぐ橋渡し構造が付与されている。
連結部材72は金属製の一部品とされており、プレス成形により製作されている。連結部材72は外側ブラケット54と内側ブラケット56とを連結する帯板状の連結部72Aと、この連結部72Aの上縁部及び下縁部を連結部72Aの板厚方向である車両後方側へそれぞれ折り曲げて平行に配置することにより形成された折り曲げ部としての上下一対の補強フランジ72Bと、によって構成されている。従って、連結部材72の縦断面形状は、車両後方側が開放されたコ字状(U字状)とされている。
連結部72Aの長手方向の両端部は、外側ブラケット54及び内側ブラケット56に溶接(スポット溶接)により固定されている。また、連結部72Aの中間部には、適宜間隔で長孔状の複数の重量軽減孔74が形成されている。
なお、本実施形態では、連結部72Aの上縁部及び下縁部の両方を同一方向である車両後方側へ折り曲げることにより上下一対の補強フランジ72Bを形成したが、これに限らず、連結部の上縁部又は下縁部のみを車両後方側又は車両前方側へ折り曲げて縦断面形状がL字状の連結部材としてもよい。或いは、連結部72Aの上縁部及び下縁部を互いに反対方向へ折り曲げて縦断面形状がZ字状の連結部材としてもよい。
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
上記構成の車両用ニーエアバッグ装置22を搭載した車両が前面衝突すると、図示しない衝突検知手段によってその状態が検知され、衝突検知信号がエアバッグECUへ出力される。エアバッグECUでエアバッグ作動と判定されると、ステアリングホイール20のホイールパッドに内蔵された運転席用のエアバッグ装置が作動する他、インパネロアパネル16の裏面に配設された車両用ニーエアバッグ装置22も作動する。すなわち、車両用ニーエアバッグ装置22のインフレータ34のスクイブ(点火装置)に所定電流が通電される。これにより、インフレータ34が作動しガスが発生する。発生したガスは、インフレータ34に形成されたガス噴出孔から噴出され、折り畳み状態でモジュールケース28内に格納されているニーエアバッグ36内へ供給される。その結果、ニーエアバッグ36が膨張し、エアバッグドア24に作用するバッグ膨張圧が所定値に達すると、ティア部50に沿ってエアバッグドア24が破断され、ドア部52が上下に展開される。その結果、ニーエアバッグ36がインパネロアパネル16と乗員の両膝との間に膨張展開される。これにより、乗員の両膝がニーエアバッグ36によって拘束され、乗員の腰の車両前方側への慣性移動が抑制される。
ここで、クラッシャブルゾーンが短い車体構造でかつ上述したように左右一対の外側ブラケット54及び内側ブラケット56を介してインパネリインフォースメント60及びフロアブレース66に支持された車両用ニーエアバッグ装置22を搭載した車両が前面衝突した場合を考える。
この場合、乗員の両膝がニーエアバッグ36の長手方向の両端部付近を車両前方側へ押圧すると、インパネロアパネル16におけるニーエアバッグ36との接触部分の全体が車両前方側へ押圧される。このとき、ニーエアバッグ36における乗員の両膝が当接する位置では一対の外側ブラケット54及び内側ブラケット56による反力が得られる。また、ニーエアバッグ36における乗員の両膝間に位置する部位では、連結部材72による反力が得られる。このため、インパネロアパネル16におけるニーエアバッグ36の中央部に対応する部位が車両前方側へ変形することを抑制又は防止することができる。
さらに、一対の外側ブラケット54及び内側ブラケット56はモジュールケース28の長手方向に連結する連結部材72によって連結されているので、図4に示されるように、ニーエアバッグ36の中央部からインパネロアパネル16を介して一対の外側ブラケット54及び内側ブラケット56を内側へ捩ろうとする捩り力(図4に矢印Fでこれを示す)が作用すると、連結部材72がその長手方向に突っ張る。この連結部材72による突っ張り力が得られることで、捩り力Fに抗することができる。従って、一対の外側ブラケット54及び内側ブラケット56の内側への捩れ変形(図4の矢印F方向への変形)を抑制又は防止することができる。
上記二つの変形を抑制又は防止できる結果、前面衝突時に乗員の両膝をニーエアバッグ36で拘束するために充分な反力が得られ、乗員の両膝ひいては腰の車両前方側への移動量を極力減らすことができる。その結果、本実施形態によれば、車両用ニーエアバッグ装置22がクラッシャブルゾーンが短い車両に搭載された場合にも、前面衝突時に充分な乗員拘束性能が得られる。
また、本実施形態では、連結部材72が一部品で構成されているため、部品点数が増えることによるコスト増加及び重量増加を回避することができる。また、連結部材72は、連結部72Aと、連結部72Aの上縁部及び下縁部を板厚方向に折り曲げられることにより形成された上下一対の補強フランジ72Bとで構成されているので、製造が容易であると共に、連結部材72の曲げ剛性を補強フランジ72Bの形成位置、形成長さ、個数等で調整することができる。その結果、所期の目的を達成するために連結部材72に要求される曲げ剛性を簡単に得ることができる。
さらに、本実施形態では、外側ブラケット54はインパネリインフォースメント60に連結されており、内側ブラケット56はインパネリインフォースメント60と車体フロアとを連結するフロアブレース66に上側ブラケット68を介して連結されている。このように本実施形態は、車両用ニーエアバッグ装置22の近くにフロアブレース66等の補強部材が設けられている場合に好適である。よって、本実施形態の車両用ニーエアバッグ装置22は運転席側に設定し易い。
〔第2実施形態〕
次に、図5を用いて、本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分には、同一番号を付してその説明を省略する。
図5に示されるように、この第2実施形態では、助手席側に車両用ニーエアバッグ装置22が配設されている。具体的には、インパネリインフォースメント60の小径部60Bには、各々長尺状に形成された左右一対の支持部材80が取り付けられている。各支持部材80の上端部は小径部60Bの下部に溶接により固定されている。各支持部材80の中間部は小径部60Bの下方へ延出されており、下端部は中間部に対して若干車両前方側へ屈曲されている。また、一対の支持部材80のピッチは、外側ブラケット54と内側ブラケット56のピッチと同一に設定されている。外側ブラケット54、内側ブラケット56の上端部と左右の支持部材80の下端部とは、ボルト及びウエルドナット等の固定手段によって締結固定されている。
そして、上記外側ブラケット54と内側ブラケット56とが連結部材72によって車両幅方向に連結されている。
(作用・効果)
本実施形態も第1実施形態と同様に外側ブラケット54と内側ブラケット56が連結部材72によって車両幅方向に連結されているため、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、連結部材72による突っ張り効果が得られるため、前面衝突時にインパネロアパネルにおけるニーエアバッグ36の中央部に対応する部位が車両前方側へ変形することを抑制又は防止することができる。同時に、一対の外側ブラケット54及び内側ブラケット56の内側への捩れ変形を抑制又は防止することができる。これらの結果、前面衝突時に乗員の両膝をニーエアバッグ36で拘束するために充分な反力が得られ、乗員の両膝ひいては腰の車両前方側への移動量を極力減らすことができる。よって、本実施形態においても、車両用ニーエアバッグ装置22がクラッシャブルゾーンが短い車両に搭載された場合にも、前面衝突時に充分な乗員拘束性能が得られる。
さらに、本実施形態では、外側ブラケット54及び内側ブラケット56の両方がインパネリインフォースメント60の小径部60Bに連結されている。このように本実施形態は、車両用ニーエアバッグ装置22の近くにフロアブレース等の補強部材が設けられていない場合に好適である。よって、本実施形態の車両用エアバッグ装置22は助手席側に設定し易い。
〔上記実施形態の補足説明〕
上述した第1及び第2実施形態では、前面衝突時に車両用ニーエアバッグ装置22が作動するものとして説明したが、これに限らず、プリクラッシュセンサ等の衝突予知手段を車両に搭載させて、衝突予知手段によって前面衝突することが予知された場合には車両用ニーエアバッグ装置22を作動させるようにしてもよい。
また、第1実施形態を例にして説明すると、エアバッグモジュール26の車両幅方向外側の端部を支持するブラケットが、モジュールケース28側に予め一体化された外側ブラケット54と、インパネリインフォースメント60側に予め一体化された支持部材62とに二分割されており、ボルト及びウエルドナットで両者を連結する構成を採ったが、これに限らず、一本のブラケットでモジュールケース28とインパネリインフォースメント60とを連結するようにしてもよい。
別の言い方をすると、上述した第1及び第2実施形態では、外側ブラケット54、内側ブラケット56をインパネリインフォースメント60又はフロアブレース66に支持部材62、上側ブラケット68、下側ブラケット70といった部材を介して連結したが、これに限らず、外側ブラケット及び内側ブラケットの長さや形状を適宜変更して、部材を介さずにインパネリインフォースメントやフロアブレース等の補強部材に直接連結する構成を採ってもよい。
さらに、第1実施形態では、外側ブラケット54についてはインパネリインフォースメント60の大径部60Aに支持させ、内側ブラケット56についてはインパネリインフォースメント60とは異なるフロアブレース66に支持させる構成を採ったが、これに限らず、車両用ニーエアバッグ装置の配設位置とボディー構造との関係で可能である場合は、第2実施形態と同様に、インパネリインフォースメント(の大径部)に外側ブラケットと内側ブラケットの両方を支持させるようにしてもよい。逆に、第2実施形態では、外側ブラケット54と内側ブラケット56の両方をインパネリインフォースメント60の小径部60Bに支持させる構成を採ったが、これに限らず、車両用ニーエアバッグ装置の配設位置とボディー構造との関係で可能である場合は、第1実施形態と同様に、外側ブラケットについてはインパネリインフォースメントの小径部に支持させ、内側ブラケットについてはフロアブレース等の補強部材に支持させるようにしてもよい。
また、上述した第1及び第2実施形態では、連結部材72の連結部72Aに各々長孔状とされた複数の重量軽減孔74を形成したが、これに限らず、図6に示されるように、連結部材72の連結部72Aに連結部材72の長手方向(車両幅方向)に沿って延びる補強用のビード90を形成してもよい。ビード90を形成することにより、連結部材72の剛性が高くなり、捩り力に対する抗力が上がる。つまり、連結部材にどれぐらいの捩り力に対する抗力が要求されるかで、重量軽減孔を形成したり、ビードを形成したり、任意に選択することにより、上下の補強フランジ72Aと共に、捩り力に対する抗力のチューニングが可能である。
さらに、上述した第1実施形態及び第2実施形態では、モジュールケース28、外側ブラケット54、内側ブラケット56、連結部材72をそれぞれ金属製としたが、これに限らず、要求強度等の設計条件によってはモジュールケース28、外側ブラケット54、内側ブラケット56、連結部材72の特定の部材又は全ての部材を樹脂製としてもよい。