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JP5296444B2 - クランクシャフトのセンタ穴加工装置及び加工方法 - Google Patents

クランクシャフトのセンタ穴加工装置及び加工方法 Download PDF

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JP5296444B2 JP2008195806A JP2008195806A JP5296444B2 JP 5296444 B2 JP5296444 B2 JP 5296444B2 JP 2008195806 A JP2008195806 A JP 2008195806A JP 2008195806 A JP2008195806 A JP 2008195806A JP 5296444 B2 JP5296444 B2 JP 5296444B2
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Description

本発明は、素材状態のクランクシャフト(素材クランクシャフト)の両端面に加工用センタ穴を形成するためのセンタ穴加工装置及びその方法に関する。
クランクシャフトは、エンジンに組み込まれて使用されるために、回転アンバランスがあると、エンジン回転時に振動が生じる等の問題が発生する。このために、クランクシャフトの回転アンバランス量(以下、単にアンバランス値と記す)を所定の許容値以内にすることが必要である。このクランクシャフトのアンバランス値を許容値内にするためには、クランクシャフトの加工基準となるセンタ穴の位置が重要となる。
そこで、例えばバランス測定器により素材状態のクランクシャフト(素材クランクシャフト)を実際に回転させることにより素材のバランス測定を行い、素材クランクシャフトのバランス中心軸を見つけ出し、その中心軸上のクランクシャフト両端面にセンタ穴を形成して加工が行われる。また、加工の最終段階で再度バランス測定器により中心軸周りのバランス測定を行い、アンバランスがあった場合には、カウンタウェイトに穴を開けることによりバランス調整を行うようにしている。
ここで、素材クランクシャフトが設計データ通りの理想的な形状に仕上がっていれば、メインジャーナルの中心にセンタ穴を形成することにより、アンバランス値を容易に許容値内にすることができる。仮に、その後の加工によってバランスがずれたとしても、最終的にカウンタウェイトに穴を開けてバランス調整を容易に行うことができる。
しかしながら、実際には、鋳造型、鍛造型の不良や、トリミング・型抜き時の影響等によって、素材クランクシャフトには偏肉が生じていることがある。ここで、素材クランクシャフトのほとんどの加工はメインジャーナル円筒部及びピンジャーナル円筒部に対して行われるので、各円筒部における偏肉は解消されることとなるが、加工がほとんどなされないカウンタウェイトは偏肉が残った状態となっており、全体としては、依然として質量アンバランスが残っていることになる。
その結果、最終のバランス調整時に、カウンタウェイトに穴を開けて調整しても、クランクシャフト全体としてバランスがとれないことがある。また、例えば、所定のサイクルタイム以内にバランス調整ができないと不良品であるとして扱われる様な場合には、バランス調整時に開けることのできる穴の量に限界があって、アンバランス値を許容値内にすることができないことになる。
また、クランクシャフトとして必要不可欠な箇所を取り去らない限りバランスを許容値内にすることができない場合も生じうる。
このように、クランクシャフトのアンバランス値を許容値内にすることができない場合には、バランス測定によってセンタ穴加工位置のずれ量を算出してセンタ穴加工工程にそのずれ量をフィードバックし、センタ穴加工工程の処理の修正を行うことが必要となる。この場合には、ずれ量がフィードバックされる前にセンタ穴が加工された素材クランクシャフトは不良品となってしまう。また、素材製作ロットが変ってしまうと、変わるたびにずれ量のフィードバックをする必要があり、多大な工数がかかる問題がある。
ここで、クランクシャフトのセンタ穴位置を決定する技術として、特許文献2に示された方法がある。ここでは、素材クランクシャフトの両端面における動バランス点を動バランス試験により求めて、その後に、素材クランクシャフトのジャーナル部等の形状を測定し、その測定結果から加工後に発生するアンバランスを演算的に求め、動バランス点からアンバランス量だけ移動した補正位置にセンタ穴を形成する技術が開示されている。
また、素材クランクシャフトの円筒部幾何中心を求めて、この円筒部幾何中心にセンタ穴を形成し、その後センタ穴を基準に加工を進めていき、最終的にカウンタウェイトに穴を形成する等によりバランス調整を行う技術も実施されている。
特開昭51−76682号公報
特許文献1を含む従来のセンタ穴加工装置及び方法では、素材クランクシャフトの形状を測定した状況と、この測定によって得られたデータに基づいてセンタ穴を加工するときの状況との間に、一般的にはずれが生じる。
例えば、円筒部幾何中心にセンタ穴を形成する場合は、通常、クランクシャフトの2個所の基準円筒部をクランプし、そのクランプ中心にセンタ穴を形成する。ここで、クランプをしている基準円筒部が正確な円形の場合は問題はないが、素材成形時の上型と下型のずれ等により、クランクシャフトがひずんでいた場合は、クランプ時にクランクシャフトが移動、回転し、正確なクランプができず、幾何中心にセンタ穴を形成することができない。
本発明の目的は、クランクシャフトの適切な位置に、センタ穴を容易かつ精度良く形成することのできる技術を提供することにある。
第1発明に係るセンタ穴加工装置は、素材クランクシャフトの両端面に加工用センタ穴を形成するための装置であって、メインクランパと、測定用チャックと、加工部と、を備えている。メインクランパは素材クランクシャフトを把持して固定する。測定用チャックは、メインクランパに把持された状態の素材クランクシャフトの両端部をチャックし、メインクランパに把持された状態の素材クランクシャフトの姿勢が維持されたままの素材クランクシャフトの形状を測定するためのチャックである。加工部はメインクランパに把持された素材クランクシャフトの両端部にセンタ穴を形成する。
この装置では、素材クランクシャフトがメインクランパに把持されて固定される。そして、素材クランクシャフトは、このメインクランパに固定された姿勢を維持した状態で、測定用チャックにチャックされ、形状が測定される。形状の測定が終了すれば、測定用チャックにチャックされている素材クランクシャフトは再度メインクランパに固定される。そして、このメインクランパに固定された状態で、加工部により素材クランクシャフトの両端面にセンタ穴が形成される。
ここでは、メインクランパに固定された姿勢のまま形状が測定され、かつ形状が測定された姿勢を維持した状態で再度メインクランパに固定して加工を行うことができる。すなわち、形状の測定と加工とを、全く同じ状況(姿勢)で行うことができる。したがって、形状測定で得られた素材形状データに基づいてセンタ穴を形成した場合、形状データに基づいた最適な位置に、容易にかつ正確にセンタ穴を形成することができる。
第2発明に係るセンタ穴加工装置は、第1発明の装置において、メインクランパは、加工部による素材クランシャフトの加工時に、測定用チャックに把持された素材クランクシャフトの姿勢が維持された状態で把持する。
ここでは、加工時において、素材クランクシャフトを測定時の姿勢が維持されたまま加工するので、前記同様に、形状データに基づいた最適な位置に、容易にかつ正確にセンタ穴を形成することができる。
第3発明に係るセンタ穴加工装置は、第1又は第2発明の装置において、測定用チャックに把持された素材クランクシャフトの形状を測定する形状測定部をさらに備え、加工部は形状測定部からの測定データに基づいてセンタ穴を加工する。
この装置では、前記同様に、素材クランクシャフトが、メインクランパに固定された姿勢を維持した状態で測定用チャックにチャックされ、形状測定部によって形状が測定される。そして、この測定により得られた形状データに基づいて加工部により素材クランクシャフトの両端面にセンタ穴が形成される。また、加工時には、形状測定時の姿勢が維持されてメインクランパに固定され、加工が行われる。したがって、形状データに基づいた最適な位置に、容易にかつ正確にセンタ穴を形成することができる。
第4発明に係るセンタ穴加工装置は、第1から第3発明のいずれかの装置において、加工部は、素材クランクシャフトの両端面にフライス加工を行うフライス加工部と、フライス加工された素材クランクシャフトの両端面にセンタ穴を形成するドリル加工部と、を有している。
ここでは、まず素材クランクシャフトの両端面がフライス加工され、その後、ドリル加工によってセンタ穴が形成される。
第5発明に係るセンタ穴加工装置は、第1から第4発明のいずれかの装置において、測定用チャックと加工部とは、1つの移動自在な部材に支持されて、メインクランパに把持された素材クランクシャフトの両端面に選択的に対向可能である。
ここでは、測定時には、メインクランパに固定された素材クランクシャフトの両端面と対向する位置に測定用チャックを移動させる。また、素材クランクシャフトの形状測定が終了し、加工を行う場合は、メインクランパに固定された素材クランクシャフトの両端面と対向する位置に加工部を移動させる。
この場合は、素材クランクシャフトの形状測定及び加工を自動で行うことが可能になり、作業が容易になる。
第6発明に係るセンタ穴加工装置は、第1から第5のいずれかの装置において、メインクランパ、測定用チャック及び加工部の作動を制御する制御部をさらに備えている。そして、各構成部は制御部の制御によって以下のように作動する。
まず、メインクランパは素材クランクシャフトを把持して固定する。次に、測定用チャックはメインクランパに把持された状態の素材クランクシャフトの両端部を、メインクランパに把持された姿勢のままでチャックする。そして、メインクランパは、測定用チャックにチャックされた素材クランプの把持を解除し、測定用チャックは素材クランクシャフトの形状測定の際に素材クランクシャフトをチャックし続ける。さらに、メインクランパは測定用チャックにチャックされ形状測定が終了した素材クランクシャフトを測定用チャックに把持された姿勢のままで再度把持して固定し、測定用チャックはメインクランパに把持された素材クランクシャフトのチャックを解除する。そして、加工部はメインクランパに把持して固定された素材クランクシャフトを加工する。
ここでは、素材クランクシャフトの形状測定からセンタ穴を形成するまで、自動化によって実行することができる。
第7発明に係るセンタ穴加工方法は、以下のステップを備えている。
(1)素材クランクシャフトをメインクランパにより把持して固定する第1ステップ。
(2)メインクランパに把持された状態の素材クランクシャフトの両端部を、測定用チャックによりチャックする第2ステップ。
(3)測定用チャックにチャックされて、メインクランパに把持された状態の素材クランクシャフトの姿勢が維持されたままの素材クランクシャフトの形状を測定する第3ステップ。
(4)形状測定が終了した素材クランクシャフトを、測定用チャックに把持された姿勢のままでメインクランパにより再度把持して固定する第4ステップ。
(5)メインクランパに把持された素材クランクシャフトの両端面にセンタ穴を形成する第5ステップ。
を備えたセンタ穴加工方法。
本発明によれば、素材クランクシャフトの形状測定と加工とを、全く同じ状況(姿勢)で行うことができるので、形状データに基づいた最適な位置に、容易にかつ正確にセンタ穴を形成することができる。
[クランクシャフト加工システム]
図1に、本発明の一実施形態に係るセンタ穴加工機10を含むクランクシャフト加工システムを示す。このクランクシャフト加工システム100は、素材クランクシャフトの両端面にセンタ穴を加工するセンタ穴加工機10と、素材クランクシャフトの両端面に加工されるセンタ穴の位置を決定する処理装置の一例としてのコンピュータ20と、センタ穴が加工された素材クランクシャフトに対して所定の加工を行うクランクシャフト加工機30とを有する。
センタ穴加工機10は、素材クランクシャフトの形状を測定するための測定手段の一例としての形状測定機11を備えている。
形状測定機11は、例えば、レーザ変位計、赤外線変位計、LED式変位センサ等の非接触変位計、又は、作動トランス等の接触式変位計を有し、変位計からの測定値に基づいて素材クランクシャフト1の形状を測定する。本実施形態では、後述するように、素材クランクシャフト1のカウンタウェイトの外形形状のみを測定している。なお、形状測定機11は、測定対象を複数の異なる位置から測定することにより、素材クランクシャフトの形状全体を3次元形状データとして生成する3次元デジタイザ(イメージスキャナ)であってもよい。
コンピュータ20は、CPU(Central Processing Unit)21と、ROM(Read Only Memory)22と、RAM(Random Access Memory)23とを有する。
ROM22は、CPU21に実行させる各種プログラムや各種情報を記憶する。本実施形態では、ROM22は、後述する素材クランクシャフト1のセンタ穴の位置を決定する処理のプログラムを記憶している。また、ROM22は、素材クランクシャフト1の設計上の3次元形状データ(以下、3次元形状設計データという)を記憶する。この3次元形状設計データからは、素材クランクシャフト1の各カウンタウェイトの設計上の外形形状データを取得することができる。また、ROM22は、素材クランクシャフト1に対するクランクシャフト加工機30で実行する加工内容を記憶している。
RAM23は、プログラムやデータを記憶する領域として、あるいはCPU21による処理に使用しているデータを格納する作業領域として利用される。
[素材クランクシャフト]
図2に示した素材クランクシャフトは、本発明の一実施形態によるセンタ穴加工機10によって加工される素材クランクシャフトの一例であり、ここでは直列4気筒エンジン用の素材クランクシャフトを示している。この素材クランクシャフト1は、図3に示すように、上型2と下型3とを用いて鍛造により成形されたものである。なお、鋳造によって成形された素材クランクシャフトについても、本発明を同様に適用できることはもちろんである。
素材クランクシャフト1は、メインジャーナルJ(J1〜J5)と、ピンジャーナルP(P1〜P4)と、カウンタウェイトCW(CW1〜CW8)とを有する。素材クランクシャフト1においては、Z軸方向に、メインジャーナルJ1、カウンタウェイトCW1、ピンジャーナルP1、カウンタウェイトCW2、メインジャーナルJ2、カウンタウェイトCW3、ピンジャーナルP2、カウンタウェイトCW4、メインジャーナルJ3、カウンタウェイトCW5、ピンジャーナルP3、カウンタウェイトCW6、メインジャーナルJ4、カウンタウェイトCW7、ピンジャーナルP4、カウンタウェイトCW8、メインジャーナルJ5の順に並んでいる。
[センタ穴加工機の構成]
図4はセンタ穴加工機10の平面図である。また、図5は図4の矢印A方向から視た斜視部分図であり、図6は矢印B方向から視た斜視部分図である。
このセンタ穴加工機10は、ベース部12と、ベース部12の両端に対向して配置された1対の側部13a,13bと、から構成されている。1対の側部13a,13bはベース部12に対して図4の上下方向(X軸方向)、紙面垂直方向(Y軸方向)及び左右方向(Z軸方向)に移動可能である。
そして、このセンタ穴加工機10は、ベース部12に固定した配置されたメインクランパ15と、水平方向に対向して配置された1対の求芯チャック(測定用チャック)16と、同様に水平方向に対向して配置された1対の加工刃具(加工部)17と、形状測定機11としてのレーザ変位計(図7参照)と、を備えている。求芯チャック16及び加工刃具17は、側部13a,13bに配置されており、図示しない駆動部によって1対の側部13a,13bが移動されることにより、それぞれがメインクランパ15に固定された素材クランクシャフト1の端面と対向する位置に移動することが可能である。
メインクランパ15は、素材クランクシャフト1を把持して固定するものであり、両端のメインジャーナルJ1,J5を横方向(X軸方向)から把持する1対の第1把持部15a及び第2把持部15bと、軸方向中間部の2つのカウンタウェイトを軸方向外側から挟み込んで把持する1対の第3把持部15c(図7の「長手位置決め」で示される把持部を参照)と、を有している。
1対の求芯チャック16のそれぞれは、等角度間隔で配置された3つのチャック爪16a,16b,16cを有しており、回転軸P(図7参照)の回りに回転可能である。なお、求芯チャック16の3つのチャック爪16a〜16cは、ワーク(素材クランクシャフト)の形状に倣って自在に移動し、ワークを把持可能である。
加工刃具17は、素材クランクシャフト1の端面をフライス加工するための刃17aと、端面にセンタ穴を形成するためのドリル刃17bと、を有している。なお、ドリル刃17bはフライス加工用の刃17aに対して内側(奥側)に配置されている。したがって、フライス加工用の刃17aでフライス加工する際には、ドリル刃17bが素材クランクシャフトの端面に干渉することはない。一方、ドリル刃17bによってドリル加工する際には、フライス加工用の刃17aは素材クランクシャフトの端面の外側に被さるように配置されることになり、このフライス加工用の刃17aがドリル加工時に素材クランクシャフトの端面に干渉することはない。そして、フライス加工用の刃17a及びドリル刃17bともに、回転軸Q(図7参照)の回りに回転可能である。
[センタ穴加工機の制御処理]
以上のように構成されたセンタ穴加工機10の制御処理を、図7の動作シーケンス図を用いて説明する。
図7のステップS1では、メインクランパ15のセンタ位置に素材クランクシャフト1を配置し、長手方向(軸方向)の位置決めを行うためにメインクランパ15の第3把持部15cによって素材クランクシャフト1のカウンタウェイトを軸方向外側から挟み込んで固定する。
次にステップS2においては、第1及び第2把持部15a,15bにより素材クランクシャフト1の両端部であるメインジャーナルJ1,J5を把持し、その後第3把持部15cによるカウンタウェイト部分の把持を解除する。これにより、素材クランクシャフト1がメインクランプ15に強固に固定されたことになる。
ステップS3では、素材クランクシャフト1をメインクランパ15により強固に把持した状態で、1対の側部13a,13bを素材クランクシャフト1に近づくようにZ軸方向に移動させ、1対の求芯チャック16により素材クランクシャフト1の両端部を把持する。このとき、素材クランクシャフト1はメインクランパ15により強固に把持されているので、求芯チャック16の性質上、各チャック爪16a〜16cはメインクランパ15に把持されたワーク(素材クランクシャフト1)の姿勢に倣って自在に移動し、素材クランクシャフト1を把持する。すなわち、求芯チャック16に把持された素材クランクシャフト1は、メインクランパ15に把持された姿勢を維持している。
以上のようにして、素材クランクシャフト1が求芯チャック16に把持された後、ステップS4ではメインクランパ15の第1及び第2把持部15a,15bによる把持を解除する。
次にステップS5では、求芯チャック16を回転させて素材クランクシャフト1を回転させ、かつレーザ変位計11をZ軸方向に走査して、素材クランクシャフト1の形状データを得る。なお、この素材クランシャフト1の形状を測定して得られた測定データから実形状データを再現処理し、センタ穴位置を決定する処理については、後述する。
以上のステップS5において素材クランクシャフト1の形状測定が終了した後は、素材クランクシャフト1の姿勢は、形状測定を行う前のステップS3における姿勢となっている。この状態で、ステップS6では、素材クランクシャフト1を求芯チャック16に把持したまま、メインクランパ15の第1把持部15a及び第2把持部15bにより素材クランクシャフト1を強固に把持する。
ステップS7では、求芯チャック16による素材クランクシャフト1の把持を解除した後、1対の側部13a,13bを素材クランクシャフト1から離れる方向に移動させて、求芯チャック16を素材クランクシャフト1から離す。
次にステップS8では、1対の側部13a,13b、すなわち加工刃具17を、素材クランクシャフト1側(X軸方向)に移動させた後、素材クランクシャフト1の軸方向(Z軸方向)に移動させる。そして、加工刃具17をさらにX軸方向に移動させながら素材クランクシャフト1の端面をフライス加工する。なお、このとき加工刃具17においては、前述のように、ドリル刃17bがフライス加工時に邪魔になることはない。
ステップS9では、加工刃具17を、センタ穴位置データに基づいてX軸方向及びY軸(垂直)方向に移動する。なお、センタ穴位置データは、前述のステップS5における素材クランクシャフト1の形状測定により得られた測定データから実形状データを演算により再現処理し、その結果から求められたものである。これらの処理については後述する。加工刃具17がセンタ穴位置に移動させられた後は、加工刃具17のドリル刃17bを駆動してZ軸方向に前進させる。これにより、素材クランクシャフト1の端面における最適中心位置にセンタ穴が形成される。
そしてステップS10では、加工刃具17をZ軸方向において退避させ、メインクランパ15の第1及び第2把持部15a,15bによる素材クランクシャフト1の把持を解除し、センタ穴加工処理を終了する。
[実形状データの再現処理]
以下、前述のステップS5において得られた素材クランクシャフト1の測定データから、実形状データを再現する処理について説明する。
ここで、素材クランクシャフトの設計寸法との誤差は、多くの場合、成型時に上型と下型の相互間のずれによって生じている。この型ずれによる誤差としては、クランクシャフトの軸方向(Z軸方向)にずれている場合、横方向(X軸方向)にずれている場合、型同士が離れている場合(Y軸方向のずれ)、型の合わせ面が減って型同士が近づいている場合(Y軸方向のずれ)、型同士で角度ずれがある場合、これらが複合する場合がある。いずれの場合においても、上型、下型それぞれから成形されている各部位については、ほぼ型通りに仕上がっている。したがって、ここでは、各型によって成形された各部位がどのように変位しているのかを知ることにより、実形状を容易にかつ正確に再現し、効果的なセンタ穴位置を決定することを実現するようにしている。
なお、素材誤差としては、素材の曲がりによる誤差も含まれる。しかし、素材の曲がりの多くは、各部位の形状は変形せずに、全体として大きな曲がりとなる傾向がある。したがって、曲がり誤差についても、各部位の変位を知ることにより、実形状を再現することができる。
<各部位について>
以上から明らかなように、素材クランクシャフトの実形状を再現するためには、クランクシャフトを複数の部位に分けて処理することが効果的であることがわかる。ここでは、図9に示すように、クランクシャフトを各円筒部及び各カウンタウェイトに分け、さらにこれらの部位を上型と下型で成形される部位に分けて解析することとする。そして、各ジャーナルについてはアンバランスにほとんど影響を与えないので、本実施形態では、各カウンタウェイトについてのみ処理を実行することとする。
<素材の実形状測定処理>
前述のように、形状測定機としてのレーザ変位計11によって素材クランクシャフト1の形状を測定する。測定個所は、クランクシャフトの各部位の変位量がわかる位置とする。具体的には、図10の●で示すように、各カウンタウェイトの外周輪郭位置及び側面軸方向位置である。なお、図10では測定位置を模式的に示したものであり、実際はより多くの位置で形状を測定している。
<ずれ量の算出>
型ずれによる各部位のずれ量を算出するために、ベストフィット法を用いる。すなわち、図10に示すように、測定により得られたデータは設計値に対して位置、角度のずれが生じているので、この測定値と設計値に対して最小二乗法を適用する。具体的には、設計データを測定値に合うように移動、回転させ、データ誤差の二乗和が最小になる位置を見つけ出す。
以上のようなベストフィット法によって、対象となる部位の重心の変位量が求まる。図10では、垂直方向の位置変位及び水平方向の位置変位として示している。そして、以上の処理を各部位、すなわち各カウンタウェイトの上型で成形された部位と下型で成形された部位とに対して実行し、それぞれの重心の変位量を求める。なお、図10では、角度変位についても示しているが、この角度変位については後述するデータ補間処理において用いるためのものである。
<各部位間のデータ補間処理>
前述の処理によってカウンタウェイトの各部位が移動された結果、図11(a)(b)に示すように、各部位U,Dは幾何学的にはつながらないことになる。すなわち、図11(a)に示すように各部位同士が離れるか、図11(b)に示すように各部位同士が重なることになる。多くのケースでは、上型部位Uと下型部位Dとは離れる傾向にあるが、実形状データを再現するためには、この幾何学的につながっていない部分のデータ補間を行う必要がある。
各部位同士が離れている場合は、実形状は当然ながらその間にも素材は存在しているので、実形状データを再現するためには、データを埋める必要がある。この補間処理については、先のずれ量の算出処理において求めた各部位の位置変位及び角度変位から計算することができる。
また、各部位同士が重なっている場合は、重なっている部分の素材としては1つであるので、データ補間処理としては、データ上で重なっている部分を除去する必要がある。この処理についても、前記同様に、各部位の位置変位及び角度変位から計算することができる。
ここで、上型及び下型について角度ずれがない場合は、カウンタウェイトの中央部断面形状に基づいて単純にデータ補間処理(ここでの「補間」はデータの追加及び除去の両方を含む概念である)を行えばよい。しかし、角度ずれが存在する場合は、中央部断面形状に基づいて単純にデータ補間処理を行っても正確な補間処理を行うことができない。
そこで、角度ずれが存在する場合は、カウンタウェイト中央部断面を微小領域に分け、その面積分布を取得しておく。そして、カウンタウェイトの厚み分布を用いて、各微小領域の断面積と対応する厚みとを乗算し、それらの総和をとることによってデータ補間を行う。
以上の処理によって、すべてのカウンタウェイトについて、図11(a)に示すように、上型領域U、下型領域D、上型中間領域Mu、下型中間領域Mdについての質量及び重心を算出することにより、実形状データを正確に再現することができる。
[センタ穴位置の決定処理]
次に、各部位(U,D,Mu,Md)を質点としてとらえて、先の処理で得られた各部位の質量及び重心から、32個の質点(ここでは直列4気筒用のクランクシャフトであるので4×8=32個)の慣性中心線を、慣性中心線周りの慣性乗積が0(ゼロ)であるという条件から、3次元の直線方程式を解くことによって求める。
そして、この求められた慣性中心線のx、yの式に、素材クランクシャフトの軸方向両端面位置のz軸座標を代入することにより、センタ穴位置を求める。この情報はセンタ穴加工機10に送られて、前述の動作シーケンスにしたがって素材クランクシャフト1の両端面位置にセンタ穴が加工される。
また、センタ穴が形成された素材クランクシャフト1はクランクシャフト加工機30において、主にジャーナル部の加工が施される。
[特徴]
以上のような本実施形態の特徴は、以下の通りである。
(a)素材クランクシャフト1をメインクランパ15に把持した姿勢のままで求芯チャック16により把持して測定し、またその姿勢を維持したまま再度メインクランパ15により素材クランクシャフト1を把持して加工するので、素材クランクシャフト1の加工時の姿勢と形状測定時の姿勢とを同じにすることができる。このため、形状データに基づいた最適な位置に、容易にかつ正確にセンタ穴を形成することができる。
(b)クランクシャフトの素材誤差は、そのほとんどが型ずれによるものであることに着目し、型によって成形される各部位毎に形状データを測定し、かつずれ量を算出してデータ補間処理を行っているので、実形状データを得るための形状測定及びそのためのデータ処理が簡素化される。
(c)軸方向についてはほぼ型通りに成形されており、誤差はほとんど生じないことに着目し、軸方向形状の除く2次元データを測定して処理しているので、さらにデータ処理を簡素化することができる。
(d)ジャーナルについては型ずれがほぼなく、かつアンバランスに影響を与えないので、データ処理をしておらず、このためさらにデータ処理が簡単になる。
(e)前記実施形態では直列4気筒エンジン用(L4)クランクシャフトについて説明しているが、ツイストされたV6、V8クランクシャフトについても全く同様に計算できる。さらに慣性中心線は理論上のカウンタウェイトを計算上で付加することにより算出する。
[他の実施形態]
(a)前記実施形態では、素材クランクシャフトの実形状データの再現処理及びセンタ穴位置の決定処理に際して、カウンタウェイト外周部の形状を測定し、各カウンタウェイトの質量及び重心ずれを算出し、その結果に基づいて慣性中心を求めるようにしたが、以下のような方法によっても実現が可能である。
(a−1)例えば、素材の鍛造時に型通りの素材が成形されるが、その後の型抜き、加熱処理あるいは冷却の過程で素材に曲がりが生じたような場合は、素材の重心の設計値に対するずれは曲がりの影響のみを考慮すればよいことになる。このような場合は、すべてのメインジャーナル外周部の形状を測定し、この測定結果から演算により各メインジャーナル最小二乗中心点を求める。そしてさらに、最小二乗法により各中心点を通る線を近似する曲線式を算出する。カウンタウェイトもこの曲線式に乗ってずれていると想定し、この曲線式に基づき各カウンタウェイトの重心位置ズレを算出し、前記実施形態と同様の手順で慣性中心を算出し、センタ穴位置を決定する。
(a−2)素材クランクシャフトの上下の型それぞれから成形される部位に設計値からの大きなずれがない場合、しかも過大な型ずれや曲がりがない場合は、素材クランクシャフトの幾何中心にセンタ穴を形成することにより、容易にアンバランス値を許容値内にすることができる。このような場合は、素材クランクシャフトの幾何中心を求めるために、ジャーナル外周部の形状を測定する。そして、ジャーナル害主部の測定結果から、演算により最小二乗中心点を求め、これを幾何中心とし、センタ穴位置を決定する。
(b)前記実施形態では、求芯チャックと加工刃具とを1つの部材(側部13a,13b)に配置したが、これらを別々の部材に支持するようにしても良い。
(c)前記実施形態のセンタ穴加工機10は形状測定機11を併せ備えていたが、形状測定機11をセンタ穴加工機10と別に設けても良い。但し、この場合は、形状測定時の加工時の姿勢を維持するために、メインクランパ回りの形状の全く同じにして姿勢の再現性を図る必要がある。
素材クランクシャフトの加工システムの構成図。 本発明の実施形態が適用されるクランクシャフトの一例の外観斜視図。 素材クランクシャフト及びそれを成形する上型及び下型を示す外観斜視図。 本発明の一実施形態によるセンタ穴加工機の平面図。 図4のA矢視図。 図4のB矢視図。 センタ穴加工機の動作シーケンス図。 センタ穴加工機の動作シーケンス図。 素材クランクシャフトのデータ処理単位である各部位を分けて示す図。 各部位のずれ量の算出方法を説明するための図。 各部位におけるデータ補間処理を説明するための図。
符号の説明
1 素材クランクシャフト
10 センタ穴加工機
11 形状測定機
12 ベース部
13a,13b 側部
15 メインクランパ
16 求芯チャック
17 加工刃具
17a フライス加工用刃
17b ドリル刃

Claims (7)

  1. 素材クランクシャフトの両端面に加工用センタ穴を形成するためのセンタ穴加工装置であって、
    素材クランクシャフトを把持して固定するメインクランパと、
    前記メインクランパに把持された状態の素材クランクシャフトの両端部をチャックし、前記メインクランパに把持された状態の素材クランクシャフトの姿勢が維持されたままの素材クランクシャフトの形状を測定するための測定用チャックと、
    前記メインクランパに把持された素材クランクシャフトの両端部にセンタ穴を形成する加工部と、
    を備えたセンタ穴加工装置。
  2. 前記メインクランパは、前記加工部による素材クランシャフトの加工時に、前記測定用チャックに把持された素材クランクシャフトの姿勢が維持された状態で把持する、請求項1に記載のセンタ穴加工装置。
  3. 前記測定用チャックに把持された素材クランクシャフトの形状を測定する形状測定部をさらに備え、
    前記加工部は前記形状測定部からの測定データに基づいてセンタ穴を加工する、
    請求項1又は2に記載のセンタ穴加工装置。
  4. 前記加工部は、素材クランクシャフトの両端面にフライス加工を行うフライス加工部と、フライス加工された素材クランクシャフトの両端面にセンタ穴を形成するドリル加工部と、を有している、請求項1から3のいずれかに記載のセンタ穴加工装置。
  5. 前記測定用チャックと前記加工部とは、1つの移動自在な部材に支持されて、前記メインクランパに把持された素材クランクシャフトの両端面に選択的に対向可能である、
    請求項1から4のいずれかに記載のセンタ穴加工装置。
  6. 前記メインクランパ、前記測定用チャック及び前記加工部の作動を制御する制御部をさらに備え、
    前記制御部の制御によって、
    前記メインクランパは素材クランクシャフトを把持して固定し、
    前記測定用チャックは前記メインクランパに把持された状態の素材クランクシャフトの両端部を、前記メインクランパに把持された姿勢のままでチャックし、
    前記メインクランパは、前記測定用チャックにチャックされた素材クランプの把持を解除し、
    前記測定用チャックは素材クランクシャフトの形状測定の際に前記素材クランクシャフトをチャックし続け、
    前記メインクランパは前記測定用チャックにチャックされ形状測定が終了した素材クランクシャフトを前記測定用チャックに把持された姿勢のままで再度把持して固定し、
    前記測定用チャックは前記メインクランパに把持された素材クランクシャフトのチャックを解除し、
    前記加工部は前記メインクランパに把持して固定された素材クランクシャフトを加工する、
    請求項1から5のいずれかに記載のセンタ穴加工装置。
  7. 素材クランクシャフトの両端面に加工用センタ穴を形成するためのセンタ穴加工方法であって、
    素材クランクシャフトをメインクランパにより把持して固定する第1ステップと、
    前記メインクランパに把持された状態の素材クランクシャフトの両端部を、測定用チャックによりチャックする第2ステップと、
    前記測定用チャックにチャックされて、前記メインクランパに把持された状態の素材クランクシャフトの姿勢が維持されたままの素材クランクシャフトの形状を測定する第3ステップと、
    形状測定が終了した素材クランクシャフトを、前記測定用チャックに把持された姿勢のままで前記メインクランパにより再度把持して固定する第4ステップと、
    前記メインクランパに把持された素材クランクシャフトの両端面にセンタ穴を形成する第5ステップと、
    を備えたセンタ穴加工方法。
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