以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
本発明の画像形成装置に用いられる静電荷像現像用トナー(以下、「トナー」と略記する場合がある。)を製造する方法は、水系媒体中で形成すれば特に限定されるものではない。本発明の画像形成装置に用いられるトナーは以下に説明する構成を有する。
ただし、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施形態の代表例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。
<トナーの構成>
本発明の画像形成装置に用いられるトナーを構成する結着樹脂としては、トナーに用い得ることが知られているもののなかから適宜選択して用いればよい。例えば、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−アクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等を挙げることができる。これらの樹脂は単独で用いることも、いくつかを併用することもできる。
本発明の画像形成装置に用いられるトナーを構成する着色剤としては、トナーに用い得ることが知られているもののなかから適宜選択して用いればよい。例えば、以下に示すイエロー顔料、マゼンタ顔料及びシアン顔料が挙げられ、黒色顔料としてはカーボンブラック又は以下に示すイエロー顔料/マゼンタ顔料/シアン顔料を混合して黒色に調色されたものが利用される。
このうち、黒色顔料としてカーボンブラックは、非常に微細な一次粒子の凝集体として存在し、顔料分散体として分散させたときに、再凝集による粒子の粗大化が発生しやすい。カーボンブラック粒子の再凝集の程度は、カーボンブラック中に含まれる不純物量(未分解有機物量の残留程度)の大小と相関が見られ、不純物が多いと分散後の再凝集による粗大化が激しい傾向を示した。そして、不純物量の定量的な評価として、以下の方法で測定されるカーボンブラックのトルエン抽出物の紫外線吸光度が0.05以下であるのが好ましく、0.03以下であるのが一層好ましい。一般に、チャンネル法のカーボンブラックは不純物が多い傾向を示すので、本発明におけるカーボンブラックとしては、ファーネス法で製造されたものが好ましい。
カーボンブラックの紫外線吸光度(λc)は、次の方法で求める。まずカーボンブラック3gをトルエン30mLに充分に分散、混合させて、続いてこの混合液をNo.5C濾紙を使用して濾過する。その後、濾液を吸光部が1cm角の石英セルに入れて市販の紫外線分光光度計を用いて波長336nmの吸光度を測定した値(λs)と、同じ方法でリファレンスとしてトルエンのみの吸光度を測定した値(λo)から、紫外線吸光度はλc=λs−λoで求める。市販の分光光度計としては、例えば島津製作所製紫外可視分光光度計(UV−3100PC)等がある。
イエロー顔料としては、縮合アゾ化合物,イソインドリノン化合物等に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、150、155、168、180、194等が好適に用いられる。
マゼンタ顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキウ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、17.3、184、185、202、206、207、209、220、221、238、254、C.I.ピグメントバイオレット19等が好適に用いられる。中でもC.I.ピグメントレッド122、202、207、209、C.I.ピグメントバイオレット19で示されるキナクリドン系顔料が特に好ましい。キナクリドン系顔料の中でも、C.I.ピグメントレッド122で示される化合物であるのが、特に好ましい。
シアン顔料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体,アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等及び、C.I.ピグメントグリーン7、36等が特に好適に利用できる。
水系媒体中でトナー母粒子を得る製造方法としては、懸濁重合法、乳化重合凝集法等の水系媒体中でラジカル重合を行う方法(以下、「重合法」と略記し、得られたトナーを「重合トナー」と略記する)や、溶融懸濁法に代表される化学粉砕法等が好適に使用できる。トナーの粒径を本発明の特定範囲にするトナー母粒子の製造方法としては特に限定はされない。例えば、重合トナーの製造工程において、懸濁重合法の場合は、重合性モノマー滴が生成される工程で高いせん断力を与えたり、分散安定剤等を増量させたりする方法等が挙げられる。
本発明の特定範囲の粒径を有するトナーを得る方法としては、上記した懸濁重合法、乳化重合凝集法等の重合法や、溶融懸濁法に代表される化学粉砕法等、何れの製造方法をも使用することができるが、「懸濁重合法」や「溶融懸濁法に代表される化学粉砕法」においては、何れも、トナー母粒子径より大きなサイズから小さなサイズへ調整させるため、平均粒子径を小さくしようとすると小粒子側の粒子径割合が増加する傾向にあり、分級工程等において過度の負担が強いられる。これに対して、乳化重合凝集法は、比較的粒子径分布がシャープで、かつ、トナー母粒子径より小さなサイズから大きなサイズへ調整させるため、分級工程等の工程を介さずとも整った粒子径分布をもつトナーが得られる。従って、以上の理由により、乳化重合凝集法により本発明のトナーに含有されるトナー母粒子を製造することが特に好ましい。
以下、その乳化重合凝集法により製造されるトナーについて更に詳細に説明する。乳化重合凝集法によりトナーを製造する場合、通常、重合工程、混合工程、凝集工程、熟成工程、洗浄・乾燥工程を有する。すなわち、一般的には乳化重合により得た重合体一次粒子を含む分散液に、着色剤、帯電制御剤、ワックス等の分散液を混合し、この分散液中の一次粒子を凝集させて芯粒子とし、必要に応じて樹脂微粒子等を固着又は付着させた後に融着させて得られた粒子を洗浄、乾燥することによりトナー母粒子が得られる。
乳化重合凝集法に用いられる重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂は乳化重合法により重合可能な1種又は2種以上の重合性モノマーを適宜用いればよい。重合性モノマーとしては、例えば、「酸性基を有する重合性モノマー」(以下、単に「酸性モノマー」と称すことがある)、「塩基性基を有する重合性モノマー」(以下、単に「塩基性モノマー」等の「極性基を有する重合性モノマー」(以下、単に「極性モノマー」と称すことがある)と称することがある)と、「酸性基及び塩基性基の何れをも有さない重合性モノマー」(以下、「その他のモノマー」と称することがある)とを原料重合性モノマーとして使用することが好ましい。この際、各重合性モノマーは別々に加えても、予め複数の重合性モノマーを混合しておいて同時に添加してもよい。更に、重合性モノマー添加途中で重合性モノマー組成を変化させることも可能である。また、重合性モノマーはそのまま添加してもよいし、予め水や乳化剤等と混合、調製した乳化液として添加することもできる。
「酸性モノマー」としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有する重合性モノマー、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有する重合性モノマー、ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有する重合性モノマー等が挙げられる。また、「塩基性モノマー」としては、アミノスチレン等のアミノ基を有する芳香族ビニル化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の窒素含有複素環含有重合性モノマー等が挙げられる。
これら極性モノマーは、単独で用いても複数を混合して用いてもよく、また、対イオンを伴って塩として存在していてもよい。中でも、酸性モノマーを用いるのが好ましく、より好ましくは、(メタ)アクリル酸であるのがよい。重合体一次粒子としてのバインダー樹脂を構成する全重合性モノマー100質量%中に占める極性モノマーの合計量の割合は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上である。上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下であることが望ましい。上記範囲である場合、得られる重合体一次粒子の分散安定性が向上し、凝集工程において粒子形状や粒子径の調整を行いやすくなる。
「その他のモノマー」としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、アクリル酸アミド等が挙げられる。重合性モノマーは、単独で用いてもよく、また複数を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、上述した重合性モノマー等を組み合わせて用いる中でも、好ましい実施態様として酸性モノマーとその他のモノマーを組み合わせて用いるのがよい。より好適には、酸性モノマーとして(メタ)アクリル酸を用い、その他のモノマーとしてスチレン類、(メタ)アクリル酸エステル類の中から選択される重合性モノマーを用いるのがよく、更に好適には酸性モノマーとして(メタ)アクリル酸を用い、その他のモノマーとしてスチレンと(メタ)アクリル酸エステル類との組み合わせを用いるのがよく、特に好適には酸性モノマーとして(メタ)アクリル酸を用い、その他のモノマーとしてスチレンとアクリル酸n−ブチルとの組み合わせで用いるのがよい。
更に、重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂として架橋樹脂を用いることも好ましい。その場合、上述の重合性モノマーと共用される架橋剤としてラジカル重合性を有する多官能性モノマーが用いられる。多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。また、架橋剤として反応性基をペンダントグループに有する重合性モノマー、例えばグリシジルメタクリレート、メチロールアクリルアミド、アクロレイン等を用いることも可能である。中でもラジカル重合性の2官能性モノマーが好ましく、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレートが特に好ましい。
これら多官能性モノマー等の架橋剤は、単独で用いても複数を混合して用いてもよい。重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂として架橋樹脂を用いる場合は、樹脂を構成する全重合性モノマー中に占める多官能性モノマー等の架橋剤の配合率は、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であることが望ましい。
乳化重合に用いる乳化剤としては公知のものが使用できるが、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤を併用して用いることができる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム等の脂肪酸石けん、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
乳化剤の使用量は、通常、重合性単量体100重量部に対して1〜10重量部とされ、また、これらの乳化剤に、例えば、部分又は完全ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体類等の1種又は2種以上を保護コロイドとして併用することができる。
重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸カリウム等の過硫酸塩類;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等の有機過酸化物類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物類;レドックス系開始剤等が用いられる。それらは1種又は2種以上が、通常、重合性単量体100重量部に対して0.1〜3重量部程度の量で用いられる。中でも、開始剤としては少なくとも一部又は全部が過酸化水素又は有機過酸化物類であるのが好ましい。
前記重合開始剤は、何れも重合性モノマー添加前、添加と同時、添加後の何れの時期に重合系に添加してもよく、必要に応じてこれらの添加方法を組み合わせてもよい。
乳化重合に際しては、必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用することもできるが、その様な連鎖移動剤の具体的な例としては、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン等が挙げられる。連鎖移動剤は単独又は2種類以上の併用でもよく、全重合性モノマーに対して通常5質量%以下の範囲で用いられる。また、反応系には、更に、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤等を適宜配合することができる。
乳化重合は、上記の重合性モノマーを重合開始剤の存在下で重合するが、重合温度は、通常50〜120℃、好ましくは60〜100℃、更に好ましくは70〜90℃である。
乳化重合により得られた重合体一次粒子の体積平均径(Mv)は、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.1μm以上であり、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下であることが望ましい。粒径が前記範囲未満では、凝集速度の制御が困難となる場合があり、前記範囲超過では、凝集して得られるトナーの粒径が大きくなりやすく、目的とする粒径のトナーを得ることが困難となる場合がある。
本発明における重合体一次粒子としてのバインダー樹脂のDSC法によるTgは、好ましくは40〜80℃であり、より好ましくは55〜65℃である。この範囲内であれば、保存性がよく、加えて凝集性も損なわれない。Tgが高すぎる場合は、凝集性が悪く、凝集剤を過度に添加したり、凝集温度を過度に高くしたりしなくてはならず、その結果微粉が発生しやすくなる場合がある。ここで、バインダー樹脂のTgが他の成分に基づく熱量変化、例えばポリラクトンやワックスの融解ピークと重なるために明確に判断できない場合には、このような他の成分を除いた状態でトナーを作成した際のTgを意味するものとする。
本発明において、重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂の酸価は、JISK−0070の方法によって測定した値として、好ましくは3〜50mgKOH/g、より好ましくは5〜30mgKOH/gであるのがよい。
本発明において使用する「重合体一次粒子の分散液」中の重合体一次粒子の固形分濃度は、その下限値は14質量%以上であることが好ましく、21質量%以上であることが更に好ましく、一方、その上限値は30質量%以下が好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。上記範囲内であるとき、凝集工程において経験則的に重合体一次粒子の凝集速度を調整しやすく、結果として芯粒子の粒子径、粒子形状、粒径分布を任意の範囲に調整することが容易となる。
本発明においては、乳化重合により得た重合体一次粒子を含む分散液に、着色剤、帯電制御剤、ワックス等の分散液を混合し、この分散液中の一次粒子を凝集させて芯粒子とし、樹脂微粒子等を固着又は付着させた後に融着させて得られた粒子を洗浄、乾燥することによりトナー母粒子が得ることが好ましい。
樹脂微粒子は、上記重合体一次粒子と同様の方法で製造してもよく、その構成は特に限定されないが、樹脂微粒子としてのバインダー樹脂を構成する全重合性モノマー100質量%中に占める極性モノマーの合計量の割合は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上である。上限は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下であることが望ましい。上記範囲である場合、得られる樹脂微粒子の分散安定性が向上し、凝集工程において粒子形状や粒子径の調整を行いやすくなる。
また、樹脂微粒子としてのバインダー樹脂を構成する全重合性モノマー100質量%中に占める極性モノマーの合計量の割合が、重合体一次粒子としてのバインダー樹脂を構成する全重合性モノマー100質量%中に占める極性モノマーの合計量の割合よりも小さい方が、凝集工程において粒子形状や粒子径の調整を行いやすくなり、微粉の発生が抑制でき、帯電特性に優れたものとなる点で好ましい。
また、樹脂微粒子としてのバインダー樹脂のTgが、重合体一次粒子としてのバインダー樹脂のTgよりも高い方が、保存安定性等の点から好ましい。
着色剤としては、通常用いられる着色剤であればよく、特に限定はされない。例えば、前述した顔料、ファーネスブラックやランプブラック等のカーボンブラック、磁性着色剤等が挙げられる。前記着色剤の含有割合は、得られるトナーが現像により可視像を形成するのに十分な量であればよく、例えば、トナー中に1〜25重量部の範囲が好ましく、更に好ましくは1〜15重量部、特に好ましくは3〜12重量部である。
前記着色剤は磁性を有していてもよく、磁性着色剤としては、プリンター、複写機等の使用環境温度である0〜60℃付近においてフェリ磁性又はフェロ磁性を示す強磁性物質、具体的には、例えば、マグネタイト(Fe3O4)、マグヘマタイト(γ−Fe2O3)、マグネタイトとマグヘマタイトの中間物や混合物、MxFe3−xO4、式中、Mは、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd等のスピネルフェライト、BaO・6Fe2O3、SrO・6Fe2O3等の6方晶フェライト、Y3Fe5O12、Sm3Fe5O12等のガーネット型酸化物、CrO2等のルチル型酸化物、及び、Cr、Mn、Fe、Co、Ni等の金属又はそれらの強磁性合金等のうち0〜60℃付近において磁性を示すものが挙げられ、中でも、マグネタイト、マグヘマタイト、又はマグネタイトとマグヘマタイトの中間体が好ましい。
非磁性トナーとしての特性を持たせつつ、飛散防止や帯電制御等の観点で含有する場合は、トナー中の前記磁性粉の含有量は、0.2〜10質量%、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜5質量%である。また、磁性トナーとして使用する場合は、トナー中の前記磁性粉の含有量は、通常15質量%以上、好ましくは20質量%以上であり、通常70質量%以下、好ましくは60質量%以下であることが望ましい。磁性粉の含有量が前記範囲未満であると、磁性トナーとして必要な磁力が得られない場合があり、前記範囲超過では、定着性不良の原因となる場合がある。
乳化重合凝集法における着色剤の配合方法としては、通常、重合体一次粒子分散液と着色剤分散液とを混合して混合分散液とした後、これを凝集させて粒子凝集体とする。着色剤は、乳化剤の存在下で水中にサンドミル、ビーズミル等の機械的手段により乳化させた状態で用いるのが好ましい。この際、着色剤分散液は、水100重量部に対して、着色剤を10〜30重量部、乳化剤を1〜15重量部加えるのがよい。なお、分散液中の着色剤の粒径を分散途中でモニターしながら行い、最終的にその体積平均径(Mv)を0.01〜3μmとするのがよく、より好適には0.05〜0.5μmの範囲に制御するのがよい。乳化凝集時における着色剤分散液の配合は、凝集後のでき上がりのトナー母粒子中に2〜10質量%となるように計算して用いられる。
本発明の画像形成装置に用いられるトナーには、離型性付与のためワックスを配合することが好ましい。ワックスは重合体一次粒子に含有させても、樹脂微粒子に含有させてもよい。ワックスとしては、離型性を有するものであればいかなるものも使用可能であり、特に限定はされない。具体的には、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン;アルキル基を有するシリコーン;ステアリン酸等の高級脂肪酸;エイコサノール等の長鎖脂肪族アルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと長鎖脂肪酸により得られる多価アルコールのカルボン酸エステル、又は部分エステル;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;低分子量ポリエステル等が例示される。
これらのワックスの中で定着性を改善するためには、ワックスの融点は30℃以上が好ましく、40℃以上が更に好ましく、50℃以上が特に好ましい。また、100℃以下が好ましく、90℃以下が更に好ましく、80℃以下が特に好ましい。融点が低すぎると定着後にワックスが表面に露出しべたつきを生じやすく、融点が高すぎると低温での定着性が劣る。また更に、ワックスの化合物種としては、脂肪族カルボン酸と一価若しくは多価アルコールとから得られるエステル系ワックスが好ましく、エステル系ワックスの中でも炭素数が20〜100のものが好ましい。
上記ワックスは単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。また、トナーを定着する定着温度により、ワックス化合物の融点を適宜選択することができる。ワックスの使用量はトナー100重量部に対して、好ましくは4〜20重量部、特に好ましくは6〜18重量部、更に好ましくは8〜15重量部である。通常、ワックスの使用量の増加に伴い凝集制御が悪化して粒子径分布がブロードになる傾向にある。また、トナーの体積中位径(Dv50)が7μm以下の場合、即ち、トナーが小粒径である場合には、ワックスの使用量の増加に伴いワックスのトナー表面への露出が極端に激しくなりトナーの保存安定性が悪くなる。本発明の画像形成装置に用いられるトナーは、上記範囲のようにワックスの使用量が多い場合であっても、従来のトナーと比較して上記トナー特性の悪化を招くことがない粒度分布がシャープな小粒径のトナーである。
乳化重合凝集法におけるワックスの配合方法としては、予め水中に体積平均径(Mv)0.01〜2.0μm、より好ましくは0.01〜0.5μmに乳化分散したワックス分散液を乳化重合時に添加するか、又は凝集工程で添加することが好ましい。トナー中に好適な分散粒径でワックスを分散させるためには、乳化重合時にワックスをシードとして添加することが好ましい。シードとして添加することにより、ワックスが内包された重合体一次粒子が得られるので、ワックスがトナー表面に多量に存在することがなく、トナーの帯電性や耐熱性の悪化を抑制することができる。重合体一次粒子に占めるワックス含有量は、好ましくは4〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%、特に好ましくは7〜15質量%となるよう計算して用いられる。
また、樹脂微粒子中にワックスを含有させてもよく、その場合も重合体一次粒子を得る場合と同様に、乳化重合時にワックスをシードとして添加することが好ましい。樹脂微粒子全体中に占めるワックスの含有割合は、重合体一次粒子全体中に占めるワックスの含有量割合よりも小さい方が好ましい。一般に、樹脂微粒子中にワックスを含有せしめる場合は、定着性は向上するが、その反面微粉の発生量が多くなる傾向にある。その理由は、定着性については、熱を受けた際にワックスのトナー表面への移動速度が速くなるため向上するが、ワックスを樹脂微粒子中に含有させることにより樹脂微粒子の粒度分布が広くなるため凝集制御が難しくなり、その結果、微粉の増加を招くためと考えられる。
本発明に用いられるトナーには、帯電量、帯電安定性付与のため、帯電制御剤を配合してもよい。帯電制御剤としては、従来公知の化合物が使用される。例えば、ヒドロキシカルボン酸の金属錯体、アゾ化合物の金属錯体、ナフトール系化合物、ナフトール系化合物の金属化合物、ニグロシン系染料、第4級アンモニウム塩及びこれらの混合物が挙げられる。帯電制御剤の配合量は樹脂100重量部に対し、0.1〜5重量部の範囲が好ましい。
乳化重合凝集法においてトナー中に帯電制御剤を含有させる場合は、乳化重合時に重合性モノマー等とともに帯電制御剤を配合するか、重合体一次粒子及び着色剤等とともに凝集工程で配合するか、重合体一次粒子及び着色剤等を凝集させてほぼトナーとして適当な粒径となった後に配合する等の方法によって配合することができる。これらのうち、帯電制御剤を、乳化剤を用いて水中で乳化分散させ、体積平均径(Mv)0.01μm〜3μmの乳化分散液として使用することが好ましい。乳化凝集時における帯電制御剤分散液の配合は、凝集後のでき上がりのトナー母粒子中に0.1〜5質量%となるように計算して用いられる。
上記の分散液中の、重合体一次粒子、樹脂微粒子、着色剤粒子、ワックス粒子、帯電制御剤粒子等の体積平均径(Mv)は、実施例に記載の方法でナノトラックを用いて測定し、その測定値として定義される。
乳化重合凝集法における凝集工程においては、上述の、重合体一次粒子、樹脂微粒子、着色剤粒子、必要に応じて帯電制御剤、ワックス等の配合成分は、同時に又は逐次に混合するが、予めそれぞれの成分の分散液、即ち、重合体一次粒子分散液、樹脂微粒子分散液、着色剤粒子分散液、帯電制御剤分散液、ワックス微粒子分散液を作製しておくことが組成の均一性及び粒径の均一性の観点で好ましい。
また、これら異なる種類の分散液を混合する際、各分散液中に含まれる成分の凝集速度が異なるため、凝集を均一に行うために、連続的又は断続的に、ある程度時間をかけて添加して混合することが好ましい。添加に要する好適な時間は、混合する分散液の量や固形濃度等に応じて変化するため、適宜調整して行うことが好ましい。例えば、重合体一次粒子分散液に着色剤粒子分散液を混合する場合には、3分間以上かけて添加するのが好ましい。また、芯粒子に対して樹脂微粒子分散液を混合する際も、3分間以上かけて添加することが好ましい。
前記の凝集処理は通常攪拌槽内で、加熱する方法、電解質を加える方法、系内の乳化剤の濃度を低減する方法、これらを組み合わせる方法等がある。一次粒子を攪拌下に凝集してほぼトナーの大きさに近い粒子凝集体を得ようとする場合、粒子同士の凝集力と攪拌による剪断力とのバランスから粒子凝集体の粒径が制御されるが、上記方法によって凝集力を大きくすることができる。
電解質を添加して凝集を行う場合の電解質としては、有機塩、無機塩の何れでもよいが、具体的には、NaCl、KCl、LiCl、Na2SO4、K2SO4、Li2SO4、CH3COONa、C6H5SO3Na等の1価の金属カチオンを有する無機塩;MgCl2、CaCl2、MgSO4、CaSO4、ZnSO4等の2価の金属カチオンを有する無機塩;Al2(SO4)3、Fe2(SO4)3等の3価の金属カチオンを有する無機塩等が挙げられる。これらのうち、2価以上の多価の金属カチオンを有する無機塩を用いる場合、凝集速度が速くなり生産性の点で好ましいが、一方で芯粒子に取り込まれない重合体一次粒子等の量が増加するため、結果として所望のトナー粒径に至らない微粉が発生しやすくなる。従って、凝集作用のそれほど強くない1価の金属カチオンを有する無機塩を用いることが、上記微粉の発生量を抑えられる点で好ましい。
前記電解質の使用量は、電解質の種類、目的とする粒径等によって異なるが、混合分散液の固形成分100重量部に対して、通常0.05〜25重量部、好ましくは0.1〜15重量部、更に好ましくは0.1〜10重量部である。使用量が前記範囲未満の場合は、凝集反応の進行が遅くなり凝集反応後も1μm以下の微粉が残ったり、得られた粒子凝集体の平均粒径が目的の粒径に達しない等の問題を生じる場合があり、前記範囲超過の場合は、急速な凝集となりやすく粒径の制御が困難となり、得られた芯粒子中に粗粉や不定形のものが含まれる等の問題を生じる場合がある。
また、電解質の添加方法は、一度に加えずに、断続的又は連続的にある程度の時間をかけて添加することが好ましい。この添加時間は使用量等に応じて変化するが、0.5分間以上かけて添加することがより好ましい。通常、電解質を加えると、その途端に急な凝集が始まるため、凝集に取り残される重合体一次粒子、着色剤粒子、又はその凝集物等が多く残存する傾向にある。そしてこれらが微粉の発生元の一つと考えられる。上記操作によれば、急な凝集をせずに均一な凝集を行うことができるため、微粉の発生を防ぐことができる。
また、電解質を加えて凝集を行う場合の凝集工程の最終温度は、20〜70℃が好ましく、30〜60℃が更に好ましい。ここで、凝集工程前の温度を制御することも本発明の特定範囲の粒径に制御する方法の一つである。凝集工程に加える着色剤の中には、上記電解質のように凝集を誘発させるものがあり、電解質を加えずとも凝集することがある。そこで、着色剤分散液の混合時に予め、重合体1次粒子分散液の温度を冷やしておくことで、上記凝集を防ぐことができる。この凝集が微粉を発生させる原因となる。本発明では、重合体1次粒子を予め、好ましくは0〜15℃、より好ましくは0〜12℃、より更に好ましくは2〜10℃の範囲に冷やしておくのがよい。尚、この方法は電解質を加えて凝集を行う場合にのみに効果があるものではなく、pHの制御やアルコール等の極性有機溶媒を加えて凝集法行う方法等の電解質を加えずに凝集を行う方法にも用いられ、特に凝集方法に限定されるものではない。
加熱によって凝集を行う場合の凝集工程の最終温度は、通常、重合体一次粒子の(Tg−20℃)〜Tgの温度範囲であり、(Tg−10℃)〜(Tg−5℃)の範囲であることが好ましい。
また、微粉の発生を防ぐために急な凝集を防ぐ方法とてしては、脱塩水等を加える方法がある。脱塩水等を添加する方法は、電解質を添加する方法に比べて凝集作用がそれほど強くないため、生産効率上積極的に採用される方法ではなく、寧ろ、その後の濾過工程等で多量の濾液が得られてしまうため好ましくない場合がある。ところが、本発明のように微妙な凝集制御が求められる場合には、非常に効果的である。また、本発明においては、上記加熱する方法や電解質を加える方法等と組み合わせて採用することが好ましい。このとき、電解質を加えた後に脱塩水を添加する方法が凝集を制御しやすいという点で特に好ましい。
凝集に要する時間は装置形状や処理スケールにより最適化されるが、トナー母粒子の粒径を目的とする粒径に到達するためには、凝集工程を終了させる操作時の温度、例えば、乳化剤の添加、pH制御等により芯粒子の成長を止める操作時の温度(以下、凝集最終温度と称す。)より8℃低い温度から凝集最終温度までの時間を30分以上とすることが好ましく、1時間以上とすることが更に好ましい。上記時間を長くすることで残存する重合体一次粒子、着色剤粒子、又はその凝集物等が取り残されることなく、目的とする芯粒子に取り込まれたり、それら同士が凝集したりして目的の芯粒子になる。
本発明においては、芯粒子の表面に、必要に応じて樹脂微粒子を被覆(付着又は固着)してトナー母粒子を形成することができる。樹脂微粒子の体積平均径(Mv)は、好ましくは0.02μm〜3μm、より好ましくは0.05μm〜1.5μmである。一般に上記樹脂微粒子の使用は所定のトナー粒径に至らない微粉の発生を助長させる。従って、従来の樹脂微粒子で被覆したトナーは所定のトナー粒径に満たない微粉量が多くなる。
本発明において、ワックスの配合量を多くした場合、高温定着性は向上するもののワックスがトナー表面に露出しやすくなるため帯電性や耐熱性が悪化する場合があるが、芯粒子の表面を、ワックスを含有しない樹脂微粒子で被覆することにより性能の悪化を防止できる。
しかしながら、高温定着性を向上させる目的で樹脂微粒子にもワックスを含有させる場合は、一旦芯粒子の表面に付着した樹脂微粒子が剥がれ落ちやすい。この理由は、上述した前記樹脂微粒子の粒径分布が広くなるため、付着力の弱い大粒径の樹脂微粒子が存在するためである。そこで、その剥がれ落ちを少なくするために、樹脂微粒子が表面に付着した粒子が分散している液中に、分散安定剤と水を予め混ぜておいた水溶液を添加しながら昇温することが好ましい。
従来の方法である「乳化剤の添加後に昇温を開始する工程」を採用した場合、すなわち、凝集力を急激に下げた後に熟成工程を行った場合は、その凝集力の急激な低下のため一度付着した樹脂微粒子が離脱しやすくなる場合がある。従って、凝集力をそれほど落とすことなく、かつ、粒子の径成長を抑えつつ、樹脂微粒子を付着後、融着することが好ましい。
乳化重合凝集法においては、凝集で得られた粒子凝集体の安定性を増すために、分散安定剤として、乳化剤やpH調整剤を添加して粒子同士の凝集力を低下させトナー母粒子の成長を止めた後に、凝集した粒子間の融着を起こす熟成工程を加えることが好ましい。
乳化剤を配合する場合の配合量は限定されないが、混合分散液の固形成分100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、更に好ましくは3重量部以上であり、また、好ましくは20重量部以下、より好ましくは15重量部以下、更に好ましくは10重量部以下である。凝集工程以降、熟成工程の完了前の間に乳化剤を添加するか、凝集液のpH値を上げることにより、凝集工程で凝集した粒子凝集体同士の凝集等を抑制することができ、熟成工程後のトナー中に粗大粒子が生じることを抑制できる。
ここで、本発明の画像形成装置に用いられる小粒径トナーにおいて粒度分布がシャープであることを意味する特定範囲の粒径に制御する方法として、乳化剤やpH調整剤を添加する工程の前に攪拌回転数を低下させる、即ち、攪拌による剪断力を下げる方法が挙げられる。この方法は凝集作用が弱い系、例えば乳化剤やpH調整剤を一度に添加して急激に安定(分散)な系へ移行させた場合に採用することが好ましい。上述したように、仮に分散安定剤と水を予め混ぜておいた水溶液を添加しながら昇温する方法を採用した場合に、攪拌回転数を低下させると系が凝集へ傾き過ぎるため、粒子径の肥大を招く場合がある。
一例として上記の方法により本発明の画像形成装置に用いられる特定の粒径分布のトナーを得ることができるが、更に述べると、この回転数を落とす程度によって、微粉粒子の含有量を調節することができる。例えば、攪拌回転数を250rpmから150rpmに低下させると、公知のトナーより粒度分布がシャープな小粒径のトナーを与えることができ、本発明の画像形成装置に用いられる特定の粒径分布のトナーを得ることができる。ただし、この値は当然、
(イ)攪拌容器の直径(所謂一般的な円筒形として)と攪拌羽根の最大径(及びその相対的な比)
(ロ)攪拌容器の高さ
(ハ)攪拌羽根先端の周速
(ニ)攪拌羽根の形状
(ホ)攪拌容器内の羽根の位置
等の条件によって異なってくる。特段(ハ)については、1.0〜2.5m/秒が好ましく、1.2〜2.3m/秒がより好ましく、1.5〜2.2m/秒が特に好ましい。上記の範囲内であれば、剥がれ落ちもせず、肥大もしない好適な剪断速度を粒子に対して与えるからである。
熟成工程の温度は、好ましくは重合体一次粒子としてのバインダー樹脂のTg以上、より好ましくは前記Tgより5℃高い温度以上であり、また、好ましくは前記Tgより80℃高い温度以下、より好ましくは前記Tgより50℃高い温度以下である。また、熟成工程に要する時間は、目的とするトナーの形状により異なるが、重合体一次粒子を構成する重合体のガラス転移温度以上に到達した後、通常0.1〜5時間、好ましくは1〜3時間保持することが望ましい。
このような加熱処理により、凝集体における重合体一次粒子同士の融着一体化がなされ、凝集体としてのトナー母粒子形状も球形に近いものとなる。熟成工程前の粒子凝集体は、重合体一次粒子の静電的又は物理的凝集による集合体であると考えられるが、熟成工程後は、粒子凝集体を構成する重合体一次粒子は互いに融着しており、トナー母粒子の形状も球状に近いものとすることが可能となる。この様な熟成工程によれば、熟成工程の温度及び時間等を制御することにより、重合体一次粒子が凝集した形状である葡萄型、融着が進んだジャガイモ型、更に融着が進んだ球状等、目的に応じて様々な形状のトナーを製造することができる。
上記の各工程を経ることにより得た粒子凝集体は、公知の方法に従って固/液分離し、粒子凝集体を回収し、次いで、これを必要に応じて洗浄した後、乾燥することにより目的とするトナー母粒子を得ることができる。
また、前記の乳化重合凝集法により得られた粒子の表面に、例えば、スプレードライ法、in−situ法、又は液中粒子被覆法等の方法によって、更に、重合体を主成分とする外層を、好ましくは0.01〜0.5μmの厚みで形成させることによって、カプセル化されたトナー母粒子とすることもできる。
る。
また、乳化重合凝集法トナーにおいては、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100を用いて測定した平均円形度が好ましくは0.90以上、より好ましくは0.92以上、更に好ましくは0.94以上である。球形に近いほど粒子内での帯電量の局在化が起こりにくく、現像性が均一になる傾向にあると考えられるが、完全な球状トナーを作ることはクリーニング性を悪化させるため前記平均円形度は好ましくは0.98以下、より好ましくは0.97以下である。
また、トナーのテトラヒドロフラン(以下適宜、「THF」と略す場合がある)に対する可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す場合がある)におけるピーク分子量のうち少なくとも1つが、好ましくは3万以上、より好ましくは4万以上、更に好ましくは5万以上であり、好ましくは20万以下、より好ましくは15万以下、更に好ましくは10万以下であることが望ましい。ピーク分子量が何れも前記範囲より低い場合は、非磁性一成分現像方式における機械的耐久性が悪化する場合があり、ピーク分子量が何れも前記範囲より高い場合は、低温定着性や定着強度が悪化する場合がある。
乳化重合凝集法トナーの帯電性は、正帯電であっても負帯電であってもよいが、負帯電性トナーとして用いることが好ましい。トナーの帯電性の制御は、帯電制御剤の選択及び含有量、外添剤の選択及び配合量等によって調整することができる。
本発明の画像形成装置に用いられるトナーは、水系媒体中で形成したトナー母粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、トナーの体積中位径(Dv50)が4.0μm以上7.0μm以下であり、かつ、体積中位径(Dv50)と粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)の関係が下記式(1)を満たすことが必須である。
Dns≦0.233EXP(17.3/Dv50) (1)
[式中、Dv50はトナーの体積中位径(μm)を示し、Dnsは粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%を示す。]
トナーの体積中位径(Dv50)及びDnsは、実施例に記載の方法で測定され、そのように測定されたものとして定義される。本発明においては、「トナー」は、「トナー母粒子」に、要すれば後述する外添剤等を配合させて得られるものである。上記のDv50等は「トナー」のDv50等であるから、当然「トナー」を測定試料として測定する。
また、Dv50とDnsの関係が下記式(1’)を満たすトナーが好ましい。
Dns≦0.110EXP(19.9/Dv50) (1’)
式(1)において、左辺の「Dns」が、右辺より大きいと、すなわち、特定領域の粗粉の量が多いことを意味し、画像汚染等が発生する場合がある。
更に、Dv50とDnsの関係が下記式(2)を満たすトナーが好ましい。
0.0517EXP(22.4/Dv50)≦Dns (2)
Dnsが上記式(1)を満たすときに、前述した本発明の効果を奏し、(1’)及び/又は(2)を満たすときに、より顕著な効果を奏して、本発明の課題を解決することができる。なお、式(1)、式(1’)及び式(2)中、「EXP」は「Exponential」を示す。すなわち自然対数の底であり、その右側は指数である。
本発明におけるトナーのDv50は4.0μm以上7.0μm以下である。この範囲であれば、高画質の画像を十分に提供することができる。6.8μm以下であると、より上記効果を奏する。また、微粉の発生量を低減させる点で5.0μm以上であることが好ましく、5.4μm以上であることがより好ましい。また、Dnsが6個数%以下であるトナーが、より高画質の画像を提供したり、画像形成装置を汚染し難いという点で好ましい。また、上記、「式(1)、式(1’)、式(2)」、かつ「Dv50が5.0μm以上」及び/又は「Dnsが6個数%以下」なる条件は、組み合わされて満たされていることが更に好ましい。
上記粒径分布の条件を満たした本発明の画像形成装置に用いられるトナーは、高画質が得られる上、高速印刷機を使用した場合においても、汚れが少なく、残像(ゴースト)及びカスレ(ベタ追従性)を抑制し、クリーニング性に優れている。また、粒径分布がシャープであることにより帯電量分布が非常にシャープであるので、帯電量の小さい粒子が画像白地部の汚れを引き起こしたり、飛散して装置内を汚したりせず、また、帯電量の大きい粒子が現像されないまま層規制ブレードやローラー等の部材に付着してスジやかすれ等の画像欠陥を引き起こすことがない。
また、トナーの個数%(Dns)として、粒径2.00μm以上3.56μm以下を規定した理由について、下限値については本発明のトナー粒径を測定するのに用いた装置の測定限界であり、上限値は実施例に記載の結果より得られた効果の臨界値である。すなわち、粒径が3.56μmより大きいところまでのトナーの個数%を採用すると、本発明の効果を奏するトナーと奏さないトナーを式によって明確に分けることができない。
上記式(1)を満たすトナーを得るには、凝集工程において通常行う操作と比較して凝集の速度が高くない操作を採用するのがよい。前記凝集の速度が高くない操作としては、例えば、使用する分散液を予め冷やしておく、時間をかけて分散液等を添加する、凝集作用の大きくない電解質等を採用する、電解質を連続的或いは断続的に加える、昇温する速度を遅くする、凝集する時間を長くする、方法等がある。また、熟成工程においては凝集した粒子が再分散し難い操作を採用するのがよい。前記凝集した粒子が細分散し難い操作としては、例えば、攪拌する回転数を下げる、分散安定剤を連続的或いは断続的に加える、分散安定剤と水を予め混ぜておく、方法等がある。また、上記式(1)を満たすトナーは、最終的に得られたトナー或いはトナー母粒子を、分級等の操作によって、それらの体積中位径(Dv50)以下の粒子を除去する工程を経ずに得られることが好ましい。
トナー母粒子には、流動性や現像性を制御する為に、トナー母粒子表面に公知の外添剤が配合されてトナーとなっていてもよい。外添剤としては、アルミナ、シリカ、チタニア、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、タルク、ハイドロタルサイト等の金属酸化物や水酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸金属塩、窒化チタン、窒化珪素等の窒化物、炭化チタン、炭化珪素等の炭化物、アクリル系樹脂やメラミン樹脂等の有機粒子等が挙げられ、複数組み合わせることが可能である。中でも、シリカ、チタニア、アルミナが好ましく、また、例えばシランカップリング剤やシリコーンオイル等で表面処理されたものがより好ましい。その平均一次粒子径は1〜500nmの範囲が好ましく、より好ましくは5〜100nmの範囲がよい。また、前記粒径範囲において小粒径のものと大粒径のものとを併用することも好ましい。外添剤の配合量の総量は、トナー母粒子100重量部に対して0.05〜10重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。
上記方法で得られた上記粒径分布を有する本発明におけるトナーは、従来のトナーと比較して帯電量分布が非常にシャープである。帯電量分布はトナーの粒度分布と相関があり、従来のトナーのようなブロードの粒度分布を有する場合、その帯電量分布もブロードになる。帯電量分布がブロードになると、そのトナー用装置の有する現像条件で制御できなくなる程の、帯電の低い粒子や帯電の高い粒子の割合が増加して、種々の画像欠陥の原因となる。例えば、帯電量の小さい粒子は、画像白地部の汚れを引き起こしたり、装置内に飛散したりして汚れの原因になり、また帯電量の大きい粒子は、現像されないまま現像槽中の層規制ブレードやローラー等の部材に蓄積し、融着によるスジやかすれ等の画像欠陥を引き起こす原因となる。
これは画像形成装置における現像プロセスの設計において、トナー帯電量の平均値に適合するようにその現像プロセス条件が設定されており、かかる平均値から帯電量が大きく外れているトナーは、かかる画像形成装置では飛散やスジ・かすれ等の画像欠陥を引き起こすこととなり、装置とのマッチングがよくないということになってしまう。一方で、本発明のように帯電量分布がシャープであれば、バイアス調整等で現像性のコントロールも可能になり、画像形成装置の部材を汚染することなく、鮮明な画像を与えることができるのである。
本発明の画像形成装置に用いられるトナーの「帯電量分布」を示す数値の1つ「帯電量の標準偏差」は、1.0乃至2.0であることが好ましく、より好ましくは1.0乃至1.8であり、より更に好ましくは1.0乃至1.5である。上記上限値を超える場合は、層規制ブレードにトナーが付着して搬送され難くなり、付着したトナーが更に搬送されるトナーを塞き止めてしまい、画像形成装置内の部材を汚染してしまい好ましくない場合がある。また、上記下限値を下まわる場合は、工業上見地から好ましくない場合がある。下限値については、1.3以上であることが好ましい。
本発明の画像形成装置に用いられるトナーは、トナーを磁力により静電潜像部に搬送するためのキャリアを共存させた磁性二成分現像剤用、又は、磁性粉をトナー中に含有させた磁性一成分現像剤用、又は、現像剤に磁性粉を用いない非磁性一成分現像剤用の何れに用いてもよいが、本発明の効果を顕著に発現するためには、特に非磁性一成分現像方式用の現像剤として用いるのが好ましい。
前記磁性二成分現像剤として用いる場合には、トナーと混合して現像剤を形成するキャリアとしては、公知の鉄粉系、フェライト系、マグネタイト系キャリア等の磁性物質又は、それらの表面に樹脂コーティングを施したものや磁性樹脂キャリアを用いることができる。キャリアの被覆樹脂としては、一般的に知られているスチレン系樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が利用できるが、これらに限定されるものではない。キャリアの平均粒径は、特に制限はないが10〜200μmの平均粒径を有するものが好ましい。これらのキャリアは、トナー1重量部に対して5〜100重量部使用する事が好ましい。
<電子写真感光体の構成>
本発明の画像形成装置は、導電性支持体上に特定の感光層をもつ電子写真感光体を有する。
<導電性支持体>
感光体に用いる導電性支持体としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。金属材料の導電性支持体に、導電性・表面性等の制御のためや欠陥被覆のために、適当な抵抗値をもつ導電性材料を塗布したものでもよい。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いることが好ましい。陽極酸化被膜を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが好ましい。
例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより陽極酸化被膜が形成されるが、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は100〜300g/L、溶存アルミニウム濃度は2〜15g/L、液温は15〜30℃、電解電圧は10〜20V、電流密度は0.5〜2A/dm2の範囲内に設定されるのが好ましいが、前記条件に限定されるものではない。
このようにして形成された陽極酸化被膜に対して、封孔処理を行なうことが好ましい。封孔処理は、公知の方法で行われればよいが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、あるいは主成分として酢酸ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理が施されるのが好ましい。
上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は、適宜選べるが、3〜6g/Lの範囲で使用された場合、より好ましい結果が得られる。また、封孔処理をスムーズに進めるために、処理温度としては、25〜40℃、好ましくは30〜35℃で、また、フッ化ニッケル水溶液pHは4.5〜6.5、好ましくは5.5〜6.0の範囲で処理するのがよい。pH調節剤としてはシュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることができる。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1〜3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するためにフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に添加しておいてもよい。次いで水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。
前記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることができるが、特に酢酸ニッケルを用いるのが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は5〜20g/Lの範囲内で使用するのが好ましい。処理温度は80〜100℃、好ましくは90〜98℃で、また、酢酸ニッケル水溶液のpHは5.0〜6.0の範囲で処理するのが好ましい。ここでpH調節剤としてはアンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることができる。処理時間は10分以上、好ましくは20分以上処理するのが好ましい。なお、この場合も被膜物性を改良するために酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に添加してもよい。次いで水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。
平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件を必要とする。従って生産性が悪くなると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じやすくなる。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は通常20μm以下、特に7μm以下で形成されることが好ましい。
支持体表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであってもよい。また、安価化のためには切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。特に引き抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム支持体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等が無くなり、均一で清浄な支持体が得られるので好ましい。具体的には、導電性支持体はその表面粗さRaが0.01以上、0.3μm以下であることが好ましい。Raが0.01μm未満では接着性が悪くなる場合があり、0.3μmを超えると黒ポチ等の画像欠陥が発生する場合がある。Raの最も好ましい範囲は0.01から0.20μmの範囲である。
[表面粗さRaの測定法と定義]
表面粗さRaは、算術平均粗さを意味し、平均線から絶対値偏差の平均値を表している。具体的には、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から、測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値である。上記Raは表面粗さ計(東京精密 サーフコム 570A)で測定した値が用いられる。但し、誤差範囲内で同一の結果を生じる測定器であれば、他の測定器を用いてもよい。
導電性支持体の表面粗さを上記範囲に加工するには、切削工具等で支持体表面を削り粗面化する方法や、微細な粒子を支持体表面に衝突させることによる、サンドブラスト加工の方法、特開平4−204538号に記載の氷粒子洗浄装置による加工の方法、特開平9−236937号に記載のホーニング加工の方法がある。また、陽極酸化法やアルマイト処理法、バフ加工法、あるいは、特開平4−233546号に記載のレーザー溶発法による方法、特開平8−1502号に記載の研磨テープによる方法や、特開平8−1510号に記載のローラバニシング加工の方法等が挙げられる。しかし、支持体の表面を荒らす方法としてはこれらに限定されるものではない。
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケル等の金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウム等を蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体の原料としては常温で比抵抗103Ωcm以下のものが好ましい。
<下引き層>
本発明の画像形成装置に用いられる感光体は、下引き層を含有することが好ましい。この下引き層は、バインダー樹脂と屈折率2.0以下の金属酸化物粒子を含有することが好ましい。また、該下引き層をメタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に分散した液中の金属酸化物凝集体二次粒子の体積平均粒子径が0.1μm以下であって、かつ、累積90%粒子径が0.3μm以下であることは好ましい。更に好ましくは、体積平均粒子径が0.09μm以下であって、かつ、累積90%粒子径が0.2μm以下であることは好ましい。また、体積平均径が小さすぎると、クリーニング不良、装置汚染を引き起こす場合があり、体積平均粒子径は0.01μm以上が好ましく、累積90%粒子径も0.05μm以上であることは好ましい。
<金属酸化物>
本発明においては、下引き層に、金属酸化物粒子を使用することが好ましい。金属酸化物粒子としては、通常電子写真感光体に使用可能な如何なる金属酸化物粒子も使用することができる。金属酸化物粒子として、より具体的には、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。これらの中でもバンドギャップが2〜4eVの金属酸化物粒子が好ましい。金属酸化物粒子は、一種類の粒子のみを用いてもよいし、複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。これらの金属酸化物粒子の中でも、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、及び酸化亜鉛が好ましく、より好ましくは酸化チタン及び酸化アルミニウムである、特には酸化チタンが好ましい。
酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスの何れも用いることができる。また、これらの結晶状態の異なるものから、複数の結晶状態のものが含まれていてもよい。
金属酸化物粒子は、その表面に種々の表面処理を行ってもよい。例えば、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、有機珪素化合物等の有機物による処理を施していてもよい。特に、酸化チタン粒子を用いる場合には、有機珪素化合物により表面処理されていることが好ましい。有機珪素化合物としては、ジメチルポリシロキサン又は、メチル水素ポリシロキサン等のシリコーンオイル及びメチルジメトキシシラン、ジフェニルジジメトキシシラン等オルガノシラン、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等が一般的であるが下記一般式(C)の構造で表されるシラン処理剤が金属酸化物粒子との反応性も良く最も良好な処理剤である。
式(C)中、R1u及びR2uは、それぞれ独立してアルキル基を示し、より具体的にはメチル基又はエチル基を示す。R3uは、アルキル基又はアルコキシ基であって、より具体的には、メチル基、エチル基、メトキシ基及びエトキシ基よりなる群より選ばれた基を示す。なお、これらの表面処理された粒子の最表面はこのような処理剤で処理されているが、該処理のその前に酸化アルミ、酸化珪素又は酸化ジルコニウム等の処理剤等で処理されていても構わない。酸化チタン粒子は、一種類の粒子のみを用いてもよいし、複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。
使用する金属酸化物粒子は、通常、平均一次粒子径が500nm以下のものが用いられ、好ましくは1nm〜100nmのものが用いられ、より好ましくは5〜50nmのものが用いられる。この平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(Transmission electron micloscope、以下、「TEM」と略記する)により直接観察される粒子の径の算術平均値によって求める。
また、使用する金属酸化物粒子としては種々の屈折率を有するものが利用可能であるが、通常電子写真感光体に用いることのできるものであれば、どのようなものも使用可能である。好ましくは、屈折率1.4以上であって、屈折率3.0以下のものが用いられる。金属酸化物粒子の屈折率は、各種の刊行物に記載されているが、例えばフィラー活用辞典(フィラー研究会編、大成社、1994)によれば下記表1のようになっている。
本発明に係る金属酸化物粒子のうち、酸化チタン粒子の具体的な商品名としては、表面処理を施していない超微粒子酸化チタン「TTO−55(N)」、Al2O3被覆を施した超微粒子酸化チタン「TTO−55(A)」、「TTO−55(B)」、ステアリン酸で表面処理を施した超微粒子酸化チタン「TTO−55(C)」、Al2O3とオルガノシロキサンで表面処理を施した超微粒子酸化チタン「TTO−55(S)」、高純度酸化チタン「CR−EL」、硫酸法酸化チタン「R−550」、「R−580」、「R−630」、「R−670」、「R−680」、「R−780」、「A−100」、「A−220」、「W−10」、塩素法酸化チタン「CR−50」、「CR−58」、「CR−60」、「CR−60−2」、「CR−67」、導電性酸化チタン「SN−100P」、「SN−100D」、「ET−300W」(以上、石原産業株式会社製)や、「R−60」、「A−110」、「A−150」等の酸化チタンをはじめ、Al2O3被覆を施した「SR−1」、「R−GL」、「R−5N」、「R−5N−2」、「R−52N」、「RK−1」、「A−SP」、SiO2、Al2O3被覆を施した「R−GX」、「R−7E」、ZnO、SiO2、Al2O3被覆を施した「R−650」、ZrO2、Al2O3被覆を施した「R−61N」(以上、堺化学工業株式会社製)、また、SiO2、Al2O3で表面処理された「TR−700」、ZnO、SiO2、Al2O3で表面処理された「TR−840」、「TA−500」の他、「TA−100」、「TA−200」、「TA−300」等表面未処理の酸化チタン、Al2O3で表面処理を施した「TA−400」(以上、富士チタン工業株式会社製)、表面処理を施していない「MT−150W」、「MT−500B」、SiO2、Al2O3で表面処理された「MT−100SA」、「MT−500SA」、SiO2、Al2O3とオルガノシロキサンで表面処理された「MT−100SAS」、「MT−500SAS」(テイカ株式会社製)等が挙げられる。
また、酸化アルミニウム粒子の具体的な商品名としては、「Aluminium Oxide C」(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
また、酸化珪素粒子の具体的な商品名としては、「200CF」、「R972」(日本アエロジル社製)、「KEP−30」(日本触媒株式会社製)等が挙げられる。また、酸化スズ粒子の具体的な商品名としては、「SN−100P」(石原産業株式会社製)等が挙げられる。そして、酸化亜鉛粒子の具体的な商品名としては「MZ−305S」(テイカ株式会社製)が挙げられるが、本発明において使用可能な金属酸化物粒子は、これらに限定されるものではない。
本発明における電子写真感光体の下引き層形成用塗布液において、バインダー樹脂1重量部に対して、金属酸化物粒子は、0.5重量部〜4重量部の範囲で用いることが好ましい。
<バインダー樹脂>
下引き層において使用されるバインダー樹脂としては、電子写真感光体の下引き層形成用塗布液に通常用いられる、有機溶剤に可溶であって、かつ形成後の下引き層が、感光層形成用の塗布液に用いられる有機溶剤に不溶であるか、溶解性の低く、実質上混合しないものであれば、特に限定されるものではない。
このようなバインダー樹脂としては例えば、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できるが、中でも、ポリアミド樹脂、特に、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等のポリアミド樹脂は、良好な分散性及び塗布性を示し好ましい。
ポリアミド樹脂としては例えば、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン等を共重合させた、いわゆる共重合ナイロンや、N−アルコキシメチル変性ナイロン、N−アルコキシエチル変性ナイロンのようにナイロンを化学的に変性させたタイプ等のアルコール可溶性ナイロン樹脂を挙げることができる。具体的な商品名としては、例えば「CM4000」「CM8000」(以上、東レ製)、「F−30K」「MF−30」「EF−30T」(以上、ナガセケムテック株式会社製)等が挙げられる。
これらポリアミド樹脂の中でも、下記式(D)で表されるジアミンを構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂が特に好ましく用いられる。
式(D)においてR4〜R7は、それぞれ独立に、水素原子又は有機置換基を示す。m、nはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、置換基が複数の場合それらの置換基は互いに異なっていてもよい。R4〜R7で表される有機置換基としては、炭素数20以下の、ヘテロ原子を含んでいても構わない炭化水素基が好ましく、より好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基等のアリール基が挙げられ、より好ましくはアルキル基又はアルコキシ基であり、特に好ましくは、メチル基又はエチル基である。
前記式(D)で表されるジアミンを構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂は、他に例えば、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム類;1,4−ブタンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,20−アイコサンジカルボン酸等のジカルボン酸類;1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等のジアミン類;ピペラジン等を組み合わせて、2元、3元、4元等に共重合させたものが挙げられる。この共重合比率について特に限定はないが、通常、前記一般式(D)で表されるジアミン成分が5〜40mol%であり、好ましくは5〜30mol%である。
共重合ポリアミドの数平均分子量としては、10000〜50000が好ましく、特に好適には15000〜35000である。数平均分子量が小さすぎても、大きすぎても膜の均一性を保つことが難しくなりやすい。共重合ポリアミドの製造方法には特に制限はなく、通常のポリアミドの重縮合方法が適宜適用され、溶融重合法、溶液重合法、界面重合法等が用いられる。また重合に際して、酢酸や安息香酸等の一塩基酸、あるいは、ヘキシルアミン、アニリン等の一酸塩基、分子量調節剤として加えることも何らさしつかえない。
また、亜リン酸ソーダ、次亜リン酸ソーダ、亜リン酸、次亜リン酸やヒンダードフェノールに代表される熱安定剤やその他の重合添加剤を加えることも可能である。本発明で使用されるのが好適な共重合ポリアミドの具体例を以下に示す。但し具体例中、共重合比率はモノマーの仕込み比率(モル比率)を表す。
また、本発明の画像形成装置に用いられる電子写真感光体には、一種類以上の硬化性樹脂を含有することは好ましい。特に下引き層に使用されることは好ましく、該硬化性樹脂には、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、EB硬化性樹脂等が使用されることは好ましい。何れの場合も、塗布後に、ポリマー間等での反応がおこり、架橋が起こって、ポリマーが硬化する。
ここで、硬化性樹脂の具体例について説明する。熱硬化性樹脂は、熱によって化学反応をおこして硬化するタイプの樹脂の総称である。具体的には、フェノール樹脂・尿素樹脂・メラミン樹脂、エポキシ樹脂硬化物、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等がある。また、通常の熱可塑性ポリマーに、硬化性置換基を導入して、硬化性を持たせることも可能である。一般的には、縮合系橋掛けポリマー、付加系足掛けポリマー等と呼ばれることもあり、3次元的に架橋構造を持つポリマーである。通常、製造の際には、硬化性樹脂は時間の経過とともに反応が進行し、反応率と分子量が増える。これにより、弾性率は増加し、比容積は減少し、溶媒に対する溶解度が、大きく減少する。
次に、一般的な熱硬化性樹脂について、説明する。フェノール樹脂とは、フェノール類とホルムアルデヒドから作られた合成樹脂であり、安く、きれいに形が作れるという利点を有する。一般的に、フェノール類(P)とホルムアルデヒド(F)の反応では、酸性条件では、F/Pモル比が0.6〜1程度のものが得られ、塩基触媒では、1〜3程度の樹脂が生成する。
また、尿素樹脂は、尿素とホルマリンとを反応させてできる合成樹脂であり、無色透明な固体で色を自由につけることができるという利点を有する。一般的に、尿素と、ホルムアルデヒドとの反応では、酸性条件では、メチロール基を持たないポリメチレン尿素が生成し、塩基性下では、メチロール尿素類の混合物が得られる。
また、メラミン樹脂は、メラミン誘導体とホルムアルデヒドとの反応により得られる熱硬化性樹脂であり、尿素樹脂よりも高価であるが、硬度、耐水性、耐熱性にすぐれ、しかも無色透明で着色が自由にできるという利点を有し、積層、接着用として優れる。
また、エポキシ樹脂は、高分子内に残存させたエポキシ基でグラフト重合させることで硬化させることが可能な熱硬化性樹脂の総称である。グラフト重合前のプレポリマーと硬化剤を混合して熱硬化処理を行うと製品として完成するが、プレポリマーも製品化した樹脂も両者ともエポキシ樹脂と呼ばれる。プレポリマーは、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する、主として、液状の化合物である。このポリマーと、種々の硬化剤の反応(主として重付加)により、三次元ポリマーが生成し、エポキシ樹脂硬化物となる。エポキシ樹脂硬化物は、接着性、密着性が良好で、耐熱性、耐薬品性、電気安定性に優れている。汎用のエポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリジルエーテル系のものであるが、他に、グリシジルエステル計、グリシジルアミン系の樹脂や、環状脂肪族エポキシ樹脂等がある。硬化剤としては、脂肪族、及び、芳香族ポリアミンや、酸無水物、ポリフェノールが代表的なもので、これらは、エポキシ基と、重付加により反応して、高分子化、三次元化する。他に、第3アミンや、ルイス酸等もある。
また、ウレタン樹脂とは、通常イソシアネート基とアルコール基が縮合してできるウレタン結合でモノマーを共重合させた高分子化合物である。通常、常温で液体の主剤と硬化剤に分かれており、その2液を攪拌混合することで重合させ固体とする。
また、不飽和ポリエステル樹脂は、常温で液体の樹脂と硬化剤に分かれており、その2液を攪拌混合することで重合させ固体とする。透明度が高いという特長を持つが、重合硬化時の縮みが大きく、寸法安定性等については問題がある。しばしば揮発性溶剤が混入された形で販売されているため、硬化後も溶剤の揮発に伴い、徐々に変形する。
光硬化性樹脂は、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等のオリゴマー(低重合体)、反応性希釈剤(モノマー)、及び光重合開始剤(ベンゾイン系、アセトフェノン系等)を混合したものから成る。この他にも、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の多官能モノマーを共重合するもの等を利用した、付加系足掛けポリマー等もある。また、いわゆる、硬化型樹脂以外のポリマーを併用することは好ましく、特には、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、前記変性ポリアミド等のポリアミド樹脂は、良好な分散性及び塗布性を示し好ましい。
下引き層形成用塗布液に用いる有機溶媒としては、下引き層用のバインダー樹脂を溶解することができる有機溶媒であれば、どのようなものでも使用することができる。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール又はノルマルプロピルアルコール等の炭素数5以下のアルコール類;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、トリクレン、四塩化炭素、1,2−ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド等の含窒素有機溶媒類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられるが、これらの中から任意の組み合わせ及び任意の割合の混合溶媒で用いることができる。また、単独では下引き層用のバインダー樹脂を溶解しない有機溶媒であっても、例えば上記の有機溶媒との混合溶媒とすることで該バインダー樹脂を溶解可能で有れば、使用することができる。一般に、混合溶媒を用いた方が塗布ムラを少なくすることができる。
下引き層形成用塗布液に用いる有機溶媒と、バインダー樹脂、酸化チタン粒子等の固形分の量比は、下引き層形成用塗布液の塗布方法により異なり、適用する塗布方法において均一な塗膜が形成されるように適宜変更して用いればよい。
また、層形成用塗布液は、金属酸化物粒子を含有するものが好ましいが、この場合、該金属酸化物粒子は塗布液中に分散されて存在する。塗布液中に金属酸化物粒子を分散させるには、例えば、ボールミル、サンドグラインドミル、遊星ミル、ロールミル等の公知の機械的な粉砕装置で有機溶媒中にて湿式分散することにより製造することができるが、分散メディアを利用して分散することが好ましい。
分散メディアを利用して分散する分散装置としては、公知のどのような分散装置を用いて分散しても構わないが、ペブルミル、ボールミル、サンドミル、スクリーンミル、ギャップミル、振動ミル、ペイントシェーカー、アトライター等が挙げられる。これらの中でも塗布液を循環させて分散できるものが好ましく、分散効率、到達粒径の細かさ、連続運転の容易さ等の点から、湿式攪拌ボールミル、例えばサンドミル、スクリーンミル、ギャップミルが用いられる。これらのミルは、縦型、横型何れのものでもよい。また、ミルのディスク形状は、平板型、垂直ピン型、水平ピン型等任意のものを使用できる。好ましくは、液循環型のサンドミルが用いられる。
前記湿式攪拌ボールミルとしては、円筒形のステータと、ステータの一端に設けられるスラリーの供給口と、ステータの他端に設けられるスラリーの排出口と、ステータ内に充填されるメディアと供給口より供給されたスラリーを攪拌混合するピン、ディスク或いはアニューラタイプのロータと、排出口に連結され、かつロータと一体をなして回転するか、或いはロータとは別個に独立して回転し、遠心力の作用によりメディアとスラリーに分離して、スラリーを排出口より排出させるインペラタイプのセパレータとよりなる湿式攪拌ボールミルにおいて、セパレータを回転駆動するシャフトの軸心を上記排出口に通ずる中空な排出口としたものが特に好ましい。
このような湿式攪拌ボールミルによれば、セパレータによりメディアを分離したスラリーはシャフトの軸心を通って排出されるが、軸心では遠心力が作用しないため、スラリーは運動エネルギーを有しない状態で排出される。このために運動エネルギーが無駄に放出されず、無駄な動力が消費されなくなる。
このような湿式攪拌ボールミルは、横向きでもよいが、メディアの充填率を多くするために好ましくは縦向きで、排出口がミル上端に設けられる。またセパレータもメディア充填レベルより上方に設けるのが望ましい。排出口をミル上端に設ける場合、供給口はミル底部に設けられる。好ましい態様において、供給口は弁座と、弁座に昇降可能に嵌合し、弁座のエッジと線接触が可能なV形、台形或いはコーン状の弁体とより構成され、弁座のエッジとV形、台形或いはコーン状の弁体との間にメディアが通過し得ないような環状のスリットを形成することにより、原料スラリーは供給されるが、メディアの落ち込みは防止できるようにされる。また弁体を上昇させることによりスリットを広げてメディアを排出させたり、或いは弁体を降下させることによりスリットを閉じてミルを密閉させることが可能である。更にスリットは弁体と弁座のエッジで形成されるため、原料スラリー中の粗粒子が噛み込み難く、噛み込んでも上下に抜け出し易く詰まりを生じにくい。
このような湿式攪拌ボールミルにはまた、底部にメディアを分離するスクリーンと、製品スラリーの取り出し口を設け、粉砕終了後、ミル内に残留する製品スラリーを取り出せるようにするのが望ましい。
本発明において、使用が好適な、下引き層形成用塗布液を分散するのに適用される湿式攪拌ボールミルは、セパレータがスクリーンやスリット機構であってもよいが、インペラタイプのものが望ましく、縦型であることが好ましい。湿式攪拌ボールミルは縦向きにし、セパレータをミル上部に設けることが望まれるが、特にメディアの充填率を80〜90%に設定すると、粉砕が最も効率的に行われるうえ、セパレータをメディア充填レベルより上方に位置させることが可能となり、メディアがセパレータに乗って排出されるのを防止することができる効果もある。
このような構造を有する湿式撹拌ボールミルとしては、具体的には例えば寿工業株式会社製のウルトラアペックスミルが挙げられる。
金属酸化物の分散は、分散溶媒の共存下湿式で行なうことが好ましいが、バインダー樹脂や各種添加剤を同時に混合していても構わない。該溶媒としては、特に制限されないが、前記の下引き層形成用塗布液に用いる有機溶媒を用いれば、分散後に溶媒交換等の工程を経る必要が無くなり好適である。これらの溶媒は何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて混合溶媒として用いてもよい。
溶媒の使用量は、生産性の観点から、分散対象となる金属酸化物1重量部に対して通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、また、通常500重量部以下、好ましくは100重量部以下の範囲である。機械的分散時の温度としては、溶媒(又は混合溶媒)の凝固点以上、沸点以下で行なうことが可能であるが、製造時の安全性の面から、通常、10℃以上、200℃以下の範囲で行なわれる。
分散メディアを用いた分散処理後、該分散メディアを分離・除去し、更に超音波処理することが好ましい。超音波処理は、下引き層形成用塗布液に超音波振動を加えるものであるが、振動周波数等には特に制限はなく、通常、周波数10kHz〜40kHz、好ましくは15kHz〜35kHzの発振器により超音波振動を加える。
超音波発振機の出力に特に制限はないが、通常100W〜5kWのものが用いられる。通常、多量の塗布液を大出力の超音波発振機による超音波で処理するよりも、少量の塗布液を小出力の超音波発振機による超音波で処理する方が分散効率が良いため、一度に処理する下引き層形成用塗布液の量は、1〜50Lが好ましく、より好ましくは5〜30Lであって、特には10〜20Lが好ましい。また、この場合の超音波発振機の出力は、200W〜3kWが好ましく、より好ましくは300W〜2kWであって、特には500W〜1.5kWが好ましい。
下引き層形成用塗布液に超音波振動を加える方法に特に制限はないが、下引き層形成用塗布液を納めた容器中に超音波発振機を直接浸漬する方法、下引き層形成用塗布液を納めた容器外壁に超音波発振機を接触させる方法、超音波発信機により振動を加えた液体の中に下引き層形成用塗布液を納めた溶液を浸漬する方法等が挙げられる。これらの方法の中でも、超音波発信機により振動を加えた液体の中に下引き層形成用塗布液を納めた溶液を浸漬する方法が好適に用いられる。この場合、超音波発信機により振動を加える液体としては、水;メタノール等のアルコール類;トルエン等の芳香族炭化水素類;シリコーンオイル等の油脂類が挙げられるが、製造上の安全性、コスト、洗浄性等を勘案すれば、水を用いることが好ましい。超音波発信機により振動を加えた液体の中に下引き層形成用塗布液を納めた溶液を浸漬する方法では、該液体の温度により超音波処理の効率が変化するため、該液体の温度を一定に保つことが好ましい。加えた超音波振動により振動を加えた液体の温度が上昇することがある。該液体の温度は、通常は5〜60℃、好ましくは10〜50℃、より好ましくは15〜40℃の温度範囲において超音波処理することが好ましい。
超音波処理する際に下引き層形成用塗布液を納める容器としては、電子写真感光体用の感光層を形成するのに用いられる下引き層形成用塗布液を入れるのに通常用いられる容器であればどのような容器でも構わないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂製の容器や、ガラス製容器、金属製の缶が挙げられる。これらの中では金属製の缶が好ましく、特に、JIS Z 1602 に規定される、18リットル金属製缶が好適に用いられる。有機溶媒に侵され難く、衝撃に強いからである。
下引き層形成用塗布液は、粗大な粒子を除去するために、必要に応じて濾過した後使用される。この場合の濾過メディアとしては、通常濾過するために用いられる、セルロース繊維、樹脂繊維、ガラス繊維等、何れの濾過材を用いても構わない。濾過メディアの形態としては、濾過面積が大きく効率がよいこと等の理由により、芯材に各種繊維を巻き付けた、いわゆるワインドフィルターが好ましい。芯材としては従前公知の何れの芯材も用いることができるが、ステンレスの芯材、ポリプロピレン等の下引き層形成用塗布液に溶解しない樹脂製の芯材等が挙げられる。
このようにして製造された下引き層形成用塗布液は、所望により更に結着剤や種々の助剤等を添加して、下引き層の形成に用いる。
酸化チタン粒子等の金属酸化物粒子を下引き層用塗布液中に分散させるには、平均粒子径5μm〜200μmの分散メディアを用いることは好ましい。
分散メディアは通常、真球に近い形状をしているため、例えばJIS Z 8801:2000等に記載のふるいによりふるい分けする方法や、画像解析により測定することにより平均粒子径を求めることができ、アルキメデス法により密度を測定することができる。具体的には例えば、(株)ニレコ製のLUZEX50等に代表される画像解析装置により、平均粒子径と真球度を測定することが可能である。分散メディアの平均粒子径としては、通常5μm〜200μmのものが用いられ、特に10μm〜100μmであるのがより好ましい。一般に小さな粒径の分散メディアの方が、短時間で均一な分散液を与える傾向があるが、過度に粒径が小さくなると分散メディアの質量が小さくなりすぎて効率よい分散ができなくなる。
分散メディアの密度としては、通常5.5g/cm3以上のものが用いられ、好ましくは5.9g/cm3以上、より好ましくは6.0g/cm3以上のものが用いられる。一般に、より高密度の分散メディアを使用して分散した方が短時間で均一な分散液を与える傾向がある。分散メディアの真球度としては、1.08以下のものが好ましく、より好ましくは1.07以下の真球度を持つ分散メディアを用いる。
分散メディアの材質としては、下引き層形成用塗布液に不溶、かつ、比重が下引き層形成用塗布液より大きなものであって、下引き層形成用塗布液と反応したり、下引き層形成用塗布液変質させたりしないものであれば、公知の如何なる分散メディアも使用することができ、クローム球(玉軸受用鋼球)、カーボン球(炭素鋼球)等のスチール球;ステンレス球;窒化珪素球、炭化珪素、ジルコニア、アルミナ等のセラミック球;窒化チタン、炭窒化チタン等の膜でコーティングされた球等が挙げられるが、これらの中でもセラミック球が好ましく、特にはジルコニア焼成ボールが好ましい。より具体的には、特許第3400836号公報に記載のジルコニア焼成ビーズを用いることが特に好ましい。
<下引き層形成方法>
本発明において、好適な、下引き層は、下引き層形成用塗布液を支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、スパイラル塗布、リング塗布、バーコート塗布、ロールコート塗布、ブレード塗布等の公知の塗布方法により塗布し、乾燥することにより形成される。
スプレー塗布法としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等があるが、均一な膜厚を得るための微粒化度、付着効率等を考えると回転霧化式静電スプレーにおいて、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、すなわち円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を開けることなく連続して搬送することにより、総合的に高い付着効率で膜厚の均一性に優れた電子写真感光体を得ることができる。
スパイラル塗布法としては、特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機又はカーテン塗布機を用いた方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗布液を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を用いた方法等がある。
浸漬塗布法の場合、通常、下引き層形成用塗布液の全固形分濃度は、通常1質量%以上、好ましくは10質量%以上であって、通常50質量%以下、好ましくは35質量%以下の範囲とし、粘度を好ましくは0.1mPa・s以上、また、好ましくは100mPa・s以下の範囲とする。
その後塗布膜を乾燥するが、必要かつ充分な乾燥が行われる様に乾燥温度、時間を調整する。乾燥温度は通常100〜250℃、好ましくは110℃〜170℃、更に好ましくは115℃〜140℃の範囲である。乾燥方法としては、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機及び遠赤外線乾燥機を用いることができる。
<電荷発生物質>
導電性支持体上に形成された感光層としては、電荷発生物質と電荷輸送物質が同一層に存在し、バインダー樹脂中に分散された単層構造のものであっても、若しくは電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層と電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層とに機能分離された積層構造のものの何れであってもよい。
本発明においては、必要に応じて、電荷発生物質、染顔料を使用することは好ましい。この例としては、例えば、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等の有機顔料等各種光導電材料が使用でき、特に有機顔料、更にはフタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましい。
使用されるフタロシアニンとしては、具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン類の各種結晶型が使用される。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型、I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。なお、これらのフタロシアニンのうち、A型(β型)、B型(α型)、D型(Y型)オキシチタニウムフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。
特に、オキシチタニウムフタロシアニンは、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に主たる明瞭な回折ピークを有するものは、好ましい。
また、該オキシチタニウム二ロシアニンは、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°〜9.7°に、明瞭な回折ピークを有することが好ましい。また、該オキシチタニウムフタロシアニンにおいては、結晶内の塩素含有量が1.5質量%以下であることが好ましい。該塩素含有量は元素分析から求められる。
また、該オキシチタニウムフタロシアニン結晶内においては、下記式(E)で表される塩素化オキシチタニウムフタロシアニンの割合が、下記式(F)で表される無置換オキシチタニウムフタロシアニンに対して、マススペクトル強度比で0.070以下であるものである。また、好ましくはマススペクトル強度比が0.060以下であり、より好ましくは0.055以下である。製造の際、非晶質化に乾式摩砕法を用いる場合は、0.02以上が好ましく、非晶質化にアシッドペースト法を用いる場合は、0.03以上が好ましい。クロル置換量は、特開2001−115054号の手法に基づいて測定できる。
これらオキシチタニルフタロシアニンの粒子径は製法、結晶変換方法によって大きく異なるが、分散性を考慮すると、1次粒子径として、500nm以下が好ましく、塗布成膜性の面からは300nm以下であることが好ましい。また、該オキシチタニウムフタロシアニンは、塩素化オキシチタニウムフタロシアニン以外に、例えば、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基等で置換されていても構わない。又は、スルホン基等の置換基で置換された、各種オキシチタニウムフタロシアニン誘導体を含有しても構わない。
本発明において、使用が好適な、オキシチタニウムフタロシアニンは、例えば、フタロニトリルとハロゲン化チタンを原料として、ジクロロチタニウムフタロシアニンを合成したのち、該ジクロロチタニウムフタロシアニンを加水分解し精製することによりオキシチタニウムフタロシアニン組成物中間体を製造し、得られたオキシチタニウムフタロシアニン組成物中間体を非晶質化して得られた非晶質化オキシチタニウムフタロシアニン組成物を、溶媒中で結晶化することにより製造することができる。
ハロゲン化チタンとしては、チタン塩化物が好ましい。チタン塩化物としては、四塩化チタン、三塩化チタン等が挙げられるが、特に四塩化チタンが好ましい。四塩化チタンを用いると、得られるオキシチタニウムフタロシアニン組成物に含まれる塩素化オキシチタニウムフタロシアニンの含有量を容易に制御することができる。
反応温度は、通常150℃以上、好ましくは180℃以上、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンの含有量を制御するために、より好ましくは190℃以上であって、通常300℃以下、好ましく250℃以下、より好ましくは230℃以下で行われる。通常、チタン塩化物は、フタロニトリルと反応溶媒との混合体に添加される。この際のチタン塩化物は、その沸点以下であれば直接添加しても、前記高沸点溶媒と混合して添加してもよい。
本発明においては、例えば、反応溶剤としてジアリールアルカンを用い、フタロニトリルと四塩化チタンを用いてオキシチタニウムフタロシアニンを製造するとき、四塩化チタンを100℃以下の低温と180℃以上の高温で分割して添加することにより、本発明において、使用が好適なオキシチタニウムフタロシアニンの製造をすることができる。
得られたジクロロチタニウムフタロシアニンの加熱加水分解処理を行った後、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドグラインドミル等の公知の機械的粉砕装置による粉砕、又は濃硫酸に溶解した後に冷水中等で固体として得るいわゆるアシッドペースト法等により、非晶質化する。暗減衰を鑑みると、機械的粉砕が好ましく、感度、環境依存の観点からは、アシッドペースト法が好ましい。
得られた非晶質オキシチタニウムフタロシアニン組成物を、公知の溶媒により結晶化させることにより、本発明において、使用が好適な、オキシチタニウムフタロシアニン組成物を得る。溶媒として、より具体的には、オルトジクロロベンゼン、クロロベンゼン、クロロナフタレンのようなハロゲン系芳香族炭化水素溶媒;クロロホルム、ジクロロエタンのようなハロゲン系炭化水素溶媒;メチルナフタレン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、のようなエステル系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール等のアルコール、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、エチレングリコール等のエーテル系溶媒;テルピノレン、ピネン等のモノテルペン系炭化水素溶媒、流動パラフィン等が好適に用いられ、中でもオルトジクロロベンゼン、トルエン、メチルナフタレン、酢酸エチル、ブチルエーテル、ピネン等が好ましい。
オキシチタニウムフタロシアニンのCuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルは、通常固体の粉末X線回折測定に用いられる方法に従って測定することができる。
本発明において、使用が好適な、オキシチタニウムフタロシアニンは、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に明瞭な回折ピークを有する。そして、更に、9.0°〜9.8°に明瞭な回折ピークを有するものが好ましい。特には、9.0°、9.6°、9.5又は9.7°等にピークを有するものが好ましい。中でもブラッグ角(2θ±0.2°)26.3°には明瞭な回折ピークを有さないものが好ましい。
フタロシアニン化合物は混晶状態でもよい。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態に置ける混合状態として、それぞれの構成要素を後から混合して用いてもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じせしめたものでもよい。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。混晶状態を生じさせるためには、特開平10−48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に摩砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
また、アゾ顔料を併用する場合には、各種公知のビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。好ましいアゾ顔料の例を下記に示す。下記一般式において、Cp1ないしCp3はカップラーを表す。
Cp1ないしCp3のカップラーとしては、好ましくは以下構造を示すものである。
積層型感光体における電荷発生層に用いられる結着樹脂の例としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーの中から選択し、用いることができるが、これらポリマーに限定されるものではない。また、これら結着樹脂は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
結着樹脂を溶解させ、塗布液の作製に用いられる溶媒、分散媒としては例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等の鎖状、分岐、及び環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状、及び環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、水等が挙げられ、後述する下引き層を溶解しないものが好ましく用いられる。またこれらは単独、又は2種以上を併用しても用いることが可能である。
積層型感光体の電荷発生層において、前記結着樹脂と電荷発生物質との配合比(重量)は、バインダー樹脂100重量部に対して10から1000重量部、好ましくは30から500重量部の範囲であり、その膜厚は通常0.1μmから4μm、好ましくは0.15μmから0.6μmである。電荷発生物質の比率が高すぎる場合は電荷発生物質の凝集等の問題により塗布液の安定性が低下し、一方低すぎる場合は感光体としての感度の低下をまねくことから、前記範囲で使用することが好ましい。前記電荷発生物質を分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の公知の分散方法を用いることができる。この際粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の粒子サイズに微細化することが有効である。
<電荷輸送物質>
導電性支持体上に形成された感光層としては、電荷発生物質と電荷輸送物質が同一層に存在し、バインダー樹脂中に分散された単層構造のものであっても、電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層と電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層とに機能分離された積層構造のものの何れであってもよい。また、各層中には、通常は、バインダー樹脂と必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。該電荷輸送層は、具体的には、例えば電荷輸送物質等とバインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には導電性支持体上に(中間層を設ける場合は中間層上に)塗布、乾燥して得ることができる。
本発明の画像形成装置に用いられる感光体においては、電荷輸送物質として、イオン化ポテンシャル5.0eV以上、5.3eV以下の電荷輸送剤を含有することが好ましい。イオン化ポテンシャルは、「AC−1」(理研社製)を使用して、大気中で、電荷輸送物質の粉体又は膜を使用して測定し、それによって測定された値として定義する。小さすぎると、オゾン等に弱くなる場合がある。イオン化ポテンシャルは5.05eV以上がより好ましく、特に好ましくは5.10eV以上である。一方、大きすぎると、電荷発生剤からの電荷の注入効率が悪くなる場合がある。イオン化ポテンシャルは5.25eV以下がより好ましい。
また、具体的には、本発明の画像形成装置に用いられる感光体においては、一般式(B)に示される化合物を含有することが好ましい。
[式(B)において、Ar1ないしAr6は各々独立に、置換基を有してもよい芳香族基又は置換基を有してもよい脂肪族基を示し、X2は有機基を示し、R1ないしR4は各々独立に、不飽和基を示し、n1ないしn6は各々独立に、0、1又は2の整数を示す。但し、n1が1の場合は、n2も1である。]
式(B)において、Ar1ないしAr6は、各々独立に、置換基を有してもよい芳香族残基、又は、置換基を有してもよい脂肪族残基を表す。具体的な芳香族には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、フェナントレン、フルオレン等の芳香族炭化水素;チオフェン、ピロール、カルバゾール、イミダゾール等の芳香族複素環等が挙げられる。炭素数としては5〜20が好ましく、より好ましくは16以下であり、特に好ましくは10以下である。下限は、電気特性の観点から、6以上がより好ましい。特に好ましくは、芳香族炭化水素残基であり、ベンゼン残基であることが好ましい。
また、具体的な脂肪族としては、炭素数としては1ないし20が好ましく、より好ましくは16以下であり、特に好ましくは10以下である。飽和脂肪族の場合は、炭素数6以下が好ましく、不飽和脂肪族の場合は、炭素数2以上が好ましい。飽和脂肪族としては、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、イソブタン等の分岐、直鎖アルキルが挙げられ、不飽和脂肪族としては、エチレン、ブチレン等のアルケン類等が挙げられる。
また、これらに置換する置換基としては特に制限はないが、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基;アリル基等のアルケニル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、インデニル基、ナフチル基、アセナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基;インドリル基、キノリル基、カルバゾリル基等の複素環基が挙げられる。また、これら置換基は、連結基又は直接結合して環を形成してもよい。また、これらの置換基は、導入することにより、分子内電荷を調節し、電荷移動度を増大させる効果がある一方で、嵩が大きくなりすぎると、分子内の共役面の歪み、分子間立体反発によってかえって電荷移動度を下げるため、好ましくは炭素原子数1以上であって、好ましくは炭素原子数6以下、より好ましくは炭素原子数4以下、特には炭素原子数2以下である。
また、置換基を有する場合は、複数の置換基を有するのは、結晶析出が避けられるので好ましいが、多すぎると分子内の共役面の歪み、分子間立体反発等によって、かえって電荷移動度を下げるため、好ましくは一つの環につき2個以下である。そして、感光層中における安定性を向上させ、電気特性を向上させるために、立体的に嵩高くないものが好ましく、より具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、メトキシ基等が好ましい。
特に、Ar1ないしAr4がベンゼン残基である場合は、置換基を有することは好ましく、この場合好ましい置換基はアルキル基であり、中でもメチル基が好ましい。また、Ar5ないしAr6がベンゼン残基である場合、好ましい置換基はメチル基又はメトキシ基である。特には、式(B)中、Ar1が、フルオレン構造を有するものであることが好ましい。
また、式(B)中、X2は有機残基であり、例えば、置換基を有してもよい、芳香族残基、飽和脂肪族残基、複素環残基、エーテル構造を有する有機残基、ジビニル構造を有する有機残基等が挙げられる。特に好ましくは、炭素数1ないし15以下の有機残基であり、中でも、芳香族残基、飽和脂肪族残基が好ましい。芳香族残基の場合、炭素数6以上14以下であることが好ましく、より好ましくは10以下である。また、飽和脂肪族残基の場合、炭素数1以上10以下であることが好ましく、より好ましくは8以下である。
この有機残基X2は、上に挙げた構造に置換基を有していてもよい。これらに置換する置換基としては、特に制限はないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、インデニル基、ナフチル基、アセナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基;インドリル基、キノリル基、カルバゾリル基等の複素環基が挙げられる。また、これら置換基は、連結基、又は直接結合して環を形成してもよい。また、これらの置換基は、好ましくは炭素原子数1以上であって、好ましくは炭素原子数10以下、より好ましくは炭素原子数6以下、特には炭素原子数3以下である。より具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、メトキシ基等が好ましい。
また、置換基を有する場合は、複数の置換基を有するのは、結晶析出をさけるので、好ましいが、多すぎると分子内の共役面の歪み、分子間立体反発によってかえって電荷移動度を下げるため、好ましくは一つのX2につき2個以下である。
n1ないしn4は、各々独立に、0、1又は2を表す。n1は好ましくは1であり、n2は好ましくは0又は1である。n1が1のときは、n2も1である。
R1ないしR4は、各々独立に、不飽和基である。好ましくは、炭素数30以下の有機基であり、更に好ましくは、20以下の有機基である。また、不飽和基の構造としては、二重結合を有するものは好ましい。また、該不飽和基は、ヒドラゾン構造、スチルベン構造、ブタジエン構造を有するものは好ましい。該ヒドラゾンの窒素原子には、水素原子が直接共役結合していないヒドラゾン構造を有するものは好ましく、好ましくは、窒素原子に、炭素が、結合しているものが好ましく、ジフェニルヒドラゾン構造を有するものが好ましい。
n5及びn6は、各々独立に、0、1又は2を表す。n5が0の場合は直結を表し、n6が0の場合は、n5は0が好ましい。n5とn6がともに1の場合、X2はアルキリデンか、若しくはアリーレン基、若しくはエーテル構造を有することが好ましい。また、アルキリデンの構造としては、フェニルメチリデン、2−メチルプロピリデン、2−メチルブチリデン、シクロヘキシリデン等が好ましい。また、アリーレンの構造としては、フェニレン、ナフチレン等が好ましい。また、エーテル構造を有する基としては、−O−CH2−O−等が好ましい。
n5、n6がともに0である場合は、Ar5はベンゼン残基又はフルオレン残基であることが好ましい。ベンゼン残基である場合、アルキル基、アルコキシ基を置換することは好ましく、置換基としてより好ましくはメチル基又はメトキシ基であり、窒素原子のp位に置換することが好ましい。また、n6が2の場合は、X2はベンゼン残基であることが好ましい。
n1ないしn6の具体的な組合せの一例としては、以下が挙げられる。
n1 n2 n3 n4 n5 n6
1 1 0 0 0 0
1 1 1 1 0 1
2 2 0 0 0 0
2 2 2 2 1 1
1 1 1 0 2 1
1 1 1 1 1 2
式(B)の好適な構造の具体例を以下に示す。
上記式中、Rは同一でも、それぞれ異なっていても構わない。具体的には、水素原子又は置換基であり、置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基等が好ましい。特に好ましくは、メチル基、フェニル基である。また、nは0ないし2の整数である。
また、式(B)の化合物と、任意の公知の電荷輸送物質を併用しても構わない。公知の電荷輸送物質の例としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。これらの電荷輸送物質は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせで併用してもよい。
本発明の画像形成装置においては、感光体が電荷発生層と電荷輸送層を含有した積層型感光体であり、該電荷輸送層に含まれる電荷輸送剤とバインダー樹脂の重量比率、すなわち「電荷輸送剤/バインダー樹脂」の値が、0.3〜0.6の範囲であることが好ましい。0.3より小さい場合には、電気特性が低下する場合があり、特に移動度が低下する場合がある。一方、0.6より大きい場合には、感光層の機械的強度が低下する場合があり、特に耐摩耗性が低下する場合がある。「電荷輸送剤/バインダー樹脂」の値は、より好ましくは0.35以上である。また、より好ましくは0.55以下である。
<バインダー樹脂>
電荷発生層と電荷輸送層を有する機能分離型感光体の電荷輸送層、及び単層型感光体の感光層形成の際は、膜強度確保のため、化合物を分散させるためバインダー樹脂が使用される。機能分離型感光体の電荷輸送層の場合、電荷輸送物質と各種バインダー樹脂とを溶剤に溶解、あるいは分散して得られる塗布液、また、単層型感光体の場合、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダー樹脂を溶剤に溶解、あるいは分散して得られる塗布液を塗布、乾燥して得ることができる。バインダー樹脂としては、例えばブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。 これら樹脂は珪素試薬等で修飾されていてもよい。
特に、本発明においては、界面重合で得られた一種類以上のポリマーを含有することは好ましい。界面重合とは、互いに混ざり合わない2つ以上の溶媒(多くは、有機溶媒−水系)の界面で進行される重縮合反応を利用する重合法である。例えば、ジカルボン酸塩化物を有機溶媒に、グリコール成分をアルカリ水等に溶かして、常温で両液を混合させて、2相にわけ、その界面で、重縮合反応を進ませて、ポリマーを生成させる。他の2成分の例としては、ホスゲンとグリコール水溶液等が挙げられる。また、ポリカーボネートオリゴマーを界面重合で縮合する場合のように、2成分をそれぞれ、2相に分けるのではなく、界面を重合の場として、利用する場合もある。
反応溶媒としては、有機相と、水相の二層を使用するのは好ましく、有機相としては、メチレンクロライド、水相は、アルカリ性水溶液が好ましい。反応時に、触媒を使用することは好ましく、反応で使用する縮合触媒の添加量は、ジオールに対して0.005〜0.1mol%程度、好ましくは0.03〜0.08mol%である。0.1mol%を超えると、重縮合後の洗浄工程で触媒の抽出除去に多大の労力を要し好ましくない。
反応温度は、80℃以下、好ましくは60℃以下、更に好ましくは10℃〜50℃の範囲にあることが好ましく、また反応時間は反応温度によっても左右されるが、通常0.5分〜10時間、好ましくは1分〜2時間である。反応温度が高すぎると、副反応の制御ができず、一方、低すぎると、反応制御上は好ましい状況ではあるが、冷凍負荷が増大して、その分コストアップとなり好ましくない。
また、有機相中の濃度は、得られる組成物が可溶な範囲であればよく、具体的には、10〜40質量%程度である。有機相の割合はジオールのアルカリ金属水酸化物水溶液、即ち水相に対して0.2〜1.0の容積比であることが好ましい。
また、重縮合によって得られる有機相中の生成樹脂の濃度が5〜30質量%となるように溶媒の量が調整されるのが好ましい。しかる後、新たに水及びアルカリ金属水酸化物を含む水相を加え、更に重縮合条件を整えるために好ましくは縮合触媒を添加して界面重縮合法に従い、所期の重縮合を完結させる。重縮合時の有機相と水相の割合は容積比で有機相:水相=1:0.2〜1程度が好ましい。
界面重合により生成する該ポリマーとしては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(特にポリアリレート樹脂が好ましい)が特に好ましい。該ポリマーは、芳香族ジオールを原料とするポリマーであることは好ましく、好ましい芳香族ジオール構造としては、下記式(A)で表されるものである。
[式(A)中、X1は単結合又は環状構造を有さない連結基を示し、Y1ないしY8は各々独立に、水素原子又は原子数20以下の置換基を示す。]
また、式(A)中、X1は単結合又は以下の構造で表される基であることが好ましい。「単結合」とは、「X1」なる原子がなく、式(A)中の左右2つのベンゼン環を、単に単結合で結合した状態をいう。
上記構造中、R1a及びR2aは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は、ハロゲン化アルキル基を示す。
特に、下記構造式を有するビスフェノール又はビフェノール成分が含有されるポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が、感度、残留電位等の点から好ましく、なかでも移動度の面からポリカーボネート樹脂がより好ましい。
ポリカーボネート樹脂に好適に用いることのできるビスフェノール、ビフェノールの構造を以下に例示する。本例示は、趣旨を明確にするために行うものであり、本発明の趣旨に反しない限りは例示される構造に限定されるものではない。
特に、本発明の効果を最大限に発揮するためには、以下構造を示すビスフェノール誘導体を含有するポリカーボネートが好ましい。
また、機械特性向上のためには、ポリエステル、特にポリアリレートを使用することが好ましく、この場合は、ビスフェノール成分として以下構造を用いるのが好ましく、
酸成分としては、以下構造を用いることが好ましい。
また、テレフタル酸とイソフタル酸を使用する際は、テレフタル酸のモル比が多い方が好ましい。
積層型感光体の電荷輸送層及び単層型感光体の感光層に使用されるバインダー樹脂と電荷輸送物質の割合は、単層型、積層型共に、通常、バインダー樹脂100重量部に対して電荷輸送物質が20重量部以上であって、残留電位低減の観点から30重量部以上が好ましく、更に繰り返し使用時の安定性、電荷移動度の観点から、40重量部以上がより好ましい。また、一方で感光層の熱安定性の観点から、通常は150重量部以下、更に電荷輸送物質とバインダー樹脂の相溶性の観点からは好ましくは120重量部以下、更に耐刷性の観点からは100重量部以下がより好ましく、耐傷性の観点からは80重量部以下がとりわけ好ましい。
単層型感光体の場合には、上記のような配合比の電荷輸送媒体中に、更に前記の電荷発生物質が分散される。その場合の電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生物質は少なすぎると充分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下の弊害があり、例えば、好ましくは0.1〜50質量%の範囲、好ましくは1〜20質量%の範囲で使用される。
単層型感光体の感光層の膜厚は、通常5〜100μm、好ましくは10〜50μmの範囲で使用され、順積層型感光体の電荷輸送層の膜厚は、通常5〜50μmの範囲で用いられるが、長寿命、画像安定性の観点からは、好ましくは10〜45μm、高解像度の観点からは10〜30μmがより好ましい。
なお、感光層には成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるために周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤等の添加物を含有させてもよい。また感光層には必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。また染料、顔料の例としては、各種の色素化合物、アゾ化合物等が挙げられ、界面活性剤の例としては、シリコ−ンオイル、フッ素系オイル等が挙げられる。
<酸化防止剤>
酸化防止剤は、感光体に含まれる部材の酸化を防止するために添加される安定剤の一種である。酸化防止剤は、ラジカル補足剤としての機能があり、具体的には、フェノール誘導体、アミン化合物、ホスホン酸エステル、硫黄化合物、ビタミン、ビタミン誘導体等が挙げられる。
この中でも、フェノール誘導体、アミン化合物、ビタミン等は、好ましい。特に好ましくは、嵩高い置換基を、ヒドロキシ基近辺に有する、ヒンダードフェノール、又は、トリアルキルアミン誘導体等は好ましい。特には、ヒドロキシ基のo位に、t−ブチル基を有するアリール化合物誘導体は好ましく、ヒドロキシ基のo位に、t−ブチル基を2つ有するアリール化合物誘導体は好ましい。
また、該酸化防止剤は、分子量は大きすぎると、酸化防止能に問題が生じることがあり、分子量1500以下、特には、分子量1000以下の化合物が好ましい。下限は、100以上、好ましくは、150以上が好ましく、更に好ましくは、200以上が好ましい。
以下、本発明に使用できる酸化防止剤を示す。本発明に使用できる酸化防止剤としては、プラスチック、ゴム、石油、油脂類の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤として公知の材料すべては用いることができるが、とりわけ次に示す化合物群より選ばれる材料が好ましく使用できる。
(1)特開昭57−122444号公報に記載のフェノール類、特開昭60−188956号公報に記載のフェノール誘導体及び特開昭63−18356号公報に記載のビンダードフェノール類。
(2)特開昭57−122444号公報に記載のパラフェニレンジアミン類、特開昭60−188956号公報に記載のパラフェニレンジアミン誘導体及び特開昭63−18356号公報に記載のパラフェニレンジアミン類。
(3)特開昭57−122444号公報に記載のハイドロキノン類、特開昭60−188956号公報に記載のハイドロキノン誘導体及び特開昭63−18356号公報に記載のハイドロキノン類。
(4)特開昭57−188956号公報に記載のイオウ化合物及び特開昭63−18356号公報に記載の有機イオウ化合物類。
(5)特開昭57−122444号公報に記載の有機リン化合物及び特開昭63−18356号公報に記載の有機リン化合物類。
(6)特開昭57−122444号公報に記載のヒドロキシアニソール類。
(7)特開昭63−18355号公報に記載の特定の骨格構造を有するピペリジン誘導体及びオキソピペラジン誘導体。
(8)特開昭60−188956号公報に記載のカロチン類、アミン類、トコフェロール類、Ni(II)錯体、スルフィド類等。
また、特に好ましくは、以下に示す、ヒンダードフェノール類が好ましい。「ヒンダードフェノール」とは、嵩高い置換基をヒドロキシ基近辺に有するフェノール類をいう。
ジブチルヒドロキシトルエン、
2,2′−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、
4,4′−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、
4,4′−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、
2,2′−ブチリデンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、
α−トコフェノール、β−トコフェノール、2,2,4−トリメチル−6−ヒドロキシ−7−t−ブチルクロマン、
ペンタエリスチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、
2,2´−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、
1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、
ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシアニソール、
オクタデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート
(Octadecyl-3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyhydrocinnamate)
1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン
(1,3,5-trimethyl-2,4,6-tris-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzyl)-benzene)
上記、ヒンダードフェノール類の中でも、以下の化合物が特に好ましい。
オクタデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート
(Octadecyl-3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyhydrocinnamate)
1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン
(1,3,5-trimethyl-2,4,6-tris-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzyl)-benzene)
これらの化合物はゴム、プラスチック、油脂類等の酸化防止剤として知られており、市販品として手に入るものもある。
本発明の画像形成装置に用いられる感光体において、表面層中の前記酸化防止剤の量は、特に制限されないが、バインダー樹脂100重量部当り0.1重量部以上、20重量部以下が好ましい。この範囲以外の場合、良好な電気特性が得られない。特に好ましくは、1重量部以上である。また、多すぎると、電気特性だけでなく、耐刷性にも問題を起こす場合があるので、好ましくは15重量部以下であり、更に好ましくは10重量部以下である。
<電子吸引性化合物>
感光体には、電子吸引性の化合物を有することが好ましく、具体的には、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、有機シアノ化合物、ニトロ化合物、芳香族ハロゲン誘導体等は好ましいが、特に好ましくは、スルホン酸エステル化合物、有機シアノ化合物、であり、特に、スルホン酸エステル化合物が好ましい。スルホン酸エステル構造を分子内に1個以上有することが好ましく、2個以上有することがより好ましく、更に好ましくは3個以上である。上限は、10個以下が好ましく、更に好ましくは5個以下である。
電子吸引能力は、LUMOのエネルギーレベルの値で予見することも可能である。特に、PM3パラメーターを使った半経験的分子軌道計算を用いた構造最適化による(以下これを単に、「半経験的分子軌道計算による」と略記する)LUMOのエネルギーレベルの値が−1.0eV〜−3.0eVである化合物が好ましい。LUMOのエネルギーレベルの絶対値が、1.0eVよりも小さくなると、電子吸引性の効き目があまり期待できず、3.0eVを超えると、帯電が悪化する場合がある。LUMOのエネルギーレベルの絶対値は、より好ましくは1.5eV以上であり、より好ましくは1.7eV以上であり、更に好ましくは1.9eV以上である。上限は、2.7eV以下が好ましく、より好ましくは2.5eV以下である。
電子吸引性化合物としては、具体的には、以下化合物が挙げられる。
<最表面層>
前記電荷発生物質、電荷輸送物質は、どのような層にあってもよいが、最表面層には、フッ素原子、珪素原子が存在していることが、トナー転写、クリーニング性向上等の観点から好ましい。これらの原子は、添加剤でも、電荷発生物質でも、電荷輸送物質でも、バインダー樹脂でも何れの物質に含まれていても構わない。
[表面自由エネルギー]
また、感光体表面のもつ付着性は、表面自由エネルギー(表面張力と同義)として、検出することが可能である。最表面層の表面自由エネルギーの値としては、35mN/mないし65mN/mの範囲であることは好ましい。低すぎると、トナーが流れてしまう場合があり、また、高すぎると、トナーの転写効率、クリーニング性悪化を招く場合がある。下限としては、好ましくは40mN/m以上であり、上限としては、好ましくは55mN/m以下であり、より好ましくは50mN/m以下である。
以下、表面自由エネルギーについて述べる。感光体表面と残留トナー等の異物の付着は、物理結合の範疇であり分子間力(van der Waals力)が原因である。その分子間力が最表面において起こす現象として表面自由エネルギー(γ)がある。物質の「濡れ」には、大別して3種類ある。物質1が物質2に付着する「付着濡れ」、物質1が物質2上に広がる「拡張濡れ」、物質1が物質2に浸ったり、染み込んだりする「浸漬濡れ」である。
付着濡れについて、表面自由エネルギー(γ)と濡れ性に関して、Youngの式から物質1と物質2との関係は、下記のようになる。
γ1:物質1表面の表面自由エネルギー
γ2:物質2の表面自由エネルギー
γ12:物質1/物質2の界面自由エネルギー
θ12:物質1/物質2の接触角
上記式(1−1)において、画像形成装置内の感光体表面への異物や水分等の付着を考える場合は、物質1を感光体、物質2を異物とすればよい。
式(1−1)より、濡れ難くする、つまりθ12を大きくする為には、感光体とトナーの「濡れ仕事」であるところの感光体表面の表面自由エネルギーγ1を大きくし、γ2とγ12を小さくしてやることが有効である。
電子写真のクリーニング工程において、感光体の表面自由エネルギーγ1を制御することにより、結果として式(1−1)の右辺の付着状態を制御できる。また、耐久において、トナーやその他の異物は逐次、新たに供給される物であり、γ2は一定と考えることができる。一方、感光体は耐久によりその表面自由エネルギーγ1が変化する。γ1が△γ1だけ変化することにより、結果として式(1−1)の右辺の値も変化する。即ち異物が感光体表面に付着する状態が変化し、結果としてクリーニング性やクリーニング機構への負荷に変化が生じる。言葉を変えれば、△γ1を規定することにより、感光体のクリーニング性、即ちクリーニングされ易さを一定に保持し得るということである。
ここで、固体と液体の濡れに関しては、その接触角θ12を直接測定することができるが、感光体とトナーのように、固体と固体の場合は、接触角θ12を測定し得ない。本発明における感光体とトナーは、通常ともに固体であり、このケースに該当する。
北崎寧昭、畑敏雄らは、日本接着協会紙8(3)、131〜141(1972)で、界面自由エネルギー(界面張力と同義)に関し、非極性な分子間力について述べたForkesの理論に対し、更に、極性又は水素結合性の分子間力による成分にまで拡張できることが示している。この拡張Forkes理論により、各物質の表面自由エネルギーを2ないし3成分で求めることができる。下に、付着濡れの場合を例に、3成分の理論について記す。この理論は下記の如き仮定の基で成り立っている。
1.表面自由エネルギー(γ)の加算則
γ=γd+γp+γh (1−2)
γd:分散成分(非極性のぬれ=付着)
γp: 双極子成分(極性によるぬれ=付着)
γh:水素結合成分(水素結合によるぬれ=付着)
これをForkeS理論に適用して、2つの物質の界面自由エネルギーγ12は、下記の様になる。
更に、
表面自由エネルギーの測定方法は、p、d、hの表面自由エネルギー各成分が既知の試薬を使用し、該試薬との付着性を測定し、算出することができる。具体的には、試薬に純水、ヨウ化メチレン、α−ブロモナフタレンを使用し、協和界面(株)製の自動接触角計CA−VP型を使用して、上記各試薬の感光体表面への接触角を測定し、同社製表面自由エネルギー解析ソフトFAMASにて表面自由エネルギーγを算出した。試薬は上記のほかにも、p、d、hの各成分が適宜な組み合わせのものを使用すればよい。また測定方法も、上記の他にも一般的な手法の、例えばウィルヘルミ法(つり板法)、ドゥ・ヌイ法等で測定することにより行うことができる。
先に述べたように、「濡れ」には複数の種類があるが、感光体表面にトナーが固着、融着する場合には、感光体表面に残留したトナーが感光体に付着し、クリーニング、帯電等の工程を繰り返しているうち、該トナーが感光体表面に被膜状に広がり、付着力が強度になることによる影響が大きい。いわゆる「付着濡れ」に相当する。
また、紙粉やロジン、タルク等の、異物の固着等の場合も同様に付着後、感光体との接触面(以下「界面」と称する)の面積が増大して強固な濡れになる。更に感光体表面に付着した異物に、また感光体表面へ直接水分が関与し「濡れ」ることは、画像がぼやけたようになる、いわゆる「高湿流れ」の要因となっている。
これらの異物に関して、電子写真の画像形成の工程上、トナーを含む様々な物質が一旦は感光体表面に付着する。これらのうち、転写材に転写されきらなかった、いわゆる「残トナー」や他の異物を、一定期間以内にクリーニング、即ち除去する必要がある。ここで言う一定期間とは、様々な物質が一旦は感光体表面に付着する実時から、該付着物が、拡散かつ/又は更なる付着により、感光体との界面の面積が増加するまでの状態の期間を指す。
上記の範囲の状態内でのクリーニングにかかる特性、即ち先ず感光体へ付着した異物の「付着濡れ」、更に「拡張濡れ」が、実用上のクリーニング特性や、クリーニング装置或いは感光体の寿命にかかる、大きな要因となる。従って、本発明者らは、感光体の表面自由エネルギーγについて、規定することが有効であると考え、鋭意検討を行い、高画質かつ高耐久な電子写真画像を得ることができることを見出した。特に、物質2、即ち前述の異物としてはトナー、紙粉、水分、シリコーンオイルその他の多種類が考えられる。
本発明においては、付着される側である所の物質1の感光体表面に付いて、その表面自由エネルギーγ1を規定した。また、上記の物質2は耐久中、随時供給されるものであるのに対し、物質1である感光体表面は耐久により、そのγ1が変化する。画像形成用の電子写真装置としての耐久性を検討するに当り、その変動分△γ1を制御することが重要である。
[制御]
高画質な画像を安定して得る為に、感光体のクリーニング性、特に感光体をクリーニングする負荷を制御する。本発明者らは、鋭意検討の結果、感光体の表面自由エネルギーγの値を35mN/mないし65mN/mの範囲、より好ましくは40mN/mないし60mN/mに規定することにより、低負荷で良好なクリーニング性が得られることを見出した。また、耐久により変化する量△γを25mN/m以内、好ましくは15mN/m以内の範囲で使用することにより、感光体とクリーニング装置双方への負荷の変動を抑止し、長期にわたりクリーニング特性を安定せしめた
特に、感光体の最表面層には、感光層の損耗を防止したり、帯電器等からの発生する放電物質等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で保護層を設けてもよい。保護層は導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成するか、特開平9−190004号公報、特開平10−252377号公報の記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いることができる。導電性材料としては、TPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミ、酸化亜鉛等の金属酸化物等を用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。保護層に用いる結着樹脂としてはポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができ、また、特開平9−190004号公報、特開平10−252377号公報の記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記樹脂の共重合体を用いることもできる。上記保護層は電気抵抗が109〜1014Ω・cmとなるように構成することが好ましく。電気抵抗が1014Ω・cmより高くなると残留電位が上昇しカブリの多い画像となってしまい、一方109Ω・cmより低くなると画像のボケ、解像度の低下が生じてしまう。また、保護層は像露光に照射される光の透過を実質上妨げないように構成されなければならない。
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、表面層にフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等を含んでいてもよい。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいてもよい。
<層形成方法>
感光体を構成する各層は、各層を構成する材料を含有する塗布液を、支持体上に公知の塗布方法を用い、各層ごとに塗布・乾燥工程を繰り返し、順次塗布していくことにより形成される。
層形成用の塗布液は、単層型感光体及び積層型感光体の電荷輸送層の場合には、固形分濃度を、通常5〜40質量%の範囲で用いられるが、10〜35質量%の範囲で使用するのが好ましい。また、該塗布液の粘度は、通常10〜500mPa・sの範囲で用いられるが、50〜400mPa・sの範囲とするのが好ましい。
積層型感光体の電荷発生層の場合には、固形分濃度を、通常0.1〜15質量%の範囲で使用されるが、1〜10%の範囲で使用することがより好ましい。塗布液の粘度は、通常0.01〜20mPa・sの範囲で使用されるが、0.1〜10mPa・sの範囲で使用されることがより好ましい。
塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
塗布液の乾燥は室温における指触乾燥後、30〜200℃の温度範囲で、1分から2時間の間、無風、又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また加熱温度は一定であっても、乾燥時に変更させながら行なってもよい。
<画像形成装置>
図面により、本発明の画像形成装置を使用した画像形成方法を更に詳細に説明する。図1は、画像形成方法の遂行に用いることのできる非磁性一成分トナーを使用した現像装置の一例を示す説明図である。図1において、トナーホッパー17に内蔵されているトナー16は、撹拌羽根15によりローラー状のスポンジローラー(トナー補給補助部材)14に強制的に寄せられ、トナーはスポンジローラー14に供給される。そして、スポンジローラー14に取り込まれたトナーは、スポンジローラー14が矢印方向に回転することにより、トナー搬送部材12に運ばれ、摩擦され、静電的又は物理的に吸着し、トナー搬送部材12が矢印方向に強く回転し、スチール性の弾性ブレード(トナー層厚規制部材)13により均一なトナー薄層が形成されるとともに摩擦帯電する。その後、トナー搬送部材12と接触している静電潜像担持体11の表面に運ばれ、潜像が現像される。静電潜像は例えば有機感光体に500VのDC帯電をした後、露光して得られる。
本発明の画像形成装置に用いられるトナーは、帯電量分布がシャープであるため、帯電不良のトナーが原因で起こる画像形成装置内の汚染(トナー飛散)が非常に少ない。これは特に静電潜像担持体への現像プロセススピードが100mm/秒以上である高速タイプの画像形成装置においてその効果が顕著に発現される。
また、本発明の画像形成装置に用いられるトナーは、帯電量分布がシャープであるため、現像性が非常によく、現像しないで蓄積していくトナー粒子が非常に少ない、これは、特にトナーの消費スピードが速い画像形成装置においてその効果が発揮されるものである。具体的に示すと、下記式(3)を満足する画像形成装置に用いるトナーであることが、本発明の上記効果を充分に発揮させるために好ましいものである。
現像剤を充填する現像機の保証寿命枚数(枚)×印字率≧500(枚) (3)
式(3)において、「印字率」は、画像形成装置の性能である保証寿命枚数を決定するための印刷物において、印字部分面積の総和を印字媒体の全面積で除した値で表され、例えば、「5%」の印字%の「印字率」は「0.05」である。
更に、本発明の画像形成装置に用いられるトナーは粒径の分布が非常にシャープであるため、潜像の再現性が非常によい。従って特に、静電潜像担持体への解像度が600dpi以上である画像形成装置に用いる時に、本発明の効果が充分に発揮される。
次に、本発明の画像形成装置の電子写真プロセス周辺の形態について、装置の要部構成を示す図2を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図2に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置2、露光装置3及び現像装置4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置5、クリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の画像形成装置に用いられる電子写真感光体であれば特に制限はないが、図2ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。図2では帯電装置2の一例としてローラー型の帯電装置(帯電ローラー)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ等の接触型帯電装置等がよく用いられる。
なお、電子写真感光体1及び帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下適宜、感光体カートリッジという)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されている。そして、例えば電子写真感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述するトナーについても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。更に、電子写真感光体1、帯電装置2、トナーが全て備えられたカートリッジを用いることもある。
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED等が挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば、波長が700nm〜850nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長300nm〜500nmの短波長の単色光等で露光を行なえばよい。
特に、電荷発生物質としてフタロシアニン化合物を使用する電子写真感光体の場合には、波長700nm〜850nmの単色光を用いることが好ましく、アゾ化合物を用いる電子写真感光体の場合には、波長700nm以下の単色光を用いることが好ましい。アゾ化合物を用いる電子写真感光体の場合には、波長500nm以下の単色光を光入力用光源としても充分な感度を有する場合があるため、波長300nm〜500nmの単色光を光入力用光源として用いることは特に好適である。
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や、湿式現像方式等の任意の装置を用いることができる。図2では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラー43、現像ローラー44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジ等の容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラー43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラー44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル等の金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等を被覆した樹脂ロール等からなる。この現像ローラー44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラー44は、電子写真感光体1と供給ローラー43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラー43に各々当接している。供給ローラー43及び現像ローラー44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラー43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラー44に供給する。現像ローラー44は、供給ローラー43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅等の金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラー44に当接し、ばね等によって、現像ローラー44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラー43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTは、体積中位径(Dv50)が4.0μm〜7.0μmの小粒径のもので、前記した特定の粒径分布を有するものが使用される。また、トナーの粒子の形状は球形に近いものからポテト上の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラー転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラー、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙、媒体)Pに転写するものである。
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラークリーナー、ブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
定着装置7は、上部定着部材(加圧ローラー)71及び下部定着部材(定着ローラー)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73がそなえられている。なお、図2では、上部定着部材71の内部に加熱装置73がそなえられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71、72は、ステンレス、アルミニウム等の金属素管にシリコーンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等が公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71、72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラー定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させてもよく、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラー43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラー44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。現像ローラー44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としてもよい。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程等の工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
また、物理的、電気的に表面性の優れた、本発明の画像形成装置に用いられる上記感光体と上記トナーとを併用することにより、画像特性が優れ、画像汚れも少なく、また、転写効率の高いシステムを構築することができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下の例で「部」とあるのは「重量部」を意味する。
<体積平均径(Mv)の測定方法と定義>
1μm未満の体積平均径(Mv)を有する粒子の体積平均径(Mv)は、日機装株式会社製、型式:Microtrac Nanotrac 150(以下、「ナノトラック」と略記する)を用いて、ナノトラックの取り扱い説明書に従い、同社解析ソフトMicrotrac Particle Analyzer Ver10.1.2.-019EEを用い、電気伝導度が0.5μS/cmのイオン交換水を分散媒に用い、それぞれ、下記の条件で又は下記の条件を入力し、取り扱い説明書に記載された方法で測定した。
ワックス分散液及び重合体一次粒子分散液については、
・溶媒屈折率:1.333
・測定時間 :100秒
・測定回数 :1回
・粒子屈折率:1.59
・透過性 :透過
・形状 :真球形
・密度 :1.04
顔料プレミックス液及び着色剤分散液については、
・溶媒屈折率:1.333
・測定時間 :100秒
・測定回数 :1回
・粒子屈折率:1.59
・透過性 :吸収
・形状 :非球形
・密度 :1.00
<体積中位径(Dv50)の測定方法と定義>
外添工程を経て、最終的に得られたトナーの測定前処理として次の様にした。内径47mm、高さ51mmの円筒形のポリエチレン(PE)製ビーカーに、スパチュラーを用いてトナーを0.100g、スポイトを用いて20質量%DBS水溶液(第一工業製薬社製、ネオゲンS−20A)を0.15g添加した。この際、ビーカーの縁等にトナーが飛び散らない様にビーカーの底部にのみトナー及び20%DBS水溶液を入れた。次に、スパチュラーを用いてトナーと20%DBS水溶液がペースト状になるまで3分間攪拌した。この際もビーカーの縁等にトナーが飛び散らない様にした。
続いて、分散媒アイソトンIIを30g添加し、スパチュラーを用いて2分間攪拌し全体を目視で均一な溶液とした。次に、長さ31mm直径6mmのフッ素樹脂コート回転子をビーカーの中に入れて、スターラーを用いて400rpmで20分間分散させた。この際、3分間に1回の割合でスパチュラーを用いて気液界面とビーカーの縁に目視で観察される巨視的な粒をビーカー内部に落とし込み均一な分散液となるようにした。続いて、これを目開き63μmのメッシュで濾過し、得られたろ液を「トナー分散液」とした。
なお、トナー母粒子の製造工程中の粒径の測定については、凝集中のスラリーを63μmのメッシュで濾過したろ液を「スラリー液」とした。
粒子の体積中位径(Dv50)はベックマンコールター社製マルチサイザーIII(アパーチャー径100μm)(以下、「マルチサイザー」と略記する)を用い、分散媒には同社製アイソトンIIを用い、上述の「トナー分散液」又は「スラリー液」を、分散質濃度0.03質量%になるように希釈して、マルチサイザーIII解析ソフトで、KD値は118.5として測定した。測定粒子径範囲は2.00から64.00μmまでとし、この範囲を対数目盛で等間隔となるように256分割に離散化し、それらの体積基準での統計値をもとに算出したものを体積中位径(Dv50)とした。
<粒径2.00μm以上、3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)の測定方法と定義>
外添工程を経て、最終的に得られたトナーの測定前処理として次の様にした。内径47mm、高さ51mmの円筒形のポリエチレン(PE)製ビーカーに、スパチュラーを用いてトナーを0.100g、スポイトを用いて20質量%DBS水溶液(第一工業製薬社製、ネオゲンS−20A)を0.15g添加した。この際、ビーカーの縁等にトナーが飛び散らない様にビーカーの底部にのみトナー及び20%DBS水溶液を入れた。次に、スパチュラーを用いてトナーと20%DBS水溶液がペースト状になるまで3分間攪拌した。この際もビーカーの縁等にトナーが飛び散らない様にした。
続いて、分散媒アイソトンIIを30g添加し、スパチュラーを用いて2分間攪拌し、全体を目視で均一な溶液とした。次に、長さ31mm直径6mmのフッ素樹脂コート回転子をビーカーの中に入れて、スターラーを用いて400rpmで20分間分散させた。この際、3分間に1回の割合でスパチュラーを用いて気液界面とビーカーの縁に目視で観察される巨視的な粒をビーカー内部に落とし込み、均一な分散液となるようにした。続いて、これを目開き63μmのメッシュで濾過し、得られたろ液をトナー分散液とした。
粒径2.00μm以上、3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)は、マルチサイザー(アパーチャー径100μm)を用い、分散媒には同社製アイソトンIIを用い、上述の「トナー分散液」又は「スラリー液」を、分散質濃度0.03質量%になるように希釈して、マルチサイザーIII解析ソフトで、KD値は118.5として測定した。
下限の粒径2.00μmは本測定装置マルチサイザーの検出限界であり、上限の粒径3.56μmは本測定装置マルチサイザーにおけるチャンネルの規定値である。本発明では、この粒径2.00μm以上、3.56μm以下の領域を微粉領域と認定した。
測定粒子径範囲は、2.00から64.00μmまでとし、この範囲を対数目盛で等間隔となるように256分割に離散化し、それらの個数基準での統計値をもとに、2.00から3.56μmまでの粒径成分の割合を個数基準で算出して「Dns」とした。
<平均円形度の測定方法と定義>
本発明における「平均円形度」は、以下のように測定し、以下のように定義する。すなわち、トナー母粒子を分散媒(アイソトンII、ベックマンコールター社製)に、5720〜7140個/μLの範囲になるように分散させ、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社(旧東亜医用電子社)製、FPIA2100)を用いて、以下の装置条件にて測定を行い、その値を「平均円形度」と定義する。本発明においては、同様の測定を3回行い、3個の「平均円形度」の相加平均値を、「平均円形度」として採用する。
・モード :HPF
・HPF分析量 :0.35μL
・HPF検出個数:2000〜2500個
以下は、上記装置で測定され、上記装置内で自動的に計算されて表示されるものであるが、「円形度」は下記式で定義される。
[円形度]=[粒子投影面積と同じ面積の円の周長]/[粒子投影像の周長]
そして、HPF検出個数である2000〜2500個を測定し、この個々の粒子の円形度の算術平均(相加平均)が「平均円形度」として装置に表示される。
<電気伝導度の測定方法>
電気伝導度の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて、取扱説明書通り常法に従って行った。
<融点ピーク温度、融解ピーク半値幅、結晶化温度、結晶化ピーク半値幅の測定方法>
セイコーインスツルメンツ社製、型式:SSC5200を用い、同社の取り扱い説明書に記載された方法で、10℃から110℃まで、10℃/分の速度で昇温させた際の吸熱曲線より、融点ピーク温度、融解ピーク半値幅を測定し、続いて、110℃から10℃まで10℃/分の速度で降温させた際の発熱曲線より、結晶化温度、結晶化ピーク半値幅を測定した。
<固形分濃度の測定方法>
ケット科学研究所社製 固形分濃度測定機INFRARED MOISTURE DETERMINATION BALANCE 型式FD−100を用い、固形分を含んだ試料1.00gを天秤上に精秤し、ヒーター温度300℃、加熱時間90分の条件で固形分濃度を測定した。
<帯電量分布(帯電量の標準偏差)の測定方法>
トナー0.8g/キャリア(パウダーテック社製フェライトキャリア:F150)19.2gをガラス製のサンプル瓶に入れ、レシプロシェーカーNR−1(タイテック株式会社製)を用い250rpmで30分間撹拌した。撹拌したトナー/キャリア混合物をE−Spart帯電量分布測定装置(ホソカワミクロン社製)を用いて帯電量分布測定を行った。得られたデータから個々の粒子についてその帯電量を粒子直径で除した値(−16.197C/μm〜+16.197C/μmの範囲を0.2551C/μm毎に128分割に離散化)を求め、3000個の粒子測定結果の標準偏差を求めて、帯電量の標準偏差とした。
<実写評価の方法>
[実写評価1]
トナー80gを、感光体として、後述する電子写真感光体E1を用い、非磁性一成分現像方式、ローラー帯電、ゴム現像ローラー接触現像方式、現像速度164mm/秒、ベルト転写方式、ブレードドラムクリーニング方式で、5%印字率での保証寿命枚数30000枚の、600dpiマシンのカートリッジに装填し、1%印字率のチャートを50枚連続印字した。
[実写評価2]
トナー200gを感光体として、後述する電子写真感光体E12を用い、非磁性一成分現像方式で、ローラー帯電、ゴム現像ローラー接触現像方式、現像速度100mm/秒、ベルト転写方式、ブレードドラムクリーニング方式で、5%印字率での保証寿命枚数8000枚の、600dpiマシンのカートリッジに装填し、5%印字率のチャートをトナー切れの表示が出るまで連続印字した。
<汚れ>
後述する電子写真感光体E1を用いた「実写評価1」で、50枚印字後の画像の汚れを目視観察し、下記の基準で判定した。
◎:全く汚れなし
○:微少に汚れあるが使用可能なレベル
△:部分的にうっすらと汚れている
×:部分的あるいは全体的にはっきり汚れが確認できる。
なお、表中で、「−」は未評価を意味する。
<残像(ゴースト)>
後述する電子写真感光体E12を用いた「実写評価2」で、ベタ画像を印字し、先端部分の画像濃度と、そこから現像ローラー2周分後に印字された部分の画像濃度をそれぞれX−rite 938(X−Rite社製)で測定し、2周分後の画像濃度の先端部分に対する比(%)を求めた。
◎:全く問題なし(98%以上)
○:微少に画像濃度差あるが使用可能なレベル(95%以上98%未満)
△:やや画像濃度に差あると認知できるレベル(85%以上95%未満)
×:画像濃度にはっきりと差があるレベル(85%未満)
<かすれ(ベタ追従性)>
後述する電子写真感光体E12を用いた「実写評価2」で、ベタ画像を印字し、先端部分の画像濃度と、後端部分の画像濃度をそれぞれX−rite 938(X−Rite社製)で測定し後端部の画像濃度の先端部に対する比(%)を求めた。
◎:全く問題なし(80%以上)
○:微少に後端が薄いが使用可能なレベル(70%以上80%未満)
×:後端がかなり薄いレベル(70%未満)
<クリーニング性>
後述する電子写真感光体E12を用いた「実写評価2」で、8000枚印字後の画像の汚れを目視観察し、ドラムクリーニング不良による画像の汚れがないかどうか確認した。
○:汚れなし
△:部分的にうっすらと汚れている
×:部分的あるいは全体的にはっきり汚れが確認できる。
トナー製造例1
<ワックス・長鎖重合性単量体分散液A1の調製>
パラフィンワックス(日本精鑞社製HNP−9、表面張力23.5mN/m、熱特性:融点ピーク温度82℃、融解熱量220J/g、融解ピーク半値幅8.2℃、結晶化温度66℃、結晶化ピーク半値幅13.0℃)27部(540g)、ステアリルアクリレート(東京化成社製)2.8部、20質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(第一工業製薬社製、ネオゲンS20A)(以下、「20%DBS水溶液」と略記する)1.9部、脱塩水68.3部を90℃に加熱して、ホモミキサー(特殊機化工業社製 マークII fモデル)を用い10分間攪拌した。
次いでこの分散液を90℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて25MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、ナノトラックで粒子径を測定し体積平均径(Mv)が250nmになるまで分散して、ワックス・長鎖重合性単量体分散液A1(エマルション固形分濃度=30.2質量%)を作製した。
<重合体一次粒子分散液A1の調製>
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(内容積21L、内径250mm、高さ420mm)に、上記ワックス・長鎖重合性単量体分散液A1 35.6部(712.12g)、脱塩水259部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。
その後、上記液の攪拌を続けたまま、そこへ下記の「重合性モノマー類等」と「乳化剤水溶液」との混合物を5時間かけて添加した。この混合物を滴下開始した時間を「重合開始」とし、下記の「開始剤水溶液」を重合開始30分後から4.5時間かけて添加し、更に重合開始5時間後から、下記の「追加開始剤水溶液」を2時間かけて添加し、更に攪拌を続けたまま内温90℃のまま1時間保持した。
[重合性モノマー類等]
スチレン 76.8部 (1535.0g)
アクリル酸ブチル 23.2部
アクリル酸 1.5部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.7部
トリクロロブロモメタン 1.0部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 67.1部
[開始剤水溶液]
8質量%過酸化水素水溶液 15.5部
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 15.5部
[追加開始剤水溶液]
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 14.2部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液A1を得た。ナノトラックを用いて測定した体積平均径(Mv)は280nmであり、固形分濃度は21.1質量%であった。
<重合体一次粒子分散液A2の調製>
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(内容積21L、内径250mm、高さ420mm)に、20質量%DBS水溶液1.0部、脱塩水312部を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温し、攪拌しながら8質量%過酸化水素水溶液3.2部、8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液3.2部を一括添加した。これらを一括添加した時から5分後の時点を「重合開始」とする。
下記の「重合性モノマー類等」と「乳化剤水溶液」との混合物を、重合開始から5時間かけて、また、下記の「開始剤水溶液」を重合開始から6時間かけて添加し、その後、更に攪拌しながら内温90℃のまま1時間保持した。
[重合性モノマー類等]
スチレン 92.5部 (1850.0g)
アクリル酸ブチル 7.5部
アクリル酸 0.5部
トリクロロブロモメタン 0.5部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.5部
脱塩水 66.0部
[開始剤水溶液]
8質量%過酸化水素水溶液 18.9部
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 18.9部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液A2を得た。ナノトラックを用いて測定した体積平均径(Mv)は290nmであり、固形分濃度は19.0質量%であった。
<着色剤分散液Aの調製>
攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積300Lの容器に、トルエン抽出液の紫外線吸光度が0.02であり、真密度が1.8g/cm3のファーネス法で製造されたカーボンブラック(三菱化学社製、三菱カーボンブラックMA100S)20部(40kg)、20%DBS水溶液1部、非イオン界面活性剤(花王社製、エマルゲン120)4部、電気伝導度が2μS/cmのイオン交換水75部を加えて予備分散して顔料プレミックス液を得た。ナノトラックで測定した顔料プレミックス後の分散液中カーボンブラックの体積平均径(Mv)は90μmであった。
上記顔料プレミックス液を原料スラリーとして湿式ビーズミルに供給し、ワンパス分散を行った。なお、ステータの内径はφ75mm、セパレータの径がφ60mm、セパレータとディスク間の間隔は15mmとし、分散用のメディアとして直径が100μmのジルコニアビーズ(真密度6.0g/cm3)を用いた。ステータの有効内容積は0.5Lであり、メデイアの充填容積は0.35Lとしたので、メディア充填率は70質量%である。ロータの回転速度を一定(ロータ先端の周速が11m/秒)として、供給口より前記顔料プレミックス液を無脈動定量ポンプにより供給速度50L/hrで連続的に供給し、排出口より連続的に排出する事により黒色の着色剤分散体Aを得た。着色剤分散体Aをナノトラックで測定した体積平均径(Mv)は150nmであり、固形分濃度は24.2質量%であった。
<トナー母粒子Aの製造>
下記の各成分を用いて、以下の凝集工程(コア材凝集工程・シェル被覆工程)・円形化工程・洗浄工程・乾燥工程を実施することによりトナー母粒子Aを製造した。
重合体一次粒子分散液A1 固形分として95部 (固形分として998.2g)
重合体一次粒子分散液A2 固形分として5部
着色剤分散液A 着色剤固形分として6部
20%DBS水溶液 コア材凝集工程では、固形分として0.2部
20%DBS水溶液 円形化工程では、固形分として6部
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液A1と20%DBS水溶液を仕込み、内温7℃で5分間均一に混合した。続いて内温7℃で、250rpmで攪拌を続けながら硫酸第一鉄の5質量%水溶液をFeSO4・7H2Oとして0.52部を5分かけて添加してから、着色剤分散液Aを5分かけて添加し、内温7℃で均一に混合し、更に同一の条件のまま、0.5質量%硫酸アルミニウム水溶液を8分かけて滴下した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後、回転数250rpmのまま内温を54.0℃に昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し5.32μmまで成長させた。
○シェル被覆工程
その後、内温54.0℃、回転数250rpmのまま、重合体一次粒子分散液A2を3分かけて添加してそのまま60分保持した。
○円形化工程
続いて、回転数を150rpm(攪拌羽根先端の周速1.56m/秒、凝集工程回転数に対して40%減の攪拌速度)に落としてから、20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加し、その後30分かけて81℃に昇温して、平均円形度が0.943になるまで、この条件で加熱及び攪拌を続けた。その後20分かけて30℃まで冷却し、スラリーを得た。
○洗浄工程
得られたスラリーを抜き出し、5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)のろ紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をした。ろ紙上に残ったケーキを、攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積10Lのステンレス容器に移し、電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水8kgを加え50rpmで攪拌する事により均一に分散させ、その後30分間攪拌したままとした。
その後、再度5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)の濾紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をし、再度ろ紙上に残った固形物を、攪拌機(プロペラ翼)を備え電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水8kgの入った内容積10Lの容器に移し、50rpmで攪拌する事により均一に分散させ30分間攪拌したままとした。この工程を5回繰り返したところ、ろ液の電気伝導度は2μS/cmとなった。
○乾燥工程
ここで得られた固形物をステンレス製バットに高さ20mmとなる様に敷き詰め、40℃に設定された送風乾燥機内で48時間乾燥することにより、トナー母粒子Aを得た。
<トナーAの製造>
○外添工程
得られたトナー母粒子A250gに、外添剤としてクラリアント社製H2000シリカ1.55gとテイカ社製SMT150IBチタニア微粉末0.62gを混ぜて、サンプルミル(協立理工社製)で、6000rpmで1分間混合し、150メッシュで篩別してトナーAを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーAのマルチサイザーを用いて測定した「体積中位径(Dv50)」は5.54μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は3.83%であり、平均円形度は0.943であった。
トナー製造例2
<トナー母粒子Bの製造>
「トナー母粒子Aの製造」の凝集工程(コア材凝集工程・シェル被覆工程)・円形化工程・洗浄工程・乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記の様に変更したこと以外は全てトナー製造例1の「トナー母粒子Aの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Bを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液A1と20%DBS水溶液を仕込み、内温7℃で5分間均一に混合した。続いて内温7℃に保持し、250rpmで攪拌を続けながら、第一硫酸鉄の5質量%水溶液をFeSO4・7H2Oとして0.52部を5分かけて添加し、その後、着色剤分散液Aを5分かけて添加し、内温7℃で均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5質量%硫酸アルミニウム水溶液を8分かけて滴下した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後、回転数250rpmのまま内温を55.0℃に昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し5.86μmまで成長させた。
○シェル被覆工程
その後、内温55.0℃、回転数250rpmのまま、重合体一次粒子分散液A2を3分かけて添加してそのまま60分保持した。
○円形化工程
続いて回転数を150rpm(攪拌羽根先端の周速1.56m/秒、凝集工程回転数に対して40%減の攪拌速度)に落としてから、20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加し、その後30分かけて84℃に昇温して、平均円形度が0.942になるまで加熱及び攪拌を続けた。その後20分かけて30℃まで冷却しスラリーを得た。
<トナーBの製造>
その後、外添剤としてH2000シリカの量を1.41gに変更し、SMT150IBチタニア微粉末の量を0.56gに変更した以外は、「トナーAの製造」と同じ外添工程の操作によりトナーBを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーBのマルチサイザーを用いて測定した体積中位径(Dv50)は5.97μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は2.53%であり、平均円形度は0.943であった。
トナー製造例3
<トナー母粒子Cの製造>
「トナー母粒子Aの製造」の凝集工程(コア材凝集工程・シェル被覆工程)・円形化工程・洗浄工程・乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記の様に変更したこと以外は全てトナー製造例1の「トナー母粒子Aの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Cを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液A1と20%DBS水溶液を仕込み、内温7℃で5分間均一に混合した。続いて内温7℃に保持し、250rpmで攪拌を続けながら第一硫酸鉄の5質量%水溶液をFeSO4・7H2Oとして0.52部を5分かけて添加してから、着色剤分散液Aを5分かけて添加し、内温7℃で均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5質量%硫酸アルミニウム水溶液を8分かけて滴下した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後、回転数250rpmのまま内温を57.0℃に昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.72μmまで成長させた。
○シェル被覆工程
その後、内温57.0℃、回転数250rpmのまま、重合体一次粒子分散液A2を3分かけて添加してそのまま60分保持した。
○円形化工程
続いて、回転数を150rpm(攪拌羽根先端の周速1.56m/秒、凝集工程回転数に対して40%減の攪拌速度)に落としてから、20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加し、その後30分かけて87℃に昇温して平均円形度が0.941になるまで加熱及び攪拌を続けた。その後20分かけて30℃まで冷却しスラリーを得た。
<トナーCの製造>
その後、外添剤としてH2000シリカの量を1.25gに変更し、SMT150IBチタニア微粉末の量を0.50gに変更した以外は、「トナーAの製造」と同じ外添工程の操作によりトナーCを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーCのマルチサイザーを用いて測定した体積中位径(Dv50)は6.75μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は1.83%であり、平均円形度は0.942であった。
トナー製造例4
<トナー母粒子Dの製造>
「トナー母粒子Aの製造」の凝集工程(コア材凝集工程・シェル被覆工程)・円形化工程・洗浄工程・乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記の様に変更したこと以外は全てトナー製造例1の「トナー母粒子Aの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Dを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液A1と20%DBS水溶液を仕込み、内温7℃で5分間均一に混合した。続いて内温21℃に保持し、250rpmで攪拌を続けながら第一硫酸鉄の5質量%水溶液をFeSO4・7H2Oとして0.52部を5分かけて添加してから、着色剤分散液Aを5分かけて添加し、内温7℃で均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5質量%硫酸アルミニウム水溶液を8分かけて滴下した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後、回転数250rpmのまま内温を54.0℃に昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し5.34μmまで成長させた。
○シェル被覆工程
その後、内温54.0℃、回転数250rpmのまま、重合体一次粒子分散液A2を3分かけて添加してそのまま60分保持した。
○円形化工程
続いて回転数を220rpm(攪拌羽根先端の周速2.28m/秒、凝集工程回転数に対して12%減の攪拌速度)に落としてから、20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加し、その後30分かけて81℃に昇温して、平均円形度が0.942になるまで加熱及び攪拌を続けた。その後、20分かけて30℃まで冷却しスラリーを得た。
<トナーDの製造>
その後、トナー製造例1における「トナーAの製造」と同じ外添工程の操作によりトナーDを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーDのマルチサイザーを用いて測定した体積中位径(Dv50)は5.48μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は4.51%であり、平均円形度は0.943であった。
トナー製造例5
<トナー母粒子Eの製造>
「トナー母粒子Aの製造」の凝集工程(コア材凝集工程・シェル被覆工程)・円形化工程・洗浄工程・乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記の様に変更したこと以外は全てトナー製造例1の「トナー母粒子Aの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Eを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液A1と20%DBS水溶液を仕込み、内温7℃で5分間均一に混合した。続いて内温21℃に保持し、250rpmで攪拌を続けながら第一硫酸鉄の5質量%水溶液をFeSO4・7H2Oとして0.52部を5分かけて添加してから、着色剤分散液Aを5分かけて添加し、内温7℃で均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5質量%硫酸アルミニウム水溶液を8分かけて滴下した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後、回転数250rpmのまま内温を55.0℃に昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し5.86μmまで成長させた。
○シェル被覆工程
その後、内温55.0℃、回転数250rpmのまま、重合体一次粒子分散液A2を3分かけて添加してそのまま60分保持した。
○円形化工程
続いて、回転数を220rpm(攪拌羽根先端の周速2.28m/秒、凝集工程回転数に対して12%減の攪拌速度)に落としてから、20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加し、その後30分かけて84℃に昇温して平均円形度が0.941になるまで加熱及び攪拌を続けた。その後20分かけて30℃まで冷却しスラリーを得た。
<トナーEの製造>
その後、外添剤としてH2000シリカの量を1.41gに変更し、SMT150IBチタニア微粉末の量を0.56gに変更した以外は、「トナーAの製造」と同じ外添工程の操作によりトナーEを得た。
○分析工程
ここで得られた現像用トナーEのマルチサイザーを用いて測定した体積中位径(Dv50)は5.93μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は3.62%であり、平均円形度は0.942であった。
トナー製造例6
<トナー母粒子Fの製造>
「トナー母粒子Aの製造」の凝集工程(コア材凝集工程・シェル被覆工程)・円形化工程・洗浄工程・乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記の様に変更したこと以外は全てトナー製造例1の「トナー母粒子Aの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Fを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液A1と20%DBS水溶液を仕込み、内温7℃で5分間均一に混合した。続いて内温21℃に保持し、250rpmで攪拌を続けながら第一硫酸鉄の5質量%水溶液をFeSO4・7H2Oとして0.52部を5分かけて添加してから、着色剤分散液Aを5分かけて添加し、内温7℃で均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5質量%硫酸アルミニウム水溶液を8分かけて滴下した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後、回転数250rpmのまま内温を57.0℃に昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.76μmまで成長させた。
○シェル被覆工程
その後、内温57.0℃、回転数250rpmのまま、重合体一次粒子分散液A2を3分かけて添加してそのまま60分保持した。
○円形化工程
続いて、回転数を220rpm(攪拌羽根先端の周速2.28m/秒、凝集工程回転数に対して12%減の攪拌速度)に落としてから、20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加し、その後30分かけて87℃に昇温して平均円形度が0.941になるまで加熱及び攪拌を続けた。その後20分かけて30℃まで冷却しスラリーを得た。
<トナーFの製造>
その後、外添剤としてH2000シリカの量を1.25gに変更し、SMT150IBチタニア微粉末の量を0.50gに変更した以外は、「トナーAの製造」と同じ外添工程の操作によりトナーFを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーFのマルチサイザーを用いて測定した体積中位径(Dv50)は6.77μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は2.48%であり、平均円形度は0.942であった。
トナー比較製造例1
<トナー母粒子Gの製造>
「トナー母粒子Aの製造」の凝集工程(コア材凝集工程・シェル被覆工程)・円形化工程・洗浄工程・乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記の様に変更したこと以外は全てトナー製造例1の「トナー母粒子Aの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Gを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液A1と20%DBS水溶液を仕込み、内温7℃で5分間均一に混合した。続いて内温21℃に保持し、250rpmで攪拌を続けながら第一硫酸鉄の5質量%水溶液をFeSO4・7H2Oとして0.52部を5分で一括添加してから、着色剤分散液Aを5分で一括添加し、内温7℃で均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5質量%硫酸アルミニウム水溶液を8秒で一括添加した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後、回転数250rpmのまま内温を57.0℃に昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.85μmまで成長させた。
○シェル被覆工程
その後、内温57.0℃、回転数250rpmのまま、重合体一次粒子分散液A2を3分で一括添加してそのまま60分保持した。
○円形化工程
続いて、回転数を250rpm(攪拌羽根先端の周速2.59m/秒、凝集工程回転数と同じ攪拌速度)のまま、20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加し、その後30分かけて87℃に昇温して平均円形度が0.942になるまで加熱及び攪拌を続けた。その後20分かけて30℃まで冷却し、スラリーを得た。
<トナーGの製造>
その後、外添剤としてH2000シリカの量を1.25gに変更し、SMT150IBチタニア微粉末の量を0.50gに変更した以外は、「トナーAの製造」と同じ外添工程の操作によりトナーGを得た。
○分析工程
ここで得られた現像用トナーGのマルチサイザーを用いて測定した体積中位径(Dv50)は6.79μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は4.52%であり、平均円形度は0.943であった。
トナーA〜Gを用いて、感光体として後述する感光体E1を用い、「汚れ」を、前記「実写評価1」の方法で評価した。結果を以下の表2に示す。
上記表2の結果から明らかなように、本発明における式(1)を満たすトナーA〜Fは、トナー製造例1〜6に示した製造方法によって実際に製造できた。そして、式(1)を満たすトナーA〜Fは全て、帯電量の標準偏差が充分小さく、帯電量分布がシャープであった。また、後述の感光体E1と組み合わせた実写評価1においても、全く汚れが見られないか、微少な汚れはあるが使用可能なレベルであった(実施例3及び実施例6)。
一方、式(1)を満たさないトナーGは、帯電量の標準偏差が大きく、帯電量分布がシャープでなかった。また、後述の感光体E1と組み合わせた実写評価1においても、全体的にはっきり汚れが確認できた(比較例1)。
トナー製造例7
<ワックス・長鎖重合性単量体分散液H1の調製>
パラフィンワックス(日本精鑞社製HNP−9、表面張力23.5mN/m、熱特性:融点ピーク温度82℃、融解ピーク半値幅8.2℃、結晶化温度66℃、結晶化ピーク半値幅13.0℃)27部(540g)、ステアリルアクリレート(東京化成社製)2.8部、20%DBS水溶液1.9部、脱塩水68.3部を90℃に加熱して、ホモミキサー(特殊機化工業社製 マークII fモデル)を用い10分間攪拌した。
次いでこの分散液を90℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて25MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、ナノトラックで粒子径を測定し体積平均径(Mv)が250nmになるまで分散して、ワックス・長鎖重合性単量体分散液H1(エマルション固形分濃度=30.2質量%)を作製した。
<重合体一次粒子分散液H1の調製>
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(内容積21L、内径250mm、高さ420mm)に、上記ワックス・長鎖重合性単量体分散液H1 35.6部(712.12g)、脱塩水259部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。
その後、上記液の攪拌を続けたまま、そこへ下記の「重合性モノマー類等」と「乳化剤水溶液」との混合物を5時間かけて添加した。この混合物を滴下開始した時間を「重合開始」とし、下記の「開始剤水溶液」を重合開始30分後から4.5時間かけて添加し、更に重合開始5時間後から、下記の「追加開始剤水溶液」を2時間かけて添加し、更に攪拌を続けたまま内温90℃のまま1時間保持した。
[重合性モノマー類等]
スチレン 76.8部 (1535.0g)
アクリル酸ブチル 23.2部
アクリル酸 1.5部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.7部
トリクロロブロモメタン 1.0部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 67.1部
[開始剤水溶液]
8質量%過酸化水素水溶液 15.5部
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 15.5部
[追加開始剤水溶液]
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 14.2部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液H1を得た。ナノトラックを用いて測定した体積平均径(Mv)は265nmであり、固形分濃度は22.3質量%であった。
<シリコーンワックス分散液H2の調製>
アルキル変性シリコーンワックス(熱特性:融点ピーク温度77℃、融解熱量97J/g、融解ピーク半値幅10.9℃、結晶化温度61℃、結晶化ピーク半値幅17.0℃)27部(540g)、20%DBS水溶液1.9部、脱塩水71.1部を3Lのステンレス容器に入れ90℃に加熱してホモミキサー(特殊機化工業社製 マークII fモデル)で10分間攪拌した。次いでこの分散液を99℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて45MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、ナノトラックで測定しながら体積平均径(Mv)が240nmになるまで分散してシリコーンワックス分散液H2(エマルション固形分濃度=27.3%)を作製した。
<重合体一次粒子分散液H2の調製>
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(内容積21L、内径250mm、高さ420mm)に、シリコーンワックス分散液H2を23.3部(466g)、20%DBS水溶液1.0部、脱塩水324部を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温し、攪拌しながら8%過酸化水素水溶液3.2部、8%L(+)−アスコルビン酸水溶液3.2部を一括添加した。これらを一括添加した時から5分後の時点を「重合開始」とする。
下記の「重合性モノマー類等」と「乳化剤水溶液」との混合物を、重合開始から5時間かけて、また、下記の「開始剤水溶液」を重合開始から6時間かけて添加し、その後、更に攪拌しながら内温90℃のまま1時間保持した。
[重合性モノマー類等]
スチレン 92.5部 (1850.0g)
アクリル酸ブチル 7.5部
アクリル酸 1.5部
トリクロロブロモメタン 0.6部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 67.0部
[開始剤水溶液]
8質量%過酸化水素水溶液 18.9部
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 18.9部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液H2を得た。ナノトラックを用いて測定した体積平均径(Mv)は290nmであり、固形分濃度は19.0質量%であった。
<着色剤分散液Hの調製>
攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積300Lの容器に、トルエン抽出液の紫外線吸光度が0.02であり、真密度が1.8g/cm3のファーネス法で製造されたカーボンブラック(三菱化学社製、三菱カーボンブラックMA100S)20部(40kg)、20%DBS水溶液1部、非イオン界面活性剤(花王社製、エマルゲン120)4部、電気伝導度が2μS/cmのイオン交換水75部を加えて予備分散して顔料プレミックス液を得た。ナノトラックで測定した顔料プレミックス後の分散液中カーボンブラックの体積平均径(Mv)は90μmであった。
上記顔料プレミックス液を原料スラリーとして湿式ビーズミルに供給し、ワンパス分散を行った。なお、ステータの内径はφ75mm、セパレータの径がφ60mm、セパレータとディスク間の間隔は15mmとし、分散用のメディアとして直径が100μmのジルコニアビーズ(真密度6.0g/cm3)を用いた。ステータの有効内容積は0.5Lであり、メデイアの充填容積は0.35Lとしたので、メディア充填率は70質量%である。ロータの回転速度を一定(ロータ先端の周速が11m/秒)として、供給口より前記顔料プレミックス液を無脈動定量ポンプにより供給速度50L/hrで連続的に供給し、排出口より連続的に排出する事により黒色の着色剤分散体Hを得た。着色剤分散体Hをナノトラックで測定した体積平均径(Mv)は150nmであり、固形分濃度は24.2質量%であった。
<トナー母粒子Hの製造>
下記の各成分を用いて、以下の凝集工程(コア材凝集工程・シェル被覆工程)・円形化工程・洗浄工程・乾燥工程を実施することによりトナー母粒子Hを製造した。
重合体一次粒子分散液H1 固形分として90部 (固形分として958.9g)
重合体一次粒子分散液H2 固形分として10部
着色剤分散液H 着色剤固形分として4.4部
20%DBS水溶液 コア材凝集工程では、固形分として0.15部
20%DBS水溶液 円形化工程では、固形分として6部
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液H1と20%DBS水溶液を仕込み、内温10℃で10分間均一に混合した。続いて内温10℃で、280rpmで攪拌させて、硫酸カリウムの5質量%水溶液を、K2SO4として0.12部を1分かけて連続添加してから、着色剤分散液Hを5分かけて連続添加し、内温10℃で均一に混合した。
その後、脱塩水100部を30分かけて連続添加してから、回転数280rpmのまま内温を48.0℃に67分かけて昇温(0.5℃/分)した。次いで、30分毎に1℃昇温した後(0.03℃/分)、54.0℃で保持し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し5.15μmまで成長させた。
この時の攪拌条件は以下の通りである。
(イ)攪拌容器の直径(所謂一般的な円筒形として): 208mm
(ロ)攪拌容器の高さ: 355mm
(ハ)攪拌羽根先端の周速:280rpm、すなわち2.78m/秒。
(ニ)攪拌羽根の形状:ダブルヘリカル翼(直径190mm、高さ270mm、幅20mm)
(ホ)攪拌容器内の羽根の位置: 容器の底から5mm上に配置。
○シェル被覆工程
その後、内温54.0℃、回転数280rpmのまま、重合体一次粒子分散液H2を6分かけて連続添加してそのまま60分保持した。このとき、粒子のDv50が5.34μmであった。
○円形化工程
続いて、20%DBS水溶液(固形分として6部)と水0.04部の混合水溶液を30分かけて添加しながら83℃に昇温し、その後、30分毎に1℃昇温させ88℃まで昇温して、3.5時間かけて平均円形度が0.939になるまで、この条件で加熱及び攪拌を続けた。その後、10分かけて20℃まで冷却し、スラリーを得た。このとき、粒子のDv50は5.33μm、平均円形度0.937であった。
○洗浄工程
得られたスラリーを抜き出し、5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)のろ紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をした。ろ紙上に残ったケーキを、攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積10Lのステンレス容器に移し、電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水8kgを加え50rpmで攪拌する事により均一に分散させ、その後30分間攪拌したままとした。
その後、再度5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)の濾紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をし、再度ろ紙上に残った固形物を、攪拌機(プロペラ翼)を備え電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水8kgの入った内容積10Lの容器に移し、50rpmで攪拌する事により均一に分散させ30分間攪拌したままとした。この工程を5回繰り返したところ、ろ液の電気伝導度は2μS/cmとなった。
○乾燥工程
ここで得られた固形物をステンレス製バットに高さ20mmとなる様に敷き詰め、40℃に設定された送風乾燥機内で48時間乾燥することにより、トナー母粒子Hを得た。
<トナーHの製造>
○外添工程
得られたトナー母粒子H500gに、外添剤としてクラリアント社製H30TDシリカ8.75gを混ぜて、9Lヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で、3000rpmで30分間混合した後、丸尾カルシウム株式会社製HAP−05NPリン酸カルシウム1.4gを混ぜて、3000rpmで10分間混合し、200メッシュで篩別してトナーHを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーHのマルチサイザーを用いて測定した「体積中位径(Dv50)」は5.26μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は5.87%であり、平均円形度は0.948であった。
トナー製造例8
<トナー母粒子Iの製造>
「トナー母粒子Hの製造」の凝集工程(コア材凝集工程・シェル被覆工程)・円形化工程・洗浄工程・乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記の様に変更したこと以外は全てトナー製造例7の「トナー母粒子Hの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Iを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液H1と20%DBS水溶液を仕込み、内温10℃で5分間均一に混合した。続いて内温10℃で、280rpmで攪拌させて硫酸カリウムの5質量%水溶液0.12部を1分かけて連続添加してから、着色剤分散液Hを5分かけて連続添加し、内温10℃で均一に混合した。その後、脱塩水100部を26分かけて連続添加してから、回転数280rpmのまま内温を52.0℃に64分かけて昇温し(0.5℃/分)した。次いで30分かけて1℃昇温した後(0.03℃/分)、110分間保持し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し5.93μmまで成長させた。この時の攪拌条件はトナー製造例7と同じとした。
○シェル被覆工程
その後、内温53.0℃、回転数280rpmのまま、重合体一次粒子分散液H2を6分かけて連続添加してそのまま90分保持した。このとき、粒子のDv50は6.23μmであった。
○円形化工程
続いて、20%DBS水溶液(固形分として6部)と水0.04部の混合水溶液を30分かけて添加しながら85℃に昇温し、その後、130分かけて92℃まで昇温して、平均円形度が0.943になるまで、この条件で加熱及び攪拌を続けた。その後、10分かけて20℃まで冷却し、スラリーを得た。このとき、粒子のDv50は6.17μm、平均円形度0.945であった。洗浄・乾燥・外添工程はトナー製造例7と同様の方法で行った。
○外添工程
得られたトナー母粒子I500gに、外添剤としてクラリアント社製H30TDシリカ7.5gを混ぜて、9Lヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で3000rpmで30分間混合した後、丸尾カルシウム株式会社製HAP−05NPリン酸カルシウム1.2gを混ぜて、3000rpmで10分間混合し、200メッシュで篩別してトナーIを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーIのマルチサイザーを用いて測定した「体積中位径(Dv50)」は6.16μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は2.79%であり、平均円形度は0.946であった。
トナー製造例9
<トナー母粒子Jの製造>
「トナー母粒子Hの製造」の凝集工程(コア材凝集工程・シェル被覆工程)・円形化工程・洗浄工程・乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記の様に変更したこと以外は全てトナー製造例7の「トナー母粒子Hの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Jを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液H1と20%DBS水溶液を仕込み、内温10℃で10分間均一に混合した。続いて内温10℃で、280rpmで攪拌させて硫酸カリウムの5質量%水溶液0.12部を1分かけて連続添加してから、着色剤分散液Hを5分かけて連続添加し、内温10℃で均一に混合した。その後、脱塩水0.5部の26分かけて連続添加してから、回転数280rpmのまま内温を52.0℃に64分かけて昇温(0.5℃/分)した。次いで、30分かけて1℃昇温した後(0.03℃/分)、130分間保持し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.60μmまで成長させた。この時の攪拌条件はトナー製造例7と同じとした。
○シェル被覆工程
その後、内温53.0℃、回転数280rpmのまま、重合体一次粒子分散液H2を6分かけて連続添加してそのまま60分保持した。このとき、粒子のDv50が6.93μmであった。
○円形化工程
続いて、20%DBS水溶液(固形分として6部)と水0.04部の混合水溶液を30分かけて添加しながら90℃に昇温し、その後、60分かけて97℃まで昇温して、平均円形度が0.945になるまで、この条件で加熱及び攪拌を続けた。その後、10分かけて20℃まで冷却し、スラリーを得た。このとき、粒子のDv50は6.93μm、平均円形度0.945であった。洗浄・乾燥工程はトナー製造例7と同様の方法で行った。
○外添工程
得られたトナー母粒子J500gに、外添剤としてクラリアント社製H30TDシリカ6.25gを混ぜて、9Lヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で、3000rpmで30分間混合した後、丸尾カルシウム株式会社製HAP−05NPリン酸カルシウム1.0gを混ぜて、3000rpmで10分間混合し、200メッシュで篩別してトナーJを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーJのマルチサイザーを用いて測定した「体積中位径(Dv50)」は6.97μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は1.85%であり、平均円形度は0.946であった。
トナー比較製造例2
<トナー母粒子Oの製造>
「トナー母粒子Hの製造」の凝集工程(コア材凝集工程・シェル被覆工程)・円形化工程・洗浄工程・乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記の様に変更したこと以外は全てトナー製造例7の「トナー母粒子Hの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Oを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液H1と20%DBS水溶液を仕込み、内温10℃で10分間均一に混合した。続いて内温10℃で、280rpmで攪拌させて硫酸カリウムの5質量%水溶液0.12部を1分かけて連続添加してから、着色剤分散液Hを5分かけて連続添加し、内温10℃で均一に混合した。その後、脱塩水100部を30分かけて連続添加してから、回転数280rpmのまま内温を34.0℃に40分かけて昇温した(0.6℃/分)。次いで20分間保持し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し3.81μmまで成長させた。
○シェル被覆工程
その後、内温34.0℃、回転数280rpmのまま、重合体一次粒子分散液H2を6分かけて添加してそのまま90分保持した。
○円形化工程
続いて、回転数を280rpm(凝集工程回転数と同じ攪拌速度)のまま、20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加し、その後30分かけて76℃に昇温して平均円形度が0.962になるまで加熱及び攪拌を続けた。その後10分かけて20℃まで冷却し、スラリーを得た。
<トナーKの製造>
その後、トナー製造例7のトナー母粒子Hを100部に、上記トナー母粒子Oを1部混合して、このトナー母粒子混合物K500gに、外添剤としてクラリアント社製H30TDシリカ8.75gを混ぜて、9Lヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で、3000rpmで30分間混合した後、丸尾カルシウム株式会社製HAP−05NPリン酸カルシウム1.4gを混ぜて、3000rpmで10分間混合し、200メッシュで篩別してトナーKを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーKのマルチサイザーを用いて測定した「体積中位径(Dv50)」は5.31μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は7.22%であり、平均円形度は0.949であった。
トナー比較製造例3
<トナー母粒子Lの製造>
「トナー母粒子Hの製造」の凝集工程(コア材凝集工程・シェル被覆工程)・円形化工程・洗浄工程・乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記の様に変更したこと以外は全てトナー製造例7の「トナー母粒子Hの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Lを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液H1と20%DBS水溶液を仕込み、内温10℃で10分間均一に混合した。続いて内温10℃で、310rpmで攪拌させて、硫酸カリウムの5質量%水溶液をK2SO4として0.12部を1分かけて連続添加してから、着色剤分散液Hを5分かけて連続添加し、内温10℃で均一に混合した。
その後、脱塩水100部を30分かけて連続添加してから、回転数310rpmのまま内温を48.0℃に67分かけて昇温(0.5℃/分)した。次いで30分毎に1℃昇温した後(0.03℃/分)、53.0℃で保持し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し5.08μmまで成長させた。
この時の攪拌条件は、以下の(ハ)以外はトナー製造例7と同様にして行った。
(ハ)攪拌羽根先端の周速:310rpm、すなわち3.08m/秒。
○シェル被覆工程
その後、内温54.0℃、回転数310rpmのまま、重合体一次粒子分散液H2を6分かけて連続添加してそのまま60分保持した。このとき、粒子のDv50が5.19μmであった。
○円形化工程
続いて、20%DBS水溶液(固形分として6部)と水0.04部の混合水溶液を30分かけて添加しながら83℃に昇温し、その後、30分毎に1℃昇温させ90℃まで昇温して、2.5時間かけて平均円形度が0.939になるまで、この条件で加熱及び攪拌を続けた。その後、10分かけて20℃まで冷却し、スラリーを得た。このとき、粒子のDv50は5.18μm、平均円形度0.940であった。洗浄・乾燥工程はトナー製造例7と同様の方法で行った。
○外添工程
得られたトナー母粒子L500gに、外添剤としてクラリアント社製H30TDシリカ8.75gを混ぜて、9Lヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で、3000rpmで30分間混合した後、丸尾カルシウム株式会社製HAP−05NPリン酸カルシウム1.4gを混ぜて、3000rpmで10分間混合し、200メッシュで篩別してトナーLを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーLのマルチサイザーを用いて測定した「体積中位径(Dv50)」は5.18μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は9.94%であり、平均円形度は0.940であった。
トナー比較製造例4
<トナー母粒子Mの製造>
「トナー母粒子Hの製造」の凝集工程(コア材凝集工程・シェル被覆工程)・円形化工程・洗浄工程・乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記の様に変更したこと以外は全てトナー製造例7の「トナー母粒子Hの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Mを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液H1と20%DBS水溶液を仕込み、内温10℃で10分間均一に混合した。続いて内温10℃で、310rpmで攪拌させて硫酸カリウムの5質量%水溶液をK2SO4として0.12部を1分かけて連続添加してから、着色剤分散液Hを5分かけて連続添加し、内温10℃で均一に混合した。
その後、脱塩水100部を30分かけて連続添加してから、回転数310rpmのまま内温を52.0℃に56分かけて昇温(0.8℃/分)した。次いで、30分毎に1℃昇温した後(0.03℃/分)、54.0℃で保持し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し5.96μmまで成長させた。
この時の攪拌条件は、以下の(ハ)以外はトナー製造例7と同様にして行った。
(ハ)攪拌羽根先端の周速:310rpm、すなわち3.08m/秒。
○シェル被覆工程
その後、内温54.0℃、回転数310rpmのまま、重合体一次粒子分散液H2を6分かけて連続添加してそのまま60分保持した。このとき、粒子のDv50が5.94μmであった。
○円形化工程
続いて、20%DBS水溶液(固形分として6部)と水0.04部の混合水溶液を30分かけて添加しながら88℃に昇温し、その後、30分毎に1℃昇温させ90℃まで昇温して、2時間かけて平均円形度が0.940になるまで、この条件で加熱及び攪拌を続けた。その後、10分かけて20℃まで冷却し、スラリーを得た。このとき、粒子のDv50は5.88μm、平均円形度0.943であった。洗浄・乾燥工程はトナー製造例7と同様の方法で行った。
○外添工程
得られたトナー母粒子M500gに、外添剤としてクラリアント社製H30TDシリカ7.5gを混ぜて、9Lヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で、3000rpmで30分間混合した後、丸尾カルシウム株式会社製HAP−05NPリン酸カルシウム1.2gを混ぜて、3000rpmで10分間混合し、200メッシュで篩別してトナーMを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーMのマルチサイザーを用いて測定した「体積中位径(Dv50)」は5.92μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は5.22%であり、平均円形度は0.945であった。
トナー比較製造例5
トナー製造例9のトナー母粒子J100部に、トナー母粒子Oを3部混合して、このトナー母粒子混合物500gに、外添剤としてクラリアント社製H30TDシリカ6.25gを混ぜて、9Lヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で、3000rpmで30分間混合した後、丸尾カルシウム株式会社製HAP−05NPリン酸カルシウム1.0gを混ぜて、3000rpmで10分間混合し、200メッシュで篩別してトナーNを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーNのマルチサイザーを用いて測定した「体積中位径(Dv50)」は6.88μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は9.08%であり、平均円形度は0.952であった。
トナーH〜Nを、後述の感光体E12を用いた前記実写評価2で実写評価を行なった。結果を以下の表3に示す。
実施例7〜9は何れも、残像(ゴースト)、カスレ(ベタ追従性)及びクリーニング性が全て良好であった。一方、比較例2〜5は何れも、残像(ゴースト)、カスレ(ベタ追従性)及びクリーニング性の全てに優れたものはなかった。トナーH、I、Jは、後述の感光体E12と組み合わせて使用すると優れた実写性能を有するが、トナーK、L、M、Nは、後述の感光体E12と組み合わせて使用しても実写性能に劣っていることが分かった。
図3はトナー比較製造例2(トナーK)、図4はトナー製造例7(トナーH)のトナーの走査型電子顕微鏡写真(SEM写真)である。両者を比較すると、図3(トナー比較製造例2)は、図4(トナー製造例7)と比べて、3.56μm以下の微粉が多く存在することが分かった。
図5は、トナー比較製造例2のトナー(トナーK)の実写評価後、クリーニングブレード上のトナーの付着状況を表わすSEM写真である。このような微粉が多いトナーを長時間印字すると、図5に示すように、画像形成装置内のクリーニングブレード上に付着力が高い3.56μm以下の微粉が積極的に堆積して、嵩密度の高い堤防を形成してトナーの搬送を阻害していることが分かった。図5中の楕円で囲まれた部分が、3.56μm以下の微粉が堆積した上記堤防である。
<感光体製造例>
感光体製造例1
[下引き層用塗布液]
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業株式会社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3質量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、ヘンシェルミキサーにて混合して得られた表面処理酸化チタン50部と、メタノール120部を混合してなる原料スラリー1kgを、直径約100μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製 YTZ)を分散メディアとして、ミル容積約0.15Lの寿工業株式会社製ウルトラアペックスミル(UAM−015型)を用い、ロータ周速10m/秒、液流量10kg/時間の液循環状態で1時間分散処理し、酸化チタン分散液T1を作製した。
前記酸化チタン分散液と、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、及びε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]
/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]
/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]
/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]
/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]
の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミド
のペレットとを加熱しながら撹拌、混合して、ポリアミドペレットを溶解させた後、出力1200Wの超音波発信器による超音波分散処理を1時間行い、更に、孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルター(アドバンテック製 マイテックス LC)により濾過し、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比が3/1であり、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒の重量比が7/1/2であって、含有する固形分の濃度が18.0質量%の下引き層形成用分散液A1を得た。
この下引き層形成用分散液A1を、陽極酸化されていないアルミニウムシリンダー(外径30mm、長さ351mm、厚さ1.0mm:表面粗さRa=0.02μm)に浸漬塗布し、加熱乾燥して、乾燥後の膜厚が1.5μmとなるように下引き層を設けた。
次に、電荷発生物質として、D型オキシチタニウムフタロシアニン(塩素量:元素分析値0.1%以下)20部と1、2−ジメトキシエタン280部を混合し、サンドグラインドミルで2時間粉砕して微粒化分散処理を行なった。続いてこの微細化処理液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)10部を1,2−ジメトキシエタン253部を、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンを85部の混合液に溶解させて得られたバインダー樹脂液、及び230部の1,2−ジメトキシエタンを混合して分散液(電荷発生材)を調製した。
この分散液(電荷発生材)に、下引き層を設けた前記アルミニウムシリンダーを浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が0.3μm(0.3g/m2)となるように電荷発生層を作製した。
次に、電荷輸送物質として下記化合物CT−1(イオン化ポテンシャル 5.24eV)を60部と、電子受容性化合物AC−1(LUMOのエネルギーレベルの値=−1.52eV)を0.5部と、バインダー樹脂として下記構造を繰り返し単位として持つポリカーボネート(B−1)(粘度平均分子量約30,000、m:n=1:1、特願2002−3828の実施例5に記載の手法に従って重合)100部、
下記構造を有する酸化防止剤8部、
及び、レベリング剤としてシリコーンオイル(商品名 KF96 信越化学工業(株))0.05部を、テトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640部に溶解させた電荷輸送層用塗布液を、上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が18μmとなるように浸漬塗布し、積層型感光層を有する感光体ドラムE1を得た。得られたドラムの表面性(表面自由エネルギー)を、前述の方法により求めた。結果を表4に記す。
感光体製造例2
感光体製造例1において、CT−1を使用する代わりに、下記化合物CT−2(イオン化ポテンシャル 5.19eV)35部を使用する以外は、感光体製造例1と同様にして感光体E2を作成した。
感光体製造例3
感光体製造例2において、CT−2を35部使用するかわりに、55部使用し、バインダー樹脂として、B−1のかわりに、下記構造を繰り返し単位として持つポリアリレート(B−2)(粘度平均分子量約40,000)を使用する以外は、感光体製造例2と同様にして感光体E3を作成した。
感光体製造例4
感光体製造例1において、CT−1を使用する代わりに、下記化合物CT−3(イオン化ポテンシャル 5.37eV)を40部、下記化合物CT−4(イオン化ポテンシャル 5.09eV)を10部使用し、バインダー樹脂として、B−1のかわりに、下記構造を繰り返し単位として持つポリカーボネート(B−3)(粘度平均分子量約40,000、特願2002−3828実施例5に記載の手法に従って重合)100部を使用した以外は、感光体製造例1と同様にして感光体E4を作成した。
感光体製造例5
感光体製造例1において、大日本インキ製、メガファック(F−482:パーフルオロアルキル基含有)0.03部を、感光体製造例1で用いた電荷輸送層用塗布液に添加する以外は、感光体製造例1と同様にして感光体E5を作成した。
感光体製造例6
感光体製造例2において、大日本インキ製、メガファック(F−482:パーフルオロアルキル基含有)0.3部を、感光体製造例2で用いた電荷輸送層用塗布液に添加する以外は、感光体製造例2と同様にして感光体E6を作成した。
感光体製造例7
メチルトリメトキシシラン 180g、2−プロパノール、3%酢酸水溶液 30gを室温下、24時間攪拌し、シラン化合物のオリゴマー溶液を作成した。この溶液に、N,N−ビス(4−ヒドロキシメチル−フェニル)−p−トルイジン60g、下記構造を持つヒンダードフェノール 1g、アルミニウムトリスアセチルアセトナート3gを加え、2時間攪拌し、ガラスフィルターにてろ過して、保護層用塗布液を作成した。この液を感光体E2の上にスプレー塗布し、膜厚1μmの層を形成した後、加熱乾燥して感光体E7を作成した。
感光体製造例8
感光体製造例1において、CT−1を使用する代わりに、下記化合物CT−5(イオン化ポテンシャル 5.19eV)を40部使用し、AC−1の代わりにAC−2(LUMOのエネルギーレベルの値=−1.36eV)を使用し、B−1を使用する代わりに、B−4(粘度平均分子量約50,000、m:n=9:1)を使用する以外は、感光体製造例1と同様にして感光体E8を作成した。
感光体製造例9
感光体製造例1において、CT−1を使用する代わりに、下記化合物CT−6(イオン化ポテンシャル 5.27eV)を使用し、AC−1の代わりにAC−3(LUMOのエネルギーレベルの値=−2.41eV)を使用する以外は、感光体製造例1と同様にして感光体E9を作成した。
感光体製造例10
感光体製造例1において、CT−1を使用する代わりに、下記化合物CT−7を45部使用し、AC−1の代わりにAC−3(LUMOのエネルギーレベルの値=−1.80eV)を使用し、B−1を使用する代わりにB−4を80部、B−5(テレフタル酸、イソフタル酸成分が1:1)を20部使用する以外は、感光体製造例1と同様にして感光体E10を作成した。
感光体製造例11
感光体製造例1において、CT−1を使用する代わりに、下記化合物CT−8を40部、CT−9(IP=5.18eV)を20部使用し、AC−1の代わりにAC−4(LUMOのエネルギーレベルの値=−2.06eV)を0.5部使用し、B−1を使用する代わりにB−4を50部、B−6(Mv=40000)を50部使用する以外は、感光体製造例1と同様にして感光体E11を作成した。
感光体比較製造例1
感光体製造例1において、ポリマーP1を使用するかわりに、東洋紡績製ポリエステル樹脂バイロン245(登録商標)を使用する以外は、感光体製造例1と同様にして感光体P1を作成した。
感光体E1〜E7及びP1の表面自由エネルギーを以下の表4に示す。
[実写評価3]
前記トナー製造例及びトナー比較製造例で製造したトナー、並びに、上記感光体製造例及び感光体比較製造例で製造した感光体を、A3印刷対応である市販のタンデム型LEDカラープリンターMICROLINE Pro 9800PS−E((株)沖データ社製)用のブラックドラムカートリッジ、及び、ブラックトナーカートリッジにそれぞれ搭載し、該カートリッジを上記プリンターに装着した。
MICROLINE Pro 9800PS−Eの仕様:
4連タンデム カラー36ppm、モノクロ40ppm
600−1200dpi
接触ローラー帯電(直流電圧印加)
LED露光
除電光あり
<画像評価>
この画像形成装置を用いた実写評価3で、グラデーション画像(日本画像学会テストチャート)を1000枚プリントアウトした後に、白地画像及びグラデーション画像(日本画像学会テストチャート)をプリントアウトし、白地画像のカブリ度、及び、グラデーション画像でのドット抜けを評価した。この結果を以下の表5に示す。
[[カブリ度の評価方法]]
カブリ度は、標準サンプルの白度が94.4となるように白度計を調節し、この白度計を用いて印刷前の紙の白度を測定し、その同じ紙に対し、全面白色となる信号を上述のレーザープリンタに入力することにより印刷を行い、その後この紙の白度を再度測定し、印刷前と印刷後の白度の差を測定することにより求めた。この値が大きいということは、印刷後の紙は、微小黒点が多く黒ずんでいる、つまり画質が悪いということになる。
[[対応濃度(ドット抜け)の評価方法]]
ドット抜けについては、グラデーション画像において、どの濃度規格までがドット抜けすることなく印字されたかで評価し、ドット抜けすることなく印字された最も低い濃度規格を「対応濃度」とする。「対応濃度」の値が小さいほど、より薄い部分まで描画できており良好だということになる。
結果を下記の表5に示す。
実施例19は参考例2と読み替える。
[実写評価4]
前記トナー製造例1で製造したトナーA、トナー比較製造例1で製造したトナーG、並びに、感光体E1を、A3印刷対応である市販のタンデム型LEDカラープリンターMICROLINE Pro 9800PS−E((株)沖データ社製)用のブラックドラムカートリッジ、及び、ブラックトナーカートリッジにそれぞれ搭載し、該カートリッジを上記プリンターに装着した。そして、この装置のクリーニングブレードを取り除いた後、実写評価3と同様に画像評価を行った。
実写評価4の結果を以下の表6に示す。トナーAを使用した場合は、実写評価3と大きな変化は現れなかったが、トナーGを使用した場合は、大きな画像劣化が認められた。
[実写評価5]
前記トナー製造例1で得られたトナーAを、非磁性一成分(感光体E1使用)でゴム現像ローラー接触現像方式、現像速度164mm/s、ベルト転写方式で、5%印字率での保証寿命枚数30000枚の600dpiマシンのカートリッジに装填し、1%印字率のチャートを50枚連続印字して画像の汚れを目視観察したところ、肉眼でははっきりした汚れは認められなかった。
上記の結果から明らかなように、式(1)を満たすトナーA〜Fは全て、帯電量の標準偏差が充分小さく、帯電量分布がシャープであった。また、中間層を有する電子写真感光体を用いた実写評価においても、全く汚れが見られないか、微少な汚れはあるが使用可能なレベルであった。
一方、式(1)を満たさないトナーGを用いた画像形成装置は帯電量の標準偏差が大きく、帯電量分布がシャープでなかった。また、実写評価においても、本発明の画像形成装置に用いられる電子写真感光体を使用することによる相乗効果を確認できた。
種々のマシンを使用した種々の実写条件による実写評価1ないし実写評価5において、本発明における特定の粒径分布を有するトナーと、特定の感光層を有する感光体の組み合わせでは何れもその相乗効果を発揮して良好な実写特性を示した。一方、トナー又は感光体の何れかが本発明の要件を満たさない組み合わせは良好な実写特性を示さなかった。