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JP5204098B2 - 変速機 - Google Patents

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JP5204098B2
JP5204098B2 JP2009508133A JP2009508133A JP5204098B2 JP 5204098 B2 JP5204098 B2 JP 5204098B2 JP 2009508133 A JP2009508133 A JP 2009508133A JP 2009508133 A JP2009508133 A JP 2009508133A JP 5204098 B2 JP5204098 B2 JP 5204098B2
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Description

本発明は、入力軸と出力軸間のギア比を発生させる変速機に関する。変速機は、環状リングと、変速機の中心軸周りに回転可能な太陽歯車と、変速機の中心軸周りに回転可能な遊星キャリアと、一組の遊星歯車とから構成される。遊星歯車は、遊星キャリアの回転軸受けに固定されていて、中心軸の回りに公転するように配置されている。そのような変速機は、作動力歯車装置または遊星歯車装置と呼ばれることもある。
変速機またはギアボックスは、機械的な動力を、例えばエンジンや電動モータ等の原動機から、何らかの出力装置へと伝達する装置である。代表的には、入力軸の回転速度を変えて、異なる出力速度を発生させる。しかし、中には、動力を伝達する物理的な方向を変換するだけのトランスミッションも存在する。
遊星歯車システムは1または2以上の遊星歯車を備え、これら遊星歯車は、中心に配置された太陽歯車の周りを回転する。遊星歯車は、可動キャリアに取り付けられる場合もある。キャリアは、ハウジングに固定してもよいし、ハウジングおよび(または)太陽歯車に対して回転させるようにしてもよい。
変速機は、半径方向内向きに突出する歯を有する外側リング歯車を更に備えていてもよい。この歯車は、一般的に環体(annulus)と呼ばれる。
EP1 232 683は、擬似-遊星運動力学変速機(pseudo-planetary kinematic transmission)のためのトレイン・ハウジングを開示している。この変速機は、太陽歯車、内部リング歯車、および遊星歯車対を備える。各遊星歯車対は、2つの遊星歯車で構成されている。図示された変速機においては、大きなベアリングを使用することが可能であるが、シンプルで、信頼性が高く、コスト低減が可能なギア構成で大きなギア比を得ることについては、言及されていない。
従来の遊星歯車においては、異なるギア比間で切替え(シフティング)を行うために、複雑な歯車構成が必要であった。本発明の各実施例の目的は、変速機(特に、電動工具および車両用の変速機)を改善することである。
課題を解決するための手段および発明の効果
本発明の第1局面により提供される変速機においては、各遊星歯車が異なる複数の歯車セグメントを備え、環状リングおよび太陽歯車が、そのうちの1つの歯車セグメントと係合する。
この変速機は、シフトアレンジメントを構成する選択手段によって、2つの環状リングが基準系に対してロックまたは部分的にロックされ得ることを特徴とする。
本発明によって、非常にシンプルで、信頼性が高く、コスト低減が可能な構成が提供される。本発明の構成は、ギア比が大きな場合であっても、僅かのギア構成要素で実現することができる。

係合とは、歯車セグメントと太陽歯車が、何らかの駆動機構によって互いに影響を与え合うことを意味する。例えば、歯の噛み合い、表面摩擦、牽引力、磁力等によるもので、係合している要素間において、トルクが伝達される。
ギア比とは、入力軸の回転速度と出力軸の回転速度の比である。この比は、1:1を含めて、どのような数値であってもよい。
遊星歯車は、幾つかの歯車セグメントから構成されているので、遊星歯車と太陽歯車の係合は、遊星歯車と環状リングの係合とは異なるものとすることが可能である。それ故、係合は、変速機の使用に関する特別の条件を考慮して設計することができる。例えば、防音性、フレキシビリティ等である。
本発明の変速機は、従来の変速機に比べて、少ない係合部品の使用で、容易に大きなギア比を発生させる。潜在的に大きなギア比が可能であるため、非常にコンパクトな歯車装置を提供することが可能となる。
一例を挙げると、遊星歯車は、太陽歯車および環状リングに対して、全く異なる係合原理をもって係合することが可能である。太陽歯車に対しては、1つの歯車セグメントがギア歯をもって係合し、環状リングに対しては、他の歯車セグメントが牽引力、磁力、その他を介して係合することが可能である。
他の例を挙げると、遊星歯車は、歯の噛み合いを介して、太陽歯車および環状リングの両方と係合するが、太陽歯車と係合する歯と、環状リングと係合する歯とは異なる。
1組の歯が、他の組の歯よりも大きなトルクを伝えるようにしてもよく、1組の歯が、他の組の歯よりも静かにトルクを伝えるようにしてもよく、また、1組の歯が、他の組の歯等よりうまく、最大負荷を吸収するようにしてもよい。その他の構成を採用することも可能である。したがって、1組の歯の幾何学形状が、他の組の歯の幾何学形状と異なっていてもよいし、また、2組の歯を異なる素材で作ることも可能である。
したがって、1つの遊星歯車であっても、そこに含まれる複数の歯車セグメントについて、直径、係合の種類、製造素材が異なっていてもよい。
1つの実施例において、1つの遊星歯車の歯車セグメントは、互いにロックし合って同じ回転速度(1分間の回転数)で回転してもよい。
1つの実施例において、複数の歯車セグメントは、例えば、成形もしくは焼結により、単一の部品として形成してもよい。この単一の部品は、直径が異なるセグメントを複数有する歯車、歯数が異なるセグメントを複数有する歯車、表面摩擦等の表面特性が異なるセグメントを複数有する歯車、その他であってもよい。
1つの実施例では、1つの歯車セグメントが、環状リングおよび太陽歯車の両方と係合するように構成する。この実施例において、変速機は、他の歯車セグメントと係合する環状リングまたは太陽歯車をさらに含んでいてもよい。もしくは、他の歯車セグメントは使用せずに、異なる係合原理、幾何学形状、またはサイズの環状リングまたは太陽歯車を使用して、トランスミッションの再係合を実現してもよい。
入力軸を、太陽歯車または遊星キャリアと共に回転させ、出力軸を、太陽歯車および遊星キャリアの他方と共に回転させてもよい。「共に回転する」とは、入力軸が太陽歯車または遊星キャリアと同じ回転速度で回転することを意味し、また、出力軸が太陽歯車および遊星キャリアの他方と同じ回転速度で回転することを意味する。
入力軸は、単純に太陽歯車または遊星キャリアの一部として形成されるか、またはそれらに対して剛体連結される。一方、出力軸は、太陽歯車および遊星キャリアの他方の一部として形成されるか、またはそれらに対して剛体連結させる。
環状リングは、基準系に対して、少なくとも部分的にロックされてもよい。基準系は、車のシャーシ(台)または電動工具の一部を構成する。通常は、変速機のハウジングに固定される一部分として構成されるか、もしくは、基準系が変速機のハウジングで構成されてもよい。
一例を挙げると、環状リングは、カップリングを介して基準系に接続される。このカップリングは、基準系に対する環状リングの相対的回転に対して可変的な抵抗を与えるか、もしくは完全に相対的回転を防止する。このようにして、相対的回転をロック、部分的にロック、あるいは解除することで、ギア比を変更することができる。または、トルクの伝達を完全に防止できる。
このようにカップリングは、例えば電動ドリル等の電動工具に接続して使用されるが、その場合、トルクが制限値を超えて伝達されるのを防ぐことによって、スクリュー溝を保護することが望ましい。この種のトルクの制限は(ラチェットと呼ばれることがある)、本発明の第2局面によれば、環状リングを少なくとも1つ、カップリングを介して基準系に接続することで達成される。このカップリングは、環状リングと基準系の間のトルクが一定値に達した時に、環状リングを解放して、基準系に対して相対的に回転させる。
遊星歯車、太陽歯車、および環状リングの係合により決定されるギア比と、ギア比1:1との間でのシフティングを可能にするため、変速機は、2つの構成間での使用者によるシフティングを可能ならしめる構成切替手段を有するのがよい。
第1の構成において、入力軸は、太陽歯車および遊星キャリアの一方と共に回転し、出力軸は太陽歯車および遊星キャリアの他方と共に回転し、太陽歯車は、歯車セグメントの1つと係合する。
第2の構成において、例えば入力軸と出力軸を直接連結することで、入力軸は出力軸と共に回転する。
異なるギア比間で任意のシフティングを行うために、変速機は、追加的な少なくとも1つの環状リングと、選択手段とを備える。この選択手段は、基準系に対して環状リングの1つを少なくとも部分的にロックすることを選択する。
変速機が有する複数の環状リングは、異なる半径を有していてもよく、異なる係合原理(例えば、ギア歯による係合、牽引力、磁力等)に適合するものであってもよい。複数の環状リングは、異なるピッチ径、異なる歯数を有していてもよく、異なる素材で造られていてもよい。
1つの実施例において、各環状リングは、内歯を有するギアホイールを構成する。歯車セグメントは、異なるピッチ径の外歯を有するギアホイールを構成する。太陽歯車は、外歯を有するギアを構成する。
本発明の第2局面により、入力軸と出力軸の間にギア比を与える変速機が提供される。この変速機は、以下のものから構成される。

第1環状リング。
第2環状リング。
第1太陽歯車(変速機の中心軸回りに回転可能)。
遊星キャリア(変速機の中心軸回りに回転可能)。
1組の遊星歯車。各遊星歯車は、複数の異なる歯車セグメントを備えている。各遊星歯車は、回転軸受を介して遊星キャリアに取り付けられ、変速機の中心軸の周囲を公転するように配置されている。
複数ある歯車セグメントの1つは、第1環状リングと係合する。他の1つの歯車セグメントは、第2環状リングと係合する。歯車セグメントの1つは、太陽歯車と係合する。この変速機は、環状リング選択手段を備えていてもよい。環状リング選択手段により、基準系に対して、第1環状リングおよび第2環状リングの一方を、少なくとも部分的にロックすることが選択可能となる。
したがって、1つの遊星歯車に含まれる複数の歯車セグメントは、直径において、それら歯車セグメントが適する係合の種類において、あるいは製造材料において、異なっていてもよい。
環状リング選択手段は、多くのギア比間におけるシフティングを簡易に行う手段を提供する。この変速機によれば、多くのギア比中の最小ギア比を、大きな値とすることが容易となる。それにより、たった1つの追加的な構成要素(すなわち、環状リング選択手段)を使用して、小さなギア比のギアへシフトすることが可能となる。
加えて、本発明の第2局面による変速機は、周辺の対象物を保護するためにトルクの解放が望まれる用途に適用可能である。例えば、電動ドリル等の電動工具にあっては、制限値を超えるトルクの伝達を防止することで、スクリュー溝を保護することが望まれる。
本発明の第2局面によれば、この種のトルクの制限は、環状リングの少なくとも1つをカップリングを介して基準系に接続することで達成される。このカップリングは、基準系と環状リングの間のトルクがある値に達した時、基準系に対する環状リングの相対回転を解放し許容する。この種のカップリングは、基準系と各環状リングの間に個別に設けられて、異なる制限トルクで解放を行う。
本発明の変速機は、当該変速機の中心軸回りに回転可能な第2太陽歯車を有していてもよい。この変速機は太陽歯車選択手段を有しており、太陽歯車の1つと歯車セグメントの1つを選択的に係合させる。
本発明の第1局面によれば、入力軸は、太陽歯車または遊星キャリアと共に回転し、出力軸は、太陽歯車および遊星キャリアの他方と共に回転する。
本発明の変速機は、さらに、第1構成と第2構成の間における切替えを使用者が行うことを許容する、構成切替手段を有していてもよい。
第1構成において、入力軸は、太陽歯車および遊星キャリアの一方と共に回転し、出力軸は、太陽歯車および遊星キャリアの他方と共に回転する。また、太陽歯車は、歯車セグメントの1つと係合する。第2構成においては、入力軸は、出力軸と共に回転する。
歯車セグメントは、太陽歯車および少なくとも部分的にロックされている環状リングと係合する。
1つの実施例において、環状リングの各々は、内歯を有するギアホイールであり、各歯車セグメントは、異なるピッチ径の外歯を有するギアホイールである。各太陽歯車は、外歯を有するギアホイールである。
本発明の第3局面により、入力軸と出力軸の間にギア比を与える変速機が提供される。この変速機は、以下のものから構成される。

少なくとも1つの環状リング。
第1太陽歯車(変速機の中心軸回りに回転可能)。
第2太陽歯車(変速機の中心軸回りに回転可能)。
遊星キャリア(変速機の中心軸回りに回転可能)。
1組の遊星歯車。各遊星歯車は、複数の異なる歯車セグメントを備えている。各遊星歯車は、回転軸受を介して遊星キャリアに取り付けられ、変速機の中心軸の周囲を公転するように配置されている。
複数ある歯車セグメントのうちの1つは、環状リングと係合する。変速機は、一方または他方の太陽歯車と、複数ある歯車セグメントのうちの1つと、を選択的に係合させる選択手段を有する。
したがって、1つの遊星歯車に設けられた複数の歯車セグメントは、直径において、好適な係合の種類において、および製造材料において、異なっていてもよい。
選択手段は、ギア比を変更する簡単な方法を提供する。
各太陽歯車が異なる歯車セグメントと定常に係合していてもよく、異なるギア比間におけるシフティングは、太陽歯車の1つに選択的に入力を与え、遊星キャリアに出力を与える(または、その逆)ことで実現される。
太陽歯車の1つを基準系に対して少なくとも部分的にロックするとともに、環状リングを、歯車セグメントとの係合に影響を受けながらも回転自在とすることで、入力軸に対する出力軸の回転方向を変化させることができる。
この方法は、車両や工具の駆動方向を逆転させるのに適している。
本発明の第1局面および第2局面の場合と同様、入力軸は、太陽歯車および遊星キャリアの一方と共に回転し、出力軸は、太陽歯車および遊星キャリアの他方と共に回転する。この装置は、歯車セグメントの1つと係合するように配置された第2環状リングを有してもよく、環状リングの少なくとも1つは、基準系に対して少なくとも部分的にロックされる。
変速機は、さらに、第1構成または第の構成を選択的に切り替える構成切替手段を有していてもよい。第1構成において、入力軸は、太陽歯車および遊星キャリアの一方と共に回転し、出力軸は、太陽歯車および遊星キャリアの他方と共に回転する。太陽歯車は、歯車セグメントの1つと係合する。第2構成において、入力軸は出力軸と共に回転する。
各環状リングは、内歯を有するギアホイールであり、複数ある歯車セグメントは、異なるピッチ径の外歯を有するギアホイールであり、各太陽歯車は、外歯を有するギアホイールである。
上記の変速機、すなわち、第1局面、第2局面、および第3局面による変速機は、電動工具および車両に使用できる。
第4局面において、本発明により、そのような変速機を備えた電動ネジ回し等の電動工具が提供される。第5局面において、本発明により、第1局面、第2局面、および第3局面の変速機(特に、車輪のハブに配置された変速機)を使用する車両が提供される。
電動工具に使用される場合、変速機は特に、環状リングと基準系(例えば、電動ドリルまたはスクリュードライバのシャーシ)の間におけるトルクを解放するのに使用される。この解放は、環状リングと基準系の間のトルクが過大となったときに行われる。
本発明の第6局面により、変速機を介して工具にトルクを伝達するモータを使用する工具駆動方法が提供される。この工具駆動方法で使用する変速機は、以下のものから構成される。

第1環状リング。
第2環状リング。
第1太陽歯車(変速機の中心軸回りに回転可能)。
遊星キャリア(変速機の中心軸回りに回転可能)。
1組の遊星歯車。各遊星歯車は、複数の異なる歯車セグメントを備えている。各遊星歯車は、回転軸受を介して遊星キャリアに取り付けられ、変速機の中心軸の周囲を公転するように配置されている。
1つの遊星歯車に設けられた複数の歯車セグメントは、直径において、好適な係合の種類において、および製造材料において、異なっていてもよい。
複数ある歯車セグメントのうちの1つは、第1環状リングと係合し、他の歯車セグメント車は、第2環状リングと係合する。歯車セグメントの1つは、太陽歯車と係合する。
変速機は、さらに、環状リング選択手段を有していてもよい。環状リング選択手段は、基準系に対して、第1および第2の環状リングの1つを選択的に、少なくとも部分的にロックする。
本発明の方法は、工具を運転する速度とモータの回転速度との比率を、選択手段を使用して変更する工程を含む。
本発明の第7局面において、変速機を介して工具にトルクを伝達するモータを使用する工具駆動方法が提供される。この工具駆動方法で使用する変速機は、以下のものから構成される。

少なくとも1つの環状リング。
第1太陽歯車(変速機の中心軸回りに回転可能)。
第2太陽歯車(変速機の中心軸回りに回転可能)。
遊星キャリア(変速機の中心軸回りに回転可能)。
1組の遊星歯車。各遊星歯車は、複数の異なる歯車セグメントを備えている。各遊星歯車は、回転軸受を介して遊星キャリアに取り付けられ、変速機の中心軸の周囲を公転するように配置されている。
複数ある歯車セグメントのうちの1つは、環状リングと係合する。変速機は、一方または他方の太陽歯車と、複数ある歯車セグメントのうちの1つと、を選択的に係合させる選択手段を有する。1つの遊星歯車に設けられた複数の歯車セグメントは、直径において、好適な係合の種類において、および製造材料において、異なっていてもよい。
本発明の方法は、工具を運転する速度とモータの回転速度との比率を、選択手段を使用して変更することを含む。
本発明の方法は、さらに、複数ある太陽歯車のうちの1つを基準系に対して少なくとも部分的にロックし、各環状リングを対応する歯車セグメントと共に回転させる工程を更に含む。
ロックされていない太陽歯車および遊星キャリアにつき、いずれか一方を介して入力を与え、他方から出力を得ることにより、太陽歯車の1つをロックする上記工程において、出力に対する入力の方向を切り替えることが可能となる。
車両においては、太陽歯車の1つをロックすることで駆動方向を変化させることが可能となる。ネジ回し等の電動工具においては、太陽歯車の1つをロックすることで、工具の左回転または右回転(締結または解除)を選択できるようになる。
本発明の第1、第2、および第3局面に関して詳述した事項は、本発明の第4、第5、および第7局面にも適用可能である。
図1は簡単な実施例を示しており、太陽歯車1は、遊星歯車2のある直径を有する歯車セグメントと係合している。遊星歯車の他方の歯車セグメントは、環状リング3と係合している。環状リングは、基準系に対して、ロックまたは部分的にロックされている。遊星歯車は、回転軸受けを介して、遊星キャリア4に固定されている。
太陽歯車1と遊星歯車2の係合は、歯車の歯の噛み合い、摩擦力、牽引力、磁力等で実現される。遊星歯車2と環状リング3の係合は、歯の噛み合い、摩擦力、牽引力、磁力等で実現され、他の箇所における係合態様とは無関係である。
全ての歯車と環状リング3に歯を設ける場合、太陽歯車と遊星歯車の噛合いについて、遊星歯車と環状リングの噛み合わせとは異なるモジュールまたはギアプロファイルを採用することで、動力特性が最大となり、価格を抑えることができる。
図2は他の実施例を示しており、2つの環状リング(第1環状リング3と第2環状リング6)が、少なくとも1つの遊星歯車2と係合している。この遊星歯車2は、直径が異なる2つの歯車セグメントを有している。さらに、1つの太陽歯車1は、遊星歯車2の一方の歯車セグメントと係合している。遊星歯車2は、回転軸受け5を用いて遊星キャリア4に固定されている。
環状リング3、6は、シフトアレンジメント7を構成する選択手段により、基準系にロックまたは部分的にロックされている。ロックは次のように行う。すなわち、両方の環状リングを同時にロックして、その後、一方のロックを解除して、歯車を機能させる。
この様に、シフティングによって、両方の環状リングを基準系にロックして一種のパーキングブレーキを構成し、入力軸が十分な保持トルクを発生できない時に、出力軸が回転するのを防ぐことができる(パワーオフ)。例えば、工具の交換時に出力軸をロックするのが望ましい電動工具において、この事が特に好適である。
環状リングをロックする別の方法は、両方の環状リングを解除して自由に回転させ、その後、一方の環状リングを基準系にロックする方法である。これにより、システムは慣性で回転することが可能となり、モータを制動することなく、出力軸を急速に制動したい場合に有益である(モータの回転子のエネルギーが、出力軸のエネルギーを超える)。
別の実施例においては、第1環状リングおよび第2環状リングのロックのシフティングは、瞬時に行われる。ある条件が発生するまで環状リングの回転性能に制限を与えるようなやり方で、環状リングを基準系にロックしてもよい。ある条件とは、環状リングに作用する力またはトルクである。例えば、基準系にロックされた環状リングに作用するトルクがあるレベルを超えた時、当該環状リングの基準系へのロックを解除して、スライドまたは回転させる。
この事は、ラチェット等の電動工具においても知られており、出力軸に接続されたモータ、変速機、切削工具への過度の応力が作用することを防ぐ。しかしこの事を、あるトルクが出力軸または入力軸に作用するまで、変速機をロックする場合にも利用できる。それは、パワーが上昇して入力軸が出力軸上の負荷を駆動することが可能となるまで、変速機の位置を保つためである。
環状リング3、6、遊星歯車3、および太陽歯車1は、互いに噛み合う歯車であってもよい。全ての歯車とリング(または、幾つかの歯車とリング)間における係合は、摩擦力または牽引力に基づくものであってもよい。係合域における動力の変換は、歯車およびリングの表面に形成された微少構造に基づくものであってもよい。
2つの環状リングについて、いずれを基準系にロックするかのシフティングは、手動で行ってもよい。例えば、ロックブラケットをスライドさせて、第1環状リングあるいは第2環状リングと交差させて、当該環状リングの自由回転を防止する。このシフティングを電気的な方法で行ってもよい。例えば、磁性ブレーキを使って、環状リングの何れか一方が自由回転するのを防ぎ、歯車を作動させる。
さらに、ある実施例では、そのようなシフティングは、機械的、かつ自動的に行う。1つの実施例では、太陽歯車を入力軸に接続し、遊星キャリアを出力軸に接続する。
図3に示した別の実施例では、環状リング3が1つで、異なる直径の歯車セグメントを2つ有する遊星歯車2が複数存在する。この伝達装置は、2つの太陽歯車(第1太陽歯車1、第2太陽歯車8)を有する。2つの太陽歯車が一体化されて、異なる直径の歯車セグメントを2つ有する単一の部品を構成している。
他の実施例では、2つの太陽歯車が2つの独立した部品を構成してもよい。2つの歯車セグメントは、これら各太陽歯車が、遊星歯車の歯車セグメントの1つと係合できるように選択される。どちらかの太陽歯車が入力軸9からの動力を伝達するかによって、変速機のギア比が変わる。
2つの太陽歯車について、いずれが入力を変速機に伝達するのかのシフティングは、図1に示したようにして行う。すなわち、入力軸9にロッキングのための幾何学形状を持たせ、この幾何学形状を利用して第1太陽歯車を駆動するか、または、入力軸を移動させて第2太陽歯車と係合させて、この歯車によって変速機を駆動する。駆動されていない太陽歯車は、自由回転が可能となる。
図3Aに、他の実施例を示した。環状リング3(ギアの一態様)は、基準系から解除されているが、その代わり、太陽歯車8の1つが基準系にロックされている。これにより、基準系の回転方向が変わり、ギア比も変化する。
図3Bに示した一実施例においては、最も小さい太陽歯車(第1太陽歯車)1が入力軸に接続されている。この太陽歯車は、遊星歯車2と係合することで駆動するか、または移動して、他の太陽歯車8と接続する。このようにして、動力は、両方の太陽歯車を介して伝達される。
この実施例では、第1太陽歯車が遊星歯車と係合し動力を伝達している時は常に、第2太陽歯車は自由回転が可能となる。図1に示した実施例の場合と同様に、歯車は、歯の噛合いにより、または、摩擦力、牽引力もしくは磁力を利用する歯車を介して、互いに係合する。
図4に示した他の好ましい実施例では、図1、2に示した各形態を組み合わせて、多くの異なるギア比を有する1つの変速機を実現している。
この変速機は、太陽歯車1または8について、いずれが入力軸に接続されるのかを切り替える。また、環状リング3または6について、いずれが基準系にロックされるのかを切り替える。
図4Aでは、変速機は特殊な状態にある。環状リング3、6のいずれも基準系にロックされておらず、一方の太陽歯車8が基準系にロックされ、他方の太陽歯車1は入力軸として機能している。
この特殊な変速機においては、4種の前進ギア比と、1の逆進ギア比が可能となる。図1で説明した例では、変速機は、両方の環状リングを基準系にロックさせるか、または、1つの環状リングと1つの太陽歯車を基準系にロックさせることで、変速機全体がロックされていた。
以下の図において、“A”は2段歯車を示し、“B”は短絡接続を示す。“2段歯車”とは、少なくとも2つの異なる構成となって、入/出力間のギア比を異ならせることができる歯車を言う。
図5の実施例では、図1〜3のいずれかの実施例をプレステージ変速機に組み合わせている。プレステージ変速機は、例えば、太陽歯車10、1または2以上の遊星歯車11、遊星キャリア13、環状リング12、および回転軸受け14から構成される遊星変速機である。環状リングは、基準系に全体的または部分的にロックされている。プレステージギアは、一定のギア比を有する。
1つの実施例では、変速機全体でより多くのギア比を実現する他の方法として、プレステージ変速機を任意に選択して、短絡接続を行う(または行わない)。短絡は、このプレステージの環状リングを、基準系ではなくキャリアにロックすることで行う。図5Aはそれを示している。
他の実施例においては、この短絡は、単に、入力軸または太陽歯車を遊星キャリアに直接接続することで行われる。
図6の実施例では、図1〜3のいずれかの実施例をパワーギアステージに組み合わせている。このパワーステージは、遊星変速機であって、太陽歯車15、1または2以上の遊星歯車16、環状リング17、遊星キャリア18、および回転軸受け19を備える。このパワーステージは、あらゆる種類のパワーステージ変速機であってよい。パワーステージ変速機は、任意に選択されて、作動するか、または当該ギア比を省略すべく短絡される。
図6Aは、短絡の一例を示している。パワーステージの環状リングが、基準系ではなく遊星キャリアに接続されている。この一例においては、パワーステージの環状リングは、ラチェット20を介して基準系に接続されて、運転中の変速機の過負荷を防止している。図6Bは、この特別な具体例を示している。
図7に示して実施例では、環状リング3、6の数は2つであるが、遊星歯車2の歯車セグメントの数が環状リングよりも1つ以上多い。図7では、遊星歯車は歯車セグメントを1つ追加的に有しており、この歯車セグメントは、どの環状リングとも係合せず、太陽歯車1とのみ係合する。
この実施例では、異なる種類の係合が実現可能となる。例えば、太陽歯車と遊星歯車の係合、遊星歯車と環状リングの係合について、伝達モジュールが可能になる。
図7Aの実施例では、環状リング21、22を追加しているので、環状リングの数は4つとなる。太陽歯車1は、1つだけである。各環状リングは、基準系にロックされ、もしくは部分的にロックされる。
図7Bの変速機は、図7Aに示したものと同じであるが、ただ太陽歯車8を1つ追加している。この太陽歯車8は、ギア比の数を増やすために使用されている。図7Aでは、4つのギア比が可能となるが、太陽歯車を1つ追加することで、ギア比の数は倍にできる。
追加した太陽歯車は、入力軸に接続された太陽歯車1がスライドして遊星歯車から離れて、追加の太陽歯車の切欠と係合したときに機能する。すなわち、動力を直接遊星歯車に伝える代わりに、この追加の太陽歯車を介して動力を遊星歯車に伝える。2つ以上の太陽歯車を設けて、更にギア比を増やしてもよい。
本発明の様々の実施例を示す図。 上記変速機の特徴を組み合わせてなる変速機を示す図。 何れの環状リングも基準系にロックされていない変速機を示す図。 遊星歯車の数が環状リングの数に等しいか、それ以上である、変速機を示す図。 遊星歯車の数が環状リングの数に等しいか、それ以上である、変速機を示す図。 遊星歯車の数が環状リングの数に等しいか、それ以上である、変速機を示す図。

Claims (9)

  1. 入力軸と出力軸の間にギア比を与える変速機であって、当該変速機は、
    第1環状リング(3)と、
    第2環状リング(6)と、
    変速機の中心軸回りに回転可能な、第1太陽歯車(1)と、
    変速機の中心軸回りに回転可能な、第2太陽歯車(8)と、
    変速機の中心軸回りに回転可能な、少なくとも1つの遊星キャリア(4)と、
    各遊星歯車が、複数の異なる歯車セグメントを備えるとともに、回転軸受(5)を介して遊星キャリア(4)に取り付けられて、変速機の中心軸の周囲を公転するように配置されている、1組の遊星歯車(2)と、を備え、
    第1および第2環状リングのうちの1つ、および第1および第2太陽歯車のうちの1つが、1つの歯車セグメントと係合し、入力軸はいずれかの太陽歯車と共に回転し、出力軸は遊星キャリア(4)と共に回転し、
    第1および第2太陽歯車の1つと、上記複数の異なる歯車セグメントの1つと、を選択的に係合させるよう構成された太陽歯車選択手段をさらに備え、
    第1および第2環状リング(3、6)は、シフトアレンジメント(7)を構成する選択手段によって、基準系に対してロックまたは部分的にロックされるものであって、かつ、第1および第2環状リング(3、6)の両方が同時にロックされ、その後、一方のリングが解放され、
    上記複数の異なる歯車セグメントの1つは、第1環状リングと係合するよう構成されており、他の歯車セグメントは、第2環状リングと係合するよう構成されていることを特徴とする、変速機。
  2. 上記第1太陽歯車は、太陽歯車選択手段に選択されたとき、第2太陽歯車とは異なる歯車セグメントと係合するよう構成されている、請求項1記載の変速機。
  3. 同じ歯車セグメントと係合する環状リングおよび太陽歯車を備える、請求項1記載の変速機。
  4. 少なくとも3つの環状リングを備える、請求項1記載の変速機。
  5. 上記ロックとは、出力軸の回転を防止する制動である、請求項1記載の変速機。
  6. 上記複数の異なる歯車セグメントの1つが、第1太陽歯車および少なくとも部分的にロックされた第1環状リングと係合する、請求項1記載の変速機。
  7. 上記複数の異なる歯車セグメントの1つが、第1太陽歯車および第1環状リングに対して異なる2つの方法で係合する、請求項1記載の変速機。
  8. 上記複数の異なる歯車セグメントの少なくとも2つが、異なる材料でできている、請求項1記載の変速機。
  9. 第1および第2環状リングのそれぞれは、内歯を有するギアホイールであり、
    上記複数の異なる歯車セグメントは、外歯を有しピッチ円直径の異なるギアホイールであり、
    第1太陽歯車および第2太陽歯車のそれぞれは、外歯を有するギアホイールである、請求項1記載の変速機。
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