以下、添付図面を参照して、本発明の一側面として露光装置1について説明する。ここで、図1は、露光装置1の概略構成図である。露光装置1は、図1に示すように、照明装置100と、レチクル200と、投影光学系300と、プレート400と、プレートステージ450と、制御部500とを有する。露光装置1は、例えば、ステップ・アンド・スキャン方式やステップ・アンド・リピート方式でレチクル200に形成された回路パターンをプレート400に露光する投影露光装置である。
照明装置100は、転写用の回路パターンが形成されたレチクル200を照明し、光源部102と、照明光学系110とを有する。
光源部102は、例えば、光源としては、波長約193nmのArFエキシマレーザー、波長約248nmのKrFエキシマレーザーなどを使用することができるが、光源の種類はエキシマレーザーに限定されず、例えば、波長約153nmのF2レーザーを使用してもよいし、その光源の個数も限定されない。また、光源部102にレーザーが使用される場合、コヒーレントなレーザー光束をインコヒーレント化するインコヒーレント化光学系を使用することが好ましい。また、光源部102に使用可能な光源はレーザーに限定されるものではなく、一又は複数の水銀ランプやキセノンランプなどのランプも使用可能である。本実施形態の露光装置1は、後述するように、波長250nm以下の光を使用する場合に特に有効である。
照明光学系110は、レチクル200を照明する光学系であり、レンズ、ミラー、オプティカルインテグレータ、絞り等を含む。本実施形態の照明光学系110は、光束形状変換手段120と、光束変更手段130と、結像光学系140と、折り曲げミラー112、150、151と、フィルター部材154と、ハエの目レンズ156と、可変絞り158と、集光光学系160と、ハーフミラー152と、検出部170と、マスキングブレード172と、結像光学系180とを有する。
折り曲げミラー112は、光源部110から射出された光を光束形状変換手段120に導光する。
光束形状変換手段120は、光源部110からの光を所定面(A面)において円形や輪帯形状、多重極状等必要に応じて所望の形状分布の光束に変更する。即ち、A面は有効光源の基本形状を形成する面である。A面での分布を基本形状とし、後述の光束変更手段130による形状変更や、倍率可変の結像光学系140による大きさ変更や、各位置に配置された絞り部材(例えば158)による制限等により、被照射面において所望の有効光源形状が形成される。
光束形状変換手段120はフライアイレンズ、内面反射を用いた光学パイプ、回折光学素子等少なくとも1つ、もしくは、これらを組み合わせた複数のオプティカルインテグレータやリレー光学系、集光光学系、ミラー等から構成される。本実施形態の光束形状変換手段120は、光学系121、123、126、オプティカルインテグレータ122、124、回折光学素子125a、125bを含む。ここで、図2は、光束形状変換手段120の概略構成図である。
光学系121は、シリンドリカルレンズなどにより構成され、入射光束をほぼ円形もしくは正方形状等の所望の大きさの光束に変更する。オプティカルインテグレータ122は、本実施形態では2次元的に微小レンズを配列した、もしくはそれと等価な効果を持つハエの目レンズから構成され、光学系123を介して、オプティカルインテグレータ124の入射面を均一に照明する。オプティカルインテグレータ124の入射面における光分布形状は、オプティカルインテグレータ122を構成する微小レンズの開口数と光学系123の焦点距離により決定され、オプティカルインテグレータ122に入射する光束の分布によらず一定となる。
オプティカルインテグレータ124は、本実施形態では2次元的に微小レンズを配列したもしくはそれと等価な効果を持つハエの目レンズから構成され、回折光学素子125a又は125bの入射面を均一に照明する。オプティカルインテグレータ124の各領域から射出される光束は、全領域において、ほぼ同一のNA(光線広がり角度)を持った光束となる。
回折光学素子125a及び125bは、不図示の駆動装置により切り替え可能に、オプティカルインテグレータ124の射出面近傍に設けられている。回折光学素子の数は2つに限定されず、駆動装置は、例えば、ターレットのようにいずれか一の回折光学素子を光路上に配置可能な装置などである。回折光学素子は入射光を所望の角度分布に発散させる素子であり、その射出光角度分布が光学系126の後ろ側焦点面(所謂フーリエ変換面)に投影される。A面は、このフーリエ変換面に相当する。なお、フーリエ変換の関係とは、物体面と瞳面又は瞳面と像面の関係をいう。
オプティカルインテグレータ122及び124は、それぞれにおいて、入射側焦点(前側焦点)位置が入射面とほぼ一致する構成となっており、それぞれに入射する光線の角度が変動した場合でも、それぞれから射出される光束の角度特性は変化しない。上記のような構成をとることにより、回折光学素子には、常に一定の角度特性の光線が入射することになり、例えば、光源からの光束が揺らいだりしても、A面は常に一定の光分布とすることができる。なお、オプティカルインテグレータ122及び124は、内面反射を用いた光学パイプ、回折格子、多光源形成手段を構成する光学要素が反射作用を持つミラーであるハエの目ミラー、若しくは、これらを組み合わせた複数のオプティカルインテグレータその他の均一化手段から構成されてもよい。
オプティカルインテグレータ124と回折光学素子は、所定量離れた間隔で配置され、オプティカルインテグレータ124を構成する隣接する微小レンズからの光束が、一部で重なる程度に設定されている。また、オプティカルインテグレータ122と光学系123を介した光束でオプティカルインテグレータ124を照明することにより、回折光学素子に平均的に光を照射し、光の集中を防止することができる。例えば、ArFレーザーを光源とし、回折光学素子を石英で製作した場合、その一部への照射エネルギー密度が大きいと、回折光学素子が損傷してしまう。その防止策としてこのような構成がとられている。
オプティカルインテグレータ122と光学系123を介した光束でオプティカルインテグレータ124を照明する理由の1つとして、A面における入射光束の配光特性を一定にすることができるということもある。オプティカルインテグレータ122や光学系123がない場合でもA面では一定の照度分布を得ることができるが、インテグレータ124に入射する光分布が変化するとA面における入射光束の配光特性(入射角度分布)が変化する。これは、それ以降の光学系やその収差によって、レチクル200面における入射光線の角度分布が若干なりとも変わってしまうことを意味する。つまり、光源から入射する光の変動や機差があっても、A面においては、回折光学素子を切り替えない限り、常に一定の制御された光分布及び入射角度分布になるように本構成がとられている。なお、本実施形態の光束形状変換手段120は、ダブルインテグレータの構成であるがトリプルインテグレータの構成を使用してもよい。
A面にできるパターンは、回折光学素子のフーリエパターン(光を垂直にNA=0で入射したときにフーリエ変換面に形成されるパターン)と、回折光学素子に入射する光線の角度分布をコンボリューションした結果となる。従って、A面での分布を所望の分布に近づけるには、オプティカルインテグレータ124からの射出光のNAはできるだけ小さくしておくことが望ましい。このため、光学系121から射出された光線のNA×径をできるだけ保存して回折光学素子まで伝達することが望ましい。回折光学素子を切り替えることにより、A面には、例えば、円形や輪帯形、多重極状の分布を形成することができる。回折光学素子の設計により、例えば、4重極等の多重極における各極の領域の強度を違った状態にすることも可能である。
図1に戻り、A面近傍には、円錐型光学素子132や間隔変更可能な円錐型光学素子134、不図示の平行平面板や適当な形状の絞り部材(例えば輪帯開口絞りや4重極開口絞りや円形絞り等)、4角錐型光学素子や屋根型光学素子等、または倍率を変更するための拡大/縮小ビームエキスパンダーなど、光束形状変換手段120により基本形状に変更された光束をさらに変更するための光束変更手段130が切り替え可能に光軸上に配置されている。光束変更手段130は光路から待避することもできるし、これらのうちの複数を同時に光軸上に配置することも可能である。
円錐型光学素子132は、入射面が凹型の円錐状、射出面が凸型の円錐状の光学素子であり、例えば、A面における基本形状が円形の時、光軸上に配置された場合に輪帯状の光束を形成する。
円錐型光学素子134は、入射面が凹型の円錐状、射出面が平面の光学素子134aと、入射面が平面、射出面が凸型の円錐状の光学素子134bから構成される。A面における基本形状が円形の時、円錐型光学素子134が光軸上に配置されている場合には、輪帯形状の光束が形成され、光学素子134aと光学素子134bの間隔を変えることにより、輪帯形状の光束(輪帯比)や大きさを変えることができる。円錐型光学素子134をこのような構成とすることにより、より小さいスペースで効率的に輪帯形状の光束を形成することが可能となる。また、A面における基本形状が例えば4重極状や2重極状の場合、その内径、外径を変更することが可能である。
例えば、図2に示した回折光学素子を適宜選択することにより、A面において円形(図3(a))の分布を形成している時、光学素子134aと光学素子134bの間隔を変えることにより、図3(b)及び図3(c)に示すように、その輪帯の形状(輪帯比)や大きさを変更することができる。図2において別の回折光学素子を選択することにより、A面において輪帯(図4(a))の分布を形成している時、光学素子134aと光学素子134bの間隔を変えることにより、図4(b)及び図4(c)に示すように、その輪帯の形状(輪帯比)や大きさを変更することができる。図2において更に別の回折光学素子を選択することにより、A面において四重極(図5(a))の分布を形成している時、光学素子134aと光学素子134bの間隔を変えることにより、図5(b)及び図5(c)に示すように、その四重極の比率や大きさを変更することができる。
また、後述するように、結像光学系140は変倍光学系であるのでその倍率と絞り158の開口径を変えることにより、光束変更手段130が形成する輪帯比に限らず、より大きな輪帯比(例えば、2/3輪帯、3/4輪帯等)の所望の大きさを有する有効光源を形成することができる。
円錐型光学素子134を使用した場合には、ハエの目レンズ156には光線の入射角の制限を満足する必要がある。入射する光線の角度がある角度を超えてしまうと、その光線は不要光となるだけではなく、有効光源の形状が崩れたり、照度ムラが発生したりする。このため、光学素子134a及び134bの間隔、結像光学系140の倍率を、ハエの目レンズ156への入射角度の制限を超えない範囲に設定すると共に絞り158の開口径を変更して外径を小さくすることにより、輪帯比を変更することが有効である。これは、輪帯照明のみに限らず、4重極状、若しくは、2重極状の照明に関しても適用可能である。
光学素子134a及び134bの円錐状の面の角度は、ほぼ同一角度になっている。同一角度にすることにより、光束形状変更手段122の射出光束の角度増加を抑え、後段の光学系での光束のけられを最小限にすることができる。後段の光学系に角度的な余裕がある場合には、必ずしも同一角度にする必要はなく、例えば、輪帯幅を小さくするために角度を変えてもよい。
円錐型光学素子134と同様に、入射型の光学素子の入射面を凹型の四角錐面、射出側の光学素子の射出面を凸型の四角錐面とした間隔可変の四重極変換素子や、同様に、三角屋根型の二重極変換素子を適用することも可能である。光束変換手段130を使用せずに、光束形状変換手段120で形成した形状を維持してもよい。このように、光束形状変換手段120及び光束変更手段130の光学素子を組み合わせることにより、様々な形状分布の光束をA面近傍に実像もしくは虚像として形成することができる。
A面上に形成された形状もしくは、光束変更手段130により所望の形状に変更された光束は、倍率可変の結像光学系140により倍率が変更され、後述するフィルター部材154を経て、ハエの目レンズ156の入射面に投影される。結像光学系140は、本実施形態ではレンズ142、144及び146を含むが、レンズの数は限定されない。
ハエの目レンズ156の入射面において、所定面Aの光量分布が収差なく結像した場合、光強度分布の輪郭がはっきりとしてしまう。この場合、被露光面であるプレート400上において照度ムラや有効光源の画面内不均一性が発生する。従って、所定面Aとハエの目レンズ156の入射面との結像関係は、ある程度収差がある状態(デフォーカスを含む)で結像していることが望ましい。但し、ハエの目レンズ156を構成するレンズ(微小レンズ)が多数あり、照度ムラ等への影響が小さい場合にはこの限りではない。
ハエの目レンズ156は、入射光束により、その射出面近傍に複数の光源像(2次光源)を形成し、レチクル200面を均一に照明する。複数の光源像が形成される面の近傍(B面)には、径可変(切り替えも含む)の絞り158が配置されている。なお、複数の光源像が形成される面(ハエの目レンズを構成する微小レンズの後ろ側集光点面)は比較的光束のエネルギー密度が高いため、その面に対して若干デフォーカスした位置(−数mm乃至+数mmの範囲内の位置)に絞り158を配置する。ただし、絞り158が、そのエネルギー密度の高さに耐えうる場合には、複数の光源像が形成される面に一致させてその絞り158を配置してもよい。
絞り158と開口絞り310は、光学的にほぼ共役な位置に配置されている。絞り158の射出面側において、ハエの目レンズ156及び絞り158により形成される多光源の形状の開口絞り310の位置での像が、プレート400面上の各点における照明光の形状(有効光源形状)となる。
複数の光源像からの光束のうち、絞り158により制限されない光束が集光光学系160によりマスキングブレード172が配置される面を効率よく照明する。マスキングブレード172は、結像光学系180によりレチクル200が配置される面と光学的に共役な位置に配置され、レチクル200面上における被照明領域を決定する。集光光学系160は本実施形態ではレンズ162及び164を含み、結像光学系180は本実施形態ではレンズ182及び184を含むが、これらのレンズの数は限定されない。
集光光学系160のレンズ162及び164の間にはハーフミラー152が配置されている。ハーフミラー152は入射光束を反射光と透過光に分割し、その一方をレチクル200への照明光に、もう一方をレチクル200に入射する露光量を検出器170にて間接的にモニターするような構成となっている。ハーフミラー152及び検出器170の配置は図1に示す限りではなく、光源部102からマスキングブレード172の間の光路中に配置されていればよい。レチクル200の近傍には、レチクル200と投影光学系300との間に挿入及び取り出しが可能で、有効光源分布を測定するための検出部190が設けられている。
本実施例においては、図2に示す回折光学素子からプレート400面に到る光路は、図1に示すように、1つの平面内に収まるように折り曲げミラー150、151及びハーフミラー152を配置している。この結果、後述するように、フィルター部材154の構成を簡単にすることができる。
以下、フィルター部材154及びσ形状補正機構128について説明する。
まず、図1を参照して、ミラー150乃至152がもたらす照明光学系110の透過率分布が不均一性について説明する。図1において、紙面に平行な断面で見た時の主光線a及び所定のNAを持った光線b及びcについて、折り曲げミラー150及び151やハーフミラー152がないときには、光線b及びcは光軸対称であり、A面からレチクル200面に到る光路中にて両者の透過率に差はない。また、これらのミラーがあっても各ミラーがある領域において光線b及びcが平行であれば、やはり光線b及びcの透過率に差は生じない。
しかし実際には、設計の制約(スペースや収差の最適化)により、ミラー150、151及びハーフミラー152に入射する角度を厳密に同一にすることは難しい。これらの光学素子の透過率(反射率)に角度特性が出ない程度のコーティングが施されていれば問題はないが、波長250nm以下、特に、ArF(193nm)程度以下になると、コーティング物質も限られ、角度特性が出ないコーティングは難しい。従って、光線a乃至cのA面からレチクル200面までの透過率に差が発生することになる。
図6は、その透過率の一例を示したグラフである。また、図7は、σ分布内の2次元的な透過率例を表したものである。図7における濃度は透過率分布が不均一であることを示している。A面において紙面と垂直な方向に位置する光線d及びeの各ミラーへの入射角は光線aのそれと殆ど変わらないため、図7に示すように、σ内透過率分布はX方向にほぼ一定であり、Y方向に変化する分布となる。このため、A面においてXY対称な分布を形成しても、レチクル200面におけるσ分布はX方向に対してY方向の強度が弱い分布となる。このσ分布を使用して露光を行った場合、X方向のパターンとY方向のパターンで結像性能が変わってきてしまい、2方向のパターンで線幅差が発生する。また、レチクル以降の投影光学系にミラーを用いるカタディオ光学系の場合、レチクル200面におけるσ分布が均一であっても、投影系ミラーによってウェハ400面におけるσ分布が不均一になり、X方向のパターンとY方向のパターンで結像性能が変わってきてしまい、2方向のパターンで線幅差が発生する。
即ち、瞳310までの透過率分布が均一ではないために、有効光源分布は均一にはならなくなる。かかる問題を解決する第1の手段として本実施形態では透過率分布を均一にするフィルター部材154を配置することにしている。即ち、フィルター部材154は、照明系ミラー、投影系ミラーがもたらす透過率分布の不均一性をキャンセルするような透過率分布を有する。
フィルター部材154は、本実施形態では、ハエの目レンズ156の直前に配置されているが、この位置に限定されず、被照射面であるレチクル200面と実質的にフーリエ変換の関係にある位置(又は瞳310面と共役な位置)に配置されていればよい。本実施形態は、瞳310までの透過率分布を均一にしようとしており、瞳310がレチクル200とフーリエ変換の関係にあり、ハエの目レンズ156の射出面が瞳310と共役だからである。フィルター部材154は、ハエの目レンズ156の入射面もしくは射出面、又は、これらの面と光学的に共役な面の近傍に配置されることが可能である。フィルター部材154がハエの目レンズ156の入射面に配置されてもよい理由は、ハエの目レンズ156は、各レンズ素子においては、入射面と射出面とがフーリエ変換の関係であるが、ハエの目レンズ156全体では入射面と射出面(即ち、細分化の前後)において有効光源をほぼ維持しているからである。この意味で、フィルター部材154は、有効光源の基本形状を決定する面(A面)又はそれと光学的に共役な位置又はその近傍に設けられていれば足り、本出願において「被照明面と実質的にフーリエ変換の関係にある位置」は有効光源の基本形状を決定する面(A面)又はそれと光学的に共役な位置又はその近傍を含む概念である。
図8(a)及び図8(b)に、異なる透過率分布を有するフィルター部材154a及び154bを示す。フィルター部材154aはその透過率がX軸に対称なものであり、フィルター部材154bは、それをY方向に若干オフセットをもたせたものである。図8における濃度は透過率分布を示しており、光線a乃至cの各ミラーによる反射率及び透過率差をキャンセルした分布になっている。
フィルター部材154により、瞳310における透過率分布はほぼ均一な分布もしくは回転対称な分布にすることができる。照明光学系110の設計値(ミラーの反射特性、透過特性)により一意的にこの分布を決定して配置してもよい。代替的に、レチクル200面にてσ分布を検出部190が測定し、制御部500が複数のフィルター部材154の中から選択的に配置してもよい。また、大きめのフィルター部材154を配置し、装置毎/照明状態毎にそれをY方向にシフトして、それぞれ最適な位置を求めて位置を決定してもよい。
フィルター部材154の透過率分布を決定する方法について、図9を参照して説明する。ここで、図9は、フィルター部材154の透過率分布を設定するためのフローチャートである。
まず、ミラー150乃至152がない状態で照明光学系110が瞳310に均一な透過率分布を形成するように設計する(ステップ1002)。その際、光源部110から被照明面としてのレチクル200面に到る光路の光軸を1つの平面内に保つように配置することが好ましい。これにより、フィルター部材154の構成を一方向のみへの濃度変化フィルターのように単純にすることができるからである。
次に、投影系ミラー、照明系ミラー150乃至152を挿入することによってミラーがもたらす透過率分布の不均一性をシミュレーションによって取得する(ステップ1004)。透過率分布の不均一性は、ミラー150乃至152の挿入前後の透過率分布を比較することによって取得することができる。必要があれば、他の要因に基づく透過率の不均一性を取得する。
次に、ステップ1004によって測定された、投影系ミラー、照明系ミラー150乃至152がもたらす透過率分布の不均一性を補正する透過率分布をフィルター部材154に設定する(ステップ1006)。
例えば、図7において、光線a乃至eに対応する位置の透過率分布がそれぞれ95%、90%、90%、95%、95%であれば、これをキャンセルするように、光線a乃至eに対応する位置の透過率分布がそれぞれ相対的に90%、95%、95%、90%、90%になるような透過率分布をフィルター部材154に設定する。このような透過率分布はフィルター部材154aに当てはまる。
一方、例えば、図7において、光線a乃至eに対応する位置の透過率分布がそれぞれ95%、90%、93%、95%、95%であれば、まず、上述のように、光線a乃至eに対応する位置の透過率分布がそれぞれ相対的に90%、95%、約92%、90%、90%になるような透過率分布を作成し、光線a乃至eにおける透過率分布が均一になるようにそれをY方向に所定方向だけオフセットすることによって透過率分布を決定し、それをフィルター部材154に設定する。このような透過率分布はフィルター部材154bに当てはまる。上記では、Y方向の3点での補正例を示したが、実際には、より細分化したポイントを測定もしくは補間し、その分布にあった(キャンセルした)分布のフィルター部材を設定することが望ましい。
フィルター部材154a及び154bは、X方向の分布は実質的に同一であり、Y方向には連続的に変化する。これは、図1に示すように、有効光源の基本形状が決定されるA面とレチクル面の光路は、1つの平面内におさまるようミラー150乃至152を配置しているからである。上述したように、紙面と垂直な方向に位置する光線d及びeの各ミラーへの入射角は光線aのそれと殆ど変わらないため、このようなフィルター分布にて補正が可能となる。一方向への濃度変化を持つフィルターのため、製作は容易である。例えば、金属膜等の蒸着によりこのフィルターを製作する場合、蒸着中に基板と蒸着源の間に配置された2枚の遮蔽板の位置をそれぞれ制御しながら蒸着することにより基板にこのような一方向に分布を持つフィルターを簡単に安価に製作することができる。
照明光学系110の配置上、A面からレチクル200面の光路を平面内に収めることができない場合、一方向に分布を持つフィルター部材154を2枚、分布の方向を90°回転させて配置してもよい。もちろん、A面からレチクル200面の光路を平面内に収めることができた場合においても、分布の方向を90°回転させて配置した2枚のフィルター部材を配置してもよい。2枚をそれぞれ独立に各分布方向にシフトさせ、それらの位置を調整してもよい。必要があればフィルター部材154は、2枚以上設けられてもよい。少なくとも2枚以上のフィルター部材154は、同一の透過率分布を有してもよいし、異なる透過率分布を有してもよい。
次に、ステップ1006により設定された透過率分布を有するフィルター部材154を照明光学系110(の光路上)に配置する(ステップ1008)。配置位置は、上述したように、被照明面と実質的にフーリエ変換の関係にある位置である。この結果、フィルター部材154の透過率分布は、ミラーがもたらす照明光学系110及び投影光学系300の透過率分布の不均一性を補正するように予め設定された透過率分布を有する。
なお、照明状態が変更されるたびに制御部500はフィルター部材154の切り替えを行ってもよい。照明状態の変更は、典型的には、レチクル200面におけるσ分布を変更することを意味しているが、本実施形態は、分布自体は変わらなくても偏光状態が変わった場合も照明状態の変更に含んでいる。近年の露光装置のように投影光学系のNAが大きくなった場合、ウェハ面に入射する光の偏光状態により結像特性が変わってくる。従って、より微細なパターンを高NAの露光で形成する場合、像質を改善するために偏光状態を制御した照明が提案されている。例えば、X方向に延びたライン&スペースの場合、パターンを照明する照明光の偏光方向もX方向に特化した照明が望ましい。つまり、パターンによっては、偏光状態を切り替えることで、最適な露光を行うことが考えられる。
前述したミラーについては、一般的に、図15に示すように角度特性以外に偏光に対する特性の違いも存在している。従って、A面において同じ分布形状でも、偏光状態が違えば(特に上述のように積極的に偏光を制御した照明の場合は)、当然投影レンズの瞳310までの透過率分布が違ってくる。複数のフィルター部材154をターレットのような切り替え手段に設け、レチクル200面にてσ分布を検出部190が測定し、照明状態が変更される毎に制御部500が複数のフィルター部材154の中から適当なフィルター部材154を選択して光路上に配置してもよい。
この場合、照明光学系100は、図17に示すような構成を使用することができる。ここで、図17は、偏光照明を行う場合と無偏光照明を行う場合における図1に示す照明光学系の拡大構成図である。光源部102がレーザーであればレーザーの直線偏光をそのまま利用することができる。また、レーザーの設置状態による出射レーザー光の偏光方向の違い、及びレーザー引き回し光学系の構成によらず、照明光学系に X偏光を一定に 入射する必要がある。そのため、出射レーザー光の偏光方向、及び偏向ミラー103、104、112による反射の結果、Y偏向入射になる場合、λ/2位相板111を配置することでX偏光入射にする構成が望ましい。
位相解消板(又は位相調節板)113は、直線偏光をランダムな偏光に変換するためのもので無偏光照明の際に光路に挿入され、偏光照明時には光路から退避する。ミラー150及び151はブロードバンド高反射膜ミラー(Broad Band High−Reflection:BBHR)ミラーであり、BBHR膜は広帯域の入射角度に対して、膜で発生するS偏光とP偏光との位相差を小さく抑えるように設計されている。
154はNDフィルターであり、155はλ/2位相板である。本実施例では、複数の種類のNDフィルター154と複数の種類のλ/2位相板155が設けられており、それらは対になっている。図18(a)と図19(a)は異なる種類のNDフィルター154とλ/2位相板155の対を示している。図18(a)は、タンジェンシャル偏光照明に使用されるNDフィルター154aとλ/2位相板155aの対を示す概略平面図であり、図19(a)は、クロスポール偏光照明に使用されるNDフィルター154bとλ/2位相板155bの対を示す概略平面図である。参照番号154は154a及び154bを総括し、参照番号155は155a及び155bを総括している。
λ/2位相板155は、本実施例の偏光照明ではこのように有効光源の複数の領域に対して所定の偏光状態を設定する。NDフィルター154は各領域に対応したフィルター部材で構成されており、各フィルター部材はミラーがもたらす光の偏光状態の差による 透過率分布の不均一性を補正するように予め設定されている。
図18(b)と図19(b)は、図6に対応し、NDフィルター154a及び154bの入射角度に依存した透過率分布を示している(グラフの縦軸は透過率を表す)。NDフィルター154aに設定される透過率分布の一例を図18(c)に示す。例えば、図18(a)に示すように同一の偏光状態A及びEが設定されているにも拘らずNDフィルター154aの領域aとeに対しては図18(c)において96%と開口(100%)の透過率分布を設定しているのは図18(b)に示す透過率の角度依存性を考慮しているためである。 本実施例で一つのフィルターの透過率が一定に設定されているのは、偏光照明の場合には、ダイポール照明のように変形照明が通常使用され、変形照明ではダイポールなどの限られた領域を使用するため、一つの領域内(フィルター内)で実際に使用する領域での入射角度による透過率差が小さいためである。しかし、一つのフィルター内で角度依存特性を考慮するかしないかは選択的である。
このように、位相板155を用いて瞳の異なる領域に異なる偏光状態を発生させる場合、領域ごとに異なる透過率を示すミラーの影響を、各領域の偏光状態に適したフィルター部材154を設けることによって補正することができる。図1においては、作図の便宜上、制御部500はフィルター部材154に接続されていないが、制御部500は図示しない切り替え手段を介してフィルター部材154を制御することができる。フィルター部材154と位相板155は対で交換される。このように、ステップ1008はフィルター部材154の初期配置に限られない。
検出部190は、例えば2つのセンサーを使用し偏光成分毎(例えば、X方向偏光成分とY方向偏光成分)に計測可能な構成をとることも可能である。もちろん、有効光源検出器の位置はこの位置に限ったものではなく、例えば、ウェハステージ上に配置しても良い。また、光量検出機170の位置に配置してもよい。ただし、この位置での検出については、ハーフミラー152の反射/透過特性やミラー151の反射特性が反映されていないため、これらの特性を考慮し、再計算した上で、被照射面での有効光源分布を算出する必要がある。
フィルター部材154は、光学的な濃度分布が変化する光学フィルターに限定されず、例えば、図8(c)のフィルター部材154cのように、メカニカルな遮光部155(Y方向にピッチや遮光幅がちがうもの)を使用してもよい。図8(c)において、黒い線が遮光部155であり、白い領域が光透過部である。但し、メカニカルな遮光部材をハエの目レンズ156の直前に配置すると、その構造がハエの目レンズ156の入射面に現われ、その影響が被照明面における照度分布やσ分布の照射位置に対するばらつきに現われてしまう。このため、その細密な構造がハエの目レンズ156の入射面に現われない程度に、ハエの目レンズ156の入射面から所定量だけ離して配置することが望ましい。
メカニカルなフィルター154は、特にEUVを光源とする露光装置のように屈折部材が使えない(ミラーのみの)光学系に特に有効である。EUV露光装置の構成は、上述してきたものとは全く異なり、光源から照射面まで基本的にはミラーによる反射光学系になっている。ミラーを多用しているため、有効光源の非対称性が発生しやすい。したがって、154のようなメカニカルなフィルターを照明面の瞳面近傍に1枚もしくは複数枚装着することにより非対称性を補正することができる。
以上、光束形状変換手段120の中に回折光学素子が含まれた構成にて説明をしたが、本実施形態の趣旨は、投影系ミラー、照明系ミラー150乃至152がもたらす、もしくは、他の要因で発生するσ分布の非対称性を補正することであって、必ずしも回折光学素子は必須の構成ではない。図1に示すように、A面において制御された所定の光形状分布を形成する光学系であれば、本実施形態を適用できることは明らかである。
また、理想のσ分布から遠ざけることも可能である。例えば、レチクルパターン自体に線幅に方向差があったり、投影レンズの収差要因でパターンの方向差がでたり、露光装置1において、走査方向とそれに垂直な非走査方向で露光された線幅に差が発生している場合、実際に露光されたパターンの方向差を補正するようなフィルターを選択すればよい。瞳310までの透過率分布が均一ではないために有効光源分布は均一にはならないという問題を解決する第2の手段としては、有効光源を変更して被照明面における積算強度を均一にすることである。このため、本実施形態は、σ形状補正機構128を設けている。σ形状補正機構128はフィルター部材154と同時に適用してもよいし、両者はそれぞれ単独で適用されてもよい。
好ましい実施形態においては、調整時間の短縮と調整の容易化のため、投影系ミラー、照明系ミラー150乃至152など照明状態によらない固定のσ分布の透過率は、できるだけフィルター部材154で補正し、照明状態毎の微補正をσ形状補正機構128で行うのがよい。σ形状補正機構128は、照明面におけるσ分布を理想に近づけることが可能である。特に、偏光状態を制御した照明を行う場合は、ミラー、ハーフミラー、反射防止膜によるσ分布の非対称性が発生しやすくなるため、偏光状態の変更に伴って、σ形状補正機構128により適切な状態に調整することができる。
また、理想のσ分布から遠ざけることも可能である。例えば、レチクルパターン自体に線幅に方向差があったり、投影レンズの収差要因でパターンの方向差がでたり、露光装置1において、走査方向とそれに垂直な非走査方向で露光された線幅に差が発生している場合、σ形状補正機構128により、σ分布の対称性を変更して最終的に露光されるパターンの線幅の方向差を補正することができる。
以下、図10を参照して、σ形状補正機構128の作用について説明する。ここで、図10は、光束形状変換手段120がA面に均一な光強度分布を形成する場合のσ形状補正機構128の動作とA面での光強度分布(紙面で切った断面図)を示す図である。図中の各参照番号は図1に対応している。光束形状変換手段120から射出された光束により、A面に所定の形状の分布が形成される。光束形状変換手段120の中に2つ以上のオプティカルインテグレータ(ハエノメレンズ、内面反射型インテグレータ、回折光学素子等、及び、それらの組み合わせ)を構成することにより、A面では分布が制御された所望の形状分布であるだけでなく入射光線の角度特性も制御された分布となっている。もちろん、光源からの光束が振れても、分布、角度特性とも一定に維持される。σ形状補正機構128は、遮光部129a、129bを有する。
図10(a)においては、σ形状補正機構128の遮光部129a及び129bは、A面近傍に配置され、光束形状変換手段120からの光束を制限しない状態に設定されている。従って、A面における光強度分布は均一なままである。
図10(b)は、図10(a)の状態において遮光部129aを光束中に挿入した状態である。遮光部129aが光束を遮蔽するためにA面での分布は一部が欠損した状態となる。A面での分布は、その後、必要に応じて光束変更手段130により別の形状に変換されるが、ハエの目レンズ156の入射面、つまり、σ分布は、A面での分布形状に応じて一部が欠損した状態となる。このように、σ形状補正機構128の状態を変更することにより、σ分布を変更することができる。例えば、遮光部129aと同様に、遮光部129bを光路に挿入することにより、2つの直交する方向へのσ分布(大きさ)を変更することができる。遮光部129aの移動は、例えば、検出部190の出力を基に制御部500が行う。制御部500は、前記有効光源の分布が所定の分布からずれたかどうかを判断し、判断結果に基づいて絞り128により有効光源を変更する。例えば、透過率が不均一の場合にはレチクル200面における有効光源分布の光軸から複数の方向への積算強度がほぼ均一になるように遮光部129aの移動を制御する。
図10(c)は、σ形状補正機構128の遮光部129a及び129bをA面から離して配置した場合を示している。この場合、A面での分布は、図10(b)に示すような一部が欠損した形状ではなく、外形を維持した状態で一部の強度を落とした分布を形成する。最終的なσ分布において、外形を変えずに一部の強度を落としたい場合にはこのような構成が好ましい。遮光部129aの移動は、図10(b)と同様に、検出部190の出力を基に制御部500が行う。このように、σ形状補正機構128の遮光部を調節することによって簡単な構成で一部の強度を変えることができる。σ形状補正機構128のA面からの位置は、このように必要に応じて変更してもよいし、どこかに固定されてもよい。また、σ形状補正機構128が配置される位置は、上記A面近傍に限らず、例えば、ハエの目レンズ156の入射面近傍でもよい。
図11は、σ形状補正機構128の構成例を示す概略平面図である。図11(a)は、それぞれ独立に駆動可能な4枚の遮光部129cにより構成されたσ形状補正機構128aを示している。例えば、図1の測定部190からの出力を制御部500が取得し、その情報に基づいて有効光源形状のXY差が最小になるように各遮光部129cの位置を動かしてもよい。代替的に、露光結果により、各遮光部129cの位置を変えて露光後のパターン方向差が最小になるように設定してもよい。
σ形状補正機構128aの駆動によりレチクル200面でのテレセン度(光線の垂直性)が変わってしまう場合には、例えば、光束形状変換手段120の一部のレンズ(光学系126の一部のレンズ)や変倍可能な結像光学系140の一部のレンズを光軸から偏心させて調整してもよい。もちろん、σ形状補正機構128aそのものでテレセン調整を行うことも可能である。σ形状補正機構128aにより、σ分布の偏心や非対称性の低減が可能となる。
図11(b)は、8枚の独立駆動可能な遮光部129dを用いたσ形状補正機構128bを示している。σ形状補正機構128bは、多方向の補正を与えることができる。図11(c)は4枚の遮光部129eの遮光エッジを曲線状に形成したσ形状補正機構128cを示している。通常、σ分布は円形もしくは輪帯形をベースにしており、それらの形状に適合している。
また、偏光照明においても、フィルター部材154の代わりに、若しくは、フィルター部材と共に、絞り128を使用することができる。この場合、図18(a)に示すフィルター部材154aと位相板155aに対してσ形状補正機構128bや図16(a)に示すσ形状補正機構128dの絞りを使用することができる。また、図18(b)に示すフィルター部材154bと位相板155bに対して図16(b)に示すσ形状補正機構128eの絞りを使用することができる。σ形状補正機構128d及びeの機能はσ形状補正機構128a乃至cと同様である。
σ形状補正機構128a乃至eにより有効光源を調整すると、遮光部を中央に移動した方向の実効的なコヒーレンスファクターσが小さくなる。つまり、方向差を少なくするために、実効的なコヒーレンスファクターσを小さい方に揃えることになる。この場合、平均的にσの大きさが小さくなってしまうことが考えられる。それを補正するために、変倍可能な結像光学系140の倍率を大きくしてσの平均的な大きさを調整することができる。
また、σ形状補正機能を使って、形状の微小補正だけでなく、積極的に有効光源を変更することも可能である。例えば、輪帯照明や4重極照明の状態から、この機構を使って2重極状の照明状態を作ることができる。
レチクル200は、例えば、石英製で、その上には転写されるべき回路パターン(又は像)が形成され、図示しないレチクルステージに支持及び駆動される。レチクル200から発せられた回折光は、投影光学系300を通りプレート400上に投影される。レチクル200とプレート400は、光学的に共役の関係にある。本実施態様の露光装置1はステップ・アンド・スキャン方式である(「ステッパー」とも呼ばれる。)ため、レチクル200とプレート400を縮小倍率比の速度比でスキャンすることによりレチクル200のパターンをプレート400上に転写する。なお、ステップ・アンド・リピート方式の露光装置(「ステッパー」とも呼ばれる。)の場合は、レチクル200とプレート400を静止させた状態で露光が行われる。
投影光学系300は、レチクル200上のパターンを反映する光をプレート400上に投影する光学系である。投影光学系300は、開口絞り310を有し、任意の開口数(NA)に設定することができる。開口絞り310は、プレート400における結像光線のNAを規定する開口径を可変とし、必要に応じてNAを変えるべく、かかる開口径が変更される。本実施形態において、コヒーレンスファクターσは、ハエの目レンズ156が形成する複数の光源の開口絞り310の位置での像の大きさと開口絞り310の開口径の比率ともいえる。
B面(複数の多光源が形成される面)と径可変の開口絞り310は、光学的にほぼ共役な位置に配置されており、実質的にこのB面での分布がプレート400面におけるσ分布又は有効光源となる。B面に絞り158が装着されている場合には、絞り158により制限されない分布がσ分布となる。また、B面に絞り158がなく、かつ、ハエの目レンズ156が十分に細かい(一方向に数十列以上)状態であれば、光束形状変換手段120、光束変更手段130及び結像光学系140の組み合わせにより形成されたハエの目レンズ156の入射面での分布が実質的なσ分布となる。
絞り158の位置はB面近傍に限定されない。例えば、絞り158は、A面に光束変更手段130と共にターレット等の切り替え手段によって選択的に光路に挿入されてもよいし、ハエの目レンズ156の直前に配置されてもよいし、これらの複数の位置に同時に配置されてもよい。例えば、放射方向(大きさを制限する方向)に制限を持たず、四重極等の開口角のみ変更可能な機構をもつ絞りを光束変更手段130の位置に選択的に配置し、大きさを制限する虹彩絞りをハエの目レンズ156の直前に配置し、B面に選択的に固定絞りを配置し、この組み合わせにより所望のσ分布を作ることも可能である。このように機能を分担した絞りを複数の位置に配置し、変更/切り替えを行うことにより、より多様なσ条件に対応可能となる。
投影光学系300は、本実施形態では、複数のレンズ素子320及び322を有する光学系であるが、複数のレンズ素子と少なくとも一枚の凹面鏡とを有する光学系(カタディオプトリック光学系)、複数のレンズ素子と少なくとも一枚のキノフォームなどの回折光学素子とを有する光学系、全ミラー型の光学系等を使用することができる。投影光学系300の色収差の補正が必要な場合には、互いに分散値(アッベ値)の異なるガラス材からなる複数のレンズ素子を使用したり、回折光学素子をレンズ素子と逆方向の分散が生じるように構成したりする。このようなカタディオプトリック光学系では、例え照明系110で発生する透過率分布の不均一性を補正しても、投影系内の凹面鏡により投影レンズの瞳310で透過率分布の不均一性が発生する。そのため、照明系ミラー、投影系ミラー両者により発生する透過率分布の不均一性をキャンセルするようなフィルター、絞りを配置する必要がある。別の実施例では、投影光学系300の最終面とプレート400との間には(純粋などの)液体が満たされる。このようないわゆる液浸型投影露光装置では高NA化のために偏光制御の効果が特に大きい。
プレート400は、本実施形態ではウェハであるが、液晶基板やその他の被処理体を広く含む。プレート400には、フォトレジストが塗布されている。
プレートステージ450は、プレート400を支持する。プレートステージ450は、当業界で周知のいかなる構成をも適用することができるので、ここでは詳しい構造及び動作の説明は省略する。例えば、プレートステージ450は、リニアモーターを利用してXY方向にプレート400を移動することができる。レチクル200とプレート400は、例えば、同期走査され、プレートステージ450と図示しないレチクルステージの位置は、例えば、レーザー干渉計などにより監視され、両者は一定の速度比率で駆動される。プレートステージ450は、例えば、ダンパを介して床等の上に支持されるステージ定盤上に設けられ、図示しないレチクルステージ及び投影光学系300は、例えば、床等に載置されたベースフレーム上にダンパを介して支持される図示しない鏡筒定盤上に設けられる。
露光においては、光源部110から発せられた光束が、照明光学系120によりレチクル200を、例えば、ケーラー照明する。レチクル200を通過してレチクルパターンを反映する光は、投影光学系300によりウェハ400上に結像される。露光装置1は、フィルター部材154及び/又はσ形状補正機構128により所望の有効光源を形成しているので、高解像度で性能に優れたデバイス(半導体素子、LCD素子、撮像素子(CCDなど)、薄膜磁気ヘッドなど)を提供することができる。
フィルター部材154とσ形状補正機構128の併用について簡単に述べたが、以下、具体的な例を記載する。
まず、フィルター部材154の選定について述べる。上述したように、フィルター部材154は、有効光源分布に依らない固定の非対称性(ミラーにより発生する非対称性)を補正するものを装着するのが望ましい。装着するフィルター154の透過率分布は、以下のいずれかの方法で決定される。
第1の方法は、A面から非照射面までに配置されるミラーの設計値や製作後の反射(又は透過)特性を計測した結果を用いて、σ分布内の透過率分布を算出し、その分布をキャンセルするような分布のフィルターを選択する。
第2の方法は、A面にて有効σ領域をできるだけ均一にした分布をハエの目入射面に照射し、被照射面にて実際の有効光源分布を測定する。A面に入射し、ミラーが無い時に予想される被照射面での有効光源分布(設計値有効光源分布)と実際の有効光源分布を比較し、実際の有効光源分布が設計値有効光源分布とほぼ同一になるような分布のフィルターを選択する。
第3の方法は、代表的な照明モード(外側のσが大きい輪帯照明等)にて、実際に2方向(X方向、Y方向)のパターンを露光し、露光結果から、X方向、Y方向のパターンがほぼ同一寸法になるフィルターを選択する。
上記のような決定方法により、フィルター部材154が選定される。例えば、偏光状態を制御する照明光学系の場合は、偏光状態毎に、上記フィルターを選定してもよい。偏光状態を制御する照明系の場合、その偏光状態は、図14(a)乃至図14(e)に示すように、5つに大別される。ここで、図14はσ分布内の光束の偏光状態を表したものである。図14(a)は、通常の無偏光照明(もしくは円偏光照明)を示している。図14(b)は、Y方向直線偏光照明を示している。図14(c)は、X方向直線偏光照明を示している。図14(d)は、接線方向に偏光している照明を示している。図14(e)は、放射方向に偏光している照明を示している。
それぞれの偏光状態に対して、1枚のフィルターを用意し、それらをターレットに配置し、設定する偏光状態に応じて、それらを切り替えてもよい。もちろん、偏光状態によらずに、例えば無偏光状態に最適化されたフィルターのみを装着するようにしても良い。
また、図16に示すように複数の位相板を用いて瞳の異なる領域に異なる偏光状態を発生させる構成も考えられる。この場合、ミラーなどの影響で領域ごとに異なる透過率を示すことになるが、各領域の偏光状態に適したフィルターを各領域に設け瞳全体の透過率分布を補正する構成が望ましい。また、偏光状態を変更する毎に透過率分布が変わるので、偏光状態が変化するのと同時に、つまり位相板が変化するのと同時に、フィルターを各偏光状態に適した物に交換したり組み合わせたりする構成が好ましい。例えば、露光に用いる数種類の偏光状態が分かっており、その偏光状態を形成する数種類の位相板をターレットのようなもので予め用意していれば、その位相板を用いる際に発生する偏光状態から最適なフィルターを調べておき、位相板ターレットと同期して動くターレットにそのフィルターを設置しておくことで、位相板ターレットを動かし偏光状態を変更するのと同時に、その偏光状態に適したフィルターが変更される構成が望ましい。
次に、σ形状補正機構128の設定について述べる。σ形状補正機構は、照明状態の変更に応じて、それぞれの位置に設定される。設定方法は以下のいずれかで決定される。
第1の方法においては、σ形状補正機構128により光線を制限しない状態で、検出器190等により有効光源分布を測定する。測定された有効光源分布を複数(例えば四つ)の領域に分割し、その複数の部分の光量比を測定する。光量比が所望の値になるように、σ形状補正機構128のそれぞれの遮光部を駆動する。
第2の方法においては、σ形状補正機構128により光線を制限しない状態で、複数(例えば2方向)に延びた複数パターンの露光を行う。それぞれのパターンの線幅の差が、所望の差になるように、σ形状補正機構128のそれぞれの遮光部を駆動する。
上記は2つの手段を併用する場合について記載したが、もちろん単独に使用しても、かなりの効果がある。
また、偏光状態を制御する照明光学系の場合は、偏光状態毎に、上記遮光部を駆動してもよい。偏光状態を制御する照明系の場合、その偏光状態は、図14(a)乃至図14(e)に示す通りで、それぞれの偏光状態に対して、遮光部を駆動してもよい。もちろん、偏光状態によらずに、例えば無偏光状態に最適化された位置に遮光部を駆動してもよい。
また、図16に示すように複数の位相板を用いて瞳の異なる領域に異なる偏光状態を発生させる構成も考えられる。この場合、ミラーなどの影響で領域ごとに異なる透過率を示すことになるが、各領域の偏光状態に適した位置に遮光部を駆動し、有効光源外形を補正したり、外形を変更せずに強度分布を補正してもよい。
また、偏光状態を変更する毎に透過率分布が変わるので、偏光状態が変化するのと同時に、つまり位相板が変化するのと同時に、絞りを各偏光状態に適した絞り形状にする構成が好ましい。
例えば、露光に用いる数種類の偏光状態が分かっており、その偏光状態を形成する数種類の位相板をターレットのようなもので予め用意していれば、その位相板を用いる際に発生する偏光状態から最適な絞り形状(遮光板の幅、位置)、絞り構成(遮光板の数)、を調べておき、位相板ターレットと同期して動くターレットにその絞りを設置しておき、位相板ターレットを動かし偏光状態を変更するのと同時に、その偏光状態に適した絞りが変更される構成が望ましい。また、偏光状態が微小に変化した場合などには、その都度遮光部を駆動する構成が望ましい。
次に、図12及び図13を参照して、上述の露光装置1を利用したデバイス製造方法の実施例を説明する。図12は、デバイス(ICやLSIなどの半導体チップ、LCD、CCD等)の製造を説明するためのフローチャートである。ここでは、半導体チップの製造を例に説明する。ステップ1(回路設計)では、デバイスの回路設計を行う。ステップ2(マスク製作)では、設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。ステップ3(ウェハ製造)では、シリコンなどの材料を用いてウェハを製造する。ステップ4(ウェハプロセス)は、前工程と呼ばれ、マスクとウェハを用いて本発明のリソグラフィー技術によってウェハ上に実際の回路を形成する。ステップ5(組み立て)は、後工程と呼ばれ、ステップ4によって作成されたウェハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ6(検査)では、ステップ5で作成された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テストなどの検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、それが出荷(ステップ7)される。
図13は、ステップ4のウェハプロセスの詳細なフローチャートである。ステップ11(酸化)では、ウェハの表面を酸化させる。ステップ12(CVD)では、ウェハの表面に絶縁膜を形成する。ステップ13(電極形成)では、ウェハ上に電極を蒸着などによって形成する。ステップ14(イオン打ち込み)では、ウェハにイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)では、ウェハに感光剤を塗布する。ステップ16(露光)では、露光装置1によってマスクの回路パターンをウェハに露光する。ステップ17(現像)では、露光したウェハを現像する。ステップ18(エッチング)では、現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)では、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行うことによってウェハ上に多重に回路パターンが形成される。かかるデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。このように、露光装置1を使用するデバイス製造方法、並びに結果物としてのデバイスも本発明の一側面を構成する。
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
本実施形態の露光装置1は、有効光源の基本形状を形成する面(A面)からレチクル200面までの光路を一の平面内に収めるミラー配置を採用している。加えて、露光装置1は、有効光源形成面近傍にそのミラー特性を補正するフィルター部材154を配置し、製造が簡単な構成でσ分布を光軸に関して対称にし、有効光源要因の露光パターンの方向差を抑えている。また、露光装置1は、A面の近傍に、複数の独立駆動可能な遮光部を有するσ形状補正機構128を配置し、σ形状を変更可能としている。また、照明光学系以外の要因で発生する露光パターンの方向差を軽減することができる。更に、露光装置1は、照明状態を決定する遮光部材(固定絞り、可変開口角絞り、虹彩絞り、σ形状補正機構等)を複数の個所に配置し、機能を分担することにより、より多様な照明状態を形成することを可能にしている。