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JP5297595B2 - 針状体および針状体製造方法 - Google Patents

針状体および針状体製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、針状体および該針状体の製造方法に関するものである。
生理活性物質の生体内への供給方法として、非経口投与が広く用いられている。また、非経口投与として、経皮投与が知られている。経皮経路で生理活性物質を供給する場合、角質層のバリア機能によって、生理活性物質の皮膚透過性が低下する。このため、経皮吸収型の生理活性物質は、比較的皮膚透過性能の高いものが選択されており、皮膚透過性の低い生理活性物質の経皮吸収生理活性物質への適用は難しいとされている。
近年、生理活性物質を経皮投与する方法として、微細な針状体を用いて経皮投与する方法が注目を集めている。微細な針状体を用いてバリア性の高い角質層を穿孔することで、生理活性物質の通過経路を形成し、経皮投与の効率を向上することが出来るため、一般的に経皮投与で用いられる脂溶性の生理活性物質だけではなく、水溶性の生理活性物質を経皮投与に適用できるという利点を有する。このとき、微細な針状体が角質層を貫通し、毛細血管や神経まで到達しないように設計することで、使用時に出血や痛みを伴わないようにすることが出来る。
上記経皮投与の目的で微細な針状体を用いる場合、微細な針状体は、皮膚を穿孔するための十分な細さ、および先端角、皮膚の最外層である角質層を貫通し、かつ神経層へ到達しない長さ、を有していることが望ましく、具体的には、針状体の直径は数μmから100μm程度、針状体の先端角度は30°以下、針状体の長さは数十μmから数百μm程度、であることが望ましいとされている。
経皮投与の目的で用いられる微細な針状体の多くは、針状体表面または針状体内部に形成される流路を含み、生理活性物質を含む溶液(以下、薬液と表記する)は、前記流路を介して供給する形態で適用される。また、針状体に含まれる薬液輸送のための経路に親水性を付与することで、流体の輸送を増強する方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、薬液を針状体表面に供給し、乾燥皮膜を形成する方法によって生理活性物質を針状体の表面に適用する方法が開示されている。この場合、針状体表面に湿潤性を向上する処理を施すことで、均一な乾燥皮膜を形成することができる。表面処理の方法としては、化学的前エッチング、プラズマ処理、熱処理、アルカリ性洗剤による洗浄および湿潤剤による洗浄が挙げられる(特許文献2参照)。
また、上述した微細な針状体を構成する材料としては、仮に破損した針状体が体内に残留した場合でも、人体に悪影響を及ぼさない材料であることが望ましく、材料としては医療用シリコン樹脂や、マルトース、ポリ乳酸、デキストラン等の生体適合性材料が有望視されている(特許文献3参照)。
また、上述した微細な針状体を製造する方法として、機械加工により針状体の原版を作成し、原版から複製版を作り、転写加工成形を行う製造方法が提案されている(特許文献4参照)。
特表2005−514179号公報 特表2006−500974号公報 特開2005−021677号公報 特表2006−513811号公報
経皮投与の目的で微細な針状体を用いる場合、針状体表面の濡れ性によっては、針状体表面へ付加可能な薬液量が制約される場合や、付加薬液量にばらつきが生じる場合がある。疎水性を呈する微細な針状体表面に対して水系の薬液を塗布する場合、表面張力によって薬液が概球形の液滴状態を維持するため、薬液が表面に対して均等に拡がらず、したがって針状体表面に保持する薬液量にばらつきが生じる。また、概球形の液滴状態で表面に位置する薬液は、微細な針状体を形成した基板を僅かに傾けるだけでも、基板外へ容易に放出されてしまう。これらの課題は、厳密に管理されるべき生理活性物質の微細な針状体への保持量の制御を困難とし、したがって微細な針状体を生体への生理活性物質投与に適用する上での大きな問題であった。
上記の問題を解決するためには、針状体表面と薬液との濡れ性を制御する方法が有効であり、これには薬液の濡れ性を改善する方法と、針状体表面の濡れ性を改善する方法がある。
薬液の濡れ性を改善する場合は、薬液に化学的修飾を施し、針状体表面との濡れ性を改善することが可能である。しかしながら、一般的に用いられている表面処理剤などの修飾用化学物質が生理活性物質の薬理活性に大きな影響を与える場合が多く、また、用いる修飾用化学物質が薬液に対して溶解性が低いために、修飾用化学物質が特に限定されてしまい、化学的修飾を施す薬液に所望の濡れ性を付与できないという問題点があった。
一方、針状体表面の濡れ性を改善する場合、表針状体表面に表面処理を施すことで、薬液との濡れ性を改善することが知られている。表面処理方法としては、プラズマ処理、熱処理、洗浄処理などの公知の処理方法が用いられる。表面が親水性に改質された針状体では、薬液が液滴状態で表面に保持されることは無く、均一に表面へ拡がる。これにより、針状体表面への薬液の均一な付加が実現されるが、一方では針状体の形成される基板上に薬液が塗り拡がるために基板の端部から薬液がこぼれ落ちてしまい、均一な薬液層が針状体表面上に形成できるものの、結果的に保持できる薬液量は極少量に限定されるという問題があった。
薬液量を制御する方法として、針状体の内部若しくは表面に、薬液を送液するための流路を形成し、前記流路に対し、所望の量の薬液を供給する方法が知られている。これらの方法は、生体内へ送達する薬液の量を精度良く制御できるという利点がある。
しかしながら、針状体に流路を形成する方法は、微細な針状体の内部または表面に流路を形成する必要があるため、作製する上での技術的な難度が高く、また製造工程が非常に複雑になることから、針状体の製造費用が増大するという課題があった。針状体を生体への生理活性物質投与に用いる場合、少なくとも生体液に接触する可能性のある部分、例えば針状体や、場合によっては針状体へ薬液を供給するためのシステムの一部を使い捨てにする必要が有るため、製造工程の複雑化に伴う製造費用の増加は、特に患者の医療費負担軽減の観点から深刻な問題であった。加えて、針状体に形成した流路に薬液を供給するための機構が必要となることから、システム全体としての費用はさらに上昇し、さらには、薬液供給システム全体が大型化するため、投与の簡便性が失われるという問題点もあった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、表面に十分な薬液を保持することが可能で、且つ薬液保持量を安定的に制御可能な針状体を提供すること、および前記針状体を安価に製造するための方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の本発明は、微細な針状体において、基板と、前記基板上に設けられた突起部と、を備え、前記突起部の表面および前記突起部の周囲の基板表面は、親水性を示す領域であり、前記親水性を示す領域の周囲の基板表面は、疎水性を示す領域であり、かつ、前記親水性を示す領域は前記疎水性を示す領域に包囲されており、かつ、該親水性を示す領域に薬液が保持されることを特徴とする針状体である。
なお、本明細書において、「針状体」とは、突起部が一本の場合に限定されず、突起部が複数本規則的に配列(例えば、アレイ状に配列)された構造体をも含むものとして定義する。
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の針状体であって、親水性を示す領域について、水の接触角が90度未満であり、疎水性を示す領域について、水の接触角が90度以上であることを特徴とする針状体である。
請求項3に記載の本発明は、請求項1または2のいずれかに記載の針状体であって、親水性を示す領域は光触媒を付加した領域であることを特徴とする針状体である。
請求項4に記載の本発明は、微細の針状体の製造方法において、基板上に突起部を形成する工程と、前記突起部が形成された前記基板上に、開口部を有するマスクを配置する工程と、前記開口部を有するマスクの開口部を介して、前記突起部の表面および前記突起部の周囲の基板表面を親水性に改質する工程と、前記開口部を有するマスクを取り除く工程と、前記親水性に改質された領域に薬液を保持する工程と、を備え、前記親水性に改質された領域が前記親水性に改質されていない領域により包囲されていることを特徴とする針状体製造方法である。
請求項5に記載の本発明は、微細な針状体の製造方法において、基板上に突起部を形成する工程と、前記突起部の表面および前記突起部の周囲の基板表面に、マスクを配置する工程と、前記マスクを配置した側から、基板表面を疎水性に改質する工程と、前記マスクを取り除く工程と、前記疎水性に改質していない領域に薬液を保持する工程と、を備え、前記疎水性に改質していない領域が前記疎水性に改質した領域に包囲されていることを特徴とする針状体製造方法である。
本発明の針状体は、突起部の表面および記突起部の周囲の基板表面は、親水性を示す領域であり、前記親水性の領域の周囲の基板表面は、疎水性を示す領域であることを特徴とする。薬液を保持するのに好適な親水性の領域を疎水性の領域により囲むことにより、親水性の領域から薬液が流れ落ちることを防ぐことが出来る。よって、基板の端部から薬液がこぼれ落ちることを抑制することが出来る。
以下、本発明による針状体の説明を行う(図1)。
本発明の針状体は、
基板と、
前記基板上に設けられた突起部と、を備え、
前記突起部の表面および前記突起部の周囲の基板表面は、親水性を示す領域であり、
前記親水性の領域の周囲の基板表面は、疎水性を示す領域であること
を特徴とする。
基板は、突起部を支持するために設けられる。基板は、突起部を支持するだけの機械的強度があれば特に限定はされない。また、突起部と同一の材料から形成されても、突起部とは異なる材料から形成されても良いが、生体に対して低刺激の材質であることが好ましい。また、曲面に対しても面に対して均一な押圧が出来るように柔軟性を持つことが好ましい。
本発明の針状体においては、突起部の形状、突起部の寸法、突起部を構成する材料等は制限されることは無い。経皮投与の目的で微細な針状体を用いる場合、突起部の直径は数μmから数百μm、長さは数十μmから数百μm程度のものであることが望ましい。
突起部を形成する材料については特に限定されないが、針状体を生体の皮膚に対して使用する場合、生体に悪影響を及ぼさない材質で突起部が形成されることが好ましい。この場合、医療用シリコン樹脂や、マルトース、ポリ乳酸、デキストラン、Mg系化合物、Ti系化合物等の生体適合材料が好適に用いられる。
本発明の針状体は、基板表面に、疎水性領域に包囲された親水性領域を有することを特徴とする。
例えば、具体的には、前記親水性領域において、水の接触角は90度未満が好ましく、更には、水の接触角が50度未満であることがより好ましい。また、前記疎水性領域において、水の接触角は90度以上であることが好ましく、更には、130度以上であることがより好ましい。
本発明の針状体においては、親水性領域を包囲する疎水性領域によって、親水性領域に保持された薬液が流出するのを抑制する効果を有しており、親水性領域と疎水性領域水の接触角の差が大きいほど、薬液の流出抑制効果が大きくなる。
本発明による針状体は、表面の濡れ性を制御した領域を選択的に配置することで、所望の領域に薬液を選択的に保持することを可能とするものであるが、針状体表面へ所望量の薬液を供給した後に、薬液の表面への保持状態を強化する処置を施しても構わない。例えば、薬液中の溶媒をある程度放出するための処置を施すことで、薬液自体の粘性が高くなることを利用して、針状体表面の薬液付着状態を補強しても良い。薬液中の溶媒をある程度放出するための処置としては、例えば、減圧や加熱などを行っても良い。
図1に示す本発明の針状体の概略図においては、基板中央部に設けられた一つの親水性領域が、一つの疎水性領域に包囲された配置を例示しているが、親水性領域が疎水性領域に包囲されるという要件を満たしていれば、複数の親水性領域が基板上に配置されてもよい。
本発明の針状体は、基板表面に、疎水性領域に包囲された親水性領域を有することで、水系薬液を親水性領域内に選択的に保持することを可能とするものであるが、油系薬液の場合、親水性表面に対して油系薬液の接触角が大きいために、本発明の効果は得られない。この場合は、本発明の親水性領域と疎水性領域の配置を入れ替えることで、本発明と同様の、薬液の保持量増加と保持量安定性向上の効果が得られる。
本発明の針状体では、疎水性領域が、親水性領域からの薬液の流出を防止する機能を有するが、周辺領域の疎水性が不十分な場合は疎水性を補強する処置を施しても良い。また、親水性領域と疎水性領域に、疎水性領域の方が高くなるよう段差構造を設けることで、薬液流出防止効果を補強することも可能である。但し、この場合、段差を形成するための工程が必要となる。また、段差が皮膚穿刺時に障害物となって突起部の穿刺性能を低下させる場合があるので、段差構造は、穿刺への影響を考慮した高さ、配置で形成されなくてはならない。
本発明による微細な針状体への薬液の供給方法は特に制限されない。基板に形成された親水性領域に直接薬液を供給してもよく、また、突起部が形成された基板に形成された親水性領域と、突起部が形成された面とは別の面とを連結する貫通口を設け、突起部が形成された面とは別の面側から、薬液を供給しても良い。この場合、基板に設けられた貫通口内壁表面も親水性を有することが望ましい。
以下、本発明の針状体の製造方法について、図2を用いながら具体的に説明を行う。
本発明の針状体の製造方法は、針状体にマスクを施し、マスク外の表面を親水性/疎水性に表面加工を行うことを特徴とする。
図2(a)に示す微細な針状体の作製には、針状体の形状に応じて適宜公知の製造方法を用いて良い。このとき、微細加工技術として、例えば、リソグラフィ法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、サンドブラスト法、レーザー加工法、精密機械加工法などを用いても良い。また、前記微細加工技術により母型を作製し、この母型と成形材料とを用いて、転写成形法によって微細な針状体を作製することもできる。また、母型から複製型を作製し、この複製型と成形材料とを用いて、転写成形法によって微細な針状体を作製することも可能である。転写成形法としては適宜公知の製造方法を用いて良く、例えば、射出成形法、押し出し成形法、インプリント法、キャスティング法等を、好適に用いることが出来る。
針状体表面の所望の領域に対し選択的に表面処理を実施するために、所望の領域に対応する開口を有するマスクを準備する。マスクの材質や形態は特に制限されない。針状体表面を親水性、または疎水性に改質する表面処理に対して、パターン部と遮蔽部が十分な選択性を有していれば良い。例えば、親水処理を施す領域に対応した開口を有するマスクを準備し、図2(b)に示すように前記マスクを突起部の直上の所定の位置に配置した後に、図2(c)に示す通りに親水処理を施すことで、前記マスクの開口部に対応した領域のみに、図2(d)に図示される通りの親水性領域を形成することが出来る。逆に、疎水処理を施す領域に対応した開口を有するマスクを準備し、前記マスクを突起部の直上の所定の位置に配置して疎水処理を施すことで、前記マスクの開口部に対応した領域のみに疎水領域を形成しても良い。
針状体表面を親水性、または疎水性に改質する方法は、所望する表面特性に応じて適宜公知の処理方法を用いて良い。このとき、表面処理方法として、例えばオゾン照射、紫外線やX線等の電磁波照射、電子線照射、プラズマ照射、表面への特性改質物質付加、光触媒の付加等を好適に用いることができる。
生体適合性材料であるポリ乳酸から作製された微細な針状体では、突起部の形成された面の所望の領域にオゾン処理を実施することで、処理表面を施した領域を、水の接触角が90度以下の親水性に容易に改質できる。表面処理が施されない表面は、水の接触角が100度程度のポリ乳酸の疎水性表面が維持され、本発明による針状体が得られる。
また、表面親水処理を、親水性を促進する物質の付加により実施することも可能である。この方法により、表面改質による親水性の付加が困難な物質に対して、本発明を適用できるようになる。ただし、突起部を生体の皮膚に対して用いる場合は、前記親水性を促進する物質が生体に悪影響を及ぼさない物質であることが望ましい。親水性物質の付加方法については特に制限されず、適宜公知の処理方法を用いて良い。このとき、例えばスプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法、蒸着法、グラフト重合法等を好適に用いることが出来る。親水性を促進する物質としては、例えばポリビニルアルコール、リン脂質化合物等が挙げられる。
表面親水処理を、光触媒効果によって実施することも可能である。酸化チタンに代表される光触媒を、針状体表面の所望の領域に付加し、励起光を照射することで、所望の領域の親水性を向上することができる。または、針状体表面全面に光触媒を付加し、マスクを用いて励起光の照射領域を限定することで、所望の領域への選択的な親水処理を施すことも可能である。このとき、マスクとしては励起光を遮光する性能を満たす必要がある。
また、所望の領域に疎水処理を施すことも可能である。例えば、水系薬液に対する疎水領域を設ける場合、フッ素系ガス処理による表面フッ化を用いることも出来る。フッ化された表面は、水系薬液に対し疎水性を示す。
また、例えば、石英から形成される微細な針状体表面は、親水性を示す。同様に、表面に存在する自然酸化膜のために、シリコンから成る微細な針状体表面も、親水性を示す。石英または自然酸化膜が形成されたシリコン表面の親水性を疎水性に改質する場合、例えば、ヘキサメチルジシラザン溶液による表面処理によって表面にメチル基を付与し、疎水性表面を得ることが可能である。また、例えば、自然酸化膜が形成されたシリコン表面を、フッ酸水溶液で処理することで、表面の自然酸化膜を除去し、表面のシリコン原子のダングリングボンドを水素原子で終端して、疎水性表面を得ることも可能である。したがって、マスクを用いて、所望の領域に上記の疎水処理を実施することで、疎水性領域を選択的に形成することが可能である。
上記の通りマスクを介して所望の領域に表面改質処理した後に、マスクを取り除くことによって、図2(e)に示す通り、本発明の針状体を製造することが出来る。
以下、本発明の針状体の製造方法の実施の一例として、具体的に図2を用いながら説明を行う。当然のことながら、本発明の針状体の製造方法は下記実施例に限定されず、類推できる他の製造方法をも含むものとする。また、本発明の針状体は、下記の実施例にて作製された針状体に限定されるものではない。
まず、精密機械加工を用いて、シリコン基板に、正四角錐の突起部(高さ:150μm、底面:60μm×60μm)が、1mm間隔で、5列5行の格子状に25本配列した針状体を形成した。25本の突起部は、一辺が約4mmの正方形領域内に配置された。
次に、前記シリコン基板で形成された針状体に、スパッタ法によりニッケル導電層を100nmの厚さに形成した。この導電層は、続いて行う電解メッキにおけるシード層となる。
次に、前記シード層上に、電解メッキ法によってニッケル膜を500umの厚さに形成した。
次に、90℃に加熱した重量パーセント濃度30%の水酸化カリウム水溶液によって前記シリコン基板をウェットエッチングして完全に除去することにより、ニッケルから成る針状体の複製型を作製した。
次に、前記複製型を用い、インプリント法によってポリ乳酸への針状体転写成形を実施し、ポリ乳酸から複製型を剥離した。
以上により、図2(a)に示す、基板1と突起部2から成る、ポリ乳酸製の針状体10が得られた。針状体10は、一辺が約8mmの正方形の基板1上に、正四角錐(高さ:150μm、底面:60μm×60μm)の突起部2が、1mm間隔で、5列5行の格子状に25本配列した形態であり、25本の突起部2は、一辺が約4mmの正方形領域内に配置された。
次に、前記針状体10の表面状態を調べるため、接触角の測定を実施した。前記針状体10を水平なステージ上に静置し、純水を滴下して測定した結果、前記針状体10の表面に対する水の接触角は、約100度であった。
次に、マスクを準備した。一辺が10mmの正方形で、厚さ1mmのシリコン樹脂を準備し、シリコン樹脂の中央部に一辺が5mmの正方形の開口部を形成した。次いで、図2(b)に示す通り、針状体10上に、開口部3が形成されたマスク4を、開口部3に針状体10の突起部2が全て露出する位置に合わせて重ねた。
次に、図2(c)に示すように、表面親水化手段の一つであるオゾン処理5を、マスク4の開口3を介して選択的に実施した。この処理によって、図2(d)に示すように、親水処理された表面6が、針状体10表面の一部に対して選択的に形成された。
次に、針状体10からマスク4を取り外し、図2(e)に示す通りの、本名発明による針状体11が得られた。
次に、本発明の効果を確認するため、針状体11を用いて、親水処理が施された領域6、およびマスク4により親水処理に曝されなかった領域7における水の接触角度を測定した。前記針状体11を水平なステージ上に静置し、純水を滴下して測定した結果、親水処理が施された領域6表面における水の接触角は約40度であり、一方親水処理に曝されなかった領域7表面における水の接触角は約100度であった。この結果から、本実施例における選択的な表面処理の有効性が確認された。
次に、針状体11の親水性領域に、スポイトを用いて蛍光粒子を分散した水系の薬液を滴下したところ、親水処理が施された領域6では薬液が均等に拡がった。微量の薬液を滴下しただけで、薬液は一辺が約5mmの正方形の領域に均等に拡がったが、その後約10倍の薬液を滴下しても、一辺が約5mmの正方形の領域を超えて薬液が拡がることは無かった。薬液の拡がりが停止した領域を、蛍光粒子の励起光を照射しながら光学顕微鏡で観察したところ、薬液領域に蛍光発光が集中的に確認され、一方それ以外の領域では蛍光発光は確認されなかった。このことから、親水処理が施された領域6と、マスク4によって親水処理に曝されなかった領域7との境界において、薬液の拡がりが停止していることを確認した。
本発明の針状体の一例を示す概略図である。 本発明の針状体製造方法の製造工程の一例を経時的に説明するための概略部分断面図である。
符号の説明
1……基板
2……突起部
3……マスク開口部
4……マスク
5……表面改質手段
6……改質された表面
7……表面改質から遮蔽された表面
10……針状体
11……針状体

Claims (5)

  1. 微細な針状体において、
    基板と、
    前記基板上に設けられた突起部と、を備え、
    前記突起部の表面および前記突起部の周囲の基板表面は、親水性を示す領域であり、
    前記親水性を示す領域の周囲の基板表面は、疎水性を示す領域であり、かつ、
    前記親水性を示す領域は前記疎水性を示す領域に包囲されており、かつ、
    該親水性を示す領域に薬液が保持されること
    を特徴とする針状体。
  2. 請求項1に記載の針状体であって、
    親水性を示す領域について、水の接触角が90度未満であり、
    疎水性を示す領域について、水の接触角が90度以上であること
    を特徴とする針状体。
  3. 請求項1または2のいずれかに記載の針状体であって、
    親水性を示す領域は光触媒を付加した領域であること
    を特徴とする針状体。
  4. 微細の針状体の製造方法において、
    基板上に突起部を形成する工程と、
    前記突起部が形成された前記基板上に、開口部を有するマスクを配置する工程と、
    前記開口部を有するマスクの開口部を介して、前記突起部の表面および前記突起部の周囲の基板表面を親水性に改質する工程と、
    前記開口部を有するマスクを取り除く工程と、
    前記親水性に改質された領域に薬液を保持する工程と、
    を備え
    前記親水性に改質された領域が前記親水性に改質されていない領域により包囲されていることを特徴とする針状体製造方法。
  5. 微細な針状体の製造方法において、
    基板上に突起部を形成する工程と、
    前記突起部の表面および前記突起部の周囲の基板表面に、マスクを配置する工程と、
    前記マスクを配置した側から、基板表面を疎水性に改質する工程と、
    前記マスクを取り除く工程と、
    前記疎水性に改質していない領域に薬液を保持する工程と、
    を備え
    前記疎水性に改質していない領域が前記疎水性に改質した領域に包囲されている
    ことを特徴とする針状体製造方法。
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