以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施形態における車両用の内燃機関を示す。
図1に示す内燃機関101は、2つのバンク(気筒グループ)101a,101bからなるV型6気筒機関である。
但し、内燃機関101は、V型機関の他、直列機関や水平対向機関などであってもよく、また、気筒数を6気筒に限定するものではなく、4気筒,8気筒,12気筒などであってもよい。
内燃機関101の各気筒の燃焼室102内は、吸気ダクト103、吸気マニホールド104a,104b、吸気ポート105を介して大気側と連通している。
前記燃焼室102(シリンダ)の吸気口102aは、吸気バルブ106で開閉され、ピストン107が降下するときに前記吸気バルブ106が開くと、燃焼室102内に空気が吸引される。
一方、前記吸気バルブ106の上流側の吸気通路である、前記吸気マニホールド104a,104bのブランチ部140a,140bには、各気筒それぞれに燃料噴射弁108が配設されており、この燃料噴射弁108から噴射された燃料が空気と共に燃焼室102内に吸引される。
前記燃料噴射弁108は、その噴霧の中心軸が略吸気バルブ106の傘部(吸気口102a)を指向するように配置されている。
尚、燃料噴射弁108が燃焼室102内に燃料を直接噴射する筒内直接噴射式内燃機関であってもよい。
前記シリンダ102内の燃料は、点火プラグ109による火花点火によって着火燃焼し、これによって発生する爆発力がピストン107を押し下げ、該押し下げ力によってクランクシャフト110が回転駆動される。
また、前記燃焼室102(シリンダ)の排気口102bは、排気バルブ111で開閉され、ピストン107が上昇するときに前記排気バルブ111が開くと、燃焼室102内の燃焼ガスが排気ポート112に排出される。
前記クランクシャフト110の回転駆動力が伝達される吸気カムシャフト131及び排気カムシャフト132が各バンク101a,101bそれぞれに備えられ、前記吸気バルブ106及び排気バルブ111は、前記吸気カムシャフト131及び排気カムシャフト132が回転することで開駆動される。
ここで、前記排気バルブ111は、前記排気カムシャフト132に一体的に設けられたカム132aによって、一定のバルブリフト量・バルブ作動角・バルブタイミング(リフト特性)で開駆動される。
尚、本実施形態におけるバルブリフト量とは、吸・排気バルブ(機関バルブ)の開期間での最大値を示すものとする。
一方、前記クランクシャフト110に対する吸気カムシャフト131の回転位相を連続的に可変とする可変バルブタイミング機構133a,133bが、各バンク101a,101bの吸気カムシャフト131それぞれに設けられている。
そして、前記可変バルブタイミング機構133a,133bによって吸気カムシャフト131の回転位相を可変とすることで、吸気バルブ106のバルブ作動角(開期間)の中心位相が連続的に進・遅角変化するようになっている。
また、吸気カムシャフト131と、吸気バルブ106(機関バルブ)のバルブリフタ106aに当接して吸気バルブ106を開駆動する後述の揺動カム4との間には、吸気バルブ106のバルブ作動角をバルブリフト量(最大バルブリフト量)と共に連続的に変更するための可変リフト機構134a,134b(可変動弁機構)が各バンク101a,101bそれぞれに設けられている。
前記排気ポート112には、排気マニホールド113a,113bの各ブランチ部が接続され、更に、排気マニホールド113a,113bの各集合部は合流して、排気ダクト114に接続されている。
前記排気ダクト114には、排気を浄化するための三元触媒等の触媒装置を内蔵する触媒コンバータ115が介装されている。
また、前記吸気ダクト103には、モータ等の電動アクチュエータで開閉駆動される電子制御スロットル116が介装されている。
前記燃料噴射弁108、点火プラグ109、可変バルブタイミング機構133a,133b、電子制御スロットル116などは、ECM(エンジン・コントロール・モジュール)121(第2ユニット)から出力される操作量に応じて制御され、これによって、燃料噴射量、点火時期、吸気バルブ106のバルブタイミング、スロットル開度が調整される。
また、可変リフト機構134a,134b(電動アクチュエータ機構)の操作量を演算して出力するVELコントローラ120(第1ユニット)が、前記ECM121(第2ユニット)とは別体に設けられており、吸気バルブ106のバルブ作動角・バルブリフト量は、前記VELコントローラ120によって制御される。
前記ECM121と前記VELコントローラ120とは、通信ライン120aを介して相互に通信可能に構成されている。
前記ECM121は、マイクロコンピュータを含んで構成され、機関101や機関101が搭載される車両の運転状態を検出する各種センサからの信号を入力し、該入力信号を予め記憶されているプログラムに従って演算処理することで、電子制御スロットル116などの操作量を演算し、該操作量を出力する。
前記各種センサとしては、アクセル開度ACCを検出するアクセル開度センサ122、内燃機関101の冷却水温度TWを検出する水温センサ123、内燃機関101が搭載される車両の走行速度(車速)VSPを検出する車速センサ124、クランクシャフト110が単位角度だけ回転する毎の単位クランク角信号POSと基準クランク角位置毎の基準クランク角信号REFとをそれぞれに出力するクランク角センサ125、各バンクの排気マニホールド113a,113bの集合部にそれぞれ配置され、排気中の酸素濃度に基づいて各バンクの空燃比AFをそれぞれに検出する空燃比センサ126a,126b、内燃機関101の吸入空気量QAを検出するエアフローセンサ127、前記電子制御スロットル116の開度TVOを検出するスロットル開度センサ128、電子制御スロットル116下流側の吸気通路内の圧力(吸気管圧:ブースト)PBを検出する圧力センサ129などが設けられている。
そして、前記ECM121は、燃料噴射弁108による燃料噴射の制御においては、前記エアフローセンサ127で検出される吸入空気量QAと、クランク角センサ125からの出力信号に基づいて算出される機関回転速度NEとから基本燃料噴射パルス幅TPを演算する。
更に、前記基本燃料噴射パルス幅TPを、冷却水温度TWに応じた補正係数や、空燃比センサ126a,126bの出力から検出される実際の空燃比を目標空燃比に近づけるようにバンク毎に設定される空燃比フィードバック補正係数などによって補正することで、最終的な燃料噴射パルス幅TIをバンク毎に演算し、各気筒の吸気行程にタイミングを合わせ、各気筒の燃料噴射弁108に対して個別に前記燃料噴射パルス幅TIの噴射パルス信号を出力する。
前記燃料噴射弁108は、前記燃料噴射パルス幅TIに相当する時間だけ開弁し、開弁時間に比例する量の燃料を機関101に噴射する。
また、点火プラグ109には、点火コイル及び該点火コイルへの通電を制御するパワートランジスタを内蔵した点火モジュール138がそれぞれ直付けされている。
前記ECM121は、機関運転条件(機関負荷や機関回転速度NEなど)に基づいて点火時期を算出し、該点火時期及び点火エネルギを得るための通電時間とから、前記点火コイルへの通電開始時期及び通電遮断時期を決定し、該通電開始時期及び通電遮断時期に対応する点火制御信号で前記パワートランジスタのオン・オフを制御し、前記点火時期での火花点火を実行させる。
また、前記ECM121は、例えば機関負荷(目標トルク)や機関回転速度NEなどから、前記可変バルブタイミング機構133a,133bにおける目標値(目標中心位相)を演算し、実際の中心位相が前記目標値に近づくように、前記可変バルブタイミング機構133a,133bの操作量を算出して出力する。
また、前記ECM121は、例えば機関負荷(目標トルク)と機関回転速度NEとから目標負圧を算出し、圧力センサ129で検出される実際の吸気管圧PBが、前記目標負圧に近づくように、前記電子制御スロットル116の操作量を算出して出力する。
また、前記ECM121は、可変リフト機構134a,134bで調整される吸気バルブ106のバルブ作動角・バルブリフト量の目標値を、例えば機関負荷(目標トルク)や機関回転速度NEなどから演算し、該目標値を、前記VELコントローラ120に出力する。
前記VELコントローラ120は、マイクロコンピュータを含んで構成され、可変リフト機構134a,134bの制御量が前記目標値に近づくように操作量を算出して、前記可変リフト機構134a,134bに出力する。
図2は、吸気バルブ106のバルブ作動角をバルブリフト量と共に連続的に可変とする可変リフト機構134a,134bの構造を示す斜視図である。
尚、図2には、第1バンク101a側に設けられる可変リフト機構134aを記載してあるが、第1バンク101a側に設けられる可変リフト機構134aと、第2バンク101bに設けられる可変リフト機構134bとは、同じ構造のものである。
図2において、前記吸気バルブ106の上方に、前記クランクシャフト110によって回転駆動される吸気カムシャフト131が、各バンクの気筒列方向に沿って図外のシリンダヘッドに回転可能に支持されている。
前記吸気カムシャフト131には、吸気バルブ106のバルブリフタ106aに当接して吸気バルブ106を開駆動する揺動カム4が相対回転可能に外嵌されている。
前記吸気カムシャフト131と揺動カム4との間には、吸気バルブ106のバルブ作動角(バルブ作用角)をバルブリフト量と共に連続的に変更するための可変リフト機構134aが設けられている。
また、前記吸気カムシャフト131の一端部には、クランクシャフト110に対する前記吸気カムシャフト131の回転位相を変化させることにより、吸気バルブ106のバルブ作動角(開期間)の中心位相を連続的に変更する可変バルブタイミング機構133aが配設されている。
前記可変リフト機構134aは、図2及び図3に示すように、吸気カムシャフト131に偏心して固定的に設けられる円形の駆動カム11と、この駆動カム11に相対回転可能に外嵌するリング状リンク12と、吸気カムシャフト131と略平行に気筒列方向へ延びる制御軸13と、この制御軸13に偏心して固定的に設けられた円形の制御カム14と、この制御カム14に相対回転可能に外嵌すると共に、一端がリング状リンク12の先端に連結されたロッカアーム15と、このロッカアーム15の他端と揺動カム4とに連結されたロッド状リンク16と、を有している。
前記制御軸13は、モータ17等の電動アクチュエータによりリンク機構18を介して所定の制御範囲内で回転駆動される。
前記リンク機構18は、モータ17の出力軸17aに形成された雄ねじ18aと、該雄ねじ18aに螺合される雌ねじを備えてなる可動子18bと、前記制御軸13と一体的に設けられ、先端が前記可動子18bに対して回転可能に接続されるリンクアーム18cとから構成される。
そして、前記モータ17の出力軸17aが回転すると、回り止めされている可動子18bが、前記出力軸17aの軸方向に平行移動し、該可動子18bの平行移動に伴ってリンクアーム18cが制御軸13を中心に揺動することで、リンクアーム18cと一体の制御軸13が回転する構成である。
ここで、制御軸13の可動角度範囲の一方端が、バルブ作動角及びバルブリフト量が最大となる位置であり、また、他方端が、バルブ作動角及びバルブリフト量が最小となる位置であり、前記一方端から他方端に向けて制御軸13を回転させることでバルブリフト量が漸減し、逆に、前記他方端から一方端に向けて制御軸13を回転させることでバルブリフト量が漸増する。
上記の構成により、クランクシャフト110に連動して吸気カムシャフト131が回転すると、駆動カム11を介してリング状リンク12がほぼ並進移動すると共に、ロッカアーム15が制御カム14の軸心周りに揺動し、ロッド状リンク16を介して揺動カム4が揺動して吸気バルブ106が開駆動される。
また、前記モータ17を駆動制御して制御軸13の角度を変化させることにより、ロッカアーム15の揺動中心となる制御カム14の軸心位置が変化して揺動カム4の姿勢が変化する。
前記モータ17の駆動制御においては、バルブ作動角・バルブリフト量の増大要求時(正転要求時)であるか、減少要求時(逆転要求時)であるかによって通電の向きを決定する一方、前記制御軸13の実際の角度と目標角度との偏差に応じて、モータ17の印加電圧を制御するためのデューティ比を決定し、該デューティ比でモータ17の通電(印加電圧)を制御する。
これにより、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相が略一定のままで、吸気バルブ106のバルブ作動角がバルブリフト量と共に連続的に変化する。
本実施形態のV型機関では、第1バンク101aに図2に示した可変リフト機構134aが設けられ、第2バンク101bにも図2に示した構造と同じ構造の可変リフト機構134bが設けられており、各可変リフト機構134a,134bはそれぞれにモータ17を備えていて、各モータ17を個別に制御することで、バンク毎に吸気バルブ106のリフト特性を個別に制御できる。
尚、バルブ作動角及びバルブリフト量が連続的に変化すると同時、バルブ作動角の中心位相が変化するように構成した可変リフト機構134a,134bであってもよい。
図4は、前記クランクシャフト110に対する吸気カムシャフト131の回転位相を連続的に可変とすることで、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相を可変とする前記可変バルブタイミング機構133a,133bの構造を示す。
前記可変バルブタイミング機構133a,133bは、クランクシャフト110によりタイミングチェーンを介して回転駆動されるカムスプロケット51(タイミングスプロケット)と、各バンクの吸気カムシャフト131の端部に固定されてカムスプロケット51内に回転自在に収容された回転部材53と、該回転部材53をカムスプロケット51に対して相対的に回転させる油圧回路54と、カムスプロケット51と回転部材53との相対回転位置を所定位置で選択的にロックするロック機構60とを備えている。
前記カムスプロケット51は、外周にタイミングチェーン(又はタイミングベルト)が噛合する歯部を有する回転部(図示省略)と、該回転部の前方に配置されて前記回転部材53を回転自在に収容するハウジング56と、該ハウジング56の前後開口を閉塞するフロントカバー,リアカバー(図示省略)とから構成される。
前記ハウジング56は、前後両端が開口形成された円筒状を呈し、内周面には、横断面台形状を呈し、それぞれハウジング56の軸方向に沿って設けられる4つの隔壁部63が90°間隔で突設されている。
前記回転部材53は、吸気カムシャフト131の前端部に固定されており、円環状の基部77の外周面に90°間隔で4つのベーン78a,78b,78c,78dが設けられている。
前記第1〜第4ベーン78a〜78dは、それぞれ断面が略逆台形状を呈し、各隔壁部63間の凹部に配置され、前記凹部を回転方向の前後に隔成し、ベーン78a〜78dの両側と各隔壁部63の両側面との間に、進角側油圧室82と遅角側油圧室83を構成する。
前記ロック機構60は、ロックピン84が、回転部材53の初期位置において係合孔(図示省略)に係入するようになっている。
前記油圧回路54は、進角側油圧室82に対して油圧を給排する第1油圧通路91と、遅角側油圧室83に対して油圧を給排する第2油圧通路92との2系統の油圧通路を有し、この両油圧通路91,92には、供給通路93とドレン通路94a,94bとがそれぞれ通路切り換え用の電磁切換弁95を介して接続されている。
前記供給通路93には、オイルパン96内の油を圧送する機関駆動のオイルポンプ97が設けられている一方、ドレン通路94a,94bの下流端がオイルパン96に連通している。
前記第1油圧通路91は、回転部材53の基部77内に略放射状に形成されて各進角側油圧室82に連通する4本の分岐路91dに接続され、第2油圧通路92は、各遅角側油圧室83に開口する4つの油孔92dに接続される。
前記電磁切換弁95は、内部のスプール弁体が各油圧通路91,92と供給通路93及びドレン通路94a,94bとを相対的に切り換え制御するようになっている。
前記ECM121は、前記電磁切換弁95を駆動する電磁アクチュエータ99に対する通電量を、ディザ信号が重畳されたデューティ制御信号(操作量)に基づいて制御する。
可変バルブタイミング機構133a,133bにおいては、電磁アクチュエータ99にデューティ比(オン時間割合)0%の制御信号(OFF信号)を出力すると、オイルポンプ47から圧送された作動油は、第2油圧通路92を通って遅角側油圧室83に供給されると共に、進角側油圧室82内の作動油が、第1油圧通路91を通って第1ドレン通路94aからオイルパン96内に排出されるようにしてある。
従って、可変バルブタイミング機構133a,133bにおいては、電磁アクチュエータ99にデューティ比0%の制御信号(OFF信号)を出力すると、遅角側油圧室83の内圧が高くなる一方で、進角側油圧室82の内圧が低くなり、回転部材53は、ベーン78a〜78bを介して最大遅角側に回転し、この結果、吸気バルブ106の開期間(バルブ作動角の中心位相)がピストン位置に対して相対的に遅角変化する。
即ち、可変バルブタイミング機構133a,133bの電磁アクチュエータ99への通電を遮断すると、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相は遅角方向に変化し、最終的には、最遅角位置で停止する。
また、可変バルブタイミング機構133a,133bにおいて、電磁アクチュエータ99にデューティ比100%の制御信号(ON信号)を出力すると、作動油は、第1油圧通路91を通って進角側油圧室82内に供給されると共に、遅角側油圧室83内の作動油が第2油圧通路92及び第2ドレン通路94bを通ってオイルパン96に排出され、遅角側油圧室83が低圧になる。
このため、可変バルブタイミング機構133a,133bにおいて、デューティ比100%の制御信号(ON信号)を出力すると、回転部材53は、ベーン78a〜78dを介して進角側へ最大に回転し、これによって、吸気バルブ106の開期間(バルブ作動角の中心位相)がピストン位置に対して相対的に進角変化する。
即ち、可変バルブタイミング機構133a,133bの電磁アクチュエータ99への通電を継続すると、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相は進角方向に変化し、最終的には、最進角位置で停止する。
尚、吸気バルブ106のバルブ作動角をバルブリフト量と共に連続的に可変とする可変リフト機構134a,134b、及び、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相を連続的に可変とする可変バルブタイミング機構133a,133bは、上記の図2〜図4に示した構造のものに限定されない。
例えば、バルブ作動角の中心位相を連続的に可変とする可変バルブタイミング機構133a,133bとしては、上記のベーン式の他、歯車を用いてクランクシャフト110に対し前記吸気カムシャフト131を相対回転させる機構などを用いることができる。
また、吸気バルブ106のバルブ作動角をバルブリフト量と共に連続的に可変とする可変リフト機構134a,134bとしては、制御軸の軸方向の変位に応じてバルブ作動角・バルブリフト量が変化する機構であってもよい。
前記ECM121は、内燃機関101の運転状態(目標トルク・機関回転速度NEなど)に基づいて、前記吸気バルブ106のバルブ作動角・バルブリフト量の目標値に相当する制御軸13の目標角度θtgを演算し、該目標角度θtgをVELコントローラ120に出力する。
各可変リフト機構134a,134bの制御軸13の実角度θを検出する角度センサがそれぞれ2重に設けられており、第1バンク101aの可変リフト機構134aの制御軸13の実角度θaは、2つの角度センサ135a,136aによってそれぞれ検出され、第2バンク101bの可変リフト機構134bの制御軸13の実角度θbは、2つの角度センサ135b,136bによってそれぞれ検出される。
前記4つの角度センサ135a,136a,135b,136bは、例えば、ロータリーポテンショメータであり、バルブ作動角・バルブリフト量が最小となる角度位置を0degとして、バルブ作動角・バルブリフト量の増大方向への角度変化を検出する。
ここで、角度センサ135a及び角度センサ135bは、前記VELコントローラ120に接続され、前記VELコントローラ120から電源供給されるようになっており、また、角度センサ136a及び角度センサ136bは、前記ECM121に接続され、前記ECM121から電源供給されるようになっている。
即ち、前記VELコントローラ120には、角度センサ135aで検出される第1バンク101aの可変リフト機構134aの制御軸角度θa1と、角度センサ135bで検出される第2バンク101bの可変リフト機構134bの制御軸角度θb1とが入力され、前記ECM121には、角度センサ136aで検出される第1バンク101aの可変リフト機構134aの制御軸角度θa2と、角度センサ136bで検出される第2バンク101bの可変リフト機構134bの制御軸角度θb2とが入力される。
そして、前記VELコントローラ120では、前記ECM121から送信された目標角度θtgと、角度センサ135aの検出結果である制御軸角度θa1とを比較して、第1バンク101aの可変リフト機構134aのモータ17の操作量(デューティ比)を算出して、該操作量(デューティ比)に従って可変リフト機構134aのモータ17への通電(印加電圧)を制御する。
また、前記VELコントローラ120では、前記ECM121から送信された目標角度θtgと、角度センサ135bの検出結果である制御軸角度θb1とを比較して、第2バンク101bの可変リフト機構134bのモータ17の操作量(デューティ比)を算出して、該操作量(デューティ比)に従って可変リフト機構134bのモータ17への通電(印加電圧)を制御する。
前記目標角度θtgと制御軸角度θa1,θb1との比較に基づく操作量のフィードバック演算は、例えば、目標角度θtgと制御軸角度θa1,θb1との偏差に基づく比例・積分・微分動作によって行われる。
また、算出された操作量(デューティ比)によるモータ17への通電制御においては、4つのスイッチング素子で構成されるHブリッジ回路に前記モータ17を接続してなる駆動回路を設け、スイッチング素子のオン・オフの組み合わせによってモータ17への通電方向(回転方向)を切り換えると共に、前記デューティ比でスイッチング素子のオン・オフを制御することで、モータ17の印加電圧が調整されるようにする。
一方、前記ECM121では、エアフローセンサ127によって検出される吸入空気量QAを、エアフローセンサ127の検出遅れに応じて補正する処理を、角度センサ136a及び/又は角度センサ136bの検出結果に基づいて行う。
即ち、前記可変バルブタイミング機構133a,133b及び可変リフト機構134a,134bによる吸気バルブ106のリフト特性(バルブタイミング)の変化によって、シリンダ内の充填空気量は変化するが、前記リフト特性の変化によるシリンダ内の充填空気量の変化が、前記エアフローセンサ127で検出されるまでには、遅れが生じる。
このため、前記ECM121は、前記角度センサ136a及び/又は角度センサ136bで検出されるバルブ作動角、及び、クランクシャフト110と吸気カムセンサ137とから検出されるバルブ作動角の中心位相に基づいて、前記エアフローセンサ127で検出された吸入空気量QAを補正し、該補正された吸入空気量QAに基づいて燃料噴射量の演算などを行うようになっている。
前記吸入空気量の補正制御は、例えば、特開平11−264330号公報に開示されるように、前記可変バルブタイミング機構133a,133b及び可変リフト機構134a,134bによる吸気バルブ106のリフト特性(バルブタイミング)の変化によってバルブオーバーラップ量が変化し、シリンダ内における排気残留割合(内部EGR量)が変化して、これによってシリンダ内の充填空気量が変化することに対応すべく行われる。
具体的には、吸気バルブ106のバルブタイミングの変化による充填空気量の推定変化分を算出し、前記推定変化分と該推定変化分を遅れ処理した値との差分で、吸入空気量の検出値QAを補正する。
前記吸入空気量QAの補正演算に用いる可変リフト機構134a,134bの制御量としては、可変リフト機構134a,134bの応答性にばらつきが生じることから、角度センサ136aによる検出値と角度センサ136bによる検出値との平均値を用いることができる他、角度センサ136aと角度センサ136bとのいずれか一方を選択させることができる。
尚、前記ECM121において、角度センサ136a及び/又は角度センサ136bの検出結果を用いる処理を、上記吸入空気量の検出値の補正処理に限定するものではなく、例えば、特開2004−044547号公報に開示されるように、目標リフト特性の演算において、角度センサ136a及び/又は角度センサ136bの検出結果を用いることができる。
具体的には、角度センサ136a及び/又は角度センサ136bの検出結果に基づいて、低バルブリフト領域であるか高バルブリフト領域であるかを判別し、該判別結果に基づいて異なる演算式を選択し、該選択した演算式に基づき目標吸入空気量を得るための目標リフト特性を設定する。
上記のように、前記VELコントローラ120における可変リフト機構134a,134bの制御は、前記VELコントローラ120に接続される角度センサ135a,135bの出力信号に基づいて実行され、また、ECM121における制御軸角度(バルブ作動角・バルブリフト量)の検出値に基づく制御は、ECM121に接続される角度センサ136a,136bの出力信号に基づいて実行される。
従って、前記VELコントローラ120及びECM121は、通信ライン120aを介して制御軸角度θのデータ(実バルブ作動角・実バルブリフト量)を入手する必要がなく、前記VELコントローラ120及びECM121は、検出遅れのない制御軸角度θの検出値に基づいて、高応答かつ高精度な制御を実現できる。
例えば、角度センサ135a,135b,136a,136bをVELコントローラ120に接続した場合、ECM121で制御軸角度θ(実バルブ作動角・実バルブリフト量)のデータを必要として、通信ライン120aを介して制御軸角度θの検出データを、VELコントローラ120側からECM121に向けて送信する構成とすると、通信に要する時間だけECM121側での制御軸角度θの受け取りに遅れが生じ、ECM121側での制御精度が低下してしまう。
これに対し、前記VELコントローラ120とECM121とのそれぞれに角度センサを接続し、接続されている角度センサの出力に基づきそれぞれが制御を実行するので、前記VELコントローラ120及びECM121で高精度に制御を行わせることができる。
即ち、前記VELコントローラ120では、制御軸角度θを高応答に検知できるから、オーバーシュートを発生させることなく、目標の制御軸角度θに向けて実際の制御軸角度θを応答良く近づける制御を行え、内燃機関101の運転条件の変化に対してバルブ作動角・バルブリフト量を応答良く変化させて、出力特性や排気性状や燃費性能などを改善できる。
また、ECM121では、例えば、エアフローセンサ127の検出遅れを補正する処理を角度センサの信号に基づいて行うから、ECM121にも角度センサが接続され、制御軸角度θを高応答に検知できることで、前記遅れ補正を高精度に行え、これによって燃料噴射弁による噴射量を適切に設定でき、空燃比制御精度を高められるので、出力特性や排気性状や燃費性能などを改善できる。
ところで、前記ECM121は、角度センサ136a及び角度センサ136bによる検出結果を、前記VELコントローラ120側に送信し、前記VELコントローラ120では、ECM121から送られた角度センサ136aの検出結果と、角度センサ135aの検出結果とを対比し、また、ECM121から送られた角度センサ136bの検出結果と、角度センサ135bの検出結果とを対比して、角度センサ135a,135b,136a,136bの故障診断(整合・不整合診断)を行うようになっている。
即ち、角度センサ136aと角度センサ135aとは、共に第1バンク101a側の可変リフト機構134aの制御軸13の角度を検出し、また、角度センサ136bと角度センサ135bとは、共に第2バンク101b側の可変リフト機構134bの制御軸13の角度を検出するから、センサの正常状態では、角度センサ136aの検出結果と角度センサ135aの検出結果とは一致し、角度センサ136bの検出結果と角度センサ135bの検出結果とは一致するはずであり、一致しない場合は、少なくとも一方のセンサが故障しているものと判断できる。
尚、角度センサの出力ばらつきによって発生するセンサ間での検出結果のずれの範囲内であれば、検出結果は一致していると判断するものとする。
また、故障発生を判定した場合には、車両の運転者に故障発生をランプやブザーや文字表示などによって警告することが好ましい。
上記のように、2重に設けられた角度センサの検出結果を相互に比較すれば、センサ出力が異常値ではない場合であっても、センサ故障を診断できるから、センサ故障診断の信頼性を高め、また、センサ故障に対して適切にフェイルセーフ処理を実行できる。
図5のフローチャートは、前記VELコントローラ120で行われるセンサ故障診断の様子を示すものであり、該図5のフローチャートに示すルーチンは、定時割り込み処理で実行される。
まず、ステップS501では、VELコントローラ120が直接受信した角度センサ135a,135bの出力信号に基づいてVELコントローラ120内で算出された、第1バンク101a側の可変リフト機構134aの制御軸13の角度θa1の最新値と、第2バンク101b側の可変リフト機構134bの制御軸13の角度θb1の最新値とを読み込む。
次のステップS502では、ECM121側から最新に送信された、角度センサ136aによる検出角度θa2(第1バンク101a側の可変リフト機構134aの制御軸13の角度θa2)と、角度センサ136bによる検出角度θb2(第2バンク101b側の可変リフト機構134bの制御軸13の角度θb2)とを読み込む。
ステップS503では、角度センサ135aによる検出角度θa1と、角度センサ136aによる検出角度θa2との偏差Δθa、及び、角度センサ135bによる検出角度θb1と、角度センサ136bによる検出角度θb2との偏差Δθbを算出する。
ステップS504では、ECM121側からVELコントローラ120への角度検出値θa2,θb2の送信に要する時間(送信時間、通信時間)における角度検出値θa2,θb2の変化分θdを算出する。
即ち、角度検出値θa2,θb2は、ECM121側からVELコントローラ120へ送信され、係る送信に要する時間だけ、対比される角度検出値θa1,θb1とは、異なるタイミングでの検出値となる。
換言すれば、角度検出値θa1,θb1に対して、角度検出値θa2,θb2は通信時間分だけ過去の検出値となり、角度センサ135a,135b,136a,136bが正常であるとしても、前記通信時間での変化分の偏差が、角度センサ135aによる検出角度θa1と角度センサ136aによる検出角度θa2との間、及び、角度センサ135bによる検出角度θb1と角度センサ136bによる検出角度θb2との間には生じることになる。
そこで、ステップS505では、前記偏差Δθa,Δθbと比較する診断閾値の基本分に前記変化分θdを加算して、該加算結果を最終的な診断閾値に設定することで、前記通信時間での角度変化分が、角度検出値の整合・不整合判断に影響しないようにする。
前記ステップS504における変化分θdの算出については、後で詳細に説明する。
尚、前記診断閾値の基本分は、予め記憶された一定値とすることができ、また、角度センサの出力ばらつきがセンサ温度に影響された変化することから、センサ温度に応じて可変に設定することができる。
また、前記センサ温度は、温度センサで検出させても良いし、冷却水温度TWなどの機関の温度条件から推定することができる。
また、前記変化分θdに基づいて、角度検出値θa1,θb1又は角度検出値θa2,θb2を補正し、該補正後の角度検出値に基づいて偏差Δθa,Δθbを算出し、該偏差Δθa,Δθbと閾値(基本分)とを比較させることができ、また、前記変化分θdに基づいて、前記偏差Δθa,Δθbを補正し、該補正後の偏差Δθa,Δθbと閾値(基本分)とを比較させることができる。
ステップS506では、前記偏差Δθa,Δθbの絶対値が、前記診断閾値よりも大きいか否かをそれぞれに判断する。
ここで、前記偏差Δθa,Δθbの絶対値が共に前記診断閾値以下であれば、角度センサ135a,135b,136a,136bが正常であると判断して、そのまま本ルーチンを終了させる。
一方、前記偏差Δθa,Δθbの絶対値の少なくとも一方が前記診断閾値よりも大きい場合には、ステップS507へ進む。
ステップS507では、前記偏差Δθa,Δθbの絶対値の少なくとも一方が前記診断閾値よりも大きい状態が、所定時間以上継続しているか否かを判断する。
前記所定時間は、例えば、角度センサの出力信号へのノイズの重畳によって偏差Δθa,Δθbが一時的に大きくなる時間よりも長い時間に設定され、偏差が大きい状態が前記所定時間以上継続している場合には、ノイズの影響ではなく、角度センサに何らかの異常が生じたものと判断できるようにしてある。
ステップS507で、継続時間が前記所定時間に達していないと判断された場合には、前述のように、ノイズの影響によって両センサ間に一時的な検出値の偏差が生じている可能性がある一方で、実際に角度センサが故障している可能性もあるため、ステップS508へ進み、故障診断確定前の処理を実行する。
前記故障診断確定前の処理としては、両バンク101a,101bの可変リフト機構134a,134bのモータ17への通電を遮断するか(一時的な制御の停止)、又は、診断閾値よりも大きな偏差が生じていると判断された角度検出値の組み合わせのうち、より大きな角度(バルブ作動角・バルブリフト量としてより大きな値)を選択し、該選択された角度検出値に基づいて、可変リフト機構134a,134bの制御を行う。
2つの角度検出値のうちの大きい方(バルブ作動角・バルブリフト量としてより大きな値)を選択すれば、小さい方を選択した場合に比べて、可変リフト機構134a,134bが、バルブ作動角・バルブリフト量をより小さくするように制御されることになり、バルブリフト量を小さく抑制することで、吸気バルブ106とピストンとの干渉が生じることを抑制できる。
即ち、実際よりも小さい角度検出値に基づいて可変リフト機構134a,134bを制御すると、実際のバルブリフト量が目標よりも大きくなってしまい、吸気バルブ106とピストンとの干渉を生じさせてしまう可能性がある。
ここで、2つの検出値の間に大きな差異が生じた場合、どちらが実際値であるかは不明であるが、角度検出値のうちの大きい方に基づいて制御すれば、実際のバルブリフト量が、目標バルブリフト量又は目標バルブリフト量よりも小さい値に制御されることになり、吸気バルブ106とピストンとの干渉を避けることができる。
尚、故障診断確定前の処理として、モータ17への通電停止を行う場合は、偏差Δθが閾値以下であると判断されたバンクと、偏差Δθが閾値よりも大きいと判断されたバンクとの双方で、通電停止を行うことが好ましい。
また、診断閾値よりも大きな偏差Δθが生じていると判断された角度検出値の組み合わせのうち、より大きな角度検出値を選択して制御を継続させる場合、偏差Δθが閾値以下であるバンク側では、VELコントローラ120に接続されている角度センサによる当該バンクについての検出結果を用いた制御をそのまま継続させることができる。
ステップS507で、継続時間が前記所定時間に達したと判断されると、角度センサ135a,135b,136a,136bの故障発生の診断を確定し、両バンク101a,101bの可変リフト機構134a,134bのモータ17への通電を継続的に遮断させ、可変リフト機構134a,134bをデフォルト位置(例えば、最小バルブ作動角・最小バルブリフト量)に戻すようにする。
また、前記診断結果をECM121側に送信し、可変リフト機構134a,134bがデフォルト位置にあるとの認識に基づいてECM121側の制御が行われるようにする。
具体的には、可変バルブタイミング機構133a,133bを、可変リフト機構134a,134bがデフォルト位置に固定される場合に適合する位置に駆動し、電子制御スロットル116で吸入空気量を制御し、エアフローセンサ127の検出値の補正制御を停止する。
角度センサ135a,135b,136a,136bの故障によって制御軸13の角度、換言すれば、吸気バルブ106のバルブ作動角・バルブリフト量が不明になった場合に、可変リフト機構134a,134bを既知のデフォルト位置に戻すようにすれば、角度センサの故障によって、吸気バルブ106のバルブ作動角・バルブリフト量を目標に制御できなくなっても、電子制御スロットル116によって吸入空気量を安定的に制御でき、センサの故障状態になっても機関の運転を継続させることができる。
本願実施形態では、第1バンク101a側の可変リフト機構134aの制御軸13の角度θaを検出する角度センサを2重(角度センサ135a及び角度センサ136a)に備え、また、第2バンク101b側の可変リフト機構134bの制御軸13の角度θbを検出する角度センサも2重(角度センサ135b及び角度センサ136b)に備えることで、前述のように、2重に備えられているセンサによる検出値を相互に比較する整合・不整合診断を行って、センサ異常の有無を診断する。
但し、2重の備えられる角度センサを、共にECM121とVELコントローラ120とのいずれか一方に接続させると、前述のように、角度センサの検出データを他方に通信ライン120aを介して送信することになってしまい、通信に要する時間分だけ、他方における角度検出データを用いた制御の精度が低下してしまう。
そこで、2重の備えられる角度センサの一方をECM121に接続し、他方をVELコントローラ120に接続することで、ECM121及びVELコントローラ120が、角度センサの検出データを直接センサから遅れなく入手できるようにして、双方が高い精度で制御を行えるようにしている。
但し、上記構成の場合、2重に備えられたセンサの検出結果が整合しているか否かの判断(整合診断)を行うためには、ECM121とVELコントローラ120との一方が他方に向けて角度検出データを、通信ライン120aを介して送信する必要が生じる。
そして、送信された角度検出データは、角度検出データの送受信に要する時間だけ前の時点での検出値となってしまい、そのまま角度検出データを比較させると、実際には、両センサの検出結果が整合しているのに、検出タイミングが異なる分だけ両検出値に差異を生じ、不整合(センサ故障)であると誤判定することになってしまう。
そこで、本実施形態では、検出タイミングが異なるために生じる偏差を超える偏差が、両検出値の間に生じているか否かを判断させるようにして、整合診断の精度が確保されるようにしている。
次に、前記ステップS504における変化分θdの算出処理を、図6のフローチャートに従って説明する。
図6のフローチャートに示すルーチンは、定時割り込み処理によってVELコントローラ120において実行され、バンク毎に同じ処理を行って、バンク毎に変化分θdを求める。
まず、ステップS601では、現時点でVELコントローラ120に直接入力されている角度センサの出力による角度検出データ(角度センサ135a,135bの検出値)の最新値Aを読み込む。
ステップS602では、VELコントローラ120に直接入力されている角度センサの出力による角度検出データが時系列に記憶されている中から、ECM121側からVELコントローラ120に向けたデータ送信に要する最大送信時間(最大通信時間)だけ現時点から前の時点での角度検出データBを読み込む。
ステップS603では、前記ステップS601で読み込んだ角度検出値Aと、ステップS602で読み込んだ角度検出値Bとの偏差を演算し、次のステップS604では、ステップS603で算出した偏差を、送信時間(角度データの送受信に要する時間)が経過する間での角度検出値の変化分θdに設定する。
即ち、ステップS604で求められる変化分θdは、送信時間における角度検出値の変化量の最新値であり、VELコントローラ120が受信するのは前記送信時間だけ前の時点においてECM121側で検出された値であるから、制御軸13の角度が変化している場合、角度センサ135a,135b,136a,136bが正常であるとしても、前記変化分θdの偏差を生じることになるので、前述のように、閾値に前記変化分θdを加算することで、送信時間による検出遅れを超える偏差が、角度検出値の間に生じているか否かを判断させる。
次に、前記ステップS504における変化分θdの算出処理の別の例を、図7のフローチャートに従って説明する。
図7のフローチャートに示すルーチンは、定時割り込み処理によってVELコントローラ120において実行され、バンク毎に同じ処理を行って、バンク毎に変化分θdを求める。
まず、ステップS701では、現時点での内燃機関101の運転条件、具体的には、可変リフト機構134a,134bの動作速度(応答速度)に影響する運転条件であり、例えば、冷却水温度TWや機関回転速度NEなどである。
次のステップS702では、ステップS701で読み込んだ運転条件において、前記可変リフト機構134a,134bの最速応答速度Vを算出する。
前記最速応答速度Vは、モータ17に最大電圧を印加させた場合での制御軸角度θの変化速度であり、例えば冷却水温度TWと機関回転速度NEとを変数とするマップの格子毎に予め記憶されており、前記ステップS701で読み込んだ冷却水温度TW及び機関回転速度NEに対応する最速応答速度Vを、前記マップから検索する。
ステップS703では、前記最速応答速度Vに前記送信時間を乗算することで、最速応答速度Vで変化する場合に、送信時間で変化する制御軸角度を求める。
ステップS704では、ステップS703で求めた角度を、前記変化分θdに設定する。
即ち、図7のフローチャートに示す例では、送信時間で変化する角度を、最速応答速度Vから求めており、そのときの実際の応答速度はモータ17に印加されている電圧で変化するが、最速応答速度Vに基づいて変化分θdを求めれば、少なくとも送信時間による偏差が変化分θdを超えて大きくなることはなく、送信時間による検出遅れによって、不整合の判断がなされてしまうことを抑止できる。
尚、前記図6のフローチャートに示した例では、VELコントローラ120で求めた角度検出データ(角度センサ135a,135bの検出値)が、送信時間内で、一定速度で単調増加又は単調減少するものと仮定して変化分θdを求めたが、例えば、現時点から送信時間だけ前の時点までの間で、角度検出データの変化速度を時系列に複数回求め、これら変化速度のうちの最大値又は最小値又は平均値と、最大送信時間とから、変化量θdを求めることができる。
ところで、前記図5のフローチャートに示した例では、現時点でVELコントローラ120がECM121側から受信した角度検出データと、現時点でVELコントローラ120が、接続されている角度センサ135a,135bの出力から求めた角度検出データとを比較させるに当たって、閾値を変化分θdで補正することで、結果的に、現時点でのECM121側での検出角度を推定させることになる。
しかし、前記推定を行わせる場合には、実際よりも変化分θdを大きく推定すると、2重に設けた角度センサ間での検出結果の偏差が、実際には故障によって大きくなっているのに、正常であると診断することになり、また、逆に、実際よりも変化分θdを小さく推定すると、2重に設けた角度センサ間での検出結果の偏差が、送信遅れによって大きくなっているのに、故障であると診断することになり、変化分θdの推定精度によって、整合診断の精度が影響される。
そこで、以下では、推定処理を行わずに、ECM121側から受信した角度検出データと、接続されている角度センサ135a,135bの出力から求めた角度検出データとの整合診断を行う実施形態を、図8のフローチャートに従って説明する。
図8のフローチャートに示すルーチンは、定時割り込み処理で実行され、まず、ステップS801では、ECM121側から送信された、角度センサ136aによる検出角度θa2(第1バンク101a側の可変リフト機構134aの制御軸13の角度θa2)と、角度センサ136bによる検出角度θb2(第2バンク101b側の可変リフト機構134bの制御軸13の角度θb2)とを読み込む。
次のステップS802では、VELコントローラ120が直接受信した角度センサ135a,135bの出力信号に基づいてVELコントローラ120内で算出された、第1バンク101a側の可変リフト機構134aの制御軸13の角度θa1、及び、第2バンク101b側の可変リフト機構134bの制御軸13の角度θb1であって、現時点から送信時間だけ前のデータを読み込む。
VELコントローラ120では、角度センサ135a,135bの出力信号に基づく角度検出値を、少なくとも前記送信時間分だけ時系列的に記憶しており、ステップS802では、前記時系列な記憶値の中から、前記送信時間分だけ前の時点での検出値として記憶されているデータを読み込む。
ステップS803では、ステップS801で読み込んだ角度検出値と、ステップS802で読み込んだ角度検出値との偏差Δθを演算する。
ステップS801で読み込んだ角度検出値は、実際には、送信時間だけ前の時点においてECM121側で検出された角度であり、ステップS802で読み込んだ角度検出値は、現時点から送信時間だけ前の時点でVELコントローラ120が検出した値であり、両者は、共に現時点から送信時間だけ前の時点で検出された値となる。
従って、ステップS801での読み込み値と、ステップS802での読み込み値とは、2重に設けた角度センサが共に正常であれば、同じ値になるはずであり、両者の偏差は、少なくとも一方の角度センサが実際値とは異なる角度の検出結果を出力している場合に発生する。
そこで、ステップS804では、前記偏差Δθの絶対値が閾値よりも大きいか否かを判断する。
ステップS804で用いる閾値は、図5のフローチャートのステップS505のように変化分θdで補正する必要がないので、閾値=基本分とする。
ステップS804での比較結果に基づく処理であるステップS805〜ステップS807の処理は、前記ステップS507〜ステップS509と同様であり、偏差Δθが閾値よりも大きい状態の継続時間が所定時間に達する前は、角度センサの故障を確定することなく、故障診断確定前処理を実行し、偏差Δθが閾値よりも大きい状態の継続時間が所定時間に達すると、角度センサの故障を確定する。
上記のように、現時点から送信時間だけ前の時点での検出値同士を比較させれば、それぞれは実際の検出値であるので、図5のフローチャートに示すように、変化分θdの推定誤差によって整合判断の精度が低下することを抑制でき、高い精度で整合判断を行える。
但し、過去の不整合を現時点で判断することになり、不整合の発生から実際に不整合を判断するまでに、前記送信時間に相当する遅れを生じることになるが、センサの故障診断を確定させるための継続時間に比べて前記送信時間は短く、不整合の判断タイミングが遅れることによる不都合は充分に小さい。
尚、2重に設けた角度センサの検出結果が整合するか否かの診断は、前述のように、VELコントローラ120で行わせる他、ECM121で行わせても良いし、また、VELコントローラ120とECM121との双方で行わせることもできる。
また、上記では、角度センサ135a,135b,136a,136bの故障診断として、2重に設けられたセンサ同士の検出結果を比較する整合診断を行わせたが、例えば、角度センサ135a,135b,136a,136bの出力ラインに断線やショートが発生すると、センサ出力が正常時の可変範囲を逸脱する値を示すようになり、センサ出力が正常時の可変範囲内の値であるか否かによって、角度センサ個々について故障の有無を診断することができる。
そして、前記VELコントローラ120における角度センサ個々の診断結果は、ECM121側に送信され、ECM121での角度センサ個々の診断結果は、前記VELコントローラ120側に送信される。
次に、前記VELコントローラ120において実行される、整合診断及びセンサ個々の故障診断の結果に基づくフェイルセーフ制御の例を、図9のフローチャートに従って説明する。
図9のフローチャートに示すルーチンは、定時割り込み処理によって実行され、まず、ステップS901では、2重に備えられている角度センサの診断結果の判別を行う。
ステップS901で、2重に備えられている角度センサの双方が故障していると判断された場合、または、2重に備えられている角度センサのうちの少なくとも一方が故障していると診断されているが、故障しているセンサが特定されていない状態であると判断された場合には、ステップS902へ進む。
2重に設けられている角度センサの出力がいずれも正常範囲内であるものの、検出結果を相互比較した場合に一致しない場合には、2重に備えられている角度センサのうちの少なくとも一方が故障していると推定されるが、故障しているセンサは特定されないことになる。
ステップS902では、角度センサの検出結果とは無関係に、前記可変リフト機構134a,134bの制御軸13が機械的なデフォルト位置(例えば最小バルブ作動角・最小バルブリフト量になる位置)になっていると判断するように設定し、次のステップS903では、前記可変リフト機構134a,134bのモータ17への通電を停止し、前記可変リフト機構134a,134bの制御軸13が機械的なデフォルト位置に戻るようにする。
即ち、制御軸13の角度を角度センサで検出することができない状態では、モータ17への通電を停止し、前記可変リフト機構134a,134bの制御軸13が機械的なデフォルト位置に戻るようにし、制御軸13が機械的なデフォルト位置に戻っていると認識するようにする。
ここで、可変リフト機構134a,134bの一方について、センサ異常が診断されている場合であっても、両バンクの可変リフト機構134a,134bを停止させ、両バンクの吸気バルブ106のリフト特性を揃えるようにすることが好ましく、これによって、両バンクの吸入空気量が大きく異なってしまうことを抑制でき、排気性状の悪化、運転安定性の低下を抑制できる。
一方、ステップS901で、2重に備えられている角度センサの双方が故障している状態ではなく、かつ、故障センサが特定されることなく一方の故障が診断されている状態でもないと判断されると、ステップS904へ進む。
ステップS904では、ECM121側から送信される目標角度θtgを読み込み、ステップS905では、2重に設けられている角度センサのうち、VELコントローラ120に接続されている角度センサの故障が診断されているか否かを判断する。
尚、フローチャート中では、VELコントローラ120に接続されている角度センサ135a,135bをセンサ1と表し、ECM121に接続されている角度センサ136a,136bをセンサ2と表す。
VELコントローラ120に接続されている角度センサ(センサ1)が正常であれば、ステップS906へ進み、可変リフト機構134a,134bのフィードバック制御ゲインとして、VELコントローラ120に接続されている角度センサが正常であるときに適合する値として予め記憶されているゲインを設定する。
一方、VELコントローラ120に接続されている角度センサの故障が診断されている場合には、ステップS907へ進み、ECM121側から制御軸角度の検出データを読み込み、次のステップS908では、可変リフト機構134a,134bのフィードバック制御ゲインとして、VELコントローラ120に接続されている角度センサが故障していて、ECM121側から制御軸角度の検出データを読み込んで用いるときに適合する値として予め記憶されているゲインを設定する。
そして、ステップS909では、制御軸角度の検出値と目標角度θtgとの偏差に基づき、モータ17の操作量(デューティ比)を演算して出力する、可変リフト機構134a,134bのフィードバック制御を実行する。
ここで、ステップS906で設定されるゲインよりも、ステップS908で設定されるゲインは小さく、ステップS908で設定されるゲインは、ECM121側からVELコントローラ120への角度検出値の送信時間による角度の検出遅れによって、実際の制御軸角度θが許容範囲を超えてオーバーシュートすることがないように予め適合されている。
即ち、角度センサを2重に設けてあることで、一方が故障しても他方の角度センサでフィードバック制御を継続させることができるが、ECM121側での検出結果をフィードバック制御に用いる場合には、ECM121側からVELコントローラ120への角度検出値の送信には時間を要し、VELコントローラ120がECM121側から読み込んだ角度検出値は、実際には前記送信時間だけ前の時点での検出値である。
そして、フィードバック制御に用いる角度検出値に遅れがあると、実際には、目標角度θtg付近に到達しているのに、実際の角度と目標角度θtgとの偏差が大きいと判断することで、過剰に操作量を変化させ、実際の角度が目標角度θtgを超えて変化するオーバーシュートが大きくなってしまう。
そこで、実際の角度と目標角度θtgとの偏差に対する操作量変化の感度であるフィードバック制御ゲインを小さくすることで、前記オーバーシュートの発生を抑制する。
尚、制御軸角度の検出値と目標角度θtgとの偏差に基づく、モータ17の操作量(デューティ比)の設定は、例えば、前記偏差に基づく比例動作・積分動作で行われ、前記フィードバック制御ゲインは、前記比例動作における比例定数(比例ゲイン)や積分動作における積分定数(積分ゲイン)であって、角度センサの故障時であってECM121側から角度データを読み込む場合には、正常時に比べて比例定数(比例ゲイン)や積分定数(積分ゲイン)を小さくする。
また、VELコントローラ120に接続されている角度センサ135a,135bのうちの一方について、ステップS905で異常であると判断された場合、正常判断されている角度センサについては、その検出値を用い、ステップS906で設定されるゲインで制御させることができるが、両バンクでの制御応答を揃えるため、一方について故障診断された場合、両バンク共に、ECM121から送信される角度検出値に基づき、ステップS908で設定されるゲインによって制御させることが好ましい。
次に、ECM121において実行される、整合診断及びセンサ個々の故障診断の結果に基づくフェイルセーフ制御の例を、図10のフローチャートに従って説明する。
ステップS1001では、2重に備えられている角度センサの診断結果の判別を行う。
ステップS1001で、2重に備えられている角度センサの双方が故障していると判断された場合、または、2重に備えられている角度センサのうちの少なくとも一方が故障していると診断されているが、故障しているセンサが特定されていない状態であると判断された場合には、ステップS1002へ進む。
ステップS1002では、角度センサの検出結果とは無関係に、前記可変リフト機構134a,134bの制御軸13が機械的なデフォルト位置(例えば最小バルブ作動角・最小バルブリフト量になる位置)になっていると判断するように設定し、次のステップS1003では、前記可変リフト機構134a,134bのモータ17への通電を停止し、前記可変リフト機構134a,134bの制御軸13が機械的なデフォルト位置に戻すフェイルセーフ指令を、VELコントローラ120に出力する。
VELコントローラ120では、前記フェイルセーフ指令に基づいて前記可変リフト機構134a,134bのモータ17への通電を停止し、制御軸13を機械的なデフォルト位置に戻す。
一方、ステップS1001で、2重に備えられている角度センサの双方が故障している状態ではなく、かつ、故障センサが特定されることなく一方の故障が診断されている状態でもないと判断されると、ステップS1004へ進む。
ステップS1004では、2重に設けられている角度センサのうち、VELコントローラ120に接続されている角度センサ135a,135bの故障が診断されているか否かを判断する。
そして、VELコントローラ120に接続されている角度センサ135a,135bの少なくとも一方が故障している場合には、ステップS1007へ進み、目標角度θtgを予め記憶されているフェイルセーフ時用の値に固定する。
前記フェイルセーフ時用の目標角度θtgとは、例えば、可変リフト機構134a,134bを備えずに、吸気バルブ106のバルブ作動角・バルブリフト量が固定である内燃機関における値とすることができ、目標角度θtgが固定した場合、ECM121は、電子制御スロットル116の開度を制御して、内燃機関101の吸入空気量を目標吸入空気量に調整する。
そして、次のステップS1009へ進み、前記ステップS1007で設定した目標角度θtgを、VELコントローラ120に出力する。
前記目標角度θtgを受けたVELコントローラ120では、図9のフローチャートに従って、フィードバック制御ゲインを低下させ、ECM121から送信される角度検出値(角度センサ136a,136bの検出値)を、前記目標角度θtgに近づけるべく、モータ17の操作量(デューティ比)をフィードバック制御する。
ステップS1004で、VELコントローラ120に接続されている角度センサ135a,135bは正常であると判断されると、ステップS1005へ進み、ECM121に接続されている角度センサ136a,136bが故障しているか否かを判断する。
そして、ECM121に接続されている角度センサ136a,136bのうちの少なくとも一方の故障が判定されている場合には、ステップS1006へ進み、VELコントローラ120側から角度センサ135a,135bの検出結果を受信し、該受信した両バンクの角度検出値に基づいて、吸入空気量の検出値からの充填空気量の検出などの制御を実行する。
但し、VELコントローラ120側から角度センサ135a,135bの検出結果をECM121が受信するためには送信時間を要し、該送信時間だけ検出データの更新が遅れることになるから、ECM121に接続されている角度センサ136a,136bの検出結果を用いる場合に比べて、角度検出値に基づく補正制御等のゲインを小さくしたり、角度検出値に基づく補正量の可変範囲をより狭く制限したりすることが好ましい。
ステップS1006へ進み、VELコントローラ120側から角度センサ135a,135bの検出結果を受信させる場合には、更に、ステップS1007へ進み、前述のように、目標角度θtgを予め記憶されているフェイルセーフ時用の値に固定し、次のステップS1009で前記目標角度θtgをVELコントローラ120側に送信する。
即ち、2重に設けた角度センサのうち、VELコントローラ120側とECM121側とのいずれか一方が故障した場合には、目標角度θtgを予め記憶されているフェイルセーフ時用の値に固定する。
これは、2重に設けた角度センサのうちの一方が故障すると、2重に設けた角度センサの検出値を相互比較しての診断が不能になり、角度センサの出力が正常範囲であるものの、実際の角度に対応しなくなる故障を診断できなくなるためであり、2重センサの一方が故障した状態では、吸気バルブ106のバルブ作動角及びバルブリフト量を固定して、電子制御スロットル116で吸入空気量を制御させる状態に移行させ、故障した角度センサの修理・取替えがなされるまで内燃機関101の運転を継続させる。
一方、ステップS1005で、ECM121に接続されている角度センサ136a,136bが故障していないと判断された場合には、ステップS1008へ進み、目標角度θtgを機関運転状態に応じて可変に設定し、続いてステップS1009へ進んで、ステップS1008で設定した目標角度θtgをVELコントローラ120側へ送信する。
ところで、上記図10のフローチャートに示したルーチンでは、2重に設けた角度センサのうちの一方が故障した場合に、目標角度θtgを固定させる構成としたが、機関運転状態に応じた目標角度θtgの可変設定を継続させる構成とすることができ、係る構成した実施形態を、図11のフローチャートに従って説明する。
図11のフローチャートに示すルーチンは、定時割り込み処理によって実行され、まず、ステップS1101では、2重に備えられている角度センサの診断結果の判別を行う。
ステップS1101で、2重に備えられている角度センサの双方が故障していると判断された場合、または、2重に備えられている角度センサのうちの少なくとも一方が故障していると診断されているが、故障しているセンサが特定されていない状態であると判断された場合には、ステップS1102へ進む。
ステップS1102では、角度センサの検出結果とは無関係に、前記可変リフト機構134a,134bの制御軸13が機械的なデフォルト位置(例えば最小バルブ作動角・最小バルブリフト量になる位置)になっていると判断するように設定し、次のステップS1103では、前記可変リフト機構134a,134bのモータ17への通電を停止し、前記可変リフト機構134a,134bの制御軸13が機械的なデフォルト位置に戻すフェイルセーフ指令を、VELコントローラ120に出力する。
VELコントローラ120では、前記フェイルセーフ指令に基づいて前記可変リフト機構134a,134bのモータ17への通電を停止し、制御軸13を機械的なデフォルト位置に戻す。
一方、ステップS1101で、2重に備えられている角度センサの双方が故障していると判断された場合ではなく、かつ、2重に備えられている角度センサのうちの少なくとも一方が故障していると診断されているが、故障しているセンサが特定されていない状態でもないと判断された場合、即ち、2重に設けられている角度センサのうち、少なくとも一方は正常である場合には、ステップS1104へ進む。
ステップS1104では、目標角度θtgを機関運転状態に応じて可変に設定し、続いてステップS1105へ進んで、ステップS1104で設定した目標角度θtgをVELコントローラ120側へ送信する。
前記目標角度θtgを受信するVELコントローラ120側では、図9のフローチャートに示すルーチンに従って制御を行い、例えば、VELコントローラ120に接続されている角度センサ135a,135bが故障している場合には、ECM121に接続されている角度センサの検出結果を読み込んで、前記可変リフト機構134a,134bの制御を実行する。
また、ECM121では、ECM121に接続されている角度センサが故障していれば、VELコントローラ120側から角度検出値を読み込んで、吸入空気量の検出値から充填空気量を算出する処理などを実行する。
ところで、前述のように、2重に設けられている角度センサのうち、一方の出力が正常範囲から外れていて故障していると判断されると、同じ制御軸13の角度を検出する他方の角度センサの検出値に基づいて、可変リフト機構134a,134bの制御や吸入空気量検出値の補正制御などを継続させるが、前記他方の角度センサが、その出力が正常範囲内であるものの、実際値とは異なる値を示す故障を生じた場合には、係る故障を診断することができない。
このような場合、本実施形態のようなV型機関で、各バンクの空燃比が個別に空燃比センサ126a,126bで検出される場合、バンク間の空燃比偏差に基づいて、前記他方の角度センサについて故障の有無を診断することが可能である。
例えば、可変リフト機構134aの制御に用いている角度センサが正常に実際値を検出できているが、可変リフト機構134bの制御に用いている角度センサが、その出力が正常範囲であるものの、実際値とは異なる出力を発生させる場合、可変リフト機構134aが設けられる第1バンク101aの吸気バルブ106のバルブ作動角・バルブリフト量は目標に制御されるのに対し、可変リフト機構134bが設けられる第2バンク101bの吸気バルブ106のバルブ作動角・バルブリフト量は目標からずれる。
このため、バンク間で吸気バルブ106のバルブ作動角・バルブリフト量に差異が生じ、これによってバンク間で吸入空気量に差異が生じるが、エアフローセンサ127は、各バンクの平均吸入空気量を計測し、該平均吸入空気量に基づいて燃料噴射量が決定されるため、バンク間で空燃比に差異が生じ、バンク間での空燃比差から、角度センサの故障診断を行える。
図12のフローチャートに示すルーチンは、前記空燃比に基づく角度センサの故障診断の様子を示すものであり、定時割り込み処理によって実行される。
まず、ステップS1201では、空燃比センサ126a,126bで検出された第1バンク101a及び第2バンク101bの空燃比を読み込み、両バンク間における空燃比差を算出する。
尚、空燃比センサ126a,126bの検出結果が目標空燃比に近づくように、燃料噴射量を補正するための空燃比フィードバック補正係数をバンク毎に設定し、前記空燃比フローチャート補正係数で各バンクの燃料噴射量を補正している場合には、各バンクの空燃比フィードバック補正係数を、各バンクの空燃比を示す状態量として読込み、空燃比フィードバック補正係数のバンク間での差を算出する。
次のステップS1202では、機関負荷や機関回転速度NEなどの機関運転状態を読み込み、該機関運転状態から空燃比差の最大値(>0)を演算する。
角度センサの検出誤差に対する吸入空気量のばらつきは、機関運転状態によってその大きさが異なり、機関負荷が低くなるほど(バルブリフト量が小さくなるほど)、角度センサの検出誤差に対する吸入空気量のばらつきが大きくなるので、機関負荷が低いほど前記空燃比差の最大値をより大きな値に設定する。
尚、前記空燃比差の最大値には、角度センサの検出ばらつきによって発生する差の他、燃料噴射弁による燃料噴射量のばらつきを含めるようにし、角度センサの検出ばらつきや燃料噴射弁による燃料噴射量のばらつきなどでは超えることがなく、一方の角度センサの出力が、ばらつき範囲を超えて実際値と異なるようになった場合に、実際の空燃比差が超えるような値に設定する。
ステップS1203では、バンク間での空燃比の差(空燃比フィードバック補正係数の差)の絶対値が、前記最大値以上であるか否かを判断する。
そして、バンク間での空燃比の差(空燃比フィードバック補正係数の差)の絶対値が前記最大値未満である場合には、バンク間に空燃比の差があっても許容範囲内であり、バンク間での吸入空気量の差、換言すれば、吸気バルブ106のバルブ作動角・バルブリフト量のバンク間の差が許容範囲内であり、各バンクの角度センサは共に正常であるものと見なすことができるので、そのまま本ルーチンを終了させる。
一方、バンク間での空燃比の差(空燃比フィードバック補正係数の差)の絶対値が前記最大値以上であると判断された場合には、いずれか一方バンクの角度センサが故障し、その出力が、ばらつき範囲を超えて実際値と異なるようになったものと判断して、ステップS1204へ進む。
ステップS1204では、故障判定を確定する前の処理を実行する。
具体的には、可変バルブタイミング機構133a,133bによって、両バンクの吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相を遅角変化させる処理、換言すれば、吸気バルブ106のバルブリフトが極大値となるタイミングを上死点から遠ざけ、吸気バルブ106とピストンとの干渉を回避する処理を行う。
尚、前記遅角処理においては、前記中心位相を最遅角にまで変化させることが好ましい。
上記のステップS1204での処理によって、角度センサの故障によって、吸気バルブ106のバルブリフト量が目標よりも大きく制御されていても、吸気バルブ106とピストンとの干渉が発生する可能性を速やかに低下させることができる。
ステップS1205では、バンク間での空燃比の差(空燃比フィードバック補正係数の差)の絶対値が前記最大値以上であると判断されている継続時間が、所定時間以上になっているか否かを判断することで、ノイズなどに影響された一時的な空燃比差の発生によって、角度センサの故障が判定されないようにする。
従って、前記所定時間は、ノイズなどに影響されて空燃比が変動する時間を越える時間に設定される。
ステップS1205で、継続時間が所定時間以上であると判断すると、ステップS1206へ進み、可変リフト機構134a,134bの制御に用いている角度センサのうちの少なくとも一方が故障しているという判定を確定させる。
そして、ステップS1205で故障判定されると、前記図9〜図11のフローチャートにおいて、ステップS902,ステップS903又はステップS1002,ステップS1003又はステップS1102,ステップS1103に進むことで、両バンクの前記可変リフト機構134a,134bのモータ17への通電を停止し、前記可変リフト機構134a,134bの制御軸13が機械的なデフォルト位置に戻すフェイルセーフ指令を、VELコントローラ120に出力する。
上記図12のフローチャートに示した例では、可変リフト機構134a,134bの制御に用いている角度センサの故障によるバンク間での吸入空気量差を、空燃比の差として検出させたが、図13に示すように、バンク毎に独立した吸気系を備え、これらの吸気系毎にエアフローセンサ127a,127bを備え、第1バンク101aの吸入空気量と、第2バンク101bの吸入空気量とを個別に検出できる場合には、バンク間における吸入空気量の差から角度センサの故障を診断させることができる。
図13に示した内燃機関101は、バンク毎に独立した吸気系を備える点以外は、図1に示した内燃機関101と同一構造のものであり、同一要素には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図14のフローチャートは、前記吸入空気量の差によって故障診断を行うルーチンを示し、このルーチンは定時割り込み処理によって実行される。
まず、ステップS1301では、エアフローセンサ127a,127bで検出された第1バンク101aの吸入空気量Qa及び第2バンク101bの吸入空気量Qaを読み込み、両バンク間における吸入空気量差を算出する。
次のステップS1302では、機関負荷や機関回転速度NEなどの機関運転状態を読み込み、該機関運転状態から吸入空気量差の最大値(>0)を演算する。
角度センサの検出誤差に対する吸入空気量のばらつきは、機関運転状態によってその大きさが異なり、機関負荷が低くなるほど(バルブリフト量が小さくなるほど)、角度センサの検出誤差に対する吸入空気量のばらつきが大きくなるので、機関負荷が低いほど前記吸入空気量差の最大値をより大きな値に設定する。
尚、前記吸入空気量差の最大値は、角度センサの検出ばらつきでは超えることがなく、一方の角度センサの出力がばらつき範囲を超えて実際値と異なるようになった場合に、実際の吸入空気量差が超えるような値に設定する。
ステップS1303では、バンク間での吸入空気量の差の絶対値が、前記最大値以上であるか否かを判断する。
そして、バンク間での吸入空気量の差の絶対値が前記最大値未満である場合には、バンク間に吸入空気量の差があっても許容範囲内であり、吸気バルブ106のバルブ作動角・バルブリフト量のバンク間の差が許容範囲内であり、各バンクの角度センサは共に正常であるものと見なすことができるので、そのまま本ルーチンを終了させる。
一方、バンク間での吸入空気量の差の絶対値が前記最大値以上であると判断された場合には、いずれか一方バンクの角度センサが故障し、その出力がばらつき範囲を超えて実際値と異なるようになったものと判断して、ステップS1304へ進む。
ステップS1304では、故障判定を確定する前の処理を実行する。
具体的には、可変バルブタイミング機構133a,133bによって、両バンクの吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相を遅角変化させる処理、換言すれば、吸気バルブ106のバルブリフトが極大値となるタイミングを上死点から遠ざけ、吸気バルブ106とピストンとの干渉を回避する処理を行う。
尚、前記遅角処理においては、前記中心位相を最遅角にまで変化させることが好ましい。
上記のステップS1304での処理によって、角度センサの故障によって、吸気バルブ106のバルブリフト量が目標よりも大きく制御されていても、吸気バルブ106とピストンとの干渉が発生する可能性を速やかに低下させることができる。
ステップS1305では、バンク間での吸入空気量の差の絶対値が前記最大値以上であると判断されている継続時間が、所定時間以上になっているか否かを判断することで、ノイズなどに影響された一時的な空燃比差の発生によって、角度センサの故障が判断されないようにする。
従って、前記所定時間は、ノイズなどに影響されて吸入空気量が変動する時間を越える時間に設定される。
ステップS1305で、継続時間が所定時間以上であると判断すると、ステップS1306へ進み、可変リフト機構134a,134bの制御に用いている角度センサのうちの少なくとも一方が故障しているという判定を確定させる。
そして、ステップS1305で故障判定されると、前記図9〜図11のフローチャートにおいて、ステップS902,ステップS903又はステップS1002,ステップS1003又はステップS1102,ステップS1103に進むことで、両バンクの前記可変リフト機構134a,134bのモータ17への通電を停止し、前記可変リフト機構134a,134bの制御軸13が機械的なデフォルト位置に戻すフェイルセーフ指令を、VELコントローラ120に出力する。
尚、上記実施形態では、ECM121とVELコントローラ120とが別体に設けられる構成としたが、1つの筐体内にECM121に相当する機能を有するユニット(第2ユニット)とVELコントローラ120に相当する機能を有するユニット(第2ユニット)とが内蔵されるものであってもよく。
また、上記実施形態では、電動アクチュエータ機構としての可変リフト機構134a,134bの制御を例としたが、電動アクチュエータ機構は、前記可変バルブタイミング機構133a,133bや電子制御スロットル116などであってもよく、また、内燃機関とモータとを組み合わせて車両を駆動するハイブリッドシステムにおけるモータや、パワーステアリング機構などであってもよい。
また、電動アクチュエータ機構としての可変リフト機構134a,134bの制御量(制御軸13の角度)を検出する角度センサを、2重に備える構成としたが、3重以上に設け、例えば、VELコントローラ120に2つのセンサを接続し、ECM121側に1つのセンサを接続させることもできる。
また、ECM121(第2ユニット)とVELコントローラ120(第1ユニット)との間の通信は、有線であっても無線であってもよい。
また、多重のセンサとは、同じ制御量を検出するセンサを複数備えるものであり、多重のセンサそれぞれでのセンサ構造が相互に異なっても良く、例えば、可変リフト機構134の制御軸13の角度を検出するセンサとして、ポテンショメータ式のセンサと、エンコーダ式センサとを備えることができる。
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
(イ)前記一方のユニットに接続されているセンサによる制御量の検出値であって、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間の通信に要する時間だけ前における制御量の検出値と、前記他方ユニットから受信した制御量の検出値の最新値とを対比して、前記センサの故障診断を行う請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用電動アクチュエータ機構の制御装置。
上記発明によると、他方ユニットから通信時間を要して読み込んだ検出値は、前記通信時間だけ前の時点での検出値であるから、一方のユニットの検出値であって、通信時間だけ前の時点での検出値と対比させれば、同じタイミングで検出された検出値相互を比較することになり、通信時間の影響を抑制して高精度に整合性を診断できる。
(ロ)前記電動アクチュエータ機構が、内燃機関の機関バルブのリフト特性を可変とする可変動弁機構である請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用電動アクチュエータ機構の制御装置。
上記発明によると、可変動弁機構の制御量を高応答で検知でき、また、可変動弁機構の制御量を検出するセンサを多重に備えることで、センサ間の検出値の比較によってセンサ故障を診断でき、センサ故障に対して可変動弁機構のフェイルセーフを確実に実施できる。