JP5290653B2 - 摺動性組成物および摺動製品 - Google Patents
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Description
オレフィン系樹脂材料に含まれる結晶性オレフィン系樹脂としては、例えばエチレンの単独重合体,プロピレンの単独共重合体や、エチレン,プロピレン等を主体とする結晶性の共重合体等の一般的に知られているもの(市販品等)を適宜適用することができる。具体例として、高密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン,エチレン・ブテン‐1共重合体の結晶性エチレン系共重合体,アイソタクチックポリプロピレン,プロピレン‐エチレン共重合体,プロピレン・ブテン‐1共重合体,プロピレン・エチレン・ブテン‐1三元共重合体等が挙げられ、好ましくはポリプロピレン系重合体が挙げられる。また、前記の各結晶性オレフィン系樹脂の何れかを単独で用いても良く、2種類以上を適宜組み合わせて用いても良い。
カーボンブラックにおいては、一般的に知られているもの(市販品等)を適宜適用することができ、例えばオイルファーネス法等によって製造されたものが挙げられる。また、好ましくは、平均粒子径が約40nm以上(後述の実施例では41nm)のものを用いたり、オレフィン系樹脂材料に対する配合量を約5wt%〜約30%(より好ましくは、約10wt%〜約30wt%)とすることが挙げられるが、目的とする摺動性組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜変更して用いることができる。なお、平均粒子径が小さ過ぎる場合(例えば、平均粒子径26nm程度のものより小さい場合)や配合量が少な過ぎる場合(例えば、配合量5wt%未満の場合)には、オレフィン系樹脂材料の結晶化阻害作用が弱まり、曲げ弾性率が高くなることから、柔軟性が悪くなる。また、該配合量が多過ぎる場合(例えば、配合量35wt%以上の場合)には、複合材料中における分散性が悪化(分散不良)するだけでなく、結晶化阻害作用が強過ぎて脆弱なものとなってしまうため、摺動性組成物の諸特性(摺動耐久性等)に影響を及ぼす可能性がある。
無機充填剤においては、少なくとも、前記オレフィン系樹脂材料の結晶化に寄与する核剤として機能するシリカを含むものを用いる。
シリコーン化合物においては、一般的に知られているもの(市販品等)を適宜適用することができ、例えばジメチルシリコーンオイル,メチルフェニルシリコーンオイル,シリコーンゲル(いわゆる、ガム状シリコーン)等のシリコーンオイルが挙げられ(具体例としては、信越化学社製のKF96,KF50,KE72BSや、GE東芝シリコーン社製のTSF451,TSF456,TSF3051等)、何れか1種類または複数の種類のものを組み合わせて用いても良い。また、好ましくは、粘度が約100cps〜100000cpsを用いたり、オレフィン系樹脂材料に対する配合量を約5wt%〜約20wt%とすることが挙げられるが、目的とする摺動性組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜変更して用いることができる。なお、シリコーン化合物の配合量が少な過ぎる場合には摺動耐久性が低くなってしまう。また、前記の配合量が多過ぎる場合には前記のメヤニ現象(液状のメヤニ等)が発生し易くなり、そのメヤニが摺動製品表面に付着し外観性を悪化させてしまう可能性がある。
以上示した各種成分の他には、液状ポリマー(液状ゴム),酸化防止剤,老化防止剤,脱水剤,熱安定剤,光安定剤,紫外線吸収剤,摺動性パウダー(例えば、PMMA,フッ素樹脂(テフロン(登録商標)等)系パウダー,アクリル系パウダー,シリコーンゴムパウダー,シリコーン樹脂パウダー,ポリカーボネート系パウダー,超高分子系ポリエチレンパウダー等),防雲剤,アンチブロッキング剤,スリップ剤,分散剤,難燃剤,帯電防止剤,導電性付与剤,粘着付与剤,架橋助剤,着色剤(酸化チタン等),金属粉末(フェライト等),ガラス繊維,炭素繊維,有機繊維(アラミド繊維等),複合繊維,ガラスバルーン,ガラスフレーク,グラファイト,カーボンナノチューブ,フラーレン,黒粉体,各種ゴム,有機発泡剤,熱膨張カプセル,ワックス,再生ゴム等が挙げられ、何れか1種類または複数の種類のものを組み合わせ、目的とする摺動製品の特性を大きく損なわない程度であれば適宜用いることができる。
本実施形態の摺動性組成物においては、オレフィン系樹脂材料,カーボンブラック,無機充填剤,シリコーン系化合物等を配合し混練して複合材料を得、所望の形状で成形加工して摺動製品が得られる方法であれば、摺動製品の分野で用いられている手法(混練機,二軸押出し成形機等を用いた手法)を適宜適用することができる。前記の複合材料に係る混練には種々のミキサーを適用することができ、例えばラボプラストミル等のバッチ式ミキサーや二軸押出し式の成形機(例えば、混練しながら押出し成形可能なもの)等が挙げられる。
本実施形態の摺動性組成物においては、例えば自動車用のグラスラン,ウェザーストリップのように圧接部を有する摺動製品に適宜適用することができ、その一例として図1の概略図に示すような断面形状のグラスラン10が挙げられる。この図1においては、横断面略コ字状で長尺の基部1と、その基部1の内壁から突出した複数個(図中では4個)のリップ状の圧接部2と、が設けられている。符号3は、基部1の外壁から突出した係止爪部を示すものであり、車体パネル4に組みつけられたグラスラン10が該車体パネル4から抜けないようにするためのものである。前記の圧接部2における少なくともガラス5との接触面側は摺動性組成物6により形成されている。このような構成によれば、圧接部2(摺動性組成物6)がガラス5に対し弾性を有して摺動自在に圧接し、ガラスシール性が保持される。
まず、結晶性ポリオレフィン樹脂として結晶性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製のE‐200GP)、非結晶性ポリオレフィン樹脂としてプロピレン・1‐ブテン共重合体(宇部興産社製のUBETAC APAO UT2780)、カーボンブラック(旭カーボン社製の旭♯50(平均粒子径85nm);以下、カーボンAと称する)を用い、下記表1に示すように配合し混練して種々の複合材料M1〜M11を得た。次に、D20−10型ラボブラストミル一軸押出し機(東洋精機製作所製,20Φ)を用いて(押出し加工条件;シリンダー前段の温度180℃,シリンダー中段の温度190℃,シリンダー後段の温度200℃,ヘッドの温度200℃,口金形状2mm×10mm,回転速度50rpm)、前記の各複合材料M1〜M11をそれぞれ押出し加工することにより、種々の摺動性祖生物S1〜S11を作製した。そして、摺動性組成物S1〜S11の硬度(D)(JIS K 6253),曲げ弾性率(JIS K 7171)をそれぞれ調べ、その結果を下記表2に示した。
まず、結晶性ポリオレフィン樹脂として前記の結晶性ポリプロピレン樹脂、非結晶性ポリオレフィン樹脂として前記のプロピレン・1‐ブテン共重合体、カーボンブラックとしてカーボンA,その他2種類(旭カーボン社製の旭♯60H(平均粒子径41nm),旭♯70(平均粒子径26nm),;以下、カーボンB,Cと称する)、無機充填剤としてシリカ(日本シリカ工業社製のニップシールER),カオリン(土屋カオリン社製のカオリン),タルク(松村産業社製のクラウンタルクPP),マイカ(コープケミカル社製のMK‐300),スメクタイト(コープケミカル社製のルーセンタイトSWN),シリカと層状結晶性充填剤との結合化合物(HOFFMAN MINERAL社製のシリチン)、シリコーン化合物(信越化学社製のKF96‐1000csとKE76BSとが1:1の割合で混合されたもの)、をそれぞれ下記表3に示す配合で用い、ラボブラストミル(東洋精機製作所製の密閉式ミキサ13600)にて混練(混練条件;チャンバー温度200℃,ロータ回転数100rpm)し、その混練物が215℃に達した時点で排出することにより、各複合材料M12〜M35を得た。
まず、前記の検証と同じ製法に基づいて、各複合材料M1〜M37をそれぞれ押出し加工することにより、長さ300mmの試料S12〜S37をそれぞれ5時間連続で作製し続け、口金の「メヤニ」の有無を観測した。なお、後述の表4中の押出し加工性の欄において、記号「◎」は「メヤニ」が全く観られなかった場合、記号「○」は「メヤニ」が若干観られたが成形体への付着は観られなかった場合、記号「△」は「メヤニ」が観られ2〜5時間経過時の成形体において付着が観られた場合、記号「×」は「メヤニ」が観られ0〜2時間経過時の成形体において付着が観られた場合であったものとする。
JIS K 6253に準拠して、各試料S12〜S37の硬度をタイプDのデュロメータにより測定した。
JIS K 7171に準拠して、各試料S12〜S37の曲げ弾性率を測定した。
まず、前記の検証と同じ製法に基づいて、短冊状((7.0mm±0.5mm)×(120mm±0.5mm)×(0.7mm±0.5mm))の試料S12〜S37を作製した。次に、図2の概略図に示すように、支持台(試験台)21上に試料20(試料S12〜S37)を固定し、ガラス部材22の端部(JIS R 3211に準拠した自動車窓ガラスに相当するR10球面を有する端部)22aを29.4Nの荷重で圧接させた。この状態で、試料20表面(ガラス部材22が摺動する面)に泥水(ダスト:水=1:3の混合液)を滴下しながら、そのガラス部材22を水平方向(試料20の長手方向;図示矢印23方向)に対して摺動(ストローク;100±0.5mm、サイクル;60回/分、温度雰囲気;25℃)させ、その摺動による試料20の磨耗状況を観測した。この観測では、前記の摺動による試料20の磨耗が400μmに達した際におけるガラス部材22のストローク回数を測定した。
まず、前記の摺動耐久性試験のように作製した各試料S12〜S37をそれぞれ短冊状((3.0mm±0.5mm)×(10mm±0.5mm)×(0.7mm±0.5mm))に打ち抜いて試料片を得た。次に、図3A(正面図),B(側面図)の概略図に示すように、試料片30を治具31に固定させ、その試料片30をガラス部材(JIS R 3211に準拠した自動車窓ガラスに相当する部材)32に対して9.8Nの荷重で圧接させる。この状態で、ガラス部材32における試料片30表面が摺動する面に対し泥水(火山灰(JIS標準粉体,関東ローム):水=1:3の混合液)を滴下しながら、治具31を水平方向(試料片30の長手方向;図示矢印方向)に対して摺動(ストローク;100±0.5mm、サイクル;60回/分、温度雰囲気;25℃)させ、その摺動による低級音の発生の有無を観測した。なお、後述の表4中の異音発生の有無の欄において、「有り」は低級音が発生しなかった場合、「無し」は低級音が発生しなかった場合であったものとする。
熱可塑性エラストマーに対し比較的多量のカーボンブラックが配合された試料S36,S37は、摺動製品の圧接部に適用した場合を想定すると十分適度な硬度であり、柔軟性,摺動性が良好であったが、たとえシリコーン樹脂粒子,カーボンブラック等を配合したものであっても、摺動耐久性が極めて低くなってしまうことを確認できた。また、シリコーン樹脂粒子を配合した試料S37においては、押出し加工性も極めて低くなることを読み取れる。
ポリオレフィン系樹脂材料に対し比較的多量のカーボンブラックが配合された試料のうち、該ポリオレフィン系樹脂材料中に結晶性ポリオレフィン樹脂が含まれていない試料S35は、摺動耐久性,摺動性が低いことを確認できた。
一方、カーボンブラック5wt%〜30wt%,無機充填剤10wt%〜30wt%,シリコーン系化合物5wt%〜20wt%を配合した試料S12〜S26は、摺動製品の観点において適度な硬度を有すると共に、良好な押出し加工性,柔軟性,摺動耐久性,摺動性が得られた。
2…圧接部
3…係止爪部
4…車体パネル
5…ガラス部材
6…摺動性組成物
Claims (8)
- 少なくとも結晶性ポリオレフィン樹脂を含むポリオレフィン系樹脂材料と、カーボンブラック5wt%〜30wt%と、少なくともシリカまたは/及びシリカと層状結晶性充填剤との結合化合物を含む無機充填剤10wt%〜30wt%と、シリコーン化合物5wt%〜20wt%と、を配合した複合材料を成形加工して成る組成物であって、
ガラス部材に対し弾性を有して圧接しガラスシール性を付与することを特徴とする摺動性組成物。 - 前記ポリオレフィン系樹脂材料は、非結晶性ポリオレフィン樹脂を含むことを特徴とする請求項1記載の摺動性組成物。
- 前記の無機充填剤は、層状結晶性充填剤を含むことを特徴とする請求項1または2記載の摺動性組成物。
- 前記のシリカは10wt%以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の摺動性組成物。
- 前記のカーボンブラックの平均粒子径は40nm以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の摺動性組成物。
- 車体パネルに組みつけられる基部と、その基部に設けられガラス部材に対して弾性を有する圧接部と、を備え熱可塑性エラストマー組成物から成る摺動製品であって、
前記の圧接部のうち少なくともガラス部材に接する面に、請求項1〜5の何れかに記載の摺動性組成物を形成したことを特徴とする摺動製品。 - 前記の摺動性組成物は、曲げ弾性率が350MPa以下であることを特徴とする請求項6記載の摺動製品。
- 前記の摺動性組成物は、JIS K 6253に準拠した硬度(D)が40〜60の範囲内であることを特徴とする請求項6または7記載の摺動製品。
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