JP5119491B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
本発明の空気入りタイヤの構造は、たとえば図1のタイヤ断面の右上半分に例示されるものである。タイヤ1は、トレッド部を構成するトレッドゴム7と、その両端からタイヤ半径方向内方にのびる一対のサイドウォール部を構成するサイドウォールゴム8と、各サイドウォール部の内方端に位置するクリンチ部を構成するクリンチゴム3およびリム上部に位置するチェーファー部を構成するチェーファーゴム2とを備える。またクリンチ部、チェーファー部間にはカーカス10が架け渡されるとともに、このカーカス10のタイヤ半径方向外側にブレーカー部を構成するブレーカーゴム9が配される。該カーカス10は、カーカスコードを配列する1枚以上のカーカスプライから形成され、このカーカスプライは、トレッド部からサイドウォール部を経て、ビードコア13と、該ビードコア13の上端からサイドウォール方向に延びるビードエーペックス11との廻りをタイヤ軸方向の内側から外側に折返され、折返し部によって係止される。ブレーカー部は、ブレーカーコードを配列した2枚以上のブレーカープライからなり、各ブレーカーコードがブレーカープライ間で交差するよう向きを違えて重置している。本発明の空気入りタイヤにおいては、トレッド部とブレーカー部との間に被覆ゴム5が設けられる。該被覆ゴム5と少なくとも5mmの接触領域を有して、カーカスプライとブレーカー部の両端部およびサイドウォール部との間に導電性ゴム4が配置される。そして前記被覆ゴム5に接しトレッドゴム7に一部が接地面に露出するように通電ゴム6が配置され、該通電ゴム6は前記被覆ゴム5、導電性ゴム4、カーカス10、クリンチゴム3およびチェーファーゴム2と電気的に接続する構造となっている。
タイヤを構成するトレッドゴム、ブレーカーゴム、サイドウォールゴムの体積固有抵抗は、いずれも1×108Ω・cm以上に設定される。従来、ゴム補強剤としてカーボンブラックが用いられていたが、これをシリカに置き換えることで転がり抵抗を軽減できる。さらにシリカは石油由来の材料でないことから石油由来の材料であるカーボンに比べ環境問題の観点からも好適に採用される。しかしシリカを用いる場合、体積固有抵抗が大きくなる傾向にある。本発明ではシリカ配合を基本とすることでタイヤの転がり抵抗の軽減及びゴムの加工性等の基本特性を維持し、一方ではゴム組成物の体積固有抵抗が1×108Ω・cm以上の高い電気抵抗の問題点を改善するものである。
本発明における被覆ゴム5は、上記導電性ゴム4と上記通電ゴム6とに接して設けられる、体積固有抵抗が1×108Ω・cm未満に設定されたゴムからなる。前記体積抵抗値が1×108Ω・cm未満であればタイヤの導電性の向上効果が所望の程度得られる。また、該体積固有抵抗は、上記導電性ゴムと同様に設定することができ、好ましくは1×107Ω・cm以下であり、より好ましくは1×106Ω・cm以下であり、また、1×103Ω・cm以上とすることが好ましく、1×104Ω・cm以上に設定することがより好ましい。
本発明における導電性ゴム4は、後述のカーカス10を構成するカーカスプライとブレーカー部のエッジ部分およびサイドウォール部との間に設けられる、体積固有抵抗が1×108Ω・cm未満に設定されたゴムからなる。導電性ゴム4の体積固有値が1×108Ω・cm未満であればタイヤの導電性の向上効果が得られる。導電性ゴム4の体積固有抵抗は、好ましくは1×107Ω・cm以下であり、1×106Ω・cm以下に設定されることがより好ましい。導電性成分を多量に配合されたゴム組成物を採用すると電気抵抗が小さくなるが、一方ではタイヤがリムに接する領域における電気化学反応が促進されリムが錆び易くなる。これを回避するためには、該導電性ゴムの体積固有抵抗は1×103Ω・cm以上であること、さらに1×104Ω・cm以上に設定されることが好ましい。
本発明において、通電ゴムはトレッド部に埋設されその一部はタイヤ接地面に露出し、他の一部は導電性ゴムと連結しており空気入りタイヤの走行時に発生した静電気を接地面に効果的に放出する。図1において電通ゴム6は、トレッド部7の中央部に1箇所埋設された構造として示されているが、複数個の通電ゴムを埋設することもできる。そしてタイヤ幅方向の通電ゴムの幅は、例えば、0.2mm〜10mm、好ましくは0.9mm〜1.5mmである。この幅が0.2mm未満の場合は通電効果は少なく、一方、10mmを越えるとトレッド部における通電ゴムの接地領域が相対的に増加し、接地特性を損なうことになる。また、通電ゴムはタイヤ周方向に連続層として形成することが好ましいが、タイヤ周方向に断続的に形成することもできる。
本発明におけるカーカス10は、カーカスコードを配列する1枚以上のカーカスプライから構成される。該カーカスプライは、カーカスコードを平行に引き揃えてゴム中に埋設した構成である。上記カーカスコードを構成する繊維材料としては、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アラミドなどを例示することができ、これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。なかでも、天然資源材料であることからレーヨンを用いることが好ましく、カーカスコードを構成する繊維材料に対してレーヨンを90質量%以上配合することが好ましい。
本発明でビード部ゴムはクリンチゴム、チェーファーおよびゴムチェファーを含む概念である。タイヤが走行する際にビード部ゴムを介してリムから駆動力が伝達されるが、この際にリムとビード部ゴムとの摩擦で静電気が発生しやすい。係る静電気は前記導電性ゴムを通って接地面に有効に放出される必要がある。図1においてクリンチゴム、チェーファーあるいはゴムチェファーは、前記カーカス10と電気的に接続していることが必要である。
本発明の空気入りタイヤにおける被覆ゴム、導電性ゴム、通電ゴム、プライゴム、チェーファーゴム、クリンチゴム、およびトレッドゴム、ブレーカーゴム、サイドウォールゴムは、たとえば以下のゴム組成物から構成される。
表1に示す配合成分のうち硫黄および加硫促進剤を除いた成分を、密閉式バンバリーミキサーを用いて150℃で4分間混練した後、硫黄および加硫促進剤を加えて95℃で2分間さらに練り込み、従来法により押出し工程、カレンダー工程を経てチェーファーゴム組成物A−1、A−2、A−3を調整した。
表2に示す配合成分のうち硫黄および加硫促進剤を除いた成分を、密閉式バンバリーミキサーを用いて150℃で4分間混練した後、硫黄および加硫促進剤を加えて95℃で2分間さらに練り込み、従来法により押出し工程、カレンダー工程を経てプライゴム組成物組成物B−1、B−2、B−3を調整した。
表3〜5に示す配合成分のうち硫黄および加硫促進剤を除いた成分を、密閉式バンバリーミキサーを用いて150℃で4分間混練した後、硫黄および加硫促進剤を加えて95℃で2分間さらに練り込み、従来法により押出し工程、カレンダー工程を経て導電性ゴム、被覆ゴムおよび電通ゴム組成物C〜Eを調製した。
表6に示す配合成分のうち硫黄および加硫促進剤を除いた成分を、密閉式バンバリーミキサーを用いて140℃で4分間混練した後、硫黄および加硫促進剤を加えて95℃で2分間さらに練り込み、従来法により押出し工程、カレンダー工程を経てトレッドゴム組成物Fを調製した。
表7に示す配合成分のうち硫黄および加硫促進剤を除いた成分を、密閉式バンバリーミキサーを用いて140℃で4分間混練した後、硫黄および加硫促進剤を加えて95℃で2分間さらに練り込み、従来法により押出し工程、カレンダー工程を経てサイドウォールゴム組成物G−1、G−2を調製した。
表8に示す配合成分のうち硫黄および加硫促進剤を除いた成分を、密閉式バンバリーミキサーを用いて140℃で4分間混練した後、硫黄および加硫促進剤を加えて95℃で2分間さらに練り込み、従来法により押出し工程、カレンダー工程を経てブレーカーゴム組成物H−1、H−2を調製した。
注1:天然ゴムは、タイ製の商品名「TSR20」である。
注2:SBR1500はJSR社製のスチレンーブタジエンゴムである。
注3:SBR1502はJSR社製のスチレンーブタジエンゴムである。
注4:ポリブタジエンは宇部興産社製の商品名「BR150B」である。
注5:N220は、昭和キャボット社製のカーボンブラックである(窒素吸着比表面積:111m2/g、DBP吸油量:115ml/100g)。
注6:N330は、三菱化学社製のカーボンブラックである(窒素吸着比表面積:79m2/g、DBP吸油量:105ml/100g)。
注7:シリカVN3は、デグサ社製の商品名「VN3」である。窒素吸着比表面積は210m2/g)である。
注8:シランカップリング剤は、デグサ社製の商品名「Si69」である。
注9:アロマチックオイルは、出光興産社製の商品名「ダイアナプロセスAH−40」である。
注10:ワックスは、大内新興化学社製の商品名「サンノックN」である。
注11:老化防止剤は、住友化学社製の商品名「アンチゲン6C」である。
注12:ステアリン酸は、日本油脂社製の商品名「ステアリン酸 椿」である。
注13:亜鉛華は、三井金属鉱業社製の酸化亜鉛である。
注14:硫黄は、軽井沢製錬社製の商品名「粉末硫黄」である。
注15:加硫促進剤1は、大内新興化学社製の商品名「ノクセラーNS−P」である。
注16:不溶性硫黄は、四国化成社製の商品名「ミュークロンOT20」である。
注17:金属箔は、厚さ10〜50μm、短径0.1〜0.3mm、長径0.2〜0.5mmである。
表1〜表8のゴム配合で調整したゴム組成物を表10に示す組合せでそれぞれ用い、トレッド部、サイドウォール部、ブレーカー、クリンチゴム、チェーファーゴム、導電性ゴム及び通電ゴムに適用し、常法にて加硫成形し、図1に示す構造を有するサイズ195/65R15の空気入りタイヤを作製した。
カーカスプライ
コード角度: タイヤ周方向に90度
コード材料: ポリエステル 1670dtex/2
ブレーカー
コード角度: タイヤ周方向に24度×24度
コード材料: スチールコード(2+2×0.25)
比較例1は、プライゴムに体積固有抵抗の高い配合(B−3)を用いており、比較例2は、図1のタイヤ構造において導電性ゴムおよび通電ゴムを採用しない構造である。比較例3は、図1のタイヤ構造において導電性ゴムを採用しない構造である。比較例4はチェーファーゴムに体積固有抵抗の高い配合(A−3)を用いている。
表1〜表8のゴム組成物を用いて厚さ2mm、15cm×15cmの試験片を作成し、ADVANTEST社製の電気抵抗測定R8340Aを用いて電圧500V、気温25℃、湿度50%の条件で測定した。その結果を表1に示す。値が大きいほどゴム組成物の体積固有抵抗は高い。
上記で作製した空気入りタイヤを正規リムに装着し、規定内圧200KPaを充填して、STL社製の転がり抵抗試験機を用い、速度80km/h、荷重4.7kNで転がり抵抗を測定した。転がり抵抗の測定値を荷重で除した転がり抵抗係数(RRC)につき、比較例1を100として、実施例1、2、比較例2〜4の転がり抵抗を相対値で示した。値が小さいほど転がり抵抗が小さく性能が良好である。結果を表9に示す。
上記で作製した空気入りタイヤを正規リムに装着し、規定内圧200KPaを充填して、荷重4.7kNで鉄板にトレッド部を接地させ、印加電圧100Vにおいてタイヤリム部と鉄板との間の電気抵抗値を測定した。結果を表9に示す。
タイヤの導電性は劣っている。比較例4はチェーファゴムに導電性の低いゴム組成物を用いているのでタイヤの導電性は劣っている。
Claims (5)
- トレッド部と、サイドウォール部と、ビード部と、前記トレッド部から前記サイドウォール部を経て前記ビード部に至るカーカスと、前記カーカスのタイヤ半径方向外側にブレーカー部を備えた空気入りタイヤであって、
前記トレッド部、前記ブレーカー部および前記サイドウォール部にそれぞれ形成されるトレッドゴム、ブレーカーゴムおよびサイドウォールゴムの体積固有抵抗は、いずれも1×108Ω・cm以上であり、
前記空気入りタイヤは、さらに前記ブレーカー両端部の下側領域に配置される導電性ゴム、該導電性ゴムと少なくとも5mmの接触領域を有してブレーカー上側を被覆する被覆ゴム、該被覆ゴムと接触し一部がトレッドの表面に露出するようにトレッド部に埋設される通電ゴム、前記カーカスの下端と接触しビード部のリムフランジに接する領域に配置されるビード部ゴムを備え、
前記カーカスを構成するプライゴム、前記導電性ゴム、前記被覆ゴム、前記通電ゴム及び前記ビード部ゴムには、金属箔もしくは導電性のカーボンブラックが配合され、体積固有抵抗値は、いずれも1×108Ω・cm未満であり、
前記通電ゴムは、少なくともトレッド部の中央部でタイヤ周方向に連続して形成されており、そのタイヤ幅方向の幅Wが0.2mm〜10mmである空気入りタイヤ。 - 前記プライゴム、前記導電性ゴム、前記被覆ゴム、前記通電ゴム及び前記ビード部ゴムは、窒素吸着比表面積が100m2/g以上のカーボンブラックがゴム成分100質量部に対して、30〜100質量部配合されている請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 前記カーカスを構成するプライゴム、前記導電性ゴム、前記被覆ゴムおよび前記通電ゴムは、ゴム成分100質量部に対して、厚みが10〜50μmで短径(D1)が0.1〜0.3mm、長径(D2)が0.2〜0.5mmの金属箔を1〜10質量部配合され、前記ビード部ゴムには導電性のカーボンブラックが配合され、体積固有抵抗値は、いずれも1×108Ω・cm未満である請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 前記ビード部ゴムは、クリンチゴムまたはチェーファーゴムである請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッド部、前記ブレーカー部および前記サイドウォール部にそれぞれ形成されるトレッドゴム、ブレーカーゴムおよびサイドウォールゴムは、ゴム成分100質量部に対してシリカを5質量部以上100質量部以下含む請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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