本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる場合がある。
まず、本発明の個人情報管理システムの認証方式について図2を参照して簡単に説明する。
本発明は、ユーザーが所有する個人情報記録媒体500に、暗号化、復号化等の機能を有するCPU及び書き込み、消去可能な不揮発性メモリを設け、個人情報を始めとする各種情報を、サーバー520ではなく個人情報記録媒体の不揮発性メモリに暗号化された状態で格納することを特徴とする。一方、サーバー520側には個人情報ではなく個人認証に用いる鍵となる暗証データを格納する。
端末510で個人情報記録媒体が認識されると、暗号化された個人情報が個人情報記録媒体から読み出され、サーバー520において復号化される。続いて、サーバー520に格納された暗証データを用い、個人情報記録媒体500から読み出された情報と比較を行う。そして、個人情報記録媒体500から読み出された情報に対応する暗証データが存在したときに認証される。
以上のような認証方式を用いることにより、漏洩に対して危険度の高い個人情報は、サーバー520側には通常格納されておらず、ユーザーが所有する個人情報記録媒体500に格納される。その結果、ネットワークを介したサーバー520への不正アクセス、企業内部での手違いによるデータの読み出し等によって、大量の個人情報が漏洩する危険を防止することができる。仮に、サーバー520内に格納されている暗証データが流出した場合であっても、それらは単独では意味をなさない乱数に過ぎず、データを悪用される危険性も低い。
以下、本発明の個人情報管理システム関する具体的な構成について説明を行う。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の不揮発性メモリカード及び当該不揮発性メモリカードを用いた個人情報管理システムの一例に関して図面を参照して説明する。
本実施の形態で示す個人情報管理システムは、個人情報記録媒体500、端末510、サーバー520により構成されている(図1)。
個人情報記録媒体500は、通信制御手段501と、暗号化手段502と、情報処理手段503と、不揮発性メモリを有する記憶回路504とを有している。ここでは、暗号化手段502を情報処理手段503の一部として設けた例を示している。
通信制御手段501は、端末510と情報の送受信が行えるものであればよい。ここでは、個人情報記録媒体500の通信制御手段501にアンテナを設け、無線通信により端末510との情報の送受信を行う構成とする。また、通信制御手段501は、共振回路、復調回路、変調回路、符号化回路、復号化回路、情報判定回路等を設けた構造とすることができる。
情報処理手段503は、外部との情報の送受信をした際にデータを処理する回路を有しており、例えば、暗号化、復号化の機能を有するCPU(central processing unit)で設けることができる。また、記憶回路504には、個人情報(氏名、住所、電話番号、生年月日等)等が記録されている。さらに、これらの個人情報は、暗号化手段502により暗号化された状態で記憶回路504に記録されている。記憶回路504は、書き換え可能な不揮発性メモリ等で設けることができる。また、記憶回路504に暗号化して記録される情報は、個人の氏名等の情報に加えて、サーバー520とやりとりを行うことによって、ユーザーが提供されたサービス等(ある店舗の会員情報、オンラインゲームに参加するユーザー情報等)の履歴等も暗号化して記録することができる。
端末510は、通信制御手段511と、制御回路512と、表示部513と、入力手段514とを有している。
端末510の通信制御手段511は、個人情報記録媒体500及びサーバー520と情報の送受信が行えるものであればよく、有線のネットワークでも、無線のネットワークのいずれのネットワークでも構築することができる。ここでは、端末510と個人情報記録媒体500との情報の送受信には無線通信によって行い、端末510とサーバー520との情報の送受信には有線通信で行う。
表示部513は、個人情報記録媒体500又はサーバー520から受信した情報を表示するものである。表示部513は、例えば、液晶ディスプレー、有機ELや無機EL等の自発光素子、電子ペーパー等で設けることができる。入力手段514は、表示部513に表示された内容を参照して、各ユーザーによる情報の入力や、選択する際に用いるものである。入力手段として、例えば、キーボードや表示部に直接接触するタッチセンサー等を用いることができる。なお、本実施の形態において端末510には、個人情報記録媒体500と情報の送受信を行うリーダ/ライタが含まれた構成となっているが、リーダ/ライタを別途設けコンピュータ等の端末と接続させてもよい。
サーバー520は、通信制御手段521と、復号化手段522と、比較参照手段523と、情報処理プログラム524と、暗証データ記録部525とを有している。
サーバー520の通信制御手段521は、端末510と情報の送受信が行えるものであればよく、有線のネットワークでも、無線のネットワークのいずれのネットワークでも構築することができる。ここでは、端末510との情報の送受信に有線通信を用いて行う。復号化手段522は、端末510を介して個人情報記録媒体500から受信した暗号化された情報を原通信文(平文)に変換する。
比較参照手段523は、復号化された情報と暗証データ記録部525に記録されたデータとの比較を行い所定の条件を満たすか(データの認証に合致するか否か)の判定を行う。暗証データ記録部525に記録されるデータは、個人認証に用いる鍵となる暗証データとし個人を特定しうる情報は記録させない。また、情報処理プログラム524は、比較参照手段523を駆動するためのプログラムを有している。なお、比較参照手段523におけるデータの比較は、暗号化されたデータを復号化手段522により復号化する前に行ってもよい。
次に、個人情報記録媒体500、端末510及びサーバー520とのやりとりに関して説明する。
ユーザーが個人情報記録媒体500を端末510に設けられたリーダ/ライタにかざすと、端末の通信制御手段511が認識し、個人情報記録媒体500と端末510との間で情報の送受信が行われる。具体的には、個人情報記録媒体500の記憶回路504に暗号化されて記録された個人情報が暗号化された状態で端末510に送信される。そして、当該暗号化された個人情報は端末510の通信制御手段511から有線のネットワークを介してサーバー520の通信制御手段521に送信される。
次に、暗号化された個人情報は、サーバー520の復号化手段522により復号化された後、サーバー520の暗証データ記録部525に格納された暗証データを用い、復号化されたデータとの比較が行われ所定の条件を満たすか否かの判定が行われる。個人情報記録媒体500から読み出されたデータに対応する暗証データがサーバー520の暗証データ記録部525に存在したときに、はじめて認証が完了する。つまり、暗証データ記録部525には個人情報を認証するための鍵となる情報が保管されている。
サーバー520において認証が完了した場合、通信制御手段521から有線のネットワークを介して端末510の通信制御手段511に復号化された情報(平文)が送信され、制御回路512を介して表示部513に情報が表示されることにより、ユーザーは個人情報記録媒体500に記録された情報を確認することができる。なお、表示部513に情報を表示する前に、パスワードを要求する構成としてもよい。パスワードを要求することによって、不正に他人の個人情報記録媒体500を取得した第三者の利用を効果的に防止することが可能となる。また、パスワードとして持ち主の生体情報(指紋、声紋、静脈)を用いることによって、より効果的に第三者の不正利用を防止することができる。もちろん、生体情報は個人にとって極めて重要な情報であるため、個人の管理責任の及ばない端末510やサーバー520に記録しておくのではなく、個人情報記録媒体500の記憶回路504に記録しておくことが好ましい。
また、表示部513に表示された情報に基づいて、ユーザーが新たに情報を入力する場合や情報の修正等を行ったりする場合には、最新の情報が個人情報記録媒体500の記憶回路504に暗号化されて記録される。具体的には、修正後の情報が端末510の通信制御手段511から無線通信により個人情報記録媒体500の通信制御手段501に送信され、情報処理手段503に含まれる暗号化手段502により暗号化された後に記憶回路504に記憶される。
その後、端末510の表示部513に表示された情報が消去され、サーバー520にも個人情報が残らない。
以上のような認証方式を用いることにより、漏洩に対して危険度の高い個人情報は、サーバー側には通常格納されておらず、ユーザーが所有する個人情報記録媒体500に格納される。その結果、ネットワークを介したサーバー520への不正アクセス、企業内部での手違いや不正によるデータの読み出し等によって、大量の個人情報が漏洩する危険を防止することができる。仮に、サーバー520内に格納されている暗証データが流出した場合であっても、それらは単独では意味をなさない乱数に過ぎず、データを悪用される危険性も低い。
また、ユーザーが個人情報記録媒体500を紛失した場合、当該個人情報記録媒体500に格納されたデータを不正に読み出される可能性はあるが、個人情報記録媒体500内に暗合化されて格納された情報の復号化は容易でなく、セキュリティ面でも高い安全性を確保することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態で示した個人情報記録媒体の具体的な構造の一例に関して図3を参照して説明する。ここでは、カードに不揮発性メモリを有するRFIDタグ(ICタグ、IDタグ、無線タグ、無線チップともいう)を設けた構造(以下、「不揮発性メモリカード」とも記す)について説明する。
本実施の形態で示す不揮発性メモリカードは、アンテナと共振容量を有する共振回路702、電源回路703、クロック発生回路704、復調回路705、情報処理回路706、不揮発性メモリ等のメモリ素子が設けられる記憶回路707、変調回路709、A/D変換回路708、CPU713、RF回路716を有する。
RF回路716は、共振回路702を有し、共振回路702は電源回路703、クロック発生回路704、復調回路705、変調回路709と接続され、信号や電力のやり取りを行う。電源回路703、クロック発生回路704、復調回路705からの信号は、情報処理回路706に入力され、情報処理回路706に設けられたCPU713を動作させることができる。また変調回路709は、情報処理回路706から受け取った信号を共振回路702に出力する(信号は共振回路702に入力される)。また、情報処理回路706と記憶回路707は、双方に信号のやり取りを行う。またA/D変換回路708からの信号が情報処理回路706へ入力され、アナログ信号とデジタル信号の変換を行うことができる。
なお、本実施の形態で示す不揮発性メモリカード701は上記構成に制限されず、輻輳制御回路等を有することもある。不揮発性メモリとしては、書き換え可能なフラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、強誘電体メモリ等不揮発性メモリを用いることができる。また、他にも、書き換えが不可能であるマスクROM(Read Only Memoriy)、電極間に有機物や無機物を設けた追記可能なライトワンスメモリ等を用いてもよい。書き換え不可能な不揮発性メモリは、固有情報の改ざんを防止することができる。
不揮発性メモリカード701が有する記憶回路707には、氏名、住所、電話番号、生年月日等の個人情報を暗号化して記憶させる。また、他にも個人の生体的特徴(指紋、声紋、DNA情報)をデータとして記憶させることも可能である。なお、生体的特徴は二次元パターンデータとして処理され、氏名、住所等と比較して情報量が大きいため、十分に容量が確保できる記憶素子を搭載することが好ましい。
RF回路716は、リーダ/ライタ715との間で電波の送受信をする機能を有し、さらに不揮発性メモリカード701の供給電力を生成することができる。
CPU713はRF回路716から送られる情報を基に記憶回路707にアクセスする。さらに、CPU713は暗号機能を有しており、記憶回路707に個人情報を記録する場合に平文で記憶させるのではなく、暗号化して記憶させる。
リーダ/ライタ715は、コンピュータ等の表示部を有する端末712と接続された構成となっている。リーダ/ライタ715と端末712の接続は、無線通信で行ってもいし、有線通信で行ってもよい。また、端末712も有線又は無線のネットワークを利用してサーバー714と接続されている。
次に、不揮発性メモリカード701と、リーダ/ライタ715とのやり取りについて説明する。リーダ/ライタ715は、携帯型、又は固定型のものを適用することができる。
図3に示すリーダ/ライタ715は、アンテナを有する。リーダ/ライタ715と接続された端末712は、リーダ/ライタ715を制御することができる。また、不揮発性メモリカード701は、共振回路702で、リーダ/ライタ715のアンテナより発せられる電波を受信すると、電源回路703で電源電位が生成される。また、復調回路705にて受信した電波から情報を復調する。リーダ/ライタ715への情報の送信は、変調回路709によって行われる。このようにしてリーダ/ライタ715と不揮発性メモリカード701は無線通信で情報の送受信を行うことができる。なお、端末712は、記憶装置を有していてもよい。
リーダ/ライタ715は通信回線711を介して端末712と接続され、当該端末712の制御のもとに不揮発性メモリカード701との情報の送受信を行うことができる。なお、リーダ/ライタ715と端末712との通信回線711として、赤外線通信等の無線通信回線を用い、これによって情報のやり取りを行ってもよい。
共振回路702は、リーダ/ライタ715のアンテナより発せられる電波を受信し、アンテナ両端に交流信号を発生する機能を有する。発生した交流信号は、不揮発性メモリカード701の電力になるほか、リーダ/ライタ715のアンテナから送信される命令等の情報を含んでいる。電源回路703は、共振回路702に発生した交流信号をダイオードで整流し、容量を用いて平滑化することで、電源電位を生成し、各回路へ供給する機能を有する。クロック発生回路704は、共振回路702に発生した交流信号を基に、様々な周波数のクロック信号を生成する機能を有する。復調回路705は、共振回路702に発生した交流信号に含まれる情報を復調する機能を有する。
情報処理回路706は、復調した信号から命令を抽出し、記憶回路707、およびA/D変換回路708を制御することで、命令に従った一連の動作を実行する機能を有する。また情報処理回路706は、復調した信号に誤りが無いかをチェックする機能を有してもよい。また、情報処理回路706は、記憶回路707へ書き込み命令を送り、レジスタなどに格納した情報を記憶回路707の記憶領域に格納する機能を有する。勿論、レジスタを介さずに行うこともできる。同様に情報処理回路706は、記憶回路707へ読み出し命令を送り、データを読み出すことができる。そして情報処理回路706内の符号化回路によって符号化した信号を生成し、変調回路709へ出力する。
記憶回路707には、フラッシュメモリ、EEPROM、強誘電体メモリ等の書き換え可能な不揮発性メモリを設けることができる。また、記憶回路707には、ライトワンスメモリが設けられていてもよい。ライトワンスメモリは、追記型であり、書き換え不可能な不揮発性メモリである。このような記憶回路707によって、不揮発性メモリカード701固有の情報を保持することができる。
変調回路709は、符号化信号を基に搬送波を変調する機能を有する。
本実施の形態では、不揮発性メモリカード701がリーダ/ライタ715のアンテナから電力供給を受ける例を示したが、本発明はこの形態に限定されない。例えば、不揮発性メモリカード701は、内部に電池等を有して電力供給を行うことができ、リーダ/ライタ715のアンテナとは無線で情報の送受信のみを行うことも可能である。また、不揮発性メモリカード701に搭載する電池として充電式の電池を設け、リーダ/ライタ715からの無線信号により充電可能な電池を設けることも可能である。
なお、本実施の形態は、本明細書の他の実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の個人情報管理システムの具体的な使用形態に関して図面を参照して説明する。
まず、上記実施の形態に示した不揮発性メモリカードに記録されたユーザーの情報に応じてサービス等を提供する場合に関して図4を参照して説明する。
不揮発性メモリカード500の記憶回路504には、暗号化されたユーザー情報(氏名、住所、性別、年齢、身長、体重等)が記録されているものとする。
ユーザーが不揮発性メモリカード500をリーダ/ライタを搭載した端末510にかざすと、端末510を介して暗号化された情報がサーバー520へ送信される。続いて、サーバー520において暗号化された情報が復号化手段522により復号化された後、比較参照手段523を用いて判断することにより当該情報の鍵となる暗証データがサーバー520の暗証データ記録部525に記録されていた場合に認証される。
サーバー520において認証が完了した後、サーバー520から端末510に復号化された情報が送信され、端末510の表示部513にユーザーの個人情報を参考にしたサービス情報が表示される。サービス情報は、不揮発性メモリカードに記録された個人情報に応じて企業等がそのユーザーにあったサービス等を端末の表示部を介して提供することができる。また、過去にユーザーが利用したサービス等の情報を不揮発性メモリカード500に履歴として記録させておくことによって、よりいっそうユーザー毎に適切なサービスの提供が可能となる。
特に、ゲームセンターやテーマパーク等において、何回も同様のゲーム等を行っている場合、これまで経験した情報等を不揮発性メモリカードに記録させておくことにより、ユーザー毎に最適化された様々なサービスの提供が可能となる。例えば、同じオンラインゲームに複数回参加する場合に、過去のユーザーの取得した情報を不揮発性メモリカードに記録させておくことが挙げられる。この場合、前回の情報を引き継いでオンラインゲームへの参加が可能となる。
また、不揮発性メモリカードに、個人の氏名、住所、年齢等に加えて生体情報(指紋、声紋、静脈、網膜、DNA等の情報)を記録させることにより、医療分野において、本発明の個人情報管理システムを適用することができる。その場合について図4を参照して説明する。
ユーザーが不揮発性メモリカード500をリーダ/ライタを搭載した端末510にかざすと、不揮発性メモリカード500に記録された情報は暗号化された状態のまま端末510を介してサーバー520に送信される。そして、サーバー520で暗号化された個人情報が復号化された後、比較参照手段523において当該情報に対応する暗証データがサーバー520の暗証データ記録部525に記録されていた場合に認証が完了する。
認証が完了した後、サーバー520から端末510に復号化された情報が送信され、端末510の表示部513により個人の生体情報を確認することが可能となる。また、表示部513に生体情報を表示する前にパスワードを要求する構成としてもよい。パスワードを要求することによって、不正に他人の不揮発性メモリカードを取得した第三者の利用を効果的に防止することが可能となる。また、パスワードとしてここでは、不揮発性メモリカードに記録されたユーザーの生体情報(指紋、声紋、静脈)を利用することが好ましい。
また、病院等において、治療データや処方した薬の情報等を記録したい場合には、端末510に設けられた入力手段514により情報を更新し、不揮発性メモリカード500に更新された情報を暗号化して記憶させておくことができる。つまり、ユーザー自身がカルテ(電子カルテ)を所有し管理することが可能となる。
近年、指紋や声紋等の生体情報により個人認証を行うことにより第三者による不正利用を防止する試みが行われている。その一方で、個人の生体的特徴は唯一個人を特定できてしまうため、情報が漏洩した場合の損害は計り知れない。従って、大量の個人の生体情報を一括して管理する場合には管理方法等の様々な問題を含んでいる。しかし、上述した管理システムを利用することにより、ネットワークを介したサーバーへの不正アクセス、企業内部での不正なデータの読み出し等によって、大量の個人情報が漏洩する危険を防止することができる。仮に、サーバー内に格納されている暗証データが流出した場合であっても、それらは単独では意味をなさない乱数に過ぎず、データを悪用される危険性も低い。また、ユーザーが不揮発性メモリカード500を紛失した場合、当該不揮発性メモリカード500に格納されたデータを不正に読み出される可能性はあるが、不揮発性メモリカード500内に暗合化されて格納された情報の復号化は容易でなく、セキュリティ面でも高い安全性を確保することができる。
次に、不揮発性メモリカードを用いて、金融機関とのやりとりにおける管理システムについて図5を参照して説明する。
図5において、ユーザーが所有する不揮発性メモリカード500の記憶回路504には、氏名、住所、年齢、電話番号等の個人情報に加え、預金残高等の預金情報、不揮発性メモリカード500の固有ID番号等が記録されている。また、サーバー520には、暗証データ記録部525に暗証データが記録され、暗証データ記録部525とは別に預金情報記録部527に個人情報を含まない預金情報が記録されている。氏名等の個人情報や預金情報は暗号化されて保存されている。
ユーザーが不揮発性メモリカード500をリーダ/ライタを搭載した端末510にかざすと、端末510は不揮発性メモリカード500に記録された固有のID番号を認識し、サーバー520へ当該ID番号を送信する。続いて、サーバー520において、暗証データ記録部525に記録された暗証コードと受信したID番号が比較され、該当するID番号がサーバー520の暗証データ記録部525に格納されていた場合に、不揮発性メモリカード500の記憶回路504に暗号化されて記憶されていた氏名等の個人情報や預金情報等が復号化手段522により復号化される。そして、復号化された預金情報と、サーバー520の預金情報記録部527に格納された預金情報とが一致するか比較参照手段526により判定される。不揮発性メモリカード500から読み出された預金情報に対応する預金情報が預金情報記録部527に存在したときに、はじめて認証が完了する。
認証が完了した後、サーバー520から端末510に復号化された情報が送信され、端末510の表示部513に預金情報等が表示される。ユーザーは、表示部513に表示された情報を参照して、入力手段514を用いて入金や引き出し等の処理を行うことができる。続いて、入金や引き出し等の処理により情報が更新された場合、更新された情報が端末510から不揮発性メモリカード500に送信され、暗号化手段502によって暗号化された後に情報処理手段503を介して記憶回路504に記録される。一方、記憶回路504に記録された情報は、端末510を介してサーバー520に送信され、サーバー520の預金情報記録部527に記録された預金情報も更新される。なお、端末510で更新された情報を不揮発性メモリカード500に送信すると同時に、サーバー520にも送信してサーバー520の預金情報記録部527に記録された預金情報の更新を行ってもよい。
図5に示した個人情報管理システムは、企業側も預金情報等の情報を保管したい場合に有効となる。預金情報等を個人の不揮発性メモリカードにのみ記憶させる場合、不正に書き換えが行われた際に企業側も把握できずに損害を受ける可能性があるためである。ただし、サーバー520の預金情報記録部527に記録される預金情報は、個人情報を含まない情報とする。その結果、預金情報が漏洩した場合であっても個人が特定されることはなく、データを悪用される危険性も低い。
また、サーバーに格納されている暗証コードと預金情報とは互いにリンクしない状態としておく。つまり、ユーザーの使用により暗号化された情報が復号化された場合にはじめて、復号化された情報に基づいて預金情報記録部527に記録された預金情報と比較が行われるようにすることが好ましい。この場合、仮にサーバーへの不正アクセスによって、ID番号と預金情報が漏洩した場合であっても、個人の特定できる恐れが減少する。
なお、本実施の形態は、本明細書の他の実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、不揮発性メモリカードが有する記憶回路に含まれる不揮発性メモリ素子の構造、及びその動作方法について説明する。
図16は本発明に係る不揮発性メモリカードが有する記憶回路の主要な構成を説明するための断面図である。図16は、特に記憶回路に含まれる不揮発性メモリ素子の要部を示している。この不揮発性メモリ素子は、絶縁表面を有する基板10を用いて作製されている。絶縁表面を有する基板10としては、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、セラミック基板、表面に絶縁膜が形成された金属基板などを用いることができる。
この絶縁表面を有する基板10上に半導体層14が形成されている。基板10と半導体層14の間には、下地絶縁膜12を設けても良い。この下地絶縁膜12は、基板10から半導体層14へアルカリ金属などの不純物が拡散して汚染することを防ぐものであり、ブロッキング層として適宜設ければ良い。
下地絶縁膜12としては、CVD法やスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン(SiOxNy)(x>y)、窒化酸化シリコン(SiNxOy)(x>y)等の絶縁材料を用いて形成する。例えば、下地絶縁膜12を2構造とする場合、第1層目の絶縁膜として窒化酸化シリコン膜を形成し、第2層目の絶縁膜として酸化窒化シリコン膜を形成するとよい。また、第1層目の絶縁膜として窒化シリコン膜を形成し、第2層目の絶縁膜として酸化シリコン膜を形成してもよい。
半導体層14は、単結晶半導体又は多結晶半導体で形成されたものを用いることが好ましい。例えば、基板10上にスパッタリング法、プラズマCVD法若しくは減圧CVD法によって基板10の全面に形成された半導体層を結晶化させた後、選択的にエッチングして半導体層14を形成することができる。すなわち、素子分離の目的から、絶縁表面に島状の半導体層を形成し、該半導体層に一又は複数の不揮発性メモリ素子を形成することが好ましい。半導体材料としては、シリコンが好ましく、その他にシリコンゲルマニウム半導体を用いることもできる。半導体層の結晶化法としては、レーザー結晶化法、瞬間熱アニール(RTA)又はファーネスアニール炉を用いた熱処理による結晶化法、結晶化を助長する金属元素を用いる結晶化法又はこれら方法を組み合わせて行う方法を採用することができる。また、このような薄膜プロセスに換えて、絶縁表面に単結晶半導体層を形成した所謂SOI(Silicon on Insulator)基板を用いても良い。
このように、絶縁表面に形成された半導体層を島状に分離形成することで、同一基板上にメモリ素子アレイと周辺回路を形成した場合にも、有効に素子分離をすることができる。すなわち、10V〜20V程度の電圧で書き込みや消去を行う必要のあるメモリ素子アレイと、3V〜7V程度の電圧で動作してデータの入出力や命令の制御を主として行う周辺回路を同一基板上に形成した場合でも、各素子に印加する電圧の違いによる相互の干渉を防ぐことができる。
半導体層14にはp型不純物が注入されていても良い。p型不純物として、例えばホウ素が用いられ、5×1015atoms/cm3〜1×1016atoms/cm3程度の濃度で添加されていても良い。これは、トランジスタのしきい値電圧を制御するためのものであり、チャネル形成領域に添加されることで有効に作用する。チャネル形成領域は、後述するゲート26と略一致する領域に形成されるものであり、半導体層14の一対の不純物領域18の間に位置するものである。
一対の不純物領域18は不揮発性メモリ素子においてソース領域及びドレイン領域として機能する領域である。一対の不純物領域18はn型不純物であるリン若しくはヒ素をピーク濃度で約1021atoms/cm3で添加することで形成される。
半導体層14上には第1の絶縁膜16、浮遊ゲート電極20、第2の絶縁膜22、制御ゲート電極24が形成されるが、本明細書では、浮遊ゲート電極20から制御ゲート電極24までの積層構造をゲート26と呼ぶことがある。
第1の絶縁膜16は酸化シリコン若しくは酸化シリコンと酸窒化シリコンの積層構造で形成する。第1の絶縁膜16は、プラズマCVD法や減圧CVD法により絶縁膜を堆積することで形成しても良いが、好ましくはプラズマ処理による固相酸化若しくは固相窒化で形成すると良い。半導体層(代表的にはシリコン層)を、プラズマ処理により酸化又は窒化することにより形成した絶縁膜は、緻密で絶縁耐圧が高く信頼性に優れているためである。第1の絶縁膜16は、浮遊ゲート電極20に電荷を注入するためのトンネル絶縁膜として用いるので、このように丈夫であるものが好ましい。この第1の絶縁膜16は1nm〜20nm、好ましくは3nm〜6nmの厚さに形成することが好ましい。例えば、ゲート長を600nmとする場合、第1の絶縁膜16は3nm〜6nmの厚さに形成することができる。
プラズマ処理による固相酸化処理若しくは固相窒化処理として、マイクロ波(代表的には2.45GHz)で励起され、電子密度が1×1011cm−3以上1×1013cm−3以下、且つ電子温度が0.5eV以上1.5eV以下のプラズマを利用することが好ましい。固相酸化処理若しくは固相窒化処理において、500℃以下の温度において、緻密な絶縁膜を形成すると共に実用的な反応速度を得るためである。
このプラズマ処理により半導体層14の表面を酸化する場合には、酸素雰囲気下(例えば、酸素(O2)又は一酸化二窒素(N2O)と希ガス(He、Ne、Ar、Kr、Xeの少なくとも一つを含む)雰囲気下、若しくは酸素又は一酸化二窒素と水素(H2)と希ガス雰囲気下)で行う。また、プラズマ処理により窒化をする場合には、窒素雰囲気下(例えば、窒素(N2)と希ガス(He、Ne、Ar、Kr、Xeの少なくとも一つを含む)雰囲気下、窒素と水素と希ガス雰囲気下、若しくはNH3と希ガス雰囲気下)でプラズマ処理を行う。希ガスとしては、例えばArを用いることができる。また、ArとKrを混合したガスを用いてもよい。
図15にプラズマ処理を行うための装置の構成例を示す。このプラズマ処理装置は、基板10を配置するための支持台88と、ガスを導入するためのガス供給部84、ガスを排気するために真空ポンプに接続する排気口86、アンテナ80、誘電体板82、プラズマ発生用のマイクロ波を供給するマイクロ波供給部92を有している。また、支持台88に温度制御部90を設けることによって、基板10の温度を制御することも可能である。
以下に、プラズマ処理について説明する。なお、プラズマ処理とは、半導体層、絶縁膜、導電膜に対する酸化処理、窒化処理、酸窒化処理、水素化処理、表面改質処理を含んでいる。これらの処理は、その目的に応じて、ガス供給部84から供給するガスを選択すれば良い。
酸化処理若しくは窒化処理を行うには以下のようにすれば良い。まず、処理室内を真空にし、ガス供給部84から酸素又は窒素を含むプラズマ処理用ガスを導入する。基板10は室温若しくは温度制御部90により100℃〜550℃に加熱する。なお、基板10と誘電体板82との間隔は、20mm〜80mm(好ましくは20mmから60mm)程度である。次に、マイクロ波供給部92からアンテナ80にマイクロ波を供給する。そしてマイクロ波をアンテナ80から誘電体板82を通して処理室内に導入することによって、プラズマ94を生成する。マイクロ波の導入によりプラズマの励起を行うと、低電子温度(3eV以下、好ましくは1.5eV以下)で高電子密度(1×1011cm−3以上)のプラズマを生成することができる。この高密度プラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)及び/又は窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体層の表面を酸化又は窒化することができる。プラズマ処理用ガスにアルゴンなどの希ガスを混合させると、希ガスの励起種により酸素ラジカルや窒素ラジカルを効率良く生成することができる。この方法は、プラズマで励起した活性なラジカルを有効に使うことにより、500℃以下の低温で固相反応による酸化、窒化若しくは酸化窒化を行うことができる。
図16において、プラズマ処理により形成される好適な第1の絶縁膜16の一例は、酸化雰囲気下のプラズマ処理により半導体層14を3nm〜6nmの厚さで酸化シリコン層16aを形成し、その後窒素雰囲気下でその酸化シリコン層の表面を窒化して酸素と窒素を含むシリコン層(酸窒化シリコン層16b)を形成した積層構造である。半導体層14の代表例としてのシリコン層の表面をプラズマ処理で酸化することで、界面に歪みのない緻密な酸化膜を形成することができる。また、当該酸化膜をプラズマ処理で窒化することで、表層部の酸素を窒素に置換して窒化処理層を形成すると、さらに緻密化することができる。それにより絶縁耐圧が高い絶縁膜を形成することができる。
いずれにしても、上記のようなプラズマ処理による固相酸化処理若しくは固相窒化処理を用いることで、耐熱温度が700℃以下のガラス基板を用いても、950℃〜1050℃で形成される熱酸化膜と同等な絶縁膜を得ることができる。すなわち、不揮発性メモリ素子のトンネル絶縁膜として信頼性の高いトンネル絶縁膜を形成することができる。
浮遊ゲート電極20は第1の絶縁膜16上に形成される。浮遊ゲート電極20はシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)等の半導体材料で形成することが好ましい。また、浮遊ゲート電極20として、電荷を蓄積できる窒化シリコン(SiNx)、窒化酸化シリコン(SiNxOy(x>y))、窒化ゲルマニウム(GeNx)等の絶縁膜を用いてもよい。
また、浮遊ゲート電極20を形成する半導体材料のバンドギャップが、半導体層14のバンドギャップより小さいことが好ましい。例えば、浮遊ゲートを形成する半導体材料のバンドギャップと、半導体層のバンドギャップは、0.1eV以上の差があって、前者の方が小さいことが好ましい。半導体層14の伝導帯の底のエネルギーレベルより、浮遊ゲート電極20の伝導帯の底のエネルギーレベルを低くすることにより、電荷(電子)の注入性を向上させ、電荷保持特性を向上させるためである。
浮遊ゲート電極20を形成する半導体材料は、第1の絶縁膜16により形成される半導体層14の電子に対する障壁エネルギーに対し、第1の絶縁膜16により形成される浮遊ゲート電極20の電子に対する障壁エネルギーが高くなるものであることが好ましい。半導体層14から浮遊ゲートへの電荷(電子)を注入しやすくし、浮遊ゲート電極20から電荷が消失することを防ぐためである。
このような条件を満たすものとして、代表的にはゲルマニウム若しくはゲルマニウム化合物で浮遊ゲート電極20を形成することができる。ゲルマニウム化合物の代表例としては、シリコンゲルマニウムであり、この場合シリコンに対してゲルマニウムが10原子%以上含まれていることが好ましい。ゲルマニウムの濃度が10原子%未満であると、構成元素としての効果が薄れ、バンドギャップが有効に小さくならないためである。
浮遊ゲートは電荷を蓄積する目的で、本発明に係る不揮発性メモリカードに適用されるが、同様の機能を備えるものであれば他の半導体材料を適用することもできる。例えば、ゲルマニウムを含む三元系の半導体であっても良い。また、当該半導体材料が水素化されていても良い。また、不揮発性メモリ素子の電荷蓄積層としての機能を持つものとして、当該ゲルマニウム若しくはゲルマニウム化合物の酸化物若しくは窒化物、又は当該ゲルマニウム若しくはゲルマニウム化合物を含む酸化物若しくは窒化物の層で置き換えることもできる。
第2の絶縁膜22は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン(SiOxNy)(x>y)、窒化シリコン(SiNx)又は窒化酸化シリコン(SiNxOy)(x>y)、酸化アルミニウム(AlxOy)などの一層若しくは複数層を、減圧CVD法やプラズマCVD法などで形成する。第2の絶縁膜22の厚さは1nm〜20nm、好ましくは5〜10nmで形成する。例えば、窒化シリコン層22aを3nmの厚さに堆積し、酸化シリコン層22bの厚さを5nmの厚さに堆積したものを用いることができる。また、浮遊ゲート電極20にプラズマ処理を行い、浮遊ゲート電極20の表面を窒化処理した窒化膜(例えば、浮遊ゲート電極20としてゲルマニウムを用いた場合には窒化ゲルマニウム)を形成してもよい。いずれにしても、第1の絶縁膜16と第2の絶縁膜22が、浮遊ゲート電極20と接する側の一方又は双方を窒化膜若しくは窒化処理された層とすることで、浮遊ゲート電極20の酸化を防ぐことができる。
制御ゲート電極24はタンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等から選択された金属、又はこれらの金属を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で形成することが好ましい。また、リン等の不純物元素を添加した多結晶シリコンを用いることができる。また、一層又は複数層の金属窒化物層24aと上記の金属層24bの積層構造で制御ゲート電極24を形成しても良い。金属窒化物としては、窒化タングステン、窒化モリブデン、窒化チタンを用いることができる。金属窒化物層24aを設けることにより、金属層24bの密着性を向上させることができ、剥離を防止することができる。また、窒化タンタルなどの金属窒化物は仕事関数が高いので、第2の絶縁膜22との相乗効果により、第1の絶縁膜16の厚さを厚くすることができる。
ところで、浮遊ゲート電極20に電子を注入するには、熱電子を利用する方法と、F−N型トンネル電流を利用する方法がある。熱電子を利用する場合には、正の電圧を制御ゲート電極24に印加して、ドレインに高電圧を印加して熱電子を発生させる。それにより、熱電子を浮遊ゲート電極20に注入することができる。F−N型トンネル電流を利用する場合には、正の電圧を制御ゲート電極24に印加して半導体層14からF−N型トンネル電流により浮遊ゲート電極20に注入する。
図6(A)はF−N型トンネル電流により浮遊ゲート電極20に注入するときの印加電圧を示している。制御ゲート電極24に正の高電圧(10V〜20V)を印加すると共に、ソース領域18aとドレイン領域18bは0Vとしておく。高電界により半導体層14の電子は第1の絶縁膜16に注入され、F−N型トンネル電流が流れる。
このデータ”0”の検出は、浮遊ゲート電極20に電荷が保持されていない状態で不揮発性メモリ素子がオンとなるゲート電圧を印加したとき、トランジスタがオンしないことをセンス回路によって検出することで可能である。又は、図6(B)に示すようにソース領域18aとドレイン領域18b間にバイアスを印加して、制御ゲート電極24を0Vとしたときに不揮発性メモリ素子が導通するか否かで判断することができる。
図7(A)は浮遊ゲート電極20から電荷を放出させ、不揮発性メモリ素子からデータを消去する状態を示している。この場合、制御ゲート電極24に負のバイアスを印加して、半導体層14と浮遊ゲート電極20の間にF−N型トンネル電流を流すことにより行う。或いは、図7(B)に示すように、制御ゲート電極24に負のバイアスを印加し、ソース領域18aに正の高電圧を印加することにより、F−N型トンネル電流を発生させ、ソース領域18a側に電子を引き抜いても良い。
このような不揮発性メモリ素子を用いて、様々な態様の記憶回路を得ることができる。図8に不揮発性メモリセルアレイの等価回路の一例を示す。1ビットの情報を記憶するメモリセルMS01は、選択トランジスタS01と不揮発性メモリ素子M01で構成されている。選択トランジスタS01は、ビット線BL0と不揮発性メモリ素子M01の間に直列に挿入され、ゲートがワード線WL1に接続されている。不揮発性メモリ素子M01のゲートはワード線WL11に接続されている。不揮発性メモリ素子M01にデータの書き込むときは、ワード線WL1とビット線BL0をHレベル、BL1をLレベルとして、ワード線WL11に高電圧を印加すると、前述のように浮遊ゲートに電荷が蓄積される。データを消去する場合には、ワード線WL1とビット線BL0をHレベルとし、ワード線WL11に負の高電圧を印加すれば良い。
このメモリセルMS01において、選択トランジスタS01と不揮発性メモリ素子M01をそれぞれ、絶縁表面に島状に分離して形成された半導体層30、32で形成することにより、素子分離領域を特段設けなくても、他の選択トランジスタ若しくは不揮発性メモリ素子との干渉を防ぐことができる。また、メモリセルMS01内の選択トランジスタS01と不揮発性メモリ素子M01は共にnチャネル型なので、この両者を一つの島状に分離した半導体層で形成することにより、この二つの素子を接続する配線を省略することができる。
図9は、ビット線に不揮発性メモリ素子を直接接続したNOR型の等価回路を示している。このメモリセルアレイは、ワード線WLとビット線BLが互いに交差して配設し、各交差部に不揮発性メモリ素子を配置している。NOR型は、個々の不揮発性メモリ素子のドレインをビット線BLに接続する。ソース線SLには不揮発性メモリ素子のソースが共通接続される。
この場合もこのメモリセルMS01において、不揮発性メモリ素子M01を絶縁表面に島状に分離して形成された半導体層32で形成することにより、素子分離領域を特段設けなくても、他の不揮発性メモリ素子との干渉を防ぐことができる。また、複数の不揮発性メモリ素子(例えば、図9に示すM01〜M23)を一つのブロックとして扱い、これらの不揮発性メモリ素子を一つの島状に分離した半導体層で形成することにより、ブロック単位で消去動作を行うことができる。
NOR型の動作は、例えば、次の通りである。データ書き込みは、ソース線SLを0Vとし、データを書込むために選択されたワード線WLに高電圧を与え、ビット線BLにはデータ”0”と”1”に応じた電位を与える。例えば、”0”と”1”に対してそれぞれHレベル、Lレベルの電位をビット線BLに付与する。”0”データを書き込むべく、Hレベルが与えられた不揮発性メモリ素子ではドレイン近傍でホットエレクトロンが発生し、これが浮遊ゲートに注入される。”1”データの場合この様な電子注入は生じない。
”0”データが与えられたメモリセルでは、ドレインとソースとの間の強い横方向電界により、ドレインの近傍でホットエレクトロンが生成され、これが浮遊ゲート電極に注入される。これにより、浮遊ゲートに電子が注入されてしきい値電圧が高くなった状態が”0”である。”1”データの場合はホットエレクトロンが生成されず、浮遊ゲートに電子が注入されずしきい値電圧の低い状態、すなわち消去状態が保持される。
データを消去するときは、ソース線SLに10V程度の正の電圧を印加し、ビット線BLは浮遊状態としておく。そしてワード線に負の高電圧を印加して(制御ゲートに負の高電圧を印加して)、浮遊ゲートから電子を引き抜く。これにより、データ”1”の消去状態になる。
データ読み出しは、ソース線SLを0Vにすると共にビット線BLを0.8V程度とし、選択されたワード線WLに、データ”0”と”1”のしきい値の中間値に設定された読み出し電圧を与え、不揮発性メモリ素子の電流引き込みの有無を、ビット線BLに接続されるセンスアンプで判定することにより行う。
図10は、NAND型メモリセルアレイの等価回路を示す。ビット線BLには、複数の不揮発性メモリ素子を直列に接続したNANDセルNS1が接続されている。複数のNANDセルが集まってブロックBLKを構成している。図10で示すブロックBLK1のワード線は32本である(ワード線WL0〜WL31)。ブロックBLK1の同一行に位置する不揮発性メモリ素子には、この行に対応するワード線が共通接続されている。
この場合、選択トランジスタS1、S2と不揮発性メモリ素子M0〜M31が直列に接続されているので、これらを一つのまとまりとして一つの半導体層34で形成しても良い。それにより不揮発性メモリ素子を繋ぐ配線を省略することが出来るので、集積化を図ることができる。また、隣接するNANDセルとの分離を容易に行うことができる。また、選択トランジスタS1、S2の半導体層36とNANDセルの半導体層38を分離して形成しても良い。不揮発性メモリ素子M0〜M31の浮遊ゲートから電荷を引き抜く消去動作を行うときに、そのNANDセルの単位で消去動作を行うことができる。また、一つのワード線に共通接続する不揮発性メモリ素子(例えばM30の行)を一つの半導体層40で形成しても良い。
書込み動作では、NANDセルNS1が消去状態、つまりNANDセルNS1の各不揮発性メモリ素子のしきい値が負電圧の状態にしてから実行される。書込みは、ソース線SL側のメモリ素子M0から順に行う。メモリ素子M0への書込みを例として説明すると概略以下のようになる。
図11(A)は、”0”書込みをする場合、選択ゲート線SG2に例えばVcc(電源電圧)を印加して選択トランジスタS2をオンにすると共にビット線BL0を0V(接地電圧)にする。選択ゲート線SG1は0Vとして、選択トランジスタS1はオフとする。次に、メモリ素子M0のワード線WL0を高電圧Vpgm(20V程度)とし、これ以外のワード線を中間電圧Vpass(10V程度)にする。ビット線BLの電圧は0Vなので、選択されたメモリ素子M0のチャネル形成領域の電位は0Vとなる。ワード線WL0とチャネル形成領域との間の電位差が大きいため、メモリ素子M0の浮遊ゲートには前述のようにF−Nトンネル電流により電子が注入される。これにより、メモリ素子M0のしきい値電圧が正の状態(”0”が書込まれた状態)となる。
一方”1”書込みをする場合は、図11(B)に示すように、ビット線BLを例えばVcc(電源電圧)にする。選択ゲート線SG2の電圧がVccであるため、選択トランジスタS2のしきい値電圧Vthに対して、VccマイナスVth(Vcc−Vth)になると、選択トランジスタS2がカットオフする。従って、メモリ素子M0のチャネル形成領域はフローティング状態となる。次に、ワード線WL0に高電圧Vpgm(20V)、それ以外のワード線に中間電圧Vpass(10V)の電圧を印加すると、各ワード線とチャネル形成領域との容量カップリングにより、チャネル形成領域の電圧がVcc−Vthから上昇し例えば8V程度となる。チャネル形成領域の電圧が高電圧に昇圧されるため、”0”の書込みの場合と異なり、ワード線WL0とチャネル形成領域の間の電位差が小さい。したがって、メモリ素子M0の浮遊ゲートには、F−Nトンネル電流による電子注入が起こらない。よって、メモリ素子M1のしきい値は、負の状態(”1”が書込まれた状態)に保たれる。
消去動作をする場合は、図12(A)に示すように、選択されたブロック内の全てのワード線に負の高電圧(Vers)を印加する。ビット線BL、ソース線SLをフローティング状態とする。これにより、ブロックの全てのメモリ素子において浮遊ゲート中の電子がトンネル電流により半導体層に放出される。この結果、これらのメモリ素子のしきい値電圧が負方向にシフトする。
図12(B)に示す読み出し動作では、読出しの選択がされたメモリ素子M0のワード線WL0の電圧Vr(例えば0V)とし、非選択のメモリ素子のワード線WL1〜31及び選択ゲート線SG1、SG2を電源電圧より少し高い読出し用中間電圧Vreadとする。すなわち、図13に示すように、選択メモリ素子以外のメモリ素子はトランスファートランジスタとして働く。これにより、読出しの選択がされたメモリ素子M0に電流が流れるか否かを検出する。つまり、メモリ素子M0に記憶されたデータが”0”の場合、メモリ素子M0はオフなので、ビット線BLは放電しない。一方、”1”の場合、メモリ素子M0はオンするので、ビット線BLが放電する。
図14は、不揮発性メモリカードにおける記憶回路のブロック図の一例を示している。記憶回路は、メモリセルアレイ52と周辺回路54が同一の基板上に形成されている。メモリセルアレイ52は、図8、図9、図10で示すような構成を有している。周辺回路54の構成は以下の通りである。
ワード線選択のためにロウデコーダ62と、ビット線選択のためにカラムデコーダ64が、メモリセルアレイ52の周囲に設けられている。アドレスは、アドレスバッファ56を介してコントロール回路58に送られ、内部ロウアドレス信号及び内部カラムアドレス信号がそれぞれロウデコーダ62及びカラムデコーダ64に転送される。
データ書き込み及び消去には、電源電位を昇圧した電位が用いられる。このため、コントロール回路58により動作モードに応じて制御される昇圧回路60が設けられている。昇圧回路60の出力はロウデコーダ62やカラムデコーダ64を介して、ワード線Wやビット線BLに供給される。センスアンプ66はカラムデコーダ64から出力されたデータが入力される。センスアンプ66により読み出されたデータは、データバッファ68に保持され、コントロール回路58からの制御により、データがランダムアクセスされ、データ入出力バッファ70を介して出力されるようになっている。書き込みデータは、データ入出力バッファ70を介してデータバッファ68に一旦保持され、コントロール回路58の制御によりカラムデコーダ64に転送される。
このように、メモリセルアレイ52において、電源電位とは異なる電位を用いる必要がある。そのため、少なくともメモリセルアレイ52と周辺回路54の間は、電気的に絶縁分離されているこことが望ましい。この場合、以下で説明する実施の形態のように、不揮発性メモリ素子及び周辺回路のトランジスタを絶縁表面に形成した半導体層で形成することにより、容易に絶縁分離をすることができる。それにより、誤動作を無くし、消費電力の低い不揮発性メモリカードを得ることができる。
以下、本発明に係る不揮発性メモリカードについて、以下の実施の形態により詳細に説明する。以下に説明する本発明の構成において、同じ要素を指す符号は異なる図面で共通して用い、その場合における繰り返しの説明は省略する場合がある。
なお、本実施の形態は、本明細書の他の実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、不揮発性メモリカードの一例に関して図面を参照して説明する。なお、ここでは、不揮発性メモリカードにおいて、メモリ部を構成する不揮発性メモリ素子と、当該メモリ部と同一の基板上に設けられメモリ部の制御等を行うロジック部を構成するトランジスタ等の素子とを同時に形成する場合を示す。
まず、不揮発性メモリカードにおけるメモリ部の模式図を図8に示す。
本実施の形態で示すメモリ部は、制御用トランジスタSと不揮発性メモリ素子Mを有するメモリセルが複数設けられている。図8では、制御用トランジスタS01と不揮発性メモリ素子M01により一つのメモリセルが形成されている。また、同様に、制御用トランジスタS02と不揮発性メモリ素子M02、制御用トランジスタS03と不揮発性メモリ素子M03、制御用トランジスタS11と不揮発性メモリ素子M11、制御用トランジスタS12と不揮発性メモリ素子M12、制御用トランジスタS13と不揮発性メモリ素子M13とによりメモリセルが形成されている。
制御用トランジスタS01のゲート電極はワード線WL1に接続され、ソース又はドレインの一方はビット線BL0に接続され、他方は不揮発性メモリ素子M01のソース又はドレインに接続されている。また、不揮発性メモリ素子M01のゲート電極はワード線WL11に接続され、ソース又はドレインの一方は制御用トランジスタS01のソース又はドレインに接続され、他方はソース線SLに接続されている。
なお、メモリ部に設けられる制御用トランジスタは、ロジック部に設けられるトランジスタと比較して駆動電圧が高いため、メモリ部に設けるトランジスタとロジック部に設けるトランジスタのゲート絶縁膜等を異なる厚さで形成することが好ましい。例えば、駆動電圧が小さくしきい値電圧のばらつきを小さくしたい場合にはゲート絶縁膜が薄い薄膜トランジスタを設けることが好ましく、駆動電圧が大きくゲート絶縁膜の耐圧性が求められる場合にはゲート絶縁膜が厚い薄膜トランジスタを設けることが好ましい。
従って、本実施の形態では、駆動電圧が小さくしきい値電圧のばらつきを小さくしたいロジック部のトランジスタに対しては膜厚が小さい絶縁膜を形成し、駆動電圧が大きくゲート絶縁膜の耐圧性が求められるメモリ部のトランジスタに対しては膜厚が大きい絶縁膜を形成する場合に関して以下に図面を参照して説明する。なお、図22〜24は上面図を示し、図18〜21は図22〜24におけるA−B間、C−D間、E−F間及びG−H間の断面図を示している。また、A−B間及びC−D間はロジック部に設けられる薄膜トランジスタを示し、E−F間はメモリ部に設けられる不揮発性メモリ素子を示し、G−H間はメモリ部に設けられる薄膜トランジスタを示している。また、本実施の形態では、A−B間に設ける薄膜トランジスタをpチャネル型、C−D間、G−H間に設ける薄膜トランジスタをnチャネル型、E−F間に設けられる不揮発性メモリ素子のキャリアの移動を電子で行う場合に関して説明するが、本発明の不揮発性メモリカードはこれに限られるものでない。
まず、基板100上に絶縁膜102を介して島状の半導体層104、106、108、110を形成し、当該島状の半導体層104、106、108、110を覆うように第1の絶縁膜112、114、116、118をそれぞれ形成する。そして、第1の絶縁膜112、114、116、118を覆うように不揮発性メモリ素子において浮遊ゲートとして機能する電荷蓄積層(ここでは、ゲルマニウム(Ge)を主成分とする膜)120を形成する(図18(A)参照)。島状の半導体層104、106、108、110は、基板100上にあらかじめ形成された絶縁膜102上にスパッタ法、LPCVD法、プラズマCVD法等を用いてシリコン(Si)を主成分とする材料(例えばSixGe1−x等)等を用いて非晶質半導体層を形成し、当該非晶質半導体層を結晶化させた後に選択的にエッチングすることにより設けることができる。なお、非晶質半導体層の結晶化は、レーザー結晶化法、RTA又はファーネスアニール炉を用いる熱結晶化法、結晶化を助長する金属元素を用いる熱結晶化法またはこれら方法を組み合わせた方法等により行うことができる。
また、レーザー光の照射によって半導体層の結晶化若しくは再結晶化を行う場合には、レーザー光の光源としてLD励起の連続発振(CW)レーザー(YVO4、第2高調波(波長532nm))を用いることができる。特に第2高調波に限定する必要はないが、第2高調波はエネルギー効率の点で、さらに高次の高調波より優れている。CWレーザーを半導体層に照射すると、連続的に半導体層にエネルギーが与えられるため、一旦半導体層を溶融状態にすると、溶融状態を継続させることができる。さらに、CWレーザーを走査することによって半導体層の固液界面を移動させ、この移動の方向に沿って一方向に長い結晶粒を形成することができる。また、固体レーザーを用いるのは、気体レーザー等と比較して、出力の安定性が高く、安定した処理が見込まれるためである。なお、CWレーザーに限らず、繰り返し周波数が10MHz以上のパルスレーザを用いることも可能である。繰り返し周波数が高いパルスレーザを用いると、半導体層が溶融してから固化するまでの時間よりもレーザーのパルス間隔が短ければ、常に半導体層を溶融状態にとどめることができ、固液界面の移動により一方向に長い結晶粒で構成される半導体層を形成することができる。その他のCWレーザー及び繰り返し周波数が10MHz以上のパルスレーザを使用することもできる。例えば、気体レーザーとしては、Arレーザー、Krレーザー、CO2レーザー等がある。固体レーザーとして、YAGレーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、GdVO4レーザー、KGWレーザー、KYWレーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、Y2O3レーザー、YVO4レーザー等がある。また、YAGレーザー、Y2O3レーザー、GdVO4レーザー、YVO4レーザーなどのセラミックスレーザがある。金属蒸気レーザーとしてはヘリウムカドミウムレーザ等が挙げられる。また、レーザー発振器において、レーザー光をTEM00(シングル横モード)で発振して射出すると、被照射面において得られる線状のビームスポットのエネルギー均一性を上げることができるので好ましい。その他にも、パルス発振のエキシマレーザーを用いても良い。
基板100は、ガラス基板、石英基板、金属基板(例えばセラミック基板またはステンレス基板など)、Si基板等の半導体基板から選択されるものである。他にもプラスチック基板として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、アクリルなどの基板を選択することもできる。
絶縁膜102は、CVD法やスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン(SiOxNy)(x>y)、窒化酸化シリコン(SiNxOy)(x>y)等の絶縁材料を用いて形成する。例えば、絶縁膜102を2層構造とする場合、第1層目の絶縁膜として窒化酸化シリコン膜を形成し、第2層目の絶縁膜として酸化窒化シリコン膜を形成するとよい。また、第1層目の絶縁膜として窒化シリコン膜を形成し、第2層目の絶縁膜として酸化シリコン膜を形成してもよい。このように、ブロッキング層として機能する絶縁膜102を形成することによって、基板100からNaなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属が、この上に形成する素子に悪影響を与えることを防ぐことができる。なお、基板100として石英を用いるような場合には絶縁膜102を省略してもよい。
第1の絶縁膜112、114、116、118は、半導体層104、106、108、110に熱処理又はプラズマ処理等を行うことによって形成することができる。例えば、高密度プラズマ処理により当該半導体層104、106、108、110に酸化処理、窒化処理又は酸窒化処理を行うことによって、当該半導体層104、106、108、110上にそれぞれ酸化膜、窒化膜又は酸窒化膜となる第1の絶縁膜112、114、116、118を形成する。なお、プラズマCVD法やスパッタ法により形成してもよい。
例えば、半導体層104、106、108、110としてSiを主成分とする半導体層を用いて高密度プラズマ処理により酸化処理又は窒化処理を行った場合、第1の絶縁膜112、114、116、118として酸化シリコン(SiOx)膜又は窒化シリコン(SiNx)膜が形成される。また、高密度プラズマ処理により半導体層104、106、108、110に酸化処理を行った後に、再度高密度プラズマ処理を行うことによって窒化処理を行ってもよい。この場合、半導体層104、106、108、110に接して酸化シリコン膜が形成され、当該酸化シリコン膜上に酸素と窒素を有する膜(以下、「酸窒化シリコン膜」と記す)が形成され、第1の絶縁膜112、114、116、118は酸化シリコン膜と酸窒化シリコン膜とが積層された膜となる。
ここでは、第1の絶縁膜112、114、116、118を1〜10nm、好ましくは1〜5nmで形成する。例えば、高密度プラズマ処理により半導体層104、106、108、110に酸化処理を行い当該半導体層104、106、108、110の表面に概略5nmの酸化シリコン膜を形成した後、高密度プラズマ処理により窒化処理を行い酸化シリコン膜の表面に概略2nmの酸窒化シリコン膜を形成する。この場合、半導体層104、106、108、110の表面に形成された酸化シリコン膜の膜厚は、概略3nmとなっている。これは、酸窒化シリコン膜が形成された分だけ減少するためである。また、このとき、高密度プラズマ処理による酸化処理と窒化処理は大気に一度も曝されることなく連続して行うことが好ましい。高密度プラズマ処理を連続して行うことによって、汚染物の混入の防止や生産効率の向上を実現することができる。
なお、高密度プラズマ処理により半導体層を酸化する場合には、酸素を含む雰囲気下(例えば、酸素(O2)又は一酸化二窒素(N2O)と希ガス(He、Ne、Ar、Kr、Xeの少なくとも一つを含む)雰囲気下、若しくは酸素又は一酸化二窒素と水素(H2)と希ガス雰囲気下)で行う。一方、高密度プラズマ処理により半導体層を窒化する場合には、窒素を含む雰囲気下(例えば、窒素(N2)と希ガス(He、Ne、Ar、Kr、Xeの少なくとも一つを含む)雰囲気下、窒素と水素と希ガス雰囲気下、若しくはNH3と希ガス雰囲気下)でプラズマ処理を行う。
希ガスとしては、例えばArを用いることができる。また、ArとKrを混合したガスを用いてもよい。高密度プラズマ処理を希ガス雰囲気中で行った場合、第1の絶縁膜112、114、116、118は、プラズマ処理に用いた希ガス(He、Ne、Ar、Kr、Xeの少なくとも一つを含む)を含んでいる場合があり、Arを用いた場合には第1の絶縁膜112、114、116、118にArが含まれている場合がある。
また、高密度プラズマ処理は、上記ガスの雰囲気中において、電子密度が1×1011cm−3以上であり、プラズマの電子温度が1.5eV以下で行う。より詳しくは、電子密度が1×1011cm−3以上1×1013cm−3以下で、プラズマの電子温度が0.5eV以上1.5eV以下で行う。プラズマの電子密度が高密度であり、基板100上に形成された被処理物(ここでは、半導体層104、106、108、110)付近での電子温度が低いため、被処理物に対するプラズマによる損傷を防止することができる。また、プラズマの電子密度が1×1011cm−3以上と高密度であるため、プラズマ処理を用いて、被照射物を酸化または窒化することよって形成される酸化物または窒化膜は、CVD法やスパッタ法等により形成された膜と比較して膜厚等が均一性に優れ、且つ緻密な膜を形成することができる。また、プラズマの電子温度が1.5eV以下と低いため、従来のプラズマ処理や熱酸化法と比較して低温度で酸化または窒化処理を行うことができる。例えば、ガラス基板の歪点よりも100度以上低い温度でプラズマ処理を行っても十分に酸化または窒化処理を行うことができる。プラズマを形成するための周波数としては、マイクロ波(例えば、2.45GHz)等の高周波を用いることができる。
本実施の形態では、高密度プラズマ処理により被処理物の酸化処理を行う場合、酸素(O2)、水素(H2)とアルゴン(Ar)との混合ガスを導入する。ここで用いる混合ガスは、酸素を0.1〜100sccm、水素を0.1〜100sccm、アルゴンを100〜5000sccmとして導入すればよい。なお、酸素:水素:アルゴン=1:1:100の比率で混合ガスを導入することが好ましい。例えば、酸素を5sccm、水素を5sccm、アルゴンを500sccmとして導入すればよい。
また、高密度プラズマ処理により窒化処理を行う場合、窒素(N2)とアルゴン(Ar)との混合ガスを導入する。ここで用いる混合ガスは、窒素を20〜2000sccm、アルゴンを100〜10000sccmとして導入すればよい。例えば、窒素を200sccm、アルゴンを1000sccmとして導入すればよい。
本実施の形態において、メモリ部に設けられた半導体層108上に形成される第1の絶縁膜116は、後に完成する不揮発性メモリ素子において、トンネル酸化膜として機能する。従って、第1の絶縁膜116の膜厚が薄いほど、トンネル電流が流れやすく、メモリとして高速動作が可能となる。また、第1の絶縁膜116の膜厚が薄いほど、後に形成される浮遊ゲートに低電圧で電荷を蓄積させることが可能となるため、不揮発性メモリカードの消費電力を低減することができる。そのため、第1の絶縁膜112、114、116、118は、膜厚を薄く形成することが好ましい。
一般的に、半導体層上に絶縁膜を薄く形成する方法として熱酸化法があるが、基板100としてガラス基板等の融点が十分に高くない基板を用いる場合には、熱酸化法により第1の絶縁膜112、114、116、118を形成することは非常に困難である。また、CVD法やスパッタ法により形成した絶縁膜は、膜の内部に欠陥を含んでいるため膜質が十分でなく、膜厚を薄く形成した場合にはピンホール等の欠陥が生じる問題がある。また、CVD法やスパッタ法により絶縁膜を形成した場合には、半導体層の端部の被覆が十分でなく、後に第1の絶縁膜116上に形成される導電膜等と半導体層とがリークする場合がある。従って、本実施の形態で示すように、高密度プラズマ処理により第1の絶縁膜112、114、116、118を形成することによって、CVD法やスパッタ法等により形成した絶縁膜より緻密な絶縁膜を形成することができ、また、半導体層104、106、108、110の端部を第1の絶縁膜112、114、116、118で十分に被覆することができる。その結果、メモリとして高速動作や電荷保持特性を向上させることができる。なお、CVD法やスパッタ法により第1の絶縁膜112、114、116、118を形成した場合には、絶縁膜を形成した後に高密度プラズマ処理を行い当該絶縁膜の表面に酸化処理、窒化処理又は酸窒化処理を行うことが好ましい。
電荷蓄積層120は、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム合金等のゲルマニウムを含む膜で形成することができる。ここでは、電荷蓄積層120として、ゲルマニウム元素を含む雰囲気中(例えば、GeH4)でプラズマCVD法を行うことにより、ゲルマニウムを主成分とする膜を1〜20nm、好ましくは5〜10nmで形成する。このように、半導体層としてSiを主成分とする材料を用いて形成し、当該半導体層上にトンネル酸化膜として機能する第1の絶縁膜を介してSiよりエネルギーギャップの小さいゲルマニウムを含む膜を電荷蓄積層として設けた場合、半導体層の電荷に対する絶縁膜により形成される第1の障壁に対して電荷蓄積層の電荷に対する絶縁膜により形成される第2の障壁がエネルギー的に高くなる。その結果、半導体層から電荷蓄積層へ電荷を注入しやすくすることができ、電荷蓄積層から電荷が消失することを防ぐことができる。つまり、メモリとして動作する場合に、低電圧で高効率な書き込みをすることが出来、且つ電荷保持特性を向上させることができる。また、メモリ部に設けられた半導体層108上に形成される電荷蓄積層120は、後に完成する不揮発性メモリ素子において、浮遊ゲートとして機能する。
次に、半導体層104、106、110上に形成された、第1の絶縁膜112、114、118と電荷蓄積層120を選択的に除去し、半導体層108上に形成された、第1の絶縁膜116と電荷蓄積層120を残存させる。ここでは、メモリ部に設けられた半導体層108、第1の絶縁膜116、電荷蓄積層120を選択的にレジストで覆い、半導体層104、106、110上に形成された、第1の絶縁膜112、114、118と電荷蓄積層120をエッチングすることによって選択的に除去する(図18(B)参照)。
次に、半導体層104、106、110と、半導体層108の上方に形成された電荷蓄積層120の一部を選択的に覆うようにレジスト122を形成し、当該レジスト122に覆われていない電荷蓄積層120をエッチングして選択的に除去することによって、電荷蓄積層120の一部を残存させ、電荷蓄積層121を形成する(図18(C)、図24参照)。
次に、半導体層110の特定の領域に不純物領域を形成する。ここでは、レジスト122を除去後、半導体層104、106、108と、半導体層110の一部を選択的に覆うようにレジスト124を形成し、当該レジスト124に覆われていない半導体層110に不純物元素を導入することによって、不純物領域126を形成する(図19(A)参照)。不純物元素としては、n型を付与する不純物元素又はp型を付与する不純物元素を用いる。n型を示す不純物元素としては、リン(P)やヒ素(As)等を用いることができる。p型を示す不純物元素としては、ボロン(B)やアルミニウム(Al)やガリウム(Ga)等を用いることができる。ここでは、不純物元素として、リン(P)を半導体層110に導入する。
次に、半導体層104、106、110と、半導体層108の上方に形成された第1の絶縁膜116と電荷蓄積層121を覆うように第2の絶縁膜128を形成する(図19(B)参照)。
第2の絶縁膜128は、CVD法やスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン(SiOxNy)(x>y)、窒化酸化シリコン(SiNxOy)(x>y)等の絶縁材料を用いて単層又は積層して形成する。例えば、第2の絶縁膜128を単層で設ける場合には、CVD法により酸化窒化シリコン膜又は窒化酸化シリコン膜を5〜50nmの膜厚で形成する。また、第2の絶縁膜128を3層構造で設ける場合には、第1層目の絶縁膜として酸化窒化シリコン膜を形成し、第2の絶縁膜として窒化シリコン膜を形成し、第3の絶縁膜として酸化窒化シリコン膜を形成する。また、他にも第2の絶縁膜128として、ゲルマニウムの酸化物又は窒化物を用いてもよい。
なお、半導体層108の上方に形成された第2の絶縁膜128は、後に完成する不揮発性メモリ素子においてコントロール絶縁膜として機能し、半導体層110の上方に形成された第2の絶縁膜128は、後に完成するトランジスタにおいてゲート絶縁膜として機能する。
次に、半導体層108、110の上方に形成された第2の絶縁膜128を覆うようにレジスト130を選択的に形成し、半導体層104、106上に形成された第2の絶縁膜128を選択的に除去する(図19(C)参照)。
次に、半導体層104、106を覆うように第3の絶縁膜132、134をそれぞれ形成する(図20(A)参照)。
第3の絶縁膜132、134は、上記第1の絶縁膜112、114、116、118の形成方法で示したいずれかの方法を用いて形成する。例えば、高密度プラズマ処理により半導体層104、106、108、110に酸化処理、窒化処理又は酸窒化処理を行うことによって、当該半導体層104、106上にそれぞれシリコンの酸化膜、窒化膜又は酸窒化膜となる第3の絶縁膜132、134を形成する。
ここでは、第3の絶縁膜132、134を1〜20nm、好ましくは1〜10nmで形成する。例えば、高密度プラズマ処理により半導体層104、106に酸化処理を行い当該半導体層104、106の表面に酸化シリコン膜を形成した後、高密度プラズマ処理により窒化処理を行い酸化シリコン膜の表面に酸窒化シリコン膜を形成する。また、この場合、半導体層108、110の上方に形成された第2の絶縁膜128の表面にも酸化処理又は窒化処理が行われ、酸化膜又は酸窒化膜が形成される。半導体層104、106の上方に形成された第3の絶縁膜132、134は、後に完成するトランジスタにおいてゲート絶縁膜として機能する。
次に、半導体層104、106の上方に形成された第3の絶縁膜132、134、半導体層108、110の上方に形成された第2の絶縁膜128を覆うように導電膜を形成する(図20(B)参照)。ここでは、導電膜として、導電膜136と導電膜138を順に積層して形成した例を示している。もちろん、導電膜は、単層又は3層以上の積層構造で形成してもよい。
導電膜136、138としては、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等から選択された元素またはこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で形成することができる。また、これらの元素を窒化した金属窒化膜で形成することもできる。他にも、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコンに代表される半導体材料により形成することもできる。
ここでは、導電膜136として窒化タンタルを用いて形成し、その上に導電膜138としてタングステンを用いて積層構造で設ける。また、他にも、導電膜136として、窒化タングステン、窒化モリブデン又は窒化チタンから選ばれた単層又は積層膜を用い、導電膜138として、タンタル、モリブデン、チタンから選ばれた単層又は積層膜を用いることができる。
次に、積層して設けられた導電膜136、138を選択的にエッチングして除去することによって、半導体層104、106、108、110の上方の一部に導電膜136、138を残存させ、それぞれゲート電極として機能する導電膜140、142、144、146を形成する(図20(C)、図23参照)。なお、メモリ部に設けられた半導体層108の上方に形成される導電膜144は、後に完成する不揮発性メモリ素子において制御ゲートとして機能する。また、導電膜140、142、146は、後に完成するトランジスタにおいてゲート電極として機能する。
次に、半導体層104を覆うようにレジスト148を選択的に形成し、当該レジスト148、導電膜142、144、146をマスクとして半導体層106、108、110に不純物元素を導入することによって不純物領域を形成する(図21(A)参照)。不純物元素としては、n型を付与する不純物元素又はp型を付与する不純物元素を用いる。n型を示す不純物元素としては、リン(P)やヒ素(As)等を用いることができる。p型を示す不純物元素としては、ボロン(B)やアルミニウム(Al)やガリウム(Ga)等を用いることができる。ここでは、不純物元素として、リン(P)を用いる。
図21(A)においては、不純物元素を導入することによって、半導体層106にソース領域又はドレイン領域を形成する不純物領域152とチャネル形成領域150が形成される。また、半導体層108には、ソース領域又はドレイン領域を形成する不純物領域156とLDD領域を形成する低濃度不純物領域158とチャネル形成領域154が形成される。また、半導体層110には、ソース領域又はドレイン領域を形成する不純物領域162とLDD領域を形成する低濃度不純物領域164とチャネル形成領域160が形成される。
また、半導体層108に形成される低濃度不純物領域158は、図21(A)において導入された不純物元素が浮遊ゲートとして機能する電荷蓄積層121を突き抜けることによって形成される。従って、半導体層108において、導電膜144及び電荷蓄積層121の双方と重なる領域にチャネル形成領域154が形成され、電荷蓄積層121と重なり導電膜144と重ならない領域に低濃度不純物領域158が形成され、電荷蓄積層121及び導電膜144の双方と重ならない領域に高濃度不純物領域156が形成される。
次に、半導体層106、108、110を覆うようにレジスト166を選択的に形成し、当該レジスト166、導電膜140をマスクとして半導体層104に不純物元素を導入することによって不純物領域を形成する(図21(B)参照)。不純物元素としては、n型を付与する不純物元素又はp型を付与する不純物元素を用いる。n型を示す不純物元素としては、リン(P)やヒ素(As)等を用いることができる。p型を示す不純物元素としては、ボロン(B)やアルミニウム(Al)やガリウム(Ga)等を用いることができる。ここでは、図21(A)で半導体層106、108、110に導入した不純物元素と異なる導電型を有する不純物元素(例えば、ボロン(B))を導入する。その結果、半導体層104にソース領域又はドレイン領域を形成する不純物領域170とチャネル形成領域168を形成される。
次に、第2の絶縁膜128、第3の絶縁膜132、134、導電膜140、142、144、146を覆うように絶縁膜172を形成し、当該絶縁膜172上に半導体層104、106、108、110にそれぞれ形成された不純物領域152、156、162、170と電気的に接続する導電膜174を形成する(図21(C)、図22参照)。
絶縁膜172は、CVD法やスパッタ法等により、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、酸化窒化シリコン(SiOxNy)(x>y)、窒化酸化シリコン(SiNxOy)(x>y)等の酸素または窒素を有する絶縁膜やDLC(ダイヤモンドライクカーボン)等の炭素を含む膜、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルフェノール、ベンゾシクロブテン、アクリル等の有機材料またはシロキサン樹脂等のシロキサン材料からなる単層または積層構造で設けることができる。なお、シロキサン材料とは、Si−O−Si結合を含む材料に相当する。シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。置換基として、フルオロ基を用いることもできる。または置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。
導電膜174は、CVD法やスパッタリング法等により、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジウム(Nd)、炭素(C)、シリコン(Si)から選択された元素、又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で、単層又は積層で形成する。アルミニウムを主成分とする合金材料とは、例えば、アルミニウムを主成分としニッケルを含む材料、又は、アルミニウムを主成分とし、ニッケルと、炭素とシリコンの一方又は両方とを含む合金材料に相当する。導電膜174は、例えば、バリア膜とアルミニウムシリコン(Al−Si)膜とバリア膜の積層構造、バリア膜とアルミニウムシリコン(Al−Si)膜と窒化チタン膜とバリア膜の積層構造を採用するとよい。なお、バリア膜とは、チタン、チタンの窒化物、モリブデン、又はモリブデンの窒化物からなる薄膜に相当する。アルミニウムやアルミニウムシリコンは抵抗値が低く、安価であるため、導電膜174を形成する材料として最適である。また、上層と下層のバリア層を設けると、アルミニウムやアルミニウムシリコンのヒロックの発生を防止することができる。また、還元性の高い元素であるチタンからなるバリア膜を形成すると、結晶質半導体層上に薄い自然酸化膜ができていたとしても、この自然酸化膜を還元し、結晶質半導体層と良好なコンタクトをとることができる。
次に、導電膜174を覆うように絶縁膜176を形成し、当該絶縁膜176上にアンテナとして機能する導電膜178を形成する(図36参照)。
アンテナとして機能する導電膜178は、CVD法、スパッタ法、スクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷法、液滴吐出法、ディスペンサ法、メッキ法等を用いて、導電性材料により形成する。導電性材料は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)から選択された元素、又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で、単層構造又は積層構造で形成する。
絶縁膜176は、上記絶縁膜172の説明で示したいずれかの材料を用いることができる。
また、本発明の不揮発性メモリカードにおける信号の伝送方式は、電磁結合方式、電磁誘導方式またはマイクロ波方式等を用いることができる。伝送方式は、実施者が使用用途を考慮して適宜選択すればよく、伝送方式に伴って最適なアンテナを設ければよい。
なお、上述した構造において、一つの島状の半導体層に複数の不揮発性メモリ素子を設けた構造としてもよい。この場合に関して図17、図25を参照して説明する。なお、図17は上面図を示し、図25は図17におけるE−F間、G−H間の断面図を示している。
図17、図25で示す不揮発性メモリカードの記憶回路は、ビット線BL0、BL1にそれぞれ電気的に接続された島状の半導体層200a、200bが設けられており、島状の半導体層200a、200bの各々に複数の不揮発性メモリ素子が設けられている(図17、25参照)。具体的には、半導体層200aにおいて、選択トランジスタS01、S02の間に複数の不揮発性メモリ素子M0〜M30、M31を有するNANDセル202aが設けられている。また、半導体層200bにおいても、選択トランジスタの間に複数の不揮発性メモリ素子を有するNANDセル202bが設けられている。また、半導体層200a、200bを分離して設けることによって、隣接するNANDセル202aとNANDセル202bを絶縁分離することが可能となる。
また、一つの島状の半導体層に複数の不揮発性メモリ素子を設けることによって、より不揮発性メモリ素子の集積化が可能となり、大容量の不揮発性メモリカードを形成することができる。
なお、本実施の形態は、本明細書の他の実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、上記実施の形態と異なる不揮発性メモリカードの作製方法に関して図面を参照して説明する。なお、図26〜図28は上面図を示し、図30〜図35は図26〜図28におけるA−B間、E−F間の断面図を示しており、図29は図26〜図28におけるC−D間の断面図を示している。また、A−B間はメモリ部に設けられるトランジスタと不揮発性メモリ素子を示し、C−D間はメモリ部に設けられる不揮発性メモリ素子を示し、E−F間はロジック部に設けられるトランジスタを示している。また、本実施の形態では、E−F間に示す基板200の領域212に設けられるトランジスタをpチャネル型、領域213に設けられるトランジスタをnチャネル型とし、A−B間に示す基板200の領域214に設けられるトランジスタをnチャネル型、不揮発性メモリ素子のキャリアの移動を電子で行う場合に関して説明するが、本発明の不揮発性メモリカードはこれに限られるものでない。
まず、基板200上に絶縁膜を形成する。ここでは、n型の導電型を有する単結晶Siを基板200として用い、当該基板200上に絶縁膜202と絶縁膜204を形成する(図30(A)参照)。例えば、基板200に熱処理を行うことにより絶縁膜202として酸化シリコン(SiOx)を形成し、当該絶縁膜202上にCVD法を用いて窒化シリコン(SiNx)を成膜する。
また、基板200は、半導体基板であれば特に限定されず用いることができる。例えば、n型又はp型の導電型を有する単結晶Si基板、化合物半導体基板(GaAs基板、InP基板、GaN基板、SiC基板、サファイア基板、ZnSe基板等)、貼り合わせ法またはSIMOX(Separation by IMplanted OXygen)法を用いて作製されたSOI(Silicon on Insulator)基板等を用いることができる。
また、絶縁膜204は、絶縁膜202を形成した後に高密度プラズマ処理により当該絶縁膜202を窒化することにより設けてもよい。なお、基板200上に設ける絶縁膜は単層又は3層以上の積層構造で設けてもよい。
次に、絶縁膜204上に選択的にレジストマスク206のパターンを形成し、当該レジストマスク206をマスクとして選択的にエッチングを行うことによって、基板200に選択的に凹部208を形成する(図30(B)参照)。基板200、絶縁膜202、204のエッチングとしては、プラズマを利用したドライエッチングにより行うことができる。
次に、レジストマスク206のパターンを除去した後、基板200に形成された凹部208を充填するように絶縁膜210を形成する(図30(C)参照)。
絶縁膜210は、CVD法やスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン(SiOxNy)(x>y)、窒化酸化シリコン(SiNxOy)(x>y)等の絶縁材料を用いて形成する。ここでは、絶縁膜210として、常圧CVD法または減圧CVD法によりTEOS(テトラエチルオルソシリケート)ガスを用いて酸化シリコン膜を形成する。
次に、研削処理、研磨処理又はCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことによって、基板200の表面を露出させる。ここでは、基板200の表面を露出させることにより、基板200の凹部208に形成された絶縁膜211間に領域212、213、214が設けられる。なお、絶縁膜211は、基板200の表面に形成された絶縁膜210が研削処理、研磨処理又はCMP処理により除去されることにより得られたものである。続いて、p型の導電型を有する不純物元素を選択的に導入することによって、基板200の領域213、214にpウェル215を形成する(図31(A)、図28(A)、(B)、図29(A)参照)。
p型を示す不純物元素としては、ボロン(B)やアルミニウム(Al)やガリウム(Ga)等を用いることができる。ここでは、不純物元素として、ボロン(B)を領域213、214に導入する。
なお、本実施の形態では、基板200としてn型の導電型を有する半導体基板を用いているため、領域212には不純物元素の導入を行っていないが、n型を示す不純物元素を導入することにより領域212にnウェルを形成してもよい。n型を示す不純物元素としては、リン(P)やヒ素(As)等を用いることができる。
一方、p型の導電型を有する半導体基板を用いる場合には、領域212にn型を示す不純物元素を導入してnウェルを形成し、領域213、214には不純物元素の導入を行わない構成としてもよい。
次に、基板200に設けられた領域212、213、214上に第1の絶縁膜216、218、220を形成する。そして、第1の絶縁膜216、218、220を覆うように浮遊ゲート電極(ゲルマニウム(Ge)を主成分とする膜)222を形成する(図31(B)参照)。
第1の絶縁膜216、218、220は、熱処理を行い基板200に設けられた領域212、213、214の表面を酸化させることにより酸化シリコン膜で形成することができる。また、熱酸化法により酸化シリコン膜を形成した後に、窒化処理を行うことによって酸化シリコン膜の表面を窒化させることにより、酸化シリコン膜と酸素と窒素を有する膜(酸窒化シリコン膜)との積層構造で形成することができる。
他にも、上述したように、プラズマ処理を用いて第1の絶縁膜216、218、220を形成してもよい。例えば、基板200に設けられた領域212、213、214の表面に高密度プラズマ処理により酸化処理又は窒化処理を行った場合、第1の絶縁膜216、218、220として酸化シリコン(SiOx)膜又は窒化シリコン(SiNx)膜が形成される。また、高密度プラズマ処理により領域212、213、214の表面に酸化処理を行った後に、再度高密度プラズマ処理を行うことによって窒化処理を行ってもよい。この場合、領域212、213、214の表面に接して酸化シリコン膜が形成され、当該酸化シリコン膜上に酸窒化シリコン膜が形成され、第1の絶縁膜216、218、220は酸化シリコン膜と酸窒化シリコン膜とが積層された膜となる。また、熱酸化法により領域212、213、214の表面に酸化シリコン膜を形成した後に高密度プラズマ処理により酸化処理又は窒化処理を行ってもよい。
本実施の形態において、基板200においてメモリ部に設けられた領域214上に形成される第1の絶縁膜220は、後に完成する不揮発性メモリ素子において、トンネル酸化膜として機能する。従って、第1の絶縁膜220の膜厚が薄いほど、トンネル電流が流れやすく、メモリとして高速動作が可能となる。また、第1の絶縁膜220の膜厚が薄いほど、浮遊ゲート電極222に低電圧で電荷を蓄積させることが可能となるため、不揮発性メモリカードの消費電力を低減することができる。そのため、第1の絶縁膜220は、膜厚を薄く形成することが好ましい。
浮遊ゲート電極222は、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム合金等のゲルマニウムを含む膜で形成することができる。ここでは、浮遊ゲート電極222として、ゲルマニウム元素を含む雰囲気中(例えば、GeH4)でプラズマCVD法を行うことにより、ゲルマニウムを主成分とする膜で形成する。このように、基板200として単結晶Si基板を用い、当該Si基板のある領域上にトンネル酸化膜として機能する第1の絶縁膜を介してSiよりエネルギーギャップの小さいゲルマニウムを含む膜を浮遊ゲート電極として設けた場合、Si基板のある領域の電荷に対する絶縁膜により形成される第1の障壁に対して浮遊ゲート電極の電荷に対する絶縁膜により形成される第2の障壁がエネルギー的に高くなる。その結果、Si基板のある領域から浮遊ゲート電極へ電荷を注入しやすくすることができ、浮遊ゲート電極から電荷が消失することを防ぐことができる。つまり、メモリとして動作する場合に、低電圧で高効率な書き込みをすることが出来、且つ電荷保持特性を向上させることができる。また、基板200においてメモリ部に設けられた領域214の上方に形成される浮遊ゲート電極222は、後に完成する不揮発性メモリ素子において、フローティングゲートとして機能する。
次に、浮遊ゲート電極222上にレジストマスク223を形成し、当該レジストマスク223をマスクとして浮遊ゲート電極222と、第1の絶縁膜216、218、220を選択的に除去する。ここでは、基板200において領域214の一部を覆うようにレジストマスク223を形成し、当該レジストマスク223に覆われていない浮遊ゲート電極222、第1の絶縁膜216、218、220を除去することによって、領域214に設けられた一部の第1の絶縁膜220と浮遊ゲート電極222を残存させ、第1の絶縁膜224、浮遊ゲート電極226とする(図31(C)参照)。具体的には、領域214のうち、後に不揮発性メモリ素子が形成される領域に設けられた第1の絶縁膜220と浮遊ゲート電極222を残存させる。また、基板200の領域212、213と領域214の一部の表面が露出する。
次に、基板200の領域212、213、214、浮遊ゲート電極222を覆うように第2の絶縁膜228を形成する(図32(A)参照)。
第2の絶縁膜228は、CVD法やスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン(SiOxNy)(x>y)、窒化酸化シリコン(SiNxOy)(x>y)等の絶縁材料を用いて単層又は積層して形成する。例えば、第2の絶縁膜228を単層で設ける場合には、CVD法により酸化窒化シリコン膜又は窒化酸化シリコン膜を5〜50nmの膜厚で形成する。また、第2の絶縁膜228を3層構造で設ける場合には、第1層目の絶縁膜として酸化窒化シリコン膜を形成し、第2の絶縁膜として窒化シリコン膜を形成し、第3の絶縁膜として酸化窒化シリコン膜を形成する。
なお、基板200の領域214における浮遊ゲート電極222上に形成された第2の絶縁膜228は、後に完成する不揮発性メモリ素子においてコントロール絶縁膜として機能し、一部の露出した領域214に形成された第2の絶縁膜は、後に完成するトランジスタにおいてゲート絶縁膜として機能する。
次に、基板200の領域214に形成された第2の絶縁膜228を覆うようにレジストマスク230を選択的に形成し、基板200の領域212、213に形成された第2の絶縁膜228を選択的に除去する(図32(B)参照)。
次に、基板200の領域212、213の表面上に第3の絶縁膜232、234をそれぞれ形成する(図32(C)参照)。
第3の絶縁膜232、234は、上記第1の絶縁膜216、218、220の形成方法で示したいずれかの方法を用いて形成する。例えば、熱処理を行い基板200に設けられた領域212、213の表面を酸化させることにより酸化シリコン膜で第3の絶縁膜232、234を形成することができる。また、熱酸化法により酸化シリコン膜を形成した後に、窒化処理を行うことによって酸化シリコン膜の表面を窒化させることにより、酸化シリコン膜と酸素と窒素を有する膜(酸窒化シリコン膜)との積層構造で形成してもよい。
他にも、上述したように、プラズマ処理を用いて第3の絶縁膜232、234を形成してもよい。例えば、基板200に設けられた領域212、213の表面に高密度プラズマ処理により酸化処理又は窒化処理を行うことにより、第3の絶縁膜232、234として酸化シリコン(SiOx)膜又は窒化シリコン(SiNx)膜で形成することができる。また、高密度プラズマ処理により領域212、213の表面に酸化処理を行った後に、再度高密度プラズマ処理を行うことによって窒化処理を行ってもよい。この場合、領域212、213の表面に接して酸化シリコン膜が形成され、当該酸化シリコン膜上に酸窒化シリコン膜が形成され、第3の絶縁膜232、234は酸化シリコン膜と酸窒化シリコン膜とが積層された膜となる。また、熱酸化法により領域212、213の表面に酸化シリコン膜を形成した後に高密度プラズマ処理により酸化処理又は窒化処理を行ってもよい。
なお、第3の絶縁膜232、234を熱酸化法や高密度プラズマ処理で形成する際に、基板200の領域214の上方に形成された第2の絶縁膜228の表面にも、酸化膜又は酸窒化膜が形成される場合がある。また、基板200の領域212、213に形成された第3の絶縁膜232、234は、後に完成するトランジスタにおいてゲート絶縁膜として機能する。
次に、基板200に設けられた領域212、213の上方に形成された第3の絶縁膜232、234、領域214の上方に形成された第2の絶縁膜228を覆うように導電膜を形成する(図33(A)参照)。ここでは、導電膜として、導電膜236と導電膜238を順に積層して形成した例を示している。もちろん、導電膜は、単層又は3層以上の積層構造で形成してもよい。
導電膜236、238としては、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等から選択された元素またはこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で形成することができる。また、これらの元素を窒化した金属窒化膜で形成することもできる。他にも、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコンに代表される半導体材料により形成することもできる。
ここでは、導電膜236として窒化タンタルを用いて形成し、その上に導電膜238としてタングステンを用いて積層構造で設ける。また、他にも、導電膜236として、窒化タンタル、窒化タングステン、窒化モリブデン又は窒化チタンから選ばれた単層又は積層膜を用い、導電膜238として、タングステン、タンタル、モリブデン、チタンから選ばれた単層又は積層膜を用いることができる。
次に、積層して設けられた導電膜236、238を選択的にエッチングして除去することによって、基板200の領域212、213、214の上方の一部に導電膜236、238を残存させ、それぞれゲート電極として機能する導電膜240、242、244、246を形成する(図33(B)、図29(B)参照)。また、ここでは、基板200において、導電膜240、242、244、246と重ならない領域212、213、214の表面が露出するようにする。なお、ゲート電極として機能する導電膜244は、後に完成する不揮発性メモリ素子において制御ゲートとして機能する。
具体的には、基板200の領域212において、導電膜240の下方に形成された第3の絶縁膜232のうち当該導電膜240と重ならない部分を選択的に除去し、導電膜240と第3の絶縁膜232の端部が概略一致するように形成する。また、基板200の領域214において、導電膜242の下方に形成された第3の絶縁膜234のうち当該導電膜242と重ならない部分を選択的に除去し、導電膜242と第3の絶縁膜234の端部が概略一致するように形成する。また、基板200の領域214において、導電膜244の下方に形成された第2の絶縁膜228うち当該導電膜244と重ならない部分を選択的に除去し、導電膜244と第2の絶縁膜228の端部が概略一致するように形成する。また、基板200の領域214において、導電膜246の下方に形成された第2の絶縁膜228、浮遊ゲート電極226、第1の絶縁膜224のうち当該導電膜246と重ならない部分を選択的に除去し、導電膜246と第2の絶縁膜228、浮遊ゲート電極226及び第1の絶縁膜224の端部が概略一致するように形成する。
この場合、導電膜240、242、244、246の形成と同時に重ならない部分の絶縁膜等を除去してもよいし、導電膜240、242、244、246を形成後残存したレジストマスク又は当該導電膜240、242、244、246をマスクとして重ならない部分の絶縁膜等を除去してもよい。
次に、基板200の領域212、213、214に不純物元素を選択的に導入する(図33(C)参照)。ここでは、領域213、214に導電膜242、244、246をマスクとしてn型を付与する低濃度の不純物元素を選択的に導入し、領域212に導電膜240をマスクとしてp型を付与する低濃度の不純物元素を選択的に導入する。n型を付与する不純物元素としては、リン(P)やヒ素(As)等を用いることができる。p型を付与する不純物元素としては、ボロン(B)やアルミニウム(Al)やガリウム(Ga)等を用いることができる。
次に、導電膜240、242、244、246の側面に接する絶縁膜254(サイドウォールともよばれる)を形成する。具体的には、プラズマCVD法やスパッタリング法等により、シリコン、シリコンの酸化物又はシリコンの窒化物の無機材料を含む膜や、有機樹脂などの有機材料を含む膜を、単層又は積層して形成する。そして、当該絶縁膜を、垂直方向を主体とした異方性エッチングにより選択的にエッチングして、導電膜240、242、244、246の側面に接するように形成することができる。なお、絶縁膜254は、LDD(Lightly Doped drain)領域を形成する際のドーピング用のマスクとして用いる。また、ここでは、絶縁膜254は、導電膜240、242、244、246の下方に形成された絶縁膜や浮遊ゲート電極の側面にも接するように形成されている。
続いて、当該絶縁膜254、導電膜240、242、244、246をマスクとして基板200の領域212、213、214に不純物元素を導入することによって、ソース領域又はドレイン領域として機能する不純物領域を形成する(図34(A)、図27(A)、(B)参照)。ここでは、基板200の領域213、214に絶縁膜254と導電膜242、244、246をマスクとして高濃度のn型を付与する不純物元素を導入し、領域212に絶縁膜254と導電膜240をマスクとして高濃度のp型を付与する不純物元素を導入する。
その結果、基板200の領域212には、ソース領域又はドレイン領域を形成する不純物領域258と、LDD領域を形成する低濃度不純物領域260と、チャネル形成領域256が形成される。また、基板200の領域213には、ソース領域又はドレイン領域を形成する不純物領域264と、LDD領域を形成する低濃度不純物領域266と、チャネル形成領域262が形成される。また、基板200の領域214には、ソース領域又はドレイン領域を形成する不純物領域270と、LDD領域を形成する低濃度不純物領域272、276と、チャネル形成領域268、274が形成される。
なお、本実施の形態では、導電膜240、242、244、246と重ならない基板200の領域212、213、214を露出させた状態で不純物元素の導入を行っている。従って、基板200の領域212、213、214にそれぞれ形成されるチャネル形成領域256、262、268、274は導電膜240、242、244、246と自己整合的に形成することができる。
次に、基板200の領域212、213、214上に設けられた絶縁膜や導電膜等を覆うように絶縁膜277を形成し、当該絶縁膜277に開口部278を形成する(図34(B)参照)。
絶縁膜277は、CVD法やスパッタ法等により、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、酸化窒化シリコン(SiOxNy)(x>y)、窒化酸化シリコン(SiNxOy)(x>y)等の酸素または窒素を有する絶縁膜やDLC(ダイヤモンドライクカーボン)等の炭素を含む膜、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルフェノール、ベンゾシクロブテン、アクリル等の有機材料またはシロキサン樹脂等のシロキサン材料からなる単層または積層構造で設けることができる。なお、シロキサン材料とは、Si−O−Si結合を含む材料に相当する。シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。置換基として、フルオロ基を用いることもできる。または置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。
次に、CVD法を用いて開口部278に導電膜280を形成し、当該導電膜280と電気的に接続するように絶縁膜277上に導電膜282a〜282dを選択的に形成する(図35、図26(A)、(B)、図29(C)参照)。
導電膜280、282a〜282dは、CVD法やスパッタリング法等により、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジウム(Nd)、炭素(C)、シリコン(Si)から選択された元素、又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で、単層又は積層で形成する。アルミニウムを主成分とする合金材料とは、例えば、アルミニウムを主成分としニッケルを含む材料、又は、アルミニウムを主成分とし、ニッケルと、炭素とシリコンの一方又は両方とを含む合金材料に相当する。導電膜280、282a〜282dは、例えば、バリア膜とアルミニウムシリコン(Al−Si)膜とバリア膜の積層構造、バリア膜とアルミニウムシリコン(Al−Si)膜と窒化チタン膜とバリア膜の積層構造を採用するとよい。なお、バリア膜とは、チタン、チタンの窒化物、モリブデン、又はモリブデンの窒化物からなる薄膜に相当する。アルミニウムやアルミニウムシリコンは抵抗値が低く、安価であるため、導電膜280、282a〜282dを形成する材料として最適である。また、上層と下層のバリア層を設けると、アルミニウムやアルミニウムシリコンのヒロックの発生を防止することができる。また、還元性の高い元素であるチタンからなるバリア膜を形成すると、結晶質半導体層上に薄い自然酸化膜ができていたとしても、この自然酸化膜を還元し、結晶質半導体層と良好なコンタクトをとることができる。ここでは、導電膜280はCVD法によりタングステン(W)を選択成長することにより形成することができる。
以上の工程により、基板200の領域212に形成されたp型のトランジスタと、領域213に形成されたn型のトランジスタと、領域214に形成されたn型のトランジスタ及び不揮発性メモリ素子とを具備する不揮発性メモリカードを得ることができる。
なお、本実施の形態は、本明細書の他の実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。