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JP5128796B2 - 脳血管障害の遺伝的リスク検出法 - Google Patents

脳血管障害の遺伝的リスク検出法 Download PDF

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JP5128796B2 JP2006244526A JP2006244526A JP5128796B2 JP 5128796 B2 JP5128796 B2 JP 5128796B2 JP 2006244526 A JP2006244526 A JP 2006244526A JP 2006244526 A JP2006244526 A JP 2006244526A JP 5128796 B2 JP5128796 B2 JP 5128796B2
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Description

本発明は、脳血管障害の遺伝的リスク検出法等に関するものである。
ヒトゲノムプロジェクトの成功によって、一般的な疾患に影響を与える遺伝子の同定を含め、臨床医学に対して大きな利益がもたらされつつある。そのような遺伝子を同定するための方法の一つとして、特定の疾患に注目しつつ、適切に選択された遺伝子多型を探るという方法がある。そのような遺伝子は、その疾患の発症・進展に関与するタンパク質をコードしていることが知られており、かつ疾患に連鎖する染色体領域に存在しているからである。
脳血管障害は、一般的かつ重篤な疾患である。米国では、毎年70万人以上の患者が初回、或いは二回目以上の発作によって苦しんでおり、毎年16万3千人がこの疾患によって亡くなっている。米国における脳血管障害の罹患者は、540万人にのぼる。全ての脳血管障害のうち、88%は脳梗塞、9%は脳出血、3%はクモ膜下出血である。日本では、脳血管障害の罹患者は、140万人程度であり(62%は脳梗塞、23%は脳出血、11%はクモ膜下出血である)、毎年13万2千人近くが、この病気によって亡くなっている(厚生労働省の推計による)。近年、脳血管障害の治療に対して急速な進歩が認められるものの、西洋および日本において、依然として脳血管障害は重篤な影響を与える疾患であるとともに、心臓病とガンに続き第3位の死因となっている。脳血管障害の脅威を減少させるための重要な戦略の一つは、脳血管障害に関する危険因子を同定することである。
遺伝的連鎖解析と候補遺伝子解析によって、遺伝子座(5q12)(非特許文献1)。関連文献については、明細書の末尾にまとめて示す。))といくつかの候補遺伝子(フォスフォジエステラーゼ4D(非特許文献2)、5リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(非特許文献3)、およびシクロオキシゲナーゼ2(非特許文献4))と、脳血管障害との関与が示唆されている。
しかしながら、依然として虚血性および出血性の脳血管障害と遺伝的要因との関係については、十分に解明されていない。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、虚血性および出血性の脳血管障害について、遺伝的因子および従来の危険因子を組み合わせることにより、リスクを判断するための一材料を得るための検出法等を提供することにある。
本発明者は、虚血性および出血性の脳血管障害に関し、3151名の日本人について、152遺伝子中の202カ所の遺伝子多型に関する大規模研究を行った。本研究の目的は、アテローム血栓性脳梗塞、脳出血、およびクモ膜下出血という脳血管障害に関与する遺伝子多型を同定し、この知見に基づいて、ある者に対して脳血管障害を避けるための有用な情報を与えることである。
上記解析の結果、第1の発明に係るアテローム血栓性脳梗塞のリスク検出法は、IL6のG−572C、MTHFRのC677T、IPF1の3G−108/4G、TNFSF4のA/G、ITGB2のC1323T、THBS2のT3949G、MMP12のA−82G、ANXA5のC−1Tの遺伝子多型と、性差、高血圧の有無、糖尿病の有無とを評価因子とし、各評価因子のオッズ比を乗じた発症リスクを計算し、この発症リスクを平均と分散またはパーセントによる区分に応じて3つ以上の複数の群を作成し、各群に応じて発症のリスクを検出することを特徴とする。
このとき、群を形成するときに使用する分散については、統計上の分散値、或いは標準偏差値(SD)、パーセントによる区分などを用いることができる。なお、遺伝子多型については、必ずしも上記8個には限られず、1個〜7個、9個以上で実施することができる。
本明細書中において、多型の記載方法は、次の2通りの方法である。
(1)各遺伝子について、「データベースに登録されている塩基(A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン)、多型が生じている位置、多型塩基」の順で記載する。例えば、「IL6のG−572C」は、IL6遺伝子について、−572位のGがCとなっている多型を意味している。但し、挿入多型については、「データベースに登録されている数とその塩基、多型が生じている位置、/塩基数及び塩基」の順で記載する。例えば、「IPF1の3G−108/4G」は、IPF1遺伝子について、−108位の3個の連続するGが、4個の連続するGとなる挿入多型を意味している。
(2)各遺伝子について、「多型が生じている位置、データベースに登録されている塩基(A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン)→多型の塩基」の順で記載する。例えば、「MTHFRの677C→T」は、MTHFR遺伝子について、677位のCがTとなっている多型を意味している。但し、挿入多型については、「多型が生じている位置/塩基数とデータベースに登録されている塩基→塩基数と塩基」の順で記載する。例えば、「IPF1の−108/3G→4G」は、IPF1遺伝子について、−108位の3個の連続するGが、4個の連続するGとなる挿入多型を意味している。
また、場所の指定がない多型(例えば、HNF4AのA→G、TNFSF4のA→G、PAI1のA→G)については、表1〜表6に記載のdbSNPのアクセス番号から、その内容を容易に理解することができる。
一般に多型は、集団(例えば、日本人集団、西洋人集団など)が異なると、その種類・頻度が異なることが知られている。このため、日本人以外の集団において、脳血管障害との関係が指摘されている多型であっても、必ずしも日本人集団においてそのような関連が認められるわけではない。このため、従来の報告については、国または疾患が異なる場合には、必ずしも日本人における多型および脳血管障害との関連が裏付けられるわけではない。
また、第2の発明に係る脳出血のリスク検出法は、IL6のG−572C、TNFのC−863A、CD14のC−260T、FBN1のT1875C、PECAM1のC1454G、UCP1のA−112C、CPB2のG529A、LIPCのG−250A、CCL5のC−28Gの遺伝子多型と、性差、高血圧の有無、高コレステロール血症の有無とを評価因子とし、各評価因子のオッズ比を乗じた発症リスクを計算し、この発症リスクを平均と分散またはパーセントによる区分に応じて3つ以上の複数の群を作成し、各群に応じて発症のリスクを検出することを特徴とする。
このとき、群を形成するときに使用する分散については、統計上の分散値、或いは標準偏差値(SD)、パーセントによる区分などを用いることができる。なお、遺伝子多型については、必ずしも上記9個には限られず、1個〜8個、10個以上で実施することができる。
また、第3の発明に係るクモ膜下出血のリスク検出法は、PKD1−likeのG/A(Gly243Asp)、TNFのC−863A、CAPN10のG4852A、MTHFRのC677T、UCP3のC−55T、OLR1のG501C、PAX4のC567T、TGFBR2のC1167T、IL10のT−819C、CCL5のG−403Aの遺伝子多型と、高コレステロール血症の有無、喫煙の有無、性差、高血圧の有無とを評価因子とし、各評価因子のオッズ比を乗じた発症リスクを計算し、この発症リスクを平均と分散またはパーセントによる区分に応じて3つ以上の複数の群を作成し、各群に応じて発症のリスクを検出することを特徴とする。
このとき、群を形成するときに使用する分散については、統計上の分散値、或いは標準偏差値(SD)、パーセントによる区分などを用いることができる。なお、遺伝子多型については、必ずしも上記10個には限られず、1個〜9個、11個以上で実施することができる。
また、第4の発明に係る脳血管障害の遺伝的リスク検出法は、IL6のG−572C、MTHFRのC677T、IPF1の3G−108/4G、TNFSF4のA/G、ITGB2のC1323T、THBS2のT3949G、MMP12のA−82G、ANXA5のC−1T、TNFのC−863A、CD14のC−260T、FBN1のT1875C、PECAM1のC1454G、UCP1のA−112C、CPB2のG529A、LIPCのG−250A、CCL5のC−28G、PKD1−likeのG/A(Gly243Asp)、CAPN10のG4852A、UCP3のC−55T、OLR1のG501C、PAX4のC567T、TGFBR2のC1167T、IL10のT−819C、CCL5のG−403Aのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型を検出することを特徴とする。
これらの多型は、第1の発明〜第3の発明について、脳血管障害のリスクを検出するために特に有効な多型であると判断されたものである。
また、第4の発明においては、脳血管障害がアテローム血栓性脳梗塞である場合には、IL6のG−572C、MTHFRのC677T、IPF1の3G−108/4G、TNFSF4のA/G、ITGB2のC1323T、THBS2のT3949G、MMP12のA−82G、ANXA5のC−1Tのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型を検出することが好ましい。
また、脳血管障害が脳出血である場合には、IL6のG−572C、TNFのC−863A、CD14のC−260T、FBN1のT1875C、PECAM1のC1454G、UCP1のA−112C、CPB2のG529A、LIPCのG−250A、CCL5のC−28Gのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型を検出することが好ましい。
また、脳血管障害がクモ膜下出血である場合には、PKD1−likeのG/A(Gly243Asp)、TNFのC−863A、CAPN10のG4852A、MTHFRのC677T、UCP3のC−55T、OLR1のG501C、PAX4のC567T、TGFBR2のC1167T、IL10のT−819C、CCL5のG−403Aのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型を検出することが好ましい。
更に、本発明者は、アテローム血栓性脳梗塞に関与する遺伝子多型が、性差、高血圧の有無、高コレステロール血症の有無、糖尿病の有無、肥満の有無、喫煙の有無によって異なるのではないかとの仮説を立てた。それぞれの因子について、遺伝子多型と脳血管障害との関係を評価した結果、次の発明を完成するに至った。
こうして、第5の発明に係るアテローム血栓性脳梗塞のリスク検出法は、男性と女性とに分類し、女性においてはEDN1の5665G→T、LIPGの584C→T、CCL11のG→A(Ala23Thr)、UTS2のG→A(Ser89Asn)、AKAP10のA→G(Ile646Val)、KCNJ11のA→G(Glu23Lys)、IL6の−572G→Cのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、高血圧の有無、糖尿病の有無とを評価因子とし、男性においてはMTHFRの677C→T、ITGB2の1323C→T、APOEの3932T→C、TNFSF4のA→G、APOA1の84T→C、EDNRAの−231A→G、F12の46C→T、KCNJ11のA→G(Glu23Lys)、IPF1の−108/3G→4G、THBS2のT→G(3’UTR)、APOEの−219G→T、ACDCの−11377C→Gのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、糖尿病の有無、高血圧の有無、BMIとを評価因子とし、各評価因子のオッズ比を乗じた発症リスクを計算し、この発症リスクを平均と分散またはパーセント区分に応じて3つ以上の複数の群を作成し、各群に応じて発症のリスクを検出することを特徴とする。
また、他の発明に係るアテローム血栓性脳梗塞のリスク検出法は、高血圧の有無に分類し、血圧正常者においてはMTHFRの677C→T、AGTR1の1166A→C、SAHのA→G(in intron12)のうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、性別、糖尿病の有無とを評価因子とし、高血圧者においてはIL6の−572G→C、TNFSF4のA→G、SLC26A8のA→G(Ile639Val)、GP6の13254T→C、HNF4AのA→G、IPF1の−108/3G→4G、PCSK9の23968A→G、THBS2のT→G(3’UTR)のうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、糖尿病の有無、性別とを評価因子とし、各評価因子のオッズ比を乗じた発症リスクを計算し、この発症リスクを平均と分散またはパーセント区分に応じて3つ以上の複数の群を作成し、各群に応じて発症のリスクを検出することを特徴とする。
また、他の発明に係るアテローム血栓性脳梗塞のリスク検出法は、高コレステロール血症の有無に分類し、血清コレステロール正常者においてはAGTの−6G→A、PCSK9の23968A→G、ITGB2の1323C→T、MTHFRの677C→T、F7の11496G→Aのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、高血圧の有無、性別、糖尿病の有無とを評価因子とし、高コレステロール血症者においてはCOMTのG→A(Val158Met)、ADRB2の46A→G、HNF4AのA→G、IL6の−572G→C、IPF1の−108/3G→4G、PCK1の−232C→G、PTGISの1117C→A、CCL5の−28C→G、AGTR2の1675G→Aのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、高血圧の有無、糖尿病の有無、性別とを評価因子とし、各評価因子のオッズ比を乗じた発症リスクを計算し、この発症リスクを平均と分散またはパーセント区分に応じて3つ以上の複数の群を作成し、各群に応じて発症のリスクを検出することを特徴とする。
また、他の発明に係るアテローム血栓性脳梗塞のリスク検出法は、糖尿病の有無に分類し、血糖正常者においてはMMP12の−82G→A、IL6の−572C→G、COL3A1のG→A(Ala698Th)、ABCA1の2583A→G、SAHのA→G(in intron12)のうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、高血圧の有無、性別とを評価因子とし、糖尿病者においてはAPOEの3932T→C、COMTのG→A(Val158Met)、GP6の13254T→C、TNFSF4のA→G、GCKの−30G→A、FABP2の2445G→A、MTHFRの677C→T、GYS1のA→G(Met416Val)のうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、高血圧の有無、性別、高コレステロール血症の有無とを評価因子とし、各評価因子のオッズ比を乗じた発症リスクを計算し、この発症リスクを平均と分散またはパーセント区分に応じて3つ以上の複数の群を作成し、各群に応じて発症のリスクを検出することを特徴とする。
また、他の発明に係るアテローム血栓性脳梗塞のリスク検出法は、肥満の有無に分類し、BMI正常者においてはIL6の−572G→C、LIPGの584C→T、MTHFRの677C→T、GCKの−30G→A、TNFSF4のA→G、AGTの−6G→Aのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、高血圧の有無、性別、糖尿病の有無とを評価因子とし、肥満者においてはUCP3の−55C→T、IL10の−592A→C、IPF1の−108/3G→4G、LIPGの584C→T、APOA1の84T→C、EDN1の5665G→Tのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、高血圧の有無、糖尿病の有無とを評価因子とし、各評価因子のオッズ比を乗じた発症リスクを計算し、この発症リスクを平均と分散またはパーセント区分に応じて3つ以上の複数の群を作成し、各群に応じて発症のリスクを検出することを特徴とする。
また、他の発明に係るアテローム血栓性脳梗塞のリスク検出法は、喫煙の有無に分類し、非喫煙者においてはIL6の−572G→C、MTHFRの677C→T、TNFSF4のA→G、ITGB2の1323C→T、LIPGの584C→T、UCP3の−55C→T、MMP12の−82A→G、UTS2のG→A(Ser89Asn)、THBS2のT→G(3’UTR)のうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、高血圧の有無、性別、糖尿病の有無とを評価因子とし、喫煙者においてはF12の46C→T、COMTのG→A(Val158Met)、CXCL16のC→T(Ala181Val)、CPB2のT→C(Ile347Thr)のうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、高血圧の有無、糖尿病の有無とを評価因子とし、各評価因子のオッズ比を乗じた発症リスクを計算し、この発症リスクを平均と分散またはパーセント区分に応じて3つ以上の複数の群を作成し、各群に応じて発症のリスクを検出することを特徴とする。
また、第4の発明においては、脳血管障害がアテローム血栓性脳梗塞である場合には、IL6のG−572C、MTHFRのC677T、IPF1の3G−108/4G、TNFSF4のA/G、ITGB2のC1323T、THBS2のT3949G、MMP12のA−82G、ANXA5のC−1T、EDN1の5665G→T、LIPGの584C→T、CCL11のG→A(Ala23Thr)、UTS2のG→A(Ser89Asn)、AKAP10のA→G(Ile646Val)、KCNJ11のA→G(Glu23Lys)、APOEの3932T→C、APOA1の84T→C、EDNRAの−231A→G、F12の46C→T、THBS2のT→G(3’UTR)、APOEの−219G→T、ACDCの−11377C→G、AGTR1の1166A→C、SAHのA→G(in intron12)、SLC26A8のA→G(Ile639Val)、GP6の13254T→C、HNF4AのA→G、PCSK9の23968A→G、AGTの−6G→A、F7の11496G→A、COMTのG→A(Val158Met)、ADRB2の46A→G、PCK1の−232C→G、PTGISの1117C→A、CCL5の−28C→G、AGTR2の1675G→A、COL3A1のG→A(Ala698Th)、ABCA1の2583A→G、GCKの−30G→A、FABP2の2445G→A、GYS1のA→G(Met416Val)、UCP3の−55C→T、IL10の−592A→C、CXCL16のC→T(Ala181Val)、CPB2のT→C(Ile347Thr)のうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型を検出することが好ましい。
本発明によれば、虚血性および出血性の脳血管障害について、発症リスクおよび遺伝的リスクを判断するための検出法等が提供される。この発明を用いることにより、脳血管障害に対する予防が可能となり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
<試験方法>
1.層別化を行わないときの研究対象
研究対象は、3151名(男性1484名、女性1667名)の日本人であった。彼らは、研究参加施設(岐阜県立岐阜病院、岐阜県立多治見病院、岐阜県立下呂温泉病院、弘前大学病院、黎明郷リハビリテーション病院、および横浜総合病院)に2002年10月から2005年3月までに来院した者であった。1141名の脳血管障害患者の内訳は、636名のアテローム血栓性脳梗塞患者(男性372名、女性264名)、282名の脳出血患者(男性179名、女性103名)、および223名のクモ膜下出血患者(男性89名、女性134名)であった。
虚血性又は出血性脳血管障害の診断は、新しくかつ突発的な神経学的な病態の発生と24時間以上継続する神経学的な症状とに基づいた。更に、頭部のCTスキャン或いはMRI(場合により、両方の検査を用いた)によって、診断を確認した。脳血管障害の型は、脳血管障害IIIの分類(非特許文献5)に従って決定した。心原性脳塞栓、ラクナー梗塞、一過性脳虚血発作、脳血管奇形、脳腫瘍、および外傷性脳血管障害の患者については、今回の研究対象から除外した。また、心臓弁膜症の有無にかかわらず心房細動の患者も研究対象から除外した。
2010名のコントロール(男性844名、女性1166名)は、毎年の健康診査のために参加病院を訪問した者であった。彼らは虚血性または出血性の脳血管障害、または他の脳疾患、虚血性心疾患、末梢動脈閉塞性疾患、その他のアテローム性動脈硬化症疾患、または血栓、塞栓性、出血性障害の病歴を持っていなかった。研究プロトコールはヘルシンキ宣言に従い、三重大学医学部、弘前大学医学部、岐阜県国際バイオ研究所、および参加病院の倫理委員会によって承認された。各参加者に対しては書面によるインフォームドコンセントを得た。データ解析は、三重大学生命科学研究支援センターヒト機能ゲノミクス部門で行った。
2.層別解析を行ったときの研究対象
本発明者らは、アテローム血栓性脳梗塞について、性差、高血圧の有無、高コレステロール血症の有無、糖尿病の有無、肥満の有無、喫煙の有無に関する層別解析を行った。その際の研究対象としては、上記636名のアテローム血栓性脳梗塞患者(男性372人、女性264名)と、2069名のコントロール(男性872名、女性1197名)であった。なお、コントロールは、上記2010名に、59名(男性28名、女性31名)の追加者が含まれている。
アテローム血栓性脳梗塞患者およびコントロール者には、アテローム性動脈硬化に関する従来の危険因子を有している者と有していない者とが含まれていた。従来の危険因子としては、高血圧(収縮期血圧が140mmHg以上か、拡張期血圧が90mmHg以上、若しくは両条件を満たす者)、高コレステロール血症(血清総コレステロール値が5.72mmol/L以上)、糖尿病(空腹時血糖値が6.93mmol/L以上か、ヘモグロビンAlcが6.5%以上、若しくは両条件を満たす者)、肥満(BMI≧25kg/m以上)、または喫煙(10本以上/日)が含まれる。
なお、それ以外の診断方法等については、上記と同じ基準とした。
多型の選択
公開データベースの使用および本発明者の鋭意検討により、血管に関する生物学(高血圧、アテローム性動脈硬化症、動脈攣縮、または動脈瘤の観点から)、血小板機能、白血球と単核マクロファージに関する生物学、凝固と線維素溶解のカスケード、神経学的因子(循環器、血圧、または内分泌機能の制御の観点から)、脂質、グルコース、およびホモシステイン代謝、他の代謝因子に関する包括的な概要に基づき、虚血性または出血性の脳血管障害に関連する可能性のある152個の候補遺伝子を選択した。本発明者は、これら152個の遺伝子について、202個の多型を選択した。これらの多型の多くは、プロモーター領域、エクソン、イントロンのスプライシングの供与部位或いは受容部位に多く位置しており、多型の結果として、コードされたタンパク質の機能または発現に変化を与えることがあり得ると考えられた。これら202個の多型は、下記表1〜表6に示した。なお、表1〜表6においては、左欄から順に、座位(Locus)、遺伝子名(Gene)、簡易記載(Symbol)、多型(Polymorphism)、多型データベース登録番号(dbSNP)を示している。なお、多型データベース登録番号が無い場合には、NCBI遺伝子バンクに登録されている番号を示した。
遺伝子多型の検出方法
7mLの静脈血を50mmol/L EDTA(ジナトリウム塩)を含むチューブに採取し、ゲノムDNAをキット(ゲノミックス社製)によって分離した。202個の多型の遺伝子型は、PCRと配列特異的オリゴヌクレオチドプローブをサスペンジョン・アレイ・テクノロジー(SAT:Luminex 100)と組み合わせて使用する方法(PCR−SSOP−Luminex)によって決定した(G&Gサイエンス株式会社)。プライマー、プローブ、その他の条件は、下表7および表8に示した。表8の列は、表7の列と同じ(すなわち、左から遺伝子表記(Gene Symbol)、多型(Polymorphism)、センスプライマー(Sense primer)、アンチセンスプライマー(Antisense primer)、プローブ1(Probe 1)、プローブ2(Probe 2)、アニーリング温度(Annealing)、およびサイクル数(Cycles))である。また、詳細な方法については、既報のもの(非特許文献6)を基本として、適宜に増幅条件を変えて行った。なお、脳血管障害との関連が認められなかった多型を検出するための条件については記載を省略した。
PCR−SSOP−Luminex法
方法の詳細については、非特許文献6に記載の通りである。以下には、この方法の概要について説明する。
図1には、Luminex100で検出するマイクロビーズの微細構造と特徴を示した。マイクロビーズ(図中の符号(A))は、直径が約5.5μm程度であり、ポリスチレン製である。ビーズ表面には、特異的な塩基配列を認識する一本鎖のオリゴプローブが結合されている。各ビーズには、各々一種類のプローブが結合されている。このマイクロビーズには、赤色色素と赤外色素が割合を変化させて塗布されており、図中の符号(B)に示すように、Luminex100を用いた測定の段階において、混合した状態で最大100種類のビーズの同定が行えるようになっている。測定においては、複数種類のプローブを結合させたマイクロビーズ(但し、各マイクロビーズには一種類のプローブのみ)を1反応あたり1種類のビーズが300から500個となるようにしたビーズミックスを調製した(図中の符号(C))。
図2には、PCR−SSOP−Luminex法の手順の概要を示した。
<増幅反応(Amplification)>
目的とするDNAを増幅するPCR反応には、5’末端をビオチンでラベルした一本鎖のオリゴプライマーを用いた。1.5mM塩化マグネシウムを含む1xPCR溶液(50mM KCl、10mM Tris−HCl、pH8.3)、2% DMSO、0.2mM dNTPs、及び0.1μM〜10μMプライマーセットを混合し、Taq DNAポリメラーゼ(50U/mL)と50ng〜100ngのゲノムDNAを加えて25μLとした。PCR反応は、95℃で10分の後、94℃で20秒間の変性、60℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で30秒間の伸長を1サイクルとし、これを50サイクル繰り返した。機器としてGeneAmp9700サーマルサイクラー(アプライドバイオシステムズ社製)を用いた。
<ハイブリダイゼーション(Hybridization)>
増幅したDNAを変性した後、ビーズミックスとハイブリダイゼーションさせた。96ウエルプレートの各ウエルに、5μLの増幅反応後のPCR増幅液、5μLのビーズミックス、及び40μLのハイブリダイズ用緩衝液(3.75M TMAC、62.5mM TB(pH8.0)、0.5mM EDTA、0.125% N−ラウロイルザルコシン)を添加し、全量50μLとした。この混合液を添加した96ウエルプレートについて、95℃で2分間の変性の後、52℃で30分間のハイブリダイゼーションを行った(GeneAmp9700サーマルサイクラーを用いた。)。
図2中には、増幅したDNAを認識するプローブを有するビーズ(1)のみが、DNAと結合する様子が示されている。
<ストレプトアビジン−フィコエリスリン反応(SA−PE Reaction)>
次に、上記の増幅産物と反応させたビーズをSA−PEと反応させた。ハイブリダイゼーション反応の後、各ウエルに75μLのPBS−Tween(1xPBS(pH7.5)、0.01% Tween−20)を添加し、1000xgで5分間の遠心を行い、上清を取りさった。更に100μLのPBS−Tweenを各ウエルに添加し、1000xgで5分間の遠心を行い、上清を取り去ることで、マイクロビーズを洗浄した。各ウエルに残ったマイクロビーズに、1000倍に希釈した70μLのSA−PE溶液を添加し混合した後、52℃で15分間の反応を行った(GeneAmp9700サーマルサイクラーを用いた。)。
図2中には、ビーズ(1)のプローブにのみビオチン化DNAが結合しているので、そのビオチンにSA−PEが結合する様子が示されている。
<測定(Measurement)>
次に、反応後のサンプルはLuminex100を用いて、ビーズ種類の同定と、そのビーズにPEが結合しているか否かを判定した。測定は2種類のレーザを使用して行われ、ビーズの種類は635nmレーザにより同定し、PE蛍光は532nmレーザを用いて定量した。オリゴビーズに結合したDNAは1測定あたり各々のビーズを最低50個ずつ測定し、定量されたPEの蛍光強度の中央値(MFI)を使用した。
図2中には、各ビーズ(1)〜(3)が同定され、かつビーズ(1)にのみPEが測定されたことから、ビーズ(1)に結合させたプローブが認識するDNAが増幅された様子が示されている。
統計解析
臨床データは、アテローム血栓性脳梗塞(atherothrombotic infarction)、脳出血(intracerebral hemorrhage)、またはクモ膜下出血(subarachnoid hemorrhage)の患者群とコントロール群との間で、対応のないスチューデントt検定により比較した。質的データは、カイ二乗検定によって比較した。対立遺伝子頻度は遺伝子カウント法によって概算し、ハーディ・ワインベルク平衡にあてはまるかどうかを判断するためにカイ二乗検定を使った。各常染色体における遺伝子型分布は、アテローム血栓性脳梗塞・脳出血・またはクモ膜下出血患者と、コントロールとの間でカイ二乗検定(3x2)によって比較した。X染色体上にある遺伝子多型については、対立遺伝子頻度をカイ二乗検定(2x2)によって比較した。
アテローム血栓性脳梗塞、脳出血またはクモ膜下出血と関連(P<0.07)する多型は、交絡因子(但し、層別化に用いた因子は除く)を含む多項ロジスティック回帰分析法により解析した。このとき、交絡因子については、年齢(age)、性差(gender:女性=0、男性=1)、肥満指数(body mass indes:BMI)、喫煙状態(smoking:非喫煙者=0、喫煙者=1)、代謝変数(高血圧(hypertension)・糖尿病(diabetes mellitus)・または高コレステロール血症(hypercholesterolemia)の病歴なし=0、それらの病歴あり=1)および各遺伝子型を独立変数とし、それぞれの疾患を従属変数とした。各遺伝子型は、優性、劣性、および2つの付加(付加1および2)遺伝モデルに従って評価し、P値、オッズ比、および95%信頼区間を計算した。
各遺伝モデルは2つの群から成る:優性モデルは「変異型のホモ接合体とヘテロ接合体の結合群」対「野生型のホモ接合体」;劣性モデルは「変異型のホモ接合体」対「野生型のホモ接合体とヘテロ接合体の結合群」;付加1モデルは「ヘテロ接合体」対「野生型のホモ接合体」;および、付加2モデルは「変異型のホモ接合体」対「野生型のホモ接合体」である。また、アテローム血栓性脳梗塞、脳出血、およびクモ膜下出血に対する遺伝子型または交絡因子の効果を確認するために、ステップワイズ変数増加法により解析を行った。
アテローム血栓性脳梗塞、脳出血、またはクモ膜下出血と、遺伝子型の多重比較の結果を得る際に、統計的有意性の厳密な基準(層別解析を行わない場合はP<0.001、層別解析を行った場合はP<0.005)を採用した。
その他の臨床的バックグラウンドデータについては、危険率5%未満(P<0.05)は統計的に有意であると見なした。統計的有意性は、両側検定によって試験した。統計解析は、JMPソフトウェア・バージョン5.1(SASインスティテュート社製)によって実行した。
I.層別解析を行わない場合の解析結果
<試験結果>
3151人の研究対象に関する基礎的データを下表10に示した。左欄より順に、特徴(Characteristics)、アテローム血栓性脳梗塞患者(Atherothrombotic infarction)、脳出血患者(Intracerebral hemorrhage)、クモ膜下出血患者(Subarachnoid hemorrhage)、およびコントロール者(Controls)を示している。また、特徴欄は、上より順に、者数(No. of subjects)、年齢(Age)、性別(女性/男性)(Gender(female/male))、肥満指数(Body mass index)、現在または過去の喫煙率(Current or former smoker)、高血圧(Hypertension)、糖尿病(Diabetes mellitus)、および高コレステロール血症(Hypercholesterolemia)を示している。
年齢と肥満指数については、平均±SDで示した。喫煙率については、一日あたり10本以上を吸った場合を喫煙とした。高血圧については、最大血圧が140mmHg以上か、最低血圧が90mmHg以上の者、或いは高血圧治療剤を服用している者とした。糖尿病については、空腹時血糖値が126mg/dL以上、またはヘモグロビンA1cが6.5%以上の者、或いは糖尿病治療剤を服用している者とした。高コレステロール血症については、血清総コレステロールが220mg/dL以上、または脂質降下薬を服用している者とした。また、表中、(a)はP<0.001、(b)はP<0.005、(c)はP<0.05、(d)はP<0.01を意味している。
アテローム血栓性脳梗塞患者においては、年齢、男性の割合、および高血圧・糖尿病・高コレステロール血症の罹患率が、コントロールに比べて高かった。脳出血患者においては、年齢、BMI、および高コレステロール血症の罹患率は、コントロールに比べて低く、男性の割合、および喫煙頻度・高血圧の罹患率は、コントロールよりも高かった。クモ膜下出血患者においては、年齢、BMI、および高コレステロール血症の罹患率は、コントロールに比べて低く、喫煙頻度は、コントロールより高かった。
次に、アテローム血栓性脳梗塞、脳出血、およびクモ膜下出血のリスク診断に必要な因子を抽出するため、遺伝子多型および年齢・性別・肥満・喫煙・高血圧・糖尿病・高コレステロール血症について、ステップワイズ変数増加法による解析を行った(詳細については、後述する)。その結果、次に説明するように、脳血管障害に関するリスク診断を行えることが分かった。
<アテローム血栓性脳梗塞のリスク診断システム>
表11には、アテローム血栓性脳梗塞のリスク診断システムに関する詳細を示した。表には、左欄より順に、因子(Variable)、P値(P value)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))を示した。また、最下段には、従来の危険因子と、遺伝因子のオッズ比を乗じた総合リスク(Total risk)を示した。
多項ロジスティック回帰分析の結果、従来の危険因子としては、性別(男性の方が高リスク)、高血圧、糖尿病が、アテローム血栓性脳梗塞の発症に関連していた。また、今回の研究により、遺伝因子としては、IL6、MTHFR、IP1,TNFSF4、ITGB2、THBS2,MMP12、ANXA5の各遺伝子多型がアテローム血栓性脳梗塞の発症に関連していた。従来の危険因子では、最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が9.26であった。一方、遺伝因子では、最小オッズ比が0.09で最大オッズ比が15.08であった。したがって、従来の危険因子と今回判明した遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.09で最大オッズ比が139.66であり、1552倍の差が認められた。
次に、本実施形態の臨床的な意義について説明する。病院、クリニック、健診センターにおいて、希望者に対して従来の危険因子と今回判明した遺伝因子に関する検査を行い、アテローム血栓性脳梗塞の発症リスクを検出する。例えば、従来の危険因子と遺伝因子全体のオッズ比の積の分布からリスクの程度を3つ以上の複数の群(段階)、例えば5段階に分ける。即ち、従来の危険因子および遺伝子多型の各オッズ比の積をリスク値として、コントロール群における分布を算出する。コントロール群のリスク値が平均±1SDの範囲を平均的リスクの群とし、平均+1SD〜平均+2SDをリスクがやや高い群、平均+2SDより大きいものをリスクが高い群とする。また、平均−1SD〜平均−2SDをリスクがやや低い群、平均−2SDより小さいものをリスクが低い群とする。実際に本研究において、リスク値の片対数をとった場合の分布は、リスクが高い群では疾患群が2.4%でコントロール群が0.2%、リスクがやや高い群では疾患群が42.9%でコントロール群が18.7%、平均的リスクの群では疾患群が52.4%でコントロール群が63.6%、リスクがやや低い群では疾患群が2.4%でコントロール群が15.9%、リスクが低い群では疾患群が0%でコントロール群が1.6%であった。他の方法として、コントロール群のリスク値の大きい順に全体を5%、20%、50%、20%、5%に区分し、リスク値の最も大きい5%の群をリスクが高い群、次の20%の群をリスクがやや高い群、次の50%の群を平均的リスクの群、次の20%の群をリスクがやや低い群、リスク値が最も小さい5%の群をリスクが低い群とする。実際に本研究における疾患群の分布は、リスクが高い群は21.1%(コントロール群は5.0%)、リスクがやや高い群は33.3%(コントロール群は20.1%)、平均的リスクの群は42.5%(コントロール群は50.2%)、リスクがやや低い群は2.8%(コントロール群は19.9%)、リスクが低い群は0.3%(コントロール群は4.9%)であった。本実施形態では有意な関連が認められなかったが、一般的に喫煙・肥満・高脂血症もアテローム血栓性脳梗塞の危険因子と考えられているので、これらの因子を加味することもできる。
結果については、本実施形態の検出法により得られたデータを基に、医師などの有資格者の判断を含め、カウンセリングを行い、とりわけリスクが高い群またはやや高い群に属する場合には、生活習慣の改善(禁煙・食事療法・運動療法・肥満の軽減・ストレス解消・睡眠不足解消など)や、危険因子の早期治療(高血圧・糖尿病・高脂血症の治療など)を行うことによりアテローム血栓性脳梗塞の一次・二次予防を積極的に推進することができる。今回判明した遺伝因子は変更できないが、従来の危険因子は軽減・治療が可能であるため、これらの因子を治療した場合に発症リスクがどの程度減少するかについても本実施形態に基づいて検出することができる。この検出データを基に、有資格者の判断を含めクライアントに説明する。特にアテローム血栓性脳梗塞や心筋梗塞の家族歴のある人への適用が有効である。本実施形態により、アテローム血栓性脳梗塞のオーダーメイド予防が可能になり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
<脳出血のリスク判断システム>
表12には、脳出血のリスク診断システムに関する詳細を示した。表には、左欄より順に、因子(Variable)、P値(P value)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))を示した。また、最下段には、従来の危険因子と、遺伝因子のオッズ比を乗じた総合リスク(Total risk)を示した。
多項ロジスティック回帰分析の結果、従来の危険因子としては性別(男性の方が高リスク)、高血圧、高コレステロール血症(高コレステロール血症の方が低リスク)が、脳出血の発症に関連していた。また、今回の研究により、遺伝因子としては、IL6、TNF、CD14、FBN1、PECAM1、UCP1、CPB2、LIPC、CCL5の各遺伝子多型が、脳出血の発症に関連していた。従来の危険因子では、最小オッズ比が0.46で最大オッズ比が4.77であった。一方、遺伝因子では、最小オッズ比が0.02で最大オッズ比が7.92であった。したがって、従来の危険因子と今回判明した遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.01で最大オッズ比が37.74であり、3774倍の差が認められた。
次に、本実施形態の臨床的な意義について説明する。病院、クリニック、健診センターにおいて、希望者に対して従来の危険因子と今回判明した遺伝因子に関する検査を行い、脳出血の発症リスクを検出する。例えば、従来の危険因子と遺伝因子全体のオッズ比の積の分布からリスクの程度を3つ以上の複数の群(段階)、例えば5段階に分ける。即ち、従来の危険因子および遺伝子多型の各オッズ比の積をリスク値として、コントロール群における分布を算出する。コントロール群のリスク値が平均±1SDの範囲を平均的リスクの群とし、平均+1SD〜平均+2SDをリスクがやや高い群、平均+2SDより大きいものをリスクが高い群とする。また、平均−1SD〜平均−2SDをリスクがやや低い群、平均−2SDより小さいものをリスクが低い群とする。実際に本研究において、リスク値の片対数をとった場合の分布は、リスクが高い群では疾患群が3.5%でコントロール群が0.5%、リスクがやや高い群では疾患群が44.0%でコントロール群が16.8%、平均的リスクの群では疾患群が52.1%でコントロール群が67.4%、リスクがやや低い群では疾患群が0.4%でコントロール群が12.0%、リスクが低い群では疾患群が0%でコントロール群が3.2%であった。他の方法として、コントロール群のリスク値の大きい順に全体を5%、20%、50%、20%、5%に区分し、リスク値の最も大きい5%の群をリスクが高い群、次の20%の群をリスクがやや高い群、次の50%の群を平均的リスクの群、次の20%の群をリスクがやや低い群、リスク値が最も小さい5%の群をリスクが低い群とする。実際に本研究における疾患群の分布は、リスクが高い群は15.6%(コントロール群は5.0%)、リスクがやや高い群は46.5%(コントロール群は20.0%)、平均的リスクの群は34.8%(コントロール群は50.0%)、リスクがやや低い群は3.2%(コントロール群は20.0%)、リスクが低い群は0%(コントロール群は5.0%)であった。本実施形態では有意な関連が認められなかったが、一般的に喫煙・肥満も脳出血の危険因子と考えられているので、これらの因子を加味することもできる。
結果については、本実施形態の検出法により得られたデータを基に、医師などの有資格者の判断を含め、カウンセリングを行い、とりわけリスクが高い群またはやや高い群に属する場合には生活習慣の改善(禁煙・食事療法・運動療法・肥満の軽減・ストレス解消・睡眠不足解消など)や、危険因子の早期治療(高血圧の治療など)を行うことにより脳出血の一次・二次予防を積極的に推進することができる。今回判明した遺伝因子の変更はできないが、従来の危険因子は軽減・治療可能であるため、これらの因子を治療した場合に発症リスクがどの程度減少するかについても本実施形態に基づいて検出することができる。この検出データを基に、有資格者の判断を含めクライアントに説明する。特に脳出血や高血圧の家族歴のある人への適用が有効である。本実施形態により、脳出血のオーダーメイド予防が可能になり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
<クモ膜下出血のリスク診断システム>
表13には、クモ膜下出血のリスク診断システムに関する詳細を示した。表には、左欄より順に、因子(Variable)、P値(P value)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))を示した。また、最下段には、従来の危険因子と、遺伝因子のオッズ比を乗じた総合リスク(Total risk)を示した。
多項ロジスティック回帰分析の結果、従来の危険因子としては高コレステロール血症(高コレステロール血症の方が低リスク)、喫煙、性別(男性の方が低リスク)、高血圧が、クモ膜下出血の発症に関連していた。また、今回の研究により、遺伝因子としては、PKD1−like、TNF、CAPN10、MTHFR、UCP3、OLR1、PAX4、TGFBR2、IL10、CCL5の各遺伝子多型が、クモ膜下出血の発症に関連していた。従来の危険因子では、最小オッズ比が0.35で最大オッズ比が2.66であった。一方、遺伝因子では、最小オッズ比が0.03で最大オッズ比が46.34であった。したがって、従来の危険因子と今回判明した遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.01で最大オッズ比が123.36であり、12336倍の差が認められた。
次に、本実施形態の臨床的な意義について説明する。病院、クリニック、健診センターにおいて、希望者に対して従来の危険因子と今回判明した遺伝因子に関する検査を行い、クモ膜下出血の発症リスクを検出する。例えば、従来の危険因子と遺伝因子全体のオッズ比の積の分布からリスクの程度を3つ以上の複数の群(段階)、例えば5段階に分ける。即ち、従来の危険因子および遺伝子多型の各オッズ比の積をリスク値として、コントロール群における分布を算出する。コントロール群のリスク値が平均±1SDの範囲を平均的リスクの群とし、平均+1SD〜平均+2SDをリスクがやや高い群、平均+2SDより大きいものをリスクが高い群とする。また、平均−1SD〜平均−2SDをリスクがやや低い群、平均−2SDより小さいものをリスクが低い群とする。実際に本研究において、リスク値の片対数をとった場合の分布は、リスクが高い群では疾患群が12.6%でコントロール群が1.2%、リスクがやや高い群では疾患群が36.8%でコントロール群が13.9%、平均的リスクの群では疾患群が47.1%でコントロール群が69.7%、リスクがやや低い群では疾患群が3.6%でコントロール群が11.5%、リスクが低い群では疾患群が0%でコントロール群が3.7%であった。他の方法として、コントロール群のリスク値の大きい順に全体を5%、20%、50%、20%、5%に区分し、リスク値の最も大きい5%の群をリスクが高い群、次の20%の群をリスクがやや高い群、次の50%の群を平均的リスクの群、次の20%の群をリスクがやや低い群、リスク値が最も小さい5%の群をリスクが低い群とする。実際に本研究における疾患群の分布は、リスクが高い群は34.1%(コントロール群は5.0%)、リスクがやや高い群は25.6%(コントロール群は20.0%)、平均的リスクの群は33.2%(コントロール群は50.0%)、リスクがやや低い群は7.2%(コントロール群は20.0%)、リスクが低い群は0%(コントロール群は5.0%)であった。本実施形態では有意な関連が認められなかったが、一般的に肥満もクモ膜下出血の危険因子と考えられているので、これを加味することもできる。
結果については、本実施形態の検出法により得られたデータを基に、医師などの有資格者の判断を含め、カウンセリングを行い、とりわけリスクが高い群またはやや高い群に属する場合には生活習慣の改善(禁煙・食事療法・運動療法・肥満の軽減・ストレス解消・睡眠不足解消など)や、危険因子の早期治療(高血圧の治療など)を行うことによりクモ膜下出血の一次・二次予防を積極的に推進する。今回判明した遺伝因子の変更はできないが、従来の危険因子は軽減・治療可能であるため、これらの因子を治療した場合に発症リスクがどの程度減少するかについても本実施形態に基づいて検出することができる。この検出データを基に、有資格者の判断を含めクライアントに説明する。特にクモ膜下出血や高血圧の家族歴のある人への適用が有効である。本システムによりクモ膜下出血のオーダーメイド予防が可能になり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
<統計解析>
次に、上記リスク診断システムを開発するに至った統計解析の結果について説明する。
カイ二乗検定による遺伝子多型の評価は、アテローム血栓性脳梗塞について14個、脳出血について16個、およびクモ膜下出血について16個のものが、疾病との間の関連を示した(P<0.07)。詳細を表14および表15に示した。両表においては、左欄より順に、遺伝子表記(Gene symbol)、多型(Polymorphism)、および危険率(P)を示している。
IL6(G−572C)については、アテローム血栓性脳梗塞患者では野生型ホモ接合対が3.9%、ヘテロ接合体が31.3%、変異型ホモ接合対が64.8%、脳出血患者では野生型ホモ接合対が5.0%、ヘテロ接合体が28.0%、変異型ホモ接合対が67.0%で、コントロール群では野生型ホモ接合対が5.6%、ヘテロ接合体が37.8%、変異型ホモ接合対が56.6%であった。UCP3(C−55T)については、クモ膜下出血患者では野生型ホモ接合対が37.2%、ヘテロ接合体が58.3%、変異型ホモ接合対が4.5%で、コントロール群では野生型ホモ接合対が49.3%、ヘテロ接合体が43.3%、変異型ホモ接合対が7.5%であった。TNF(C−863A)については、クモ膜下出血患者では野生型ホモ接合対が58.7%、ヘテロ接合体が35.9%、変異型ホモ接合対が5.4%で、コントロール群では野生型ホモ接合対が69.9%、ヘテロ接合体が27.7%、変異型ホモ接合対が2.4%であった。PKD1−like(G/A,Gly243Asp)については、クモ膜下出血患者では野生型ホモ接合対が96.4%、ヘテロ接合体が3.6%、変異型ホモ接合対が0%で、コントロール群では野生型ホモ接合対が99.2%、ヘテロ接合体が0.8%、変異型ホモ接合対が0%であった。
これらの多型については、各疾患との関係について更に詳細に分析した。年齢、性別、BMI、および喫煙・高血圧・糖尿病・高コレステロール血症の罹患率を補正した多項ロジスティック回帰分析法を行ったところ、次の多型について、各疾患との関連が強く示唆された。劣性モデルにおいて、インターロイキン6遺伝子(IL6)のG−572C多型が、アテローム血栓性脳梗塞および脳出血の罹患率について、有意に(P<0.001)関連した。また、クモ膜下出血の罹患率について、付加1モデルにおいてアンカップリングプロテイン3(UCP3)のC−55T多型が、優性モデル・劣性モデル・付加2モデルにおいて腫瘍壊死因子遺伝子(TNF)のC−863A多型が、優性モデル・付加1モデルにおいて多嚢胞腎1様遺伝子(PKD1−like)のG/A(Gly243Asp)多型が、それぞれ有意に関連した。それらの詳細を下表16および表17に示した。両表においては、左欄より順に、遺伝子表記(Gene symbol)、多型(Polymorphism)、優性モデル(Dominant)における危険率(P)・オッズ比(OR)・95%信頼区間(95% CI)、劣性モデル(Recessive)における危険率(P)・オッズ比(OR)・95%信頼区間(95% CI)、付加1モデル(Additive 1)における危険率(P)・オッズ比(OR)・95%信頼区間(95% CI)、付加2モデル(Additive 2)における危険率(P)・オッズ比(OR)・95%信頼区間(95% CI)をそれぞれ示している。多項ロジスティック回帰分析法は、年齢、性差、肥満指数、および喫煙・高血圧・糖尿病・高コレステロール血症の有無について補正して行った。また、表中、危険率が0.001未満(P<0.001)のデータについては、太字で示した。
更に各疾患に対する、遺伝子型、年齢、性別、BMI、および喫煙・高血圧・糖尿病・高コレステロール血症の影響について、ステップワイズ変数増加法により解析した結果を下表18に示した。表には、左欄より順に、因子(Variable)、P値(P value)、寄与率(R2)を示している。
アテローム血栓性脳梗塞の罹患率に対し、統計的有意性が高い順に、高血圧、糖尿病、年齢、性別、およびIL6遺伝子型(劣性モデル)が有意であり(P<0.001)、各要因が独立して影響することが分かった。同様に、脳出血の罹患率に対し、性別、高血圧、およびIL6遺伝子型(劣性モデル)が有意であり、各要因が独立して影響することが分かった。一方、クモ膜下出血の罹患率については、年齢とTNF遺伝子型(優性モデル)が有意であり、独立して影響していた。PKD1−like遺伝子多型(優性モデル)は、クモ膜下出血の罹患率に対して、ほぼ有意に影響していた。
表18において、ステップワイズ変数増加法による解析で、危険率が5%未満(P<0.05)であった遺伝子多型群および年齢・性別・喫煙・肥満・高血圧・糖尿病・高脂血症を独立因子(交絡因子)とし、アテローム血栓性脳梗塞、脳出血またはクモ膜下出血を従属因子として多項ロジスティック回帰分析を行い、P値、オッズ比、95%信頼区間を各疾患について算出した。したがって、これらの因子は独立したものであり、オッズ比の積(かけ算)により総合的な疾患発症リスクを予測することができる。
これらの結果をまとめることにより、前述のアテローム血栓性脳梗塞、脳出血、およびクモ膜下出血のリスク判断システムを開発することができた。
<考察>
本発明者は、アテローム血栓性脳梗塞、脳出血、およびクモ膜下出血への関与が推定された152個の候補遺伝子中、202個の多型について、独立な関係を検出した。我々の大規模な研究によって、IL6のG−572C多型がアテローム血栓性脳梗塞と脳出血の両方について、有意に関連していること、及びTNFのC−863A多型がクモ膜下出血と有意に関連していることが分かった。
アテローム血栓性脳梗塞は、脳血管障害の最も一般的なタイプであり、ほとんどの患者は、アテローム性動脈硬化症によって引き起こされる。いくつかの遺伝因子が、アテローム血栓性脳梗塞に関与していることが知られている(非特許文献7)。今回の研究では、IL6のG−572C多型がアテローム血栓性脳梗塞の発症に有意に関与していること、及びこの条件については、−572C対立遺伝子がリスクファクターであることが分かった。インターロイキン6は、急性炎症反応の促進と、C反応性タンパク質などの急性期タンパク質の生産調節について重要な役割を果たしている。こうして、内皮細胞を活性化させ、フィブリノーゲンの合成を刺激することによって、IL−6は炎症反応に寄与している。このサイトカインは、血管の炎症に関わる病態の中でかなり重要である。
IL6のG−174C多型は、心筋梗塞と脳血管障害の発症に寄与すると考えられている頸動脈内膜中膜肥厚(非特許文献8、9、10)と、虚血性心疾患(非特許文献11)との両者に関与することが分かった。この多型は、脳梗塞の罹患歴(非特許文献12、13)と、若年患者における脳梗塞の重症度に関与することが分かっている(非特許文献14)。また、この条件においては、G対立遺伝子がリスク因子であることも知られている。しかしながら、本発明者の知見からすると、この多型は日本人には検出されていない。
脳虚血は、ニューロンと星状細胞の中で、IL−6の発現を引き起こす。血清中のIL−6濃度は、虚血発作の後で数日以内に増大する。このサイトカインの血清濃度が梗塞病変の大きさと相関していること、および脳脊髄液中の濃度が血清中の濃度よりも高いことから考えると、IL−6は、虚血脳から発現しているようである。IL6のプロモーター領域のハプロタイプは、虚血発作患者のIL−6血清濃度と炎症反応とに関連していることが知られている(非特許文献15)。これらの様々な知見によれば、IL6の遺伝子多型が脳梗塞の発生について重要な役割を果たしていること、および発明者が得た結果を支持していることが分かる。
脳出血は、高血圧などの環境的因子と、アポリポ蛋白Eの遺伝子多型(非特許文献16)などの遺伝的因子を危険因子として持つことが明らかにされている。本発明者は、IL6のG−572C多型が脳出血の罹患率と有意に関連していること、およびこの条件下で−572C対立遺伝子がリスクファクターであることを明らかにした。IL6のG−174C多型は、脳動静脈奇形で脳出血と関連することが見出されている(非特許文献17)。さらに、高濃度の血漿中IL−6は、脳出血における速い血腫増大の独立した予測因子であることが分かっている。
これらの知見より、IL−6が脳出血の発症と進展において重要な役割を果たしていることが示唆される。脳出血にIL6のG−572C多型が関与したことは、脳出血の病態に炎症が関与することを示している。サイトカインはマトリックスメタロプロテイナーゼの生産を誘導し、血管の周りで細胞外基質を減少させて、血管壁に損傷を与えるかも知れない。内皮細胞からIL−6が局所的に放出されると、マトリックスメタロプロテイナーゼの放出と活性化を刺激することによって、血管壁を不安定にするかも知れない。IL6のG−572C多型があると、血液動態のストレスによって既に損傷を受けた血管壁に対して、更にマトリックスメタロプロテイナーゼが影響を与え脳出血に至る可能性が考慮される。
クモ膜下出血の発症のほとんどの原因となっている頭蓋内動脈瘤は、遺伝性の要因を持っている(非特許文献18)。動脈瘤性のクモ膜下出血患者を持つ一等親血縁者については、そのような患者を持たない者に比べると、頭蓋内動脈瘤が破裂する危険性が約4倍高いことが知られている。本発明者は、TNFのC−863A多型が、クモ膜下出血の罹患率と有意に相関していること、およびこの条件において−863A対立遺伝子がリスクファクターであることを示した。TNFmRNAとタンパク質の量は、プロアポトーシスの下流ターゲットであるFADDタンパク質(Fas-associated death domain protein)と共に、人の頭蓋内動脈瘤の中で増加することが見出された(非特許文献19)。TNFとFADDタンパク質は、血管および免疫細胞に対して炎症とその後のアポトーシスを促進することによって、血管壁を脆弱化させ、脳動脈に有害な影響を及ぼすかもしれない(非特許文献19)。
TNFは、プロテアーゼカスパーゼ3を活性化することによって、培養された脳血管内皮細胞中でアポトーシスを引き起こす。さらに、クモ膜下出血患者の脳脊髄液中のTNF濃度は、良好な予後を示す患者に比べると、不良な予後を示す患者において高かった。さらに、TNFのC−863A多型のA対立遺伝子を持つ患者は、クモ膜下出血後の不良な予後を示すリスクファクターとなっている(非特許文献20)。これらの知見によれば、TNFが、頭蓋内動脈瘤の増悪とクモ膜下出血後の予後について重要な役割を持っていることと、本発明者が得たデータとは一致している。
本発明者は、またPKD1−like遺伝子のG/A(Gly243Asp)多型がクモ膜下出血の罹患率とほぼ有意に関連することを示した。頭蓋内動脈瘤に関するゲノムワイド連鎖解析法によって、1つの座1p34.3−p36.131に重要な連鎖(ロッドスコア4.2)があることが示されている(非特許文献21)。頭蓋内動脈瘤については、この領域中に、PKD1−like遺伝子を含むいくつかの候補遺伝子が位置している。頭蓋内動脈瘤との関連が疑われる領域中にPKD1−like遺伝子が位置していること、および本研究によってクモ膜下出血との関連が強い遺伝子としてPKD1様遺伝子が抽出されたことからすると、PKD1−like遺伝子はクモ膜下出血と関連する候補遺伝子であるものと言える。
本発明者が得た結果は、IL6がアテローム血栓性脳梗塞と脳出血の両方に影響を与えること、並びにTNFおよびPKD1−like遺伝子がクモ膜下出血に影響を与えることを示している。これらの多型の遺伝子型は、虚血性または出血性の脳血管障害の遺伝的リスクを評価するために有益である。
このように本実施形態によれば、アテローム血栓性脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血などの虚血性および出血性の脳血管障害について、遺伝的リスクおよび発症リスクを判断するための検出法を提供することができる。この実施形態を用いることにより、脳血管障害に対する予防が可能となり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
II.層別解析を行った場合の解析結果
次に、性別、高血圧の有無、高コレステロール血症の有無、糖尿病の有無、肥満の有無、および喫煙の有無の6個の因子のそれぞれについて層別に解析を行った結果について説明する。
1.性別で層別解析したときの結果
表19には、男性または女性に分けたときの、アテローム血栓性脳梗塞患者(ACI)とコントロール者の特徴をまとめた。
年齢とBMIについては、平均値±SDにて示した。女性の場合には、年齢、高血圧・高コレステロール血症・および糖尿病の罹患率は、アテローム血栓性脳梗塞患者の方がコントロール者よりも有意に高かった。男性の場合には、高血圧・高コレステロール血症・および糖尿病の罹患率は、アテローム血栓性脳梗塞患者の方がコントロール者よりも有意に高く、喫煙頻度および肥満は、コントロール者の方がアテローム血栓性脳梗塞患者よりも有意に高かった。
次に、アテローム血栓性脳梗塞のリスク診断に必要な因子を抽出するため、遺伝子多型および年齢・喫煙・BMI・高血圧・糖尿病・高コレステロール血症について、ステップワイズ変数増加法による解析を行った(詳細については後述する)。その結果、次に説明するように、アテローム血栓性脳梗塞に関するリスク診断を行えることが分かった。
<男性または女性におけるアテローム血栓性脳梗塞のリスク診断システム>
表20には、男性または女性におけるアテローム血栓性脳梗塞のリスク診断システムに関する詳細を示した。表には、左欄より順に、女性における因子(Variable)、P値(P)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))、男性における因子(Variable)、P値(P)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))を示した。また、最下段には、従来の危険因子と、遺伝因子のオッズ比を乗じた総合リスク(Total)を示した。
ステップワイズ変数増加法(表24)でP<0.05であった遺伝子多型および年齢・喫煙・BMI・高血圧・糖尿病・高コレステロール血症を独立因子(交絡因子)とし、アテローム血栓性脳梗塞を従属因子として多項ロジスティック回帰分析を男女別に行い、P値、オッズ比、95%信頼区間を算出した。したがってこれらの因子は独立したものであり、オッズ比の積(かけ算)により総合的な疾患発症リスクを予測することができる。
多項ロジスティック回帰分析の結果、女性においては、従来の危険因子としては高血圧、糖尿病が、遺伝因子としては、EDN1、LIPG、CCL11、UTS2、AKAP10、KCNJ11、IL6の各遺伝子多型がアテローム血栓性脳梗塞の発症に関連した。従来の危険因子では最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が6.74、遺伝因子では最小オッズ比が0.34で最大オッズ比が13.69であった。したがって、従来の危険因子と遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.34で最大オッズ比が92.27であり、271倍の差が認められた。また男性においては、従来の危険因子としては糖尿病、高血圧、BMIが、遺伝因子としては、MTHFR、ITGB2、APOE(2箇所の多型)、TNFSF4、APOA1、EDNRA、F12、KCNJ11、IPF1、THBS2、ACDCの各遺伝子多型がアテローム血栓性脳梗塞の発症に関連した。従来の危険因子では最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が17.25、遺伝因子では最小オッズ比が0.33で最大オッズ比が225.66であった。したがって、従来の危険因子と遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.33で最大オッズ比が3892.64であり、11,796倍の差が認められた。
次に、本研究成果の臨床的な意義について以下に述べる。病院、クリニック、健診センターにおいて希望者に対して従来の危険因子と遺伝因子に関する検査を行い、アテローム血栓性脳梗塞の発症リスクの予測を男女別に行う。従来の危険因子と遺伝因子全体のオッズ比の積の分布からリスクの程度を5段階に分ける。即ち、平均±1SDの範囲を平均的リスク群とし、平均+1SDから平均+2SDをやや高リスク群、平均+2SD以上を高リスク群とする。また、平均−1SDから平均−2SDをやや低リスク群、平均−2SD以下を低リスク群とする。他の方法として、コントロール群のリスク値の大きい順に全体を5%、20%、50%、20%、5%に区分し、リスク値の最も大きい5%の群をリスクが高い群、次の20%の群をリスクがやや高い群、次の50%の群を平均的リスクの群、次の20%の群をリスクがやや低い群、リスク値が最も小さい5%の群をリスクが低い群とする。
なお、本研究では有意な関連が認められなかったが、一般的に女性では喫煙・肥満・高コレステロール血症が、男性では喫煙・高コレステロール血症もアテローム血栓性脳梗塞の危険因子と考えられているので、これらの因子を含めることもできる。
結果については、医師等の有資格者の判断を含めてカウンセリングを行い、とりわけリスクが高い群またはやや高い群に属する場合には生活習慣の改善(禁煙・食事療法・運動療法・肥満の軽減・ストレス解消・睡眠不足解消など)や、危険因子の早期治療(高血圧・糖尿病・高脂血症の治療など)を行うことによりアテローム血栓性脳梗塞の一次・二次予防を積極的に推進する。遺伝因子は変更できないが、従来の危険因子は軽減・治療可能であるため、これらの因子を治療した場合に発症リスクがどの程度減少するかについても予測し、クライアントに説明する。特にアテローム血栓性脳梗塞や心筋梗塞の家族歴のある人への適用が有効である。本システムによりアテローム血栓性脳梗塞のオーダーメイド予防が可能になり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
<統計解析>
次に、上記リスク判断システムを開発するに至った統計解析の結果について説明する。
カイ二乗検定により、女性の場合には9個の遺伝子多型が、男性の場合には18個の遺伝子多型が、アテローム血栓性脳梗塞との関連を示した(P<0.06)。詳細を表21に示した。表中においては、左欄より順に、女性(Women)における遺伝子(Gene)、多型(Polymorphism)、および危険率(P)と、男性(Men)における遺伝子(Gene)、多型(Polymorphism)、および危険率(P)を示している。
これらの多型について、さらにアテローム血栓性脳梗塞との関連を探る解析を行った。年齢、BMI、喫煙・高血圧・高コレステロール血症・および糖尿病の有無を補正した多項ロジスティック回帰分析法を行ったところ、次の多型について、アテローム血栓性脳梗塞との関連が強く示唆された。女性の場合には、優性モデルおよび付加1モデルにおいてLIPGの584C→T多型が、優性モデルおよび付加1モデルにおいてCCL11のG→A多型が、優性モデルおよび付加1モデルにおいてEDN1の5665G→T多型が、劣性モデルにおいてIL6の−572G→C多型が、付加2モデルにおいてKCNJ11のA→G多型が、有意に(P<0.005)アテローム血栓性脳梗塞に関連した。詳細を表22に示した。
男性においても同様の解析を行った。その結果、男性の場合には、劣性モデルおよび付加2モデルにおいて677C→T多型が、優性モデルにおいてITGB2の1323C→C多型が、付加1モデルにおいてTHBS2のT→G多型が、優性モデルおよび付加1モデルにおいてAPOEの3932T→C多型が、劣性モデルにおいてEDNRAの−231A→G多型が、有意に(P<0.005)アテローム血栓性脳梗塞に関連した。詳細を表23に示した。
次に、アテローム血栓性脳梗塞に対する、遺伝子型、年齢、BMI、喫煙、高血圧、高コレステロール血症、および糖尿病の影響について、ステップワイズ変数増加法により解析した。結果を表24に示した。表中、左欄より順に、女性における因子(Variable)、P値(P)、寄与率(R2)、男性における因子(Variable)、P値(P)、寄与率(R2)をそれぞれ示している。
各遺伝子型は、多項ロジスティック回帰分析において統計的有意となった優性モデルまたは劣性モデルに基づいて解析した。女性の場合には、統計的有意性が高い順に、高血圧、年齢、LIPG遺伝子型(優性モデル)、EDN1遺伝子型(優性モデル)、CCL11遺伝子型(優性モデル)、および糖尿病が有意であり(P≦0.005)、各要因が独立してアテローム血栓性脳梗塞に影響を与えることが分かった。
男性の場合には、統計的有意性が高い順に、糖尿病、年齢、高血圧、MTHFR遺伝子型(劣性モデル)、ITGB2遺伝子型(優性モデル)、APOE遺伝子型(優性モデル)、およびEDNRA遺伝子型(劣性モデル)が有意であり(P≦0.005)、各要因が独立してアテローム血栓性脳梗塞に影響を与えることが分かった。
2.高血圧の有無で層別解析したときの結果
表25には、高血圧の有無で層別化したときのアテローム血栓性脳梗塞とコントロール者の特徴をまとめた。
年齢とBMIについては、平均値±SDにて示した。正常血圧者(Hypertension(-))では、コントロール者に比べアテローム血栓性脳梗塞患者の方が、年齢、糖尿病の罹患率が有意に高く、高コレステロール血症の罹患率が有意に低かった。高血圧者(Hypertension(+))では、コントロール者に比べアテローム血栓性脳梗塞患者の方が、年齢、糖尿病の罹患率が有意に高かった。
次に、アテローム血栓性脳梗塞のリスク診断を行うために必要な因子を抽出するため、遺伝子多型および年齢・喫煙・BMI・性別・糖尿病・高コレステロール血症について、ステップワイズ変数増加法による解析を行った(詳細については後述する)。その結果、次に説明するように、アテローム血栓性脳梗塞に関するリスク診断を行えることが分かった。
<正常血圧者または高血圧者におけるアテローム血栓性脳梗塞のリスク診断システム>
表26には、正常血圧者または高血圧者におけるアテローム血栓性脳梗塞のリスク診断システムに関する詳細を示した。表には、左欄より順に、正常血圧者における因子(Variable)、P値(P)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))、高血圧者における因子(Variable)、P値(P)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))を示した。また、最下段には、従来の危険因子と、遺伝因子のオッズ比を乗じた総合リスク(Total)を示した。
ステップワイズ変数増加法(表30)でP<0.05であった遺伝子多型および年齢・性別・喫煙・BMI・糖尿病・高コレステロール血症を独立因子(交絡因子)とし、アテローム血栓性脳梗塞を従属因子として多項ロジスティック回帰分析を正常血圧者(非高血圧者)と高血圧者において別々に行い、P値、オッズ比、95%信頼区間を算出した。したがってこれらの因子は独立したものであり、オッズ比の積(かけ算)により総合的な疾患発症リスクを予測することができる。
多項ロジスティック回帰分析の結果、正常血圧者においては、従来の危険因子としては性別(男性が高リスク)、糖尿病が、遺伝因子としては、MTHFR、AGTR1、SAHの各遺伝子多型がアテローム血栓性脳梗塞の発症に関連した。従来の危険因子では最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が6.14、遺伝因子では最小オッズ比が0.30で最大オッズ比が8.13であった。したがって、従来の危険因子と遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.30で最大オッズ比が49.92であり、166倍の差が認められた。また高血圧者においては、従来の危険因子としては糖尿病、性別(男性が高リスク)が、遺伝因子としては、IL6、TNFSF4、SLC26A8、GP6、HNF4A、IPF1、PCSK9、THBS2の各遺伝子多型がアテローム血栓性脳梗塞の発症に関連した。従来の危険因子では最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が2.62、遺伝因子では最小オッズ比が0.71で最大オッズ比が50.28であった。したがって、従来の危険因子と遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.71で最大オッズ比が131.73であり、186倍の差が認められた。
次に、本研究成果の臨床的な意義について以下に述べる。病院、クリニック、健診センターにおいて希望者に対して従来の危険因子と遺伝因子に関する検査を行い、アテローム血栓性脳梗塞の発症リスクの予測を正常血圧者と高血圧者で別々に行う。従来の危険因子と遺伝因子全体のオッズ比の積の分布からリスクの程度を5段階に分ける。即ち、平均±1SDの範囲を平均的リスク群とし、平均+1SDから平均+2SDをやや高リスク群、平均+2SD以上を高リスク群とする。また、平均−1SDから平均−2SDをやや低リスク群、平均−2SD以下を低リスク群とする。他の方法として、コントロール群のリスク値の大きい順に全体を5%、20%、50%、20%、5%に区分し、リスク値の最も大きい5%の群をリスクが高い群、次の20%の群をリスクがやや高い群、次の50%の群を平均的リスクの群、次の20%の群をリスクがやや低い群、リスク値が最も小さい5%の群をリスクが低い群とする。
なお、本研究では有意な関連が認められなかったが、一般的に喫煙・肥満・高脂血症もアテローム血栓性脳梗塞の危険因子と考えられているので、これらの因子を含めることもできる。
結果については、医師等の有資格者の判断を含めてカウンセリングを行い、とりわけリスクが高い群またはやや高い群に属する場合には生活習慣の改善(禁煙・食事療法・運動療法・肥満の軽減・ストレス解消・睡眠不足解消など)や、危険因子の早期治療(高血圧・糖尿病・高脂血症の治療など)を行うことによりアテローム血栓性脳梗塞の一次・二次予防を積極的に推進する。遺伝因子は変更できないが、従来の危険因子は軽減・治療可能であるため、これらの因子を治療した場合に発症リスクがどの程度減少するかについても予測し、クライアントに説明する。特にアテローム血栓性脳梗塞や心筋梗塞の家族歴のある人への適用が有効である。本システムによりアテローム血栓性脳梗塞のオーダーメイド予防が可能になり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
<統計解析>
次に、上記リスク判断システムを開発するに至った統計解析の結果について説明する。
カイ二乗検定により、正常血圧者の場合には7個の遺伝子多型が、高血圧者の場合には12個の遺伝子多型が、アテローム血栓性脳梗塞との関連を示した(P<0.06)。詳細を表27に示した。表中においては、左欄より順に、正常血圧者(Hypertension(-))における遺伝子(Gene)、多型(Polymorphism)、および危険率(P)と、高血圧者(Hypertension(+))における遺伝子(Gene)、多型(Polymorphism)、および危険率(P)を示している。
年齢、性別、BMI、喫煙・高コレステロール血症・および糖尿病の有無を補正した多項ロジスティック回帰分析法を行ったところ、正常血圧者については、アテローム血栓性脳梗塞との関連がある遺伝子多型は認められなかった。詳細を表28に示した。
高血圧者においても同様の解析を行った。その結果、高血圧者の場合には、劣性モデルにおいてIL6の−572G→C多型が、有意に(P<0.005)アテローム血栓性脳梗塞に関連した。詳細を表29に示した。
結果を表30に示した。表中、左欄より順に、正常血圧者における因子(Variable)、P値(P)、寄与率(R2)、高血圧者における因子(Variable)、P値(P)、寄与率(R2)をそれぞれ示している。
正常血圧者の場合には、統計的有意性が高い順に、年齢、性別、および喫煙が有意であり(P≦0.005)、各要因が独立してアテローム血栓性脳梗塞に影響を与えることが分かった。
高血圧者の場合には、統計的有意性が高い順に、糖尿病、IL6遺伝子型(劣性モデル)が有意であり(P≦0.005)、各要因が独立してアテローム血栓性脳梗塞に影響を与えることが分かった。
3.高コレステロール血症の有無で層別解析したときの結果
表31には、高コレステロール血症の有無で層別化したときのアテローム血栓性脳梗塞とコントロール者の特徴をまとめた。
年齢とBMIについては、平均値±SDにて示した。血清コレステロール正常者(Hypercholesterolemia(-))および高コレステロール血症者(Hypercholesterolemia(+))のいずれにおいても、コントロール者に比べアテローム血栓性脳梗塞患者の方が、年齢、高血圧・および糖尿病の罹患率が有意に高かった。
次に、アテローム血栓性脳梗塞のリスク診断に必要な因子を抽出するため、遺伝子多型および年齢・喫煙・BMI・性別・糖尿病・高コレステロール血症について、ステップワイズ変数増加法による解析を行った(詳細については後述する)。その結果、次に説明するように、アテローム血栓性脳梗塞に関するリスク診断を行えることが分かった。
<血清コレステロール正常者または高コレステロール血症者におけるアテローム血栓性脳梗塞のリスク診断システム>
表32には、血清コレステロール正常者または高コレステロール血症者におけるアテローム血栓性脳梗塞のリスク診断システムに関する詳細を示した。表には、左欄より順に、血清コレステロール正常者における因子(Variable)、P値(P)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))、高コレステロール血症者における因子(Variable)、P値(P)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))を示した。また、最下段には、従来の危険因子と、遺伝因子のオッズ比を乗じた総合リスク(Total)を示した。
ステップワイズ変数増加法(表36)でP<0.05であった遺伝子多型および年齢・性別・喫煙・BMI・高血圧・糖尿病を独立因子(交絡因子)とし、アテローム血栓性脳梗塞を従属因子として多項ロジスティック回帰分析を血清コレステロール正常者(非高コレステロール血症者)と高コレステロール血症者において別々に行い、P値、オッズ比、95%信頼区間を算出した。したがってこれらの因子は独立したものであり、オッズ比の積(かけ算)により総合的な疾患発症リスクを予測することができる。
多項ロジスティック回帰分析の結果、血清コレステロール正常者においては、従来の危険因子としては高血圧、性別(男性が高リスク)、糖尿病が、遺伝因子としては、AGT、PCSK9、ITGB2、MTHFR、F7の各遺伝子多型がアテローム血栓性脳梗塞の発症に関連した。従来の危険因子では最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が6.38、遺伝因子では最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が75.76であった。したがって、従来の危険因子と遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が483.35であり、483倍の差が認められた。
また高コレステロール血症者においては、従来の危険因子としては高血圧、糖尿病、性別(男性が高リスク)が、遺伝因子としては、COMT、ADRB2、HNF4A、IL6、IPF1、PCK1、PTGIS、CCL5、AGTR2の各遺伝子多型がアテローム血栓性脳梗塞の発症に関連した。従来の危険因子では最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が24.89、遺伝因子では最小オッズ比が0.12で最大オッズ比が19.79であった。したがって、従来の危険因子と遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.12で最大オッズ比が492.57であり、4105倍の差が認められた。
次に、本研究成果の臨床的な意義について以下に述べる。病院、クリニック、健診センターにおいて希望者に対して従来の危険因子と遺伝因子に関する検査を行い、アテローム血栓性脳梗塞の発症リスクの予測を血清コレステロール正常者と高コレステロール血症者で別々に行う。従来の危険因子と遺伝因子全体のオッズ比の積の分布からリスクの程度を5段階に分ける。即ち、平均±1SDの範囲を平均的リスク群とし、平均+1SDから平均+2SDをやや高リスク群、平均+2SD以上を高リスク群とする。また、平均−1SDから平均−2SDをやや低リスク群、平均−2SD以下を低リスク群とする。他の方法として、コントロール群のリスク値の大きい順に全体を5%、20%、50%、20%、5%に区分し、リスク値の最も大きい5%の群をリスクが高い群、次の20%の群をリスクがやや高い群、次の50%の群を平均的リスクの群、次の20%の群をリスクがやや低い群、リスク値が最も小さい5%の群をリスクが低い群とする。
なお、本研究では有意な関連が認められなかったが、一般的に喫煙・肥満もアテローム血栓性脳梗塞の危険因子と考えられているので、これらの因子を含めることができる。
結果については、医師等の有資格者の判断を含めてカウンセリングを行い、とりわけリスクが高い群またはやや高い群に属する場合には生活習慣の改善(禁煙・食事療法・運動療法・肥満の軽減・ストレス解消・睡眠不足解消など)や、危険因子の早期治療(高血圧・糖尿病・高脂血症の治療など)を行うことによりアテローム血栓性脳梗塞の一次・二次予防を積極的に推進する。遺伝因子は変更できないが、従来の危険因子は軽減・治療可能であるため、これらの因子を治療した場合に発症リスクがどの程度減少するかについても予測し、クライアントに説明する。特にアテローム血栓性脳梗塞や心筋梗塞の家族歴のある人への適用が有効である。本システムによりアテローム血栓性脳梗塞のオーダーメイド予防が可能になり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
<統計解析>
次に、上記リスク判断システムを開発するに至った統計解析の結果について説明する。
カイ二乗検定により、血清コレステロール正常者の場合には12個の遺伝子多型が、高コレステロール血症者の場合には18個の遺伝子多型が、アテローム血栓性脳梗塞との関連を示した(P<0.06)。詳細を表33に示した。表中においては、左欄より順に、血清コレステロール正常者(Hypercholesterolemia(-))における遺伝子(Gene)、多型(Polymorphism)、および危険率(P)と、高コレステロール血症者(Hypercholesterolemia(+))における遺伝子(Gene)、多型(Polymorphism)、および危険率(P)を示している。
年齢、性別、BMI、喫煙・高血圧・および糖尿病の有無を補正した多項ロジスティック回帰分析法を行ったところ、血清コレステロール正常者については、アテローム血栓性脳梗塞との関連がある遺伝子多型は認められなかった。詳細を表34に示した。
高コレステロール血症者においても同様の解析を行った。その結果、高コレステロール血症者の場合には、劣性モデルおよび付加2モデルにおいてCCL5の−403G→A多型が、優性モデルおよび付加1モデルにおいてCOMTのG→A多型が、有意に(P<0.005)アテローム血栓性脳梗塞に関連した。詳細を表35に示した。
次に、アテローム血栓性脳梗塞に対する、遺伝子型、性差、年齢、BMI、喫煙、高血圧、および糖尿病の影響について、ステップワイズ変数増加法により解析した。結果を表36に示した。表中、左欄より順に、血清コレステロール正常者における因子(Variable)、P値(P)、寄与率(R2)、高コレステロール血症者における因子(Variable)、P値(P)、寄与率(R2)をそれぞれ示している。
血清コレステロール正常者の場合には、統計的有意性が高い順に、高血圧、年齢、性差、AGT遺伝子型(優性モデル)、および糖尿病が有意であり(P≦0.005)、各要因が独立してアテローム血栓性脳梗塞に影響を与えることが分かった。
高コレステロール血症者の場合には、統計的有意性が高い順に、高血圧、糖尿病、AGTR2遺伝子型(優性モデル)、CCL5遺伝子型(劣性モデル)、ADRB2遺伝子型(劣性モデル)、およびCOMT遺伝子型(優性モデル)が有意であり(P≦0.005)、各要因が独立してアテローム血栓性脳梗塞に影響を与えることが分かった。
4.糖尿病の有無で層別解析したときの結果
表37には、糖尿病の有無で層別化したときのアテローム血栓性脳梗塞とコントロール者の特徴をまとめた。
年齢とBMIについては、平均値±SDにて示した。血糖正常者(Diabetes mellitus(-))および糖尿病者(Diabetes mellitus(+))のいずれにおいても、コントロール者に比べアテローム血栓性脳梗塞患者の方が、年齢、および高血圧の罹患率が有意に高かった。
次に、アテローム血栓性脳梗塞のリスク診断に必要な因子を抽出するため、遺伝子多型および年齢・喫煙・BMI・性別・高血圧・高コレステロール血症について、ステップワイズ変数増加法による解析を行った(詳細については後述する)。その結果、次に説明するように、アテローム血栓性脳梗塞に関するリスク診断を行えることが分かった。
<血糖正常者または糖尿病者におけるアテローム血栓性脳梗塞のリスク診断システム>
表38には、血糖正常者または糖尿病者におけるアテローム血栓性脳梗塞のリスク診断システムに関する詳細を示した。表には、左欄より順に、血糖正常者における因子(Variable)、P値(P)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))、糖尿病者における因子(Variable)、P値(P)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))を示した。また、最下段には、従来の危険因子と、遺伝因子のオッズ比を乗じた総合リスク(Total)を示した。
ステップワイズ変数増加法(表42)でP<0.05であった遺伝子多型および年齢・性別・喫煙・BMI・高血圧・高コレステロール血症を独立因子(交絡因子)とし、アテローム血栓性脳梗塞を従属因子として多項ロジスティック回帰分析を血糖正常者(非糖尿病者)と糖尿病者において別々に行い、P値、オッズ比、95%信頼区間を算出した。したがってこれらの因子は独立したものであり、オッズ比の積(かけ算)により総合的な疾患発症リスクを予測することができる。
多項ロジスティック回帰分析の結果、血糖正常者においては、従来の危険因子としては高血圧、性別(男性が高リスク)が、遺伝因子としては、MMP12、IL6、COL3A1、ABCA1、SAHの各遺伝子多型がアテローム血栓性脳梗塞の発症に関連した。従来の危険因子では最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が4.92、遺伝因子では最小オッズ比が0.40で最大オッズ比が6.62であった。したがって、従来の危険因子と遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.40で最大オッズ比が32.57であり、81倍の差が認められた。また糖尿病者においては、従来の危険因子としては高血圧、性別(男性が高リスク)、高脂血症が、遺伝因子としては、APOE、COMT、GP6、TNFSF4、GCK、FABP2、MTHFR、GYS1の各遺伝子多型がアテローム血栓性脳梗塞の発症に関連した。従来の危険因子では最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が8.65、遺伝因子では最小オッズ比が0.35で最大オッズ比が188.02であった。したがって、従来の危険因子と遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.35で最大オッズ比が1626.37であり、4647倍の差が認められた。
次に、本研究成果の臨床的な意義について以下に述べる。病院、クリニック、健診センターにおいて希望者に対して従来の危険因子と遺伝因子に関する検査を行い、アテローム血栓性脳梗塞の発症リスクの予測を血糖正常者(非糖尿病者)と糖尿病者で別々に行う。従来の危険因子と遺伝因子全体のオッズ比の積の分布からリスクの程度を5段階に分ける。即ち、平均±1SDの範囲を平均的リスク群とし、平均+1SDから平均+2SDをやや高リスク群、平均+2SD以上を高リスク群とする。また、平均−1SDから平均−2SDをやや低リスク群、平均−2SD以下を低リスク群とする。他の方法として、コントロール群のリスク値の大きい順に全体を5%、20%、50%、20%、5%に区分し、リスク値の最も大きい5%の群をリスクが高い群、次の20%の群をリスクがやや高い群、次の50%の群を平均的リスクの群、次の20%の群をリスクがやや低い群、リスク値が最も小さい5%の群をリスクが低い群とする。
なお、本研究では有意な関連が認められなかったが、一般的に血糖正常者では喫煙・肥満・高脂血症が、糖尿病者では喫煙・肥満がアテローム血栓性脳梗塞の危険因子と考えられているので、これらの因子を含めることができる。
結果については、医師等の有資格者の判断を含めてカウンセリングを行い、とりわけリスクが高い群またはやや高い群に属する場合には生活習慣の改善(禁煙・食事療法・運動療法・肥満の軽減・ストレス解消・睡眠不足解消など)や、危険因子の早期治療(高血圧・糖尿病・高脂血症の治療など)を行うことによりアテローム血栓性脳梗塞の一次・二次予防を積極的に推進する。遺伝因子は変更できないが、従来の危険因子は軽減・治療可能であるため、これらの因子を治療した場合に発症リスクがどの程度減少するかについても予測し、クライアントに説明する。特にアテローム血栓性脳梗塞や心筋梗塞の家族歴のある人への適用が有効である。本システムによりアテローム血栓性脳梗塞のオーダーメイド予防が可能になり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
<統計解析>
次に、上記リスク判断システムを開発するに至った統計解析の結果について説明する。
カイ二乗検定により、血糖正常者の場合には8個の遺伝子多型が、糖尿病者の場合には15個の遺伝子多型が、アテローム血栓性脳梗塞との関連を示した(P<0.06)。詳細を表39に示した。表中においては、左欄より順に、血糖正常者(Diabetes mellitus(-))における遺伝子(Gene)、多型(Polymorphism)、および危険率(P)と、糖尿病者(Diabetes mellitus(+))における遺伝子(Gene)、多型(Polymorphism)、および危険率(P)を示している。
年齢、性別、BMI、喫煙・高血圧・および高コレステロール血症の有無を補正した多項ロジスティック回帰分析法を行ったところ、血糖正常者については、アテローム血栓性脳梗塞との関連がある遺伝子多型は認められなかった。詳細を表40に示した。
糖尿病者についても同様の解析を行った。その結果、糖尿病者の場合には、優性モデルおよび付加1モデルにおいてAPOEの3932T→C多型が、優性モデルにおいてFABP2の2445G→A多型が、付加2モデルにおいてTNFSF4のA→G多型が、有意に(P<0.005)アテローム血栓性脳梗塞に関連した。詳細を表41に示した。
次に、アテローム血栓性脳梗塞に対する、遺伝子型、性差、年齢、BMI、喫煙、高血圧、および高コレステロール血症の影響について、ステップワイズ変数増加法により解析した。結果を表42に示した。表中、左欄より順に、血糖正常者における因子(Variable)、P値(P)、寄与率(R2)、糖尿病者における因子(Variable)、P値(P)、寄与率(R2)をそれぞれ示している。
血糖正常者の場合には、統計的有意性が高い順に、高血圧、年齢、性差、およびIL6遺伝子型(劣性モデル)が有意であり(P≦0.005)、各要因が独立してアテローム血栓性脳梗塞に影響を与えることが分かった。
糖尿病者の場合には、統計的有意性が高い順に、高血圧、APOE遺伝子型(優性モデル)、年齢、TNFS4遺伝子型(劣性モデル)、GCK遺伝子型(劣性モデル)、および性差が有意であり(P≦0.005)、各要因が独立してアテローム血栓性脳梗塞に影響を与えることが分かった。
5.肥満の有無で層別解析したときの結果
表43には、肥満の有無で層別化したときのアテローム血栓性脳梗塞とコントロール者の特徴をまとめた。
年齢とBMIについては、平均値±SDにて示した。BMI正常者(Obesity(-))の場合には、コントロール者に比べアテローム血栓性脳梗塞患者の方が、年齢、高血圧・高コレステロール血症・および糖尿病の罹患率が有意に高かった。また、肥満者(Obesity(+))の場合には、コントロール者に比べアテローム血栓性脳梗塞患者の方が、年齢、高血圧・および糖尿病の罹患率が有意に高かった。
次に、アテローム血栓性脳梗塞のリスク診断に必要な因子を抽出するため、遺伝子多型および年齢・喫煙・性別・高血圧・高コレステロール血症・糖尿病について、ステップワイズ変数増加法による解析を行った(詳細については後述する)。その結果、次に説明するように、アテローム血栓性脳梗塞に関するリスク診断を行えることが分かった。
<BMI正常者または肥満者におけるアテローム血栓性脳梗塞のリスク診断システム>
表44には、BMI正常者または肥満者におけるアテローム血栓性脳梗塞のリスク診断システムに関する詳細を示した。表には、左欄より順に、BMI正常者における因子(Variable)、P値(P)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))、肥満者における因子(Variable)、P値(P)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))を示した。また、最下段には、従来の危険因子と、遺伝因子のオッズ比を乗じた総合リスク(Total)を示した。
ステップワイズ変数増加法(表48)でP<0.05であった遺伝子多型群および年齢・性別・喫煙・高血圧・高脂血症・糖尿病を独立因子(交絡因子)とし、アテローム血栓性脳梗塞を従属因子として多項ロジスティック回帰分析をBMI正常者(非肥満者)と肥満者において別々に行い、P値、オッズ比、95%信頼区間を算出した。したがってこれらの因子は独立したものであり、オッズ比の積(かけ算)により総合的な疾患発症リスクを予測することができる。
多項ロジスティック回帰分析の結果、BMI正常者においては、従来の危険因子としては高血圧、性別(男性が高リスク)、糖尿病が、遺伝因子としては、IL6、LIPG、MTHFR、GCK、TNFSF4、AGTの各遺伝子多型がアテローム血栓性脳梗塞の発症に関連した。従来の危険因子では最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が11.91、遺伝因子では最小オッズ比が0.39で最大オッズ比が16.56であった。したがって、従来の危険因子と遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.39で最大オッズ比が197.23であり、506倍の差が認められた。また肥満者においては、従来の危険因子としては高血圧、糖尿病が、遺伝因子としては、UCP3、IL10、IPF1、LIPG、APOA1、EDN1の各遺伝子多型がアテローム血栓性脳梗塞の発症に関連した。従来の危険因子では最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が7.22、遺伝因子では最小オッズ比が0.29で最大オッズ比が17.14であった。したがって、従来の危険因子と遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.29で最大オッズ比が123.75であり、427倍の差が認められた。
次に、本研究成果の臨床的な意義について以下に述べる。病院、クリニック、健診センターにおいて希望者に対して従来の危険因子と遺伝因子に関する検査を行い、アテローム血栓性脳梗塞の発症リスクの予測をBMI正常者(非肥満者)と肥満者で別々に行う。従来の危険因子と遺伝因子全体のオッズ比の積の分布からリスクの程度を5段階に分ける。即ち、平均±1SDの範囲を平均的リスク群とし、平均+1SDから平均+2SDをやや高リスク群、平均+2SD以上を高リスク群とする。また、平均−1SDから平均−2SDをやや低リスク群、平均−2SD以下を低リスク群とする。他の方法として、コントロール群のリスク値の大きい順に全体を5%、20%、50%、20%、5%に区分し、リスク値の最も大きい5%の群をリスクが高い群、次の20%の群をリスクがやや高い群、次の50%の群を平均的リスクの群、次の20%の群をリスクがやや低い群、リスク値が最も小さい5%の群をリスクが低い群とする。
なお、本研究では有意な関連が認められなかったが、一般的に喫煙・高脂血症もアテローム血栓性脳梗塞の危険因子と考えられているので、これらの因子を含めることができる。
結果については、医師等の有資格者の判断を含めてカウンセリングを行い、とりわけリスクが高い群またはやや高い群に属する場合には生活習慣の改善(禁煙・食事療法・運動療法・肥満の軽減・ストレス解消・睡眠不足解消など)や、危険因子の早期治療(高血圧・糖尿病・高脂血症の治療など)を行うことによりアテローム血栓性脳梗塞の一次・二次予防を積極的に推進する。遺伝因子は変更できないが、従来の危険因子は軽減・治療可能であるため、これらの因子を治療した場合に発症リスクがどの程度減少するかについても予測し、クライアントに説明する。特にアテローム血栓性脳梗塞や心筋梗塞の家族歴のある人への適用が有効である。本システムによりアテローム血栓性脳梗塞のオーダーメイド予防が可能になり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
<統計解析>
次に、上記リスク判断システムを開発するに至った統計解析の結果について説明する。
カイ二乗検定により、BMI正常者の場合には10個の遺伝子多型が、肥満者の場合には11個の遺伝子多型が、アテローム血栓性脳梗塞との関連を示した(P<0.06)。詳細を表45に示した。表中においては、左欄より順に、BMI正常者(Obesity(-))における遺伝子(Gene)、多型(Polymorphism)、および危険率(P)と、肥満者(Obesity(+))における遺伝子(Gene)、多型(Polymorphism)、および危険率(P)を示している。
年齢、性別、喫煙・高血圧・高コレステロール血症および糖尿病の有無を補正した多項ロジスティック回帰分析法を行ったところ、BMI正常者については、劣性モデルにおいてIL6の−572G→C多型が、有意に(P<0.005)アテローム血栓性脳梗塞に関連した。詳細を表46に示した。
肥満者についても同様の解析を行った。その結果、肥満者の場合には、劣性モデルおよび付加2モデルにおいてUCP3の−55C→T多型が、付加1モデルにおいてIL10の−572A→C多型が、付加1モデルにおいてIL10の−819T→C多型が、有意に(P<0.005)アテローム血栓性脳梗塞に関連した。詳細を表47に示した。
次に、アテローム血栓性脳梗塞に対する、遺伝子型、性差、年齢、喫煙、高血圧、糖尿病および高コレステロール血症の影響について、ステップワイズ変数増加法により解析した。結果を表48に示した。表中、左欄より順に、BMI正常者における因子(Variable)、P値(P)、寄与率(R2)、肥満者における因子(Variable)、P値(P)、寄与率(R2)をそれぞれ示している。
BMI正常者の場合には、統計的有意性が高い順に、高血圧、性別、年齢、糖尿病、喫煙、およびIL6遺伝子型(劣性モデル)が有意であり(P≦0.005)、各要因が独立してアテローム血栓性脳梗塞に影響を与えることが分かった。
肥満者の場合には、統計的有意性が高い順に、高血圧、糖尿病、および年齢が有意であり(P≦0.005)、各要因が独立してアテローム血栓性脳梗塞に影響を与えることが分かった。
6.喫煙の有無で層別解析したときの結果
表49には、喫煙の有無で層別化したときのアテローム血栓性脳梗塞とコントロール者の特徴をまとめた。
年齢とBMIについては、平均値±SDにて示した。非喫煙者(Nonsmokers)の場合には、コントロール者に比べアテローム血栓性脳梗塞患者の方が、年齢、高血圧・高コレステロール血症・および糖尿病の罹患率が有意に高かった。また、喫煙者(Smokers)の場合には、コントロール者に比べアテローム血栓性脳梗塞患者の方が、年齢、高血圧・および糖尿病の罹患率が有意に高かった。
次に、アテローム血栓性脳梗塞のリスク診断に必要な因子を抽出するため、遺伝子多型および年齢・性別・BMI・高血圧・高コレステロール血症・糖尿病について、ステップワイズ変数増加法による解析を行った(詳細については後述する)。その結果、次に説明するように、アテローム血栓性脳梗塞に関するリスク診断を行えることが分かった。
<非喫煙者または喫煙者におけるアテローム血栓性脳梗塞のリスク診断システム>
表50には、非喫煙者または喫煙者におけるアテローム血栓性脳梗塞のリスク診断システムに関する詳細を示した。表には、左欄より順に、非喫煙者における因子(Variable)、P値(P)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))、喫煙者における因子(Variable)、P値(P)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))を示した。また、最下段には、従来の危険因子と、遺伝因子のオッズ比を乗じた総合リスク(Total)を示した。
ステップワイズ変数増加法(表54)でP<0.05であった遺伝子多型および年齢・性別・BMI・高血圧・高脂血症・糖尿病を独立因子(交絡因子)とし、アテローム血栓性脳梗塞を従属因子として多項ロジスティック回帰分析を非喫煙者と喫煙者において別々に行い、P値、オッズ比、95%信頼区間を算出した。したがってこれらの因子は独立したものであり、オッズ比の積(かけ算)により総合的な疾患発症リスクを予測することができる。
多項ロジスティック回帰分析の結果、非喫煙者においては、従来の危険因子としては高血圧、性別(男性が高リスク)、糖尿病が、遺伝因子としては、IL6、MTHFR、TNFSF4、ITGB2、LIPG、UCP3、MMP12、UTS2、THBS2の各遺伝子多型がアテローム血栓性脳梗塞の発症に関連した。従来の危険因子では最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が9.22、遺伝因子では最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が63.81であった。したがって、従来の危険因子と遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が588.33であり、588倍の差が認められた。また喫煙者においては、従来の危険因子としては高血圧、糖尿病が、遺伝因子としては、F12、COMT、CXCL16、CPB2の各遺伝子多型がアテローム血栓性脳梗塞の発症に関連した。従来の危険因子では最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が5.90、遺伝因子では最小オッズ比が0.14で最大オッズ比が4.38であった。したがって、従来の危険因子と遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.14で最大オッズ比が25.84であり、185倍の差が認められた。
次に、本研究成果の臨床的な意義について以下に述べる。病院、クリニック、健診センターにおいて希望者に対して従来の危険因子と遺伝因子に関する検査を行い、アテローム血栓性脳梗塞の発症リスクの予測を非喫煙者と喫煙者で別々に行う。従来の危険因子と遺伝因子全体のオッズ比の積の分布からリスクの程度を5段階に分ける。即ち、平均±1SDの範囲を平均的リスク群とし、平均+1SDから平均+2SDをやや高リスク群、平均+2SD以上を高リスク群とする。また、平均−1SDから平均−2SDをやや低リスク群、平均−2SD以下を低リスク群とする。他の方法として、コントロール群のリスク値の大きい順に全体を5%、20%、50%、20%、5%に区分し、リスク値の最も大きい5%の群をリスクが高い群、次の20%の群をリスクがやや高い群、次の50%の群を平均的リスクの群、次の20%の群をリスクがやや低い群、リスク値が最も小さい5%の群をリスクが低い群とする。
なお、本研究では有意な関連が認められなかったが、一般的に高脂血症・肥満もアテローム血栓性脳梗塞の危険因子と考えられているので、これらの因子を含めることもできる。
結果については、医師等の有資格者の判断を含めてカウンセリングを行い、とりわけリスクが高い群またはやや高い群に属する場合には生活習慣の改善(禁煙・食事療法・運動療法・肥満の軽減・ストレス解消・睡眠不足解消など)や、危険因子の早期治療(高血圧・糖尿病・高脂血症の治療など)を行うことによりアテローム血栓性脳梗塞の一次・二次予防を積極的に推進する。遺伝因子は変更できないが、従来の危険因子は軽減・治療可能であるため、これらの因子を治療した場合に発症リスクがどの程度減少するかについても予測し、クライアントに説明する。特にアテローム血栓性脳梗塞や心筋梗塞の家族歴のある人への適用が有効である。本システムによりアテローム血栓性脳梗塞のオーダーメイド予防が可能になり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
<統計解析>
次に、上記リスク判断システムを開発するに至った統計解析の結果について説明する。
カイ二乗検定により、非喫煙者および喫煙者のいずれの場合にも14個の遺伝子多型が、アテローム血栓性脳梗塞との関連を示した(P<0.06)。詳細を表51に示した。表中においては、左欄より順に、非喫煙者(Smoking(-))における遺伝子(Gene)、多型(Polymorphism)、および危険率(P)と、喫煙者(Smoking(+))における遺伝子(Gene)、多型(Polymorphism)、および危険率(P)を示している。
年齢、性別、BMI、高血圧・高コレステロール血症および糖尿病の有無を補正した多項ロジスティック回帰分析法を行ったところ、非喫煙者については、次の多型がアテローム血栓性脳梗塞の発症に関連した。劣性モデルにおいてIL6の−572G→C多型が、劣性モデルにおいてMTHFRの677C→T多型が、劣性モデルおよび付加2モデルにおいてTNFSF4のA→G多型が、有意に(P<0.005)アテローム血栓性脳梗塞に関連した。詳細を表52に示した。
喫煙者についても同様の解析を行ったところ、劣性モデルにおいてCXCL16のC→T(Ala181Val)多型が、劣性モデルにおいてF12の46C→T多型が、有意に(P<0.005)アテローム血栓性脳梗塞に関連した。詳細を表53に示した。
次に、アテローム血栓性脳梗塞に対する、遺伝子型、性差、年齢、BMI、高血圧、糖尿病および高コレステロール血症の影響について、ステップワイズ変数増加法により解析した。結果を表54に示した。表中、左欄より順に、非喫煙者における因子(Variable)、P値(P)、寄与率(R2)、喫煙者における因子(Variable)、P値(P)、寄与率(R2)をそれぞれ示している。
非喫煙者の場合には、統計的有意性が高い順に、高血圧、性別、年齢、糖尿病、IL6遺伝子型(劣性モデル)、MTHFR遺伝子型(劣性モデル)、およびTNFSF4遺伝子型(連通孔性モデル)が有意であり(P≦0.005)、各要因が独立してアテローム血栓性脳梗塞に影響を与えることが分かった。
喫煙者の場合には、統計的有意性が高い順に、高血圧、年齢、F12遺伝子型(劣性モデル)、およびCXCL16遺伝子型(レッセモデル)が有意であり(P≦0.005)、各要因が独立してアテローム血栓性脳梗塞に影響を与えることが分かった。
<考察>
本発明者らは、202個の多型についてアテローム血栓性脳梗塞との関係を、性別、高血圧の有無、高コレステロール血症の有無、糖尿病の有無、肥満の有無、および喫煙の有無に層別化して評価した。その結果、アテローム血栓性脳梗塞に関与する多型は、性別、およびその他の従来の危険因子の有無に応じて異なっていることが分かった。
アテローム血栓性脳梗塞は、脳卒中のうちで最も一般的な疾患であり、多くの患者では、アテローム性動脈硬化によって引き起こされている(非特許文献7)。アテローム性動脈硬化は、動脈壁の内皮細胞および平滑筋細胞への損傷に対する各種の炎症反応や繊維増殖反応が過剰に起こった結果、多くの増殖因子、サイトカイン、および血管制御分子の関与によって生ずる(非特許文献22)。
本発明者らは、鋭意検討に基づき、血管に関する生物学(高血圧、アテローム性動脈硬化症、動脈攣縮、または動脈瘤の観点から)、血小板機能、白血球と単核マクロファージに関する生物学、凝固と線維素溶解のカスケード、神経学的因子(循環器、血圧、または内分泌機能の制御の観点から)、脂質、グルコース、およびホモシステイン代謝、他の代謝因子に関する包括的な概要に基づき、虚血性または出血性の脳血管障害に関連する可能性のある152個の候補遺伝子を選択した。実際に、アテローム血栓性脳梗塞に関与する遺伝子は、幅広い病因に関与していた。例えば、細胞接着(ITGB2、TNFSF4)、血管炎症(CCL11、IL6)、白血球・リンパ球・および単球−マクロファージ生物学(CCL5)、血管収縮(EDN1、EDNRA)、脂質代謝(LIPG、APOE、CXCL16)、ホモシステイン代謝(MTHFR)、カテコールアミン伝達代謝(COMT)、および血液凝固(F12)が含まれている。
今回の研究で見出されたアテローム血栓性脳梗塞との関連がある13個の多型のうち、4個の多型(すなわち、LIPGの584C→T、APOEの3932T→C、IL6の−572G→C、F12の46C→T)については、虚血性脳卒中との関連を指摘する既報がある(非特許文献12、13、23−26)。また、残りの9個の多型(すなわち、LIPGの584C→T、EDN1の5665G→T、CCL11のG→A、ITGB2の1323C→T、EDNRAの−231A→G、CCL5の−403G→A、COMTのG→A、TNFSF4のA→G、CXCL16のC→T)については、そのような既報は見あたらない。
男女に層別したときのアテローム血栓性脳梗塞に関連する多型
アテローム血栓性脳梗塞については、女性の場合には、LIPGの584C→T(Thr111Ile)多型、EDN1の5665G→T(Lys198Asn)多型、およびCCL11のG→A(Ala23Thr)多型が関連していた。また、男性の場合には、MTHFRの677C→T(Ala222Val)多型、ITGB2の1323C→T多型、APOEの3932T→C(Cys112Arg)多型、およびEDNRAの−231A→G多型が関連していた。今回の研究では、アテローム血栓性脳梗塞に関連する多型が、性差で異なる理由については明らかとはなっていない。
一般的に、女性がアテローム血栓性脳梗塞や心筋梗塞などのアテローム硬化性疾患に罹患する年齢は男性に比べると10歳程度の遅れがあることから考えると、同世代の男性と女性がアテローム血栓性脳梗塞に罹患する機序は異なっているのかも知れない。性ホルモンであるエストロゲンは、血管内皮細胞からNOやPGIの様な血管拡張物質の産生を促進し、エンドセリン1の様な血管収縮物質の産生を抑制することにより、血管壁や血管収縮拡張調節に対して、好ましい影響を及ぼす。したがって、エストロゲンなどの性ホルモン量が男女で異なることにより、アテローム血栓性脳梗塞に関与する遺伝子多型が異なるのかも知れない。更に、今回調査した遺伝子多型は、アテローム血栓性脳梗塞に関連する遺伝子多型の一部であり、男女に共通してアテローム血栓性脳梗塞に関連する遺伝子多型が更に見つかる可能性もある。
高血圧の有無、高コレステロール血症の有無、糖尿病の有無、肥満の有無、喫煙の有無に層別化したときのアテローム血栓性脳梗塞に関与する遺伝子多型について
遺伝的要因と環境要因との相互作用がアテローム血栓性脳梗塞の原因として重要ではないかと考えたので、高血圧の有無・高コレステロール血症の有無・糖尿病の有無・肥満の有無・喫煙習慣の有無に分けたときのアテローム血栓性脳梗塞の発症に関連する多型について解析を行った。その結果、高血圧者では、IL6の−572G→C多型がアテローム血栓性脳梗塞に関連したが、血圧正常者では、そのような多型は認められなかった。高コレステロール血症者では、CCL5の−403G→A多型とCOMTのG→A(Val158Met)多型がアテローム血栓性脳梗塞に関連したが、血清コレステロール正常者では、そのような多型は認められなかった。糖尿病者では、APOEの3932T→C(Cys112Arg)とTNFSF4のA→G多型がアテローム血栓性脳梗塞に関連したが、非糖尿病者では、そのような多型は認められなかった。肥満者では、IL6の−572G→C多型がアテローム血栓性脳梗塞に関連したが、BMI正常者では、そのような多型は認められなかった。非喫煙者では、IL6の−572G→C多型、MTHFRの677C→T(Ala222Val)多型、およびTNFSF4のA→G多型がアテローム血栓性脳梗塞に関連したが、喫煙者では、F12の46C→T多型とCXCL16のC→T(Ala181Val)多型がアテローム血栓性脳梗塞に関連した。
これらの結果から、従来のアテローム血栓性脳梗塞の危険因子の有無によって、関連する遺伝子多型が異なることが分かった。但し、その理由については、今のところ未知のままである。1個の遺伝子多型がアテローム血栓性脳梗塞の発症に寄与する程度は小さいので、多型とアテローム血栓性脳梗塞の発症との関連は従来のアテローム血栓性脳梗塞の危険因子の有無によって影響を受けるかも知れない。更に、高血圧・高コレステロール血症・糖尿病・肥満といった従来の危険因子自体が遺伝的な要因を持っているため、アテローム血栓性脳梗塞に関連する遺伝子多型と従来のアテローム血栓性脳梗塞の危険因子に関連する遺伝子多型との間に何らかの相互作用があるのかも知れない。
このように本実施形態によれば、アテローム血栓性脳梗塞について、遺伝的リスクおよび発症リスクを判断するための検出法を提供することができる。この実施形態を用いることにより、アテローム血栓性脳梗塞に対する予防が可能となり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
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Luminex100で検出するマイクロビーズの微細構造と特徴を示す図である。 PCR−SSOP−Luminex法の手順の概要を示す図である。

Claims (2)

  1. 日本人における脳血管障害の遺伝的リスク検出法であって、
    前記脳血管障害がアテローム血栓性脳梗塞の場合には、IPF1の3G−108/4G、TNFSF4のA/G、ITGB2のC1323T、THBS2のT3949G、MMP12のA−82G及びANXA5のC−1Tの遺伝子多型を検出し、
    前記脳血管障害が脳出血の場合には、TNFのC−863A、CD14のC−260T、FBN1のT1875C、PECAM1のC1454G、UCP1のA−112C、CPB2のG529A、LIPCのG−250A及びCCL5のC−28Gの遺伝子多型を検出し、
    前記脳血管障害がクモ膜下出血の場合には、PKD1−likeのG/A(Gly243Asp)、TNFのC−863A、CAPN10のG4852A、MTHFRのC677T、UCP3のC−55T、OLR1のG501C、PAX4のC567T、TGFBR2のC1167T、IL10のT−819C及びCCL5のG−403Aの遺伝子多型を検出することを特徴とする日本人における遺伝的リスク検出法。
  2. 前記脳血管障害がアテローム血栓性脳梗塞のときには、更に、
    女性の場合には、EDN1の5665G→T、LIPGの584C→T、CCL11のG→A(Ala23Thr)、UTS2のG→A(Ser89Asn)、AKAP10のA→G(Ile646Val)及びKCNJ11のA→G(Glu23Lys)、男性の場合には、APOEの3932T→C、APOA1の84T→C、EDNRAの−231A→G、F12の46C→T、THBS2のT→G(3’UTR)、APOEの−219G→T及びACDCの−11377C→G、
    正常血圧者の場合には、AGTR1の1166A→C及びSAHのA→G(in intron12)、高血圧者の場合には、SLC26A8のA→G(Ile639Val)、GP6の13254T→C、HNF4AのA→G及びPCSK9の23968A→G、
    血清コレステロール正常者の場合には、AGTの−6G→A及びF7の11496G→A、高コレステロール血症者の場合には、COMTのG→A(Val158Met)、ADRB2の46A→G、PCK1の−232C→G、PTGISの1117C→A、CCL5の−28C→G及びAGTR2の1675G→A、
    血糖正常者の場合には、COL3A1のG→A(Ala698Th)及びABCA1の2583A→G、糖尿病者の場合には、GCKの−30G→A、FABP2の2445G→A及びGYS1のA→G(Met416Val)、
    肥満者の場合には、UCP3の−55C→T及びIL10の−592A→C、
    喫煙者の場合には、CXCL16のC→T(Ala181Val)及びCPB2のT→C(Ile347Thr)の遺伝子多型を検出することを特徴とする請求項に記載の日本人における遺伝的リスク検出法。
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