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JP5209589B2 - 車両用ブレーキ液圧制御装置 - Google Patents

車両用ブレーキ液圧制御装置 Download PDF

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JP5209589B2
JP5209589B2 JP2009256699A JP2009256699A JP5209589B2 JP 5209589 B2 JP5209589 B2 JP 5209589B2 JP 2009256699 A JP2009256699 A JP 2009256699A JP 2009256699 A JP2009256699 A JP 2009256699A JP 5209589 B2 JP5209589 B2 JP 5209589B2
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Description

本発明は、アンチロックブレーキ(ABS)制御と車両挙動制御の双方を実行可能な車両用ブレーキ液圧制御装置に関する。
操舵角や車両の速度などに基づいて算出された目標ヨーレイトと、ヨーレイト検出手段で検出された実ヨーレイトとを比較して、車両の挙動を制御する車両挙動制御装置が知られている(特許文献1)。このような車両挙動制御装置では、車輪がロックしかけたときに、車輪ブレーキの液圧を減圧するABS制御をも行うように構成されているのが一般的である。
車両挙動制御を行う場合には、複数の車輪のうちの一部の車輪でブレーキを掛けることにより旋回力を発生し、車両の挙動を調整する。この車両挙動のための制動力を発生するために、各車輪毎にブレーキ液の目標液圧を逐次計算により設定している。この目標液圧は、詳細には種々の補正がなされるが、基本的な考え方として、前記した目標ヨーレイトと実ヨーレイトの差(これを「ヨーレイト偏差」という)に応じて求められる。そして、運転者がブレーキペダルを踏んでいる場合には、ヨーレイト偏差から求まる車両挙動制御に必要なブレーキ液圧にマスタシリンダ圧を加算することで目標液圧を求めていた。運転者がブレーキペダルを踏んでいる制動中に車両が不安定になっている場合には、そのブレーキペダルを踏んでいることによる現状のブレーキ液圧を基準として、車両挙動制御のためのブレーキ液圧の加算をする必要があるからである。
特開2009−067124号公報
ところで、ABS制御中に車両挙動制御を行うべき状況になった場合、ABS制御がなされている車輪ブレーキでは既に減圧がされているためマスタシリンダ圧とホイールシリンダ圧とに差が発生している。このときの目標ブレーキ液圧を、従来のように単にヨーレイト偏差から求まる車両挙動制御のためのブレーキ液圧にマスタシリンダ圧(つまり、減圧されていない圧力)を加算して求めると、現状のブレーキ液圧に比較して目標ブレーキ液圧が大きくなり、ブレーキ液圧が急変することで、ブレーキフィーリングが悪化するおそれがあった。
そこで、本発明は、ABS制御中に車両挙動制御を実行する場合に、ブレーキ液圧の急変を抑制し、ブレーキフィーリングを向上させることを目的とする。
前記課題を解決する本発明は、車輪のスリップ状態に基づいて車輪ブレーキに伝達されるブレーキ液圧を制御するアンチロックブレーキ制御と、車両の旋回状態に基づいて制御対象車輪の車輪ブレーキの目標液圧を設定し当該目標液圧で前記制御対象車輪の車輪ブレーキを加圧制御する車両挙動制御とを実行可能な車両用ブレーキ液圧制御装置であって、車両の旋回状態に基づいて制御対象車輪を加圧するのに必要な加圧液圧を算出する加圧液圧算出部と、車両の旋回による横加速度を取得し、当該横加速度に基づいて前記制御対象車輪が存在する前後位置における左右の車輪に掛かる荷重比を算出する荷重比算出部と、前記車両挙動制御の制御対象車輪と前後位置が同じで左右逆側の車輪の推定液圧を前記制御対象車輪の基本液圧とし、当該基本液圧を前記荷重比で補正した修正基本液圧を算出する修正基本液圧算出部とを備え、前記アンチロックブレーキ制御中に前記車両挙動制御を実行する際には、前記修正基本液圧に前記加圧液圧を加算することで、前記目標液圧を算出するように構成されたことを特徴とする。
このような車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、制御対象車輪においてABS制御中に車両挙動制御を行う際の目標液圧は、単にマスタシリンダ圧に加圧液圧を加算することで求めるのではなく、修正基本液圧に加圧液圧を加算することで求められる。修正基本液圧は、制御対象車輪と前後位置が同じで左右逆側の車輪の推定液圧である基本液圧をベースとし、この基本液圧を制御対象車輪が存在する前後位置における左右の車輪に掛かる荷重比で補正したものである。そして、制御対象車輪の左右逆側の車輪では、通常、ABS制御が継続していることから、修正基本液圧は、当該制御対象車輪でABS制御のみを継続していた場合に想定されるブレーキ液圧と近い値となる。また、荷重比を用いて補正していることから、高速旋回中に遠心力により左右の車輪に掛かる荷重が異なることも考慮してベースとなる基本液圧が補正される。したがって、修正基本液圧は、ABS制御により減圧などが継続された想定のブレーキ液圧の値と近くなるので、目標液圧は、ABS制御を考慮した現状のブレーキ液圧を基準として車両挙動制御に必要な圧力(加圧液圧)を加算した値となり、ブレーキ液圧の急変を抑制することができる。
また、修正基本液圧を、制御対象車輪の過去のブレーキ液圧の履歴に基づくのではなく、制御対象車輪と前後位置が同じで左右逆側の車輪の推定液圧に基づいて算出するので、車両挙動制御中に路面の状況(路面摩擦係数)が変わった場合にも、その変化を反映して、比較的適切な修正基本液圧を算出することができる。
前記した装置においては、前記荷重比の算出は、前記横加速度と、予め記憶された車両情報とに基づいて決定するように構成することができる。
このように荷重比を算出することで、当該車両に応じた適切な荷重比を算出することができる。
本発明によれば、ABS制御中に車両挙動制御を実行する場合に、制御対象車輪のブレーキ液圧の急変を抑制して、ブレーキフィーリングを向上させることができる。
本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置を備えた車両の構成図である。 車両用ブレーキ液圧制御装置の液圧ユニットの構成図である。 制御部の構成を示すブロック図である。 車両挙動制御の全体的処理を示すフローチャートである。 オーバーステア制御量の算出の処理を示すフローチャートである。 本実施形態の装置でABSおよび車両挙動制御をした場合の速度の経時変化(a)と、液圧の経時変化(b)である。
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置Aは、車両CRの各車輪Wに付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御するためのものであり、油路(液圧路)や各種部品が設けられた液圧ユニット10と、液圧ユニット10内の各種部品を適宜制御するための制御部100とを主に備えている。
制御部100には、車輪Wの車輪速度を検出する車輪速センサ91と、ステアリングSTの操舵角を検出する操舵角センサ92と、車両CRの横方向に働く加速度(横加速度)を検出する横加速度センサ93と、車両CRの旋回角速度(実ヨーレート)を検出するヨーレートセンサ94とが接続されている。各センサ91〜94の検出結果は、制御部100に出力される。
制御部100は、例えば、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えており、車輪速センサ91、操舵角センサ92、横加速度センサ93およびヨーレートセンサ94からの入力と、ROMに記憶されたプログラムやデータに基づいて各演算処理を行うことによって制御を実行する。
ホイールシリンダHは、マスタシリンダMCおよび車両用ブレーキ液圧制御装置Aにより発生されたブレーキ液圧を各車輪Wに設けられた車輪ブレーキFR,FL,RR,RLの作動力に変換する液圧装置であり、それぞれ配管を介して車両用ブレーキ液圧制御装置Aの液圧ユニット10に接続されている。
図2に示すように、液圧ユニット10は、運転者がブレーキペダルBPに加える踏力に応じたブレーキ液圧を発生する液圧源であるマスタシリンダMCと、車輪ブレーキFR,FL,RR,RLとの間に配置されている。液圧ユニット10は、ブレーキ液が流通する油路を有する基体であるポンプボディ10a、油路上に複数配置された入口弁1、出口弁2などから構成されている。
マスタシリンダMCの二つの出力ポートM1,M2はポンプボディ10aの入口ポート12Aに接続され、ポンプボディ10aの出口ポート12Bは各車輪ブレーキFR,FL,RR,RLに接続されている。そして、通常時はポンプボディ10a内の入口ポート12Aから出口ポート12Bまでが連通した油路となっていることで、ブレーキペダルBPの踏力が各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに伝達されるようになっている。
また、出力ポートM1から始まる油路は前輪左側の車輪ブレーキFLと後輪右側の車輪ブレーキRRに通じており、出力ポートM2から始まる油路は前輪右側の車輪ブレーキFRと後輪左側の車輪ブレーキRLに通じている。なお、以下では、出力ポートM1から始まる油路を「第一系統」と称し、出力ポートM2から始まる油路を「第二系統」と称する。
液圧ユニット10には、その第一系統に各車輪ブレーキFL,RRに対応して二つの制御弁手段Vが設けられており、同様に、その第二系統に各車輪ブレーキRL,FRに対応して二つの制御弁手段Vが設けられている。また、液圧ユニット10には、第一系統および第二系統のそれぞれに、リザーバ3、ポンプ4、オリフィス5a、調圧弁(レギュレータ)R、吸入弁7、貯留室7aが設けられている。さらに、液圧ユニット10には、第一系統のポンプ4と第二系統のポンプ4とを駆動するための共通のモータ9が設けられている。このモータ9は、回転数制御可能なモータである。また、本実施形態では、第二系統にのみ圧力センサ8が設けられている。
なお、以下では、マスタシリンダMCの出力ポートM1,M2から各調圧弁Rに至る油路を「出力液圧路A1」と称し、第一系統の調圧弁Rから車輪ブレーキFL,RRに至る油路および第二系統の調圧弁Rから車輪ブレーキRL,FRに至る油路をそれぞれ「車輪液圧路B」と称する。また、出力液圧路A1からポンプ4に至る油路を「吸入液圧路C」と称し、ポンプ4から車輪液圧路Bに至る油路を「吐出液圧路D」と称し、さらに、車輪液圧路Bから吸入液圧路Cに至る油路を「開放路E」と称する。
制御弁手段Vは、マスタシリンダMCまたはポンプ4側から車輪ブレーキFL,RR,RL,FR側(詳細には、ホイールシリンダH側)への液圧の行き来を制御する弁であり、ホイールシリンダHの圧力を増加、保持または低下させることができる。そのため、制御弁手段Vは、入口弁1、出口弁2およびチェック弁1aを備えて構成されている。
入口弁1は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRとマスタシリンダMCとの間、すなわち車輪液圧路Bに設けられた常開型の電磁弁である。入口弁1は、通常時に開いていることで、マスタシリンダMCから各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRへブレーキ液圧が伝達するのを許容している。また、入口弁1は、車輪Wがロックしそうになったときに制御部100により閉塞されることで、ブレーキペダルBPから各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに伝達するブレーキ液圧を遮断する。
出口弁2は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRと各リザーバ3との間、すなわち車輪液圧路Bと開放路Eとの間に介設された常閉型の電磁弁である。出口弁2は、通常時に閉塞されているが、車輪Wがロックしそうになったときに制御部100により開放されることで、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに作用するブレーキ液圧を各リザーバ3に逃がす。
チェック弁1aは、各入口弁1に並列に接続されている。このチェック弁1aは、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RR側からマスタシリンダMC側へのブレーキ液の流入のみを許容する一方向弁であり、ブレーキペダルBPからの入力が解除された場合に、入口弁1を閉じた状態にしたときにおいても、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RR側からマスタシリンダMC側へのブレーキ液の流入を許容する。
リザーバ3は、開放路Eに設けられており、各出口弁2が開放されることによって逃がされるブレーキ液圧を吸収する機能を有している。また、リザーバ3とポンプ4との間には、リザーバ3側からポンプ4側へのブレーキ液の流れのみを許容するチェック弁3aが介設されている。
ポンプ4は、出力液圧路A1に通じる吸入液圧路Cと車輪液圧路Bに通じる吐出液圧路Dとの間に介設されており、リザーバ3に貯留されているブレーキ液を吸入して吐出液圧路Dに吐出する機能を有している。これにより、リザーバ3により吸収されたブレーキ液をマスタシリンダMCに戻すことができるとともに、運転者がブレーキペダルBPを操作しない場合でもブレーキ液圧を発生して車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに制動力を発生することができる。
なお、ポンプ4のブレーキ液の吐出量は、モータ9の回転数に依存しており、例えば、モータ9の回転数が大きくなると、ポンプ4によるブレーキ液の吐出量も大きくなる。
オリフィス5aは、ポンプ4から吐出されたブレーキ液の圧力の脈動および後述する調圧弁Rが作動することにより発生する脈動を減衰させている。
調圧弁Rは、通常時に開いていることで、出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流れを許容する。また、調圧弁Rは、ポンプ4が発生したブレーキ液圧によりホイールシリンダH側の圧力を増加するときには、ブレーキ液の流れを遮断しつつ、吐出液圧路D、車輪液圧路BおよびホイールシリンダH側の圧力を設定値以下に調節する機能を有している。そのため、調圧弁Rは、切換弁6およびチェック弁6aを備えて構成されている。
切換弁6は、マスタシリンダMCに通じる出力液圧路A1と各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに通じる車輪液圧路Bとの間に介設された常開型のリニアソレノイド弁である。詳細は図示しないが、切換弁6の弁体は、付与される電流に応じた電磁力によって車輪液圧路BおよびホイールシリンダH側へ付勢されており、車輪液圧路Bの圧力が出力液圧路A1の圧力より所定値(この所定値は、付与される電流による)以上高くなった場合には、車輪液圧路Bから出力液圧路A1へ向けてブレーキ液が逃げることで、車輪液圧路B側の圧力が所定圧に調整される。
チェック弁6aは、各切換弁6に並列に接続されている。このチェック弁6aは、出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流れを許容する一方向弁である。
吸入弁7は、吸入液圧路Cに設けられた常閉型の電磁弁であり、吸入液圧路Cを開放する状態または遮断する状態に切り換えるものである。吸入弁7は、切換弁6が閉じるとき、すなわち、運転者がブレーキペダルBPを操作しない場合において各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRにブレーキ液圧を作用させるときに制御部100により開放(開弁)される。
貯留室7aは、吸入液圧路C上におけるポンプ4と吸入弁7との間に設けられている。この貯留室7aは、ブレーキ液を貯留するものであり、これにより、吸入液圧路Cに貯留されるブレーキ液の容量が実質的に増大する。
圧力センサ8は、第二系統の出力液圧路A1のブレーキ液圧を検出するものであり、その検出結果は制御部100に入力される。
次に、制御部100の詳細について説明する。図3に示すように、制御部100は、各センサ91〜94から入力された信号に基づいて液圧ユニット10内の制御弁手段V、切換弁6(調圧弁R)および吸入弁7の開閉動作ならびにモータ9の動作を制御して、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの動作を制御するものである。制御部100は、ABS制御部110、車両挙動制御部120、弁駆動部130、モータ駆動部140、ブレーキ液圧計算部150および記憶部180を備えている。
ABS制御部110は、従来と同様のアンチロックブレーキ制御を行う機能を有し、スリップ率演算部111および圧力制御判定部112を有する。ABS制御部110による増圧、保持または減圧の指示は弁駆動部130に出力され、ABS制御中であることは、フラグなどにより車両挙動制御部120に渡される。
スリップ率演算部111は、車輪速センサ91が検出した車輪速に基づいて各車輪Wの車輪速度と車体速度との比でスリップ率を演算する。
圧力制御判定部112は、車体速度およびこの車体速度から求められる車体減速度に基づき、記憶部180に記憶してある閾値を取得し、この閾値とスリップ率を比較して、車輪WがロックしないようにホイールシリンダHの液圧(キャリパ圧)を増圧状態、保持状態および減圧状態のいずれにするかを判定し、弁駆動部130に判定結果を出力する機能を有する。この判定は、具体的には、スリップ率が閾値より大きくなり、車輪加速度が0以下(車輪減速度が0以上)である場合に車輪Wがロックしそうになったと判定して、キャリパ圧を減圧状態にすることを決定する。また、車輪加速度が0よりも大きい場合に、キャリパ圧を保持状態にすることを決定し、スリップ率が閾値以下となり、かつ、車輪加速度が0以下である場合に、キャリパ圧を増圧状態にすることを決定する。
車両挙動制御部120は、車両CRの挙動を安定化させるために、車輪速センサ91、操舵角センサ92、横加速度センサ93およびヨーレートセンサ94が検出した信号に基づいて、4つの車輪Wのうちの一部の車輪Wに制動力を与える制御を実行する機能を有し、そのため、目標液圧設定部121と制御量決定部122を有する。なお、車両挙動制御部120は、目標液圧PTの決定方法以外は、従来と同様に構成することができる。例えば、詳細は説明しないが、ブレーキペダルBPが踏まれていないときに制動力を付与する場合には、モータ駆動部140に、モータ9の駆動を指示してポンプ4による加圧を実行させるようになっている。
目標液圧設定部121は、車両CRが不安定になったか否かを判定し、車両挙動制御を実行する条件が揃った場合に、制御対象車輪の目標液圧PTを設定する機能を有し、本実施形態では、加圧液圧算出部121Aと、荷重比算出部121Bと、修正基本液圧算出部121Cとを有する。
加圧液圧算出部121Aは、車両CRが不安定になったか否かを判定し、制御対象車輪の加圧液圧PCを算出する機能を有する。
具体的には、加圧液圧算出部121Aは、操舵角センサ92が検出した操舵角と、車体速度とから、想定される車両CRのヨーレートを目標ヨーレートとして算出する。そして、横加速度センサ93が検出した横加速度Ygをヨーレートの上限値に換算し、この上限値で目標ヨーレートにリミットをかけた(上限値以内に収まるようにした)修正目標ヨーレートを算出する。そして、実ヨーレートから修正目標ヨーレートを減算して、ヨーレート偏差を算出する。
そして、加圧液圧算出部121Aは、このヨーレート偏差が記憶部180に記憶されているオーバーステア制御閾値よりも大きければ、オーバーステア状態にあるということなので、ヨーレート偏差に応じた加圧液圧PCを算出する。また、ヨーレート偏差がアンダーステア制御閾値よりも小さければ、アンダーステア状態にあるということなので、ヨーレート偏差に応じた加圧液圧PCを算出する。なお、ヨーレート偏差から加圧液圧PCを算出する際には、ヨーレート偏差を用いてPID演算を行い、車両挙動を修正するのに必要なモーメント量を算出する。そして、このモーメント量をブレーキ液圧に換算して加圧液圧PCを算出する。
荷重比算出部121Bは、加圧液圧算出部121Aが、一部の車輪Wに制動力を付与することを決定した場合に、制御対象車輪が在る前後位置(例えば、制御対象車輪が前左なら前位置、右後なら後位置)における左右の車輪Wに掛かる荷重の比を算出する機能を有する。これは、制御対象車輪の左右逆側の車輪Wのブレーキ液圧から制御対象車輪をABS制御を継続した場合に相当するブレーキ液圧を推定する際に、高速旋回時において内輪よりも外輪の方に荷重が掛かることを考慮し、左右逆側の車輪Wのブレーキ液圧をこの荷重比RWで補正して推定を行うためである。
荷重比は、具体的には、次のようにして求めることができる。
まず、前輪の左右方向の荷重移動量ΔWf[N]、後輪の左右方向の荷重移動量ΔWr[N]は、
ΔWf=[(Gf/(Gf+Gr))・(Wf+Wr)・ΔHg+Wf・Hf]・Yg/Tf
ΔWr=[(Gr/(Gf+Gr))・(Wf+Wr)・ΔHg+Wr・Hr]・Yg/Tr
で求められる。ここで、
Gf,Gr:フロント/リアのロール剛性[Nm/rad]
Wf,Wr:フロント/リアの静荷重[N]
Hf,Hr:フロント/リアのロールセンター高さ[m]
ΔHg:重心高さ−重心位置でのロールセンター高さ[m]
Tf,Tr:フロント/リアのトレッド[m]
Yg:重心位置での横加速度[G]
である。ここでのGf,Gr,Wf,Wr,Hf,Hr,ΔHg,Tf,Trは、予め記憶された車両情報の一例である。
そして、ΔWf,ΔWrを用いて、右前輪の荷重Wfr、左前輪の荷重Wfl、右後輪の荷重Wrr、左後輪の荷重Wrlは、それぞれ、
Wfr=Wf/2+ΔWf
Wfl=Wf/2−ΔWf
Wrr=Wr/2+ΔWr
Wrl=Wr/2−ΔWr
で計算することができる。なお、ここでは右向きの横加速度を正、左向きの横加速度を負としている。
この各輪の荷重により、例えば、制御対象車輪が左前輪であれば、左前輪の荷重Wflと右前輪の荷重Wfrの比をとって、荷重比RWは、
RW=Wfl/Wfr
により求めることができる。
修正基本液圧算出部121Cは、制御対象車輪にABS制御を継続したと想定した場合のブレーキ液圧である修正基本液圧PBを算出する機能を有する。修正基本液圧PBは、制御対象車輪と前後位置が同じで左右逆側の車輪Wのブレーキ液圧を基本液圧Pbとし、この基本液圧Pbに荷重比RWを乗じる(荷重比RWで補正する)ことで求めることができる。すなわち、
B=Pb・RW
である。
目標液圧設定部121は、これらの加圧液圧PC、修正基本液圧PBが揃うことで、車両挙動制御がABS制御中に実行される場合には、修正基本液圧PBに加圧液圧PCを足すことで目標液圧PTを設定し、ABS制御中ではない場合には、従来通り、マスタシリンダ圧PMに加圧液圧PCを足すことで目標液圧PTを設定する。
なお、ABS制御中に、計算上、修正基本液圧PBがマスタシリンダ圧PMを超えないようにするため、次の式により目標液圧PTを計算してもよい。
T=min{PM,PB}+PC
制御量決定部122は、目標液圧設定部121が設定した目標液圧PTと、現在の制御対象車輪の推定ブレーキ液圧とから、制御弁手段V、調圧弁R、吸入弁7およびモータ9を制御する制御量を決定する公知の機能を有する。
弁駆動部130は、ABS制御部110および車両挙動制御部120からの指示に従い、制御弁手段V、調圧弁Rおよび吸入弁7を実際に駆動する。具体的な弁の駆動の履歴は、ブレーキ液圧計算部150にも出力される。
モータ駆動部140は、ブレーキペダルBPの操作によるマスタシリンダ圧PMが全く得られない場合や、十分なマスタシリンダ圧が得られない場合に、車両挙動制御部120からの指示に従いモータ9を回転駆動させる機能を有する。
ブレーキ液圧計算部150は、圧力センサ8が検出したマスタシリンダ圧PMと、弁駆動部130で各車輪WのホイールシリンダHの増圧、保持、減圧または調圧の動作をした履歴に基づき、各車輪Wの現在のキャリパ圧を計算(推定)する機能を有する。
記憶部180は、ABS制御部110や車両挙動制御部120が演算、制御を行うのに必要な定数値(Gf,Gr,Wf,Wr,Hf,Hr,ΔHg,Tf,Trなどの車両情報)や換算テーブルなどのデータを予め記憶している。また、記憶部180は、推定したブレーキ液圧など、制御中の制御値、計算値を適宜記憶する。
以上のような制御部100における、車両挙動制御をする場合の処理について説明する。図4に示すように、制御部100は、まず、圧力センサ8、車輪速センサ91、操舵角センサ92、横加速度センサ93およびヨーレートセンサ94などの各種のセンサの値を読み込む(S1)。そして、加圧液圧算出部121Aは、操舵角と車体速度とから、目標ヨーレートを計算し(S2)、さらに、修正目標ヨーレート(S3)、ヨーレート偏差(S4)を順に計算する。
次に、加圧液圧算出部121Aは、ヨーレート偏差がオーバーステア制御閾値より大きいか否か判断する(S5)。ヨーレート偏差がオーバーステア制御閾値より大きければ(S5,Yes)、目標液圧設定部121および制御量決定部122は、後述する処理によりオーバーステア制御量を算出し(S6)、車両挙動制御部120は、旋回外側の前後の車輪Wに制動力を付加する(S7)。一方、ヨーレート偏差がオーバーステア制御閾値より大きくない場合(S5,No)、加圧液圧算出部121Aは、ヨーレート偏差がアンダーステア制御閾値より小さいか否か判断する(S8)。ヨーレート偏差がアンダーステア制御閾値より小さい場合(S8,Yes)、目標液圧設定部121および制御量決定部122は、アンダーステア制御量を算出し(S9)、車両挙動制御部120は、旋回内側の前後の車輪Wに制動力を付加する(S10)。ヨーレート偏差がアンダーステア制御閾値より小さくない場合(S8,No)、車両挙動制御の条件を満たさないので処理を終了する。
図5に示すように、オーバーステア制御量を算出するとき、加圧液圧算出部121Aは、ヨーレート偏差から記憶部180に記憶してある算出テーブルを参照して加圧液圧PCを算出する(S61)。そして、目標液圧設定部121は、ABS制御中か否か判断し(S62)、ABS制御中でない場合には(S62,No)、マスタシリンダ圧PMに加圧液圧PCを足すことで目標液圧PTを算出する。なお、ブレーキペダルBPが踏まれておらず、マスタシリンダ圧PMが0の場合には、結果として、加圧液圧PCがそのまま目標液圧PTとなる。ABS制御中であった場合(S62,Yes)、荷重比算出部121Bは、車両情報および横加速度Ygから荷重比RWを計算する(S64)。そして、修正基本液圧算出部121Cは、制御対象車輪と前後位置が同じで左右逆側の車輪のブレーキ液圧(基本液圧Pb)と荷重比RWとから修正基本液圧PBを算出する(S65)。次に、目標液圧設定部121は、修正基本液圧PBに加圧液圧PCを足して目標液圧PTを算出する(S66)。
目標液圧PTが設定された(S63,S66)後は、制御量決定部122が、目標液圧PTと制御対象車輪の推定ブレーキ液圧から制御弁手段V、調圧弁R、吸入弁7およびモータ9の制御量を決定する(S67)。
ここで、図5を参照してオーバーステア制御量の算出処理を説明したが、アンダーステア制御量の算出処理は、加圧液圧PCの算出テーブルが異なるだけでその他は同様であるので、説明は省略する。
なお、各車輪Wのブレーキ液圧(キャリパ圧)は、適宜なタイミングでブレーキ液圧計算部150により算出(推定)されている。また、以上のような処理は、本発明を理解しやすく説明するための一例であり、当然のことながら、処理の順序などは適宜変更することができる。
以上のような処理により、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置Aによれば、図6に示すような制御がなされる。図6(a)では、車両が旋回中に急制動したときの車体速度と車輪速度の経時変化を重ねて示しており、図6(b)では、本実施形態における車両が旋回中に急制動したときのマスタシリンダ圧とキャリパ圧の経時変化と、本発明を実施せず、マスタシリンダ圧に加圧液圧を足して目標液圧とした場合の当該目標液圧の経時変化とを重ねて示している。なお、図6は、旋回外側の前車輪を対象としており、旋回内側の前車輪は、車両挙動制御が開始されることなくABS制御が継続しているものとする。
図6(a),(b)に示すように、車両CRは、時刻t1からスリップ率が大きくなり、ABS制御が開始される。そのため、時刻t1以降は、ABS制御により減圧がなされ、さらにその後車両が旋回状態となっていることによって、キャリパ圧がマスタシリンダ圧よりも低くなっている。そして、時刻t2と時刻t3において、オーバーステア状態となり、車両挙動制御の条件が満たされたことで、ABS制御中の車両挙動制御が実行され、旋回外輪に制動力を付与されている。このとき、単にマスタシリンダ圧に加圧液圧PCを足して目標液圧を設定した場合には、図6(b)の破線に示したように、急激なキャリパ圧の増加が発生するおそれが考えられるが、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置Aによれば、マスタシリンダ圧に代えて、左右逆側の車輪のブレーキ液圧に加重比を乗じた修正基本液圧を採用しているため、図6(b)の実線に示したABS制御中のキャリパ圧を基準としてスムーズに車両挙動制御のための加圧が行われ、キャリパ圧の急変が抑制されている。これにより、制動力の変化も緩やかとなり、ブレーキフィーリングを向上することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、ヨーレートや横加速度の値において、右旋回と左旋回のいずれのときに正の値の採るかは任意に決定することができる。
また、車両挙動制御の際に、車両の旋回内側または外側の前後の車輪両方に制動力を付与することで車両の安定化を図っていたが、前後のうち一方のみに制動力を付与してもよい。
前記実施形態においては、横加速度は、横加速度センサで取得していたが、センサを用いることなく、車輪速度から推定したり、車輪速度と実ヨーレートから推定したりしてもよい。
10 液圧ユニット
91 車輪速センサ
92 操舵角センサ
93 横加速度センサ
94 ヨーレートセンサ
100 制御部
110 ABS制御部
111 スリップ率演算部
112 圧力制御判定部
120 車両挙動制御部
121 目標液圧設定部
121A 加圧液圧算出部
121B 荷重比算出部
121C 修正基本液圧算出部
122 制御量決定部
150 ブレーキ液圧計算部
A 車両用ブレーキ液圧制御装置

Claims (2)

  1. 車輪のスリップ状態に基づいて車輪ブレーキに伝達されるブレーキ液圧を制御するアンチロックブレーキ制御と、車両の旋回状態に基づいて制御対象車輪の車輪ブレーキの目標液圧を設定し当該目標液圧で前記制御対象車輪の車輪ブレーキを加圧制御する車両挙動制御とを実行可能な車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
    車両の旋回状態に基づいて制御対象車輪を加圧するのに必要な加圧液圧を算出する加圧液圧算出部と、
    車両の旋回による横加速度を取得し、当該横加速度に基づいて前記制御対象車輪が存在する前後位置における左右の車輪に掛かる荷重比を算出する荷重比算出部と、
    前記車両挙動制御の制御対象車輪と前後位置が同じで左右逆側の車輪の推定液圧を前記制御対象車輪の基本液圧とし、当該基本液圧を前記荷重比で補正した修正基本液圧を算出する修正基本液圧算出部とを備え、
    前記アンチロックブレーキ制御中に前記車両挙動制御を実行する際には、前記修正基本液圧に前記加圧液圧を加算することで、前記目標液圧を算出するように構成されたことを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
  2. 前記荷重比の算出は、前記横加速度と、予め記憶された車両情報とに基づいて決定するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
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