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JP5254527B2 - 男性臭抑制剤 - Google Patents

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Description

本発明は、男性臭抑制剤に関し、詳しくは、人体から発生する体臭のうち、特に男性特有の体臭を効果的に制御するデオドラント剤に関する。
従来から、汗臭、腋臭、足臭等の体臭は汗と皮膚常在菌により作られ、その成分は一般的に低級脂肪酸やアンモニウム等であることが知られている。そして、体臭中には揮発性ステロイド類という男性特異臭が存在し、その中でもアンドロステノンという物質に対して女性が特に不快感を示すことが報告されている(非特許文献1参照)。
低級脂肪酸やアンモニウム等の臭気に対する従来のデオドラント技術としては、菌の増殖を抑える殺菌剤を主成分として臭いの発生量を減らす方法(特許文献1参照)、発生した臭いを粉体に吸着させる方法(特許文献2参照)、香料でマスキングする方法等が存在するが、いずれも揮発性ステロイドに代表される男性臭を制御するものとは異なる。
また、没食子酸誘導体等の抗酸化物質を用い、酸化的な反応で発生する体臭を予防する技術も存在するが(特許文献3参照)、これは没食子酸のポリフェノールとしての収斂作用に消臭効果を期待するものであり、男性臭の抑制に関して言及するものではなかった。
一方、皮膚常在菌の活性を抑制することで揮発性ステロイドの発生を抑制する技術が報告されている(非特許文献2参照)。
第55回日本化粧品技術者会講演要旨集p21〜24 第55回日本化粧品技術者会講演要旨集p25〜28 特開平3−284617号公報 特開平10−338621号公報 特開2004−018513号公報
上述のように、従来のデオドラント技術においては、男性特有の体臭(男性臭)の制御を特に対象とするものはなかった。このような状況のもと、本発明は、人体から発生する体臭のうち、特に男性臭を効果的に制御することの可能なデオドラント剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ね、その過程で、代表的な男性臭である揮発性ステロイドの発生要因に着目した。揮発性ステロイドは、皮膚常在菌により発生するほか、揮発性ステロイド間での酸化変換反応によっても発生することに着目した。すなわち、アンドロステノール等のアルコール体は、酸化により変換し、女性が特に不快感を示す揮発性ステロイドであるアンドロステノン等のケトン体が生成することに着目した。そしてこの変換反応を制御することにより同時に制御可能であり、男性臭の発生を効果的に抑制し得ることを見出した。
さらに、抗酸化物質と、揮発性ステロイドの生物代謝抑制成分および/または抗菌成分とを組み合わせることにより、上記酸化変換反応の制御と共に皮膚常在菌等による生物代謝が抑制され、男性特異臭をより顕著に抑制できることを見出した。
本発明は、係る知見に基づくものである。
すなわち、本発明の男性臭抑制剤は、抗酸化物質を有効成分として含有することを特徴とする。
ここで、抗酸化物質としては、ヤマジソ抽出物、ユーカリ抽出物、ゴマ抽出物、ローズマリー抽出物、イチョウ抽出物、クワ抽出物、セージ抽出物、ワレモコウ抽出物、ドクダミ抽出物、クジン抽出物、ホップ抽出物、アスコルビン酸、およびトコフェロールから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、本発明の男性臭抑制剤は、揮発性ステロイドの生物代謝抑制成分および/または抗菌成分を有効成分としてさらに含有することが好ましい。
ここで、揮発性ステロイドの生物代謝抑制成分は、ゲンノショウコ抽出物、キョウニン抽出物、キウイ抽出物、カワラヨモギ抽出物、ゼニアオイ抽出物、プルーン抽出物、グレープフルーツ抽出物、トウキ抽出物、ゲンチアナ抽出物、センキュウ抽出物、トルメンチラ抽出物、セイヨウハッカ抽出物、サイシン抽出物、ニンニク抽出物、オランダカラシ抽出物、ベニバナ抽出物、シナノキ抽出物、タイソウ抽出物、コメヌカ抽出物、テンチャ抽出物、カリン抽出物、セイヨウキズタ抽出物、ビワ抽出物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウオトギリソウ抽出物、トウヒ抽出物、エイジツ抽出物、ニンジン抽出物、ノバラ抽出物、クインスシード抽出物、ユズ抽出物、シタン抽出物、および納豆抽出物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
そして、本発明は、上記男性臭抑制剤を含む製剤をも提供するものである。かかる製剤は、化粧料、医薬品、および医薬部外品のいずれかであることが好ましい。
本発明の男性臭抑制剤は、抗酸化物質を有効成分として含有したデオドラント剤にかかわるものであり、従来のデオドラント技術と比較して男性特異臭を効果的に抑制するという面で優れており、また、微生物制御に焦点を絞った従来の技術と比較してより一般的な酸化変換反応を制御することにより、男性特異臭を抑制できるという新規な知見に基づくものである。
また、本発明の男性臭抑制剤は、抗酸化物質に加え、さらに抗菌成分および/または生物代謝抑制成分を組み合わせることにより、従来技術と比較して目的の男性特異臭を確実に抑制することを可能とする新規な知見に基づくものである。
以下に、本発明の実施形態について説明する。
本発明の男性臭抑制剤は、汗臭、腋臭、足臭等の体臭中に存在する男性臭を抑制するデオドラント剤の一種である。
男性臭とは、男性に特異的な体臭であり、その代表的なものは揮発性ステロイド類である。揮発性ステロイド類とは、例えば、3α−アンドロステノール、3β−アンドロステノール、アンドロスタジェノール、アンドロスタジェノン、アンドロステロン、アンドロステノン等が挙げられる。アンドロステノンとしては、5α−アンドロスト−16−エン−3−オン(androst−16−en−3−one)、4,16−アンドロスタジエン−3−オン(4,16−androstadien−3−one)等が挙げられ、3β−アンドロステノールとしては5,16−アンドロスタジエン3β−オール(5,16−androstadien−3β−ol)が挙げられ、3α−アンドロステノールとしては5α−アンドロスト−16−エン−3α−オール(5α−androst−16−en−3α−ol)、5α−アンドロスト−16−エン−3β−オール(5α−androst−16−en−3β−ol)等が挙げられる。
本発明の男性臭抑制剤は、抗酸化物質を男性臭抑制効果を得るための有効成分として含有することを特徴とする。抗酸化物質を含有することにより、上記したような揮発性ステロイド類に代表される男性臭の酸化変換反応を制御することができ、その結果、男性臭の発生を効果的に抑制することができる。
抗酸化物質とは、抗酸化作用を有する物質を意味し、特に、ラジカル捕捉能を有する抗酸化物質であることが好ましい。本発明においては、このような抗酸化物質として、揮発性ステロイドの酸化変換反応を制御し得る物質であればいずれも用いることができるが、安全性や配合性の面を考慮すると天然物由来の物質、例えば植物抽出物等を用いることが好ましい。具体的には、ヤマジソ抽出物、ユーカリ抽出物、ゴマ抽出物、ローズマリー抽出物、イチョウ抽出物、クワ抽出物、セージ抽出物、ワレモコウ抽出物、ドクダミ抽出物、クジン抽出物、ホップ抽出物、アスコルビン酸、およびトコフェロールが好ましく、これらの中から選ばれる1種、または2種以上を用いることができる。中でも、ワレモコウ抽出物、クワ抽出物、およびローズマリー抽出物は、アンドロステノン発生抑制効果に優れるため特に好ましく、これらを単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
植物抽出物は、原料である植物からの抽出物であれば良く、その抽出条件は特に限定されない。例えば、各種植物の全草もしくは根茎部、樹皮部、果実部等の特定部位を生のまま、或いは必要に応じて乾燥した後に適当な大きさに切断、粉砕加工して得られる粗抽出物をそのまま植物抽出物として用いることができ、また、粗抽出物を溶媒抽出処理、分離精製処理等を組み合わせて得られる抽出エキスや精製物等を植物抽出物として用いることもできる。
溶媒抽出処理に用いられる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素類など一般に用いられる有機溶媒を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種、または2種以上を混合して用いることができる。中でもエタノールを用いることが好ましい。
溶媒抽出処理の温度やpH等の実施条件に特に限定はなく、冷浸、温浸、加熱還流、パーコレーション法などの形態で実施することができる。
分離精製処理としては、例えば、活性炭処理、液液分配、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー等を挙げることができる。
また、溶媒抽出処理および分離精製処理以外にも、水蒸気蒸留、炭酸ガスを超臨界状態にして行う超臨界抽出等の抽出処理により得られる結果物を植物抽出物として用いることもできる。なお、超臨界抽出においては、抽出助剤としてヘキサン、エタノールなどを用いることができる。
各種植物からの抽出物は、これらの処理により得られるものをそのまま用いることができ、また本発明の効果を損なわない範囲内で、公知の方法により脱臭、脱色等の処理を施したりして用いることもできる。また、希釈、濃縮、または凍結乾燥などして粉末、又はペースト状にして用いることもできる。
本発明の男性臭抑制剤における上記抗酸化物質の含有量は、選択される抗酸化物質の種類や他の成分との関係等により適宜選択され、一概には規定できないが、一般的には、組成物全体に対する含有率として、0.00005質量%以上15質量%未満、好ましくは0.0001質量%以上15質量%未満とすることができる。含有率が0.00005質量%未満であると男性臭抑制効果が不十分となり、また、15質量%以上であると溶解性が悪くなるので、好ましくない。
本発明の男性臭抑制剤は、上記抗酸化物質のほか、生物代謝抑制成分および/または抗菌成分をさらに有効成分として含有するものであっても良い。すなわち、抗酸化物質と生物代謝抑制成分との組み合わせ、抗酸化物質と抗菌成分の組み合わせ、または、抗酸化物質と生物代謝抑制成分と抗酸化物質の組み合わせを有効成分とするものであっても良い。
揮発性ステロイドは、皮膚常在菌などの生物の代謝により生成することから、生物代謝抑制成分を抗酸化物質と共に含有させることにより、この生物の代謝を何らかの形で抑制して揮発性ステロイドの生成量を減少させることができ、抗酸化物質の作用とあいまって不快な男性臭をより顕著に抑制することができる。
また、本発明において抗菌成分を抗酸化物質と併せて有効成分として含有させることにより、皮膚常在菌等の生物自体の生命力を低下させることができるので揮発性ステロイドの生成量が減少し、抗酸化物質の作用とあいまって不快な男性臭をより顕著に抑制することができる。
さらに、生物代謝抑制成分および抗菌成分の両者を抗酸化物質と共に含有させることにより、皮膚常在菌などの生物の代謝を抑制すると共に、生物自体の生命力を低下させることができるので、抗酸化物質の作用とあいまって不快な男性臭をより顕著に抑制することができる。
本発明で用いられ得る揮発性ステロイドの生物代謝抑制成分は、皮膚常在菌等の生物による揮発性ステロイドの生成の代謝を抑制する能力を有するものであれば良く、その抑制(遮断)対象となる代謝経路、抑制の作用機序等については問わない。
皮膚常在菌において揮発性ステロイド生成の代謝に関わる酵素としては、β−グルクロニダーゼ、4−エンレダクターゼおよび5α−レダクターゼの存在が知られているが、その他の関連酵素や代謝経路については未知である。従って、揮発性ステロイドの生物代謝抑制成分は、β−グルクロニダーゼ、4−エンレダクターゼおよび5α−レダクターゼの阻害作用の有無に拘わらず、体臭の主たる原因物質である揮発性ステロイド生成を抑制する効果を有するものであれば良い。
このような揮発性ステロイドの生物代謝抑制成分は、例えば、(A)抑制機序は明確ではないものの揮発性ステロイドの生成自体を抑制する天然物由来の物質、(B)β−グルクロニダーゼを阻害することにより揮発性ステロイドの生成抑制するβ−グルクロニダーゼ阻害剤、(C)4−エンレダクターゼや5α−レダクターゼなどを阻害することにより揮発性ステロイドの生成抑制するレダクターゼ阻害剤、などを挙げることができる。
(A)揮発性ステロイドの生成抑制効果を示す成分は、単独でも複数の種類を混合してでも用いることができるが、安全性や配合性の面で天然物由来の物質、例えば、植物抽出物や、植物由来物の抽出物であることが好ましい。具体的には、ゲンノショウコ抽出物、キョウニン抽出物、キウイ抽出物、カワラヨモギ抽出物、ゼニアオイ抽出物、プルーン抽出物、グレープフルーツ抽出物、トウキ抽出物、ゲンチアナ抽出物、センキュウ抽出物、トルメンチラ抽出物、セイヨウハッカ抽出物、サイシン抽出物、ニンニク抽出物、オランダカラシ抽出物、ベニバナ抽出物、シナノキ抽出物、タイソウ抽出物、コメヌカ抽出物、テンチャ抽出物、カリン抽出物、セイヨウキズタ抽出物、ビワ抽出物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウオトギリソウ抽出物、トウヒ抽出物、エイジツ抽出物、ニンジン抽出物、ノバラ抽出物、クインスシード抽出物、ユズ抽出物、シタン抽出物、および納豆抽出物が好ましく、これらの中から選ばれる1種、または2種以上を用いることができる。中でも、キョウニン抽出物、センキュウ抽出物、トウヒ抽出物、ゲンチアナ抽出物、プルーン抽出物、キウイ抽出物、ゲンノショウコ抽出物、トルメンチラ抽出物、ユズ抽出物、カワラヨモギ抽出物、ゼニアオイ抽出物は、皮膚常在菌の代謝抑制効果に特に優れるため特に好ましく、これらを単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(B)β−グルクロニダーゼ阻害剤としては、β−グルクロニダーゼを阻害することにより揮発性ステロイドの生成抑制するものであれば特に限定されずに用いることができる。このようなβ−グルクロニダーゼ阻害剤としては、例えば、オウゴン抽出物、ゴバイシ抽出物、クチナシ抽出物、シコン抽出物、シャクヤク抽出物、エンメイソウ抽出物、カミツレ抽出物、ツボクサ抽出物、コンフリー抽出物、アマチャ抽出物、カンゾウ抽出物、センブリ抽出物、冬中夏草抽出物、チンピ抽出物、イラクサ抽出物、ハマメリス抽出物等を好ましく挙げることができ、これらの中から選ばれる1種、または2種以上を挙げることができる。
(C)レダクターゼ阻害剤としては、レダクターゼを阻害することにより揮発性ステロイドの生成抑制するものであれば特に限定されずに用いることができる。
植物抽出物については、抗酸化物質としての植物抽出物について既に説明したような方法で入手したものを用いることができる。また、植物由来物の抽出物を用いる場合にも、基本的には植物抽出物の場合と同様の方法で得られる抽出物を用いることができる。納豆の場合を例にとって説明すると、抗酸化物質の説明で列挙した溶媒抽出処理を行い、析出する塊状粘物質を必要に応じて濃縮して得られる結果物を、納豆の抽出物として用いることができる。
本発明の男性臭抑制剤における上記揮発性ステロイドの生物代謝抑制成分の含有量は、組成物全体に対して好ましくは0.001〜5.0質量%、より好ましくは0.01〜1.0質量%である。配合量が0.001質量%未満であると配合の効果が十分ではなく、また5.0質量%を超える場合は溶解性が悪くなり好ましくない。
代謝抑制の程度は、添加により男性臭が抑制される程度であれば特に限定されないが、目安としては例えば、皮膚常在菌の1種であるコリネバクテリウム キセロシス(Corynebacterium xerosis)を用いた揮発性ステロイド生成系における揮発性ステロイド生成抑制率が、90%〜100%であることが好ましい。
コリネバクテリウム キセロシス(Corynebacterium xerosis)を用いた揮発性ステロイド生成系とは、前記不揮発性のステロイド硫酸塩に、コリネバクテリウム キセロシス(Corynebacterium xerosis)を1×108個/mL接種し、37℃で6時間培養して揮発性ステロイドを生成させる反応系のことをいう。前記した各種植物や植物加工品の抽出物は、この系で90%以上という高度の揮発性ステロイド生成抑制率を示すものである。
本発明の男性臭抑制剤に配合され得る抗菌成分としては、揮発性ステロイドの生成にかかわる皮膚常在菌等の生物の生育を抑制することができる抗菌(殺菌)成分であれば特に限定されるものではないが、例えばトリクロサン、トリクロロカルバニリド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ハロカルバン、塩酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノールや、コウボク、オウレン等の植物抽出物、ジヒドロファルネソール等の抗菌香料が挙げられ、これらは1種単独または2種以上の混合物として用いることができる。これらの中でも、抗菌効果の観点から、トリクロサン、塩化ベンザルコニウム、イソプロピルメチルフェノールがより好ましい。
上記抗菌成分の本発明の男性臭抑制剤における含有量(含有率)は、選択される殺菌剤の種類や他の配合成分との関係等により適宜選択されるべきものであり、特に限定され得るものではないが、概ね抑制剤全量に対し0.0001〜10.0質量%が好ましく、さらに0.005〜5.0質量%がより好ましい。含有量(含有率)が0.0001質量%未満では十分な抗菌効果が発揮されず、一方、10.0質量%を超えると溶解性が悪くなり好ましくない。
本発明の男性臭抑制剤においては、必要に応じてさらに、制汗成分、消臭機能を有する無機粒子を配合することができる。
本発明の男性臭抑制剤に配合されうる制汗成分としては、塩化アルミニウム、オキシ塩化アルミニウム、塩基性臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、硫酸亜鉛、フェノールスルホン酸亜鉛、塩基性乳酸アルミニウム亜鉛等の収斂作用を有する単体塩類、あるいはこれらの単体塩類を含有するグリコール複合体やアミノ酸複合体等が挙げられ、これらは単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
本発明の男性臭抑制剤における、上記制汗成分の含有量は、選択する制汗成分の種類や他の配合成分との関係等により適宜選択されるべきものであり、特に限定されるものではないが、概ね組成物全量に対する配合率として、0.001〜50.0質量%が好ましく、さらに同0.005〜25.0質量%がより好ましい。
本発明の男性臭抑制剤に配合され得る消臭機能を有する無機粒子としては、ケイ酸、無水ケイ酸、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられ、さらにシリカ/アルミナ、シリカ/マグネシアなどの複合物も挙げられる。また上記合成粒子以外にも、タルク、マイカ、カオリン、ベントナイトなどの天然物も挙げられる。これらは、1種単独または2種以上の混合物として用いることができる。これらの中でも、ケイ酸マグネシウム、シリカ/マグネシアが消臭効果の点でより好ましい。
上記無機粒子の形状は、球状、板状、粒状、針状等、特に限定されるものではないが、肌に塗布したときの使用感から、球状のものが好ましい。また、使用感の点でより好ましい粒子の粒径は0.1〜50μm、より好ましくは0.3〜20μmである。
本発明の男性臭抑制剤における上記無機粒子の含有量は、特に限定されるものではなく、組成物の剤型などによって適宜選定することができるが、通常、組成物全量に対し、0.01〜60質量%、好ましくは0.1〜30質量%である。含有量が少なすぎると目的とする消臭効果が十分に得られ難くなる場合があり、多すぎると必然的に他の成分を十分量配合し難くなり、目的とする剤型に調製し難くなる場合がある。
本発明の男性臭抑制剤は、形態、剤型、用途に応じた種々の基材を配合することにより、各種化粧品、医薬品、医薬部外品等の製剤として利用することができる。
ここで、形態としては、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、例えばエアゾールスプレー、ロールオン、スティック、ボディーソープ、ローション、ジェル、クリーム、シート、乳液、ムース、軟膏、等適宜選択することができる。なお、粉末は、通常組成物中に均一に分散されるが、使用時に振とうして用いる多層分離系としてもよい。
本発明の男性臭抑制剤に配合される基材成分は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知の化粧品原料を配合することができる。例えば、油分、界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、防腐剤、香料、キレート剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ゲル化剤、増粘剤等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[調製例1:植物抽出物の調製]
試験に用いた植物の全草(植物体)、もしくは根茎部、樹皮部、果実部といった特定部位を、乾燥、粉砕して粗末とし、各粗末10gを70%エタノール100mLに浸漬し、室温で5日間抽出した。残渣をろ別して得られた抽出液を減圧濃縮し、抽出固形物が1質量%となるように、70%エタノールで希釈し、各植物抽出物を得た。
参考実施例1〜17、および比較例1〜3:アンドロステノンの酸化的発生試験]
アンドロステノール(シグマ社製)と、調製例1で調製された植物抽出物、アスコルビン酸、およびトコフェロールから様々な組み合わせとなるように選ばれたサンプルとを、エタノールに溶解させ、表1〜3に示す組成の試験溶液を調製した。サンプルがエタノールに不溶であった場合は、懸濁状態のまま試験溶液として用いた。実験に用いたアスコルビン酸、トコフェロールはいずれも和光純薬製のものを用いた。なお、表1〜3における各組成の単位は、いずれも質量%とした。
それぞれの試験溶液5mLを、90mm径のガラスシャーレに広げ、60℃にて1昼夜加熱した。その後、シャーレ上の残存物を酢酸エチル20mLにて再溶解して回収し、エバポレーターで脱溶媒した。さらに、1mLの酢酸エチルに再溶解し、ガスクロマトグラフィーにて、女性が不快に感じるアンドロステノン(Asn)の発生量(Asn量)を調べた。
アンドロステノールのみ含む比較例1の試験溶液におけるAsn量を基準として、下記の式(1)により、各実施例のアンドロステノン発生抑制率を下記の式(1)にて求めた。
結果を表1〜3に示す。
Figure 0005254527
Figure 0005254527
Figure 0005254527
Figure 0005254527
表1〜3の結果から明らかなように、アスコルビン酸、トコフェロール、および、ホップ、ゴマ、セージ、クジン、ドクダミ、イチョウ、ヤマジソ、クワ、ユーカリ、ローズマリーまたはワレモコウ由来の抽出物を配合した参考実施例1〜13の試験溶液は、これらの成分を配合せずにセイヨウサンザシやトリクロサンを配合した比較例2や3と比較して、いずれもAsn発生抑制率が高かった。特に、ワレモコウ、クワ、ホップまたはローズマリー由来の抽出物は(参考実施例3、10、12および13参照)、他の植物抽出物を用いた場合よりもAsn発生抑制率に優れており、特に配合量を0.01質量%まで下げた場合(参考実施例14〜17参照)も、高いAsn発生抑制率が維持された。
このことから、ホップ、ゴマ、セージ、クジン、ドクダミ、イチョウ、ヤマジソ、クワ、ユーカリ、ローズマリー、またはワレモコウ由来の抽出物、アスコルビン酸、およびトコフェロールは、アンドロステロールからアンドロステノンへの酸化変換反応を阻害する効果を発揮することが明らかとなった。
[実施例2022および24、参考実施例18、19、21、23、25〜35および比較例4〜6:デオドラント試験]
表4〜6に示す様々な組成のエアゾール型デオドラント剤を調製し、以下の手順および基準で各デオドラント剤のデオドラント効果を評価した。なお、表4〜6における各組成の単位は、いずれも質量%とした。
男性被験者10名について、入浴後、片腋のみエアゾール型デオドラント剤を0.1g/10cm2の割合でスプレーし、もう一方の腋は塗布しないまま、予め洗浄したガーゼを両腋部に縫いつけたシャツを8時間着用してもらった。着用後両腋部のガーゼに付着した体臭について、女性専門パネラー5名により、エアゾール型デオドラント剤塗布部と未塗布部の比較を行い、以下の評価基準にて官能評価した。
[官能評価の評価基準]
4点:未塗布部よりかなり臭わない。
3点:未塗布部より臭わない。
2点:未塗布部よりやや臭わない。
1点:未塗布部と同等の臭いである。
さらに、被験者10名それぞれに対する専門パネラー5名による官能評価の結果について、以下の評価基準でデオドラント効果を評価し、結果を表4〜6に示した。
[デオドラント効果の評価基準]
◎:平均値が3.0点以上
○:平均値が2.5以上3.0未満
△:平均値が1.5以上2.5未満
×:平均値が1.5未満
Figure 0005254527
Figure 0005254527
Figure 0005254527
表4〜表6から明らかなように、アスコルビン酸、トコフェロール、および、ホップ、ゴマ、セージ、クジン、ドクダミ、イチョウ、ヤマジソ、クワ、ユーカリ、ローズマリーまたはワレモコウ由来の抽出物を1種または2種以上組み合わせて配合した実施例20、22および24、参考実施例18、19、21、23および25〜35のエアゾール型デオドラント剤は、これらの成分を配合しなかった比較例4〜6と比較して、優れたデオドラント効果を示した。
特に、これらの物質をゲンチアナ抽出物やキョウニン抽出物といった揮発性ステロイドの生物代謝抑制成分と組み合わせて配合した実施例24、参考実施例30および34、また、さらに、トリクロサンや塩化ベンザルコニウムといった抗菌成分をさらに組み合わせて配合した参考実施例27および31では、顕著に優れたデオドラント効果が示された。
以上の結果から、抗酸化物質は、男性臭を抑制する効果を有することが明らかになると共に、抗酸化物質を揮発性ステロイドの生物代謝成分や抗菌成分と併用することにより、より顕著な効果が得られることが明らかとなった。
[実施例38〜39、参考実施例36〜37および40、比較例7〜9]
表7に示す様々な組成の化粧料を調製し、以下の手順および基準で各化粧料のデオドラント効果を評価した。なお、表7における各組成の単位は、いずれも質量%とした。
男性被験者10名の片方の脇下に各化粧料を塗布し、あらかじめ洗浄したガーゼを両腋部に縫いつけたシャツを着用してもらった。8時間着用後のガーゼに付着した体臭を専門パネラーにより参考実施例17と同様の評価基準で官能評価した。被験者は試験3日前から他のデオドラント剤の使用を禁止し、試験前日には無香料のボディーソープを使用してもらった。
被験者10名の結果について、以下の評価基準でデオドラント効果を評価し、結果を表7に示した。
[評価基準]
◎:3点以上の人数が8名〜10名であった。
○:3点以上の人数が7名〜6名であった。
△:3点以上の人数が5名〜3名であった。
×:3点以上の人数が2名〜0名であった。
Figure 0005254527
表7から明らかなように、クジン、およびクワのいずれかに由来する抽出物と、各種の揮発性ステロイドの生物代謝成分を組み合わせて配合した実施例38〜39および参考実施例36〜37および40は、前記生物代謝成分のみを配合した比較例7および8や、いずれも配合しなかった比較例9と比較して、優れたデオドラント効果を示した。
以上の結果から、抗酸化物質を揮発性ステロイドの生物代謝成分と併用することにより、男性臭を顕著に抑制する効果が発揮されることが明らかとなった。
[実施例41および参考実施例42]
表8に示す様々な組成の化粧料を調製し、参考実施例18と同様の手順および基準で各化粧料のデオドラント効果を評価すると共に、溶解性を以下のようにして評価した。なお、表8における各組成の単位は、いずれも質量%とした。
溶解性の評価方法は、以下の通りである。すなわち、耐圧ガラス瓶に原液を加え、耐圧ガラス瓶用バルブを装着しクリンプした後、液化石油ガスを原液/液化石油ガス比10/90となるように注入した。25℃で30日間静置保存した後、液層部の透明度を目視で判断し、均一に溶解した場合は○、析出物がある場合は×とした。
結果を表8に示す。
Figure 0005254527
表8から明らかな通り、ローズマリー抽出物やトコフェロールに、キョウニン抽出物を組み合わせて配合した実施例41および参考実施例42では、優れたデオドラント効果および溶解性を示した。さらに、抗菌成分であるイソプロピルメチルフェノールや制汗成分であるクロルヒドロキシアルミニウムといった成分も、デオドラント効果に寄与しているものと推測される。
以上の結果から、抗酸化物質は男性臭を抑制する効果を有することが明らかになると共に、抗酸化物質を揮発性ステロイドの生物代謝成分と組み合わせ、さらに抗菌成分や制汗成分をも配合することにより、より顕著な効果を得られることが明らかとなった。
[参考実施例43〜47]
表9に示すようにローズマリー抽出物の量を様々に変化させた組成の化粧料を調製し、参考実施例36と同様の手順および基準で各化粧料のデオドラント効果を評価すると共に、実施例41と同様の手順で溶解性を評価した。なお、表9における各組成の単位は、いずれも質量%とした。
結果を表9に示す。
Figure 0005254527
表9から明らかな通り、ローズマリー抽出物の添加量が多いほどデオドラント効果は向上したが、その反面溶解性が低下していた。
以上の結果から、男性臭抑制効果と溶解性のバランスの取れた男性臭抑制剤を得るためには、抗酸化物質の配合量を0.0005質量%以上15質量%未満、特に0.0001質量%以上15質量%未満とすることが好ましいことが明らかとなった。
[配合例]
以下に、本発明の男性臭抑制剤の各種剤型(デオドラントスティック、ロールオンタイプ制汗剤、ボディーソープ、ボディーローション、ボディージェル)における参考配合例114を、以下の表10〜14に示す。なお、表10〜14における各組成の単位は、いずれも質量%とした。
尚、以下の配合例に記載された各植物抽出物は、前記[調製例]にて示した抽出法により抽出されたものを用いた。
前記植物由来の抽出物を含む、本発明の製剤としての下記の参考配合例114は、いずれもアンドロステノン発生抑制効果に優れており、安定性も良好なものであった。
Figure 0005254527
Figure 0005254527
Figure 0005254527
Figure 0005254527
Figure 0005254527
以上のように、本発明に係る男性臭抑制剤は、揮発性ステロイドに代表される男性に特有な体臭における酸化変換反応を制御する抗酸化物質を含有することから、男性臭を抑制するための安全性の高いデオドラント剤として有用である。従って、化粧料、医薬品および医薬部外品等の製剤として利用することができる。

Claims (5)

  1. (a)アンドロステノールの酸化変換反応を抑制する抗酸化物質と、
    (b)キョウニン抽出物、キウイ抽出物グレープフルーツ抽出物、ゲンチアナ抽出物ならびにカリン抽出物から選ばれる少なくとも1種の成分、および/または
    (c)抗菌成分、と
    を有効成分として含有し、有効成分が、
    (a)としてのクワ抽出物と(b)としてのキウイ抽出物、
    a)としてのワレモコウ抽出物と(b)としてのキウイ抽出物と(c)としてのイソプロピルメチルフェノール、
    (a)としてのホップ抽出物と(b)としてのゲンチアナ抽出物、
    a)としてのクジン抽出物と(b)としてのグレープフルーツ抽出物と、(c)としての塩化ベンザルコニウム
    (a)としてのクジン抽出物およびクワ抽出物と、(b)としてのカリン抽出物と、(c)としての塩化ベンザルコニウム、ならびに
    (a)としてのローズマリー抽出物と(b)としてのキョウニン抽出物と、(c)としてのイソプロピルメチルフェノール
    から選ばれるいずれかであることを特徴とする男性臭抑制剤。
  2. 前記(a)の含有率が抑制剤全体に対し0.00005質量%以上15質量%未満であることを特徴とする請求項に記載の男性臭抑制剤。
  3. 前記(b)および/または(c)の含有率が抑制剤全体に対し0.001質量%〜5.0質量%である請求項1または2に記載の男性臭抑制剤。
  4. 化粧料、医薬品、および医薬部外品である請求項1からのいずれかに記載の男性臭抑制剤。
  5. エアゾールスプレーである請求項1からのいずれかに記載の男性臭抑制剤。
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