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JP5201282B1 - 化粧用マスク - Google Patents

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Abstract

【課題】肌への密着性が高く、肌引き締め効果、およびたるんだ頬やフェイスラインのリフトアップ効果に優れた化粧用マスクを提供すること。
【解決手段】非エラストマー性繊維層とエラストマー層とが積層一体化されてなる積層体で構成され、顔面の上下方向へ伸縮性を有する化粧用マスクとし、化粧用マスクの装着時に、こめかみ部、頬部または鼻下部のいずれか一点以上を支点に、顔面の下方向および/または左右斜め下方向に引き伸ばしながら装着する。
【選択図】図1

Description

本発明は、顔面に貼付けて使用する化粧用マスクとその使用方法、および該マスクを使用した美容方法に関する。
従来から不織布に化粧水、美容液、乳液等の化粧液を含浸した化粧用マスクが広く利用されている。該マスクは、簡便に使用でき、得られる美容効果や使用者の心理的満足度が高いことから、人気の高い化粧品アイテムの一つである。該マスクの市場は、今後、拡大が見込まれている。
市場調査レポート「シートマスクの使用実態と受容性調査」((株)総合企画センター大阪、2009)によると、調査対象の女性(20代〜60代・N=600)の77.5%が、化粧用マスク使用経験者であり、その使用目的は、上位より、保湿(72.5%)、肌のキメを整える(35.7%)、ハリ・たるみのケア(34.8%)、しわ・小ジワのケア(29.5%)、化粧のりをよくするため(27.7%)、毛穴を引き締めるため(25.6%)、肌を引き締めるため(22.8%)である(以下略)、と報告されている。報告の内容から、昨今の消費者は化粧用マスクを単なる「保湿ツール」ではなく、「ハリ・たるみ」「しわ・小ジワ」「引き締め」といった機能性化粧料として使用しているといえる。
ハリ・たるみのケア、肌の引き締めを訴求したマスクとして、様々な商品や技術が開発されている。例えば、市販の商品としては、古くから両耳部分に耳掛け用の穴を設けた耳掛け式マスク等が知られている。これは、化粧用マスクを衛生用マスクの要領で両耳に掛けて使用させることで、たるんだ頬やフェイスライン等のリフトアップ効果や、肌への密着感の向上を訴求した人気のある商品である。しかし、前記商品には、使用時に髪の毛が汚れる問題や、使用中に耳に掛けた部位が痛くなるという問題があった。
これとは別の商品では、マスク基材にゴム様の伸縮性を有する素材を使用することにより、ハリ・たるみのケア、肌の引き締め、肌への密着性を改善する試みも行われている。
例えば、化粧用マスクに肌への密着度の向上と、たるんだ頬やフェイスラインのリフトアップ効果の付与とを目的とした、顔面の横方向に伸縮性を有する化粧用マスクが提案されている(例えば特許文献1)。該マスクは、使用時に左右口元に入れられたフェイスライン矯正用切込み部を指でつまみ、顎を支点にし、左右のフェイスラインに沿って斜め上方向に引き上げることで、肌への密着感向上およびたるんだ頬やフェイスラインのリフトアップ感の付与を実現している。
また、肌への密着感、肌の引き締め感を訴求した顔面の横方向に伸縮する特徴を有した化粧用マスクとして、さらに他のマスクも提案されている(例えば特許文献2)。該マスクは口元から鼻または頬にかけて顔面の横方向に伸長させながら貼り付けることで、肌への密着の向上、肌引き締め効果の付与を行っている。
国際公開第2009/116118号パンフレット 特開2010−281003号公報
しかしながら、これら従来のマスクでは、本来、基材が有する伸縮性が原因で、両耳方向にリフトアップさせた頬・顎部の皮膚が徐々に下の位置に戻ってしまう問題がある。そのため、十分なリフトアップ感が得られなかったり、多くの女性が望む、たるんだ頬やフェイスラインのリフトアップ効果が十分に達成できなかったりするなど、未だ満足できるものではない。
そこで、このような問題に鑑み、本発明の課題は、肌への密着性が高く、肌引き締め効果、およびたるんだ頬やフェイスラインのリフトアップ効果に優れた化粧用マスクを提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、非エラストマー性繊維層とエラストマー層とが積層一体化されてなる積層体で構成され、顔面の上下方向へ伸縮性を有する化粧用マスクを用いることで、上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づき、本発明を完成した。
本発明は、下記の構成を有する。
[1] 非エラストマー性繊維層とエラストマー層とが積層一体化されてなる積層体で構成され、顔面の上下方向へ伸縮性を有することを特徴とする、化粧用マスク。
[2] 湿潤状態における50%伸長時の応力が0.4〜5.0N/25mmであり、かつ湿潤状態における50%伸長時の伸長回復率が50%以上であることを特徴とする、上記[1]に記載の化粧用マスク。
[3] 湿潤状態における25%伸長回復時の応力が0.02〜1.5N/25mmであることを特徴とする、上記[1]または[2]に記載の化粧用マスク。
[4] 非エラストマー性繊維層が、カーディング処理によって、繊維を一方向に配列して得られる繊維層であり、当該繊維の配列方向は、化粧用マスクの幅方向と一致するように構成されていることを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれか1に記載の化粧用マスク。
[5] 非エラストマー性繊維層が、繊維層の厚み方向で繊維層内の繊維同士の交絡によって不織布化されていることを特徴とする、上記[1]〜[4]のいずれか1に記載の化粧用マスク。
[6] エラストマー層が、メルトブローン法およびスパンボンド法からなる群から選ばれる少なくとも1種の方法で形成された不織布であることを特徴とする、上記[1]〜[5]のいずれか1に記載の化粧用マスク。
[7] 上記[1]〜[6]のいずれか1に記載の化粧用マスクの装着時に、こめかみ部、頬部または鼻下部のいずれか一点以上を支点に、顔面の下方向および/または左右斜め下方向に引き伸ばしながら装着することを特徴とする、化粧用マスクの使用方法。
[8] 上記[1]〜[6]のいずれか1に記載の化粧用マスクを使用することを特徴とする、美容方法。
本発明の化粧用マスクは、顔面の上下方向に適度な伸縮性を有するため、顔への装着感、密着感、引き締め感が良好であり、加えて、顎部、口元部、頬部、目元部等の部位に対して優れたリフトアップ効果を有する。
本発明の化粧用マスクの一実施形態を示す概略構成図である。 被験者の顔正面の写真である。 被験者の顔側面の写真である。 本発明の化粧用マスクの一実施形態を示す概略構成図である。 本発明の化粧用マスクに係る固定方法の一例の手順を示す写真である。 本発明の化粧用マスクに係る固定方法の一例の手順を示す写真である。 本発明の化粧用マスクに係る固定方法の一例の手順を示す写真である。 本発明の化粧用マスクに係る固定方法の一例の手順を示す写真である。 本発明の化粧用マスクに係る固定方法の一例の手順を示す写真である。 本発明の化粧用マスクに係る固定方法の一例を実施した実施例1の結果を示す顔正面の写真である。 本発明の化粧用マスクに係る固定方法の一例を実施した実施例1の結果を示す顔側面の写真である。 本発明の化粧用マスクに係る固定方法の一例を実施した比較例1の結果を示す顔正面の写真である。 本発明の化粧用マスクに係る固定方法の一例を実施した比較例1の結果を示す顔側面の写真である。 本発明の化粧用マスクに係る固定方法の一例を実施した比較例2の結果を示す顔正面の写真である。 本発明の化粧用マスクに係る固定方法の一例を実施した比較例2の結果を示す顔側面の写真である。 本発明の化粧用マスクの一実施形態を示す概略構成図である。 被験者の顔正面の写真である。 被験者の顔側面の写真である。 本発明の化粧用マスクの一実施形態を示す概略構成図である。 本発明の化粧用マスクに係る固定方法の一例の手順を示す写真である。 本発明の化粧用マスクに係る固定方法の一例の手順を示す写真である。 本発明の化粧用マスクに係る固定方法の一例の手順を示す写真である。 本発明の化粧用マスクに係る固定方法の一例の手順を示す写真である。 化粧用マスクに係る固定方法の一例を実施した実施例2の結果を示す顔正面の写真である。 化粧用マスクに係る固定方法の一例を実施した実施例2の結果を示す顔側面の写真である。 化粧用マスクに係る固定方法の一例を実施した比較例3の結果を示す顔正面の写真である。 化粧用マスクに係る固定方法の一例を実施した比較例3の結果を示す顔側面の写真である。 化粧用マスクに係る固定方法の一例を実施した比較例4の結果を示す顔正面の写真である。 化粧用マスクに係る固定方法の一例を実施した比較例4の結果を示す顔側面の写真である。 本発明の化粧用マスクの一実施形態を示す概略構成図である。 本発明の化粧用マスクの一実施形態を示す概略構成図である。 本発明の化粧用マスクに係る固定方法の一例を実施した実施例3の結果を示す顔正面の写真である。 本発明の化粧用マスクに係る固定方法の一例を実施した実施例3の結果を示す顔側面の写真である。
以下、本発明を実施の形態に即して詳細に説明する。
本発明の化粧用マスクは、非エラストマー性繊維層とエラストマー層とが積層一体化されてなる積層体で構成され、装着する顔面の上下方向へ伸縮性を有する。
ここで、「顔面の上下方向へ伸縮性を有する」とは、化粧用マスクが、化粧用マスクを装着する顔面に対して、上下方向に伸縮性を有することをいう。
非エラストマー性繊維層
本発明において、非エラストマー性繊維層とは、非エラストマー素材を用いて構成され、少なくとも一方向に伸長性を有する繊維層をいう。さらに詳しくは、非エラストマー性繊維層とは、非エラストマー性と、少なくとも一方向に伸長性を有する繊維層、言い換えると、エラストマー性(ゴム状の弾力性)を有していないが、少なくとも一方向に伸長性を有する繊維層をいう。具体的には、非エラストマー性繊維層は、伸長性を有しているが、伸長後の回復率が低い繊維層であり、好ましくは、後述する条件で測定される「湿潤状態における50%伸長時の伸長回復率」が50%未満であり、好ましくは35%以下の繊維層である。このような非エラストマー性繊維層を、エラストマー層と積層一体化することで、適度な伸縮性と伸長時応力が、得られる化粧用マスクに付与される。
非エラストマー性繊維層は、非エラストマー素材を用いて構成される。非エラストマー素材は、通常、繊維として用いられ、繊維層を構成する。そのため、非エラストマー素材が、天然繊維であれば、繊維化を行わずに利用できるが、非エラストマー素材が熱可塑性樹脂などの原料樹脂であれば、繊維化した後に利用できる。非エラストマー性繊維層としては、紙、不織布、および織布等が好ましく利用できる。なお、化粧用マスクとして使用する場合の取り扱い易さ、肌触りの良さ、コストパフォーマンスに優れる点で、非エラストマー性繊維層は、不織布として用いることがより好ましい。非エラストマー性繊維層を構成する繊維としては、例えば、パルプ、コットン、麻、竹、ケナフ、シルク、および羊毛等の天然繊維、ビスコースレーヨン、キュプラ、およびリヨセル等の再生繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、およびアクリル繊維等の合成繊維等を用いることができる。これら2種以上の繊維を混合して使用してもよく、例えば、ビスコースレーヨン繊維とパルプとの混綿物、ビスコースレーヨン繊維とコットンとの混綿物、ビスコースレーヨン繊維とポリエチレンテレフタレート繊維との混綿物、およびコットンとポリエチレンテレフタレート繊維との混綿物が利用できる。また、2種以上の非エラストマー素材を混合して得られた繊維を使用してもよい。非エラストマー素材としては、結晶性ポリエチレン、結晶性ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、およびポリアクリルニトリル等の熱可塑性樹脂が利用でき、これら2種以上を混合して繊維を製造してもよい。
非エラストマー性繊維層は、親水性および保液性に優れるものが好ましい。該繊維層が、親水性の素材を用いて得られた親水性繊維で構成されるのが好ましく、上記で例示した非エラストマー素材またはそれからなる繊維の中から、一般に親水性を有するとされるものを選択して使用できる。親水性の点では、コットン、麻、レーヨン、キュプラ、パルプ等のセルロースを主成分とする素材(セルロース系素材)が好ましい。該素材を1種類以上含む不織布は、親水性、吸水性、保液性に優れ、化粧用マスクとして好ましく使用できる。
非エラストマー性繊維層を構成する繊維は、短繊維でも長繊維でもよい。本発明において、短繊維とは、繊維長が0.5〜100mmの繊維をいい、長繊維とは、繊維長が100mmを超える繊維をいい、その中には連続繊維が含まれる。
非エラストマー性繊維層としては、カーディング処理によって、短繊維を一方向に配列してなる繊維層(カードウェブ)、短繊維がランダムに堆積させてなるエアレイウェブまたは湿式抄紙ウェブなどが例示できる。非エラストマー性繊維層として、湿式抄紙ウェブを用いると、得られる化粧用マスクは、良好な装着感や良好な装着安定性を示す。少なくとも一方向へ伸長性を有する繊維層を容易に得ることができるという点では、非エラストマー性繊維層は、カーディング処理によって、短繊維を一方向に配列してなる繊維層であるのが好ましい。
非エラストマー性繊維層は、繊維層の厚み方向で繊維層内の繊維同士の交絡によって不織布化されていることが好ましい。非エラストマー性繊維層の原料として、短繊維を用いる場合、このような不織布化は、ニードルパンチ法や水流交絡法等によって好適に得ることができる。化粧用マスクの装着感や装着安定性の点で好ましいのは水流交絡法で得られる不織布である。
特に、短繊維が一方向に配列してなるカードウェブに水流交絡処理を行って当該短繊維を三次元交絡させて得られた水流交絡法不織布は、一方向に配列した繊維の方向と直交する方向(不織布のCD方向)に良好な伸長性を有するので好ましい。
非エラストマー性繊維層を構成する繊維の繊維径は、特に限定されないが、0.1〜100μmであるのが好ましく、4〜50μmであるのがより好ましい。
また、非エラストマー性繊維層の目付けは、化粧用マスクとして所望の強度、化粧液の保持性、外観、隠蔽性、使用時のボリューム感、および湿潤状態における伸長性の点から、5〜150g/mであるのが好ましく、10〜100g/mであるのがより好ましい。
本発明の非エラストマー性繊維層には、本発明の効果を損なわない範囲で、安定剤、抗菌剤、着色剤、滑剤、親水剤、帯電防止剤、帯電剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の各種改質剤や、熱可塑性エラストマー等のエラストマー素材などを添加してもよい。
エラストマー層
本発明のエラストマー層は、繊維の形態や層構成に由来して構造的にエラストマー性を発現する層であってもよく、素材自体にエラストマー性を有するエラストマー素材を用いて製造された層であってもよい。本発明のエラストマー層は、化粧用マスクとして、所望の伸縮性、密着性、肌引き締め効果、リフトアップ効果を担保するためには、後述の「湿潤状態における50%伸長時の伸長回復率」が、50%以上であるのが好ましく、65%以上であるのがより好ましい。
本発明のエラストマー層としては、上記の通りエラストマー性を有する限り、フィルム状、シート状、ネット状、不織布状、織布状等が使用できる。化粧用マスクとして使用した場合の取り扱い易さ、肌触りの柔らかさ、通気性、通液性、コストパフォーマンスに優れる点から、不織布状が好ましい。
繊維の形態や層構成に由来して構造的にエラストマー性を発現する層としては、特に限定されないが、例えば、立体捲縮を付与した短繊維を含むウェブ、および、これらの繊維をニードルパンチ法や水流交絡法、高圧蒸気交絡法等により三次元交絡させて得られる不織布のほか、メリヤス編み、ガーター編み、ゴム編み等の加工方法によって伸縮性を付与した織布等を挙げることができる。また、歯溝が噛み合う少なくとも一対のロールを用いて延伸加工を行うことで、伸縮性を付与した層であってもよい。また、さらに、潜在捲縮性繊維を含むウェブを用いて、これを加熱することで繊維の捲縮を発現させるとともに、その捲縮の発現による繊維間の絡み合いによって、ウェブが一体化された不織布を少なくとも一層に含む層であってもよい。
本発明のエラストマー層が、素材自体にエラストマー性を有するエラストマー素材を用いて製造された層である場合、使用するエラストマー素材としては、天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の各種ゴム類、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー類を挙げることができる。化粧液含浸時の化粧用マスクの柔軟性や伸縮性に伴う密着感などの点で好ましいのは、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマーである。
また、エラストマー層における伸縮性等の性能を適宜調整するため、エラストマー層中で、これらのエラストマー素材から選ばれた2種以上の異なる繊維が混合されていてもよい。
本発明のエラストマー層を構成する繊維は、短繊維でも長繊維でもよい。
本発明のエラストマー層としては、上記の熱可塑性エラストマー素材を用いてスパンボンド法またはメルトブローン法で製造された長繊維からなる不織布が、通気性、通液性、伸縮性、およびコストパフォーマンスの面でも好ましい。特に、メルトブローン法は、極細の繊維が得られるばかりか、熱可塑性エラストマー類を紡糸切れの懸念なく効率よく不織布化することができるので好ましい。また、スパンボンド法とメルトブローン法を組み合わせて該エラストマー層を製造してもよい。具体的には、スパンボンド法で得られた不織布とメルトブローン法で得られた不織布を積層一体化して、エラストマー層を製造することができる。
エラストマー層を構成する繊維の繊維径は、特に限定されないが、化粧用マスクが、所望の柔軟性、肌への密着性を有するためには、15μm以下であるのが好ましく、10μm以下であるのがより好ましい。
また、エラストマー層の目付けは、特に限定されないが、化粧用マスクとして所望の伸縮性、引き締め効果、リフトアップ効果を担保するためには、10〜200g/mであるのが好ましく、15〜150g/mであるのがより好ましい。
本発明のエラストマー層には、本発明の効果を損なわない範囲で、親水剤、親油剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の各種改質剤、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の非エラストマー性素材を改質剤や増量剤として添加してもよい。
積層一体化
本発明の化粧用マスクは、非エラストマー性繊維層とエラストマー層とを積層一体化し、得られた積層体を目的とする化粧用マスクの形状とすることで構成される。積層体としては、別個に製造した非エラストマー性繊維層とエラストマー層とを接着剤またはバインダー材で貼り合わせた積層体、非エラストマー性繊維層にエラストマー層をラミネートした積層体、非エラストマー性繊維層にエラストマー層をエンボスロールやカレンダーロールにて熱圧着した積層体、非エラストマー性繊維層にエラストマー層を水流交絡法または高圧蒸気交絡法等で交絡した積層体等などを挙げることができる。
非エラストマー性繊維層とエラストマー層とをラミネートし、さらにエンボスロールを用いて部分熱圧着して得られる積層体は、化粧用マスクとして使用する際にかかる伸縮の応力に対する耐層間剥離性が増すので好ましい。
エンボスロールを用いた部分熱圧着の条件は、積層体の層間強度と風合いとが保たれるような条件で行われる限り、特に限定されないが、エンボス面積率は、3〜40%であるのが好ましく、4〜30%であるのがより好ましい。
エンボスロールを用いて部分熱圧着して得られる積層体としては、カーディング処理によって、セルロース系繊維が含まれる短繊維を一方向に配列させて得たカードウェブを水流交絡処理し、当該短繊維を三次元交絡させて得られた水流交絡法不織布を非エラストマー性繊維層として用い、エラストマー素材を用いてスパンボンド法またはメルトブローン法で製造された不織布をエラストマー層とし、非エラストマー性繊維層とエラストマー層とを積層し、さらにエンボスロールを用いて部分熱圧着して得られた積層体が例示できる。得られた積層体は、化粧用マスクに要求される通液性、通気性、肌触りの柔らかさ、耐層間剥離性が良好であり、さらにコストパフォーマンスもよいことから、好ましい。
非エラストマー性繊維層とエラストマー層とが積層一体化されてなる積層体が、化粧用マスクとしての本発明所望の柔軟性、密着感、引き締め効果、リフトアップ効果を有するためには、後述する条件で測定される湿潤状態における50%伸長時の応力が0.4〜5.0N/25mmであり、かつ、50%伸長時の伸長回復率が50%以上であることが好ましく、湿潤状態における50%伸長時の応力が0.5〜2.5N/25mmであり、かつ、50%伸長時の伸長回復率が60%以上であることがより好ましい。後述の通り、この「50%伸長時の伸長回復率」も、「50%伸長時の応力」と同じく、湿潤状態における試験片を用いて測定される値である。
また、上記要件を満たし、さらに、後述する条件で測定される湿潤状態における25%伸長回復時の応力が0.02〜1.5N/25mmの範囲にある積層体、さらに好ましくは湿潤状態における25%伸長回復時の応力が0.1〜0.9N/25mmの範囲にある積層体は、特に優れた引き締め効果およびリフトアップ効果を示すことから、本発明の化粧用マスクに好適に使用できる。
非エラストマー性繊維層とエラストマー層とが積層一体化されてなる積層体の目付けは、特に限定されないが、化粧用マスクとして必要な保液性、使用時のボリューム感付与の点で、10〜200g/mであるのが好ましく、15〜150g/mであるのがより好ましい。
積層体の厚みは特に限定されないが、化粧液の含浸性および浸透性の点から、荷重2kgf/cm(0.196MPa)を負荷したときの厚みが0.2〜0.7mmであるのが好ましい。
本発明に用いられる積層体には、改めて当該積層体自体に物理的に伸縮性や柔軟性を付与するために、歯溝が噛み合う少なくとも一対のロールを用いて延伸加工を行ってもよい。当該延伸加工は、積層体のMD方向、CD方向、または、その両方向に対して実施されてもよい。
化粧用マスク
本発明の化粧用マスクは、非エラストマー性繊維層とエラストマー層とが積層一体化された積層体を用いて作成される。具体的には、積層されている非エラストマー性繊維層が伸長性を有する方向、すなわち、積層体が伸縮性を有する方向が、化粧用マスクの顔面の上下方向と一致するように、積層体から所望の形に切り出すことで得られる。
非エラストマー性繊維層が、カーディング処理によって、繊維を一方向に配列して得られた繊維層である場合には、化粧用マスクは、その繊維の配列が化粧用マスクの幅方向、すなわち顔面の上下方向と垂直となる顔面の横方向と一致するようにして切り出すことがよい。
本発明の化粧用マスクは、顔を被覆するために適した形状に切り出され、加工される。化粧用マスクには、例えば、目、鼻および口に相当する部分に、必要に応じて打ち抜き部または切り込み部を設けられる。その加工方法は特に限定されないが、トムソン刃による打ち抜き加工、ロータリー式ダイカッターの使用が好ましい。
積層体から切り出された化粧用マスクは、積層体に由来する特性、すなわち、湿潤状態における50%伸長時の好適な応力、湿潤状態における50%伸長時の好適な伸長回復率および湿潤状態における25%伸長回復時の好適な応力、並びに、目付け、厚み等を有する。
こうして得られる本発明の化粧用マスクは、顔面の上下方向に適度な伸縮性と適度な伸長応力を有することから、従来の化粧用マスクにはない、たるんだ頬やフェイスアップラインに対する十分なリフトアップ効果を発現しうる。
化粧用マスクは、適宜、目的に応じて、種々の形に切り出せばよく、形状は特に限定されないが、例えば、一枚のシートで顔全面を覆うワンピース型、二枚以上のシートを組み合わせて顔全面を覆うセパレート型であってもよく、また、襟足を伸ばして首分も覆うような形状としてもよい。さらにまた、顔の一部分(例えば、目元、口元、鼻または頬)のみを覆うような形状であってもよい。また、顔面の上下方向に伸縮性を有する部材が、顔のリフトアップ効果を高めたい一部分を覆っており、当該伸縮性とは異なる方向及び/または強さの伸縮性や伸長性を有する部材、或いは、伸長性や伸縮性を有さない部材が、顔のその他の部分を覆うように構成されたフェイスマスクもまた本発明の範疇である。
また、本発明の化粧用マスクは、特に切れ込みを入れなくても良好な装着感が得られるが、より良く顔面に密着させ、引き締め効果やリフトアップ効果を向上させる目的等で、化粧用マスクの形に応じて、化粧用マスクの任意の位置及び方向へ、任意の数及び深さの切り込みを入れてもよい。本発明の化粧用マスクの特筆すべき特徴として、顎部分の切れ込み本数、切れ込み位置を調整することにより、顎部リフトアップ感が特に強い化粧用マスク、頬部リフトアップ感が特に強い化粧用マスク、顎部リフトアップ感はやや劣るが顔面下部全体の引き締め感が強い化粧用マスク等々を得ることができ、商品コンセプトにより幅広く使い分けることが可能である。
特に限定はされないが、例えば、左右両顎部から口元の端部方向に向かう切り込みが設けられた後述する実施例1の実施形態に構成された本発明の化粧用マスクは、顎部リフトアップ感が特に強くなる。また、顎部中央から口元中央に向かう切り込みが設けられた後述する実施例2の実施形態を有する化粧用マスクは、頬部リフトアップ感が特に強くなる。また、顎部に切り込みが設けられていない後述する実施例3の実施形態を有する化粧用マスクは、顎部リフトアップ感はやや劣るが顔面下部全体の引き締め感が強くなる。
さらにまた、本発明の化粧用マスクは本発明の効果を損なわない範囲において、化粧用マスクの少なくとも一部に、その他素材を貼り合わせ(積層一体化)してもよい。貼り合わせる部位、貼り合わせに用いるその他素材は特に限定されないが、フィルム、織布、不織布等が好ましく、局部的に効能を得たい部位などに、用途・目的に応じて、非伸縮性の素材、伸縮性の素材、親水性の素材、非親水性の素材などから選択することにより、部分的に伸縮性を制御したり、部分的に保液性を制御したり、部分的に保温性を持たせたりすることができる。
化粧用マスクには、予め化粧液を含ませていてもよいし、使用直前または使用中に化粧液を含ませてもよい。また、顔に化粧液を塗ったのちに、化粧液を含んでいないマスクをラップ材のように使用してもよい。
本発明において、「化粧液」は、ゲル状の化粧成分を含む。後述の実施例で、化粧液として、具体的に、(株)資生堂製の「エリクシールシュペリエル・リフトモイストローションIII」(商品名)を使用していることからも明らかな通り、この“本発明において、「化粧液」は、ゲル状の化粧成分を含む。”とは、“本発明において、「化粧液」は、文字通り、液状の化粧成分であるほかに、ゲル状の化粧成分であってもよい”、という意味である。
本発明の化粧用マスクに含水ゲルを塗工したマスクも、本発明の化粧用マスクの範疇に含まれる。含水ゲルは特に限定されないが、アガロースゲル、ポリアクリル酸ナトリウムゲル、バクテリアセルロースゲル、ゼラチンゲル等が挙げられる。該含水ゲルを塗工した化粧用マスクもまた、予め化粧液を含ませていてもよいし、使用直前または使用中に化粧液を含ませてもよい。また、顔に化粧液を塗ったのちに、化粧液を含んでいない含水ゲルを塗工したマスクをラップ材のように使用してもよい。さらにまた、含水ゲルに後述する化粧成分を添加したのち、本発明の化粧用マスクに塗工してもよい。
使用する化粧液は、特に限定されず、市販の化粧液等を使用できるが、保湿成分、エモリエント成分、血行促進成分、クレンジング成分、制汗成分、香り成分、美白成分、痩身成分、抗菌成分、紫外線防止成分などの化粧成分を含んでいるものが好ましい。
化粧用マスクへの化粧液の含有量は、液だれせず、効果的に効能が発揮される範囲であればよく、特に限定されない。一般的には、化粧用マスク100質量部に対し、100〜2000質量部、好ましくは、500〜1500質量部の範囲で含浸させることができる。
本発明の化粧用マスクにおいて、非エラストマー性繊維層に短繊維が一方向に配列してなるカードウェブに水流交絡処理を行って当該繊維を三次元交絡させて得られた水流交絡法不織布を使用した場合、繊維が一方向に配列した方向(不織布のMD方向)が、顔面横方向と一致するように配置されるため、従来の顔面横方向に伸縮性を有するマスク(繊維が一方向に配列した方向(不織布のMD方向)が、顔面上下方向と一致するように配置されている)と比較してマスク下向き方向に毛細管現象が起こりにくく、装着時に液だれしにくいという特徴がある。また、特に、化粧用マスクの目や口に相当する部位でフェイスマスクの幅方向に向かって設けられる切込み部や打ち抜き部において、目や口への化粧液の液だれを抑制する効果がある。本発明の化粧用マスクは、化粧用マスクを装着したまま、家事等で体を動かす女性のライフスタイルにも好適である。
本発明の化粧用マスクにおいては、本発明の効果を損なわない範囲において、非エラストマー性繊維層及びエラストマー層が、それぞれ独立して複数層存在していてもよい。
化粧用マスクの使用法及び美容法
先述の通り、たるんだ頬やフェイスラインのリフトアップ効果を訴求した化粧用マスクは多々存在する。月刊「MISS」2011年11月号(世界文化社)の記事等を参考に該効果を訴求した市販の化粧用マスクについて調査した。その結果、該効果を訴求したマスクは耳掛け式マスク、顔面横方向に伸縮性を有するマスクを問わず、装着にあたっては顎を支点に斜め上方向(耳方向)に引き上げるように装着するマスクばかりであった。また、「ストレッチ」を謳うマスクについては、顔面横方向に伸びるデザインの商品ばかりであった。これは消費者が、「リフトアップマスクはフェイスラインに沿って装着し、顎を支点に斜め上向き〜上向き方向に引き上げながら使うもの」と認識していることに起因していると推測する。それ故に、伸縮性素材を用いた化粧用マスクは、上記消費者意識を満足させるため、耳方向に引き上げ易く、かつ引き伸ばしたときにフェイスラインへの密着感が得られる顔面横方向へ伸縮するデザインが広く一般的に採用されていると考える。
これに対して、本発明の化粧用マスクは、顔面に対して上下方向に伸縮性を有することを特徴としており、従来の顔面の横方向へ伸縮するマスクとは全く異なった発想から生まれた。具体的には、本発明の化粧用マスクを顔面へ装着するにあたっては、マスクを顔面上向き方向ではなく下向き方向に引き伸ばしながら使用する。これにより、該マスクを構成する積層体に顔面上向き方向への収縮力が発生し、女性が特にリフトアップを望んでいる、顎部、口元部、頬部、目元部等の全ての部位を所望の一方に吊り上げることが可能となる。この結果、化粧用マスクの装着者に、効率的なリフトアップ感と密着感を与える効果がある
本発明の化粧用マスクは顔面に装着される。本発明の化粧用マスクが有するリフトアップ効果とともに、保湿成分等による肌のケアを行う目的から、化粧用マスクに化粧液を含ませて用いるのが好ましいが、特に限定されるものではない。顔に化粧液を塗ったのちに化粧液を含んでいないマスクをラップ材のように使用してもよい。化粧用マスクへの化粧液の含有方法や含有の時期(タイミング)は特に限定されない。化粧液は、肌に装着する前に化粧用マスクに含有されていてもよく、化粧用マスクを装着後に、含有させてもよい。
化粧用マスクの顔面への装着方法(使用方法)は、特に限定されない。
高いリフトアップ効果を得るためには、こめかみ部、頬部、鼻下部のいずれか一点以上を支点に、顔面の下方向および/または左右斜め下方向に引き伸ばしながら装着することが好ましい。例えば、顎部〜口元部のリフトアップを希望する場合は、右手または左手の親指と人差し指で鼻下部〜頬中央部(口元部よりやや上付近)が支点となるようにマスクを押さえながら、該支点よりマスク下面部分を顔面下方向および/または左右斜め下方向に引き伸ばしてマスク下部末端を顎下部に密着固定すれば、所望する効果を効率的に得ることができる。顎部〜頬部のリフトアップを希望する場合は支点を鼻下部〜頬上部(目元部付近)として同様の操作を行えばよく、顎部〜目元部のリフトアップを希望する場合は支点をこめかみ部として同様の操作を行えばよい。また、該マスクは上記いずれかの手順で装着したのち、支点部分を次々にずらしながら伸縮を微調整することにより、目元部、頬部、口元部、顎部等々の所望の箇所を集中的にリフトアップするように調整することができる。さらにまた、該マスクは繰り返し伸縮性を有するので、装着中にマスクがずれてしまったり、装着を誤ってしまったりした場合でも、再度同様の手順を行うことでリフトアップ感と密着感を装着者に与える効果が得られることから、この点においても優れている。
本発明の化粧用マスクは、女性が特にリフトアップを望んでいる、顎部、口元部、頬部、目元部等の全ての部位に対して優れたリフトアップ効果を示す。さらに本発明の化粧用マスクは、適度な伸縮性と伸長時応力を有することが相俟って、マスクの部材が固有に良好なリフトアップ能を有しているために、耳掛け式などの形態を採用することによってリフトアップ能を発現させる必要がないことから、耳部の不快な痛み等を伴うことがない。また、本発明の化粧用マスクは、肌への密着感にも優れ、しかも簡便に使用できる。すなわち該マスクは、仕事、家事、子育等々に忙しくかつ美意識の高い現代女性に、新しい美容方法を提案するツールといえる。
本発明の美容方法は本発明の化粧用マスクの上下方向への伸縮性を利用していれば特に限定されないが、例えば、本発明のマスクを用いたマッサージ方法、つぼ刺激方法、シワ改善方法等が挙げられる。具体的には、顔面マッサージによりシャープなフェイスラインに整えるような高度な施術は、専門技術を持たない一般消費者が自宅で行うことは難しかった。しかしながら、本発明の化粧用マスクを使用すれば、エステサロン等の美容専門家による施術のように顔の各部位の上向き方向に均一な圧力を掛け続けることができることから、一般家庭でも簡便かつ短時間で有効なマッサージ効果や小顔効果等々を得ることができる。また、先述したように、本発明の化粧用マスクは装着時の支点位置を変化させたり、マスクの切れ込み位置を調整したりすることにより、顔面の任意の位置をリフトアップすることが可能である。この機能を利用すれば、指圧のように「つぼ刺激」を行うことが可能である。さらに、本発明の化粧用マスクは上下伸縮により顔面にぴったりと密着するので、マスクに含ませた化粧液の有効成分を皮膚全体に均一に届けることができる。そのため、本発明の化粧用マスクを連用すれば、肌のキメや乾燥ジワの改善効果が得られることが期待できる。
本発明の化粧用マスクは、非エラストマー性繊維層とエラストマー層のどちらを肌側に接触させて用いてもよいが、柔らかい風合いを有し、かつ肌に対して高い密着性を示すエラストマー層を肌側とすることが好ましい。
以下、実施例を用いて本発明の詳細を説明する。但し、本実施例は本発明をなんら限定するものではない。実施例において、非エラストマー性繊維層とエラストマー層とが積層一体化されてなる積層体には、JNC株式会社製不織布であるELFino(登録商標) LM6020−38を用いた。
また、比較例には市販の化粧マスク用不織布2種類を用いた。このうち不織布2はレーヨン短繊維と合成繊維単繊維が混綿されたカードウェブを水流交絡法により繊維間を交絡させて得られたカード不織布であり、不織布3はキュプラ長繊維フリースを水流交絡法により繊維間を交絡させて得られた湿式長繊維不織布であった。
なお、表1の「非エラストマー性繊維層」の欄に記載した材質名と数値(%)は、その材質で構成された繊維が、その質量(%)の割合で含まれていることを示している。つまり、複数の材質が記載されているのは、それらの材質で得られた繊維が、各質量(%)の割合で混合されていることを意味している。
各不織布の目付、湿潤状態における50%伸長時の応力および50%伸長時の伸長回復率は下記方法にて測定した。

[不織布目付]
JIS L1906「一般長繊維不織布 試験方法」に準じて測定した。表1記載の各不織布の任意5箇所から20cm×20cmのサイズの試験片を切り出したのち、各試験片の重量を電子天秤にて測定し、その平均値を1m当りの質量に換算して不織布目付とした。

[湿潤状態における50%伸長時の応力]
エラストマー層、非エラストマー性繊維層、及び、それらの積層体から幅25mm、長さ150mmのサイズの試験片をそれぞれ以下の条件で切り出した。
エラストマー層の場合には、その伸縮方向と試験片の長さ方向とが一致するように切り出す。非エラストマー性繊維層または非エラストマー性繊維層とエラストマー層との積層体の場合には、その試験片の長さ方向と、非エラストマー性繊維層が伸長性を有する方向とが一致するように切り出す。また特には、その試験片の長さ方向と、非エラストマー性繊維層を構成する繊維が一方向に配列している方向とは直交する方向(CD方向)とが、一致するように切り出す。
次いで、これら試験片を精製水に10分間、室温(25℃)にて浸漬し、精製水を均一に含浸させることで、湿潤状態の各試験片を作成する。得られた試験片をJIS L1906「一般織物試験方法」に準じて、オートグラフAG−500D型((株)島津製作所製)を使用し、チャック間隔100mm、引張速度300mm/分の条件にてチャック間隔150mmまで伸長させ、その点における応力を測定する。

[湿潤状態における50%伸長時の伸長回復率]
前述した50%伸長時の応力と同一条件にて試料をチャック間隔150mmまで伸長させる。次いで、150mmまで伸長させた点を起点として試料を同じ速度で戻し、得られる荷重−伸び曲線より残留応力が0となる長さL(mm)を測定し、下記の数式に従い伸長回復率を求める。ここで、「前述した50%伸長時の応力と同一条件にて」とは、当然、当該応力の測定と同じように、試料を湿潤状態としたうえで、伸長回復率を測定することを意味している。すなわち、ここでいう「50%伸長時の伸長回復率」とは、「湿潤状態における50%伸長時の伸長回復率」の意味である。
50%伸長時の伸長回復率={(50※1−L)/50※1}×100
※1:試験片を伸長させた長さ50(mm)

[湿潤状態における25%伸長回復時の応力]
前述した50%伸長時の応力と同一条件にて試料をチャック間隔150mmまで伸長させ、次いで同じ速度でチャック間隔125mmまで戻し、その点における応力を測定する。
実施例、比較例で用いた不織布1(積層体)、不織布2、不織布3の材料、目付、湿潤状態における50%伸長時の応力、湿潤状態における50%伸長時の伸長回復率および湿潤状態における25%伸長回復時の応力を、表1に記す。
Figure 0005201282
[化粧用マスクの作成1](実施例1、比較例1、2)
表1に示した各不織布を用い、マスクが顔面上下の方向に伸縮するように不織布方向を調整し、図1に示す形状となるよう目、口、鼻に対応する箇所に切り込みを入れて、実施例1、比較例1〜2の化粧用マスクを作成した。
実施例1では、不織布1を用い、比較例1,2では、それぞれ、不織布2、3を用いた。
[化粧液含浸方法1]
実施例1、比較例1〜2の各化粧用マスクは、顔面の中央を通る縦線で一回折りたたみ、次いでその中央を通る横線で一回折りたたみ、さらにその中央を通る縦線で一回折りたたんで八つ折りにした。折りたたんだ各マスクをチャックつきポリエチレン袋(商品名:ユニパック E−4、(株)生産日本社製)に各々挿入し、化粧液として(株)資生堂製「エリクシールシュペリエル・リフトモイストローションIII」(商品名)を18mL注入したのち、空気が入らないようにチャックした。得られたマスクおよび化粧液の入ったポリエチレン袋を机の上に置き、手のひらで10回押さえたのち、室温で一時間放置した。一時間後にポリエチレン袋からマスクを取り出し、目視にて化粧液の含浸具合を確認した。その結果、何れのマスクも化粧液を十分に含浸していた。
[マスク装着試験1]
被験者(47歳・女性)の目元部、頬部、口元部、顎部にラベルを粘着テープで貼り付け、ラベルされた顔正面および顔側面の写真を撮影した(図2〜3)。次に、前記化粧液含浸方法1に従って、化粧液を含浸させた化粧用マスク(実施例1)を作成し、被験者に対して装着試験を行った(図5)。
なお、実施例1のように化粧用マスクが積層体の場合には、エラストマー層側が肌に接するように顔にのせて目鼻位置を合わせて密着させたのち(図6)、図4の(1)の線上に該当する化粧用マスクの部分を右手または左手の親指と人差し指で、鼻下部〜頬部が支点になるように押さえながら、もう一方の手で図4の(2)の部分をつかみ、A方向に引き伸ばして顎下部に密着固定した(図7)。次いで、右手または左手の親指と人差し指で図4の(3)の各々の位置を押さえながら図4の(4)、(5)の左右フラップ部をBないしC方向に引き伸ばして(図8)、マスク鼻より下面全体を顎下部に密着固定した(図9)。マスクを装着して5分後、被験者の顔正面および顔側面について写真撮影した。また、比較例1〜2の化粧用マスクについても、同一手順で化粧用マスクを装着したのち、写真撮影を行った。
[リフトアップ効果判定基準]
化粧用マスクの装着前の写真と装着中の写真とを比較して、被験者顔面に付与したラベル位置の変化について解析を行った。解析は、以下のリフトアップ効果判定基準に基づき評価した。
リフトアップ効果判定基準は、化粧用マスクの装着中の写真が下記1)〜4)条件を全て満たす場合、「非常に効果あり」とし、三つ満たす場合、「効果あり」とし、二つ満たす場合、「やや効果あり」とし、一つ以下の場合、「効果なし」とした。
1)顔正面写真において、顎部ラベル位置が、マスクの装着前と比較してマスクの装着中の方が耳に向かって斜め上方向または上向き方向に3mm以上移動している。
2)顔正面写真において、口元部、頬部、目元部の何れかのラベル位置が、マスクの装着前に比べて、マスクの装着中の方が耳に向かって斜め上方向または上向き方向に3mm以上移動している。
3)顔側面写真において、顎部ラベル位置が、マスクの装着前と比較してマスクの装着中の方が耳に向かって斜め上方向または上向き方向に3mm以上移動している。
4)顔側面写真において、口元部、頬部、目元部の何れかのラベル位置が、マスクの装着前に比べマスクの装着中の方が耳に向かって斜め上方向または上向き方向に3mm以上移動している。
上記判定基準に従い、各々の化粧用マスクのリフトアップ効果について判定を行った。 実施例1(図10〜11)、比較例1(図12〜13)、比較例2(図14〜15)の各々の写真について、マスクの装着前のラベル位置を白丸(○)でプロットし、マスクの装着中に移動が認められたラベル位置を黒丸(●)でプロットして、比較した。その結果、実施例1のマスクは1)〜4)全ての条件を満たし「非常に効果あり」と判定した。また、ラベルの最大移動距離は、顎部/垂直方向に9mm(図11の(14)部位)、口元部/垂直方向に6mm(図11の(9)部位)、頬部/垂直方向に4mm(図11の(6)、(7)部位)とであり、顎部、口元部、頬部の何れの部位に対しても優れたリフトアップ効果を示した。これに対して、比較例1、2の化粧用マスクは1)〜4)の何れの条件も満たしておらず「効果なし」と判定した。
さらに、各々のマスクの使用感について披験者にインタビューを行った。その結果を表2に示す。インタビューの結果、実施例1の化粧用マスクは、取り扱い易さ、装着感、密着感、引き締め感、リフトアップ感、液だれしにくさの全てにおいて、良好と評価された。また、顎部全体にリフトアップ感を感じたとの感想であった。
これに対して比較例1のマスクは、装着し易さ、装着感、密着感、液だれしにくさは良好なものの、引き締め感、リフトアップ感は全く感じられないとの評価であった。また、比較例2のマスクは、装着感、密着感、液だれしにくさは良好なものの、引き締め感、リフトアップ感は全く感じられないうえ、マスク素材のドレープ性が高すぎて取り扱いしにくいと評価された。
Figure 0005201282
[化粧用マスクの作成2](実施例2、比較例3〜4)
化粧用マスクを図16に示した形状にした以外は、実施例1、比較例1〜2に準じて化粧用マスクを得た。
[化粧液含浸方法2]
化粧液含浸方法1に従い各マスクに化粧液を含浸させた。一時間後にポリエチレン袋のチャックを開いてマスクを取り出し、目視にて化粧液の含浸具合を確認したところ、何れのマスクも化粧液を十分に含浸していた。
[マスク装着試験2]
被験者(47歳・女性)の目元部、頬部、口元部、顎部にポリ塩化ビニールテープ(積水化学工業(株)製「エスロンテープ#360」)を用いてラベルしたのち、顔正面および顔側面について写真撮影した(図17〜18)。次に、実施例2の化粧用マスクをポリエチレン袋から取り出し(図20)、実施例2のように化粧用マスクが積層体の場合には、エラストマー層側が肌に接するように顔にのせて目鼻位置を合わせて密着させたのち(図21)、図19の(1)の線を右手または左手の親指と人差し指で鼻下部〜こめかみ部が支点になるように押さえながら、もう一方の手で図19の(2)、(3)のフラップ部分をつまんでABC各方向に顎に沿って引き伸ばして(図22)、マスク下面全体を顎下部に密着固定した(図23)。マスクを装着して5分後、被験者の顔正面および顔側面について写真撮影した。また、比較例3〜4の化粧用マスクについても、同一手順でマスクを装着したのち写真撮影を行った。
前記した[リフトアップ効果判定基準]に従い、実施例2、比較例3〜4の化粧用マスクのリフトアップ感を与える効果について判定を行った。実施例2(図24〜25)、比較例3(図26〜27)、比較例4(図28〜29)の各々の写真について、マスクの装着前のラベル位置を白丸、マスクの装着中に移動が認められたラベル位置を黒丸にてプロットして比較した。
その結果、実施例2のマスクは1)〜4)全ての条件を満たし「非常に効果あり」と判定した。また、ラベルの最大移動距離は、顎部/垂直方向に11mm(図25の(14)部位)、口元部/垂直方向に8mm(図25の(9)部位)、頬部/垂直方向に8mm(図25の(10)部)であり、顎部、口元部、頬部の何れの部位に対しても優れたリフトアップ感を与える効果を示した。これに対して、比較例3のマスクは条件4)のみしか満たさないことから「効果なし」と判定した。また、比較例4のマスクは1)〜4)の何れの条件も満たさないことから「効果なし」と判定した。
さらに、各々のマスクの使用感について被験者にインタビューを行った。その結果を表3に示す。インタビューの結果、実施例2の化粧用マスクは取り扱い易さ、装着感、密着感、引き締め感、リフトアップ感、液だれしにくさの全てにおいて、良好と評価された。また、実施例1のマスクと比較すると、頬部にリフトアップ感を感じたとの評価であった。これに対して比較例3のマスクは、装着し易さ、装着感、密着感、液だれしにくさは良好なものの、引き締め感、リフトアップ感は全く感じられないと評価された。また、比較例4のマスクは、装着感、密着感、液だれしにくさは良好なものの、引き締め感、リフトアップ感は全く感じられないうえ、マスク素材のドレープ性が高すぎて取り扱いしにくいと評価された。
Figure 0005201282
[化粧用マスクの作成3](実施例3)
化粧用マスクを図30に示した形状にした以外は、実施例1に準じて化粧用マスクを得た。
[化粧液含浸方法3]
化粧液含浸方法1に従い各マスクに化粧液を含浸させた。一時間後、ポリエチレン袋のチャックを開いてマスクを取り出し、目視にて化粧液の含浸具合を確認したところ、実施例3のマスクは化粧液を十分に含浸していた。
[マスク装着試験3]
図31の(1)の線を右手または左手の親指と人差し指で鼻下部〜こめかみ部が支点になるように押さえながら、もう一方の手で図31の(2)、(3)、(4)部を各々ABC方向に顎に沿って引き伸ばしてマスク下面全体を顎下部に密着固定させた以外は、前述のマスク装着試験2と同様の方法で、マスク装着試験を行った。
前記した[リフトアップ効果判定基準]に従い、実施例3の化粧用マスクのリフトアップ効果について判定を行った。図32〜33の写真について、マスクの装着前のラベル位置を白丸、マスクの装着中に移動が認められたラベル位置を黒丸にてプロットして比較した。その結果、実施例3のマスクは1)〜4)全ての条件を満たしていることから「非常に効果あり」と判定した。また、ラベルの最大移動距離は、顎部/垂直方向に8mm(図33の(14)部位)、口元部/垂直方向に6mm(図33の(9)部位)、頬部/垂直方向に5mm(図33の(10)部)であり、顎部、口元部、頬部の何れの部位に対しても優れたリフトアップ効果を示した。
さらに、実施例3のマスクの使用感について被験者にインタビューを行った。結果を表4に示す。インタビューの結果、実施例3の化粧用マスクは、取り扱い易さ、装着感、密着感、引き締め感、リフトアップ感、液だれしにくさの全てにおいて、良好と評価された。また、実施例1および実施例2のマスクと比較すると、顎部のリフトアップ感には劣るが、顔面下部全体に均一に引き締め感を感じたと評価された。
Figure 0005201282
本発明の化粧用マスクは、顔面上下方向に適度な伸縮性と伸長時応力を有しているので、たるんだ頬やフェイスラインのリフトアップを図る使用法、その使用法を採用した美容法に好適である。具体的には、家庭にて使用される化粧用マスク、エステサロン等で使用される化粧用マスクに好適に使用することができる。

Claims (8)

  1. 非エラストマー性繊維層とエラストマー層とが積層一体化されてなる積層体で構成され、顔面の上下方向へ伸縮性を有することを特徴とする、化粧用マスク。
  2. 湿潤状態における50%伸長時の応力が0.4〜5.0N/25mmであり、かつ、湿潤状態における50%伸長時の伸長回復率が50%以上であることを特徴とする、請求項1記載の化粧用マスク。
  3. 湿潤状態における25%伸長回復時の応力が0.02〜1.5N/25mmであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の化粧用マスク。
  4. 非エラストマー性繊維層が、カーディング処理によって、繊維を一方向に配列して得られる繊維層であり、当該繊維の配列方向は、化粧用マスクの幅方向と一致するように構成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧用マスク。
  5. 非エラストマー性繊維層が、繊維層の厚み方向で繊維層内の繊維同士の交絡によって不織布化されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化粧用マスク。
  6. エラストマー層がメルトブローン法およびスパンボンド法からなる群から選ばれる少なくとも1種の方法で形成された不織布であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化粧用マスク。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の化粧用マスクの装着時に、こめかみ部、頬部または鼻下部のいずれか一点以上を支点に、顔面の下方向および/または左右斜め下方向に引き伸ばしながら装着することを特徴とする、化粧用マスクの使用方法。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の化粧用マスクを使用することを特徴とする美容方法。
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