本発明の一つの目的は、低スウェージ荷重と高強度との最適なバランスを呈するスウェージ型締結具を提供することにある。
本発明の他の目的は、熱処理(例、焼入れ・焼戻し、応力除去)を必要としない、鍛造し放し(ヘディングしたまま)のカラーを使用した締結具を提供することにある。
本発明の他の目的は、強度を保ちながらも、壁厚が小さく、このため軽量で、かつ低スウェージ荷重の高強度カラーを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、所望の締結具グレード(例えば、グレード5やグレード8)に適合するに充分な物理的特性(例えば、硬度や強度)を有する鍛造し放しカラーを提供することにある。
本発明の他の目的は、既存の締結具およびそのねじ山形状と一緒に使用でき、所望のグレード(非限定例としての、グレード5やグレード8)の必須強度を呈するカラーを提供することにある。
本発明の他の目的は、締結具をセットするのに必要なスウェージ荷重を低減し、それによって据付工具の部品(非限定例としての、スウェージアンビル(絞り金敷)、シンブル(金属環)およびハーフシェル)の磨耗を減らし、工具耐用期間を延ばすことにある。
本発明のまた別の目的は、締結具カラーにおいて、高価な熱処理工程(例えば、応力除去や焼入れ・焼戻し)を省略できる締結具を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、ピン先を備える締結具およびピン先の無い締結具を非限定的かつ明示的に含む、カラーを後付け可能な、新しい、または既存の品目の一部である、様々な形態のスウェージ型締結具と一緒に使用可能なカラーを提供することにある。
本発明の他の目的は、締結具ピンのロック溝を過剰に充填しないことよって、カラーの強度レベルを維持または改善しながらスウェージ荷重を低減するために、カラーの硬度を増すことにある。
本発明のさらに他の目的は、従来の浅いまたは波形のねじ山形状において経験された欠点を克服するようにデザインされた、改良された締結具ロック溝のねじ山形状を提供することにある。
本発明の他の目的は、スウェージ荷重を低減するように構成される一方、比較的製造が簡単で、そのため経済的な、ロック溝のねじ山形状を提供することにある。
本発明のまた別の目的は、数ある利点の中でも、引張り溝と把持構造との係合を改善することによる利点をいくつか提供する補完的な引張り溝および工具の把持構造物形状を提供することにあり、例えば、ピンの引張り部分の直径を縮小し、シンブルの断面を拡大することで、引張りねじ山の厚さおよび強度を増し、ピンの引張り部分の突出部分長さを最小限に抑えることで、把持構造(例、シンブル)の耐用期間を延ばす。
したがって、本発明の主な目的は、改良された、高強度のスウェージ型締結具とその締結具のための鍛造し放しカラーとを提供することにあり、これらは、既存の工具によって低いスウェージ荷重で設置でき、所望の締結具グレードにおいて最適な材料特性(例えば、硬度や強度)を呈するものである。また本発明の主な目的は、鍛造し放しカラー、改良されたピン引張り部分と据付工具形状、および優れた締結具ねじ山形状の少なくとも1つを備えた低スウェージ荷重の締結システムを提供することにある。
これらの目的および他の目的は、低スウェージ荷重の締結システムおよび方法を提供する本発明によって実現される。
本発明の一実施形態において、このシステムの締結具は、ロック溝の過剰な充填を避けるのに適した、高硬度で壁厚の薄いカラーを有する。このカラーは、同等グレードの既知の締結具と比較して非常に経済的に生産でき、容易にスウェージできる。これは、本発明のカラーが鍛造し放しで使用されるので、コストのかかる熱処理(例えば、焼入れ・焼戻しや応力除去)を必要としないからである。また、このカラーは、ピンロック溝のねじ山形状の改変も必要としない。それゆえ、このカラーは、多様なロック溝ねじ山形状を有する既存のピンおよび据付工具と一緒に容易に使用可能であり、また、その壁が薄いためにスウェージ荷重が低減したことで、据付工具の耐用期間が延び、および/または、据付工具がより軽くなってその扱いがより簡単になる。本発明の締結具およびそのためのカラーは、グレード5およびグレード8の工業締結具規格を満たすのに充分な、驚くべき予想外の高強度性能を呈しながらも、前述の効果の全てを呈する。
したがって、この低スウェージ荷重の締結システムは、複数のワークピースを互いに固定するよう構成されたスウェージ型締結具のためのものである。このスウェージ型締結具は、ワークピースの整列した開口内に配置するのに適した細長いピンシャンクを有するピン部材を備える。このピン部材の一端部は、複数のワークピースのうち一方の側の表面に係合するのに適した拡大頭部において終端し、他端部は、複数のワークピースのうち反対の側の、反対側の表面を通り過ぎて延在するのに適した溝付部分で終端する。このピンの溝付部分は、円周方向に延在するピン溝とそれに関連してピンクレスト(ピン頂部)で終端するピン肩とにより画成された複数のロック溝を有するロック部分を備えている。
この締結具は、ピン先の有る締結具およびピン先の無い締結具からなる群から選択されることができる。また、この締結具のピンの溝付部分はピン先を有さずに雌ねじ付ねじ穴を備えても良く、この場合に据付工具は、締結具をスウェージする間、このねじ穴に螺合するよう構成された内側駆動部を備える。
本発明の他の実施形態において、この低スウェージ荷重の締結システムはピンを備え、このピンは、そのピンの第2端部から伸びる、複数の引張り溝を備えた、実質的に真直ぐな引張り部分を有する。この引張り部分の外径は、そのピンのロック部分の外径より小さい。これに関連した据付工具は、上記引張り部分の引張り溝と補完的に噛合するための引張り部分を備えたコレットを有する。このピンの端部から引張り部分が突出する長さは比較的短い。このため、その引張り部分はスウェージ後もピンに残すか、またはそれを切り落とすか、ピンに任意に設けられる破断溝での破断によって取り除くことができる。その引張り部分の直径が小さいことで、据付工具はより厚く強くなる。また、その引張り部分が真直ぐなことで、据付工具による優れた係合が可能になる。
据付工具の引張り部分の第1歯の直径は、その工具の他の歯よりも大きくても良く、このことで、工具の耐用期間が延びる。この工具は、比較的小さいスウェージ荷重を備えることで、さらに改善され、スウェージ荷重もさらに低減できる。
この低スウェージ荷重の締結システムのさらに他の実施形態において、締結具ピンのねじ山形状は、複数の異なる半径を有することで画成し、それぞれの半径間でねじ山形状が実質的に滑らかに移行するものとしても良い。こうすることにより、カラーがスウェージされるときのその溝への嵌合が改善される。この種のねじ山形状においては、ねじ山転造に使用されるねじ転造ダイスが複雑になることが無い。
この明細書で開示する発明の他の態様としては、複数のワークピースを互いに固定するよう構成されたスウェージ型締結具のための低スウェージ荷重の締結システムがある。このスウェージ型締結具は、ワークピースの整列した開口内に配置するのに適した細長いピンシャンクを有するピン部材を備える。このピン部材の一端部は、複数のワークピースの一方の側の表面に係合するのに適した拡大頭部において終端し、他端部は、複数のワークピースの反対の側の、反対側の表面を通り過ぎて延在するのに適した溝付部分で終端する。
この溝付部分は、円周方向に延在するピン溝と、それに関連してピンクレスト(ピン頂部)で終端するピン肩とにより画成された複数のロック溝を有するロック部分を備えている。
据付工具は、スウェージキャビティを有するアンビル(金敷)部材を備える。また、鍛造し放しカラーも備え、このカラーは、据付工具によってピン部材と鍛造し放しカラーとの間に加えられる相対軸力またはスウェージ荷重に応じて前記ピン部材の前記ロック溝にスウェージされるのに適する概ね真直ぐなカラーシャンクを備える。
互いに固定されるワークピースに加えられる所望の大きさのクランプ荷重が、締結されるジョイントを定める。前記据付工具のスウェージキャビティは、前記カラーシャンクに係合してこれを半径方向内方にスウェージする(絞り込む)ように構成される。鍛造し放しカラーは、スウェージされると前記ピン溝およびピン肩と噛みあうカラー溝およびカラー肩を有する。ピン部材および前記鍛造し放しカラーは、前記ピン部材に前記カラーをスウェージする際に前記ピン部材の降伏が実質的に回避されるように、異なる大きさの最大剪断応力を有する互いに異なる材料から成る。
コレットは、前記コレットからの突出部分を有し、これによりコレットの引張り部分の長さがカラー方向に延び、このためアンビルとの接触領域が増える
鍛造し放しカラーは熱処理を必要とせず、前記鍛造し放しカラーの概ね真直ぐなカラーシャンクの壁厚は比較的薄いため、前記鍛造し放しカラーに必要なスウェージ荷重が低減する。
前記突出部分は、コレットの先端ねじ山の前方に隣接する環状平担面を形成し、その平担面の前方には環状前方傾斜面があり、さらに第2の平担面および、コレットの外径との交線まで戻る傾斜平担面がある。
ピンの引張り部の端部は、溝の底と一致する直径位置までは細くされず、これにより端部の引張りクレスト(頂部)の剪断強度を高める。
さらに異なる態様において、引張り部の最終引張りクレストは、コレットの最終歯の拡大した引張り部半径に合致する輪郭を有する。
前述の低スウェージ荷重構造の全ては、個々に使用されても、またはいかなる適切な組合せにもおいて使用されても良い。上述の低スウェージ荷重システムを用いた、複数のワークピースを互いに固定するためのスウェージ型締結具と方法も開示される。
本発明の包括的な理解は、以下の本発明の好適な実施形態の説明を添付図面と併せて読むことによって得られる。
本明細書で用いられる、上側、下側、前方、後方などの方向性のある表現は、図示される要素の配置に関するもので、請求の範囲を限定するものではない。
本明細書にて用いられる用語”複数"とは、単数または単数より多い(例えば、複数の)ことを指す。
本明細書に記載の用語「鍛造し放し(as-headed)」とは、熱処理(例えば、焼入れ・焼戻しや応力除去)によって硬度を変えるのでなく、例えば冷間鍛造加工によってひずみ硬化されたカラーのことを指す。本発明のカラーは、熱処理が不必要でありながら、高強度(例えば、グレード5または8の強度)を呈するものである。
本明細書にて用いられる表現「低スウェージ荷重の」とは、本発明の締結システムの特徴(例えば、鍛造し放しカラー、小径ピン先引張り部分、修正されたねじ山形状)により、同様のグレードの従来の締結具と比較して所要スウェージ荷重が低減していることを説明する、比較を目的として使用される表現である。このような低いまたは低減されたスウェージ荷重の代表的な例は、本明細書の表および対応する開示において数値で表されている。
同様に、本明細書において用いられる表現「縮小された壁厚」とは、同様のグレードの従来の締結具のカラーと比較して、本発明のカラーの壁厚がより薄い構造であることを説明する、比較を目的として使用される表現である。例えば、例示的カラーの壁厚は薄くなっており、材料の量も少なく、そのため多くの公知の締結具と違い、ロック溝を過剰に充填しない構造となっている。
本明細書にて用いられる用語「引張り部分」とは、締結具ピンの例示的なピン引張り部分、およびこれに係合する、据付工具の補完的な引張り部分を指す。本明細書で後述されるように、例示的な引張り部分の形状は、実質的に真直ぐで、小径で、両側が平行な引張り部分を備え、これは、例えば、本明細書に組み込まれる米国特許第4,299,519号の、テーパー状のエイコン形状の引張り部分およびこれを補完する用具の部分と比べて、ピンのロック溝付部分の端部から突出する長さが短い。
本明細書にて用いられる表現「ねじ山形状」とは、本発明の例示的な、改良されたピンロック溝のねじ山形状を指す。他の新しい特徴のなかでもこのねじ山形状は、ある意味では様々なねじ山形状の一定の特徴のハイブリッドであるという点において、この新しいねじ山形状はハイブリッドである。しかしながらこの例示的なハイブリッドねじ山形状を発展させ、これに関連して寄与可能なその利点を達成するために、様々なテストと実験が必要とされた点は理解されるであろう。
本発明の実施例における締結具は、ある特定のサイズ、つまり呼び径に関して規定されているが、そのコンセプトは、様々なサイズ(例えば、直径や長さ)の締結具に容易に及ばせることができる。
図1〜3、および図7に示すように、本発明は、例えば本明細書に援用する上記米国特許第6497024号に説明される締結具のような、複数部品(例えば、ピンおよびカラー)からなるスウェージ型締結具に関する。図1〜3、6B、6C、および7において、同等の締結具部品は、各図において同じ番号が付けられ、ただし区別のためのアルファベット、「a」(図2),「b」(図3),「c」(図6B),および「d」(図6Cおよび図7)を含み、他に特記されることが無ければ、実質的に同じであると考えられる。例示的な低スウェージ荷重の締結システム50および鍛造し放しカラー14の第一の特徴は、図1,2,3,6B,6Cおよび7のそれぞれにおいて、締結具10,10a,10b,10c,10dのそれぞれに使用した状態で示されている。
図1は本発明の、ピン先41を持つピン部材12と、鍛造し放しの低スウェージ荷重カラー14とを備えた締結具10を示す。ピン部材12は細長のシャンク15を有し、このシャンク15は、一対の、相互に固定されるべきワークピース18,20の整列した開口または孔16および17をそれぞれ通って延在する。シャンク15の一方の端部で広く隆起した頭部22は、ワークピース18の背面23に係合する。シャンク15は、頭部22に隣接して、真直ぐで滑らかな円筒形のシャンク部分24を有し、このシャンク部分24は、一直線上に整列した孔16および17にすき間ばめで受容されるのに適している。ただし、据付条件によっては、真っ直ぐなシャンク部分24のサイズは、孔16および17の一方または両方に対するぎりぎりの許容誤差での嵌合または締まりばめをもたらすように決定できる点は理解されるであろう。真っ直ぐなシャンク部分24には、周方向に延在する環状ロック溝26を複数有するロックシャンク部分25が隣接して一体に続く。
図1に示す締結具10は、先述のように、真っ直ぐな環状ランド42と、これに続く複数の環状の引張り溝44とを有するピン先または引張りシャンク部分41を備える。谷径の小さい破断溝40は、ロック部分25と引張り部分41の環状のランド42との間に位置し、ここがピンシャンク15の最も弱い断面となる。これらランド42および引張り溝44を備える引張り部分41の直径Daは、ロック部分25のロック溝26のクレスト71の直径Dbと比較して小さい。また、直径Dbは、真っ直ぐなシャンク部分24の直径と等しい。ただし、孔16および17に対し図示しないがぎりぎりの許容誤差での嵌合やわずかな締まりばめとなる適用形態においては、ロック溝26のクレスト71の直径は、真っ直ぐなシャンク部分24の直径よりも小さい(図示せず)ということは理解されるであろう。引張り溝44は、上記米国特許第6497024号に示されかつ記載された方法で締結具10を設置する際に使用される据付工具100によって把持されるのに適している。
カラー14の据付(例えば、スウェージング)に必要とされる工具100は、概して当業者の知る形で構成することができ、それゆえ、記載を簡潔にするため部分的にのみ図示する。概要としては、工具100は、周方向に間隔おいた複数のジョー104を有するノーズアセンブリ102を備える。このジョー104は、引張りシャンク部分41の引張り溝44を把持するのに適する。ジョー104は、アンビルハウジング108内に摺動可能に支持された管状コレットアセンブリ106の内側に配置され、アンビルハウジング108の一端部は、スウェージキャビティ112を有するスウェージアンビル部分110で終端する。通常、ジョー104は、ジョー従動アセンブリ116(図1に部分的に示す)によって、円錐軌道114内で、半径方向に収束する図示の位置に向かって軸線方向前方へ弾性的に付勢されている。ただし、本明細書に考察されるように、図1〜3に関して示されかつ記述されているもの以外の、他の適当な据付形状(例えば図7〜9に示される小径ピン先引張り部分177を参照)および方法も、この例示的な低スウェージ荷重の締結システム50から想起されると、好ましい。
図2および図3は、それぞれピン先の無い締結具10a,10bの2つの代表的例に使用される例示的なカラー14を示す。さらにこれらの図は、例示的なカラー14が、どのようにして既存の多種多様な据付工具と一緒に容易に使用できるのかを示す。例えば、図2は、雌ねじ付ねじ穴204および検出ロッド206を有する外側駆動部202を備える据付工具200を示す。この据付工具200は、米国特許第6497024号においても詳細が説明されており、この説明は本明細書に組み込まれているものとする。概略を述べると、外側駆動部202は、溝26aと噛みあい、相対軸力をスウェージアンビル210に駆動または働かせるので、スウェージアンビル210のスウェージキャビティ212内にカラー14が受容され、ワークピース18aおよび20aが互いに固定されるようにスウェージアンビル210がカラー14をスウェージする。
図3は、他の型のピン先の無い締結具10bに使用される例示的なカラー14を示す。ピンシャンク15bは、雌ねじ付ねじ穴77のねじ山に対応するねじ山304を有する駆動ロッド302を備えた内側駆動部306を有する据付工具300と一緒に使用するのに適した雌ねじ付ねじ穴77を備える。このような据付工具は、米国特許第6497024号にも記載されている。要約すると、据付工具300の内側駆動部306は、ピンシャンク15bの雌ねじ付ねじ穴77に係合し、スウェージアンビル310をカラー14に向かって引張るので、カラー14は、スウェージキャビティ312内に受容されてスウェージされる。
したがって、本発明の、鍛造し放しの低スウェージ荷重カラー14は、多種多様な締結具およびその締結具のための工具であって、ピン先の有る締結具およびピン先の無い締結具を含むものと共に使用可能であり、これらの締結具および工具は、図2,3に示されるとともに上記米国特許第6497024号に記載された発明との関係で記述された改良されたねじ山形状と比較して、より深く狭い溝またはより短いピッチの、従来の環状または螺旋状のロック溝ねじ山形状を有する。このことは、重要な進歩だと言える。なぜなら、以下に簡単に述べるように、米国特許第6497024号の締結具の構造では、必要スウェージ荷重が扱える程度の大きさにまで低減されるものの、そうするためには、ねじ山形状を大幅に変える必要があり、またカラーには、必要な材料特性(例えば、強度)を得るために、熱処理(例えば、焼入れ・焼戻しや応力除去)が施される。本発明のカラー14は、上述の改変されたねじ山形状(例えば図2,3に示す)の締結具に適用できるにもかかわらず、狭くて深いロック溝を備えた従来のまたは標準的なねじ山形状を有する締結具にも容易に使用することができる。図7および図7Aと、米国特許第6497024号に開示された発明とを参照されたい。本明細書で後述するように、例示的な鍛造し放しカラー14は、本発明の例示的な締結システム50の改良されたハイブリッドねじ山形状26d(図6)と一緒に容易に使用することもできる。
図4および図5は、既知の従来技術のカラー(例えば、14′)を本発明の例示的カラー14と比較して示している。カラー14′は、円筒型のシャンク61′および貫通孔65′とともに任意の直径の拡大フランジ59′を備える。カラーシャンク61′は、壁厚t′が略均一である、略均一な円筒形状をなしている。カラー14′は、真直ぐなシャンク部分69′を有し、その外側の端部は、半径方向外方に広がるシャンク部分67′で終端する。このシャンク部分67′もまた、略厚さt′のものである。
本発明の例示的なカラー14(図1〜3,5,7)のように、スウェージされる以前には、カラー14′はピンシャンク15の外側に配置されるのに適しており(例えば図1を参照)、ワークピース18,20(図1)と一緒にまとめられ、カラーシャンク61′がロック溝26と半径方向に整列する(図1)。同時に、フランジ59′は、ワークピース20の外面73と係合する。ワークピース18および20の厚さの合計t1(図1)は、締結具(例えば、10)の公称グリップを規定する。ただし、締結具10は、最小合計厚さがt1よりも小さいワークピース(図示せず)から、最大合計厚さがt1よりも大きいワークピース(図示せず)までの、所定のグリップ範囲にわたって使用できることは理解されるであろう。
本明細書に参考として組み込まれる米国特許第6497024号で論じられているように、カラーシャンクをスウェージするのに必要とされる相対軸線方向荷重は、均一直径の真っ直ぐなカラー孔部分69′と、ロック溝26のクレスト71(例えば図1を参照)との間の隙間を縮小することで最小となる。米国特許第6497024号の発明において、この半径方向の隙間は特に半径方向に縮小され、従来のロックボルトのそれの約半分ほどになっている。例えば米国特許第6497024号の図7を参照されたい(典型的なスウェージ型締結具のねじ山形状を示す)。最小化された内径ID′によってもたらされる小さい半径方向の隙間によって、外径OD′は所望のボリュームをもたらすのに必要な厚さt′のものに抑えることができる。かくして米国特許第6497024号で論じられるように、内径ID′および外径OD′は、カラーシャンク61′の所望の壁厚t′をもたらすように選択され、それによって、スウェージに必要なカラー材料の量と、所望のロック溝充填の量とがもたらされる一方で、スウェージ荷重の所望の低減がもたらされる。
ただし、米国特許第6497024号の図4A,7A,8Aおよび9Aに示され、その明細書において論じられているように、このような締結具およびそのためのカラー14′は、ロック溝26を備えるための改良されたねじ山形状を必要とし、その改良されたねじ山形状は、(米国特許第6497024号の図4A,8Aおよび9Aに示される改良された溝構造を、図7に示す従来技術の締結具と比較して)幅が広く、概して浅い。加えて、その改良された締結具のねじ山形状は、上述の高いスウェージ荷重を克服するのに寄与するが、それはまた、必要な材料特性(例えば、強度)を維持するために、カラー14′の高コストな熱処理を必要とする。
したがって、スウェージ型締結具の設計を改善しようとするこれまでの試みの視点においては、その類の締結具の技術分野において、低スウェージ荷重と高強度との最適なバランスを誇示する、経済的で高グレードの締結具を生み出すことは、良く知られた長い間の望みであった。上述の締結具が、実質的にスウェージ荷重を低減するという目的は果たす一方で、今までは高コストなカラー熱処理とねじ山形状の改善によってのみそれが叶えられていた。数ある方法のなかでも本発明の低スウェージ締結システム50がこれらの欠点を克服するのは、多種多様な既存の締結具およびそのためのねじ山形状と一緒に容易に使用でき、また、鍛造し放しで使用できて熱処理を必要としないのに、高グレード(例、グレード5およびグレード8)の材料特性(非限定例として、強度)を呈する上述の改善されたカラー14を設けることによる。このためカラー14は、改善された独立した構成部品として、または代わりに例示的な締結システム50の他の低スウェージの特長と組み合わせて、遡及的に既存の締結具と一緒に使用することができる。
図5は、例示的な鍛造し放しの低スウェージ荷重カラー14を、それぞれ図1〜3,7の締結具10,10a,10b,10c,10dと一緒に使用されているものとして、より詳細な等角斜視図で示す。例示的に低減した、カラー14の壁厚t(例えば、図4に示すカラー14′の厚さt′と比べて)を示すために、カラー14の一部分は切り欠いてある。このように、同様のグレードの締結具に関しては、本発明のカラー14の内径IDは、図4に示すカラー14′の内径ID′と同じように、ロック溝クレスト71(図1)の外径Dbと実質的に等しい。ただし、例示的カラー14の外径ODは、従来技術のカラー14′の外径OD′よりも小さく、結果として例示的な、カラーシャンク61の壁厚tが低減する。今まで以上に詳しく後述されるように、壁厚tが低減することで、ロック溝(図1〜3,6B,6Cおよび7にそれぞれ示す26,26a,26b,26c,26d)にスウェージされるべき材料の量が小さくなる。このことは、例示的カラー14の硬度が増したことと相まって、ロック溝(例えば、26,26a,26b,26c,26d)を過剰に充填しない結果となり、これは多くの従来技術におけるカラーの設計と正反対である。また、カラーの内径IDを低減することで、スウェージの際にカラーがロック溝に係合するために動く距離が少なくなる。クレストの外形からカラーまでの隙間が従来技術より少ないため、本発明のカラーをロック溝にスウェージングする際に費やされるスウェージ荷重は、より少ない。従来技術のロックボルトシステムにおいては、カラーとクレストの外径との間の隙間がより大きかったため、カラーが隙間の空気を通過してロック溝内にスウェージされるまでに、カラーにより多くのスウェージ荷重がかけられていた。ロック溝26,26a,26b,26c,26dを過剰に充填しない低減した壁厚tおよび、カラーとロックボルトのクレストの外径との間の縮小された隙間は、例示的カラー14をスウェージするのに必要な相対的な軸線方向荷重を低減する。
したがって、本発明は、スウェージ荷重の類似する到達点までの低下を、公知従来技術よりも、より経済的で改良された方法で完成させる。例示的カラー14の壁厚tの、例えばカラー14′の管厚t′と比べた正確な差異や低減量は、問題となっているある締結具のサイズ(非限定例として、1/2インチ,5/8インチ,3/4インチ)に一部依存するものとして理解されるであろう。例えば、カラー壁厚の違いは、例えば同等のグレードの1/4インチ締結具のペアにおいてよりも、同等のグレードの3/4インチ締結具のペアにおいてより大きい傾向にある。本発明のカラーシャンク16の厚さtが減ったことの効果、および厚さtの代表的な数値の例は、以下に記載される実施例においてさらに詳しく説明され、理解されるであろう。これらの実施例は、鍛造し放しの高強度カラー14および締結具(例えば、10,10a,10b,10c,10d)において、カラーシャンク61の壁厚tが薄くなったことの効果を評価することを目的として実施されたいくつかの実験の結果を示し考察するものである。また、以下に記載する実施例は、改良点をさらに示すものであり、本発明を限定するものではない。
実験1の目的は、HS5CF−R12寸法で作られたカラーを鍛造し放しで使用しても、グレード8の基準を満たすか否かを判定することであった。HS5CF−R12締着具は、市販のグレード5のスウェージ型締結具であって、テキサス州ウェーコに所在のハック・インターナショナル社によって製造されるものである。
この実験1は、焼入れおよび焼戻しされた一般的なグレード8のカラーの外径(OD)、硬度、スウェージ荷重、張力、および予荷重のテストを含むもので、このグレード8のカラーは、グレード5の鍛造し放しカラーとの比較においてテストされた。結果は、下の表1において定量化されている。
表1に示すように、カラー「A」および「B」の双方において、そのスウェージ荷重は、現行の一般的なHS8CF−R12カラーより18%低く、また、双方が、産業基準としてグレード5が要求する張力および予荷重の必要条件を満たす。実験1は、鍛造し放しカラーであるカラー「A」が、カラー「B」に勝る異なる2つの効果を有することを明らかにした。
1)カラー「A」は、熱処理作業(例えば、焼入れ・焼戻しや応力除去)を必要とせず、したがって、カラーを洗浄または脱炭する追加ステップを経験せず、
また、
2)カラー「A」は、カラー「B」よりも、業界仕様書の最小値よりも予荷重の余裕が特に高い。
カラー「A」は、現行の一般的なグレード5のカラーと同等な実際の高い張力および予荷重を完全には有していなかったにもかかわらず、そのスウェージ荷重は、顕著に(18%)低かった。このように、このテストは、本発明による、外径ODが小さくそのため壁厚も薄い鍛造し放しカラーは、最適な材料特性を呈するとともに、経済的に、スウェージ荷重の低減(18%)を達成することができることを裏付けた。
実験2は、据付工具の耐用期間を改善するとともにグレード8のカラーを作るコストを削減するための経済的な方法を開発したいという願望に起因した。具体的には、この実験の目的は、より薄い壁の鍛造し放しカラーが、一般的な、焼入れ・焼戻ししたカラーと同じ張力および予荷重を維持して、スナッブ荷重を増やし、スウェージ荷重を減らすことができるかどうかを判定することであった。スナッブ荷重とは、カラー14がピンロック溝26、26a、26b、26c、26dに最初に係合するときの荷重である。この係合位置以降は、カラー14はピン12,12a,12b,12c,12d上に重ねられているので、シート(例えば、ワークピース18,20;18a,20a;18b,20b;18c,20c)の隙間引き抜きは制限される。もし、スナッブ後に隙間が残る場合は、カラーの伸長が、ピン12、12a,12b,12c,12dを引き伸ばすかわりに隙間を減少させることになるので、クランピングは減少する。
同じ作業手順および原料(張力50KSI)のHSCF−R20カラーを4つの群に分けた。HSCF−R20カラーは、市販のカラーであって、テキサス州ウェーコに所在のハック・インターナショナル社によって製造されるものである。
グループ1は対照群であり、一般的方法(例えば、焼入れ・焼戻し)で処理された。カラー外径ODは、25.63mm(1.009インチ)であった。グループ2は鍛造し放しで、カラー外径ODは25.40mm(1.000インチ)まで小さくされた。グループ3は鍛造し放しで、カラー外径ODは25.27mm(0.995インチ)まで小さくされた。グループ4は鍛造し放しで、カラー外径ODは25.14mm(0.990インチ)まで小さくされた。
全てのカラーは、同じ表層品質および潤滑性を有するために、ショットブラストで仕上げられ、ワックスをかけられた。さらに、同じ据付工具および同じテスト計測器であったので、同じピンの作業手順が全ての試験において使用された。3つのテストは、スナッブ荷重、スウェージ荷重、予荷重および張力の各カテゴリを各グループにそれぞれ割り当てて行われた。報告を単純化するために、テストの平均値だけが本願明細書の表2において報告されている。
一般的なカラーに関するカラー外径ODの公差範囲は、25.70mm(1.012インチ)から25.55mm(1.006インチ)である。鍛造し放しカラーに同じ公差範囲を使用すると、許容カラー外形ODの範囲は、約25.43mm(1.001)インチから25.27mm(0.995インチ)となる。表2に表すように、表2の外径ODの値は、約25.14mm(0.990インチ)から25.63mm(1.009インチ)までにおよび、またこれらの値は最小値および最大値として見なすことができる。したがって、25.40mm(1.000インチ)および25.27mm(0.995インチ)の平均値は、25.63mm(1.009インチ)の公称値と直接比較することができる。
表2に定量化した結果が表すように、鍛造し放しカラーは、一般的な、焼入れ・焼戻ししたカラーに勝る利点として以下の点を提示する。
1.力学的値の向上
スナッブ(隙間引き抜き)荷重は約44%大きく、スウェージ荷重は約11%低く、また、引張り強度および予荷重は約5%増加する。予荷重は、双方の型のカラーにおいて業界規格最小値より約7%大きいが、鍛造し放しカラーを使用すると、引張り強度は規格最小値の約3%上から、規格の約9%上まで改善される。鍛造し放しカラーは据付工具圧も約10%〜20%減少し、結果として工具摩耗が減少して、より利用しやすい小さい工具、および軽い工具となるのは、非常に重要な効果である。
2.品質の向上
カラーが焼入れ・焼戻しされないと、硬化層および脱炭の問題はなくなる。さらに、鍛造し放しカラーの硬度範囲は約10Rbに収まるので、硬度の一貫性は同じままである。また、硬度がグレード規格の最小値であるRb68に接近する場合、焼入れ・焼戻しされたカラーのいくつかは、張力必要条件を満たさないこともあり得る。これは、硬度が増した例示的な鍛造し放しカラーでは問題とはならない。
3.コスト削減
熱処理およびこれに関連するブラスト洗浄のステップを省くことで、鍛造し放しカラーの製造コストは削減される。さらに、カラー原材料のコストは、カラーを製造するために一般に使用される焼きなましされたAISI1010鋼ワイヤを、その焼きなましされたAISI1010鋼ワイヤと実質的に同程度加工硬化されるため例示的な鍛造し放しカラーの製造に使用され得る熱間圧延AISI1006ワイヤに置き換えることで、削減可能である。鍛造し放しカラーは、焼きなましされない、または焼なましされた低炭素鋼から作っても良い。これもまた、焼なまされず、そのためより安価である。
4.リードタイム削減
熱処理およびこれに関連する検査を省くことで、典型的にカラーの製造に必要とされる時間のうち、約2〜3日ほどを削減することができる。
したがって、実験2の結果は、本発明における鍛造し放しカラーを使用する利点をさらに裏付けた。さらに、実験1と併せて見ると、本発明の締結具およびそのためのカラーの、据付工具部品(例えば、アンビルやシンブル)の磨耗を減らし、工具耐用期間を延ばす能力は明らかになる。例示的鍛造し放しカラーはより硬いため、アンビルの磨耗は増加することが予想されたが、本発明によって発見されたことには、アンビルの磨耗は、例示的カラー14の外径ODを小さくし、それにより壁厚tを減らすことで、実際には顕著には変化せず、また、シンブルは、必要とされる工具圧を減らしたことで、耐用期間が延びた。
実験1および実験2の結果に関して、実験3はさらにカラーの壁厚を減らす一方カラーの硬度を増すことの効果をテストし、高強度と低スウェージ荷重の最適なバランスを見出そうとした。隙間引き抜きは、結合に最適なクランプよりも低い結果をもたらす。ただし、実験2が明示するように、カラーの硬度を増すことで、カラーを据付するために必要なスウェージ力も増す。また、カラーの壁厚を減らすことで、スウェージ力は、スナッブ(隙間引き抜き)荷重に比べて不釣合いに低下する。したがって、先行する2つの実験の発見を組合せ、本実験は、張力および予荷重は変えずに維持し、スナッブ荷重を増やす一方スウェージ荷重を低減させることで据付工具の耐用期間を延ばすために、カラー硬度の増加とカラー壁厚の減少とのバランスを取ることで、従来の締結具設計の制限を克服することを目的とした。本実験は、また、将来的に予想される新しいカラーへの切替えを、可能な限り単純なかつコスト効率の良いものとするために、前述のことを、一般的なピンまたは据付工具を変更することなく達成することも目的とする。
一貫性のため、テスト中、カラーの作業手順は同じものが使われた。カラーの壁厚は、カラー外径ODを0.254mm(0.010インチ)ずつ機械加工で減らしていった。スナッブ荷重、スウェージ荷重、放出負荷、予荷重、および引張り強度は、最適な壁厚を求めて詳しく調べられた。カラーの硬度を顕著に増す最も一貫した方法は、実施例1および実施例2から学んだように、カラーを鍛造し放しとしておくことで、これにより、硬度は正味で約20〜25Rbポイント増加する。一旦、最適なカラー壁厚が判定されると、本明細書において米国特許第6497024号と関連して既に説明した型のピンを、一般的なピンと比べるために、同じテストがなされた。米国特許第6497024号と関連した型のピンは、一般的なピンと同じ硬度およびピン破断まで熱処理がなされた。これは、ロック溝の形状の効果を判定するために行われた。全てのテストは、生産テスト装置によって、一般的なテストの手続きを用いてなされた。
テスト間で顕著な偏差が無かったので、報告を単純化するために、各条件について、3つのテストの平均値のみを報告する。表3は、例示的な壁厚の小さいカラーを、一般的なねじ山形状と一緒に使用した時の結果を示すものである。
表3から計算し得るように、外径ODが24.77mm(0.975インチ)の鍛造し放しカラーが、計算すると、現在の一般的なカラーと、クランプ力および張力の値が等しく、しかしスナッブ荷重は約54%増え、スウェージ荷重が約6%減る。この結果は、本発明における締結具の特質と、鍛造し放しの、壁厚が薄い、低スウェージ荷重のカラーの特質とをさらに裏付けるものである。
このグループの一般的なロック溝(例えば、米国特許第6497024号の図7および図7Aに言及して議論された型のもの)のスナッブ、クランプ、及び張力のデータは、表3の最初のグループのデータの正当性を立証する。スウェージ荷重は、予想されたよりも約589.7kg(1,300ポンド)低く、またはオリジナルで6%減少した代わりに約12%減少した。ロック溝のねじ山形状に由来する値に顕著な差は無かった。硬くて壁厚の薄い鍛造し放しカラーと組合わされた改良ハイブリッドロック溝のスウェージ荷重は、一般的な螺旋状のロック溝ねじ山形状および焼入れ・焼戻しされたカラーにおけるスウェージ荷重に比べ、顕著に(約40%)減少した。
要約すると、本実験は、鍛造し放しカラーを使用することで硬度を一貫して高めることができ、また、このように硬度がより高くなることでフープ強度が増すので、カラー壁厚を減少させることができるということを裏付けた。カラー外径ODを24.77mm(0.975インチ)まで減少させると、予荷重や張力の実際の値には変化がないが、隙間引き抜きが約50%増加し、スウェージが約10%低減する。硬度が約20Rbポイント増すことで、算出されるカラーの耐磨耗性は約40%増し、また、鍛造し放しカラーをスウェージするに際して、ピンやスウェージアンビルの変形は必要無い。このように、本発明の締結システム50の締結具およびそれ用のカラーが、最適化された物理的特性、低スウェージ荷重、および経済性を呈するだけでなく、そのカラー14は、本発明の改良ハイブリッドねじ山形状26d(図6c)だけでなく、多種多様な既存の締結具ピンおよびそれらのねじ山形状と一緒に容易に使用することができる。
ピン12,12a,12b,12c,12d(図1〜3,6B,6Cおよび7)は、圧縮力のあるスウェージ荷重によって、押し潰されたり、または過剰な引張り降伏や局部絞りが起きたりしないように抵抗するのに充分に、カラー14の硬度と比較して硬いことが望ましい。このため、本発明の一実施形態において、例えばグレード5型締結具において、ピン12,12a,12b,12c,12dは、AISI1038鋼、AISI1541鋼、または同じグレードの硬度が約Rc24〜35で、最大引張り強度が最低120KSIである他の同等の材料から作られても良い。典型的には、この種の締結具のための従来のカラー(例14′)は、約Rb65〜85の間の硬度で、最低約60KSIの最大引張り強度に熱処理される必要のある、AISI1010炭素鋼で作られていた。
ただし、上記において論じたように、例示的カラー14は、例えばAISI1006鋼、または他の適切な、焼きなましされた、または焼きなましされていない低炭素鋼材料から作られる。AISI1006鋼は焼なましされていない。焼きなましされていない鋼ワイヤ、通称「グリーンワイヤ」は、より安価で、このため例示的カラー14の製造をさらに経済的にする。ピン12,12a,12b,12c,12dは、カラー14に加わる所望の高引張予荷重およびスウェージ荷重の双方を、実質的に降伏することなく受入れるのに充分な硬度を有する。さらに、例えば米国特許第6497024号で論じたカラーのようなカラー14は、水溶性のポリエチレンワックスや、セチルアルコールのような従来の潤滑剤によってコーティングすることができる。また、カラー14は亜鉛メッキすることができる。これは、スウェージ荷重を所望の低いレベルに維持し、スウェージキャビティ112,212,312,412の磨耗を最小限に抑えるのに役立つ。それゆえ、実施例1〜3に示すように、カラー14のシャンク61(図5)は、充分な壁厚tと、それゆえ充分な体積を備えており、充分なカラー材料が軸線方向に細長くなるように動き、しかし同時にそれが、ピン肩60(図1)およびスウェージ中に形成されるカラー肩が、ジョイントにかかる引張荷重が設計引張荷重に到達する際に実質的に充分に嵌合された状態を維持するのに充分な強度を有するようにする。その際、例示的カラーシャンク61が必要とする壁厚t(図5)は、直径の大きい締結具では若干増え、直径の小さい締結具では若干減り、また、本発明で発見された利点を呈するのに充分に薄く、サイズおよびグレードが等しい既知の従来技術のカラーよりも薄い。さらに表4は、従来の焼入れ・焼戻しのカラー14′と本発明鍛造し放しカラー14とを、従来のグレード5およびグレード8の締結具10,10a,10b,10c,10d、および例示的低スウェージ荷重の締結システム50の改良されたグレード5およびグレード8の締結具10c,10d(図6および7)と一緒に使用した場合の比較において、カラー14の改良点を要約するものである。3つの異なる公称締結具サイズ、12.70mm(1/2インチ),15.88mm(5/8インチ)および6.350mm(1/4インチ)についての様々なカラー寸法が示されている。前者2つの型の締結具に関しては、まず既存の焼入れ・焼戻しされたカラー14′のカラー寸法を示し、本発明の鍛造し放しカラー14の値は、右に字下げして示す。グレード5およびグレード8の締結具に関して示される鍛造し放しカラーバルブのみが、"次世代"と呼ばれる。これらの締結具は、本明細書で論じられる、本発明の例示的なハイブリッドねじ山形状126(図6C)を使用している。
図4に示すように、本発明の鍛造し放しカラーにおいて、鍛造し放しカラーの内径IDに対する外径ODの比率は概略、(i)15.88mm(5/8インチ)、グレード5の従来締結具では1.491、(ii)15.88mm(5/8インチ)、グレード8の従来締結具では1.540、(iii)15.88mm(5/8インチ)、グレード5の次世代締結具では1.481、(IV)15.88mm(5/8インチ)、グレード8の次世代締結具では1.502、であった。本発明のカラーにおける、内径に対する外径の比率の適当な範囲は、約1.47〜1.55、またはこの範囲内の特定の範囲である可能性が高い。範囲についての付加的な例示的実施形態は、定義を単純にするために記載しない。従来技術の焼入れ・焼戻しのカラーにおいては、カラーの内径に対する外径の比率は概略、(i)15.88mm(5/8インチ)、グレード5の締結具では1.509、(ii)15.88mm(5/8インチ)、グレード8の締結具では1.557であった。
スウェージ荷重が低減すると、据付工具(例えば、それぞれ図1〜3における100,200,300;図7〜9の据付工具400も参照のこと)のサイズも小さくすることができるので、結果として、従来の据付工具の重量と比べて最大40%の重量削減となる。例えば上記米国特許第6497024号(その明細書の図7の工具148と比べて工具重量の削減について説明している)を参照のこと。
本発明のカラー14を一緒に使い得る多くの締結具(例、10,10a,10b,10c,10d)が、サイズおよび/または長さの減少した引張り部分および/またはピン先を有しているという事実からみると、据付の準備として最初にワークピースに予備組付けする際に、ピンおよびカラーを一緒に把持するための構造を提供することは望ましいであろう。このため、カラーは、可撓性のある予備組付けタブ90(図5)を任意に備えても良い。例えば、米国特許第4,813,834号を参照のこと。任意の組付けタブ90を使用する場合、その構造および実施は、参照によって充分に記載しているかの如く本明細書中に組み込まれている上記米国特許第’834号に開示されるものとほぼ同じである。簡潔には、予備組付けタブ90は、カラー14の皿孔部分55内に位置し、周方向へ限定的な長さを有している。予備組付けタブ90は、上記米国特許第’834号に述べられるように、好適には可撓性のある構造とし、このため例えばポリエチレンなどのプラスチック材料から作られても良い。タブ90は、溝26,26a,26b,26c,26dなどのロック溝内に位置するのに充分な距離だけ半径方向内方に延在する。このようにして一旦一つのロック溝内に位置すると、カラー14は、これと共働するピン12,12a,12b,12c,12d上に保持される。タブ90は、フランジ59に整列したポイントにある皿孔部分55内に位置する。任意のタブ90は、カラー14の、ピン上への移動と、タブ90の、ロック溝クレスト上での位置割出しとを促進する。タブ90は代りに、カラー14の反対側の端部に位置しても良いということは理解されるであろう。また、カラーは任意のタブ90を使用しなくても良いということも理解されるであろう。
また、カラー14の一つ以上の部分は、本明細書に図と共に記載されるものと異なる構成であっても良いということも理解されるであろう。例えば、カラーはフランジが無くてもよく(図示せず)、または、より小さいサイズのフランジ(図示せず)を有しているか、および/または、カラーは皿孔部分55を備えていなくとも良い。さらに、カラー14は任意に、この種の皿孔部分を、カラーの反対側の端部に備えても良い(図示せず)。また、米国特許第4,867,625号で論じているように、任意の組付けタブ(例えば、90)は、カラー14および共働するピンをワークピースに予備組付けした状態に保持することに加え、ワークピースのいくらかの最初のクランプが得られる程度に事前に選択された、よりしっかりした限定的なねじ山(図示せず)を備えていても良い。例えば、米国特許第’625号(限定的雌ねじ山に関する開示について参照により充分に記載しているかの如く本明細書中に組み込まれている)を参照のこと。
本発明の低スウェージ荷重の締結システム50がスウェージ荷重を低減するもう一つの手段が図6Cに示され、特に、図6Cと、図6Aおよび663との比較において示される。具体的には、図6Cに示すように、ハイブリッドねじ山形状26dは、ピン12dのロック溝26dのために備えられ、それぞれ図6Aおよび6Bの実施例の、波形ロック溝26bおよび深いロック溝26cのような既知のねじ山形状を改善する。図6Cの例示的ねじ山形状は、多くの混合さられた半径を含む、複数の特徴の独自の融合によって規定され、これは、クレスト28d,30dとロック溝26dの底との間の実質的に滑らかな移行をもたらす。より詳しくは、第1クレスト28dは第1半径R1を、また第2クレスト30dは第4半径R4を有し、そして2つの中間半径R2,R3は、溝26dの底または谷132を規定すると同時に、第1半径R1と第4半径R4とを滑らかに相互接続する。このようにして、ハイブリッドねじ山形状26d(図6C)は、図6Aおよび6Bのそれぞれにおける浅いねじ山形状と深いねじ山形状26b,26cとの比較的滑らかでない急な移行を改善する。具体的には、図6Aの比較的浅い波形26bは、もっとたくさんの半径を必要とし、半径間は比較的不連続に移行し、図6Bの深いロック溝ねじ山形状26cでは、半径間は比較的鋭く、混ざらずに移行する。さらに、図に示されるように、図6Aの波形26bは、広いピッチ36bと比較的浅い深さ38bとを有し、これに対し図6Bの深いねじ山形状26cは、比較的狭いピッチ36cとずっと大きい深さ38cとを有する。
継続して参照する図6Aおよび6Bに関してそれぞれ理解されるであろうように、比較的浅い波形26bは、カラー14がスウェージされる際に過剰に充填する傾向にあり、既に論じたように、このことでスウェージ荷重は不利に増える。これに対して、図示するように、図6Bの深いねじ山形状26cにおける急な移行は、カラー14がスウェージされる際に、ピン12cのロック溝26cとカラー14との間で起こる嵌合の量が所望の量より少ないという逆の効果を有する傾向にある。
図6Cを参照することとし、例示的ハイブリッドねじ山形状26dを図6Aおよび6Bのねじ山形状26bおよび26cと比較すると、ハイブリッドねじ山形状は、幾分か中庸的なピッチ36dおよび深さ38dを有するということは理解されるであろう。これは、上述の混合された半径R1,R2,R3,R4との組合せで、滑らかで混合されたねじ山形状26dを供給し、したがって、カラー14がスウェージされる際に、カラー溝62とロック溝26dとの補完的な噛合い嵌合を促進し、これによりスウェージ荷重を低減する。例示的ねじ山形状126の利点は、さらに下表5の値から認めることができる。表5は、図6A,6Bおよび6Cに関して記載された3つの異なる、グレード8で15.88mm(5/8インチ)の締結具であって、それぞれ異なるねじ山形状26b,26c,26dを備えたピン12b,12c,12dを有する締結具の値の非限定的比較例を要約したものである。
表5に記載した深いロック溝ねじ山形状は、図2に表した雌ねじ穴204の剥離に関連した問題を減らすように開発されたものである。ロック溝26cの深さを増すことは、雌ねじ穴204の損害を減らすのに有効であることが判明した。その後、深いロック溝26cは、図7に示す型の引張り型構造177には必要ないことが判明した。表5に記載したハイブリッドロック溝ねじ山形状は、図7に示す型の引張り構造177に使用するために開発された。
図示されるように、ハイブリッドロック溝ねじ山形状26d(図6C)は、波形および深いロック溝ねじ山形状26b,26cとそれぞれ比較して比較的中庸的な深さ38dおよびピッチ36dを有し、その一方で、図6Bの深いロック溝26cと概略同等の低スウェージ荷重を維持することを含む前述の利点の全てを達成する。また、さらにスウェージ荷重を減らすために、例示的ハイブリッドねじ山形状26dは、上述の鍛造し放カラー14と組み合わせて使用してもよいということは理解されるであろう。例えば、図6Cおよび表5の15.88mm(5/8インチ)でグレード8の締結具に関しては、上述の鍛造し放しカラー14と一緒に図6cの例示的ハイブリッドねじ山形状26dを使用する場合、波形ロック溝を使用する場合に比べてスウェージ荷重は約11%減少すると予想することができる。また、図6Cおよび表5の15.88mm(5/8インチ)でグレード8の締結具に関しては、上述の鍛造し放しカラー14と一緒に図6cの例示的ハイブリッドねじ山形状26dを使用する場合、螺旋形ロック溝を使用する場合に比べてスウェージ荷重は約40%減少すると予想することができる。
本発明の鍛造し放しカラーにおいて、ピンとカラーとの間の剪断強さの比率は概略、(i)グレード8締着具においては1.8、(ii)グレード5締着具においては1.6であることが分かった。本発明のピンとカラーとの間の剪断強さの比率の適切な範囲は、約1.5〜2.1、またはこの範囲内の他の何らかの範囲となるであろう。その範囲の付加的な例示的実施形態は、定義を単純化するために、記載しない。従来技術の焼入れ・焼戻ししたカラーにおける、ピンとカラーとの間の剪断強さの比率は概略(i)グレード8締着具においては2.5、(ii)グレード5締着具においては2.2であることが分かった。
また、本発明の鍛造し放しカラーにおいて、ロック溝は典型的に(i)グレード8締着具において、深いロック溝26cのねじ山形状においては約40%、そして螺旋ロック溝26dのねじ山形状においては約60%、また(ii)グレード5締着具において、深いロック溝26cのねじ山形状においては約30%、そして螺旋ロック溝26cのねじ山形状においては約50%、充填されることが分かった。より深いロック溝を過剰以下の充填状態で使用することは、ピンに施されてロック溝の凹部に蓄積する塗装仕上げをピンが伴うという見地からは望ましいということが分かっている。
また、ロック溝の深さに対するピッチ長さの典型的比率は、深いロック溝ねじ山形状においては約2.8であり、ハイブリッドロック溝ねじ山形状においては約3.6であることも分かっている。ロック溝の深さに対するピッチ長さの典型的比率の適切な範囲は、約2.5〜4.0、またはこの範囲内の他の何らかの範囲であろう。従来技術の波形ロック溝において、ロック溝の深さに対するピッチ長の典型的比率は約4.8であった。
図7,8および9は、本発明における、スウェージ荷重を低下させ、それによって据付工具の耐用期間を延ばす構造をさらに示す。既に論じたハイブリッドねじ山形状26dおよび鍛造し放しカラー14の様に、以下の低スウェージ荷重構造もまた、独立して使用しても、または上述のハイブリッドねじ山形状26d(図6C)および鍛造し放しカラー14(図1〜3,5,6A,6Bおよび6C)の一方または両方とのいかなる適切な組合せにおいて使用しても良い。
図7は、2つのワークピース18d、20dを互いに固定するための締着具10dおよび据付工具400を示し、ここで締着具は、ピン12dの第2の端部19に、実質的に真直ぐで比較的短い引張り部分179を備える引張り構造177を有する。加えて、本発明の方法に従い、典型的な低スウェージ荷重システム50を使用して締着具10dを据付するための4つの順次的な工程を示す。
ピン12dの引張り部分179の長さ183は比較的短く、そのためピン12dの第2の端部19からの延在または突出距離は短い。実際、例示的引張り部分の突出長さ183は、参照により本明細書に含まれる米国特許第4,299,519号のエイコン形状の引張り部分(例えば、図1〜5を参照)と違って短いため、本発明の引張り部分179は据付後に切断されることを目的としていない。ただし、引張り部分179の切断は、ピン12dの破断溝の使用や、本発明の他の実施形態の切断工具(図示せず)によって引張り部分179を切り落とすことなどによって想定可能である。これは、破断溝(例えば、図1の破断溝40を参照)の突然の破断に起因するとされている、据付工具400の衝撃荷重を有利に排除する。それはまた、ピン先破片およびピン破断騒音もなくす。米国特許第4299519号のエイコン形状の引張り部分の好適な実施形態は、これらの不都合をこうむる。より詳しくは、例えば、15.88mm(5/8インチ)、グレード8の締結具10dにおいて、例示的引張り部分179は、約2.54mm(0.10インチ)か、または米国特許第4299519号のエイコン形状の引張り部分よりも少なく突出する。同様に、米国特許第4299519号のエイコン形状の引張り部分と違って、例示的引張り部分179は実質的に真直ぐ伸び、その全ての引張り溝181が実質的に等しい直径DBを有し、この直径DBは、図示するようにピン12dのロック部分25dの外径Daよりも小さい。後述するように、例示的引張り部分179の真直ぐな、より小さい直径DBの構成は、据付工具400によるより良い係合を促進し、工具の耐用期間を延ばす。またこれは、例えば米国特許第4299519号の、引張り部分の各溝が異なる直径を有する先細エイコン形状の構成よりも製造するのが顕著に容易である。
また、本発明の締結システム50の他の改良点も、図7,8および9に示す。具体的には、締着具10dを据付するための典型的な据付工具400は、前述のとおり、ピン(例えば、ピン12d)の引張り部分179の溝181と補完的に噛合するように構成された複数の歯408を有する引張り部404を有するコレット402と、カラー14をスウェージするためのスウェージキャビティ412を有するアンビル部材410と、を備える。例示的引張り部分179が径DBが小さく概して真直ぐな構成であることで、コレット402(図7および8)の断面厚さT(図7および8)を増加させることができる。具体的には、厚さTは、ピンロック部分25cおよび引張り部分179のそれぞれの直径Da′およびDBの差分いっぱいまで増加させることができる。これは据付工具400をより強くし、それにより耐用期間を長くする。例示的小径引張り部分179においてはまた、結果として、引張り部分179を製造するのに必要とされる材料が、例えば、図2の締結具10aの引張り部分およびロック部分25aと比べて少なくなる。これによって代わりに、例示的ピン引張り部分179の引張り溝181および、これに対応する据付工具引張り部分404の歯408に、より大きい厚さを持たせることができ、それにより引張り溝181の剥離および擦り剥けを減らすことができる。引張り溝の剥離および擦り剥けは、この種の技術分野において長年知られた欠点である。米国特許第4299519号の先細エイコン設計のねじ山の最初のいくつかは径が小さく、そのため強度および剥離抵抗が減るので、剥離および擦り剥けを受けやすい可能性がある。
前述のように、図7はまた、本発明の例示的低スウェージ荷重締結システム50を使用した一般的な据付方法を示す。具体的には、図示するように、作業の際、一旦ピン12dを、整列した開口16d,17dを通してワークピース18d,2Odに挿入したら、カラー14をピン12dの第2の端部上に取付ける。前述のように、カラーは、上述の例示的鍛造し放しカラー14であっても良いし、そうでなくとも良い。次いで、ピン12dの引張り部分179に、据付工具400のコレット402を係合させる。例示的コレットは、開口位置(図7の一番上の図)まで広がり、締付け位置または閉口位置(図7の上から二番目の図)まで収縮する割りグリッパコレット402であり、ここでコレット引張り部分404の歯408は、引張り部分179の引張り溝181と補完的に実質的に完全に噛合する。次いで据付工具400は駆動されて、コレット402がピン12dおよびカラー14をアンビル410のスウェージキャビティ412内に引き込むためにコレット402をスウェージアンビル410内に引き込んでコレット402の引張り部分404を閉じ、その結果、半径方向内側にスウェージ荷重をかけて、カラー14をピンロック溝26d内へとスウェージ(絞り加工)する。検出ロッド406は、ピン12dが完全に引っ張られた時を検出することで、スウェージ操作が完了した時を検知し、これに応じて、コレット402を離脱させ、引張り部分179を開放し、カラー14をアンビル410から排出して、据付工具400を停止させる。このようにして、例示的据付システム50および据付方法は、ピン先の無い据付の全ての利点を達成することで、締結具の据付を飛躍的に改善し、簡易なものにしながら、シンブル(金属環)上に必然的に発生する高摩耗の回転といった、関連する欠点を回避し、そのシンブルは、長寿命のコレット402によって置き換えられる。このことで、独立コレット、解放排出装置、独立ジョー、そしてフォロアとばねなどの、据付工具の他の複数の独立部品が省略可能となり、これらは基本的に1つの部品すなわち、例示的割りグリッパコレット402によって置き換えることができる。このようにして、本発明は、据付のサイクル時間、費用、および係合のための既知の回転の複雑さを減らし、より速く、軽く、静かで、動く部品の少ない据付工具を提供し、顕著なコスト削減を実現する。
本明細書に図とともに記載したものと異なる他の据付方法と構造も使用できるということは理解されるであろう。例えば、前述のとおり、切断可能なピン引張り部分(図示せず)や内側駆動の引張り構造(図示せず)を本発明の範囲を出ることなく使用できると考えられる。また、引張り部分179は、環状の引張り溝181を有するものとして示されているが、もしも対応する改良が据付工具になされれば、他のねじ山形状(非限定の例として、螺旋状のねじ山)も、使用できるということは理解されるであろう。
例示的ピン引張り部分構造により得られる例示的据付工具400の改良点はさらに、図8および9からも理解される。
図8は、据付工具400のための例示的割りグリッパコレット402の引張り部分404の一部を示す。引張り部分404は、係合端部405(図8の左方へ向く部分)、および複数の歯408を有する。図8の例において、引張り部分404は、4つの歯408を有する。係合端部405に隣接する第1の歯409は、第1の内径ID1を有する。他の歯408は、ID1より小さい第2の内径ID2を有する。第1の引張り歯409の内径ID1を広げることで、図示するように、本発明のコレット設計は、歯409の欠けに抵抗する。
具体的には、例示的な第1の歯409の頂部(図8に仮想線で示される)は、その位置の内径ID1を広げるために取り除かれている。このことは代わりに、荷重の主要点を、この位置から、引張り部分404の奥の方(例えば図8では右の方)へと移動させ、それにより歯409の最も前方の谷径rに加わるモーメントが減り、結果としてコレット402の耐用期間を延ばす。より詳しくは、例えば、図8の実施例における第1の歯の高さhを参照すると、歯の高さは約30%低く、その結果として工具400の耐用期間は飛躍的に延び、以前は前方の歯409が14,000サイクルで機能しなくなったのに対し、例示的引張り部分179(図7)を有するグレード5の締結具において、約5443kg(12,000ポンド)のスウェージ圧に対し約24,000サイクルまで据付サイクルが増えた。この飛躍的な改善は、前述のとおり、内径ID1を増やして前方の歯409のモーメント腕を短くしたことで、破損形態をコレット402の引張り部404のより頑丈な領域(例、左から4番目の歯408)へ移したことに起因する。この改善は上述の、コレット402の壁厚tを増すことにより得られた工具耐用期間の延長に加えられるものである。さらに、前述したように、これらの全ては例示的な単一部品の割りグリッパコレット402を使用することで得られ、このグリッパコレット402は、独立ジョー、独立排出装置、または独立フォロアとばねを必要とせずに拡張および締付けを行うのに適している。これは、例示的割りグリッパコレット402が少なくとも1個のスリット(図示せず)を有するからであり、このスリットは、グリッパコレット402が緩んだ、または広がった位置(図7の最上図)から、閉じられた、または締付けられた位置(図7の上から2番目の図)へと、アンビル410の内孔420(図9)に引き込まれることで締付けられるのを可能にし、このときアンビル410は、コレット引張り部分404を閉じるために半径方向内方への力を働かせる。ただし、例えば非限定例としての独立した締付け可能なジョー(図示せず)を有する、他の既知の、または適切な代替コレット設計(図示せず)を、例えばピン引張り部分179(図7)に係合して引張るのに使用できるということは理解されるであろう。
図9は、例示的な低スウェージ荷重の締結システム50の、さらに他の進歩を示している。
具体的には、例示的スウェージアンビル410は、スウェージキャビティ412を有し、このスウェージキャビティ412は、図示するように、カラー14(図7)、スウェージ陸部416および、内孔420との最初の嵌合わせを補助するための拡径入口部分414を有する。スウェージ陸部416は、第1の直径D1を有し、内孔420は、第1の直径D1より大きい第2の直径D2を有する。したがって、スウェージ陸部416の後方で広がる内孔直径D2は、カラー14(図7)に生じる圧縮スウェージ荷重を解放する。これは、例示的スウェージ陸部416(図9の部分拡大図において最もよく示される)が比較的狭い(すなわち小さい)ことによって可能となる。このスウェージ陸部の狭い幅418は、スウェージアンビル410の全長Lにわたり実質的に連続的に単一の直径を有する場合と異なり、その狭い陸部から、内孔の直径D2に向かって広がるため、小さなスウェージ領域を画成する。例示的アンビル410の内孔420の拡大直径D2はまた、コレット402の、より厚く、それゆえより丈夫な壁厚T(図7および8)を収容するための空間を提供し、このことで工具耐用期間は更に延びる。さらに、本発明の改良型アンビル410の長さLは、例えば図1のアンビル110に比べて短くても良い。したがって、本発明の低スウェージ荷重の締結システム50は、工具の部品数を減らし、工具の重量を削減し、工具が必要とするスウェージ荷重を低減し、工具を製造するコストを削減し、工具の予想される耐用期間を延ばすことで、据付工具400に多くの改善点をもたらした。
特に図6A,6Bおよび6Cを参照しながら、カラーとボルトとの相互作用を記載する。カラーが最初にボルトを予荷重に引っ張ろうとすると、カラーは充分強くないので、第1のボルトクレストはカラーを剪断し、空隙を形成し、ボルトクレストの前のカラー材料を巻き上げる。第2のボルトクレストにおいては、同じことが起こるが、その度合いは小さい。最終的には、充分なカラー材料がボルトに係合し、空隙および巻き上げは生じない。このことは、焼入れ・焼戻しされたカラーよりも硬い鍛造し放しカラーにおいては、剪断強度がより高いため、より早く生じる。より硬いカラーは、ボルトをより早く引っ張って、より大きい予荷重を発生させる。
図10は、本発明の一実施形態における、改良型締結具ピン引張り部分および据付工具形状の断面図であり、異なるコレットを用いて改良型ピン引張り部分を使用しながら締結具カラーをスウェージする際の4つの順次的な据付工程を示す。ここに示すシステムは、図7と同様である。図8と同様の図11は、図10の据付工具のための異なるコレットの端部の断面図である。
図10および11は、複数のワークピースを互いに固定するように構成されたスウェージ型締結具のための低スウェージ荷重の締結システムを開示している。このスウェージ型締結具は、ワークピースの整列した開口内に配置するのに適した細長いピンシャンクを有する1本のピン部材を備える。ピン部材の一方の端部は、複数のワークピースの一方の表面に係合するのに適合した拡大頭部において終端し、他方の端部は、複数のワークピースの反対の側の、反対側の表面を通り過ぎて延在するのに適した溝付部分で終端する。
この溝付部分は、周方向へ延在しているピン溝と、そのピン溝に関連してピンクレスト(ピン頂部)で終端するピン肩とで画成された複数のロック溝を有するロック部分を備えている。
据付工具は、スウェージキャビティを有するアンビル部材410を備える。また鍛造し放しカラー14は、概ね真直ぐなカラーシャンクを備え、このカラーシャンクは、据付工具によってピン部材と鍛造し放しカラーとの間に加えられる相対軸力またはスウェージ荷重に応じてピン部材の前記ロック溝にスウェージされるのに適している。
互い固定されるワークピースに加えるクランプ荷重としてどの程度の大きさの荷重を所望するかによって、締結されるジョイントも定まる。前記据付工具のスウェージキャビティは、前記カラーシャンクに係合し、これを半径方向内方にスウェージするように構成されている。鍛造し放しカラーは、スウェージされると前記ピン溝およびピン肩と噛合するカラー溝およびピン肩を有する。前記ピン部材および前記鍛造し放しカラーは、前記ピン部材に前記カラーをスウェージングする際に前記ピン部材の降伏が実質的に回避されるように、異なる大きさの最大剪断応力を有する、異なる材料より成る。
コレット600は、前記コレットからの突出部分602を有し、このため引張り部分の長さ604がカラー14方向へ延び、これによりアンビル410との接触領域が増えている。引張り部の長さを延ばすことで、アンビルとの接触領域が増し、それによって圧力および擦り剥けが減少する。また、これにより引張り部は、より小さいアンビル孔を通って戻る際の食付き角を持つことができる。
鍛造し放しカラーは熱処理を必要とせず、鍛造し放しカラーの概ね真直ぐなカラーシャンクの壁厚は比較的薄いため、鍛造し放しカラーに必要なスウェージ荷重が低減する。
突出部分602は、コレット600の先端ねじ山608の前方に隣接する環状の平面606を形成する。そして、平面606の前方には環状の前方傾斜面610がある。また、第2の平面612および傾斜平坦面614があって、コレット600の外径との交差領域616の線へと戻る。最後のボルトクレストの剪断強度は、ボルト端部の頭つきブランクの外径を小さくしないことで増している。
引張り部620の端部618は、溝624の底622と一致する直径位置にまで細くされない。このことで、引張り部620の端部引張りクレスト626の剪断強度が増す。引張り歯は、ボルトねじ山を線636の位置で剪断する。
引張り部の最終引張りクレスト626は、コレット600の最終歯622の拡大した引張り部半径630に合致する輪郭628を有する。
また、引張り部の短い第1の歯632は、その厚さ634を増すので、欠けが減少する。
前述したように、本発明は、低スウェージ荷重の締結システムおよび方法を提供するものであって、鍛造し放しカラー、ハイブリッドロック溝ねじ山形状、改良されたピン引張り部、および、種々の据付工具改良点を含む、締結具および据付工具における多くの改良点を有し、これら全ての改良点は、独立してでも、また、何らかの適切な組合せにおいても、スウェージ荷重を低下させ、スウェージ型締結具の据付をより良いものとする。
本発明の特定の実施例を詳細に説明してきたが、当業者はこれらの詳細についての様々な変形態様および変形例を、本開示の全体的な教示を考慮して開発し得るということは理解されるであろう。したがって、開示されている特定の構成は、単に例示であるだけで、本発明はこれに範囲を制限されることはなく、請求の範囲および、これと均等の範囲にわたり、充分な広がりを持つものである。