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JP5265256B2 - セラミック配線基板 - Google Patents

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Description

本発明は、セラミック配線基板に係り、特には導体の組成に特徴を有するセラミック配線基板に関するものである。
コンピュータのマイクロ・プロセッサ・ユニット(MPU)等として使用される半導体集積回路素子(ICチップ)は、近年ますます高速化、高機能化しており、これに付随して端子数が増え、端子間ピッチも狭くなる傾向にある。一般的にICチップの底面には多数の端子が密集してアレイ状に配置されており、このような端子群はマザーボード側の端子群に対してフリップチップの形態で接続される。ただし、ICチップ側の端子群とマザーボード側の端子群とでは端子間ピッチに大きな差があることから、ICチップをマザーボード上に直接的に接続することは困難である。そのため、通常はICチップをICチップ搭載用配線基板上に搭載してなるパッケージを作製し、そのパッケージをマザーボード上に搭載するという手法が採用される。
この種のパッケージを構成するICチップ搭載用配線基板には各種の絶縁体材料が使用可能であり、その例としてセラミックを使用したものが従来よく知られている。セラミックパッケージと呼ばれるこの種のパッケージでは、絶縁体部分にアルミナを主成分としたセラミック材料を使用し、導体部分にアルミナと同時焼成可能な高融点金属であるタングステンを使用したものが主流となっている。そして、上記材料からなるセラミックパッケージは、高強度なため十分な実装強度が得られる、封止性が高い等といった利点を有する反面、銅配線等と比べて導体部分の配線抵抗が高いといった欠点を有している。
これに対して、近年ではガラスセラミックなどの低温焼成材料が開発され、その結果、導電性の高い銅や銀を導体部分の材料として使用することで、導体部分の低抵抗化が可能になってきた。その一方で、ガラスセラミックはガラス質を多く含む組成であるため、強度的に弱くしかもめっき液に侵されやすいことから、十分な実装強度が得られないという問題があった。
さらにこれらの問題に鑑みて、絶縁体部分にアルミナを主成分としたセラミック材料を使用し、導体部分にタングステンと銅との混合物を使用したものが従来提案されるに至っている(例えば、特許文献1,2,3参照)。そして、このような材料の組み合わせによれば、実装強度の向上と低抵抗化の両方が達成されうるものと期待されている。
特開平07−015101号公報 特開平05−144316号公報 特許3493310号公報
ところで、上記従来技術のような銅−タングステンからなる導体を有するセラミックパッケージを製造する場合、仮に低融点な銅(1083℃)に合わせて焼成温度を低めに設定して同時焼成を行ったとすると、アルミナの焼結が不十分になり、所望とする強度を達成できなくなる。また、焼成温度を絶縁体の焼結温度に合わせて同時焼成した場合、低融点な銅が熔融し、その熔融に伴って銅の流動や揮発が起こる結果、導体(特に配線パターンの部分)が滲んだり引き下がったりして、好適なパターン形状を保持できなくなるという問題があった。またその一方で、導体の電気抵抗も高くなってしまい、導体中に低抵抗な銅を含有させた優位性が損なわれてしまう。
また、タングステンは窒素雰囲気中800℃以上で不純物である酸素との反応によって、酸化し昇華するため、焼成炉内やセラミック配線基板が汚染されやすい。ゆえに、このような汚染を避けるためには、焼成時に大量の水素を混在させておくことで酸素分圧を低く(例えば800℃で1×10−21atm以下に)保つ必要があり、それゆえ製造コストが高くなる。
さらに、上記従来技術のような銅−タングステンからなる導体を有するセラミックパッケージを製造する場合、同時焼成を行った際にセラミックと金属との焼成収縮率がマッチングしていないと、反りや剥がれが起こって歩留まりが低下するという問題もあった。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、実装強度に優れるとともに導体部分の電気抵抗が低く、しかも同時焼成により反りや剥がれ等を起こすことなく製造可能なセラミック配線基板を提供することにある。
上記課題を解決するために本願発明者らが鋭意研究を行い、同時焼成によって熔融した銅の流動及び揮発を阻止するための手段を模索したところ、熔融した銅の流動等を阻止して所定位置に保持するための具体的手段として、特定の無機金属酸化物を主体とするフィラーを用いればよいという新規な知見を得た。また、かかる特定の無機金属酸化物を主体とするフィラーを所定量用いることで、同時焼成性を向上できることも新規に知見した。そして、本願発明者らはこれらの新規な知見をさらに発展させて下記の解決手段を想到したのである。
即ち、上記課題を解決するための手段(手段1)としては、銅の融点よりも高い温度で焼結するセラミックを主体とするセラミック基体に導体が形成されたセラミック配線基板において、前記導体は、前記銅よりも高融点である酸化クロムを主体とするフィラーと銅との混合相からなり、前記酸化クロムの含有量が20体積%以上50体積%以下であり、前記フィラーの平均粒径が10μm以下であることを特徴とするセラミック配線基板がある。
従って、上記手段1によると、銅を含んで形成された導体としているため、従来のタングステンを主成分として形成された導体に比べて低抵抗となる。また、銅よりも高融点であるクロム系の無機金属酸化物を主体とするフィラーと銅との混合相からなる導体としているため、同時焼成時に銅が熔融したとしても、前記フィラー自体は高融点であることから熔融せずに固体状態を維持してそこに留まり、熔融した銅の流動及び揮発を阻止する。その結果、導体における銅がその位置に保持され、導体中におけるボイドの発生や、セラミック部分からの導体の突出が防止され、比較的形状のよい導体を得ることができる。
しかも、また、クロム系の無機金属酸化物を主体とするフィラーを適量用いているため同時焼成性が向上し、セラミックと金属との焼成収縮率もマッチングすることから、反りや剥がれを起こすことなく同時焼成を行うことが可能となる。
以上のことから、上記手段1によれば、実装強度に優れるとともに導体部分の電気抵抗が低く、しかも同時焼成により反りや剥がれ等を起こすことなく製造可能なセラミック配線基板を提供することができる。
上記セラミック配線基板を構成するセラミック基体は、銅の融点(1083℃)よりも高い温度で焼結するセラミックを主体とするものである
絶縁体材料としてのセラミックは特に限定されず、その具体例としてはアルミナ、窒化アルミニウム、窒化ほう素、炭化珪素、窒化珪素などといった高温焼成セラミックの焼結体が挙げられる。なお、ホウケイ酸系ガラスやホウケイ酸鉛系ガラスにアルミナ等の無機セラミックフィラーを添加したガラスセラミックのような低温焼成セラミックの焼結体は、強度的に弱いためここでは使用されない。通常、セラミック基体は板状であり、平面視で例えば矩形状を呈している。
セラミック基体には導体が形成されている。そのような導体の具体例としては、セラミック基体の内部に形成された内層導体パターン及びビア導体や、セラミック基体の表面上に形成された外層導体パターンや実装パッドなどがある。これらの導体は、銅よりも高融点であるクロム系の無機金属酸化物を主体とするフィラーと銅との混合相からなる。
導体の形成材料の1つとして銅を選択した理由は、銅は低い電気抵抗率(1.69×10−8Ω・m)を持つ金属であるにもかかわらず、銀や金などに比べて安価だからである。ただし、銅は融点が低い(1083℃)ため、高融点であるクロム系の無機金属酸化物を主体とするフィラーを銅に混合させている。
ここで、導体は銅と上記無機金属酸化物との合金相ではなく、混合相である必要がある。その理由は、合金相であると銅と無機金属酸化物とが渾然一体となっているため、熔融した金属の流動、揮発を有効に阻止できないからである。
上記フィラーは、銅の融点よりも高融点であるクロム系の無機金属酸化物を主体とすることがよく、具体的には融点が1400℃以上であることが望ましい。その理由は、このような高融点のクロム系無機金属酸化物であれば同時焼成時の温度を経ても確実に固体状態を維持して、熔融した液状の銅に対する増粘効果が奏され、熔融した銅の流動及び揮発を確実に阻止することができるからである。なお、導体は上記クロム系の無機金属酸化物を主体とするものであればよいため、少量であればそれ以外の金属あるいは無機化合物を含んでいてもよい。
前記フィラー中の無機金属酸化物としては、クロムと酸素とからなる無機化合物(酸化クロム:Cr)があるほか、クロムとクロム以外の金属と酸素とからなる無機化合物などを挙げることができる。後者の化合物としては、例えば、クロムと銅と酸素とからなる無機化合物、即ちCuCrO,CuCr,CuCr,CuCr等といった銅クロム複合酸化物がとりわけ好適である。
酸化クロムや銅クロム複合酸化物は元来酸化物であるため、同時焼成時の酸素分圧の多少に影響を受けにくい。それゆえ、同時焼成時に酸素分圧を低く保つべく水素を多量に混在させておく、といったことが要求されなくなり、雰囲気制御の負担が小さくなる点で有利である。また、この種の化合物のうち特に酸化クロムは一般的な導電性材料であるタングステンよりも安いことから、フィラーとして使用した場合であってもコスト増を招かない点で有利である。また、酸化クロム及び銅クロム複合酸化物は、いずれも銅と馴染みやすく濡れやすい性質を有するため、銅と混在していても銅をはじかず、均一に分散した状態で存在しうる。特にその組成中に銅を含む銅クロム複合酸化物は、酸化クロムよりもさらにこの性質が強く現れる。そして、これらのことが導体の低抵抗化に寄与していると推測される。
前記フィラーの平均粒径は特に限定されないが、強いて言えば10μm以下であることが好ましい。その理由は、フィラーが細かくて揃っていたほうが、溶融銅中に均一に分散しやすく、熔融した銅の流動、揮発を有効に阻止できるようになるからである。これと同様の理由で、銅についても平均粒径が10μm以下であることが好ましい。平均粒径が10μm超であると、特に実装パッドなどの大面積パターンについては銅が玉状になって浮き出してくるのを抑制する効果が薄れてしまい、また、配線の滲みや細りを抑制する効果も薄れてしまう。なお、フィラー及び銅の平均粒径は2μm以下であることがより望ましく、1μm以下がさらに望ましく、0.5μm以下が特に望ましい。
前記導体における無機金属酸化物の含有量は、10体積%以上60体積%以下とされている。この含有量が10体積%未満であると、フィラーの分量が少なくなる結果、熔融した銅の流動、揮発を有効に阻止できなくなるおそれがある。従って、特に実装パッドなどの大面積パターンについては銅が玉状になって浮き出してくるのを抑制する効果が薄れ、また、配線の滲みや細りを抑制する効果も薄れてしまう。さらに、セラミック基体との焼成収縮率がマッチングせず、反りや剥がれが発生しやすくなってしまう。
逆に、この含有量が60体積%超であると、銅の含有量が低くなりすぎてしまい、導体内にて銅粒子同士が連結した状態で存在できず、配線の比抵抗が高くなってしまう。以上のことを考慮すると、前記導体における無機金属酸化物の含有量は、20体積%以上40体積%以下であることが特に好ましい。
以下、本発明を具体化した実施形態のセラミックパッケージ10及びその製造方法を図1〜図8に基づき説明する。
図1に示されるように、本実施形態のセラミックパッケージ10(セラミック配線基板)は、例えばICチップ21のような半導体集積回路素子あるいはVICSEL等の光素子を実装するための装置である。このセラミックパッケージ10を構成するセラミック基体11は、上面12(基体表面)及び下面13を有する矩形平板状をなす部材である。このセラミック基体11は、3つのセラミック焼結層14,15,16を積層してなる3層構造を有している。本実施形態において、上側セラミック焼結層14、中間セラミック焼結層15及び下側セラミック焼結層16は、いずれもアルミナ焼結体からなる。なお、本実施形態では3層構造としたが、2層構造を採用しても構わないし、4層以上の多層構造を採用しても構わない。
このセラミック基体11は、上面12において開口するキャビティ22を備えている。本実施形態のキャビティ22は平面視で略矩形状を呈しているが、略矩形状以外の形状を採用することも可能である。キャビティ22の外形寸法は、セラミック基体11の外形寸法の50%〜90%程度に設定されており、本実施形態ではセラミック基体11の外形寸法の65%程度に設定されている。キャビティ22の深さは上側セラミック焼結層14の厚さ分に相当している。キャビティ22の底面における離間した2箇所には、セラミックとの同時焼成により得られたメタライズ層からなる上面側実装パッド23が形成されている。ICチップ21は、これらの上面側実装パッド23上にAgエポキシ樹脂やAg−Si樹脂を用いて接着される。なお、ICチップ21は、上面側実装パッド23上にAu−Au接合によって接合されていてもよい。前記上面側実装パッド23上には、必要に応じてニッケル層や金層(いずれも図示略)が形成されていてもよい。
また、中間セラミック焼結層15において上面側実装パッド23に対応した箇所には、ビア導体18が形成されている。中間セラミック焼結層15と下側セラミック焼結層16との界面には、セラミックとの同時焼成により得られたメタライズ層からなる内層導体パターン28が形成されていて、それら内層導体パターン28はビア導体18の下端に対してそれぞれ電気的に接続されている。
図1に示されるように、下側セラミック焼結層16において内層導体パターン28に対応した箇所にも、セラミックとの同時焼成により得られたビア導体19が形成されている。セラミック基体11における下面13の外周部には、同じくセラミックとの同時焼成により得られたメタライズ層からなる下面側実装パッド27が複数個設けられている。それら下面側実装パッド27は、下側セラミック焼結層16のビア導体19の下端に対して、それぞれ電気的に接続されている。これらの下面側実装パッド27は、セラミックパッケージ10を図示しない他の基板上(マザーボード上)に実装する際に、複数の基板側端子に対して接合される。なお、パッケージ形態は特に限定されず任意であり、例えば、BGA(ボールグリッドアレイ)、PGA(ピングリッドアレイ)、LGA(ランドグリッドアレイ)のいずれでもよい。
そして、本実施形態のセラミックパッケージ10では、各部分の導体(即ちビア導体18,19、上面側実装パッド23、下面側実装パッド27、内層導体パターン28)が、アルミナの融点よりも高融点であるクロム系の無機金属酸化物を主体とするフィラーと銅との混合相からなるものとされている。
次に、上記構造のセラミックパッケージ10を製造する方法について図2〜図6に基づいて説明する。
まず、セラミック基体11となるべきセラミック未焼結体を準備する準備工程を実施する。具体的には、アルミナ粉末等のセラミック粉末、有機バインダ、溶剤、可塑剤等を混合してスラリーを作製する。そしてこのスラリーを従来周知の手法(例えばドクターブレード法やカレンダーロール法)により厚さ100μm〜300μmのシート状に成形して、図2に示すようなセラミックグリーンシート64,65,66を3枚作製する。なお、上側セラミックグリーンシート64の略中央部には、平面視略矩形状のキャビティ22を貫通形成しておく。このキャビティ22は、従来周知のパンチング(打ち抜き)加工によって形成されてもよく、あるいはレーザ加工やドリル加工などの手法によって形成されてもよい。
本実施形態においてより具体的には、平均粒径0.8μmのアルミナ粉末を用いるとともにこれを90重量%とし、その残部としてSiO,MgO,BaO,MnO,Nbなどの粉末を混合した。このような混合粉末に対し、ブチラール系バインダ、可塑剤、溶剤等を混合してスラリーとした。
続く穴あけ工程では、セラミック未焼結体であるセラミックグリーンシート64,65,66の複数箇所に、後にビア導体18となるべき穴部76をそれぞれ貫通形成する(図3参照)。穴部76は、従来周知のパンチング(打ち抜き)加工によって形成されてもよく、あるいはレーザ加工やドリル加工などの手法によって形成されてもよい。
続く導体部形成工程では、穴部76内にそれぞれ導体部を形成する。より具体的にいうと、まず従来周知のペースト印刷装置によるビアメタライズ充填を行って、穴部76内に導体ペースト77を充填する(図4参照)。次に、セラミックグリーンシート65,66の上に所定の導体ペースト77を所定パターン状にスクリーン印刷する。これらの印刷層は、後に上面側実装パッド23、下面側実装パッド27、内層導体パターン28となるべき部分である。
続く積層工程では、下側セラミックグリーンシート66の上に中間セラミックグリーンシート65及び上側セラミックグリーンシート64を順次積層し、従来周知のラミネート装置を用いて厚さ方向に所定の荷重を加えることにより、これらを圧着、一体化して積層体を形成する(図5参照)。
そして、この積層体を窒素中で脱脂した後、加湿した窒素水素混合ガス中、所望の酸素分圧下においてアルミナが焼結しうる所定の温度(1200℃〜1400℃)で焼成する。この焼成工程を経ると、上側セラミックグリーンシート64、中間セラミックグリーンシート65及び下側セラミックグリーンシート66が焼結して、キャビティ22を有するセラミック基体11が得られる。また、導体ペースト77の焼結によって、上面側実装パッド23、下面側実装パッド27、内層導体パターン28、ビア導体18が形成される。なお、この状態のものは、セラミックパッケージ10となるべき製品領域を平面方向に沿って縦横に複数配列した構造の多数個取り用セラミックパッケージであると把握することができる。
さらに、多数個取り用セラミックパッケージを図示しないブレーク溝に沿って分割し、個片化する(図6参照)。その後、キャビティ22内にICチップ21を収容し、はんだ付けを行う。その結果、図1に示す素子付きセラミックパッケージ10が完成する。
次に、本実施形態において行った評価試験について説明する。
この評価試験では、導体を構成する金属材料を変更して複数種類の試料を作製し(表1のNo.1〜17参照)、それぞれについて比抵抗(μΩ・cm)と導体層形状(滲み、銅玉状浮出し、反り)とを調査した。その結果を表1に示す。ここでは、上述した手順により、幅200μm、長さ30mmのライン状導体層と、12.5mm×12.5mmの正方形状導体層とを有する試験用サンプルを作製した。
比抵抗については、四端子抵抗計にて上記ライン状導体層の抵抗値を測定した後、当該ライン状導体層の断面積及び配線長に基づいてその値を算出した。そして、比抵抗の値が10μΩ・cm以下であれば「良好」と判定した。導体層形状については、導体層を拡大鏡で目視観察し、銅が導体層表面やパッド部に押し出されていなければ「○(良好)」とした。また、セラミックと正方形状導体層との焼成収縮率がマッチングせず、正方形状導体層が200μm以上反った場合には「×(不良)」と判定した。
ここで、試料No.1では、銅(Cu)100体積部を含む導体ペーストを使用し、銅のみからなる導体層を得た。試料No.2では、タングステン(W)のフィラー65体積部と、銅35体積部とを含む導体ペーストを使用し、当該フィラーと銅との混合相からなる導体層を得た。試料No.3では、酸化クロム(Cr)のフィラー60体積部と、粒径0.5μmの銅40体積部とを含む導体ペーストを使用し、当該フィラーと銅との混合相からなる導体層を得た。試料No.4では、酸化クロム(Cr)のフィラー90体積部と、粒径0.5μmの銅10体積部とを含む導体ペーストを使用し、当該フィラーと銅との混合相からなる導体層を得た。試料No.5では、酸化クロム(Cr)のフィラー30体積部と、粒径0.5μmの銅70体積部とを含む導体ペーストを使用し、当該フィラーと銅との混合相からなる導体層を得た。試料No.6では、酸化クロム(Cr)のフィラー20体積部と、粒径0.5μmの銅80体積部とを含む導体ペーストを使用し、当該フィラーと銅との混合相からなる導体層を得た。試料No.7では、酸化クロム(Cr)のフィラー30体積部と、粒径0.5μmの銅70体積部とを含む導体ペーストを使用し、当該フィラーと銅との混合相からなる導体層を得た。試料No.8では、酸化クロム(Cr)のフィラー40体積部と、粒径0.5μmの銅60体積部とを含む導体ペーストを使用し、当該フィラーと銅との混合相からなる導体層を得た。試料No.9では、酸化クロム(Cr)のフィラー50体積部と、粒径0.5μmの銅50体積部とを含む導体ペーストを使用し、当該フィラーと銅との混合相からなる導体層を得た。試料No.10では、酸化クロム(Cr)のフィラー60体積部と、粒径0.5μmの銅40体積部とを含む導体ペーストを使用し、当該フィラーと銅との混合相からなる導体層を得た。試料No.11では、酸化クロム(Cr)のフィラー30体積部と、粒径5μmの銅70体積部とを含む導体ペーストを使用し、当該フィラーと銅との混合相からなる導体層を得た。試料No.12では、銅クロム複合酸化物(CuCr)のフィラー30体積部と、粒径1.2μmの銅70体積部とを含む導体ペーストを使用し、当該フィラーと銅との混合相からなる導体層を得た。試料No.13では、銅クロム複合酸化物(CuCr)のフィラー40体積部と、粒径1.2μmの銅60体積部とを含む導体ペーストを使用し、当該フィラーと銅との混合相からなる導体層を得た。試料No.14では、銅クロム複合酸化物(CuCr)のフィラー50体積部と、粒径1.2μmの銅50体積部とを含む導体ペーストを使用し、当該フィラーと銅との混合相からなる導体層を得た。試料No.15では、銅クロム複合酸化物(CuCr)のフィラー60体積部と、粒径1.5μmの銅40体積部とを含む導体ペーストを使用し、当該フィラーと銅との混合相からなる導体層を得た。試料No.16では、銅クロム複合酸化物(CuCr)のフィラー30体積部と、粒径1.5μmの銅70体積部とを含む導体ペーストを使用し、当該フィラーと銅との混合相からなる導体層を得た。試料No.17では、銅クロム複合酸化物(CuCrO)のフィラー30体積部と、粒径1.5μmの銅70体積部とを含む導体ペーストを使用し、当該フィラーと銅との混合相からなる導体層を得た。
表1に示すように、各試料の作製を行ったところ、試料No.1(Cu100)及び試料No.2(Cu35:W65)については、滲み、銅玉状浮出し、反りが著しく、比抵抗の測定が可能な好適な試料を得ることができなかった。
比抵抗については、試料No.5〜17においてその値が10×10−8Ω・mよりも低くなり、現行品の値よりも十分低くなることがわかった。なかでも特に、試料No.6が2×10−8Ω・mと最も低く、次いで試料No.5、No.7が3×10−8Ω・mと低かった。一方、試料No.3、No.4に関しては10×10−8Ω・mを超えてしまい、低抵抗化を十分に図ることができなかった。
また、No.3〜No.17に関しては、いずれも導体層形状が良好であり、滲み、銅玉状浮出し、反りが殆ど認められなかった。
図7は先の評価試験で好結果を示した試料(例えばNo.6)の導体層の顕微鏡写真(SEM写真)であり、図8は同じく導体層の顕微鏡写真(TEM写真)である。いずれも濃色粒子はCrであり、淡色部はCuである。図7のSEM写真によると、Cu中にCrが均一に分散しているのがわかる。また、Cr粒子同士が凝集部(直径10μm以上の塊)を形成しておらず、空隙も存在していないことがわかる。図8のTEM写真によると、CuとCrとが密着しており、両者間に中間層が存在しないことがわかる。つまり、酸化クロム及び銅クロム複合酸化物は、いずれも銅と馴染みやすく濡れやすい性質を有するため、銅と混在していても銅をはじかず、均一に分散した状態で存在することが実証された。そして、このことが導体の低抵抗化に寄与していると推測された。
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態のセラミック配線基板10における各導体は、銅の融点よりも高融点であるクロム系の無機金属酸化物を主体とするフィラーと銅との混合相からなる。また、その無機金属酸化物の含有量は10体積%以上60体積%以下に設定されている。この場合、銅を含んで形成された導体となるため、従来のタングステンを主成分として形成された導体に比べて低抵抗となる。また、アルミナの融点よりも高融点であるクロム系の無機金属酸化物を主体とするフィラーと銅との混合相からなる導体としているため、同時焼成時に銅が熔融したとしても、前記フィラー自体は高融点であるため熔融せずに固体状態を維持してそこに留まり、熔融した銅の流動及び揮発を阻止する。その結果、導体における銅がその位置に保持され、導体中におけるボイドの発生や、アルミナ部分からの導体の突出が防止され、比較的形状のよい導体を得ることができる。
しかも、また、クロム系の無機金属酸化物を主体とするフィラーを適量用いているため同時焼成性が向上し、アルミナと金属との焼成収縮率もマッチングすることから、反りや剥がれを起こすことなく同時焼成を行うことが可能となる。
以上のことから、本実施形態によれば、実装強度に優れるとともに導体部分の電気抵抗が低く、しかも同時焼成により反りや剥がれ等を起こすことなく製造可能なセラミック配線基板10を得ることができる。
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
例えば、上記実施形態では、酸化クロムを使用して導体を形成した例、銅クロム複合酸化物であるCuCrO,CuCr,CuCrを使用して導体を形成した例を示した。しかし、別の銅クロム複合酸化物、例えばCuCrを使用して導体を形成することもできる。あるいは、酸化クロムや上記の各種銅クロム複合酸化物を2種類以上使用して同様に導体を形成することもできる。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)銅の融点よりも高い温度で焼結するセラミックを主体とするセラミック基体に導体が形成された構造を備え、前記導体が銅よりも高融点であるクロム系の無機金属酸化物を主体とするフィラーと銅との混合相からなり、前記無機金属酸化物の含有量が10体積%以上60体積%以下であるセラミック配線基板の製造方法であって、銅の融点よりも高い温度で焼結するセラミックを主体とする未焼結セラミック基体に、銅よりも高融点であるクロム系の無機金属酸化物を主体とするフィラーと銅とを含む導体形成用材料を用いて、後に導体となる未焼結導体部を形成する未焼結導体部形成工程と、前記セラミックが焼結する温度に前記未焼結セラミック基体を加熱して前記未焼結セラミック基体及び前記未焼結導体部を焼成することで、前記フィラーと銅との混合相からなり前記無機金属酸化物の含有量が10体積%以上60体積%以下である導体を有するセラミック基体を形成する同時焼成工程とを含むセラミック配線基板の製造方法。
本発明を具体化した実施形態のセラミックパッケージを示す概略断面図。 実施形態のセラミックパッケージの製造手順を説明するための概略断面図。 同じく製造手順を説明するための概略断面図。 同じく製造手順を説明するための概略断面図。 同じく製造手順を説明するための概略断面図。 同じく製造手順を説明するための概略断面図。 導体部分のSEM写真。 導体部分のTEM写真。
符号の説明
10…セラミック配線基板
11…セラミック基体
18,19…導体としてのビア導体
23…導体としての実装パッド
27…導体としての実装パッド
28…導体としての内層導体パターン

Claims (4)

  1. 銅の融点よりも高い温度で焼結するセラミックを主体とするセラミック基体に導体が形成されたセラミック配線基板において、
    前記導体は、前記銅よりも高融点である酸化クロムを主体とするフィラーと銅との混合相からなり、
    前記酸化クロムの含有量が20体積%以上50体積%以下であり、
    前記フィラーの平均粒径が10μm以下である
    ことを特徴とするセラミック配線基板。
  2. 前記導体は、前記セラミック基体の内部に形成された内層導体パターン及びビア導体であることを特徴とする請求項に記載のセラミック配線基板。
  3. 前記導体は、前記セラミック基体の表面上に形成された実装パッドであることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミック配線基板。
  4. 前記導体は、電気抵抗率が10×10−8Ω・m以下であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のセラミック配線基板。
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