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JP5204249B2 - 磁気テープ - Google Patents

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JP5204249B2 JP2011015683A JP2011015683A JP5204249B2 JP 5204249 B2 JP5204249 B2 JP 5204249B2 JP 2011015683 A JP2011015683 A JP 2011015683A JP 2011015683 A JP2011015683 A JP 2011015683A JP 5204249 B2 JP5204249 B2 JP 5204249B2
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Description

本発明は、磁気テープに関するものであり、詳しくは、優れた電磁変換特性と走行耐久性を兼ね備えた磁気テープに関するものである。
近年、情報量の爆発的な増大と共にハードディスクの高記録密度化が進んでいる。一方、これらの増大したハードディスクに記録された情報のバックアップ用途およびアーカイブのような長期保存用途に使用される磁気テープにも高記録密度化が必要とされている。
高密度記録化のためには、微粒子磁性体を使用するとともに、微粒子磁性体を磁性層中に高度に分散させることが広く行われる。このように微粒子磁性体を高度に分散させるほど、磁性体に起因する磁性層表面突起は減少するため磁性層の表面平滑性は高まる。しかし磁性層の表面平滑性を高めるほど再生ヘッドと媒体が摺動する際に摩擦係数が増大し走行耐久性は低下する。
そこで磁性層中の非磁性フィラー(カーボンブラック、研磨剤等)の種類および添加量を調整することにより、磁性層の表面形状を制御することが行われている(例えば特許文献1参照)。また、特許文献2には、磁性層表面の粗さを制御するために、磁性層中の非磁性フィラーの平均粒径と磁性層厚さとの関係を規定することが提案されている。
特開2004−103137号公報 特開2002−288816号公報
従来行われているように、信号再生時の摩擦特性を向上(摩擦係数を低減)するためには、磁性層の表面形状を制御することによりヘッドと媒体との接触面積の低減を図ることが有効である。しかし一方で、摩擦特性を向上するために磁性層表面形状を制御すると、スペーシング変動により電磁変換特性が低下するという問題がある。
このように従来、摩擦特性と電磁変換特性とはトレードオフの関係にあり、両立することは困難であった。
そこで本発明の目的は、優れた電磁変換特性と摩擦特性を兼ね備えた磁気テープを提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、非磁性支持体の一方の表面上に、非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層を有し、該非磁性層上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気テープにおいて、下記(1)〜(5)を兼ね備えることにより、上記目的が達成されることを見出すに至った。
(1)前記磁性層は、平均粒径φが磁性層厚tと、下記式(I):
1.0≦φ/t≦2.0 …(I)
の関係を満たす非磁性フィラーを含む。
(2)上記t(磁性層厚)は30〜200nmの範囲である。
(3)前記非磁性層は、厚みが30〜200nmの範囲である。
(4)前記磁性層表面で測定される複合弾性率は6.0〜8.0GPaの範囲である。
(5)前記磁性層表面の光学式三次元粗さ計により測定される中心線平均表面粗さRaは0.2〜1.5nmの範囲である。
以下、本発明者が、上記(1)〜(5)を兼ね備えることによって優れた電磁変換特性と摩擦特性を兼ね備えた磁気テープが得られることを見出すに至った経緯について説明する。
第一に本発明者は、電磁変換特性の低下をもたらすことなく摩擦特性を改善し得る、有効な突起を磁性層表面に形成すべく、上記(1)および(2)を満たす磁性層を形成した。
しかし、非磁性支持体上に非磁性層と磁性層をこの順に有する構成の磁気テープでは、磁性層より下の部分(非磁性層以下)も媒体−ヘッド間のスペーシング変動に大きな影響を及ぼす。したがって磁性層において制御を行うのみでは、電磁変換特性と摩擦特性を両立することはできない。そこで本発明者は、スペーシング変動に影響を与える要因について鋭意検討を重ねた結果、磁性層表面には磁性層中のフィラーにより磁性層表面に形成される突起(短波長成分)とともに、「うねり」と呼ばれる、より波長の長い粗さ(長波長成分)が存在し、この長波長成分が短波長成分である磁性層表面の突起がヘッドと均一に接触することを阻害していることがスペーシング変動の大きな要因となるとの知見を得るに至った。
そこで本発明者は、ヘッドと突起との均一な接触を達成しスペーシング変動を低減するためには、磁性層表面においてうねりを抑える必要があるとの考えの下、上記うねりに相当する光学式三次元粗さ計により測定される粗さを抑えることとした[上記(5)]。
また、本発明者は、上記(1)、(2)および(5)を満たすのであれば、磁性層および非磁性層を含む磁性層側塗布層は、有効な突起を磁性層表面に形成し得る範囲で変形しにくいことが望ましいとの知見も得た。これは、磁性層側塗布層は、本来塑性変形しにくいことが望ましいとの、本発明者により得られた新たな知見に基づくものである。従来の磁性層側塗布層、特に非磁性層にはカレンダ処理により粗さを解消するために変形しやすいことが求められていたため、変形しにくい磁性層側塗布層、特に非磁性層を形成すべきであるとの知見は、従来の知見とは明らかに異なるものである。
この点について更に説明すると、磁性層側塗布層が塑性変形しやすいほど、磁性層中の非磁性フィラーが非磁性層側に押し込まれ易く磁性層表面において摩擦特性向上に寄与する突起として存在することができなくなり、また製造過程でロール状態で磁気テープを保存したり、製品化後に磁気テープをリールハブに巻いた状態で保存した場合に媒体裏面(支持体裏面やバックコート層表面)の突起が磁性層表面に転写されることによる形状変化が解消されずに、ドロップアウトの原因となる凹み(いわゆる「裏写り」)が磁性層表面に形成されやすくなる。
以上の知見に基づき本発明者は、有効な突起を磁性層表面に形成し得る範囲で塑性変形を低減するために、塑性変形する部分を少なくすること、即ち磁性層とともに非磁性層も薄くすること[上記(3)]、および、塑性変形を引き起こすエネルギーを低減すること、即ち磁性層において測定される複合弾性率を低くすること [上記(4)]を、磁気テープが満たすべきであるとの結論に至った。これに対し従来は、磁性層側塗布層、特に非磁性層には、その下の表面形状をマスキングするためにある程度厚く、かつカレンダ処理により粗さを解消するために変形しやすいことが求められていたため、磁性層側塗布層が本来は塑性変形しにくいことが望ましいとの知見を得ることは、従来困難であった。
本発明者は以上の経緯により、上記(1)〜(5)を兼ね備えた磁気テープにより、優れた電磁変換特性と摩擦特性の両立が可能となることを見出すに至った。かかる本発明は、上記したように、本発明者が従来とは異なる技術思想の下、想到数の試行錯誤を重ねた結果、初めて見出されたものである。
即ち、本発明の上記目的は、下記手段によって達成された。
[1]非磁性支持体の一方の表面上に、非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層を有し、該非磁性層上に直接、強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気テープであって、
前記磁性層は、平均粒径φが磁性層厚tと、下記式(I):
1.0≦φ/t≦2.0 …(I)
の関係を満たす非磁性フィラーを含み、かつ上記tは30〜200nmの範囲であり、
前記非磁性層は、厚みが30〜200nmであり、
前記磁性層表面で測定される複合弾性率は6.0〜8.0GPaの範囲であり、
前記磁性層表面の光学式三次元粗さ計により測定される中心線平均表面粗さRaは0.2〜1.5nmの範囲であることを特徴とする磁気テープ。
[2]前記非磁性フィラーは、無機酸化物粒子および有機ポリマー粒子からなる群から選択される[1]に記載の磁気テープ。
[3]前記非磁性フィラーは、コロイド粒子である[1]または[2]に記載の磁気テープ。
[4]前記非磁性フィラーは、シリカコロイド粒子である[1]〜[3]のいずれかに記載の磁気テープ。
[5]前記磁性層は、前記非磁性フィラーを強磁性粉末100質量部に対して0.3〜20質量部含有する[1]〜[4]のいずれかに記載の磁気テープ。
[6]前記磁性層は、前記非磁性フィラーとは異なる素材からなる粒状物質を更に含む[1]〜[5]のいずれかに記載の磁気テープ。
[7]前記非磁性支持体の磁性層側表面において光学式三次元粗さ計により測定される中心線平均表面粗さRaは、0.1〜1.5nmの範囲である[1]〜[6]のいずれかに記載の磁気テープ。
[8]前記非磁性層と非磁性支持体との間に、放射線硬化層を有する[1]〜[7]のいずれかに記載の磁気テープ。
[9]前記非磁性層に含まれる非磁性粉末の平均粒子サイズは、5〜50nmの範囲である[1]〜[8]のいずれかに記載の磁気テープ。
[10]前記非磁性層に含まれる結合剤は、スルホン酸(塩)基を含む[1]〜[9]のいずれかに記載の磁気テープ。
[11]前記非磁性層に含まれる結合剤のスルホン酸(塩)基濃度は、0.04〜0.5meq/gの範囲である[10]に記載の磁気テープ。
[12]前記非磁性支持体の他方の表面上にバックコート層を有する、[1]〜[11]のいずれかに記載の磁気テープ。
本発明によれば、走行時の摩擦係数が低く、かつ優れたSNRを有しエラーレートの低い磁気テープ、即ち、優れた摩擦特性と電磁変換特性を兼ね備えた磁気テープを提供することができる。
本発明は、非磁性支持体の一方の表面上に、非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層を有し、該非磁性層上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、下記(1)〜(5)を兼ね備えた磁気テープに関する。
(1)前記磁性層は、平均粒径φが磁性層厚tと、下記式(I):
1.0≦φ/t≦2.0 …(I)
の関係を満たす非磁性フィラーを含む。
(2)上記t(磁性層厚)は30〜200nmの範囲である。
(3)前記非磁性層は、厚みが30〜200nmの範囲である。
(4)前記磁性層表面で測定される複合弾性率は6.0〜8.0GPaの範囲である。
(5)前記磁性層表面の光学式三次元粗さ計により測定される中心線平均表面粗さRaは0.2〜1.5nmの範囲である。
本発明の磁気テープが、上記要件(1)〜(5)を兼ね備えることにより優れた電磁変換特性と摩擦特性を両立し得る理由の概要については、先に説明した通りである。以下、上記要件(1)〜(5)について、更に詳細に説明する。
要件(1)、(2)
本発明の磁気テープにおいて、磁性層には平均粒径φが磁性層厚tと、下記式(I):
1.0≦φ/t≦2.0 …(I)
の関係を満たす非磁性フィラーが含まれる。上記非磁性フィラーは、磁性層表面に適度に突出することにより摩擦特性の向上に寄与するものであり、その平均粒径φが磁性層厚t未満、即ちφ/tが1.0未満では、磁性層表面における非磁性フィラーの突出が不十分であることにより、ヘッドと磁性層表面が摺動する際に摩擦係数が増大し良好な電磁変換特性を得ることができない。一方、非磁性フィラーの平均粒径φが磁性層厚tの2倍を超えると、即ちφ/tが2.0を超えると、磁性層表面からの非磁性フィラーの突出量が過剰となりスペーシング要因となるため電磁変換特性が低下する。したがって本発明では、磁性層に含まれる非磁性フィラーとして、磁性層厚tと上記式(I)の関係を満たす平均粒径を有するものを使用する。
本発明において、上記非磁性フィラーの平均粒径は、以下の方法によって測定された値とする。
非磁性フィラーを、透過型電子顕微鏡で印画紙にプリントして粒子写真を得る。例えば、日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いて粒子を撮影倍率50000〜100000倍程度で撮影し印画紙にプリントして粒子写真を得ることができる。
次いで、粒子写真から50個の粒子を無作為に抽出し、各粒子の輪郭をデジタイザーでトレースし、トレースした領域と同じ面積の円の直径(円面積相当径)を算出する。本発明において非磁性フィラーの粒径とは、こうして算出される直径をいうものとする。上記粒径の算出には、例えばカールツァイス製画像解析ソフトKS−400を使用することができる。また、スキャナーからの画像取り込みおよび画像解析の際のscale補正は、例えば直径1cmの円を用いて行うことができる。
上記方法により測定された50個の粒子の粒径の算術平均値を非磁性フィラーの平均粒径とする。また、後述する磁性層に含まれる粒状物質の平均粒径も同様である。後述の非磁性フィラーの粒度分布は、上記方法により測定される50個の粒子の粒径の標準偏差と平均粒径から求められる値とする。
なお、上記方法に求められる平均粒径は、50個の一次粒子について算出される平均値である。一次粒子とは、凝集のない独立した粉体をいう。したがって非磁性フィラーの平均粒径を測定するための試料粒子としては、一次粒子の粒径を測定可能なものであれば磁性層から採取した試料粉末であっても原料粉末であってもよい。磁性層からの試料粉末の採取は、例えば以下の方法によって行うことができる。
試料粉末採取方法
1.磁性層表面にヤマト科学製プラズマリアクターで1〜2分間表面処理を施し、磁性層表面の有機物成分(結合剤成分等)を灰化して取り除く。
2.シクロヘキサノンまたはアセトンなどの有機溶剤を浸したろ紙を金属棒のエッジ部に貼り付け、その上で上記1.の処理後の磁性層表面をこすり、磁性層成分を磁気テープからろ紙へ転写し剥離する。
3.上記2.で剥離した成分をシクロヘキサノンやアセトンなどの溶媒の中に振るい落とし(ろ紙ごと溶媒の中にいれ超音波分散機で振るい落とす)、溶媒を乾燥させ剥離成分を取り出す。
4.上記3.でかき落とした成分を十分洗浄したガラス試験管に入れ、その中にn−ブチルアミンを磁性層成分の20ml程度加えてガラス試験管を封緘する。(n−ブチルアミンは、灰化せず残留した結合剤を分解できる量加える。)
5.ガラス試験管を170℃で20時間以上加熱し、バインダー・硬化剤成分を分解する。
6.上記5.の分解後の沈殿物を純水で十分に洗浄後乾燥させ、粉末を取り出す。
以上の工程により、磁性層から試料粉末を採取することができる。
上記式(I)では、磁性層厚が厚いほど大きな非磁性フィラーの存在が許容されることとなるが、磁性層厚が200nmを超えるとスペーシング要因となる粗大な非磁性フィラーの存在も許容されることとなり電磁変換特性が低下する。したがって本発明の磁気テープにおいて、磁性層の厚さは200nm以下とする。磁性層は、厚さが30nm未満では、十分な出力を得ることや均一な塗布層を形成することが困難となるため、磁性層の厚さは30nm以上とする。即ち、本発明の磁気テープにおいて、磁性層の厚さは30nm〜200nmの範囲とする。本発明の磁気テープにおける磁性層をはじめとする各層の厚さは、塗布条件(塗布液の塗布量、塗布面積等)から算出することができるが、磁気テープの超薄切片(例えば10μm長)を透過型電子顕微鏡(TEM)で、例えば50万倍で観察して求めることもできる。
上記式(I)は、より優れた電磁変換特性と摩擦特性を得るためには、
1.2≦φ/t≦1.7 …(I)
であることが好ましく、
1.4≦φ/t≦1.7 …(I)
であることがより好ましい。非磁性フィラーの平均粒径は、上記式(I)を満たすものであればよいが、よりいっそう優れた電磁変換特性を得るためには50〜200nmの範囲であることが好ましい。また、磁性層厚は、電磁変換特性の更なる向上の観点からは、170nm以下であることが好ましく、より均一な磁性層を形成する観点からは、50nm以上であることが好ましい。
前記非磁性フィラーは、上記式(I)を満たすものであれば無機物質であっても有機物質であってもよい。優れたサイズ分布と分散性を有する粒子の入手容易性の点からは無機物質粒子および有機ポリマー粒子からなる群から選ばれるものが好ましい。サイズ分布については、より優れた電磁変換特性と摩擦特性を得るためには、粒度分布の変動係数[(粒径の標準偏差/平均粒径)×100]が40%以下のものが好ましく、20%以下のものがより好ましい。有機ポリマー粒子としては、磁性層表面に所望の突起を形成するためには、磁性層塗布液の調製に使用される有機溶剤(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールのようなアルコール系溶剤、トルエンなど)への溶解性に乏しいものを使用することが好ましい。この点から好ましい有機ポリマー粒子としては、アクリル、スチレン、ジビニルベンゼン、ベンゾグアナミン、メラミン、ホルムアルデヒド、ブタジエン、アクリロニトリル、クロロプレン、含フッ素ポリマー等から選ばれる少なくとも1つの成分を構成成分とする有機ポリマー粒子を挙げることができ、アクリル、スチレン、ジビニルベンゼン、ベンゾグアナミン、メラミン、ホルムアルデヒド、ブタジエン、アクリロニトリルおよびクロロプレンからなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を構成成分とする有機ポリマー粒子が好ましく、アクリル、スチレン、ジビニルベンゼンを含有するポリマー粒子がより好ましく、アクリル、スチレンを含有するポリマー粒子が特に好ましい。これらは公知の方法で合成することができ、また市販品として入手することができる。市販の有機ポリマー粒子としては、綜研化学社製のメタクリル酸共重合粒子、架橋アクリル粒子、架橋ポリスチレン粒子、積水化学工業社製の架橋アクリル粒子、日本触媒社製のメラミン−ホルムアルデヒド縮合物粒子等がある。具体的商品名としては、綜研化学社製ケミスノー、積水化学工業社製アドバンセル、日本触媒社製エポスター等が挙げられる。
一方、非磁性フィラーを構成可能な無機物質としては、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物を挙げることができ、無機酸化物であることが好ましい。無機酸化物としては、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、二酸化珪素、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、二酸化チタン、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどを一種または二種以上組み合わせて使用することができる。優れた分散性を有する粒子の入手容易性の観点からは、シリカ(二酸化珪素)が好ましい。
また、非磁性フィラーとしては、分散性の観点から、コロイド粒子を使用することが好ましい。コロイド粒子としては、入手容易性の点から無機コロイド粒子が好ましく、無機酸化物コロイド粒子がより好ましい。無機酸化物コロイド粒子としては、上記無機酸化物のコロイド粒子を挙げることができ、具体例としては、SiO2・Al23、SiO2 ・B23、TiO2・CeO2、SnO2・Sb23、SiO2・Al23・TiO2、TiO2・CeO2・SiO2などの複合無機酸化物コロイド粒子を挙げることもできる。好ましいものとしては、SiO2、Al23、TiO2、ZrO2、Fe23などの無機酸化物コロイド粒子を挙げることができ、単分散のコロイド粒子の入手容易性の点から、シリカコロイド粒子(コロイダルシリカ)が特に好ましい。
ところで、一般的なコロイド粒子は表面が親水性であるため水を分散媒とするコロイド溶液の作製に適する。例えば一般的な合成法により得られるコロイダルシリカは、表面が分極した酸素原子(O2-)で覆われているため水中で水を吸着して水酸基を形成して安定化している。しかしこれら粒子は、磁気テープ用塗布液に使用される有機溶媒中では、そのままではコロイド状態で存在することは困難である。そこで有機溶媒中でこれら粒子をコロイド状態で分散可能とするために、粒子表面に疎水化処理を施すことが行われている。本発明でも、このような疎水化処理を施したコロイド粒子を使用することが好ましい。そのような疎水化処理の詳細については、例えば特開平5−269365号公報、特開平5−287213号公報、特開平2007−63117号公報等に記載されている。このような表面処理が施されたコロイド粒子は、上記公報記載の方法等によって合成することができ、また市販品としても入手可能である。
上記コロイド粒子を使用し磁性層層形成用塗布液を調製する方法としては、強磁性粉末、結合剤および有機溶媒を含む第一液(磁性液)と、コロイド粒子を含む第二液(コロイド溶液)とを混合する方法を挙げることができる。ここで後述するように磁性層に研磨剤を添加する場合には、研磨剤は第一液、第二液の少なくとも一方に添加してもよく、別途研磨剤と有機溶媒を含む溶液(研磨剤液)を調製し、この研磨剤液を第一液、第二液と混合することも可能である。
磁性層形成用塗布液の調製に使用する有機溶媒としては、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等を使用することができる。上記有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30質量%以下が好ましく、さらに好ましくは10質量%以下である。分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、溶剤組成の内、誘電率が15以上の溶剤が50質量%以上含まれることが好ましい。また、溶解パラメータは8〜11であることが好ましい。以上の観点から好ましい有機溶媒としては。メチルエチルケトン、シクロヘキサンノンおよびこれらを任意の割合で含む混合溶媒を挙げることができる。
磁性液に使用する有機溶媒、コロイド溶液に使用する有機溶媒は、それぞれ上記例示した有機溶媒から任意に選択することが可能であるが、磁性液とコロイド溶液を混合した際にも安定なコロイド状態を維持するためには、磁性液に含まれる有機溶媒とコロイド溶液に含まれる有機溶媒は相溶性を有することが好ましい。ここで相溶性とは、目視で観察した際に二液以上に分離しない程度に両溶媒が均一に混合可能であることを意味する。この点から、磁性液用溶媒、コロイド溶液用溶媒を、それぞれ上記好ましい有機溶媒として例示したメチルエチルケトン、シクロヘキサノンおよびこれらの混合溶媒から選択することが好ましい。この場合、前記の研磨剤液の溶媒も、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンおよびこれらの混合溶媒から選択することが好ましい。コロイド溶液中のコロイド粒子濃度は、例えば5〜50質量%程度であるが、非磁性粒子がコロイド状態で安定に存在し得る濃度であればよく特に限定されるものではない。
前記磁性層中の非磁性フィラーの含有量は、電磁変換特性と摩擦特性を両立できる範囲で設定すればよく特に限定されるものではないが、好ましくは強磁性粉末100質量部に対して0.5〜5質量部であり、より好ましくは 1〜3質量部である。
その他、本発明の磁気テープにおける磁性層の詳細は後述する。
要件(3)、(4)
前述のように、非磁性層の厚さが厚くなるほど塑性変形する部分が多くなるため磁性層中の非磁性フィラーの非磁性層への沈み込みによる摩擦係数増大や裏写りによるドロップアウトの増大が発生する。その厚さが200nmを超えると、それらの影響による電磁変換特性および摩擦特性の低下が顕著となるため、本発明では非磁性層の厚さは200nm以下とする。ただし、非磁性層の厚さが30nm未満では、均一な塗布層を形成することが困難となるため、その厚さは30nm以上とする。即ち、本発明の磁気テープにおける非磁性層の厚さは、30〜200nmの範囲とする。より均一な非磁性層を形成する観点からは、非磁性層の厚さが50nm以上であることが好ましく、塑性変形をよりいっそう低減する観点からは、非磁性層の厚さは150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。
本発明では、非磁性層の塑性変形を低減するための手段として、第一には非磁性層の厚さを30〜200nmの範囲とする。そのうえで本発明では、磁性層表面で測定される複合弾性率を6.0〜8.0GPaの範囲とする。これにより、磁性層側塗布層(磁性層、非磁性層等)の塑性変形を低減し、有効な突起を磁性層表面に形成することと裏写りの低減を両立することができる。上記複合弾性率が6.0GPa未満では、磁性層中の非磁性フィラーが非磁性層に沈み込んだまま戻らず有効な突起として磁性層表面に存在することができず、8.0GPaを超えると、ドロップアウトの原因となる裏写りの発生が顕著となる、走行中に突起が適度に沈み込まないため摩擦係数が増大する、といった現象が発生してしまう。上記複合弾性率は、摩擦特性向上とドロップアウト低減を両立する観点からは、6.3〜7.8GPaの範囲であることが好ましく、6.5〜7.6GPaの範囲であることがより好ましい。
本発明において上記複合弾性率とは、Hysitron Inc.製 Tribo Indenterによってダイヤモンド製の球形圧子(先端R:1.3μm)を用いて単一押し込み測定により磁性層表面(磁性層側塗布層表面)において評価される複合弾性率をいう。複合弾性率は、以下の式1に示すHertzの接触解から求められる。
Figure 0005204249
ここで、Pは押し込み荷重、Rは球形圧子の半径、hは押し込み深さ、Erは複合弾性率である。最大圧入深さ100nmで、最大圧入深さまでの圧入(除荷)時間11秒で3回測定した値の平均値を、磁性層表面で測定される複合弾性率とする。
磁性層表面で測定される複合弾性率の制御方法としては、以下の方法を挙げることができる。
(A)磁性層、非磁性層に使用する結合剤の選択
(B)磁性層、非磁性層中のカーボンブラックのサイズと混合量の調整
(C)磁性層、非磁性層中の結合剤と主粉末(強磁性粉末、非磁性粉末)との混合比の調整
(D)強磁性粉末、非磁性粉末のサイズの調整
(E)非磁性層と非磁性支持体との間への下塗り層の形成
(F)非磁性支持体の力学特性(例えばヤング率)の調整
上記の通り、磁性層表面で測定される複合弾性率は、磁性層、非磁性層のそれぞれにおいて制御することができるが、磁気特性を担う磁性層は、特性上の制約があるため弾性率制御は主に非磁性層側で行うことが望ましい。また、上記(A)〜(F)の中では、特に非磁性層中の空隙に関連する要因の影響が高く、具体的には、非磁性層中の非磁性粉末サイズ、非磁性粉末と結合剤の混合比、非磁性層中の結合剤の極性基種および極性基量、カーボンブラックのサイズ、混合比等の影響が大きい。非磁性粉末は、平均粒子サイズが5nm〜50nm程度であれば、非磁性層中の空隙が減少することと空隙が微細化することで弾性率を高めることができる。カーボンブラックは、サイズと添加量の両方が空隙に関連する。一般にカーボンブラックのサイズを大きくすると分散しやすくなり非磁性層中の空隙が減少し複合弾性率が向上する。カーボンブラックの平均粒径は、好ましくは10〜50nm、更に好ましくは10〜40nmである。一方、カーボンブラックの添加量は少ないと分散しやすくなり非磁性層中の空隙が減少し複合弾性率が向上する。またその他、公知の結合剤の中で弾性率が高いものを使用することも有効である。また、非磁性層に含まれる結合剤が、非磁性粉末、カーボンブラックといった粒状物質を高度に分散できるものであれば、非磁性層中の空隙が減少し複合弾性率が向上する。この点から好ましい結合剤としては、スルホン酸(塩)基を含むもの(好ましくはスルホン酸(塩)基濃度が0.04〜0.5meq/g)を挙げることができる。なお本発明において、スルホン酸(塩)基とは、スルホン酸基(−SO3H)とスルホン酸塩基(例えば−SO3Na、−SO3K等)を含む意味で用いるものとする。
また、上記(E)の下塗り層としては、放射線硬化型樹脂ないし放射線硬化型化合物を含有する放射線硬化性組成物に放射線を照射し形成される放射線硬化層が好ましい。放射線硬化層の厚さおよび処方により、上記複合弾性率を制御することができる。
本発明では、以上の点も考慮したうえで、上記(A)〜(F)を任意に組み合わせることで、磁性層表面で測定される複合弾性率を所望の範囲に制御することができる。
要件(5)
本発明では、上記(1)〜(4)を満たしたうえで、磁性層表面の光学式三次元粗さ計により測定される中心線平均表面粗さRaを0.2〜1.5nmの範囲とする。磁性層表面Raが1.5nmを超えるとスペーシング変動の増大により電磁変換特性が低下する。上記Raは小さいほどスペーシング変動抑制の観点から望ましいが、0.2nm未満とすることは現在の製造技術では困難である。そのため本発明では、上記Raの下限値を0.2nmとする。上記Raは、よりいっそうのスペーシング変動抑制の観点からは、1.0nm以下であることが好ましく、0.6nm以下であることがより好ましい。
本発明において光学式三次元粗さ計により測定される中心線平均表面粗さRaは、非接触光学式粗さ測定機(装置:Zygo社製New View 5022)を用い、20倍対物レンズを使用して測定対象表面の測定面積350μm×260μmにおいて測定される中心線平均表面粗さRaをいうものとする。
本発明の磁気テープの構成としては、非磁性層が非磁性支持体上に直接形成されている態様と、非磁性層と非磁性支持体との間に下塗り層が形成されている態様を挙げることができる。前者の場合、前記Raを制御するためには、非磁性支持体として、うねりが低減されたもの、具体的には、非磁性層を有する表面の光学式三次元粗さ計により測定される中心線平均表面粗さRaが0.1〜1.5nmの範囲であるものを使用することが好ましい。そのような支持体は、市販品として入手可能であり、また公知の製造方法において製造条件を調整することにより作製することができる。後者の場合には、例えば、光学式三次元粗さ計により測定される中心線平均表面粗さRaが0.1〜2.5nmの範囲である非磁性支持体表面、好ましくは光学式三次元粗さ計により測定される中心線平均表面粗さRaが0.1〜1.5nmの範囲である非磁性支持体表面に、レベリング効果の高い放射線硬化型樹脂を使用して下塗り層を形成することが好ましい。
本発明の磁気テープは、以上説明した要件(1)〜(5)を兼ね備えることにより、優れた電磁変換特性と摩擦特性を両立することができる。
次に、本発明の磁気テープについて、更に詳細に説明する。
磁性層
(i)強磁性粉末
磁性層に含まれる強磁性粉末としては、六方晶フェライト粉末および強磁性金属粉末を挙げることができる。
なお、強磁性粉末の平均粒子サイズは、以下の方法により測定することができる。
強磁性粉末を、日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いて粒子を撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして粒子写真を得る。粒子写真から目的の磁性体を選びデジタイザーで粉体の輪郭をトレースしカールツァイス製画像解析ソフトKS−400で粒子のサイズを測定する。500個の粒子のサイズを測定する。上記方法により測定される粒子サイズの平均値を強磁性粉末の平均粒子サイズとする。
本発明において、以下に記載する強磁性粉末等の粉体のサイズ(以下、「粉体サイズ」と言う)は、(1)粉体の形状が針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粉体を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、(2)粉体の形状が板状乃至柱状(ただし、厚さ乃至高さが板面乃至底面の最大長径より小さい)場合は、その板面乃至底面の最大長径で表され、(3)粉体の形状が球形、多面体状、不特定形等であって、かつ形状から粉体を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
また、該粉体の平均粉体サイズは、上記粉体サイズの算術平均であり、500個の一次粒子について上記の如く測定を実施して求めたものである。一次粒子とは、凝集のない独立した粉体をいう。
また、該粉体の平均針状比は、上記測定において粉体の短軸の長さ、即ち短軸長を測定し、各粉体の(長軸長/短軸長)の値の算術平均を指す。ここで、短軸長とは、上記粉体サイズの定義で(1)の場合は、粉体を構成する短軸の長さを、同じく(2)の場合は、厚さ乃至高さを各々指し、(3)の場合は、長軸と短軸の区別がないから、(長軸長/短軸長)は、便宜上1とみなす。
そして、粉体の形状が特定の場合、例えば、上記粉体サイズの定義(1)の場合は、平均粉体サイズを平均長軸長と言い、同定義(2)の場合は平均粉体サイズを平均板径と言い、(最大長径/厚さ乃至高さ)の算術平均を平均板状比という。同定義(3)の場合は平均粉体サイズを平均直径(平均粒径、平均粒子径ともいう)という。粉体サイズ測定において、標準偏差/平均値をパーセント表示したものを変動係数と定義する。
六方晶フェライトとしては、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等が挙げられる。また、六方晶フェライトの平均板径は、10〜100nmであることが好ましく、より好ましくは10〜60nmであり、特に好ましくは10〜50nmである。特にトラック密度を上げるためMRヘッドで再生する場合、低ノイズにする必要があるため、平均板径は60nm以下、更には50nm以下であることが好ましい。10nmより小さいと熱揺らぎのため安定な磁化が望めない。100nmを越えるとノイズが高く、いずれも高密度磁気記録には向かない。六方晶フェライトの抗磁力Hcは高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。本発明で使用される六方晶フェライトのHcは2000〜4000Oe(160〜320kA/m)程度であることが好ましい。本発明で使用可能な六方晶フェライトの詳細については、例えば特開2009−54270号公報段落[0034]〜[0037]を参照できる。
強磁性金属粉末としては、特に制限されるべきものではないが、α−Feを主成分とする強磁性金属粉末を用いることが好ましい。これらの強磁性金属粉末には、所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。特に、Al、Si、Ca、Y、Ba、La、Nd、Co、Ni、Bの少なくとも1つをα−Fe以外に含むことが好ましく、Co、Y、Alの少なくとも一つを含むことがさらに好ましい。磁性層に使用される強磁性金属粉末のBET法による比表面積は、45〜100m2/gであることが好ましく、より好ましくは50〜80m2/gである。45m2/g以上であれば低ノイズであり、100m2/g以下であれば良好な表面性を得ることができる。強磁性金属粉末の平均長軸長は10nm以上150nm以下であることが好ましく、より好ましくは20nm以上150nm以下であり、さらに好ましくは30nm以上120nm以下である。強磁性金属粉末の平均針状比は3以上15以下であることが好ましい。強磁性金属粉末のσsは100〜180A・m2/kgであることが好ましく、より好ましくは110〜170A・m2/kgである。強磁性金属粉末の抗磁力Hcは2000〜3500Oe(160〜280kA/m)であることが好ましく、更に好ましくは2200〜3000Oe(176〜240kA/m)である。本発明で使用可能な強磁性金属粉末の詳細については、例えば特開2009−54270号公報段落[0038]〜[0041]を参照できる。
(ii)添加剤
磁性層、更に後述する非磁性層には、必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、研磨剤、潤滑剤、分散剤・分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、溶剤などを挙げることができる。上記添加剤の具体例等の詳細については、例えば特開2009−54270号公報段落[0043]、[0049]および[0050]を参照できる。本発明で使用されるこれらの添加剤は、磁性層、さらに後述する非磁性層でその種類、量を必要に応じて使い分けることができる。また本発明で用いられる添加剤のすべてまたはその一部は、磁性層または非磁性層用の塗布液の製造時のいずれの工程で添加してもよい。例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。
中でも本発明では、磁性層に添加剤として、上記非磁性フィラーとは異なる素材からなる粒状物質を含むことができる。そのような粒状物質としては、一般に研磨剤として添加される無機粉末を使用することができる。なお、本発明において磁性層に含まれる研磨剤とは、同層に含まれる非磁性フィラーよりもモース硬度の高い粒状物質をいうものとする。例えば、シリカ粒子のモース硬度は7であるため、シリカ粒子を非磁性フィラーとして含む磁性層では、モース硬度8超の粒状物質が研磨剤に相当する。磁性層に研磨剤を含むことにより、磁性層の研磨性を高めヘッド付着物を除去することができる。上記研磨剤としては、磁性層の研磨性を高める観点から、モース硬度8超の無機粉末を使用することが好ましく、モース硬度9以上の無機粉末を使用することがより好ましい。モース硬度の最大値は、ダイヤモンドの10である。具体的には、アルミナ(Al23)、炭化珪素、ボロンカーバイド(B4C)、TiC、酸化セリウム、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ダイヤモンド粉末を挙げることができ、中でもアルミナ、炭化珪素、およびダイヤモンドが好ましい。これら無機粉末は針状、球状、サイコロ状等のいずれの形状でもよいが、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好ましい。なお、このような研磨剤として使用される無機粉末により磁性層表面に突起を形成し摩擦特性を向上することも考えられるが、研磨剤により形成される突起のみで摩擦特性を維持し得る量の磁性層表面突起を形成すると研磨能が高くなりすぎヘッドダメージが顕著となる。他方、ヘッドに大きなダメージを与えない範囲で研磨剤により突起を形成すると摩擦特性を維持することが困難となる。そこで本発明では、非磁性フィラーと研磨剤を併用することが好ましい。研磨剤によりヘッドに大きなダメージを与えることを回避する観点から、研磨剤の平均粒径は、10〜300nmであることが好ましく、30〜250nmであることがより好ましく、50〜200nmであることが更に好ましい。その添加量は、強磁性粉末100質量部あたり1〜20質量部とすることが好ましく、2〜15質量部とすることがより好ましく、3〜10質量部とすることが更に好ましい。また、研磨剤の平均粒径は、ヘッド磨耗を低減する観点からは、非磁性フィラーの平均粒径よりも小さいことが好ましい。
(iii)結合剤
本発明において、磁性層、および後述する非磁性層に使用する結合剤としては、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物を挙げることができる。その詳細については、例えば特開2009−54270号公報段落[0044]〜[0049]を参照できる。また、前述の通り、使用する結合剤により磁性層表面で測定される複合弾性率を制御することもできる。結合剤の添加量は、磁性層については強磁性粉末100質量部あたり5〜30質量とすることが好ましく、非磁性層については非磁性粉末100質量部あたり10〜20質量部とすることが好ましい。結合剤とともにポリイソシアネート化合物等の硬化剤を使用することもできる。その使用量は適宜設定可能である。
非磁性層および磁性層の形成は、非磁性層塗布液が湿潤状態にあるうちに磁性層塗布液を塗布する同時重層塗布(wet-on-wet)により行ってもよく、非磁性層塗布液が乾燥した後に磁性層塗布液を塗布する逐次重層塗布(wet-on-dry)により行ってもよい。これら塗布方法の詳細については、特開2009−54270号公報段落[0077]を参照できる。磁性層表面に摩擦特性向上に有効な突起を適切な量で形成するためには、磁性層中の非磁性フィラーや研磨剤成分が非磁性層へ沈み込む量が少ないことが好ましい。この点からは、上記逐次重層塗布を行うことが好ましい。
非磁性層
本発明の磁気テープは、非磁性支持体と磁性層との間に、非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層を有する。非磁性層に用いられる非磁性粉末は、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機化合物から選択することができる。無機化合物としては、例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどを単独または組合せで使用することができる。特に好ましいものは、粒度分布が小さく、機能付与の手段が多いこと等から、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいものは二酸化チタン、α−酸化鉄である。これら非磁性粉末の平均粒子サイズは、前述の通り5〜50nmの範囲であることが好ましい。非磁性粉末の比表面積は1〜100m2/gであることが好ましく、より好ましくは5〜80m2/g、更に好ましくは10〜75m2/gである。非磁性層に使用可能な非磁性粉末の詳細については、例えば特開2009−54270号公報段落[0051]〜[0053]を参照できる。また、非磁性層には、公知の添加剤を使用することができる。
非磁性層の結合剤樹脂、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は、磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤樹脂量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
非磁性支持体
本発明に用いることのできる非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドが好ましい。
これらの支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行ってもよい。また、本発明に用いることのできる非磁性支持体の表面粗さは、前述の通り、非磁性支持体上に直接非磁性層を形成する場合には、非磁性層を形成する表面の光学式三次元粗さ計により測定される中心線平均表面粗さRaが0.1〜1.0nmの範囲の支持体が好ましい。一方、前述の通りレベリング効果の高い放射線硬化型樹脂を使用して下塗り層を形成することにより磁性層表面のうねりを低減する場合には、下塗り層を形成する非磁性層表面の光学式三次元粗さ計により測定される中心線平均表面粗さRaは、0.1〜2.0nmの範囲であることが好ましく、0.1〜1.0の範囲であることがより好ましい。また、前述のように、磁性層表面において測定される複合弾性率を、非磁性支持体の力学特性によって制御することも可能である。
バックコート層
一般に、コンピュータデータ記録用の磁気テープは、ビデオテープ、オーディオテープに比較して繰り返し走行性が強く要求される。このような高い保存安定性を維持させるために、非磁性支持体の磁性層が設けられた面とは反対の面にバックコート層を設けることもできる。バックコート層用塗布液は、研磨剤、帯電防止剤などの粒子成分と結合剤とを有機溶媒に分散させることにより形成することができる。粒状成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができる。また、結合剤としては、例えば、ニトロセルロース、フェノキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独またはこれらを混合して使用することができる。
層構成
本発明の磁気テープにおいて、非磁性支持体の好ましい厚さは3〜10μmである。また、上記バックコート層の厚さは、例えば0.1〜1.0μm、好ましくは0.2〜0.8μmである。
本発明の磁気テープにおける磁性層の厚さおよび非磁性層の厚さについては前述の通りである。なお、本発明の磁気テープの非磁性層は、実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、例えば不純物として、あるいは意図的に少量の磁性体を含んでいても、本発明の効果を示すものであり、本発明の磁気テープと実質的に同一の構成とみなすことができる。なお、実質的に同一とは、非磁性層の残留磁束密度が10mT(100G)以下または抗磁力が7.96kA/m(100 Oe)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力を持たないことを意味する。
製造方法
磁性層、非磁性層等の各層を形成するための塗布液を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなることが好ましい。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる強磁性粉末、非磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。
各層形成用塗布液を調製するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層用塗布液および非磁性層用塗布液を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。ガラスビーズ以外には、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
磁性層塗布液、非磁性層塗布液、更にはバックコート層塗布液を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば(株)総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。また、塗布工程後の媒体には、磁性層の配向処理、表面平滑化処理(カレンダー処理)、熱処理等の各種の後処理を施すことができる。これら後処理は、公知の方法で行うことができる。一例として、カレンダ圧力は、例えば200〜500kN/m、好ましくは250〜350kN/mであり、カレンダ温度は、例えば70〜120℃、好ましくは80〜100℃であり、カレンダ速度は、例えば50〜300m/min、好ましくは100〜200m/minである。本発明の磁気テープにおける磁性層側塗布層は従来の媒体と比べて塑性変形しにくいため、裏写りや磁性層中の非磁性フィラーの沈み込みを低減することができる。その反面、カレンダー処理による形状変化は小さいが、カレンダー処理を補う手段(例えば平滑な非磁性支持体の使用、下塗り層の形成)を適宜採用することにより磁性層表面のうねりを低減すれば、磁性層側塗布層のカレンダー処理による形状変化が小さいとしても、スペーシング変動の低減された磁気テープを得ることができる。
通常、磁気テープは、使用環境における寸度安定性の改良、熱硬化性の硬化剤を添加した磁性層、バックコート層などの硬化促進などを目的に熱処理が施される。ここでの熱処理温度は、目的に応じて適宜調整することが好ましいが、例えば50℃〜80℃の範囲である。熱処理は、生産性を向上させるために、コア状のものにロール状態に巻いて実施することが好ましく、更には、テープ状に裁断される前の磁気テープをコア状のものにロール状態に巻いて実施することが好ましい。なお前述のカレンダ処理は、磁気テープの熱処理前、熱処理後のいずれか、または、熱処理前後の両方、で実施することができる。従来は上記のようにロール状で熱処理が施されると裏写りが顕著に発生する傾向があったが、本発明では前述の通り、磁性層側塗布層の塑性変形を低減しているため、ロール状で熱処理を施したとしても裏写りが少なくドロップアウトの発生の少ない磁気テープを得ることができる。
得られた磁気テープは、裁断機、打抜機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
以上説明した本発明の磁気テープは、ドロップアウトおよびスペーシング変動が少なく、かつ優れた走行耐久性を示すものであり、長期にわたり高い信頼性をもって使用可能であることが求められる高容量データバックアップ用テープとして好適である。
以下に、本発明を実施例に基づき説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。なお、以下に記載の「部」の表示は、特に断らない限り、「質量部」を示す。
[実施例1]
磁性層塗布液
(磁性液)
バリウムフェライト(平均粒径20nm) 100部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂 14部
(分子量:70,000、SO3Na基:0.2meq/g)
シクロヘキサノン 150部
メチルエチルケトン 150部
(研磨剤液)
研磨剤 ダイヤモンド粉末(平均粒径:80nm) 5部
スルホン酸塩基含有ポリウレタン樹脂 0.3部
(分子量:70,000、SO3Na基:0.2meq/g)
シクロヘキサノン 27部
(シリカゾル)
コロイダルシリカ(平均粒径100nm、粒度分布の変動係数20%)2部
メチルエチルケトン 1.4部
(その他成分)
ステアリン酸 2部
ブチルステアレート 6部
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製コロネート) 2.5部
(仕上げ添加溶剤)
シクロヘキサノン 200部
メチルエチルケトン 200部
非磁性層塗布液
非磁性無機粉末:α−酸化鉄 100部
平均長軸長:10nm 平均針状比:1.9
BET比表面積:75m2/g
カーボンブラック 20部
平均粒径 20nm
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂 18部
(分子量:70,000、SO3Na基:0.2meq/g)
ステアリン酸 1部
シクロヘキサノン 300部
メチルエチルケトン 300部
バックコート層塗布液
非磁性無機粉末:α−酸化鉄 80部
平均長軸長:0.15μm,平均針状比:7
BET被表面積:52m2/g
カーボンブラック 20部
平均粒径20nm
塩化ビニル共重合体 13部
スルホン酸塩基含有ポリウレタン樹脂 6部
フェニルホスホン酸 3部
シクロヘキサノン 155部
メチルエチルケトン 155部
ステアリン酸 3部
ブチルステアレート 3部
ポリイソシアネート 5部
シクロヘキサノン 200部
上記磁性液を、バッチ式縦型サンドミルを用いて24時間分散した。分散メディアとしては、0.5mmΦのジルコニアビーズを使用した。研磨剤液はバッチ型超音波装置(20kHz,300W)で24時間分散した。これらの分散液を他の成分(シリカゾル、その他成分および仕上げ添加溶剤)と混合後、バッチ型超音波装置(20kHz、300W)で30分処理を行った。その後、0.5μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過を行い磁性層塗布液を作製した。
非磁性層塗布液は、各成分をバッチ式縦型サンドミルを用いて、24時間分散した。分散メディアとしては、0.1mmΦのジルコニアビーズを使用した。得られた分散液を0.5μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過を行い非磁性層用塗布液を作製した。
バックコート層塗布液は、潤滑剤(ステアリン酸およびブチルステアレート)とポリイソシアネート、シクロヘキサノン200部を除いた各成分をオープン型ニーダーにより混練・希釈した後、横型ビーズミル分散機により、1mmΦのジルコニアビーズを用い、ビーズ充填率80%、ローター先端周速10m/秒で、1パス滞留時間を2分とし、12パスの分散処理を行った。その後残りの成分を分散液に添加し、ディゾルバーで攪拌した。得られた分散液を1μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過しバックコート層塗布液を作製した。
これらの液を厚み5μmのポリエチレンナフタレート製支持体(幅方向ヤング率:8GPa、縦方向ヤング率:6GPa)の表面(後述の方法で測定した中心線表面粗さ(Ra値)0.5nm)上に、乾燥後の厚みが100nmになるように非磁性層塗布液を塗布、乾燥した後、その上に乾燥後の厚みが70nmになるように磁性層塗布液を塗布した。この磁性層塗布液が未乾状態にあるうちに磁場強度0.3Tの磁場を、塗布面に対し垂直方向に印加し垂直配向処理を行った後乾燥させた。その後支持体の反対面に乾燥後の厚みが0.4μmになるようにバックコート層塗布液を塗布、乾燥させた。
その後金属ロールのみから構成されるカレンダで、速度100m/分、線圧300kg/cm、温度100℃で表面平滑化処理を行い、その後70℃のDry環境で36時間熱処理を行った。熱処理後1/2インチ幅にスリットし、磁気テープを得た。
[実施例2]
磁性層の厚みを100nmに変更した以外は実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[実施例3]
磁性層の厚みを60nmに変更した以外は実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[実施例4]
非磁性層の厚みを50nmに変更した以外は実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[実施例5]
非磁性層の厚みを200nmに変更した以外は実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[実施例6]
支持体を、磁性層形成側の表面の後述の方法で測定される中心線表面粗さ(Ra値)が1.3nmであるポリエチレンナフタレート製支持体に変更した以外は実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[実施例7]
使用するコロイダルシリカを平均粒径が200nmのものに変更し、磁性層の厚みを170nmに変更した以外は、実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[実施例8]
使用するコロイダルシリカを平均粒径が50nmのものに変更し、磁性層の厚みを50nmに変更した以外は実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[実施例9]
磁性層の厚みを50nmに変更した以外は実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[実施例10]
使用するコロイダルシリカを平均粒径が50nmのものに変更し、磁性層の厚みを30nmに変更した以外は実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[実施例11]
使用するコロイダルシリカの平均粒径を200nmに、磁性層の厚みを200nmに、非磁性層塗布液で使用するポリウレタン樹脂のSO3Na基の含有量を0.3meq/gに変更した以外は実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[実施例12]
支持体を、磁性層形成側の表面の後述の方法で測定される中心線表面粗さ(Ra値)が1.5nmであるポリエチレンナフタレート製支持体に変更し、非磁性層を塗布する前に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄科学製DPE6A)100部、メチルエチルケトン400部からなる、中間層(下塗り層)用塗布液を、乾燥後の厚みが0.15μmになるように支持体表面に塗布・乾燥後、加速電圧125keV、照射エネルギー20kGyの電子線を照射し、同塗布層を硬化させ放射線硬化層を形成した。その後、形成した放射線硬化層表面に非磁性層を形成した。以上の点以外は実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[実施例13]
使用する非磁性フィラーをコロイダルシリカから有機ポリマー粒子(平均粒径100nm、粒度分布の変動係数40%)に変更し、磁性液成分と共に分散を実施した。以上の点以外は実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[実施例14]
使用する非磁性フィラーをコロイダルシリカから有機ポリマー粒子(平均粒径100nm、粒度分布の変動係数50%)に変更し、磁性液成分と共に分散を実施した。以上の点以外は実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[比較例1]
使用するコロイダルシリカを平均粒径が200nmのものに変更した以外は、実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[比較例2]
使用するコロイダルシリカを平均粒径が50nmのものに変更した以外は、実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[比較例3]
非磁性層厚みを25nmに変更した以外は、実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[比較例4]
非磁性層厚みを250nmに変更した以外は、実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[比較例5]
支持体を、磁性層形成側の表面の後述の方法で測定される中心線表面粗さ(Ra値)が2.5nmであるポリエチレンナフタレート製支持体に変更した以外は実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[比較例6]
支持体を、磁性層形成側の表面の後述の方法で測定される中心線表面粗さ(Ra値)が2.0nmであるポリエチレンナフタレート製支持体に変更し、非磁性層を塗布する前に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄科学製DPE6A)100部、メチルエチルケトン400部からなる、中間層(下塗り層)用塗布液を乾燥後の厚みが0.5μmになるように支持体表面に塗布・乾燥後、加速電圧125keV、照射エネルギー20kGyの電子線を照射し、同塗布層を硬化させ放射線硬化層を形成した。形成した放射線硬化層表面に非磁性層を形成した。以上の点以外は実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[比較例7]
支持体の素材をポリアラミド(幅方向ヤング率:16GPa、縦方向ヤング率:10GPa)へと変更した以外は実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[比較例8]
使用するコロイダルシリカを平均粒径が300nmのものに変更し、磁性層の厚みを250nmにし、非磁性層塗布液で使用するポリウレタン樹脂のSO3Na基の含有量を0.3meq/gに変更した以外は、実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[比較例9]
使用するコロイダルシリカを平均粒径が50nmのものに変更し、磁性層の厚みを25nmにした以外は、実施例1と同様に磁気テープを作製した。
[比較例10]
非磁性層の厚みを250nmに変更した以外は、比較例6と同様に磁気テープを作製した。
評価方法
(a)光学式三次元粗さ計により測定される中心線平均表面粗さRa
磁性層表面の中心線平均表面粗さRaを、非接触光学式粗さ測定機(装置:Zygo社製New View 5022)を用い、20倍対物レンズを使用して測定面積350μm×260μmで測定した。非磁性支持体の中心線平均表面粗さRaも同様の方法で測定した値である。
(b)複合弾性率
磁性層表面においてHysitron Inc.製 Tribo Indenterによってダイヤモンド製の球形圧子(先端R:1.3μm)を用いて単一押し込み測定により複合弾性率を求めた。最大圧入深さ100nmで、最大圧入深さまでの圧入(除荷)時間11秒で3回測定した値の平均値を、磁性層表面で測定される複合弾性率とした。
(c)SNRの測定
テープ送り速度4m/分のリールテスタにおいて、記録ヘッド(ヘッド飽和磁束密度Bs:1.8T、ヘッドギャップ:0.2μm)を用いて記録した信号を、再生ヘッド(トラック幅:0.2μm、sh−sh間距離:0.08μm)により再生した。記録信号は250kfciの出力とし、250kfci近傍の−0.1MHzから−1MHzの積算をノイズとしたときの信号とノイズの比をSNRとした。
(d)ドロップアウトの測定
上記SNR測定と同様の記録再生を行い、テープ送り長さ1m当たりで0.5μm以上の大きさで60%以上出力低下したものをドロップアウトとしてカウントした。
(e)摩擦係数の測定
磁気テープ表面を、10mm/secの速度でAFMにより測定された中心線平均表面粗さRaが5nmの円筒SUS棒に対して加重100gで繰り返し100往復摺動したときの摩擦係数を求めた。
以上の結果を、表1に示す。上記方法により測定されるSNRが2.0以上、ドロップアウトが600以下、摩擦係数が0.35以下(好ましくは0.30以下)であれば、高容量データバックアップ用テープとして望ましい電磁変換特性と摩擦特性を兼ね備えていると判断することができる。
Figure 0005204249
Figure 0005204249
評価結果
表1に示すように、前述の要件(1)〜(5)を兼ね備えた実施例の磁気テープは、SNRが2.0以上、ドロップアウトが600以下、摩擦係数が0.35以下であり、高容量データバックアップ用テープとして望ましい電磁変換特性と摩擦特性を兼ね備えたものであった。中でも実施例1〜5、12、13の磁気テープが、他の実施例と比べてドロップアウトが少なく、SNRが高かったことは、裏写りの抑制とスペーシングロスの低減が効果的に達成された結果と考えられる。
これに対し比較例1〜10の磁気テープが、1つ以上の評価項目において実施例と比べて劣る結果を示した理由は、それぞれ以下の通りと考えられる。
比較例1:φ/tが2.0超であったため、磁性層表面からの非磁性フィラーの突出量が過剰となりスペーシングロスが増大した結果、SNRが低下した。
比較例2:φ/tが1.0未満であり磁性層表面における非磁性フィラーの突出が不十分であったためヘッドと磁性層表面が摺動する際に摩擦係数が増大し、また摺動特性が低下したためにSNRも低下した。
比較例3:非磁性層の厚さが30nm未満と薄く、十分な出力が得られないためSNRが低下した。
比較例4:非磁性層が厚く(200nm超)、かつ磁性層表面で測定される複合弾性率が8.0GPaを超えたことから磁性層側塗布層において塑性変形する部分および塑性変形量が多くなり、SNR、ドロップアウト、摩擦係数のすべてが実施例と比べて劣る結果となった。
比較例5:磁性層表面のRaが高く(1.5nm超)、磁性層表面のうねりによるスペーシング変動が顕著に発生したことからSNRが大きく低下した。摩擦係数が高い理由は、磁性層表面のうねりが大きいため、うねりの頂点部分の突起のみで接触して該突起が削れてしまったことが原因と推察される。また、磁性層表面のうねりが大きいことに起因する出力変動により、磁性層表面のRaが所定範囲内ではドロップアウトとしてカウントされない凹みがドロップアウトとしてカウントされたことが、ドロップアウト増大の原因と考えられる。
比較例6:磁性層表面で測定される複合弾性率が6.0GPa未満であり、磁性層中の非磁性フィラーが磁性層表面で有効な突起として存在できなかったことから摩擦が上昇して、SNRが低下した。
比較例7:磁性層表面で測定される複合弾性率が8.0GPa超であったことから、裏写りによるドロップアウトが顕著し、かつ走行中に摩擦特性向上に寄与する突起を磁性層表面に存在させることができないために摩擦係数が増大した。
比較例8:磁性層が厚い(200nm超)ため、出力が低いことと、摩擦係数が高く出力変動によりノイズが増大したことから、SNRが大きく低下した。比較例8では、φ/tが1〜2の範囲内であっても磁性層が厚い(200nm超)ため、粗大な非磁性フィラーの存在が許容される。その結果、非磁性フィラーの粒子個数が減少し十分な数の突起を形成できなかったことが、摩擦係数増大の原因と推察される。ドロップアウト増大の理由は、粗大な非磁性フィラーが磁性層表面に高い突起を形成することと、十分な数の突起を形成できなかったことから出力変動が発生して凹みの影響を受けやすいことにあると考えられる。
比較例9:磁性層が薄く(30nm未満)、十分な出力が得られないためSNRが低下した。また、比較例9は磁性層が薄いために磁性層厚み変動が相対的に大きいと考えられる。これにより出力変動が大きくなり凹みの影響を受けやすいことが、ドロップアウト増大の原因と推察される。
比較例10:非磁性層が厚く(200nm超)、塑性変形する部分が多いことから磁性層中の非磁性フィラーの非磁性層への沈み込みによる摩擦係数増大および裏写りによるドロップアウトの増大が発生した。SNRが低いことは、摩擦係数が高いことによるものと考えられる。
本発明の磁気テープは、コンピュータバックアップ用テープとして好適である。

Claims (12)

  1. 非磁性支持体の一方の表面上に、非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層を有し、該非磁性層上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気テープであって、
    前記磁性層は、平均粒径φが磁性層厚tと、下記式(I):
    1.0≦φ/t≦2.0 …(I)
    の関係を満たす非磁性フィラーを含み、かつ上記tは30〜200nmの範囲であり、
    前記非磁性層は、厚みが30〜200nmであり、
    前記磁性層表面で測定される複合弾性率は6.0〜8.0GPaの範囲であり、
    前記磁性層表面の光学式三次元粗さ計により測定される中心線平均表面粗さRaは0.2〜1.5nmの範囲であることを特徴とする磁気テープ。
  2. 前記非磁性フィラーは、無機酸化物粒子および有機ポリマー粒子からなる群から選択される請求項1に記載の磁気テープ。
  3. 前記非磁性フィラーは、コロイド粒子である請求項1または2に記載の磁気テープ。
  4. 前記非磁性フィラーは、シリカコロイド粒子である請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気テープ。
  5. 前記磁性層は、前記非磁性フィラーを強磁性粉末100質量部に対して0.3〜20質量部含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気テープ。
  6. 前記磁性層は、前記非磁性フィラーとは異なる素材からなる粒状物質を更に含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気テープ。
  7. 前記非磁性支持体の磁性層側表面において光学式三次元粗さ計により測定される中心線平均表面粗さRaは、0.1〜1.5nmの範囲である請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気テープ。
  8. 前記非磁性層と非磁性支持体との間に、放射線硬化層を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気テープ。
  9. 前記非磁性層に含まれる非磁性粉末の平均粒子サイズは、5〜50nmの範囲である請求項1〜8のいずれか1項に記載の磁気テープ。
  10. 前記非磁性層に含まれる結合剤は、スルホン酸(塩)基を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の磁気テープ。
  11. 前記非磁性層に含まれる結合剤のスルホン酸(塩)基濃度は、0.04〜0.5meq/gの範囲である請求項10に記載の磁気テープ。
  12. 前記非磁性支持体の他方の表面上にバックコート層を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の磁気テープ。
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