次に、本願発明にかかるナノファイバ製造装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、ナノファイバ製造装置の実施の形態を一部切り欠いて示す平面図である。
同図に示すように、ナノファイバ製造装置100は、放出装置101と、案内装置102と、収集装置103と、返還装置104と、回収装置105と、導入装置106と、隔離体107と、排気装置108とを備えている。
ここで、ナノファイバを製造するための原料液については、原料液300と記し、製造されたナノファイバについてはナノファイバ301と記すが、製造に際しては原料液300が電気的に延伸しながらナノファイバ301に変化していくため、原料液300とナノファイバ301との境界は曖昧であり、明確に区別できるものではない。
放出装置101は、帯電した原料液300や製造されるナノファイバ301を気体流に乗せて放出することができるユニットである。
図2は、放出装置の一部を切り欠いて示す平面図である。
図3は、放出装置の外観を示す斜視図である。
これら図に示すように放出装置101は、流出装置110と、帯電装置111と、風洞体112と、気体流発生装置113と、供給路114とを備えている。
流出装置110は、原料液300を空間中に流出させる装置であり、本実施の形態では、原料液300を遠心力により放射状に流出させる装置である。流出装置110は、流出体115と、回転軸体116と、モータ117とを備えている。
流出体115は、原料液300を空間中に流出させるための部材であり、原料液300が通過する流出孔118が多数設けられる部材である。本実施の形態の場合、流出体115は、原料液300が内方に注入されながら自身の回転による遠心力により空間中に原料液300を流出させることのできる容器であり、一端が閉塞された円筒形状となされ、周壁には流出孔118を多数備えている。流出体115は、貯留する原料液300に電荷を付与するため、導電体で形成されている。流出体115は、ベアリング119により回転可能に支持されている。
具体的には、流出体115の直径は、10mm以上、300mm以下の範囲から採用されることが好適である。あまり大きすぎると後述の気体流により原料液300やナノファイバ301を集中させることが困難になるからであり、また、流出体115の回転軸が偏心するなど、重量バランスが少しでも偏ると大きな振動が発生してしまい、当該振動を抑制するために流出体115を強固に支持する構造が必要となるからである。一方、小さすぎると遠心力により原料液300を流出させるための回転を高めなければならず、駆動源の負荷や振動など問題が発生するためである。さらに流出体115の直径は、20mm以上、100mm以下の範囲から採用することが好ましい。
また、流出孔118の形状は円形が好ましく、その直径は、流出体115の肉厚にもよるが、おおよそ0.01mm以上、3mm以下の範囲から採用することが好適である。これは、流出孔118があまりに小さすぎると原料液300を流出体115の外方に流出させることが困難となるからであり、あまりに大きすぎると一つの流出孔118から流出する原料液300の単位時間当たりの量が多くなりすぎ(つまり、流出する原料液300が形成する線の太さが太くなりすぎ)て所望の径のナノファイバ301を製造することが困難となるからである。
なお、流出体115は、自身の回転による遠心力により原料液300を空間中に流出させる部材ばかりでなく、自身は静止しており、圧力がかけられた原料液300が流出孔118から流出する部材でもかまわない。また、遠心力により原料液300を流出させる流出体115の形状は、円筒形状に限定するものではなく、断面が多角形状の多角筒形状のようなものや円錐形状のようなものでもよい。流出孔118が回転することにより、流出孔118から原料液300が遠心力で流出可能な形状であればよい。また、流出孔118の形状は、円形に限定することなく、多角形状や星形形状などであってもよい。
回転軸体116は、流出体115を回転させ遠心力により原料液300を流出させるための駆動力を伝達するための軸体であり、流出体115の他端から流出体115の内部に挿通され、流出体115の閉塞部と一端部が接合される棒状体である。また、他端はモータ117の回転軸と接続されている。回転軸体116は、モータ117と絶縁体120を介して接続されており、流出体115とモータ117とが電気的に絶縁状態となっている。
これは、流出体115のアースとの接続が事故などにより切れた場合、モータ117を保護するためである。回転軸体116は、ベアリング119により回転可能に支持されている。
モータ117は、遠心力により原料液300を流出孔118から流出させるために、回転軸体116を介して流出体115に回転駆動力を付与する装置である。なお、流出体115の回転数は、流出孔118の口径や使用する原料液300の粘度や原料液内の高分子物質の種類などとの関係により、数rpm以上、10000rpm以下の範囲から採用することが好ましく、本実施の形態のようにモータ117と流出体115とが直動の時はモータ117の回転数は、流出体115の回転数と一致する。
帯電装置111は、原料液300に電荷を付与して帯電させる装置である。本実施の形態の場合、帯電装置111は、帯電電極121と、帯電電源122と、接地装置123とを備えている。
帯電電極121は、自身がアースに対し高い電圧もしくは低い電圧となることで、接地されている流出体115に電荷を誘導するための部材である。本実施の形態の場合、帯電電極121は、流出体115の周囲を取り囲むように配置される円環状の部材である。帯電電極121に正の電圧が印加されると流出体115には、負の電荷が誘導され、帯電電極121に負の電圧が印加されると流出体115には、正の電荷が誘導される。
帯電電極121の大きさは、流出体115の直径よりも大きい必要があるが、その直径は、50mm以上、1500mm以下の範囲から採用されることが好適である。なお、帯電電極121の形状は、円環状に限ったものではなく、流出体115の形状との関係によって、多角形の環状や平板状などであってもよい。また、帯電電極121の断面形状も矩形ばかりでなく丸形でもかまわない。
接地装置123は、流出体115と電気的に接続され、流出体115を接地電位に維持することができる部材である。接地装置123の一端は、流出体115が回転状態であっても電気的な接続状態を維持することができるようにブラシとして機能するものであり、他端は大地と接続されている。
帯電電源122は、帯電電極121に高電圧を印加することのできる電源である。帯電電源122は、一般には、直流電源が好ましい。特に、発生させるナノファイバ301の帯電極性に影響受けないような場合、生成したナノファイバ301の帯電を利用して、逆極性の電位を印加した電極でナノファイバ301を誘引するような場合には、直流電源を採用することが好ましい。また、帯電電源122が直流電源である場合、帯電電源122が帯電電極121に印加する電圧は、10KV以上、200KV以下の範囲の値から設定されるのが好適である。帯電電源122に負の電圧が印加される場合には、前記の印加する電圧の極性は、負になる。特に、流出体115と帯電電極との間の電界強度が重要であり、帯電電極121と流出体115との距離が最も近い空間において1KV/cm以上の電界強度になるように印加電圧を調整するのが好ましい。
本実施の形態のように帯電装置111に一方の電極を接地電位とする誘導方式を採用すれば、流出体115を接地電位に維持したまま原料液300に電荷を付与することができる。流出体115が接地電位の状態であれば、流出体115に接続される回転軸体116やモータ117などの部材を流出体115から電気的に絶縁する必要が無くなり、流出装置110として簡単な構造を採用しうることになり好ましい。
なお、帯電装置111として、流出体115に電源を接続し、流出体115を高電圧に維持し、帯電電極121を接地することで原料液300に電荷を付与してもよい。また、流出体115を絶縁体で形成すると共に、流出体115に貯留される原料液300に直接接触する電極を流出体115内部に配置し、当該電極を用いて原料液300に電荷を付与するものでもよい。このような流出体115に直接もしくは原料液に直接電極を配置する場合には、原料液に帯電する電荷の極性は、印加する電圧の極性と同じ極性になる。
気体流発生装置113は、流出体115から流出される原料液300の飛行方向を変更し、ナノファイバ301を搬送して案内装置102の内方を通過させるための気体流を発生させる装置である。本実施の形態の場合、気体流発生装置113は、モータ117の背部に備えられ、モータ117から流出体115の先端に向かう気体流を発生させる。気体流発生装置113は、流出体115から径方向に流出される原料液300を軸方向に変更することができる風力を発生させることができるものとなっている。図2において、気体流は矢印で示している。気体流発生装置113としては、軸流ファンを備える送風機等を例示することができる。
なお、気体流発生装置113は、シロッコファンなど他の送風機により構成してもかまわない。また、後述する返還装置104により風洞体112の内方に気体流を発生させるものでもかまわない。この場合、ナノファイバ製造装置100は、積極的に気体流を発生させる気体流発生装置113を有しないこととなるが、何らかの装置により、風洞体112などの内方に気体流が発生していることをもってナノファイバ製造装置100が気体流発生装置113を備えているものとする。
風洞体112は、気体流発生装置113で発生した気体流を帯電電極121と流出体115との間に案内する導管である。本実施の形態の場合、風洞体112により案内された気体流は、帯電電極121の内側を通過しつつ、流出体115の流出孔118から流出された原料液300と交差し、原料液300の飛行方向を変更する。
さらにまた、放出装置101は、気体流制御装置124と、加熱装置125とを備えている。
気体流制御装置124は、気体流発生装置113により発生する気体流が流出孔118の開口端に当たらないよう気体流を制御する機能を有するものである。本実施の形態の場合、気体流制御装置124として、気体流を所定の領域に流れるように案内する風路体が採用されている。気体流制御装置124により、気体流が直接流出孔118に当たらないため、流出孔118から流出される原料液300が早期に蒸発して流出孔118を塞ぐことを可及的に防止し、原料液300を安定させて流出させ続けることが可能となる。なお、気体流制御装置124は、流出孔118の風上に配置され気体流が流出孔118近傍に到達するのを防止する壁状の防風壁でもかまわない。
加熱装置125は、気体流発生装置113が発生させる気体流を構成する気体を加熱する加熱源である。本実施の形態の場合、加熱装置125は、案内体126の内方に配置される円環状のヒータであり、加熱装置125を通過する気体を加熱することができるものとなっている。加熱装置125により気体流を加熱することにより、空間中に流出される原料液300は、蒸発が促進され効率よくナノファイバ301を製造することが可能となる。
供給路114は、外部にある原料液300用タンク(図示せず)から流出体115内方に原料液300を供給するための経路である。本実施の形態の場合、供給路114は管体で形成されている。
図4は、案内装置の近傍を模式的に示す斜視図である。
案内装置102は、放出装置101から放出され、気体流によって搬送されるナノファイバ301を所定の場所に案内する風洞である。本実施の形態の場合、案内装置102は両端のみ開放された管体であり、案内体126と拡散体127とを備えている。
案内体126は、円筒形状を成し、放出装置101のナノファイバ301が放出される側の開口形状と同じ開口形状を備え、放出装置101と一連に配置されている。
拡散体127は、案内体126に接続され、高密度状態のナノファイバ301を広く均等に拡散させ低密度状態とする導管であり、ナノファイバ301が案内される空間を滑らか、かつ、連続的に拡大することで、ナノファイバ301を搬送する気体流の速度とナノファイバ301の速度とを徐々に減速させるフード状の部材である。本実施の形態の場合、拡散体127は、案内体126の高さをそのまま維持し、幅のみ徐々に広がるフード形状となっている。
収集装置103は、案内装置102から放出されるナノファイバ301を収集するための装置である。本実施の形態の場合、収集装置103は、被堆積部材128と、巻回装置129と、供給装置130とを備えている。
被堆積部材128は、静電延伸現象により製造され気体流により搬送されるナノファイバ301と気体流とを分離し、ナノファイバ301のみが堆積する部材である。本実施の形態の場合、被堆積部材128は、堆積したナノファイバ301と容易に分離可能な材質で構成された薄く柔軟性のある長尺のシート状の部材であり、気体流を容易に透過でき、ナノファイバ301を捕集しうる網状の部材である。具体的に被堆積部材128としては、アラミド繊維からなる長尺の布を例示することができる。さらに、被堆積部材128の表面にテフロン(登録商標)コートを行うと、堆積したナノファイバ301を被堆積部材128から剥ぎ取る際の剥離性が向上するため好ましい。また、被堆積部材128は、ロール状に巻き付けられた状態で供給装置130から供給されるものとなっている。
巻回装置129は、被堆積部材128を移送することができる装置である。本実施の形態の場合、長尺の被堆積部材128を巻き取りながら供給装置130から引き出し、堆積するナノファイバ301と共に被堆積部材128を搬送するものとなっている。巻回装置129は、不織布状に堆積しているナノファイバ301を被堆積部材128とともに巻き取ることができるものとなっている。
また、ナノファイバ製造装置100は、帯電しているナノファイバ301を被堆積部材128に誘引するための誘引電極134と、誘引電源135とを備えている。
誘引電極134は、帯電したナノファイバ301を誘引するための電界を発生させるための電極である。本実施の形態の場合、誘引電極134には気体流を通過させることのできる金属製の網が採用されている。誘引電極134は、拡散体127の開口部全体に広がって設けられている。
誘引電源135は、誘引電極134を所定の電圧及び極性に維持することができる直流電源である。本実施の形態の場合、誘引電源135は、0V(接地状態)から200KV以下の範囲で自由に電圧と極性を変更することができる直流電源である。特に、帯電したナノファイバ301の帯電極性と異なる電圧を誘引電極134に印加することで、帯電したナノファイバ301の誘引電極134方向への回収を加速できる。
本実施の形態では、誘引電極134は、金属製の網が採用されたが、これに限定するものではなく、板状の誘引電極や金属板の上に多数のブラシを形成したブラシ形状の誘引電極でもよい。前記気体流が被堆積部材128を通過して、誘引電極近傍を通って、吸引装置132に回収できればよい。
(図1の参照に戻る。)
返還装置104は、被堆積部材128を通過した気体流を収集し、気体流発生装置113に前記気体流を戻す装置である。本実施の形態の場合、返還装置104は、集中体131と、吸引装置132と、返還体133とを備えている。
集中体131は、拡散体127で広がった気体流を受け取り、吸引装置132に至るまでの間に気体流を集中させる部材であり、拡散体127とは逆向きの漏斗形状となっている。
吸引装置132は、被堆積部材128を通過する気体流を強制的に吸引する送風機である。吸引装置132は、シロッコファンや軸流ファンなどの送風機であって、被堆積部材128を通過して速度が落ちた気体流を高い速度に加速することのできる装置である。
返還体133は、吸引装置132から気体流発生装置113に至るまで、気体流を案内することのできる管体である。
以上のように、気体流発生装置113と案内装置102と返還装置104とは、環状一連に接続されており、気体が循環する循環回路200を形成している。なお、返還装置104には吸引装置132が備えられているが、気体流発生装置113か吸引装置132のいずれか一方で十分な気体流を循環回路200内に発生させることができるのであれば、ナノファイバ製造装置100は、いずれか一方のみを備えてもかまわない。この場合いずれか一方が、気体流発生装置113の機能と吸引装置132の機能との両方を併せ持つことになる。また、気体流発生装置113と吸引装置132とによっても十分な気体流を得ることができない場合は、気体流を発生させる送風機などを循環回路200内に別途配置してもかまわない。
なお、十分な気体流とは毎分30立米程度の風量であると考えられる。
回収装置105は、原料液300から蒸発した溶剤を気体流から分離して回収することのできる装置である。回収装置105に関しては、原料液300に用いられる溶剤の種類によって異なるが、例えば、気体を低温にして溶剤を結露させて回収する装置や、活性炭やゼオライトを用いて溶剤のみを吸着させる装置、液体などに溶剤を溶け込ませる装置やこれらを組み合わせた装置を例示できる。
隔離体107は、気体流発生装置113と案内装置102と返還装置104とが環状一連に接続されて構成される循環回路200を包囲し、前記循環回路200が存在する空間とそれ以外の外空間とを隔離する壁や床や天井である。
隔離体107は、循環回路200回路から漏れ出る気体を隔離体107で包囲された空間に封じ込める機能を果たしており、これにより隔離体107の外方空間の清浄性や安全性を高めることが可能となる。
導入装置106は、循環回路200の外部から気体を循環回路200の内方に導入し、循環回路200の内方を循環する気体と混合する装置である。本実施の形態では、導入装置106は、隔離体107の外方の気体を導入できるように隔離体107を貫通して設置されている。また、導入装置106は、循環回路200の内方に流通する気体の風量を計測する計測装置を備え(図示せず)、前記計測装置の計測結果が毎分27立米未満となれば、気体を循環回路200の外部から導入し、前記計測装置の計測結果が毎分33立米を越えると、気体の導入を停止することができる制御装置(図示せず)を備えている。なお、導入装置106は、気体の導入量を一定に固定してもよい。また、導入装置106は、気体の逆流を防止する逆流防止機構だけを備え、気体の導入量は気体流発生装置113や吸引装置132の性能に依存するものでも良い。
排気装置108は、隔離体107で包囲された内空間から外空間へ気体を排気する装置である。本実施の形態の場合、排気装置108は、隔離体107の内空間の雰囲気に含まれる溶剤を除去する機能を備えている。
ここで、ナノファイバ301を構成する高分子物質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ポリアミド、アラミド、ポリイミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等およびこれらの共重合体を例示できる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記高分子物質に限定されるものではない。
原料液300に使用される溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、ピリジン、水等を例示することができる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記溶剤に限定されるものではない。
さらに、原料液300に骨材や可塑剤などの添加剤を添加してもよい。当該添加剤としては、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、珪化物、弗化物、硫化物等を挙げることができるが、耐熱性、加工性などの観点から酸化物を用いることが好ましい。当該酸化物としては、Al2O3、SiO2、TiO2、Li2O、Na2O、MgO、CaO、SrO、BaO、B2O3、P2O5、SnO2、ZrO2、K2O、Cs2O、ZnO、Sb2O3、As2O3、CeO2、V2O5、Cr2O3、MnO、Fe2O3、CoO、NiO、Y2O3、Lu2O3、Yb2O3、HfO2、Nb2O5等を例示することができる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記添加剤に限定されるものではない。
溶剤と高分子物質との混合比率は、溶剤と高分子物質により異なるが、溶剤量は、約60重量%から98重量%の間が望ましい。
上記のように、溶剤蒸気が気体流により滞留することなく処理されるため、原料液300は、上記のように溶剤を50重量%以上含んでいても十分に蒸発し、静電延伸現象を発生させることが可能となる。従って、溶質である高分子が薄い状態からナノファイバ301が製造されるため、より細いナノファイバ301をも製造することが可能となる。また、原料液300の調整可能範囲が広がるため、製造されるナノファイバ301の性能の範囲も広くすることが可能となる。
次に、上記構成のナノファイバ製造装置100を用いたナノファイバ301の製造方法を説明する。
まず、気体流発生装置113、及び、吸引装置132を稼動させ、循環回路200内方に一定方向の気体流を発生させる(気体流発生工程)(返還工程)。以上の状態で、循環回路200内の風量が毎分30立米となるようナノファイバ製造装置100を調整した。これにより、気体流は次のように循環する。気体流発生装置113→案内体126→拡散体127→被堆積部材128→集中体131→吸引装置132→回収装置105→返還体133→導入装置106→気体流発生装置113
次に、流出体115の内方に原料液300を供給する(原料液供給工程)。原料液300は、別途タンク(図示せず)に蓄えられており、供給路114(図2、図3参照)を通過して流出体115の他端部から流出体115内部に供給される。具体的には、ナノファイバ301の材質はPVA(ポリビニルアルコール)を選定し、原料液300は、溶媒を水とし、水にPVAを10重量%で溶解したものを用いた。
次に、帯電電源122により帯電電極121を正または負の高電圧とする。帯電電極121の中心に配置される流出体115には電荷が集中し、当該電荷が流出孔118を通過する原料液300に転移し、原料液300が帯電する(帯電工程)。
前記帯電工程と同時期に流出体115をモータ117により回転させて、遠心力により流出孔118から帯電した原料液300を流出する(流出工程)。
具体的には、外径がΦ60mmの流出体115を用いた。流出孔118は、周方向等間隔に108個設けられており、孔径は0.3mmであった。また、原料液300は、流出体115を2000rpmで回転させることにより流出させた。一方、帯電電極121は内径Φ600mmのものを用い、帯電電源122により帯電電極121を接地電位に対して負の60KVとした。これにより、流出体115には正の電荷が誘導され、正に帯電した原料液300が流出することとなる。
流出体115の径方向放射状に流出された原料液300は、気体流により飛行方向が変更され、気体流に乗り案内装置102に案内される。ここで、原料液300の帯電状態と帯電電極121とは逆極性であるため、クーロン力により引きつけられて帯電電極121の方向に向いて飛行しようとするが、帯電電極121に向かうほとんどの原料液300が気体流により方向が変えられ、案内体に向かって飛行することとなる。
原料液300は静電延伸現象によりナノファイバ301を製造しつつ(ナノファイバ製造工程)放出装置101から放出される。ここで、原料液300は、強い帯電状態(高い電荷密度)で流出しているため、静電延伸が容易に発生し、流出した原料液300のほとんどがナノファイバ301に変化していく。また、原料液300は、強い帯電状態(高い電荷密度)で流出しているため、静電延伸が何次にもわたって発生し、線径の細いナノファイバ301を大量に製造される。
また、前記気体流は、加熱装置125により加熱されており、原料液300の飛行を案内しつつ、原料液300に熱を与えて溶媒の蒸発を促進し静電延伸を促進している。
以上のようにして放出装置101から放出されるナノファイバ301は、案内装置102に導入される。そして、ナノファイバ301は、案内装置102の内方を気体流に搬送されながら収集装置103に向かって案内される(搬送工程)。
拡散体127にまで搬送されたナノファイバ301は、ここで急速に速度が低下すると共に、均一な分散状態となる(拡散工程)。
この状態において、被堆積部材128の背方に配置される吸引装置132は、蒸発した蒸発成分である溶剤と共に気体流を吸引し、ナノファイバ301を被堆積部材128上に誘引する(誘引工程)。また、電圧が印加された誘引電極134により電界が発生し、当該電界によってもナノファイバ301が誘引される(誘引工程)。
以上により、被堆積部材128により気体流から分けられてナノファイバ301が収集される(収集工程)。被堆積部材128は、巻回装置129によりゆっくり移送されているため、ナノファイバ301も移送方向に延びた長尺の帯状部材として回収される。
被堆積部材128を通過した気体流は、吸引装置132により加速され、回収装置105に到達する。回収装置105では、気体流から溶剤成分を分離回収する(回収工程)。
回収装置105を通過した気体流は、返還体133を通過して導入装置106を介して気体流発生装置113に返還される(返還工程)。これにより、溶剤の濃度が低下した気体流が再び気体流発生装置113によりナノファイバ301の搬送に供される。
また、気体流の風量が不足している場合は、導入装置106により外気が導入され(導入工程)不足分が補われる。
風量が不足した分は循環回路200から外部に漏れだした気体の量である。当該気体は隔離体107の内方に放出され、排気装置108により、溶剤が回収されつつ外空間に排気される(排気工程)。
以上のような構成のナノファイバ製造装置100を用い、以上のナノファイバ製造方法を実施することによって、原料液300の飛行方向の変更や、ナノファイバ301の搬送に用いられる気体流がナノファイバ製造装置100の外部に漏れにくくなる。従って、ナノファイバ製造装置100が設置される工場等の環境を良好に維持することが可能となる。
また、気体を循環回路200で循環させているため、気体流の風量を維持するには気体流発生装置113や吸引装置132により、理想的には損失分を補うだけでよい。従って、気体流を所定の風量で維持するためのランニングコストの上昇を抑え、省エネルギーに貢献することが可能となる。
しかも、大量の気体を外部から導入し、大量の気体を排気する必要が無いため、工場に気体を導入するための大きなスペースを確保する必要もなく、ナノファイバ製造装置100の設置スペースの小型化を図ることが可能となる。
回収装置105により常に溶剤が回収されるため、循環する気体の溶剤の濃度は所定値を超えることはなく、原料液300の蒸発を妨げたり、爆発の濃度に達したりすることを可及的に回避することが可能となる。
なお、上記実施の形態では、原料液300を遠心力を用いて流出させたが、本願発明はこれに限定されるわけではない。例えば、図5に示すように、原料液300に加えた圧力により流出孔118から原料液300を流出させるものでも良い。具体的に、ナノファイバ製造装置100は、直方体で両端部が開口した風洞体112と、前記風洞体112の一壁面に設けられ、流出孔118が先端に設けられるノズルが多数マトリクス状に設けられた流出体115と、風洞体112の一端開口部に設けられる気体流発生装置113と、流出体115と対向する面に風洞体112の一部として設けられる帯電電極121とを備えてもよい。
図6に示すように、放出装置101と案内装置102と収集装置103とを複数台並べて配置し、前記複数台の装置に対し、返還装置104と回収装置105と導入装置106とを共通で用いてもかまわない。また、これらを隔離体107で包囲される一つの空間内に設置し、排気装置108を共通で用いてもかまわない。
また、循環回路200の途中で、気体の湿度や温度を調整する調湿装置141や温度調整装置142を設けてもかまわない。
また、案内体126にナノファイバ301が流入するように、複数の放出装置101を配置して、大量のナノファイバ301を生成するように構成してもよい。このような場合には、導入装置106から各放出装置101に対して分岐通路を付けて、適当な風量が各放出装置101に流入するようにしてもよい。
なお、本願の実施形態においては、流出体115に対向する位置に帯電電極121を配置する構成を示したが、これに限定するものではなく、帯電電極121を取り除く、それに代わり、流出体115と誘引電極134間に電位差を設けて、流出体115の流出孔118から流出する原料液300を帯電させるように構成してもよく、本願発明で開示した内容と同じ効果を得ることができる。