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JP5240219B2 - 車両用油圧制御装置 - Google Patents

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JP5240219B2
JP5240219B2 JP2010043210A JP2010043210A JP5240219B2 JP 5240219 B2 JP5240219 B2 JP 5240219B2 JP 2010043210 A JP2010043210 A JP 2010043210A JP 2010043210 A JP2010043210 A JP 2010043210A JP 5240219 B2 JP5240219 B2 JP 5240219B2
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Description

この発明は、車両の動力伝達装置のトルク容量を制御する油圧室に、高圧油圧源または低圧油圧源から吐出されたオイルを選択的に供給することができる車両用油圧制御装置に関するものである。
車両の動力伝達装置のトルク容量を制御する油圧室にオイルを供給するために、高圧油圧源および低圧油圧源が設けられており、高圧油圧源または低圧油圧源から吐出されたオイルを選択的に供給することができるように構成されて油圧制御装置の一例が、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された車両は、エンジントルクが自動変速機に伝達されるように構成されており、その自動変速機は、トルクコンバータおよびクラッチおよび変速機を動力伝達可能に直列に配置して構成されている。さらに、クラッチを係合させる油圧を発生する油圧源として、エンジンにより駆動される機械式ポンプの他に、電力が供給されて駆動される電動オイルポンプが設けられている。この電動オイルポンプを駆動するバッテリは、エンジンを始動させるスタータにも電力を供給するように構成されている。そして、特許文献1に記載された車両用油圧制御装置においては、機械式ポンプまたは電動オイルポンプから吐出された圧油を選択的に切り替えて、クラッチに供給して係合させることができる。
一方、特許文献1に記載された車両においては、自動変速機のドライブポジションを選択した状態では、イグニッションキーの操作によらずエンジンを停止することができ、その後、イグニッションキーの操作によらずエンジンを再始動させる際に、予め電動オイルポンプを駆動させてクラッチを締結させる制御がおこなわれる。その後、エンジンを再始動させるとき、電動オイルポンプを駆動するバッテリの電圧または油圧値の変化を参酌して、クラッチを係合させる制御がおこなわれる。具体的には、クラッチが締結状態にあるときにエンジンの始動制御がおこなわれた場合は、エンジンの始動後にクラッチの再締結制御がおこなわれる。
なお、圧油必要部にオイルを供給するために、エンジンにより駆動されるオイルポンプと、電動オイルポンプとを備えており、エンジンが停止されているときに、電動オイルポンプから吐出されたオイルを圧油必要部に供給する制御をおこなうことのできる車両用油圧制御装置は、前記特許文献1の他に特許文献2、3にも記載されている。
特開2006−138426号公報 特開2003−39988号公報 特開2000−046166号公報
前記特許文献1ないし3に記載されている2種類の油圧源、つまり、エンジンにより駆動されるオイルポンプと電動オイルポンプとでは吐出圧が異なる。このため、エンジンが停止しているときに、予め電動オイルポンプから吐出されたオイルを圧油必要部に供給しておき、ついで、エンジンを始動させる際に、そのエンジンにより駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルを圧油必要部に供給する制御をおこなうと、圧油必要部の油圧が急激に変化する可能性があるが、この点については特許文献1ないし3のいずれにおいても考慮がなされておらず、改善の余地があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、圧油必要部に供給するオイルを、低圧油圧源から吐出されたオイルから、高圧油圧源から吐出されたオイルに変更するときに、圧油必要部の油圧が急激に上昇することを抑制できる車両用油圧制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、エンジンから駆動輪に至る動力伝達経路に設けられ、かつ、第1油圧室の油圧によりトルク容量が制御される摩擦係合装置と、前記動力伝達経路に前記摩擦係合装置と直列に配置され、かつ、第2油圧室の油圧によりトルク容量が制御される摩擦式無段変速機と、前記動力源により駆動されて前記第1油圧室および第2油圧室に供給されるオイルを吐出する高圧油圧源と、電動モータにより駆動されて前記第1油圧室および第2油圧室に供給されるオイルを吐出する低圧油圧源とを備え、前記エンジンが停止されているときに前記低圧油圧源から吐出されたオイルを前記第1油圧室および第2油圧室に供給するように構成されている車両用油圧制御装置において、前記高圧油圧源から前記第1油圧室に至る経路に設けられ、かつ、前記高圧油圧源の吐出油圧を調圧して前記第1油圧室に供給する第1経路と、この第1経路と並列に設けられ、かつ、前記高圧油圧源の吐出油圧を調圧せずに前記第1油圧室に供給する第2経路と、前記第1経路と前記第1油圧室とを接続する動作状態と、前記第2経路と前記第1油圧室とを接続する動作状態とを切り替えることのできる切替弁と、前記エンジンが停止されて前記高圧油圧源が停止されている時点から、前記エンジンが回転して前記高圧油圧源からオイルが吐出されて前記摩擦係合装置のトルク容量が予め定められた所定値となるまでの間、前記低圧油圧源の吐出圧により前記切替弁を制御して、前記第1経路と前記第1油圧室とを接続した動作状態に維持する切替油路とを有することを特徴とするものある。
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記摩擦式無段変速機は、プライマリプーリおよびセカンダリプーリにベルトを巻き掛けて構成されたベルト型無段変速機であり、前記第2油圧室の油圧により、前記セカンダリプーリからベルトに加えられる挟圧力が制御されてトルク容量が調整されるように構成されていることを特徴とする車両用油圧制御装置である。
請求項1の発明によれば、エンジンが停止して高圧油圧源が停止している状態から、エンジンが回転して高圧油圧源が相対的に高い油圧を吐出するにあたり、高圧油圧源の吐出圧を調圧して第1油圧室に供給することができる。したがって、高圧油圧源が油圧を吐出し始める段階で、摩擦係合装置のトルク容量が急激に増加することを抑止でき、この摩擦係合装置と直列に配置されている摩擦式無段変速機の滑りを抑制できる。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、エンジンを回転させて高圧油圧源から圧油を吐出し始める段階で、無段変速機でベルトが滑ることを抑制できる。
この発明における油圧制御装置の具体例を示す模式図である。 この発明の油圧制御装置を有する車両の構成を示す模式図である。 図1に示された油圧制御装置の作用の一例を示すタイムチャートである。 図1に示された油圧制御装置の特性の一例を示す線図である。 図1に示された油圧制御装置の比較例の作用を示すタイムチャートである。 この発明における油圧制御装置の他の具体例を示す模式図である。 図6の油圧制御装置に用いられる電磁ポンプの構成を示す断面図である。 図6に示された油圧制御装置の作用の一例を示すタイムチャートである。 図6に示された油圧制御装置の特性の一例を示す線図である。
つぎに、この発明における油圧制御装置の図面に基づいて説明する。図2は、この発明の油圧制御装置を有する車両の構成を示す模式図である。図2に示された車両1は、駆動輪に伝達する動力を発生する動力源としてエンジン2を有している。このエンジン2は燃料を燃焼させたときに発生する熱エネルギを運動エネルギに変換する動力装置であり、このエンジン2としては内燃機関、例えばガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどを用いることができる。また、エンジン2に燃料を供給する前に、停止しているエンジン2をクランキングさせるスタータモータ(図示せず)が設けられている。このエンジン2から駆動輪に至る動力伝達経路には無段変速機3が設けられている。この無段変速機3は、入力回転数と出力回転数との比を無段階に変更可能な動力伝達装置であり、この具体例においては、無段変速機3が、プライマリプーリ4およびセカンダリプーリ5にベルト6を巻き掛けたベルト型無段変速機であるものとして説明する。前記プライマリプーリ4におけるベルト6の巻き掛け半径を制御する油圧室7が設けられており、また、セカンダリプーリ5からベルト6に加えられる挟圧力を制御する油圧室8が設けられている。そして、油圧室7のオイル量を制御することにより、無段変速機3の変速比が制御される一方、油圧室8の油圧を制御することにより、無段変速機3のトルク容量が制御される。
一方、前記エンジン2から無段変速機5に至る動力伝達経路にはクラッチC1が設けられている。このクラッチC1は、エンジン2と無段変速機5との間で伝達されるトルクの容量を制御するものであり、この具体例ではクラッチC1として油圧制御式のクラッチが用いられている。また、クラッチC1は、多板クラッチ、単板クラッチ、乾式クラッチ、湿式クラッチのいずれでもよい。そして、クラッチC1に作用する油圧室8が設けられており、その油圧室8の油圧を制御することにより、クラッチC1が係合および解放されるように構成されている。
つぎに、無段変速機3の変速比およびトルク容量、クラッチC1の係合および解放を制御する油圧制御装置の具体例を図1に基づいて説明する。図1に示された油圧制御装置10は、エンジン2により駆動される機械式オイルポンプ11(以下、オイルポンプ11と記す)が設けられており、そのオイルポンプ11はオイルパン12からオイルを吸入し、かつ、吐出口13から油路14へ圧油を吐出するように構成されている。このオイルポンプ11は、ギヤポンプ、ベーンポンプ、プランジャポンプの何れでもよく、エンジン2のクランクシャフトと動力伝達可能に接続されている。この油路14には切替弁15を介在させて油路16が設けられている。
この切替弁15は、スプール(図示せず)により接続または遮断される入力ポート17および出力ポート18と、入力ポート17と出力ポート18とが接続されるようにスプールを押圧する力を生じるバネ19と、入力ポート17と出力ポート18とが接続されるようにスプールを押圧する力を生じる切替ポート20と、入力ポート17と出力ポート18とを遮断するようにスプールを押す力を生じる切替ポート21とを有している。そして、入力ポート17は油路14に接続され、出力ポート18は油路16に接続され、切替ポート20は油路14に接続され、切替ポート21は油路26に接続されている。
一方、前記オイルポンプ11の他に、電動モータ23により駆動される電動オイルポンプ24が設けられている。この電動オイルポンプ24の吐出容量は、オイルポンプ11の吐出容量未満であり、オイルポンプ11の吐出圧は、電動オイルポンプ24の吐出圧よりも高い。この電動オイルポンプ24の吐出口25から吐出された圧油が供給される油路26と、電動オイルポンプ24の吐出口25との間には逆止弁27が設けられている。この逆止弁27は電動オイルポンプ24から吐出されたオイルが油路26に供給される向きで開かれ、油路26のオイルが電動オイルポンプ24に戻る向きでは閉じられるように構成されている。さらに、油路26は前記切替弁15の切替ポート21に接続されている。また、油路26にはリリーフ弁80を介在させて前記油路16が接続されている。このリリーフ弁80は油路26のオイルが油路16に供給される向きに開かれ、油路16のオイルが油路26に戻る向きには閉じられるように構成されている。
そして、エンジン2の動力でオイルポンプ11が駆動されて、圧油が油路14に吐出されると、切替ポート20の油圧およびバネ19の力によりスプールが移動して、入力ポート17と出力ポート18とが接続され、オイルポンプ11から油路14へ吐出された圧油が、切替弁15を経由して油路16へ供給される。これに対して、エンジン2が停止してオイルポンプ11が停止するとともに、電動オイルポンプ24が駆動されて油路26に圧油が吐出され、油路26の油圧が相対的に高くなると、切替ポート21の油圧によりスプールがバネ19の力に抗して移動し、入力ポート17と出力ポート18とが遮断される。さらに、電動オイルポンプ24が駆動されて油路26の油圧が上昇すると、リリーフ弁80が開かれて油路26からオイルが油路16へ供給される。
このように、切替弁15の切替により、オイルポンプ11から吐出された圧油または電動オイルポンプ24から吐出された圧油のいずれか一方が油路16へ供給される。この油路16から油圧室8に至るオイルの供給経路には圧力制御弁(ラインプレッシャーモジュレータバルブ)28が設けられている。この圧力制御弁28は、直線方向に往復動自在なスプールと、入力ポート29および出力ポート30およびドレーンポート31およびフィードバックポート32および信号圧ポート33と、スプールを押圧するバネ34とを有している。入力ポート29は油路16に接続され、出力ポート30は油路35を介して油圧室8に接続されている。この油路35には、油圧室8への圧油の供給、油圧室8からの圧油の排出、油圧室8への圧油の閉じ込めを選択的に切り替える制御弁(図示せず)が設けられている。また、フィードバックポート32は出力ポート30に接続され、ドレーンポート31はオイルパン12に接続されている。さらに、信号圧ポート33にはバネ34の力と同じ向きの力をスプールに与える信号圧Psltが入力される。
このように構成された圧力制御弁28においては、バネ34の力でスプールが押圧されて入力ポート29と出力ポート30とが接続されて、油路16の圧油が油路35を経由して油圧室8に供給されるとともに、ドレーンポート31が遮断される。前記油路35の油圧が相対的に低いときは、入力ポート29と出力ポート30とが接続された状態が継続される。そして、油路35の油圧が相対的に高くなると、フィードバックポート32の油圧によりスプールが移動して、入力ポート29が閉じられ、かつ、出力ポート30とドレーンポート31とが接続される。すると、油路35のオイルがドレーンポート31を経由してオイルパン12に排出され、油路35の油圧が低下する。そして、油路35の油圧が低下すると、バネ34の力および信号圧ポート33の信号圧Psltの力によりスプールが移動して、入力ポート29と出力ポート30とが接続され、かつ、ドレーンポート31が閉じられる。このようにして、油路16を経て油圧室8に供給されるオイルの油圧が、圧力制御弁28により制御される。上記の信号圧Psltはリニアソレノイドバルブ(図示せず)によりリニアに制御することが可能であり、圧力制御弁28は、信号圧Psltが相対的に高められるほど、油圧室8に供給されるオイルの油圧が相対的に高くなる調圧特性を備えている。
つぎに、オイルポンプ11から吐出された圧油を油圧室9に供給する経路の構成を説明する。前記油路14には2方向に分岐された油路78,79が接続されている。この油路78,79は並列に配置されており、その油路78,79は切替弁36に接続されている。この切替弁36は、2つの入力ポート38,39と、出力ポート40と、切替ポート41と、スプールに力を加えるバネ42とを有している。そして、入力ポート38が油路78に接続され、出力ポート40が油路37に接続され、切替ポート41が前記油路26に接続されている。なお、切替ポート41の油圧により生じる力は、バネ42の力とは逆向きにスプールに加えられる。
さらに、油路79から切替弁36の入力ポート39に至る経路には、圧力制御弁(クラッチコントロールバルブ)43が設けられている。この圧力制御弁43は、直線方向に往復動自在なスプールと、入力ポート44および出力ポート45およびドレーンポート46およびフィードバックポート47および信号圧ポート48と、スプールを押圧するバネ49とを有している。入力ポート44は油路79に接続され、出力ポート45は油路50を介して入力ポート39に接続されている。また、フィードバックポート47は出力ポート45に接続され、ドレーンポート46はオイルパン12に接続されている。さらに、信号圧ポート48にはバネ49の力と同じ向きの力をスプールに与える信号圧Psltが入力される。この信号圧Psltは、前記圧力制御弁28に作用する信号圧Psltと同一圧である。
このように構成された圧力制御弁43においては、バネ49の力でスプールが押圧されて入力ポート44と出力ポート45とが接続され、オイルポンプ11から吐出されたオイルが、油路79を経て油路50から出力されるとともに、ドレーンポート46が閉じられる。そして、油路50の油圧が相対的に低いときは、入力ポート44と出力ポート45とが接続された状態が継続される。そして、油路50の油圧が相対的に高くなると、フィードバックポート47の油圧によりスプールが移動して、入力ポート44が閉じられ、かつ、出力ポート45とドレーンポート46とが接続される。すると、油路50のオイルがドレーンポート46を経由してオイルパン12に排出され、油路50の油圧が低下する。このようにして、油路50の油圧が低下すると、バネ49の力および信号圧ポート48の信号圧Psltの力によりスプールが移動して、入力ポート44と出力ポート45とが接続され、かつ、ドレーンポート46が閉じられる。このようにして、オイルポンプ11から油路50に供給されるオイルの油圧が、圧力制御弁43により制御される。上記の信号圧Psltはリニアソレノイドバルブ(図示せず)によりリニアに制御することが可能であり、信号圧Psltが相対的に高められるほど、油路50の油圧が相対的に高くなる。
さらに、切替弁36から油圧室9に至る経路には切替弁51が設けられている。この切替弁51は、2つの入力ポート52,53と、出力ポート54と、ドレーンポート55と、2つの切替ポート56,57と、切替ポート56と同じ向きの力をスプールに加えるバネ58とを有している。そして、入力ポート52が油路37に接続され、入力ポート53が油路26に接続され、切替ポート56が油路37に接続され、切替ポート57が油路26に接続され、ドレーンポート55がオイルパン12に接続され、出力ポート54には油路59が接続されている。
このように構成された切替弁51においては、油路37に供給される油圧が相対的に高圧であるときは、その油路37の油圧およびバネ58の力によりスプールが移動して、入力ポート52と出力ポート54とが接続され、かつ、入力ポート53とドレーンポート55とが接続される。すると、オイルポンプ11から吐出されたオイルが油路59に供給される一方、電動オイルポンプ24から吐出されたオイルは、オイルパン12へ排出される。これに対して、油路37の油圧が相対的に低く、かつ、油路26の油圧が相対的に高いと、スプールが移動して入力ポート53と出力ポート54とが接続され、かつ、入力ポート52が閉じられる。すると、電動オイルポンプ24から吐出されたオイルが油路59に供給される。
さらに、油路59と油圧室9との間には切替弁60が設けられている。この切替弁60は油圧室9にオイルを供給する経路を開放または閉じるものであり、入力ポート61および出力ポート62を有している。そして、入力ポート61が油路59に接続され、出力ポート62が油路63を介在させて油圧室9に接続されている。この切替弁60は、運転者により選択されるシフトポジションにより切り替えられる。具体的には、運転者がドライブポジションまたはリバースポジションを選択すると、切替弁60により油路59と油路63とが接続される。これに対して、運転者がニュートラルポジションまたはパーキングポジションを選択すると、切替弁60により油路59と油路63とが遮断される。
さらに、車両1の制御系統を図1に基づいて説明すると、車速、アクセルペダルの操作状態、ブレーキペダルの操作状態、無段変速機3の入力回転数および出力回転数、油圧室8,9の油圧、エンジン回転数、選択されたシフトポジション、イグニッションキーの操作状態などを検知するセンサやスイッチの信号が入力される電子制御装置64が設けられており、電子制御装置64からはエンジン出力を制御する信号、油圧制御装置10を制御する信号などが出力される。
上記のように構成された車両1の制御例を説明すると、車速およびアクセル開度に基づいて、車両1における要求駆動力(目標駆動力)が求められ、その要求駆動力に基づいて目標エンジン出力が求められる。さらに、実際のエンジン出力を目標エンジン出力に基づいて制御するにあたり、エンジン2の運転状態が最適燃費線に沿ったものとなるように、目標エンジン回転数および目標エンジン出力が求められる。そして、実際のエンジン回転数を目標エンジン回転数に近づけるように、無段変速機3の変速比が制御される。この無段変速機3の変速比を制御するために、油圧室7のオイル量が制御される。また、無段変速機3のトルク容量を制御するために、油圧室8の油圧が制御される。さらにまた、エンジン2から無段変速機3に伝達トルクに基づいて、クラッチC1を係合する際のトルク容量が制御される。
ところで、車両1においてはイグニッションキーの操作に基づいてエンジン2を運転または停止させる制御をおこなうことができる他に、エンジン2が運転されているときに、イグニッションキーの操作とは異なる停止条件が成立した場合は、イグニッションキーの操作によらずにエンジン2を停止させるエコラン制御をおこなうことができる。また、エコラン制御によりエンジン2が停止されているときに、停止条件が解除された場合は、イグニッションキーの操作がなくても、エンジン2を始動させることができる。上記の停止条件は、例えば、シフトポジションとしてドライブ(D)ポジションが選択され、かつ、車両1が停止し、かつ、アクセルペダルが戻され、かつ、ブレーキペダルが踏み込まれた場合に成立する。そして、エコラン制御によりエンジン2が停止されているときには、以下のような制御がおこなわれる。
まず、電動モータ23により電動オイルポンプ24が駆動され、油路26にオイルが吐出される。そして、切替ポート57の油圧が上昇し、切替弁51のスプールがバネ58の力に抗して移動すると、入力ポート53と出力ポート54とが接続され、かつ入力ポート52が閉じられる。このため、電動オイルポンプ24から吐出されたオイルが、油路26および切替弁51を経由して油路59に供給される。また、ドライブポジションが選択されているときは、切替弁60の入力ポート61と出力ポート62とが接続されているため、電動オイルポンプ24から油路59に供給されたオイルが、油路63を経由して油圧室9に供給される。このようにして、油圧室9の油圧が予め定められた所定値に維持される。この油圧室9の油圧が所定値であるときは、クラッチC1を構成するプレートとディスクとが接近された状態に維持されている。
一方、電動オイルポンプ24から油路26へオイルが供給されて、油路26の油圧が相対的に高くなると、切替弁15のスプールがバネ19の力に抗して移動して、入力ポート17と出力ポート18とが遮断される。また、電動オイルポンプ24から油路26へオイルが供給されて油路26の油圧が相対的に高くなると、リリーフ弁80が開放され、電動オイルポンプ24から吐出されたオイルが油路16へ供給される。ここで、圧力制御弁28においては、バネ34の力によりスプールが移動しており、入力ポート29と出力ポート30とが接続されている。このため、電動オイルポンプ24から油路16に供給されたオイルが、入力ポート29および出力ポート30を経由して油路35に供給され、ついで、油圧室8に供給される。
そして、油路35の油圧が上昇するが、油路35の油圧が相対的に低いときは、入力ポート29と出力ポート30とが接続された状態が継続される。その後、フィードバックポート32の油圧でスプールに加わる力が、バネ34の力および信号圧Psltを加えた力を超えると、スプールが移動して入力ポート29が閉じられ、かつ、出力ポート30とドレーンポート31とが接続される。すると、油路35のオイルがドレーンポート31を経由してオイルパン12に排出され、油路35の油圧が低下する。このように油路35の油圧が低下すると、バネ34の力および信号圧ポート33の信号圧Psltの力によりスプールが移動して、入力ポート29と出力ポート30とが接続され、かつ、ドレーンポート31が閉じられる。なお、エンジン2が始動されていないときには、無段変速機3のトルク容量が相対的に低く保持されるように、信号圧Psltが相対的に低く制御される。このように、電動オイルポンプ24から吐出されたオイルが、圧力制御弁28により調圧(減圧)されて油圧室8に供給される。上記のように、エコラン制御によりエンジン2が停止されているときに、予め油圧室8,9にオイルを供給している理由は、将来、エンジン2を始動させる条件が成立してクラッチC1のトルク容量を高め、かつ、無段変速機3のトルク容量を高める制御をおこなうときに、その制御応答性を向上させるためである。
一方、エコラン制御によりエンジン2が停止されているときに、エンジン2を始動させる条件が成立すると、エンジン2がスタータモータによりクランキング(回転)されるとともに、燃料の供給および燃焼がおこなわれてエンジン2が自律回転し、かつ、クラッチC1のトルク容量を所定値まで上昇させる制御がおこなわれる。すると、オイルポンプ11が駆動されて、油路14へオイルが吐出される。
そして、オイルポンプ11からオイルが吐出されて油路14の油圧が上昇し、切替ポート20の油圧およびバネ19によりスプールに加わる力が、切替ポート21の油圧によりスプールに加わる力を超えると、切替弁15のスプールが移動して入力ポート17と出力ポート18とが接続される。このようにして、オイルポンプ11から吐出されたオイルが油路16へ供給される。オイルポンプ11から吐出されたオイルにより油路16の油圧が相対的に高くなると、リリーフ弁80が閉じられ、電動オイルポンプ24から吐出されたオイルは油路16には供給されなくなる。したがって、オイルポンプ11から油路16に供給されたオイルが、油路35を経由して油圧室8に供給される。
つぎに、オイルポンプ11から吐出されたオイルを油圧室9に供給する作用を説明する。前記のようにエンジン2をクランキングする制御が開始されてから、クラッチC1のトルク容量が所定値まで上昇されるまでの間、電動オイルポンプ24が駆動されている。つまり、電動オイルポンプ24から吐出されたオイルの油圧が、切替弁36の切替ポート41に供給されており、入力ポート39と出力ポート40とが接続され、かつ、入力ポート38は閉じられている。このため、オイルポンプ11から吐出されたオイルは、圧力制御弁43および油路50を経由して油路37に供給される。ここで、エンジン2のクランキング中は、圧力制御弁43において信号圧Psltに基づく油圧制御がおこなわれる。具体的に説明すると、圧力制御弁43を経由して油圧室9に供給される油圧が、信号圧Psltに対応する目標油圧以下であるときは、バネ49および信号圧Psltの力によりスプールが移動して、入力ポート44と出力ポート45とが接続された状態が継続される。
そして、油圧室9の油圧が信号圧Psltに対応する目標油圧を超えると、フィードバックポート47の油圧によりスプールが移動して、入力ポート44が閉じられ、かつ、出力ポート45とドレーンポート46とが接続される。すると、油路50のオイルがドレーンポート46を経由してオイルパン12に排出され、油圧室9の油圧が低下する。なお、油圧室9の油圧が信号圧Psltに対応する目標油圧以下になると、バネ49の力および信号圧ポート48の信号圧Psltの力によりスプールが移動して、入力ポート44と出力ポート45とが接続され、かつ、ドレーンポート46が閉じられる。このようにして、オイルポンプ11から油圧室9に供給されるオイルの油圧が、圧力制御弁43により制御される。
さらに、クラッチC1のトルク容量が所定値まで上昇する、例えば、クラッチC1の係合が完了すると、電動オイルポンプ24が停止される。クラッチC1の係合が完了したか否かは、油圧室9の油圧から判断してもよいし、エンジン2のクランキングが開始されてからの経過時間で判断してもよい。電動オイルポンプ24が停止されると、切替弁36の切替ポート41に作用する油圧が低下し、バネ42の力によりスプールが移動して、入力ポート38と出力ポート40とが接続され、かつ、入力ポート39が閉じられる。したがって、オイルポンプ11から吐出されたオイルの油圧は、圧力制御弁43により減圧されずに油圧室9に供給される。
つぎに、エコラン制御によりエンジン2が停止しているときに、エンジン2を始動させる条件が成立して、エンジン2を始動させるときのタイムチャートの一例を図3に基づいて説明する。まず、時刻t1以前においては、ブレーキペダルが踏み込まれ(ブレーキ状態ON)、アクセルペダルが戻されており(アクセル状態OFF)、エンジン2が停止(エンジン状態OFF)されており、車両1が停止している。つまり、時刻t1以前においては、エコラン制御によりエンジン2を停止させておく条件が成立しており、時刻t1以前においては、電動オイルポンプ24が吐出油圧Peopで駆動されている。
そして、時刻t1でブレーキペダルが戻される(ブレーキ状態OFF)と、エンジン2をクランキングさせる制御が開始される。エンジン2のクランキングによりオイルポンプ11が駆動されて、そのオイルポンプ11から油路14に吐出されたオイルの油圧Pdが上昇する。また、オイルポンプ11から吐出されたオイルは圧力制御弁43を経由して油圧室9に供給されるとともに、その油圧室9に供給される油圧の目標値Pc1 が破線で示されている。また、時刻t2以降は圧力制御弁43により制御されて油圧室9に供給されるオイルの実際の油圧Pc1 およびその目標値はほぼ一致しており、その油圧Pc1 が破線で示されている。一方、エンジン回転数Neは時刻t1以降上昇している。
さらに、時刻t3以降は、油路14の油圧Pdがほぼ一定となり、また油圧室9に供給されるオイルの油圧の目標値および実際の油圧Pc1 もほぼ一定である。一方、エンジン回転数Neは時刻t3以降ほぼ一定になっている。そして、時刻t4でエンジン2に燃料が供給されて初爆がおこなわれると、油圧室8の油圧Pdが上昇し、また、油圧室9に供給されるオイルの油圧の目標値および実際の油圧Pc1 が上昇している。さらに、時刻t4以降はエンジン回転数Neが上昇している。その後、時刻t5を経由して時刻t6でアクセルペダルが踏み込まれると、油圧室8の油圧Pdは圧力制御弁28によりほぼ一定に制御されており、また、油圧室9の油圧Pc1 は圧力制御弁43によりほぼ一定に制御されている。このように、時刻t6でクラッチ9の係合が完了し、車両1が発進して車速が上昇している。なお、時刻t5以降はエンジン回転数Neが一定になっている。
ここで、エンジン2をクランキングさせた以降において、油圧室8に供給される油圧pdと、油圧室9に供給される油圧Pc1 との関係を、図4に基づいて説明する。図4においては、横軸に油圧pdが示され、縦軸に油圧Pc1 が示されている。また、油圧室9で許容される油圧が線分A1で示され、油圧Pdおよび油圧Pc1 の目標値が線分B1で示され、油圧Pc1 の実際値が線分D1で示されている。ここで、「油圧室9で許容される油圧」とは、ベルト6の滑りを防止できるクラッチC1のトルク容量に対応する油圧である。つまり、油圧室9の油圧Pc1 が線分A1未満であれば、エンジントルクがクラッチC1を経由してベルト6に伝達されたとき、ベルト6の滑りを防止することができる。そして、線分A1および線分B1は共に油圧Pdが高くなるほど油圧Pc1 が高くなる特性を有しており、油圧pdが同じであれば、線分A1よりも線分B1の方が低圧である。
図1に示された油圧制御装置10においては、エンジン2をクランキングさせているときに、オイルポンプ11から吐出されたオイルを圧力制御弁43により調圧して油圧室9に供給しているため、図4に示すように、エンジン2のクランキングを開始してから、油圧PdがPd1 に上昇するまでの間、油圧Pc1 の実際値を、線分A1未満の値でほぼ一定に制御することができる。そして、油圧Pdが油圧Pd2 まで上昇すると、油圧Pc1 の実際値が線分B1と一致している。
このように、図1に示された油圧制御装置10においては、エンジン2が停止し、かつ、オイルポンプ11が停止されている時点から、エンジン2が回転されてオイルポンプ11から圧油を吐出し、かつ、クラッチC1のトルク容量が予め定めた所定値に至るまでの間、電動オイルポンプ24から吐出されたオイルを切替弁36の切替ポート41に供給して、切替弁36の入力ポート39と出力ポート40とを、接続しておく制御をおこなっている。このため、エンジン2をクランキングさせている途中で、油圧室9に供給するオイルの実際の油圧を目標値Pc1 とほぼ一致させることにより、クラッチC1のトルク容量を緩やかに上昇させることができ、無段変速機3においてベルト6の滑りが発生することを抑制できる。また、切替弁36の動作状態を切り替える切替ポート41に、電動オイルポンプ24の吐出圧を作用させるように構成されているため、切替ポート41に信号圧を入力するソレノイドバルブを専用に設けなくてよいので、部品数を減らすことができる。
ここで、図1に示された油圧制御装置10の比較例の構成および作用について説明する。この比較例は、切替弁36を切り替える信号圧を出力する電磁弁(図示せず)が設けられており、その電磁弁の入力側にエンジンにより駆動されるオイルポンプから吐出された圧油が供給されるように構成されているものである。この比較例においては、エンジンが停止している間は、切替弁を切り替える信号圧が電磁弁から出力されていないため、エンジンをクランキングする時に、電磁弁の信号圧が相対的に低く、切替弁を切り替えることができない。したがって、エンジンにより駆動されるオイルポンプの油圧が調圧されずに油圧室に供給され、無段変速機で滑りが生じる。これを、図5のタイムチャートにより説明する。
図5のタイムチャートにおいて、時刻t1以前においてはエコラン制御によりエンジンが停止されており、電動オイルポンプが駆動されている。時刻t2でブレーキペダルが戻されると、エンジンのクランキングが開始されてオイルポンプが駆動され、その吐出圧が実線で示すように上昇する。また、エンジンにより駆動されるオイルポンプの吐出圧が調圧されずに油圧室に供給されるため、その油圧室の実際の油圧Pc1 は目標値よりも高くなる。つまり、時刻t1から時刻t2までの間、油圧Pc1 は、無段変速機の油圧室に供給される油圧Pdと同じである。
そして、時刻t2で電磁弁から信号圧が出力されて切替弁が切り替えられると、エンジンにより駆動されるオイルポンプから吐出された油圧を、圧力制御弁により調圧することができるため、時刻t2以降は実際の油圧Pc1 が低下し、時刻t3以降は、実際の油圧Pc1 が目標値と一致している。そして、時刻t4でエンジンに燃料が供給されて初爆が起き、時刻t5以降はエンジンが自律回転している。また、時刻t6で電動オイルポンプが停止している。このように、図5のタイムチャートでは、時刻t1から時刻t3までの間、実際の油圧Pc1 が目標値を超えており、無段変速機で滑りが生じる可能性がある。
つぎに、図2に示す油圧制御装置10の他の具体例を図6に基づいて説明する。この図6において、図1と同じ構成部分については、図1と同じ符号を付してある。前記図1に示された油圧制御装置10と図6に示された油圧制御装置10とを比べると、低圧油圧源の構成が異なる。この図6の油圧制御装置10においては、低圧油圧源として電磁ポンプ65が設けられている。この電磁ポンプ65の具体的な構成例を図7に基づいて説明する。この電磁ポンプ65は、ケーシング66内に設けられ、かつ、電圧が印加されて磁気吸引力を形成する電磁コイル67と、ケーシング66内に往復動可能に設けられたプランジャ(ピストン)68と、プランジャ68を磁気吸引力とは逆向きに移動させる力を生じるバネ69と、ケーシング66内に形成された油室70と、油室70を通るオイルの流通方向を一方向に規制する逆止弁71,72とを有している。前記プランジャ68は磁性材料により構成されており、その中心軸線に沿った方向に往復動自在にケーシング66内に配置されている。このプランジャ68の中心軸線に沿った方向の端部は油室68に配置されている。前記電磁コイル67に印可される電圧は、電子制御装置64により制御されるように構成されている。
前記逆止弁71は、油室70に通じる吸入口73を開閉する弁体(ボール)74を有し、吸入口73は油路75を経由してオイルパン12に接続されている。また、前記プランジャ68がバネ69の力で弁体74に押し付けられている。上記の逆止弁71は、オイルパン12のオイルが吸入口73を経由して油室70内へ吸入されるときに開かれる一方、油室70のオイルが吸入口73を経て油路75へ流出する向きでは閉じられるように構成されている。これに対して、逆止弁72は、油室70に通じる吐出口77を開閉する弁体(ボール)76を有し、吐出口77は油路26に接続されている。上記の逆止弁72は、油室70のオイルが吐出口77を経由して油路26へ吐出されるときに開かれる一方、油路26のオイルが油室70へ戻る向きでは閉じられるように構成されている。なお、前記油路75の油圧がバネ69と同じ向きでプランジャ66に作用するように構成されている。
このように構成された電磁ポンプ65においては、電磁コイル67に電圧が印加されると磁気吸引力が発生してプランジャ68がバネ69の力に抗して所定方向に移動し、電圧が遮断されるとバネ69の力でプランジャ68が逆方向に移動する。したがって、電磁コイル67への電圧の印加および遮断を交互に繰り返すことにより、プランジャ68がケーシング66内で往復動する。このプランジャ68の往復動により、油室70の容積が拡大および縮小される。
具体的には、図7においてプランジャ68が下向きに移動して油室70の容積が拡大されると、その油室70が負圧となり(油圧が低下し)、逆止弁71が開かれてオイルパン12のオイルが油室70内に吸入されるとともに、逆止弁72が閉じられる。これに対して、プランジャ68が図7で上向きに移動して油室70の容積が縮小される過程では油室70の油圧が上昇する。すると、逆止弁71が閉じられるとともに、逆止弁72が開かれて油室70内のオイルが油路26へ吐出される。このように、電磁ポンプ65においては、オイルの吸入と吐出とを繰り返しておこなうことができ、電磁ポンプ65は往復動型の容積ポンプとして機能する。
さらに、前記油路75には逆止弁81が設けられている。また、油路75における電磁ポンプ65と逆止弁81との間が、油路82を介在させて前記油路78と接続されている。この油路82はオイルポンプ11から吐出されたオイルを電磁ポンプ65の吸入口73へ供給する経路を構成している。前記逆止弁81は、従来から知られているものと同様に、ポートを開閉する弁体を有しており、この逆止弁81は圧力差によりポートが開閉される。逆止弁81の作用を説明すると、オイルパン12から電磁ポンプ65に向けてオイルが流れる向きではポートが開かれる一方、電磁ポンプ65またはオイルポンプ11からオイルパン12へオイルが流れる向きでは閉じられるように構成されている。
この図6に示された油圧制御装置10においては、エコラン制御によりエンジン2が停止しているときに電磁ポンプ65を駆動させると、逆止弁81が開かれてオイルパン12のオイルが油路75を経由して電磁ポンプ65に吸い込まれ、その電磁ポンプ65から油路26へ吐出された圧油が、切替弁51および切替弁60を経由して油圧室8,9に供給される。また、エコラン制御によりエンジン2が停止しているときに、エンジン2を始動させる条件が成立すると、エンジン2がクランキングされ、ついで、エンジン2において燃料の燃焼がおこなわれてそのエンジン2が自律回転するとともに、クラッチC1の係合が完了すると電磁ポンプ65が停止される。このように、図6の油圧制御装置10においても、オイルポンプ11が停止されているときから、エンジン2がクランキングされて自律回転し、クラッチC1の係合が完了するまでの間、電磁ポンプ65から吐出されたオイルを切替弁36の切替ポート41に供給して、入力ポート39と出力ポート40とを接続し、かつ、入力ポート38を閉じておくことができる。
このため、エンジン2がクランキングされてオイルポンプ11から吐出されたオイルを油圧室9に供給する際に、その油圧室9に供給する油圧を圧力制御弁43により調圧して緩やかに上昇させることができる。したがって、図6に示された油圧制御装置10においても、電磁ポンプ65から吐出された圧油を油圧室9に供給している状態から、オイルポンプ11から吐出される圧油を油圧室9に供給する状態に変更する過程で、無段変速機3でベルト6の滑りが生じることを抑制できる。また、切替弁36の動作状態を切り替える切替ポート41に、電磁ポンプ65の吐出圧を作用させるように構成されているため、切替ポート41に信号圧を入力するソレノイドバルブを専用に設けなくてよいので、部品数を減らすことができる。
また、図6の油圧制御装置10においては、電磁ポンプ65が駆動されているときに、オイルポンプ11におけるオイルの吐出が開始されると、そのオイルポンプ11から吐出された圧油が油路83および油路75を経由して電磁ポンプ65に供給される。そして、オイルポンプ11から吐出された油圧を電磁ポンプ65により増圧して、油圧室9に供給することができる。したがって、電磁ポンプ65の吐出圧を相対的に低くしておくことができる。この図6の油圧制御装置10におけるその他の構成および作用効果は、図1の油圧制御装置10と同じであるため説明を省略する。
さらに、図6に示された油圧制御装置10の作用を、図8のタイムチャートに基づいて説明する。この図8のタイムチャートにおいて、アクセルペダルの操作時期、ブレーキペダルの操作時期、エンジン2のクランキングおよび燃料の燃焼時期は、図3の時刻と同じである。また、車速およびエンジン回転数も図3と同じであるため、図8では記載および説明を省略する。そして、図8に示されたタイムチャートにおいて、時刻t1までの間は、電磁ポンプ65の吐出油圧Peopが油圧室9に作用しているが、時刻t1でオイルポンプ11が駆動されると、そのオイルポンプ11から吐出されたオイルの一部が油路14および油路82を経由して電磁ポンプ65に供給され、オイルポンプ11から吐出された油圧が電磁ポンプ65で増圧して油圧室9に供給される。このため、時刻t2以降は、オイルポンプ11から吐出された油圧を電磁ポンプ65で増圧した分Psm 分、時刻t1以前の油圧Peopよりも高圧となっている。また、時刻t6でクラッチC1の係合が完了すると、電磁ポンプ65が停止されている。その他の油圧の経時変化は図3と同じである。
さらに、図6に示した油圧制御装置10の特性線図の一例を図9により説明する。線分A1,B1,D1の意味は、図4の場合と同じである。この図9においては、油圧Pd1 未満で上昇すると、油圧Pc1 の実際値が上昇する特性となる。その理由は、電磁ポンプ65が前記のように、オイルポンプ11の駆動が開始されて、そのオイルポンプ11から吐出されたオイルの油圧が、電磁ポンプ65で増圧されて油圧室9に供給されるからである。上記の実施例においては、エコラン制御にあたり、シフトポジションとしてリバース(R)ポジションが選択され、かつ、車両1が停止し、かつ、アクセルペダルが戻され、かつ、ブレーキペダルが踏み込まれた場合に、停止条件が成立するようにしてもよい。
ここで、各具体例に基づいて説明された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、油圧室9が、この発明の第1油圧室に相当し、クラッチC1が、この発明の摩擦係合装置に相当し、無段変速機3が、この発明の摩擦式無段変速機に相当し、オイルポンプ11が、この発明の高圧油圧源に相当し、電動オイルポンプ24が、この発明の低圧油圧源に相当し、油路50,79および圧力制御弁43が、この発明の第1経路に相当し、油路78が、この発明の第2経路に相当し、切替弁36が、この発明の切替弁に相当し、油路26が、この発明の切替油路に相当する。また、クラッチC1の係合が完了すると、そのトルク容量が「予め定められた所定値」となる。さらに、予め定められた所定値とは、具体的には、エンジンから伝達されたトルクを、クラッチC1が滑ることなく伝達することのできる最低値である。
また、この発明における摩擦係合装置は、エンジンのクランクシャフトの回転方向に対して、プライマリプーリの回転方向を正逆に切り替える機能を有する前後進切換装置に用いられるものであってもよい。この前後進切換装置は、例えば、クランクシャフトに動力伝達可能に接続されたサンギヤと、このサンギヤと同軸上に配置されたリングギヤと、前記サンギヤに噛合された第1ピニオンギヤと、リングギヤに噛合された第2ピニオンギヤと、第1ピニオンギヤおよび第2ピニオンギヤを自転かつ公転可能に支持したキャリヤとを有するダブルピニオン型の遊星歯車機構により構成することができる。また、リングギヤを選択的に固定する後進用ブレーキと、キャリヤとサンギヤとを選択的に接続および解放する前進用クラッチとが設けられる。さらに、前進用クラッチの係合解放を制御する油圧室が設けられ、後進用ブレーキの係合および解放を制御する油圧室が設けられる。
そして、ドライブポジションが選択されると、前進用クラッチを係合させてキャリヤとサンギヤとを接続し、かつ、後進用ブレーキを解放する制御がおこなわれて、クランクシャフトとプライマリプーリとの回転方向が同一となる。これに対して、リバースポジションが選択されると、後進用ブレーキを係合させてリングギヤを固定し、かつ前進用クラッチを解放させる制御がおこなわれて、クランクシャフトに対してプライマリプーリが逆回転する。上記のような前後進切換装置がエンジンと無段変速機との間に設けられている車両においては、クラッチまたはブレーキの係合および解放を制御する油圧室に、図1または図6に示された油圧制御装置の切替弁60を経由してオイルが供給されるように構成されていてもよい。
また、無段変速機としてベルト型無段変速機が挙げられているが、トロイダル型無段変速機を備えた車両においても、図1または図6の油圧制御装置を用いることができる。このトロイダル型無段変速機においては、パワーローラがトラニオンにより支持されており、油圧室の油圧を制御することにより、パワーローラの傾転角度が制御されて、変速比が制御される。また、トロイダル型無段変速機においては、入力ディスクおよび出力ディスクの回転軸線に沿った方向に挟圧力を与える油圧室が設けられており、その油圧室に供給される油圧を制御することにより、トルク容量が制御される。そして、図1または図6に示された油圧制御装置の圧力制御弁28により、トロイダル型無段変速機のトルク容量を制御する油圧室の油圧が制御されるように構成することができる。この発明において、高圧油圧源の吐出圧は低圧油圧源の吐出圧よりも高く、高圧油圧源には機械式オイルポンプが含まれ、低圧油圧源には電動オイルポンプおよび電磁ポンプが含まれる。
1…車両、 2…エンジン、 3…無段変速機、 4…プライマリプーリ、 5…セカンダリプーリ、 6…ベルト、 8,9…油圧室、 11…オイルポンプ、 24…電動オイルポンプ、 26,50,78,79…油路、 36…切替弁、 43…圧力制御弁、 C1…クラッチ。

Claims (2)

  1. エンジンから駆動輪に至る動力伝達経路に設けられ、かつ、第1油圧室の油圧によりトルク容量が制御される摩擦係合装置と、前記動力伝達経路に前記摩擦係合装置と直列に配置され、かつ、第2油圧室の油圧によりトルク容量が制御される摩擦式無段変速機と、前記動力源により駆動されて前記第1油圧室および第2油圧室に供給されるオイルを吐出する高圧油圧源と、電動モータにより駆動されて前記第1油圧室および第2油圧室に供給されるオイルを吐出する低圧油圧源とを備え、前記エンジンが停止されているときに前記低圧油圧源から吐出されたオイルを前記第1油圧室および第2油圧室に供給するように構成されている車両用油圧制御装置において、
    前記高圧油圧源から前記第1油圧室に至る経路に設けられ、かつ、前記高圧油圧源の吐出油圧を調圧して前記第1油圧室に供給する第1経路と、この第1経路と並列に設けられ、かつ、前記高圧油圧源の吐出油圧を調圧せずに前記第1油圧室に供給する第2経路と、前記第1経路と前記第1油圧室とを接続する動作状態と、前記第2経路と前記第1油圧室とを接続する動作状態とを切り替えることのできる切替弁と、前記エンジンが停止されて前記高圧油圧源が停止されている時点から、前記エンジンが回転して前記高圧油圧源からオイルが吐出されて前記摩擦係合装置のトルク容量が予め定められた所定値となるまでの間、前記低圧油圧源の吐出圧により前記切替弁を制御して、前記第1経路と前記第1油圧室とを接続した動作状態に維持する切替油路とを有することを特徴とする車両用油圧制御装置。
  2. 前記摩擦式無段変速機は、プライマリプーリおよびセカンダリプーリにベルトを巻き掛けて構成されたベルト型無段変速機であり、前記第2油圧室の油圧により、前記セカンダリプーリからベルトに加えられる挟圧力が制御されてトルク容量が調整されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用油圧制御装置。
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