以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
[ブレーキ制御装置の概略構成]
図1は、本実施の形態に係るブレーキ制御装置10を示す系統図である。図1に示されるブレーキ制御装置10は、車両用の電子制御式ブレーキシステムを構成しており、運転者によるブレーキ操作部材としてのブレーキペダル12の操作に応じて車両の4輪のブレーキを最適に設定する。つまり、ブレーキ制御装置10は、車両に設けられた車輪に付与させる制動力を制御することができる。
ブレーキペダル12は、運転者による踏み込み操作に応じて作動流体(作動液)としてのブレーキフルードを送り出すマスタシリンダ14に接続されている。ブレーキペダル12には、その踏み込みストロークを検出するためのストロークセンサ46が設けられている。
マスタシリンダ14の一方の出力ポート14aには、運転者によるブレーキペダル12の操作力に応じた反力を創出するストロークシミュレータ24が接続されている。マスタシリンダ14とストロークシミュレータ24とを接続する流路の中途には、シミュレータカット弁23が設けられている。シミュレータカット弁23は、非通電時に閉状態にあり、運転者によるブレーキペダル12の操作が検出された際に開状態に切り換えられる常閉型の電磁開閉弁である。
また、マスタシリンダ14には、ブレーキフルードを収容するためのリザーバタンク26が接続されている。リザーバタンク26の詳細な構成については後述するが、リザーバタンク26には、リザーバタンク26内のブレーキフルードの液面レベルを検出する液面レベル検出装置が設けられている。マスタシリンダ14は、収容されたブレーキフルードを運転者によるブレーキペダル12の操作量に応じて加圧することができるマニュアル液圧源として機能する。
マスタシリンダ14の一方の出力ポート14aには、右前輪用のブレーキ油圧制御管16が接続されている。ブレーキ油圧制御管16は、図示されない右前輪に対して制動力を付与する右前輪用のホイールシリンダ20FRに接続されている。また、マスタシリンダ14の他方の出力ポート14bには、左前輪用のブレーキ油圧制御管18が接続されており、ブレーキ油圧制御管18は、図示されない左前輪に対して制動力を付与する左前輪用のホイールシリンダ20FLに接続されている。右前輪用のブレーキ油圧制御管16の中途には、マスタカット弁としての右電磁開閉弁22FRが設けられており、左前輪用のブレーキ油圧制御管18の中途には、同じくマスタカット弁としての左電磁開閉弁22FLが設けられている。これらの右電磁開閉弁22FRおよび左電磁開閉弁22FLは、いずれも、非通電時に開状態にあり、通電時に閉状態に切り換えられる常開型電磁弁である。また、これらの右電磁開閉弁22FRおよび左電磁開閉弁22FLは、通常は運転者によるブレーキペダル12の操作が検出された際に閉状態に切り換えられる。
また、右前輪用のブレーキ油圧制御管16の中途には、右前輪側のマスタシリンダ圧を検出する右マスタ圧力センサ48FRが設けられており、左前輪用のブレーキ油圧制御管18の途中には、左前輪側のマスタシリンダ圧を計測する左マスタ圧力センサ48FLが設けられている。ブレーキ制御装置10では、運転者によってブレーキペダル12が踏み込まれた際、ストロークセンサ46によりその踏み込み操作量が検出されるが、これらの右マスタ圧力センサ48FRおよび左マスタ圧力センサ48FLによって検出されるマスタシリンダ圧からもブレーキペダル12の踏み込み操作力(踏力)を求めることができる。このように、ストロークセンサ46の故障を想定して、マスタシリンダ圧を2つの圧力センサ48FRおよび48FLによって監視することは、フェイルセーフの観点からみて好ましい。なお、以下では適宜、右マスタ圧力センサ48FRおよび左マスタ圧力センサ48FLを総称して、マスタシリンダ圧センサ48という。
一方、リザーバタンク26の下部には、吸入ホース28の一端が接続されており、この吸入ホース28の他端には、モータ32により駆動されるオイルポンプ34の吸込口が接続されている。また、リザーバタンク26の上部には、各ホイールシリンダから排出されたブレーキフルードを回収できるように構成された回収経路としてのリターンホース29が接続されている。オイルポンプ34の吐出口は、高圧管30に接続されており、この高圧管30には、アキュムレータ50とリリーフバルブ53とが接続されている。本実施の形態では、オイルポンプ34として、モータ32によってそれぞれ往復移動させられる2体以上のピストン(図示せず)を備えた往復動ポンプが採用される。また、アキュムレータ50としては、ブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギに変換して蓄えるものが採用される。
アキュムレータ50は、オイルポンプ34によって例えば14〜22MPa程度にまで昇圧されたブレーキフルードを蓄える。また、リリーフバルブ53の弁出口は、吸入ホース28に接続されており、アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ53が開弁し、高圧のブレーキフルードはリターンホース29へと戻される。さらに、高圧管30には、アキュムレータ50の出口圧力、すなわち、アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力を検出するアキュムレータ圧センサ51が設けられている。
そして、高圧管30は、増圧弁40FR,40FL,40RR,40RLを介して右前輪用のホイールシリンダ20FR、左前輪用のホイールシリンダ20FL、右後輪用のホイールシリンダ20RRおよび左後輪用のホイールシリンダ20RLに接続されている。以下、適宜、ホイールシリンダ20FR〜20RLを総称して「ホイールシリンダ20」といい、適宜、増圧弁40FR〜40RLを総称して「増圧弁40」という。増圧弁40は、いずれも、非通電時は閉じた状態にあり、必要に応じてホイールシリンダ20の増圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。なお、図示されない車両の各車輪に対しては、ディスクブレーキ35FR,35FL,35RR,35RL(以下、適宜、ディスクブレーキ35FR〜35RLを総称して「ディスクブレーキ35」という。)が設けられており、ディスクブレーキ35は、ホイールシリンダ20の作用によってブレーキパッドをディスクに押し付けることで制動力を発生する。また、ディスクブレーキ35のそれぞれには、備えられているパッドの摩耗状態を電気的に検出するパッドウェアインジケータ37FR,37FL,37RR,37RL(以下、適宜、パッドウェアインジケータ37FR〜37RLを総称して「パッドウェアインジケータ37」という。)が設けられている。ここで、パッドウェアインジケータ37は、パッドに組み込まれた電線が切断することで警報信号を出力する。
また、右前輪用のホイールシリンダ20FRと左前輪用のホイールシリンダ20FLとは、それぞれ減圧弁42FRまたは42FLを介してリターンホース29に接続されている。減圧弁42FRおよび42FLは、必要に応じてホイールシリンダ20FR,20FLの減圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。一方、右後輪用のホイールシリンダ20RRと左後輪用のホイールシリンダ20RLとは、常開型の電磁流量制御弁である減圧弁42RRまたは42RLを介してリターンホース29に接続されている。以下、適宜、減圧弁42FR〜42RLを総称して「減圧弁42」という。
また、本実施の形態に係るブレーキ制御装置10は、図1に示すように、右前輪用、左前輪用、右後輪用および左後輪用のホイールシリンダ20FR〜20RL付近に、それぞれ対応するホイールシリンダ20に作用するブレーキフルードの圧力であるホイールシリンダ圧を検出するホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RRおよび44RLが設けられている。以下、適宜、ホイールシリンダ圧センサ44FR〜44RLを総称して「ホイールシリンダ圧センサ44」という。ホイールシリンダ圧センサ44は、ホイールシリンダ20に作用するブレーキフルードの圧力を検出する圧力検出手段として機能する。
上述の右電磁開閉弁22FRおよび左電磁開閉弁22FL、増圧弁40FR〜40RL、減圧弁42FR〜42RL、オイルポンプ34、アキュムレータ50等は、ブレーキ制御装置10の油圧アクチュエータ80を構成する。そして、かかる油圧アクチュエータ80は、電子制御ユニット(以下「ECU」という)200によって制御される。
ECU200は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、エンジン停止時にも記憶内容を保持できるバックアップRAM等の不揮発性メモリ、入出力インターフェース、各種センサ等から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して取り込むためのA/Dコンバータ、計時用のタイマ等を備えるものである。
ECU200には、上述の電磁開閉弁22FR,22FL、シミュレータカット弁23、増圧弁40FR〜40RL、減圧弁42FR〜42RL等の油圧アクチュエータ80を含む各種アクチュエータ類が電気的に接続されている。
また、ECU200には、制御に用いるための信号を出力する各種センサ・スイッチ類が電気的に接続されている。すなわち、ECU200には、ホイールシリンダ圧センサ44FR〜44RLから、ホイールシリンダ20FR〜20RLにおけるホイールシリンダ圧を示す信号が入力される。
また、ECU200には、ストロークセンサ46からブレーキペダル12のペダルストロークを示す信号が入力され、右マスタ圧力センサ48FRおよび左マスタ圧力センサ48FLからマスタシリンダ圧を示す信号が入力され、アキュムレータ圧センサ51からアキュムレータ圧を示す信号が入力される。
また、ECU200には、リザーバタンク26に設けられた液面レベル検出装置から、ブレーキフルードの液面レベルを示す信号が入力される。また、ECU200には、リザーバタンク26の液面レベルの低下を運転者に知らせるための警告ランプ54が接続されている。
さらに、図示しないが、ECU200には、車輪ごとに設置された車輪速センサから各車輪の車輪速度を示す信号が入力され、ヨーレートセンサからヨーレートを示す信号が入力され、操舵角センサからステアリングホイールの操舵角を示す信号が入力されたりしている。また、ECU200には、パッドウェアインジケータ37から摩耗状態に応じて出力される電気信号が入力される。
このように構成されるブレーキ制御装置10では、運転者によってブレーキペダル12が踏み込まれると、ECU200により、ブレーキペダル12の踏み込み量を表すペダルストロークとマスタシリンダ圧とから車両の目標減速度が算出され、算出された目標減速度に応じて各車輪のホイールシリンダ圧の目標値である目標油圧が求められる。そして、ECU200により増圧弁40、減圧弁42が制御され、各車輪のホイールシリンダ圧が目標油圧になるよう制御される。
一方、このとき電磁開閉弁22FRおよび22FLは閉状態とされ、シミュレータカット弁23は開状態とされる。よって、運転者によるブレーキペダル12の踏み込みによりマスタシリンダ14から送出されたブレーキフルードは、シミュレータカット弁23を通ってストロークシミュレータ24に流入する。
また、アキュムレータ圧が予め設定された制御範囲の下限値未満であるときには、ECU200によりオイルポンプ34が駆動されてアキュムレータ圧が昇圧され、アキュムレータ圧がその制御範囲に入ればオイルポンプ34の駆動が停止される。
上述のようにブレーキ制御装置10は、ブレーキフルードを収容するリザーバタンク26と、収容されたブレーキフルードを運転者によるブレーキペダル12の操作量に応じて加圧するマスタシリンダ14と、運転者のブレーキ操作から独立したオイルポンプ34を用いてブレーキフルードによる蓄圧が可能なアキュムレータ50を含む動力液圧源と、マスタシリンダ14および動力液圧源の少なくとも一方からのブレーキフルードの供給を受けて車輪に制動力を付与するホイールシリンダ20と、マスタシリンダ14とホイールシリンダ20とを接続し、マスタシリンダ14からホイールシリンダ20へのブレーキフルードの供給が可能なように構成されているブレーキ油圧制御管16,18と、動力液圧源とホイールシリンダ20とを接続し、動力液圧源からホイールシリンダ20へのブレーキフルードの供給が可能なように構成されている高圧管30と、ホイールシリンダ20とリザーバタンク26とを接続し、ホイールシリンダ20から排出されたブレーキフルードをリザーバタンク26で回収できるように構成されたリターンホース29と、を備えている。
[リザーバタンク]
図2は、第1の実施の形態に係るリザーバタンク26の構成を説明するための図である。リザーバタンク26の本体部140は、合成樹脂で形成され、内部にブレーキフルードを貯留可能な有底円筒状に形成されている。本体部140の上部には、ブレーキフルードを注入するための開口部144が形成されている。この開口部144には、開口部144を塞ぐためのキャップ142が嵌合固定されている。
図2に示すように、本体部140には、基準となる液面レベルとして、最高液面レベルMAX、最低液面レベルMINおよびフェイルセーフモード作動液面レベルFLが設定されている。最高液面レベルMAXは、ブレーキ制御装置10のリターンホース29から戻るブレーキフルードを考慮して、本体部140の上面より低い値に設定される。最低液面レベルMINは、4輪のホイールシリンダ20に安定して適切な制動力を作用させることができるブレーキフルード量が確保されるように設定される。フェイルセーフモード作動液面レベルFLは、最低液面レベルMINよりも低く設定され、ブレーキ制御装置10が後述するフェイルセーフモードで制御されるべき液面レベルを表す。これらの最高液面レベルMAX、最低液面レベルMINおよびフェイルセーフモード作動液面レベルFLは、リザーバタンク26や油圧アクチュエータ80によって異なるので、適宜実験やシミュレーションによって定めればよい。
本体部140の底面からは、上方に向かって隔壁128が形成されている。隔壁128は、上端部の高さが最低液面レベルMINよりも低くなるように形成される。隔壁128によって、本体部140の最低液面レベルMINより下方の内部空間が、2つの空間118,120に分けられる。
空間120の底面には、空間120をマニュアル液圧源であるマスタシリンダ14の一方の出力ポート14aに連通させるためのマスタシリンダ側接続部122と、マスタシリンダ14の他方の出力ポート14bに連通させるためのマスタシリンダ側接続部124とが形成されている。空間118の底面には、空間118をオイルポンプ34の吸込口に連通させるためのポンプ側接続部125が形成されている。これにより、リザーバタンク26内の液面レベルが低下してもブレーキ油圧制御管16,18と吸入ホース28におけるブレーキフルードが同時に減少することを防止することができる。
本体部140の内部には、リザーバタンク26内のブレーキフルードの液面レベルを検出する液面レベル検出装置100が設けられている。液面レベル検出装置100は、ブレーキフルードの液面がフェイルセーフモード作動液面レベルFLを下回っているか否かを判定できるものであればどのような構成であってもかまわない。
[ディスクブレーキ]
図3は、本実施の形態の各車輪に設けられたディスクブレーキの部分断面図である。ディスクブレーキ35は、車体に対して取り付けられた浮動型のキャリパ81と、車輪とともに回転するディスクロータ84とを含んで構成される。
キャリパ81は、それ自身を図示しない車体側に固定するためのマウンティング82と、シリンダ部としての上述したホイールシリンダ20と、ホイールシリンダ20内にて液圧を受けて摺動するピストン96と、ピストン96に押圧されて変位し、ディスクロータ84に押し付けられて制動力を発生するブレーキパッド86とを含む。
ディスクロータ84は、一対のブレーキパッド86の間に存在する。ディスクロータ84の側面84a,84bは摩擦摺動面を構成し、一対のブレーキパッド86がディスクロータ84を挟んで対向配置される。このブレーキパッド86は、ディスクロータ84の側面84a,84bと直接接触する摩擦摺動面を有する摩擦材90a,90bと、この摩擦材90a,90bの裏側、すなわちディスクロータ84と接触しない側を支持するパッド裏板92a,92bによって構成されている。なお、以下においては適宜、摩擦材90a,90bを総称して「摩擦材90」といい、パッド裏板92a,92bを総称して「パッド裏板92」という。
キャリパ81は、矢印L、矢印R方向に変位可能にマウンティング82を介して車体側に取り付けられている。キャリパ81のホイールシリンダ20には、有底の穴94が穿設されており、この穴94には、ピストン96が摺動可能に嵌挿されている。穴94の底にはポート98が設けられ、液圧配管を介してマスタシリンダ14に接続されている。運転者がブレーキペダルを操作するとマスタシリンダ14やアキュムレータ50から供給されるブレーキフルードがポート98内に流入し、ピストン96を駆動する。
ブレーキフルードがポート98内に流入すると、ピストン96が非動作状態から矢印L方向に摺動し、パッド裏板92aを介して摩擦材90aをディスクロータ84の側面84aに押圧する。摩擦材90aがディスクロータ84に押圧されると、ピストン96は摺動を停止する。ピストン96が摺動を停止した後も、ブレーキフルードがポート98内に流入すれば穴94内の液圧がさらに上昇する。その結果、停止したピストン96が逆に穴94の内面を矢印R方向に押圧し、ホイールシリンダ20を構成するシリンダハウジング88aを矢印R方向に押圧する。つまり、液圧の上昇に伴って、シリンダハウジング88aが矢印R方向に変位する。
シリンダハウジング88aの圧力室が形成されていない側には爪部99が形成されて、シリンダハウジング88aの矢印R方向への変位に伴って、爪部99がパッド裏板92bを介して摩擦材90bをディスクロータ84の側面84bに押圧する。この結果、ディスクロータ84を一対の摩擦材90a,90bが押圧挟持する状態となり、ディスクロータ84を効率的に制動させることが可能となる。
上述のブレーキパッド86の摩擦材90は、繰り返される制動により磨り減っていく。そのため、所望の制動性能を満たせない程度まで摩耗した場合は交換する必要がある。そこで、本実施の形態に係るディスクブレーキ35は、パッドの摩耗を検出するパッドウェアインジケータ37を備えている。パッドウェアインジケータ37は、摩擦材90が所定の限界値を超えて摩耗した場合にその限界値にある検出部37aがディスクロータ84と接触して破損または金属導通する。その結果、パッドウェアインジケータ37は、検出部37aと連通している電気回路が開くことによって電流が流れににくくなり、その状態に応じた信号をECU200に出力する。
このようにパッドウェアインジケータ37の検出部37aがディスクロータ84と接触する程度まで摩擦材90が摩耗すると、ピストン96のストローク量が増えるため、リザーバタンク26内の液面が低下する。換言すると、パッドの摩耗を検出することで、リザーバ内の液面の低下を判定することができる。
図4は、本実施の形態に係る液面低下判定装置の概略を示すブロック図である。液面低下判定装置300は、フルードの液圧によってディスクロータ84に押し付けられるブレーキパッド86の摩耗状態を電気信号として出力するパッドウェアインジケータ37と、パッドウェアインジケータ37から出力された電気信号に基づいてブレーキフルードを収容するリザーバタンク26内部の液面の低下を判定するECU200と、ECU200でリザーバタンク26内部の液面の低下を検出した場合に液面低下を示す情報を報知する警告ランプ54とを備える。
液面低下判定装置300によれば、本来パッドの摩耗を検出するために設けられているパッドウェアインジケータ37を流用することで、リザーバタンク26内のブレーキフルードの液面低下を判定することができる。そのため、例えば、フロートなどの可動部材を用いる従来の液面レベル検出装置100とは異なる簡易な構成で液面低下の判定が可能となる。また、警告ランプ54により運転者や作業者はリザーバタンク26内の液面の低下を知ることができ、適正な処置を迅速に行うことが可能となる。
また、液面低下判定装置300は、車輪毎にパッドウェアインジケータ37FR,37FL,37RR,37RLを備えている。そのため、ECU200は、各パッドウェアインジケータ37から出力される電気信号のうちパッドの摩耗を示す信号がいくつかを検出することによってリザーバタンク26内部のブレーキフルードの液面の低下を段階的に判定することができる。つまり、液面低下判定装置300は、リザーバタンク26に特別に装置を追加したり構造を工夫したりしなくても、液面の低下を摩耗したブレーキパッド86の数に応じて段階的に判定できるため、リザーバタンク26の小型化が可能となる。
なお、本実施の形態においては、全てのブレーキパッド86が摩耗したと想定した場合の液面レベルを最低液面レベルMIN以上となるように初期に投入するブレーキフルードの量(最高液面レベルMAX)を設定するとよい。具体的には、新品の摩擦材90が摩耗して検出部37aが露出するまでの厚みの変化と同じピストンの変位量に比例して、ブレーキフルードの液面が低下する。そのため、4輪のブレーキパッド86が同時に摩耗する場合を想定したブレーキフルードの液面の低下量ΔRは、一つのブレーキパッドが摩耗する場合の4倍となる。このことを考慮して、リザーバタンク26の大きさは、最高液面レベルMAX−最低液面レベルMIN>低下量ΔRとなるように構成されている。
このように本実施の形態では、最低液面レベルMINとフェイルセーフモード作動液面レベルFLの2段階の液面レベルを検出することができる。また、警告ランプ54などにより警報が発出された後、液面レベルが更に低下して、フェイルセーフモード作動液面レベルFLとなった場合、ECU200は、それ以前とは異なる制動モードで制動制御を行う。本実施の形態では、制動モードをフェイルセーフモードに切り換える。
フェイルセーフモードでは、右電磁開閉弁22FRおよび左電磁開閉弁22FLが開状態とされ、マスタシリンダのブレーキフルードがホイールシリンダ20FR、ホイールシリンダ20FLに供給される。また、増圧弁40FR、40FL、減圧弁42FR、42FLは閉状態とされ、増圧弁40RL、40RR、減圧弁42RL、42RRへの供給電流が制御されることにより、左後輪用のホイールシリンダ20RL、右後輪用のホイールシリンダ20RRの油圧が制御されるため、制動力は低下する。
このように、本実施の形態に係るブレーキ制御装置10では、液面レベルが最低液面レベルMINとなったときに警報を発出し、警報が発出された後に液面レベルがフェイルセーフモード作動液面レベルFLとなった場合に、制動モードがフェイルセーフモードに変更されるように構成した。これにより、フェイルセーフモードへの変更前には必ず警報が発出されるので、突然に制動モードが切り替わる事態を抑制することができる。ユーザは、制動モードが変更される前に液面レベルを上昇させる措置をとることができるので、液漏れの誤判定により制動モードが変更される事態を抑制することができる。
図5は、第1の実施の形態に係るブレーキ制御装置10の制御を示すフローチャートである。この制動制御フローは、所定の時間間隔で継続的に実行される。通常状態において、ブレーキ制御装置10は通常制動モードで制御されている。なお、本実施の形態に係る通常制動モードは、主としてアキュムレータ50の液圧を用いて、増圧弁40および減圧弁42の開閉を制御することでホイールシリンダ20に所望の液圧を発生させ、制動を行うものである。
ECU200は、各圧力センサやストロークセンサ46などの各種センサが正常に動作しているか判定する(S10)。各種センサが正常でないと判定された場合(S10のNo)、該当するセンサの異常を警告し(S12)、この処理を一度終了する。各種センサが正常であると判定された場合(S10のYes)、パッドウェアインジケータ37からパッドの摩耗を示す信号の出力が有るか否か判定する(S14)。
いずれのパッドウェアインジケータ37からもパッドの摩耗を示す出力が無い場合(S14のNo)、ブレーキ制御装置10は、そのまま通常制動モードで制御される。少なくともいずれかのパッドウェアインジケータ37からパッドの摩耗を示す信号の出力が有る場合(S14のYes)、該当するパッドウェアインジケータ37を備えているブレーキパッド86の摩擦材90が摩耗していることを警告する(S16)。
次に、複数のパッドウェアインジケータ37からパッドの摩耗を示す出力が有るか否かを判定する(S18)。複数のパッドウェアインジケータ37からパッドの摩耗を示す出力が無い場合(S18のNo)、ブレーキ制御装置10は、そのまま通常制動モードで制御される。複数のパッドウェアインジケータ37からパッドの摩耗を示す信号の出力が有る場合(S18のYes)、リザーバタンク26内の液面が低下していると判定し警告する(S20)。
次に、4輪のパッドウェアインジケータ37のいずれからもパッドの摩耗を示す出力が有るか否かを判定する(S22)。4輪全てのパッドウェアインジケータ37の少なくともいずれかからはパッドの摩耗を示す出力が無い場合(S22のNo)、ブレーキ制御装置10は、そのまま通常制動モードで制御される。4輪のパッドウェアインジケータ37のいずれからもパッドの摩耗を示す信号の出力が有る場合(S22のYes)、リザーバ液面センサを備える液面レベル検出装置100により、リザーバタンク26内のブレーキフルードの液面がフェイルセーフモード作動液面レベルFLを下回っているか否かを判定する(S24)。
液面レベル検出装置100によりリザーバタンク26内の液面がフェイルセーフモード作動液面レベルFLを下回っていないと判定された場合(S24のNo)、ブレーキ制御装置10は、そのまま通常制動モードで制御される。一方、液面レベル検出装置100によりリザーバタンク26内の液面がフェイルセーフモード作動液面レベルFLを下回っていると判定された場合(S24のYes)、フェイルセーフモードに移行するとともに(S26)、制動モードが切り替わったことを運転者に警告する(S28)。
(第2の実施の形態)
図6は、第2の実施の形態に係るリザーバタンク126の構成を説明するための図である。リザーバタンク126は、図2に示すリザーバタンク26に対して本体部140の高さが異なる以外ほぼ同様な構成なため、リザーバタンク26と同じ構成については同じ符号を付し説明を適宜省略する。
本実施の形態に係るリザーバタンク126は、前輪と後輪におけるパッドの摩耗速度の違いに着目することで、最高液面レベルMAX−最低液面レベルMINの大きさを減少させることができる点に想到した。つまり、正常時にリザーバタンク126内に収容するブレーキフルードを第1の実施の形態に係るリザーバタンク26の場合より減少させても、パッドの摩耗のみによって誤ってフェールセーフモードに移行することがないため、リザーバタンク126を小型化できる。
以下、詳述すると、前述のようにブレーキの液圧回路に特段の異常が無い場合であっても、各車輪のブレーキパッド86(摩擦材90)の摩耗によってリザーバ内のフルードの液面は低下する。摩擦材90の摩耗が各車輪において同じであると仮定した場合、最も液面が低下するのは全ての摩擦材90が同時に摩耗するタイミングである。そのため、このような場合であっても液圧を用いた制動が正常に行われるようにリザーバ内のフルードの量、換言すればフルードの液面を設定しなければならない。しかしながら、通常、前輪の摩擦材90は後輪の摩擦材90よりも摩耗速度が大きい。そのため、前輪のブレーキパッド86と後輪のブレーキパッド86を同時に交換した場合、次のパッド交換のタイミングは前輪と後輪とで異なるものとなる。つまり、摩耗による前輪のブレーキパッド86の交換が先となり、その際後輪のブレーキパッド86は交換の必要がある摩耗状態に達していないため、液面の低下は全てのブレーキパッド86が同時に摩耗した場合と比較して少なくなる。加えて、パッドの交換によりその分液面の低下が回復するため、これ以上フルードの液面が低下することを考慮しなくてもよい。このように、パッドウェアインジケータ37を摩耗速度の異なる前輪と後輪とに設けていることを考慮して、4輪が同時に摩耗によるブレーキパッド86の交換が発生する場合よりもリザーバ内のフルードの量を抑えることができ、リザーバの小型化が可能となる。
例えば、図6に示すように、前輪のパッド摩耗による液面低下量ΔR1と後輪のパッド摩耗による液面低下量ΔR2は基本的に同じである。しかしながら、前述のように、新しいパッドに交換してから交換が必要な摩耗までの期間が前輪と後輪とで異なるため、前輪のパッドを交換するまでのブレーキフルードの液面の低下量ΔR’は、前輪のパッド摩耗による液面低下量ΔR1に加えて、そのタイミングにおける後輪の摩耗分に相当する液面低下量ΔR2’を加えたものとなる。つまりΔR’=ΔR1+ΔR2’<ΔRとなる。このことを考慮して、リザーバタンク126の大きさは、最高液面レベルMAX−最低液面レベルMIN>低下量ΔR’となるように構成されている。
このように本実施の形態においても、最低液面レベルMINとフェイルセーフモード作動液面レベルFLの2段階の液面レベルを検出することができる。また、警告ランプ54などにより警報が発出された後、液面レベルが更に低下して、フェイルセーフモード作動液面レベルFLとなった場合、ECU200は、それ以前とは異なる制動モードで制動制御を行う。本実施の形態では、制動モードをフェイルセーフモードに切り換える。
図7は、第2の実施の形態に係るブレーキ制御装置10の制御を示すフローチャートである。なお、図5に示した第1の実施の形態に係るブレーキ制御装置10の制御を示すフローチャートと同様の処理については、同じ符号を付してその説明は適宜省略する。
はじめに、ECU200は、車両に設けられた各種スイッチや作業車の操作情報によってブレーキパッド86の交換が有ったか否かを判定する(S50)。ブレーキパッド86の交換が無かったと判定された場合(S50のNo)、それまでのパッド摩耗の順番を設定する(S52)。例えば、ECU200は、不図示の記憶部に複数のブレーキパッド86のそれぞれが摩耗する順番を予め記憶しており、その情報に基づいてパッド摩耗の順番を設定する。ここで、パッド摩耗の順番とは交換が必要な程度まで摩耗すると予測される各輪のブレーキパッドの順番である。
一方、ブレーキパッド86の交換が有った場合(S50のYes)、記憶部には、複数のブレーキパッド86のそれぞれが摩耗する順番を再度設定し記憶してもよい(S54)。これにより、摩耗したブレーキパッド86が予め記憶されていた摩耗する順番と異なっている場合には、再度摩耗する順番が設定されるため、摩耗するパッドの予測精度を常に高めることができる。
S10〜S14の処理が実行され、少なくともいずれかのパッドウェアインジケータ37からブレーキパッド86の摩耗を示す信号の出力が有る場合(S14のYes)、該当するブレーキパッド86がS52またはS54において設定されたパッド摩耗の順番通りか否かが判定される(S56)。パッド摩耗が生じたブレーキパッド86が予想通りの順番ではない車輪のものである場合(S56のNo)、ブレーキパッド86を含むディスクブレーキ35のいずれかの箇所に何らかの不具合が発生している可能性がある。そこで、ECU200は、記憶部にパッド摩耗の順番が異常であるという情報を記憶する(S58)。これにより、次回のパッド交換やメンテナンスの際に作業者に注意を促すことができる。
パッド摩耗が生じたブレーキパッド86が予想通りの順番の車輪のものである場合(S56のYes)、該当するパッドウェアインジケータ37を備えているブレーキパッド86の摩擦材90が摩耗していることを警告する(S16)。
次に、複数のパッドウェアインジケータ37からパッドの摩耗を示す出力が有るか否かを判定する(S18)。複数のパッドウェアインジケータ37からパッドの摩耗を示す信号の出力が有る場合(S18のYes)、該当するブレーキパッド86がS52またはS54において設定されたパッド摩耗の順番通りか否かが判定される(S60)。パッド摩耗が生じたブレーキパッド86が予想通りの順番ではない車輪のものである場合(S60のNo)、ブレーキパッド86を含むディスクブレーキ35のいずれかの箇所に何らかの不具合が発生している可能性がある。そこで、ECU200は、記憶部にパッド摩耗の順番が異常であるという情報を記憶する(S62)。これにより、次回のパッド交換やメンテナンスの際に作業者に注意を促すことができる。
パッド摩耗が生じたブレーキパッド86が予想通りの順番の車輪のものである場合(S60のYes)、その後は第1の実施の形態と同様にS20〜S28までの処理が実行される。
上述したように、各実施の形態に係るブレーキ制御装置10は、ブレーキフルードの液面レベルを検出する液面レベル検出装置100と、液面低下判定装置300とを備えている。液面低下判定装置300は、ブレーキフルードの液圧によってディスクロータ84に押し付けられるブレーキパッド86の摩耗状態を電気信号として出力するパッドウェアインジケータ37と、パッドウェアインジケータ37から出力された電気信号に基づいてブレーキフルードを収容するリザーバ内部の液面の低下を判定するECU200と、ECU200でリザーバ内部の液面の低下を検出した場合に液面低下を示す情報を報知する警告ランプ54とを有している。
液面レベル検出装置100は、主としてアキュムレータ50を用いた制動モードから主としてマスタシリンダ14を用いた制動モードに変更される際の基準となるフェイルセーフモード作動液面レベルFLまでリザーバ内の液面が低下しているか否かを検出するとともに、ブレーキパッド86が摩耗した際の最低液面レベルMINよりもフェイルセーフモード作動液面レベルFLが低い位置に設定されている。液面低下判定装置300は、パッドウェアインジケータ37から出力されたブレーキパッド86が摩耗している状態を示す電気信号に基づいてフェイルセーフモード作動液面レベルFLに達する前に警告ランプ54により液面低下を示す情報を報知することができる。
このようなブレーキ制御装置10においては、制動モードの切換えが発生するフェイルセーフモード作動液面レベルFLに近付いていることを示す液面低下の情報が予め運転者に報知されるため、突然制動モードの切換えが行われる場合と比較して、ブレーキフィールの変化に伴い運転者が受ける違和感が抑えられる。
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における処理の組合せや順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
なお、上述の実施の形態に係るブレーキ制御装置10は、液面低下判定装置300とは別個に液面レベル検出装置100を備えているが、制動モードを切り換えるような構成ではないブレーキ制御装置の場合には、液面レベル検出装置100を省略してもよい。