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JP5272349B2 - 電子放出源用ペースト及び電子放出素子 - Google Patents

電子放出源用ペースト及び電子放出素子 Download PDF

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JP5272349B2
JP5272349B2 JP2007214420A JP2007214420A JP5272349B2 JP 5272349 B2 JP5272349 B2 JP 5272349B2 JP 2007214420 A JP2007214420 A JP 2007214420A JP 2007214420 A JP2007214420 A JP 2007214420A JP 5272349 B2 JP5272349 B2 JP 5272349B2
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Description

本発明は、電子放出源用ペーストおよびそれを用いた電子放出素子に関する。
カーボンナノチューブ(以下、CNTという)をはじめとした先鋭な先端形状と高アスペクト比を持つカーボンナノ材料は電界放出に適しているため、電界放出型ディスプレイ(FED)や電界放出を用いた液晶用バックライト等の電子放出源として多くの開発がなされている。CNTを用いた電子放出源は、CNTをバインダーや溶媒等の有機成分と混合してペースト化したものをカソード電極上に印刷、焼成することによって作製することができる。
CNTが効率よく電子放出するためには、CNTとカソード電極との良好な電気的接触が重要である。しかし、CNTの不純物や有機成分の焼成残分であるアモルファスカーボンや、カソード電極とCNTの接着性付与のために添加されるガラス粉末といった絶縁性成分の存在により、良好な電気的接触が妨げられることがあった。
そこで、銀粒子を混合することによって導電性を付与し、電気的な接触を保とうとする技術が公開されている(特許文献1参照)。また、CNTをバンドル化させず、均一に分散させるという目的ではあるが、略100nm以下の線径を有するCNTなどの針状物質に、前記CNTなどの針状物質の線径の略10倍以下の粒径を有する金属微粒子または金属酸化物微粒子とを少なくとも含む電子源用ペーストに関する技術が開示されている(特許文献2)。
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、銀粒子の粒径によってはCNTのカソード電極との電気的な接触を良好に保つことができないことがあった。また、特許文献2に開示された技術でも、金属微粒子または導電性を有する金属酸化物の粒径が小さいため、良好な電気的接触を得るには至らなかった。
特開2004−504690号公報(第21段落) 特開2005−222847号公報(請求項1、2)
本発明は上記課題に着目し、最適な範囲の粒径を持つ導電性粒子を含むことによって、CNTとカソード電極との良好な電気的接触を保つことができる電子放出源用ペーストを提供することを目的とする。
すなわち、本発明は直径が1nm以上7nm以下であるカーボンナノチューブと、平均粒径が0.1〜1μmの導電性粒子を含み、前記導電性粒子が酸化物表面の一部または全部に導電性材料がコーティングされた粒子である電子放出源用ペーストである。
本発明によれば、最適な範囲の粒径を持つ導電性粒子を含むことによって、CNTとカソード電極との良好な電気的接触を保つことができる電子放出源用ペーストを提供することができる。
本発明について、以下に詳細に説明する。CNTは物理的・化学的耐久性に優れているだけでなく、電界放出に適した曲率の小さな先端形状と大きなアスペクト比を持っているため、電子放出材料として好ましく用いられる。CNTの他に、カーボンナノファイバー、カーボンナノウォール、カーボンナノホーン、カーボンナノコイルも用いてもよい。CNTの直径が大きくなると、電子放出部である先端の曲率も大きくなるため電子放出に必要な印加電圧が高くなるので、CNTの直径が1nm以上10nm未満のものを含むことが重要である。10nmよりも小さいものを含むことで電子放出に必要な電圧を下げることができる。しかし、1nmより小さいと電子放出しやすくなるが劣化しやすい。より好ましくは、CNTの直径が1nm以上〜7nm以下である。7nm以下にすることによって、より電子放出に必要な電圧を下げることができる。CNTの直径は透過型電子顕微鏡により測定することができる。
ここで、良好な電気的接触とは、電子放出源の上表面にあるCNTとカソード電極間の抵抗が10Ω以下のことをさす。単層CNTの比抵抗は10−2〜10−4Ωcm(J.-P. Issi and J.-C. Charlier, Electrical Transport Properties in Carbon Nanotubes In The Science and Technology of Carbon Nanotubes, ed. K. Tanaka, T. Yamabe, and K.Fukui, Elsevier, UK, 1999)といわれているので、直径1nmのCNTの長さが1μmとしたとき、CNTの抵抗は10〜10Ωとなる。CNTの長さがより長いものも含まれること、アモルファスカーボンなどの絶縁性不純物の影響があること、異なるCNT同士の接点やCNTと電極との接点における接触抵抗があることなどから、前述のCNT1本の抵抗10Ωの100倍以下である10Ωであれば良好な電気的接触ということができる。より好ましくは10Ω以下である。
電子放出源用ペースト全体に対するCNTの含有量は0.1〜20重量%が好ましい。また0.1〜10重量%であることがより好ましく、0.5〜5重量%であることがさらに好ましい。CNTの含有量が前記範囲内にあると、電子放出源用ペースト中でCNTの分散性、ペーストの基板への印刷特性と均一なパターン形成性、CNTエミッタからの電子放出特性がより良好となることから特に好ましい。
本発明では導電性粒子の平均粒径が0.1〜1μmのものを用いる。導電性粒子の平均粒径が0.1μmよりも小さいと、導電性粒子の接点の数が多くなり、逆に抵抗が増加する。接点にはバインダーなどの有機成分の焼成残分などのアモルファスカーボンが堆積することが多いため、接点の数が多くなると導電性粒子間の抵抗が接点の数だけ加算され、直列抵抗としては大きくなるためであると推定される。また、1μmより大きいと表面の凹凸が大きくなり、均一な電子放出を得ることが難しくなる。より好ましくは、導電性粒子の平均粒径が0.1〜0.6μmである。0.6μm以下では、さらに表面凹凸を小さくすることができる。
CNTとカソード電極との接触抵抗は、走査型拡がり顕微鏡を用いて測定することができる。Co−Crコートシリコンカンチレバーをエミッタ表面に接触させ、カソード電極にDCバイアスを印加することによって抵抗値を測定する。測定には市販の走査型拡がり抵抗顕微鏡(例えばVeeco社Digital Instruments製NanoScopeIIIaAFM Dimension3100ステージシステムなど)が用いられる。
また、吸着ガスにNを、キャリアガスにN/He=30/70を用いる流動法BET一点法比表面積測定装置(ユアサアイオニクス(株)製、MONOSORB)で導電性粒子の平均粒径を測定することができる。導電性粒子の平均粒径とは、流動法BET一点法により得られる比表面積(m/g)と密度(g/cm)を用いて次式から得られる値をさす。
平均粒径=6/(密度×比表面積)。
導電性粒子は、導電性のあるものであれば特に限定されないが、導電性酸化物を含む粒子、あるいは酸化物表面の一部または全部に導電性材料がコーティングされた粒子であることが好ましい。金属は触媒活性が高く、焼成や電子放出により高温になったときにCNTを劣化させることがあるためである。導電性酸化物としては、酸化インジウム・スズ(ITO)、酸化スズ、酸化亜鉛などが好ましい。また、酸化チタン、酸化ケイ素などの酸化物表面の一部または全部にITO、酸化スズ、酸化亜鉛、金、白金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、鉄、コバルトなどがコーティングされたものも好ましい。この場合も、導電性材料のコーティング材料としては、ITO、酸化スズ、酸化亜鉛などの導電性酸化物が好ましい。
電子放出源用ペースト中における導電性粒子の添加量は、CNT1重量部に対して導電性粒子0.1〜100重量部であることが好ましく、0.5〜50重量部であることがさらに好ましい。導電性粒子の添加量が前記範囲内であると、CNTとカソード電極の電気的接触がより良好となることから特に好ましい。
本発明の電子放出源用ペーストは、さらにガラス粉末を含むことが好ましい。ガラス粉末が焼成時に焼結してマトリックスをつくり、CNTを基板に接着させることができる。
CNTは焼成時の劣化を防ぐ目的から500℃以下の温度で焼成されることが多いため、焼結してマトリックスを形成するには500℃以下に軟化点を持つ低軟化点ガラスを用いることが好ましい。しかし、代表的な低軟化点ガラスである鉛系ガラスは、環境負荷の観点から好ましくない。従って、環境負荷の少ないビスマス系ガラスを用いることが好ましい。また、同様の理由でアルカリ系ガラスを用いることも好ましい。ここでいうガラスの軟化点は示差熱分析(DTA)法を用いてガラス試料100mgを20℃/分で空気中で加熱し、横軸に温度、縦軸に熱量をプロットして得られるDTA曲線より得られる。
ここでガラス粒子の平均粒径は累積50%粒径(D50)のことをさす。これは一つの粉体の集団の全体積を100%として体積累積カーブを求めたとき、その体積累積カーブが50%となる点の粒径を表したものであり、累積平均径として一般的に粒度分布を評価するパラメータの1つとして利用されている。なお、ガラス粉末の粒度分布の測定はマイクロトラック法(日機装(株)製マイクロトラックレーザー回折式粒度分布測定装置による方法)で測定することができる。
ビスマス系ガラスとしては、例えば、45〜86重量%の酸化ビスマス、0.5〜8重量%の酸化ケイ素、3〜25重量%の酸化ホウ素、0〜25重量%の酸化亜鉛を有するガラス粉末がガラスの安定性と軟化点の制御のしやすさという点で好ましい。酸化ケイ素の含有量を0.5〜8重量%とすることでガラスの安定性を向上させることができる。0.5重量%より少ないとその効果が不十分であり、8重量%より多いとガラスの軟化点が高くなりすぎる。より好ましくは0.5〜2重量%である。酸化ホウ素の含有量もまた3〜25重量%とすることでガラスの安定性を向上させることができる。3重量%より少ないとその効果が不十分であり、25重量%より多いとガラスの軟化点が高くなりすぎる。より好ましくは3〜10重量%である。酸化亜鉛は含まなくともよいが、25重量%まで含有させることで軟化点を下げることができる。25重量%より多いとガラスが不安定になる。より好ましくは5〜15重量%である。その他にも酸化アルミニウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化セレン、酸化カリウム等を含むことができる。
アルカリ系ガラスとしては、3〜15重量%の酸化リチウム、酸化ナトリウムまたは酸化カリウム、2〜15重量%の酸化マグネシウムまたは酸化カルシウム、20〜45重量%の酸化ホウ素、10〜25重量%の酸化アルミニウム、5〜30重量%の酸化ケイ素、2〜15重量%の酸化バリウムまたは酸化ストロンチウム、0〜5重量%の酸化亜鉛を有するガラス粉末がガラスの安定性と軟化点の制御のしやすさという点で好ましい。
アルカリ金属酸化物の合計量が3重量%以上とすることでガラスの低融点化の効果を得ることができ、15重量%以下とすることでガラスの化学的安定性を維持することができる。酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムは、ガラスを溶融しやすくするために配合されることが好ましい。酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムは合計で2〜15重量%配合するのが好ましい。合計量が2重量%以上とすることでガラスの結晶化を防ぎ、15重量%以下とすることでガラスの化学的安定性を維持することができる。
酸化ホウ素は、20重量%以上とすることで、ガラス転移点、軟化点を低く抑えガラス基板への焼き付けを容易にする。また、45重量%以下とすることでガラスの化学的安定性を維持することができる。
酸化アルミニウムはガラス化範囲を広げてガラスを安定化する効果があり、ペーストのポットライフ延長にも有効である。10〜25重量%の範囲で配合することが好ましく、この範囲内とすることでガラス転移点、軟化点を低く保ち、ガラス基板上への焼き付けを容易とすることができる。
酸化ケイ素の配合量は5〜30重量%が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。酸化ケイ素は、ガラスの緻密性、強度や安定性の向上に有効である。5重量%以上とすることで、熱膨張係数を小さく抑えガラス基板に焼き付けた時にクラックを生じない。30重量%以下とすることで、ガラス転移点、軟化点を低く抑え、ガラス基板への焼き付け温度を低くすることができる。
酸化バリウムおよび酸化ストロンチウムのうち少なくとも1種を用い、その合計量が2〜15重量%、さらには2〜10重量%であることが好ましい。これらの成分は、緻密性の点でも好ましい。2重量%以上とすることで結晶化を防ぐこともできる。また、15重量%以下とすることにより、ガラスの化学的安定性も維持できる。
また、酸化亜鉛は含有しなくてもよいが5重量%まで含有させると軟化点を下げることができる。5重量%より多いとガラスが不安定になる。
ガラス粉末の平均粒径が、0.05〜1μmであることが好ましい。0.05μmより小さいと、強固なマトリックスが形成されず、焼結したガラスが1μmより大きいと表面凹凸が大きくなり、電子放出の不均一化の原因となる。ガラス粉末の平均粒径が前記範囲内であれば、表面凹凸を小さくできるだけでなく、発光面積をより広くすることができる。さらに好ましくは0.07〜0.5μmである。
導電性粒子1重量部に対して、ガラス粒子が0.5〜500重量部であることが好ましい。ガラス粒子が500重量部より多いと、良好な電気的な接触が得られない。また、0.5重量部より少ないと、十分な接着性が得られない。より好ましくは200重量部以下である。
本発明の電子放出源用ペーストは、さらに熱分解性の金属化合物を含むことが好ましい。本発明において熱分解性の金属化合物とは所定の温度に達すると分解し、分解生成物として金属または金属酸化物を生成するものを表す。熱分解性の金属化合物は電子放出源用ペースト中においては均一な分散性を有し、焼成時には分解して分解生成物として金属または金属酸化物がCNTエミッタ中に均一に残存する。その際、熱分解生成物がCNT、導電性粒子、ガラス粒子などの表面を被覆して、CNTエミッタ内部のCNT、導電性粒子、ガラス粒子間の密着性を向上させることにより、CNTエミッタと基板との均一な接着性を得ることができる。また、このCNTエミッタにテープ剥離などの表面処理を行うと、処理後の表面に凹凸の少ないCNTエミッタを得ることができるため好ましい。さらに、熱分解性の金属化合物の分解生成物が導電性を有する金属または金属酸化物であると、CNTエミッタ中の抵抗値を下げ、CNTとカソード電極の接触抵抗値を下げることができる。CNTエミッタ中の抵抗値が低く、CNTとカソード電極の接触抵抗値が低いCNTエミッタは電界電子放出に伴う電界強度が低く、CNTエミッタの寿命も長いことから特に好ましい。
このような熱分解性の金属化合物を構成する金属元素としては錫(Sn)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、亜鉛(Zn)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zn)などが挙げられる。これらの金属元素の中でもCNTとカソード電極の接触抵抗値の低減化、閾値電圧の低減化、製造コストといった点を考慮すると、錫(Sn)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)が好ましく、中でも、錫(Sn)、インジウム(In)およびアンチモン(Sb)から選ばれる少なくとも1種以上が含まれていることがさらに好ましい。
前記熱分解性の金属化合物としては有機金属化合物、金属塩、金属錯体などが挙げられる。有機金属化合物としては金属−炭素結合を有する化合物が挙げられ、金属元素と結合して有機金属化合物を形成する有機鎖に含まれる基としてはアセチル基、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アミド基、エステル基、エーテル基、エポキシ基、フェニル基、ハロゲン基などがある。前記有機金属化合物の具体例としては、トリメチルインジウム、トリエチルインジウム、トリブトキシインジウム、トリメトキシインジウム、トリエトキシインジウム、テトラメチル錫、テトラエチル錫、テトラブチル錫、テトラメトキシ錫、テトラエトキシ錫、テトラブトキシ錫、テトラフェニル錫、トリフェニルアンチモン、トリフェニルアンチモンジアセテート、トリフェニルアンチモンオキサイド、トリフェニルアンチモンハロゲン化物などが挙げられる。
金属塩としては塩化インジウム、臭化インジウム、ヨウ化インジウム、フッ化錫、塩化錫、ヨウ化錫、フッ化アンチモン、塩化アンチモン、臭化アンチモン、ヨウ化アンチモンなどのハロゲン化物、酢酸インジウム、酢酸錫などの酢酸塩、硝酸インジウムなどの硝酸塩、硫酸インジウム、硫酸錫などの硫酸塩、シアン化インジウムなどのシアン化物、などが挙げられる。
金属錯体としては金属元素を中心として周囲に配位子が配位した構造を有するもの挙げられる。金属錯体を形成する配位子としては、アミノ基、ホスフィノ基、カルボキシル基、カルボニル基、チオール基、ヒドロキシル基、エーテル基、エステル基、アミド基、シアノ基、ハロゲン基、チオシアノ基、ピリジル基、フェナントリル基などの孤立電子対を有するものが挙げられる。前記配位子の具体例としては、トリフェニルホスフィン、硝酸イオン、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、シアン化物イオン、チオシアンイオン、アンモニア、一酸化炭素、アセチルアセトネート、ピリジン、エチレンジアミン、ビピリジン、フェナントロリン、BINAP、カテコラート、ターピリジン、エチレンジアミン四酢酸、ポルフィリン、サイクラム、クラウンエーテル類などが挙げられる。金属錯体の中でも金属元素を中心として周囲に複数の配位座を持つ配位子が配位する金属キレート化合物は、キレーション効果によって電子放出源用ペースト中における分散性が安定しているため、さらに好ましい。金属錯体の具体例としては、インジウムアセチルアセトネート錯体、インジウムエチレンジアミン錯体、インジウムエチレンジアミン四酢酸錯体、錫アセチルアセトネート錯体、錫エチレンジアミン錯体、錫エチレンジアミン四酢酸などが挙げられる。
熱分解性の金属化合物の含有量は電子放出源用ペースト全体に対して0.1〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。熱分解性の金属化合物の含有量が前記範囲内であると、CNTとカソード基板接着性がより良好になり、また、電界強度や寿命といった電子放出特性もより向上することから特に好ましい。
本発明の電子放出源用ペーストは、バインダー樹脂、溶媒、分散剤等を適宜含むことができる。バインダー樹脂として、セルロース系樹脂(エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース、ブチルセルロース、ベンジルセルロース、変性セルロースなど)、アクリル系樹脂(アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、アクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなど単量体のうち少なくとも1種からなる重合体)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。
溶媒はバインダー樹脂等有機成分を溶解するものが好ましい。例えば、エチレングリコールやグリセリンに代表されるジオールやトリオールなどの多価アルコール、アルコールをエーテル化および/またはエステル化した化合物(エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート)などが挙げられる。より具体的には、テルピネオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、ブチルカルビトールアセテートなどやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。
分散剤はアミン系くし形ブロックコポリマーが好ましい。アミン系くし形ブロックコポリマーとしては、たとえば、アビシア(株)製のソルスパース13240、ソルスパース13650、ソルスパース13940、ソルスパース24000SC、ソルスパース24000GR、ソルスパース28000(いずれも商品名)などが挙げられる。
電子放出源用ペーストは感光性を付与してもよく、感光性有機成分を含有することによって、露光および現像を通してパターン加工を行うことができる。感光性有機成分としては、紫外線を照射した時に化学的な変化が生じることによって、紫外線照射前には現像液に可溶であったものが露光後は現像液に不溶になるネガ型感光性有機成分と、紫外線照射前には現像液に不溶であったものが露光後は現像液に可溶になるポジ型感光性有機成分のいずれかを選ぶことができるが、本発明は特にネガ型感光性有機成分を用いた場合に好適に使用することができる。ネガ型感光性有機成分としては、感光性ポリマー、感光性オリゴマー、感光性モノマーのうち少なくとも1種類から選ばれる感光性成分を含有し、さらに必要に応じて、バインダー、光重合開始剤、紫外線吸光剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤やレベリング剤等の添加成分を含むものが好ましい。
本発明に用いる感光性ポリマーはバインダー樹脂の機能も持つ。感光性ポリマーとしてはカルボキシル基を有することが好ましい。カルボキシル基を有するポリマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸またはこれらの酸無水物等のカルボキシル基含有モノマーおよびメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2−ヒドロキシアクリレート等のモノマーを選択し、アゾビスイソブチロニトリルのような開始剤を用いて共重合することにより得られる。
カルボキシル基を有するポリマーとしては、焼成時の熱分解温度が低いことから、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸を共重合成分とするコポリマーが好ましく用いられる。とりわけ、スチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体が好ましく用いられる。
カルボキシル基を有するコポリマーの樹脂酸価は50〜150mgKOH/gであることが好ましい。酸価が150より大きいと、現像許容幅が狭くなる。また、酸価が50未満では未露光部の現像液に対する溶解性が低下する。現像液濃度を高くすると露光部まで剥がれが発生し、高精細なパターンが得られにくくなる。
側鎖にエチレン性不飽和結合を導入する方法として、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライド、マレイン酸等のカルボン酸を反応させて作る方法がある。
グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテル等が挙げられる。とりわけ、CH=C(CH)COOCHCHOHCH−が好ましく用いられる。
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアナート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネート等がある。また、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して0.05〜1モル当量反応させることが好ましい。
エチレン性不飽和結合を有するアミン化合物の調製は、エチレン性不飽和結合を有するグリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸無水物等をアミノ化合物と反応させればよい。複数のエチレン性不飽和基含有化合物を混合して用いてもよい。
バインダー成分が必要な場合にはポリマーとして、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、ブチルメタクリレート樹脂等を用いることができる。
感光性モノマーの具体的な例としては、光反応性を有する炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物を用いることができ、例えばアルコール類(例えば、エタノール、プロパノール、ヘキサノール、オクタノール、シクロヘキサノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど)のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、カルボン酸(例えば、酢酸プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、酒石酸、クエン酸など)とアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジル、またはテトラグリシジルメテキシリレンジアミンとの反応生成物、アミド誘導体(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミドなど)、エポキシ化合物とアクリル酸またはメタクリル酸との反応物などを挙げることができる。また、多官能感光性モノマーにおいて、不飽和基は、アクリル、メタクリル、ビニル、アリル基が混合して存在してもよい。
本発明では、これらを1種または2種以上使用することができる。感光性モノマーは、全感光性有機成分に対し、好ましくは1〜90重量%の範囲で添加され、より好ましくは2〜80重量%、さらに好ましくは2〜40重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。感光性モノマーの量が少なすぎると光硬化不足になりやすく、露光部の感度が低下したり、現像耐性が低下したりする。感光性モノマーの量が多すぎる場合には未露光部の水に対する溶解性が低下したり、架橋密度が高すぎるために焼成時に脱バインダー不良を引き起こすおそれがある。
本発明に用いる光重合開始剤は、ラジカル種を発生するものから選んで用いられる。光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アルキル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロペンアミニウムクロリド一水塩、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イロキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミニウムクロリド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、メチルフェニルグリオキシエステル、η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスフェイト(1−)、ジフェニルスルフィド誘導体、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−ベンゾイル−4−メチルフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,3−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、ベンジルメトキシエチルアセタール、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、N−フェニルグリシン、テトラブチルアンモニウム(+1)n−ブチルトリフェニルボレート(1−)、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイルおよびエオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられる。
本発明では、これらを1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤は、感光性有機成分に対し、0.05〜50重量%の範囲で添加され、より好ましくは0.05〜40重量%、さらに好ましくは0.05〜10重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%である。重合開始剤の量が少なすぎると光感度が不良となり、光重合開始剤の量が多すぎる場合には露光部の残存率が小さくなるおそれがある。
光重合開始剤と共に増感剤を使用し、感度を向上させたり、反応に有効な波長範囲を拡大することができる。
増感剤の具体例としては、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニルビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾール等が挙げられる。
本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。なお、増感剤の中には光重合開始剤としても使用できるものがある。増感剤を本発明の感光性ペーストに添加する場合、その添加量は感光性有機成分に対して通常0.05〜50重量%、より好ましくは0.05〜40重量%、さらに好ましくは0.05〜10重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%である。増感剤の量が少なすぎれば光感度を向上させる効果が発揮されず、増感剤の量が多すぎれば露光部の残存率が小さくなるおそれがある。
電子放出源用ペーストは、各種成分を所定の組成になるよう調合した後、3本ローラー、ボールミル、ビーズミル等の混練機で均質に混合分散することによって作製することができる。ペースト粘度は、ガラス粉末、導電性粒子、増粘剤、有機溶媒、可塑剤および沈殿防止剤等の添加割合によって適宜調整されるが、その範囲は2〜200Pa・sである。例えば、基板への塗布をスリットダイコーター法やスクリーン印刷法以外にスピンコート法やスプレー法で行う場合は、0.001〜5Pa・sが好ましい。
以下に、本発明の感光性電子放出源用ペーストを用いたトライオード型とダイオード型のフィールドエミッション用電子放出素子の作製方法について説明する。なお、電子放出素子の作製は、その他の公知の方法を用いてもよく、後述する作製方法に限定されない。
はじめにトライオード型電子放出素子用背面基板の作製方法を説明する。ソーダガラスやPDP(プラズマディスプレイパネル)用の耐熱ガラスである旭硝子(株)製のPD200等のガラス基板上にITO等の導電性膜を成膜しカソード電極を形成する。次いで、絶縁材料を印刷法により5〜15μm積層し絶縁層を作製する。次に、絶縁層上に真空蒸着法によりゲート電極層を形成する。ゲート電極層上にレジスト塗布し、露光、現像によりゲート電極および絶縁層をエッチングすることによって、エミッタホールパターンを作製する。この後、電子放出源用ペーストをスクリーン印刷またはスリットダイコーター等により塗布する。上面露光または背面露光の後に現像し、エミッタホール内に電子放出源パターンを形成し、大気中または窒素雰囲気中で400〜500℃で焼成する。最後にレーザー照射法やテープはく離法によりCNT膜の起毛処理を行う。次に、前面基板を作製する。ソーダライムガラスやPDP用の耐熱ガラスである旭硝子(株)製のPD200等のガラス基板上にITOを成膜しアノード電極を形成する。アノード電極上に赤緑青の蛍光体を印刷法により積層する。背面基板と前面基板をスペーサーガラスをはさんで貼り合わせ、容器に接続した排気管により真空排気することによりトライオード型電子放出素子を作製する。電子放出状態を確認するために、アノード電極に1〜5kVの電圧を供給することで、CNTから電子が放出され蛍光体発光を得ることができる。
ダイオード型電子放出素子用背面板を作製する場合は、カソード電極上に電子放出源用ペーストをスクリーン印刷またはスリットダイコーター等により所定のパターンで印刷後、大気中または窒素雰囲気中で400〜500℃の温度で加熱し、CNT膜を得て、CNT膜をテープはく離法やレーザー処理法により起毛処理を行う。新たにITOをスパッタしたガラス基板上に蛍光体を印刷し、アノード基板を作製し、これら2枚のガラス基板をスペーサーを挟んで貼り合わせ、容器に接続した排気管で真空排気することによりダイオード型電子放出素子を作製する。電子放出状態を確認するために、アノード電極に1〜5kVの電圧を供給することで、CNTから電子が放出され蛍光体発光を得ることができる。
以下に、本発明を実施例に具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されない。用いた原料は次の通りである。
CNT1:東レ(株)製2層CNT、平均直径1.2nm
CNT2:東レ(株)製2層CNT、平均直径4.8nm
CNT3:東レ(株)製多層CNT、平均直径6.5nm
CNT4:東レ(株)製多層CNT、平均直径8.6nm
CNT5:東レ(株)製多層CNT、平均直径12nm
導電性粒子1:白色導電性粉末(球状の酸化チタンを核として、SnO /Sb導電層を被覆したもの)、石原産業(株)製、ET−500W、比表面積6.9m/g、密度4.6g/cm、平均粒径0.19μm
導電性粒子2:銀粉末、三井金属鉱業(株)製、FHD、比表面積2.54m/g、密度10.5g/cm、平均粒径0.22μm
導電性粒子3:銀粉末、三井金属鉱業(株)製、SPQ05S、比表面積1.08m/g、密度10.5g/cm、平均粒径0.53μm
導電性粒子4:銀粉末、三井金属鉱業(株)製、350、比表面積0.8m/g、密度10.5g/cm、平均粒径0.78μm
導電性粒子5:白色導電性粉末(球状の酸化チタンを核として、SnO/Sb導電層を被覆したもの)、石原産業(株)製、ET−300W、比表面積28m/g、密度5g/cm、平均粒径0.04μm
導電性粒子6:銀粉末、三井金属鉱業(株)製、SPN10J、比表面積0.52m/g、密度10.5g/cm、平均粒径1.1μm
ガラス粉末1:ビスマス系ガラス(酸化ビスマス:84重量%、酸化ホウ素:7重量%、酸化ケイ素:1重量%、酸化亜鉛:8重量%)、軟化点380℃、平均粒径0.6μm
ガラス粉末2:ガラス粉末1の平均粒径0.3μm品
ガラス粉末3:ビスマス系ガラス(酸化ビスマス:50重量%、酸化ホウ素:21重量%、酸化ケイ素:7重量%、酸化亜鉛:22重量%)、軟化点447℃、平均粒径0.4μm
ガラス粉末4:ガラス粉末3の平均粒径0.1μm品
ガラス粉末5:ビスマス系ガラス(酸化ビスマス:75重量%、酸化ホウ素:0.9重量%、酸化ケイ素:1.9重量%、酸化亜鉛:12重量%、酸化アルミニウム:0.2重量%、酸化ナトリム:4重量%)、軟化点394℃、平均粒径0.5μm
ガラス粉末6:ビスマス系ガラス(酸化ビスマス:85重量%、酸化ホウ素:4重量%、酸化ケイ素:1.5重量%、酸化亜鉛:9.5重量%)、軟化点415℃、平均粒径0.8μm
ガラス粉末7:アルカリ系ガラス(酸化ホウ素:35重量%、酸化アルミニウム:22.7重量%、酸化ケイ素:12.9重量%、酸化リチウム:12.4重量%、酸化マグネシウム:6.4重量%、酸化バリウム:4.2重量%、酸化カルシウム:4.1重量%、酸化亜鉛:2.3重量%)、軟化点458℃、粒径0.7μm
ガラス粉末8:ガラス粉末6の平均粒径1.3μm品
バインダー樹脂溶液1:和光純薬工業(株)製エチルセルロース(約49%エトキシ)100をテルピネオールに30重量%溶解させたもの
バインダー樹脂溶液2:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=40/40/30からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(重量平均分子量43000、酸価100)をテルピネオールに40重量%溶解させたもの
感光性モノマー:テトラプロピレングリコールジメタクリレート
光重合開始剤:チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1)。
熱分解性金属化合物1:ニッケルアセチルアセトネート錯体
熱分解性金属化合物2:亜鉛アセチルアセトネート錯体
熱分解性金属化合物3:テトラブトキシ錫
熱分解性金属化合物4:錫アセチルアセトネート錯体
熱分解性金属化合物5:インジウムアセチルアセトネート錯体
熱分解性金属化合物6:トリフェニルアンチモン
CNTの平均直径測定
(株)日立製作所製透過型電子顕微鏡H7100型により、2,000,000倍で観察した画像からCNTをランダムに10カ所選び、その平均をCNTの平均直径とした。
導電性粒子の粒径測定
用いた導電性粒子の平均粒径(μm)は、吸着ガスにNを、キャリアガスにN/He=30/70を用いる流動法BET一点法比表面積測定装置(ユアサアイオニクス(株)製、MONOSORB)により得られた比表面積(m/g)から、密度(g/cm)を用いて次式により算出した。
平均粒径=6/(密度×比表面積)。
ガラス粉末の粒径測定
用いたガラス粉末の累積50%粒径を粒子径分布測定装置(日機装(株)製、マイクロトラック9320HRA)を用いて測定した。
ガラス粉末の軟化点の測定
用いたガラス粉末の軟化点を熱機械分析装置(セイコーインスツル(株)製、EXTER6000 TMA/SS)を用いて測定した。ガラス粒子を800℃で溶融し、直径5mm、高さ2cmのロッド状に加工して測定サンプルとした。測定サンプルのガラスロッド及び標準試料の石英ガラスロッドにそれぞれ10g重の加重をかけて室温から10℃/分で昇温して得られたTMA曲線の最大長さとなった時の温度を軟化点とした。
電子放出素子表面と電極との接触抵抗の測定
走査型拡がり抵抗顕微鏡(Veeco社Digital Instruments製NanoScopeIIIaAFM Dimension3100ステージシステム)を用い、CoCrコートシリコンカチレバーをエミッタ表面に接触させ、カソード電極に−0.5VのDCバイアスを印加したときの抵抗値を、3μm×4μmの面内において測定し、その面内平均値を接触抵抗値とした。接触抵抗が10Ω以下であれば良好とした。
表面粗さRzの測定
東京精密(株)製サーフコム1400を用いてJIS B0601−1982に準じて
触針式で、電子放出素子表面の10点平均粗さRzの測定を行った。表面粗さRzが1μm以下を良好とした。
接着性の評価
カソード電極上に作成したCNT膜に剥離接着強さ0.1N/20mm、0.5N/20mm、1N/20mmの粘着テープをそれぞれ貼り、略180°の角度を保ちながら速度300mm/分で引き剥がすことでCNT膜とカソード電極の接着性を評価した。CNT膜とカソード電極の接着力が弱く、0.1N/20mmのテープ剥離によってCNT膜が剥離してカソード電極面が見えてしまうものを×、0.5N/20mmのテープ剥離によってCNT膜が剥離してカソード電極面が見えてしまうものを△、1N/20mmのテープ剥離によってCNT膜が剥離してカソード電極面が見えてしまうものを○、いずれのテープ剥離によってもCNT膜の剥離が見られないものを◎とした。
発光面積の測定
真空度を5×10−4Paにした真空チャンバー内に、ITO基板上に1cm×1cm角の電子放出素子が形成された背面基板と、ITO基板上に厚み5μmの蛍光体層(P22)を形成した前面基板を、100μmのギャップフィルムを挟んで対向させ、電圧印可装置(菊水電子工業(株)製耐電圧/絶縁抵抗試験器TOS9201)によって0.5kVの電圧を印加して、前面基板を発光させた。発光面積はCCDカメラによって発光像を取り込み、1cm×1cm角の電子放出素子内での発光部分割合を測定し、数値化した。
1mA/cmに達する電界強度の測定
真空度を5×10−4Paにした真空チャンバー内に、ITO基板上に1cm×1cm角の電子放出素子が形成された背面基板と、ITO基板上に厚み5μmの蛍光体層(P22)を形成した前面基板を、100μmのギャップフィルムを挟んで対向させ、電圧印可装置(菊水電子工業(株)製耐電圧/絶縁抵抗試験器TOS9201)によって0.25V/秒で電圧印加した。得られた電流電圧曲線(最大電流値10mA/cm)から1mA/cmに達する電界強度を求めた。2回目の1mA/cmに達する電界強度の測定も、1回目の測定後に同様にして行った。1回目と2回目の1mA/cmに達する電界強度の差が少ないものほど良好である。また、電界強度の値が小さいものほど電子放出特性は良好である。
実施例1〜6および比較例1〜3
本発明の電子放出源用ペーストは以下の要領で作製した。容積500mlのジルコニア製容器にCNT1gと、CNT1gに対して表1に記載した比率になるように導電性粒子を秤量後、バインダー溶液1を70g、溶媒である一級ターピネオール(異性体混合物、東京化成工業(株)製)を26g加えた。0.3μmφのジルコニアビーズ(東レ(株)製トレセラム(商品名))をそこに加え、遊星式ボールミル(フリッチュ・ジャパン(株)製遊星型ボールミルP−5)にて100rpmで予備分散した。次に、ジルコニアビーズを取り除いた混合物を3本ローラーにて混練し、電子放出源用ペーストとした。
続いて、電子放出素子を以下の要領で作製した。ガラス基板上にITOをスパッタにより成膜しカソード電極を形成した。得られたカソード電極上に電子放出源用ペーストをスクリーン印刷により1cm角のパターンで印刷した。窒素中450℃の温度で加熱し、電子放出素子を得た。このCNT膜を剥離接着強さ0.1N/20mmのテープにより起毛処理した。接触抵抗、表面粗さ、接着性、1mA/cmに達する電界強度の測定結果を表1に示す。
Figure 0005272349
実施例7〜16
容積500mlのジルコニア製容器にCNT1gと、CNT1gに対して表2に記載した比率になるように導電性粒子を、導電性粒子1gに対して表2に記載した比率になるようにガラス粉末を秤量後、バインダー溶液1を70g、溶媒(一級ターピネオール(異性体混合物、東京化成工業(株)製))を26g加え、実施例1と同様にして電子放出源用ペーストおよび電子放出素子を作製した。接触抵抗、表面粗さ、接着性、発光面積、1mA/cmに達する電界強度の測定結果を表2に示す。
Figure 0005272349
実施例17〜20
容積500mlのジルコニア製容器にCNT1gと、CNT1gに対して表3に記載した比率になるように導電性粒子を、導電性粒子1gに対して表3に記載した比率になるようにガラス粉末を秤量後、バインダー溶液2を60g、感光性モノマーを1g、光重合開始剤を1g、溶媒(一級ターピネオール(異性体混合物、東京化成工業(株)製))を30g加え、実施例1と同様にして電子放出源用ペーストを作製した。
次に、ガラス基板上にITOをスパッタにより成膜しカソード電極を形成した。得られたカソード電極上に得られた電子放出源用ペーストをスクリーン印刷により5cm角のパターンで印刷した。次いで、1cm角のパターンになるようにネガ型クロムマスクを用いて上面から50mW/cm出力の超高圧水銀灯で紫外線露光した。そして炭酸ナトリウム1重量%水溶液をシャワーで150秒間かけることにより現像し、シャワースプレーを用いて水洗浄して光硬化していない部分を除去した。ここで得たパターンを窒素中450℃の温度で加熱し、電子放出素子を作製した。このCNT膜を剥離接着強さ0.1N/20mmのテープにより起毛処理した。接触抵抗、表面粗さ、接着性、発光面積、1mA/cmに達する電界強度の測定結果を表3に示す。
Figure 0005272349
比較例
導電性粒子を加えないこと以外は、実施例1と同様にして電子放出源用ペーストおよび電子放出素子を作製した。接触抵抗、表面粗さ、接着性、1mA/cmに達する電界強度の測定結果を表4に示す。
比較例
表4に記載した比率で平均粒径が0.1〜1μmの範囲からはずれた導電性粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして電子放出源用ペーストおよび電子放出素子を作製した。接触抵抗、表面粗さ、接着性、1mA/cmに達する電界強度の測定結果を表4に示す。
比較例
表4に記載した比率で平均粒径が0.1〜1μmの範囲からはずれた導電性粒子を用いたこと以外は、実施例と同様にして電子放出源用ペーストおよび電子放出素子を作製した。接触抵抗、表面粗さ、接着性、1mA/cmに達する電界強度の測定結果を表4に示す。
Figure 0005272349
実施例21〜30
容積500mlのジルコニア製容器にCNT1gと、CNT1gに対して表5に記載した比率になるように導電性粒子を、導電性粒子1gに対して表5に記載した比率になるようにガラス粉末、ガラス粉末1gに対して表5に記載した比率になるように熱分解性金属化合物を秤量後、バインダー溶液2を60g、感光性モノマーを1g、光重合開始剤を1g、溶媒(一級ターピネオール(異性体混合物、東京化成工業(株)製))を30g加え、実施例1と同様にして電子放出源用ペーストを作製した。
次に、ガラス基板上にITOをスパッタにより成膜しカソード電極を形成した。得られたカソード電極上に得られた電子放出源用ペーストをスクリーン印刷により5cm角のパターンで印刷した。次いで、1cm角のパターンになるようにネガ型クロムマスクを用いて上面から50mW/cm出力の超高圧水銀灯で紫外線露光した。そして炭酸ナトリウム1重量%水溶液をシャワーで150秒間かけることにより現像し、シャワースプレーを用いて水洗浄して光硬化していない部分を除去した。ここで得たパターンを窒素中450℃の温度で加熱し、電子放出素子を作製した。このCNT膜を剥離接着強さ0.1N/20mmのテープにより起毛処理した。接触抵抗、表面粗さ、接着性、1mA/cmに達する電界強度の測定結果を表5に示す。
Figure 0005272349
比較例9
CNT1の代わりにCNT4を用いる以外は実施例1と同様にして電子放出源用ペーストおよび電子放出素子を作製した。接触抵抗、表面粗さ、接着性、1mA/cmに達する電界強度の測定結果を表6に示す。
実施例31
ガラス粉末1の代わりにガラス粉末8を用いる以外は実施例7と同様にして電子放出源用ペーストおよび電子放出素子を作製した。接触抵抗、表面粗さ、接着性、発光面積、1mA/cmに達する電界強度の測定結果を表6に示す。
比較例10
CNT1の代わりにCNT5を用いる以外は実施例1と同様にして電子放出源用ペーストおよび電子放出素子を作製した。接触抵抗、表面粗さ、接着性、1mA/cmに達する電界強度の測定結果を表6に示す。
比較例11
導電性粒子を加えないことおよびCNTとガラス粉末の重量比がCNT/ガラス粉末=1/3となるようにしたこと以外は実施例8と同様にして電子放出源用ペーストおよび電子放出素子を作製した。接触抵抗、表面粗さ、接着性、1mA/cmに達する電界強度の測定結果を表6に示す。
比較例12
熱分解性金属化合物4を、ガラス粉末と該熱分解性金属化合物4の重量比がガラス粉末/熱分解性金属化合物4=1/1となるように加えた以外は比較例11と同様にして電子放出源用ペーストおよび電子放出素子を作製した。接触抵抗、表面粗さ、接着性、1mA/cmに達する電界強度の測定結果を表6に示す。
Figure 0005272349

Claims (12)

  1. 直径が1nm以上7nm以下であるカーボンナノチューブと、平均粒径が0.1〜1μmの導電性粒子を含み、前記導電性粒子が酸化物表面の一部または全部に導電性材料がコーティングされた粒子である電子放出源用ペースト。
  2. 前記導電性粒子の平均粒径が0.1〜0.6μmである電子放出源用ペースト。
  3. ガラス粉末を含む請求項1記載の電子放出源用ペースト
  4. 前記ガラス粉末の平均粒径が0.05〜1μmである請求項3記載の電子放出源用ペースト。
  5. 前記導電性粒子1重量部に対して前記ガラス粉末が0.5〜500重量部である請求項3または4に記載の電子放出源用ペースト。
  6. 熱分解性の金属化合物を含む請求項1〜5のいずれかに記載の電子放出源用ペースト。
  7. 前記熱分解性の金属化合物に含まれる金属がSn、InおよびSbから選ばれる少なくとも1種以上である請求項6記載の電子放出源用ペースト。
  8. 電子放出源用ペースト全体に対して前記熱分解性の金属化合物が0.1〜20重量%である請求項6または7記載の電子放出源用ペースト。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の電子放出源用ペーストを用いた電子放出源。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載の電子放出源用ペーストを用いた電子放出素子。
  11. 請求項1〜8のいずれかに記載の電子放出源用ペーストを焼成して電子放出源を製造する方法。
  12. 電子放出源とカソード電極を有する背面基板と、アノード電極を有する前面基板を貼り合わせて電子放出素子を製造する方法であって、カソード電極上に請求項1〜8のいずれかに記載の電子放出源用ペーストをパターン形成した後、焼成して前記電子放出源を製造する工程を含むことを特徴とする、電子放出素子の製造方法。
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