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JP5107618B2 - ポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤及びそれを用いたポリプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤及びそれを用いたポリプロピレン系樹脂組成物 Download PDF

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JP5107618B2 JP2007167255A JP2007167255A JP5107618B2 JP 5107618 B2 JP5107618 B2 JP 5107618B2 JP 2007167255 A JP2007167255 A JP 2007167255A JP 2007167255 A JP2007167255 A JP 2007167255A JP 5107618 B2 JP5107618 B2 JP 5107618B2
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Description

本発明は、高流動性のプロピレン単独重合体部、および高分子量のプロピレン・エチレンランダム共重合体部を有するプロピレン・エチレンブロック共重合体、該共重合体からなるポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤、及び該ポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤をポリプロピレン樹脂に配合することにより射出成形する際に、成形加工性が良好であり、しかも、成形時のフローマーク特性に優れており、特に、自動車外装部品等の射出成形品に好適なポリプロピレン系樹脂組成物に関する。
ポリプロピレン系樹脂は、軽量でリサイクル性にも優れることから、自動車用部品への需要が高まっている。具体的には、結晶性ポリプロピレン樹脂に、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体等のエチレン系熱可塑性エラストマー成分と、タルク等の無機充填剤を配合したポリプロピレン樹脂組成物が使用されており、ポリプロピレン樹脂や各種エラストマー成分、無機充填剤を目的に応じて、適宜選択することによって、成形性、機械物性、外観などを向上させることが提案されている。
最近は、軽量化された車部品を、より効率よく生産するため、より薄肉な成形品を、より短い成形時間で成形可能なポリプロピレン系樹脂が要望されている。しかしながら、このような製品は、成形時にフローマーク(成形品の表面外観に現れる虎縞(トラシマ)状の模様)等の成形外観不良が発生しやすいという問題が生じ、とりわけ、無塗装部分が外部に露出するデザインのバンパー等の部品では、商品としての意匠性を損なうといった課題があった。
このようなフローマークの改良技術は、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示されている。
特許文献1では、成形体にした場合、フローマークの発生が起こりにくく、ブツの発生の少ない、外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物の提供を課題としており、この解決手段として、極限粘度[η]APが1.3dl/g以下であるプロピレン単独重合体部分と極限粘度[η]AEPが3.0dl/g以下であるプロピレン・エチレンランダム共重合体部分を有するポリプロピレン系樹脂(A)と、[η]BEPが8.0dl/g〜15dl/gとを特定の割合で配合したポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。
特許文献2では、プロピレン重合体のMFRが100〜1000g/10分、プロピレン・エチレン共重合体が全重量体の5〜10wt%のプロピレン・エチレンブロック共重合体の製造方法が開示されている。
特許文献3では、良好な外観を発現し、成形加工に優れたポリプロピレン系樹脂組成物の提供が課題とされており、この解決手段として、特定の物性を有するプロピレン−エチレンブロック共重合体からなる成形性改質剤を使用することが開示されている。具体的には、プロピレン単独重合体部分(結晶成分)のMFRが500g/10分以上であり、プロピレン−エチレンブロック共重合体全体のMFRが100g/10分以上で、ダイスウェル比が1.2〜2.5であるプロピレン−エチレンブロック共重合体が開示されている。
いずれの方法もプロピレン単独重合体部分に低粘度の高MFR成分を有し、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分に高粘度成分を有するものである。高MFRのプロピレン単独重合体部分に起因する低剪断応力化による流動性向上と、高粘度のプロピレン・エチレンランダム共重合体部分に起因する高法線応力化による流動の安定化がフローマークを改良していると考えられている。
本発明者らは、フローマーク特性に代表される成形品外観を、汎用的な樹脂成分に、第3成分として配合することで、コントロールすることのできるポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤を提供することにある。しかしながら、これらの先行技術の公報の樹脂においては、そのフローマーク改良効果は不十分であるため、第3成分として配合し外観をコントロールするには、配合量を多くする必要があるといった問題があった。
その理由としては、プロピレン単独重合体中と、プロピレン・エチレンランダム共重合体の粘度差の格差が不十分であることが挙げられる。粘度差の格差が上げられない原因としては、連鎖移動剤である水素濃度を、それぞれプロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体製造時制御しきれないプロセス上の問題、粘度差の格差が大きくなると、プロピレン単独重合体中に、プロピレン・エチレンランダム共重合体が均一に分散しないゲルが生じることによる。そのため、プロピレン単独重合体のMFR、プロピレン・エチレンランダム共重合体のMFRが制限される。
ゲルの発生がなく、十分なフローマーク改良効果がある樹脂として特許文献4が挙げられる。特許文献4では、プロピレン・エチレンランダム共重合体の成分量が多く半分を超えることで分散不良、ゲルを防止している。具体的には、135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]Aが5dl/g以上でありエチレン含有量が8〜20重量%未満であるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)51〜75重量%と、135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]Bが1.2d/g以下であるプロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体成分(B)25〜49重量%とからなるプロピレン系重合体が開示されている。
しかしながら、この先行技術の公報の樹脂は、樹脂そのもののMFRが極端に低く、第3成分として配合すると配合後のポリプロピレン樹脂組成物の流動性が極端に低下する問題が生じる。
そこで、フローマーク特性に代表される成形品外観を、汎用的な樹脂成分に、第3成分として少量配合することでコントロールすることができ、他物性への影響が少ないポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤が望まれていた。
特開2002−12734号公報 特開平11−80298号公報 特開2004−18647号公報 特開2005−146160号公報
本発明は、上記公知技術およびその問題点に鑑みてなされたものであり、第3成分として配合することで、物性をコントロールすることの出来るポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤として使用可能なプロピレン系ブロック共重合体を提供することにある。本発明の成形性改質剤を配合することによる、自動車外装部品等に好適な、良好な外観を発現し、成形加工性に優れたプロピレン系樹脂組成物、および、その組成物からなる射出成形品を提供することが出来る。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のMFRのプロピレン単独重合体部分および特定のMFR及びエチレン含量を有するプロピレン・エチレンランダム共重合体部分から構成されるプロピレン系ブロック共重合体を、成形性改質剤として少量ポリプロピレン系樹脂に配合することにより、ポリプロピレン系樹脂組成物の成形外観特性、成形性をコントロール出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨とするところは、結晶性プロピレン重合体部分(A)のセグメント70〜95重量%と、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B)のセグメント5〜30重量%とからなり、MFR(メルトフローレート)が10〜98g/10分であることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合(i)
ここで、MFR及び(A)のMFRは、JIS−K−7210、温度230℃、荷重21.18Nに従って測定した値を、(B)のMFRは、段落[0031]に記載されているとおり、MFR 、MFR を測定し、log(MFR A+B )=(100−Wc)/100×log(MFR )+Wc/100×log(MFR )の式に従って算出した値を表す。ここで、Wcはプロピレン系ブロック共重合体中のプロピレン・エチレンランダム共重合体(B)の比率である。
(A)のMFRが500〜893g/10分
(B)のMFRが4.6×10 −7 〜1×10−5g/10分
(B)中のエチレン含量が10〜50重量%。
というブロック共重合体、にある。
また、本発明の他の要旨とするところは、前記のプロピレン系ブロック共重合体(成分(i))からなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤にある。
また、本発明の他の要旨とするところは、前記のプロピレン系ブロック共重合体(成分(i))以外のポリプロピレン系樹脂70〜99重量部(成分(ii))および前記のプロピレン系ブロック共重合体(成分(i))1〜30重量部からなることを特徴とすポリプロピレン系樹脂組成物、にある。
また、本発明の他の要旨とするところは、ポリプロピレン系樹脂(成分(ii))のMFR(JIS−K7210、温度230℃、荷重21.18N)が2g/10分以上100g/10分未満、ダイスウエル比が0.98以上1.2未満、GPC測定により求められる分子量分布(Mw/Mn);Q値が3以上7未満であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物、にある。
また、本発明の他の要旨とするところは、プロピレン系ブロック共重合体(成分(i))とポリプロピレン系樹脂(成分(ii))の合計100重量部に対して、さらに(iii)エチレン系又はスチレン系エラストマー(成分(iii))1〜40重量部配合してなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物、にある。
さらに、ポリプロピレン系樹脂(成分(ii))がプロピレン・エチレンブロック共重合体であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物、にある。
また、本発明の他の要旨とするところは、プロピレン系ブロック共重合体(成分(i))とポリプロピレン系樹脂(成分(ii))の合計100重量部に対して、さらに無機充填剤(成分(iv))を1〜70重量部配合することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物、にある。
また、本発明の他の要旨とするところは、エチレン系又はスチレン系エラストマー(成分(iii))のメルトフローレート(JIS−K7210、温度230℃、荷重21.18N)が、0.3〜150g/10分であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物、にある。
また、本発明の他の要旨とするところは、
無機充填剤(成分(iv))が、タルクであることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物、にある。
また、本発明の他の要旨とするところは、
結晶性プロピレン重合体部分(A)成分を製造する前段の重合工程(a)と、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B)成分を製造する後段の重合工程(b)とを含む少なくとも2段工程からなるセミバッチ法でプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法において、前段の重合工程(a)は、水素とプロピレンとを反応器中に供給し、触媒の存在下に、プロピレンに対する水素濃度を経時的に低下させながらプロピレンを重合させ、結晶性プロピレン重合体が得られたときは、未反応ガス中の水素とプロピレンとのガス濃度比(H/C)を0.1モル比以下に保持し、後段の重合工程(b)ではプロピレンの供給量を経時的に低下、またエチレンの供給量は経時的に上昇させながら供給することを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法、にある。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、高MFRのプロピレン単独重合体と、極端に低MFRのプロピレン・エチレンランダム共重合体を有し、第3成分として配合することで、成形時のフローマーク等の成形外観不良を防止出来るポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤として使用可能で、本発明の成形性改質剤を用い、自動車外装部品等に好適な、良好な外観を有し、成形加工性に優れた、プロピレン系樹脂組成物を提供することが出来る。また、本発明のプロピレン系ブロック共重合体は工業的に、効率良く、セミバッチ法によって容易に製造できる。
(1)プロピレン系ブロック共重合体(i)。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体(i)(「成分(i)」ともいう。)とは、MFR(メルトフローレート)が500〜893g/10分である結晶性プロピレン重合体部分(A)のセグメントと、エチレン含量が10〜50重量%であり、MFRが4.6×10 −7 〜1×10−5g/10分のプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B)のセグメントとからなり、MFRが10〜98g/10分であることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体である。このブロック共重合体の特徴は、結晶性プロピレン重合体部分(A)のセグメントのMFRが500〜893g/10分と、溶融流れが非常に高く、成形用型内の流動を向上させる特徴を有する。一方で、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B)のセグメントは、MFRが4.6×10 −7 〜1×10−5g/10分という、非常に流動性が低い。
一つのプロピレン系ブロック共重合体と認識できる重合体に、MFRが非常に高い値を有するセグメントと、MFRが非常に低い値を有するセグメントとが混在する重合体でありながら、全体としてMFRが10〜98g/10分というような、極端にMFRに格差の大きいセグメントを備えた共重合体を製造することは、両成分のMFR制御、ゲル等の問題から難しく、あまり着想されてこなかった。今回、本発明者らは、新規の重合方法で製造が可能となったものである。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体(i)は、その重合工程を考察すれば、前段で予め結晶性プロピレン重合体部分(A)を重合して、その触媒活性点に、次いで後段でプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B)を重合する操作を経る。そのため、両者が結合したブロック共重合体のような構造のもの(リアルブロック)が存在することが期待できるが、実際は、いわゆるブロック共重合体以外にも、結晶性プロピレン重合体部分(A)だけのもの、或いは、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B)だけのものも混在すると考えられるが、ここでは当業種の慣習からプロピレン系ブロック共重合体と記述する。なお、本発明の如きポリマーはインパクトコポリマー(ICP)とも称される。
(2)ポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤
本発明のポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤は、前記の流動性に優れる結晶性プロピレン重合体部分(A)、及び、極めて低MFRであるプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B)を含有するプロピレン系ブロック共重合体(i)を、ポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤という特定の用途に供することにより、その有意性を知見したものである。ポリプロピレン系樹脂(ii)(「成分(ii)ともいう。)の成形性を改良する為に、それに配合するプロピレン系ブロック共重合体(成分(i))からなる成形性改質剤をブレンドすることにより、成形性の問題点を解決することができたものである。このように、MFRの格差の大きいセグメントからなるプロピレン系ブロック共重合体(成分(i))が、ポリプロピレン系樹脂(ii)のフローマーク改良効果というような、成形性を改善するという作用効果を奏する。このような知見は先行技術にも見られるが、その効果は十分なものとは言えなかった。
このような成形性改質の効果は、ポリプロピレン系樹脂(ii)に、プロピレン系ブロック共重合体(i)を1〜30重量部を添加すれば足りる。これは、通常のブレンド量からすれば、非常に少ない配合量で足りるということである。この特性は、他の添加剤、例えば、エラストマー(成分(iii))、無機充填剤(成分(iv))、任意成分(成分(v))からなる各種配合剤を、ポリプロピレン系樹脂(ii)に配合しても、その配合剤の有無、配合量の増減があっても、成形性の作用効果が発現する。
成形性改質剤を構成する結晶性プロピレン重合体部分(A)は1段重合であっても、多段重合であってもかまわない。また、そのMFRは、500g/10分以上、好ましくは600g/10分以上、更に好ましくは700g/10分以上である。下限値を下まわると流動性が低下するため、低剪断応力化によるフローマーク改良効果が得られず不都合である。上限は特にないが、第3成分として配合した後のポリプロピレン系樹脂のMFR、物性への影響見合い等で決定される。
結晶性プロピレン重合体部分のMFRは、結晶性プロピレン重合体部分の重合を終えた時のMFRであり、多段重合を行う場合には、最終の重合を終えた時点のMFRである。
また、結晶性プロピレン重合体製造時は、重合すべきモノマー成分として、通常プロピレンのみが使用され、プロピレンホモ重合体が製造されるが、本発明の目的を損なわない範囲で少量の共重合モノマー成分を使用できる。かかるモノマーとしてはエチレン、ブテンなどのα−オレフィンがあげられる。その使用量はプロピレンに対して3重量%未満、好ましくは1重量%未満とする。
成形性改質剤を構成するプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B)は1段重合であっても、多段重合であってもかまわない。また、そのMFRは、10−5g/10分以下、好ましくは5×10−6g/10分以下、更に好ましくは10−6g/10分以下である。上限値を上まわると高法線応力化によるフローマーク改良効果が得られず不都合である。下限は特にないが、第3成分として配合した後のポリプロピレン系樹脂のMFR、物性への影響見合い等で決定される。
プロピレン・エチレンランダム共重合体部分のMFRは、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分の重合を終えた時のMFRであり、プロピレン・エチレンランダム共重合を多段重合で行う場合には、最終の重合を終えた時点のMFRである。プロピレン・エチレンランダム共重合体部分のMFRは、直接測定することは不可能のため、MFR、MFRを測定し、以下の式により算出する。
log(MFRA+B)=(100−Wc)/100×log(MFR)+Wc/100×log(MFR
ここで、Wcはプロピレン系ブロック共重合体中のプロピレン・エチレンランダム共重合体(B)の比率であり、後述する方法により求められる。
また、プロピレン・エチレンランダム共重合体は、重合すべきモノマー成分として、通常プロピレン、エチレンのみが使用され、プロピレン・エチレンランダム共重合体が製造されるが、本発明の目的を損なわない範囲で少量の他の共重合モノマー成分を使用できる。かかるモノマーとしてはブテンなどのα−オレフィンがあげられる。
プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B)のエチレン含量は、10〜50重量%であり、好ましくは12〜40重量%、更に好ましくは15〜30重量%である。上限値を上まわる、あるいは下限値を下まわる場合はプロピレン・エチレンランダム共重合体部分のMFRが十分に低下せず、フローマーク改良効果が得られず不都合である。
プロピレン・エチレンブロック共重合体(成形性改質剤)のMFRは、10〜100g/10分であり、好ましくは30〜100g/10分、更に好ましくは50〜100g/10分である。上限値を上まわると第3成分として配合した後のポリプロピレン系樹脂のMFRが高くなりすぎ、その結果物性低下を招く、また工業的に従来最も一般的に使用されている水中カット造粒装置で造粒し難いため不都合である。下限値を下まわると逆に第3成分として配合した後のポリプロピレン系樹脂のMFRが低くなりすぎ、成形性の低下を招くため不都合である。
本発明の方法に係るプロピレン系ブロック共重合体は、(A)成分のプロピレン系ブロック共重合体中の構成割合は、70〜95重量%であり、好ましくは75〜93重量%、更に好ましくは80〜90重量%である。(B)成分の構成割合は、5〜30重量%であり、好ましくは7〜25重量%であり、更に好ましくは10〜20重量%である。(A)成分の割合が上限値を上まわる((B)成分の割合が下限値を下まわる)と、十分なフローマーク改良効果が得られず不都合である。(A)成分の割合が下限値を下まわる((B)成分の割合が上限値を上まわる)と、プロピレン系ブロック共重合体のMFRが低下し、第3成分として配合した後のポリプロピレン系樹脂のMFRも低くなりすぎ、成形性の低下を招くため不都合である。
本発明の方法に係るプロピレン系ブロック共重合体には、必要に応じて従来のポリオレフィンに用いられている公知の酸化防止剤や中和剤、帯電防止剤および耐候剤等を添加してもよい。
本発明の方法に係るプロピレン系ブロック共重合体は、単一の反応器を用いるセミバッチ法で製造することができる。以下、単一の反応器に重合溶媒、重合触媒及び水素を仕込み、プロピレン、水素を連続的に供給し結晶性プロピレン重合体を製造、一度反応器ガスをパージし、次いでプロピレン、エチレンを連続的に供給しプロピレン・エチレンランダム共重合体を製造、取り出すセミバッチ法での製造について説明する。
(i)重合用反応器
重合用の反応器としては、特に形状、構造を問わないが、スラリー重合、バルク重合で一般に用いられる攪拌機付き槽や、チューブ型反応器、気相重合に一般に用いられる流動床反応器、攪拌羽根を有する横型反応器などが挙げられる。単一の反応器を用いる重合方法では、重合過程全体を通して、これらから選ばれる一つの反応器を用いて重合を行う。
(ii)重合触媒
本発明の製造方法に用いられる重合触媒は、その必要とする全量を重合開始時に存在させ、重合当初から重合に関与させることが必要であるため、重合開始後、新たに触媒を追加することはしない。重合開始後、触媒を新たに追加すると、追加した触媒で重合したパウダーは結晶性プロピレン重合体に対するプロピレン・エチレンランダム共重合体の割合が高く、パウダー性状の悪化や、ゲル発生の原因となる。また結果的に触媒投入量が増加、触媒活性が低下するため、触媒コストの増加、重合体中の触媒残渣の増加などの面からも不都合であり、本発明の効果を奏することはできない。
本発明の製造方法に用いられる重合触媒の種類としては、特に限定されるものではなく、公知の触媒が使用可能である。例えば、チタン化合物と有機アルミニウムを組み合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒、あるいは、メタロセン触媒(例えば、特開平5−295022)が使用できる。ゴム成分の固有粘度が高い方が改質剤として添加した際成形外観改良効果が高いこと、つまり、分子量が高い、高粘度のプロピレン・エチレンランダム共重合体成分がフローマークを改良させる効果があるため、一般的に重合時連鎖移動の少ないチーグラー・ナッタ触媒がより好ましい。チーグラー・ナッタ触媒は、チタン化合物として有機アルミニウム等で還元して得られた三塩化チタンまたは三塩化チタン組成物を電子供与性化合物で処理し更に活性化したもの(例えば特開昭47−34478、特開昭58−23806、特開昭63−146906)、塩化マグネシウム等の担体に四塩化チタンを担持させることにより得られるいわゆる担持型触媒(例えば、特開昭58−157808、特開昭58−83006、特開昭58−5310、特開昭61−218606)等が含まれる。これらの触媒は特に制限なく公知の触媒が使用可能である。
また、助触媒として有機アルミニウム化合物を使用する。例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのアルキルアルミニウムハライド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド、メチルアルモキサン、テトラブチルアルモキサンなどのアルモキサン、メチルボロン酸ジブチル、リチウムアルミニウムテトラエチルなどの複合有機アルミニウム化合物などが挙げられる。また、これらを2種類以上混合して使用することも可能である。
また、上述の触媒には、立体規則性改良や粒子性状制御、可溶性成分の制御、分子量分布の制御等を目的とする各種重合添加剤を使用することが出来る。例えば、ジフェニルジメトキシシラン、tert−ブチルメチルジメトキシシランなどの有機ケイ素化合物、酢酸エチル、安息香酸ブチル、p−トルイル酸メチル、ジブチルフタレートなどのエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、安息香酸、プロピオン酸などの有機酸類、エタノール、ブタノールなどのアルコール類等の電子供与性化合物を挙げることができる。
(iii)重合形式及び重合溶媒
重合形式としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン若しくはトルエン等の不活性炭化水素を重合溶媒として用いるスラリー重合、プロピレン自体を重合溶媒とするバルク重合、また原料のプロピレンを気相状態下で重合する気相重合が可能である。また、これらの重合形式を組み合わせて行うことも可能である。
例えば、結晶性プロピレン重合体をバルク重合で行い、プロピレン・エチレンランダム共重合体を気相重合で行う方法や、結晶性プロピレン重合体をバルク重合と続いて気相重合で行い、プロピレン・エチレンランダム共重合体は気相重合で行う方法などが挙げられる。
本発明においては、結晶性プロピレン重合体は高MFRのため水素濃度が高く、プロピレン・エチレンランダム共重合体もエチレン濃度が比較的高いため、プロピレンが液化し難く、バルク重合で行うには圧力をより高くする必要がある。そのため、スラリー重合、気相重合が好ましい。
(iv)重合添加剤
重合添加剤は、触媒との組み合わせにもよるが、三塩化チタン触媒に安息香酸ブチルといった芳香族エステルを添加したケースがより水素の消費が多いため、添加することが好ましい。
(v)重合圧力
セミバッチ重合においては、結晶性プロピレン重合体製造時、重合圧力を一定で行うことも随時変化させることも可能である。重合圧力を高く設定すると触媒活性を高く出来る利点がある一方、回収する未反応のプロピレンが増加する不利益があるため、0.2〜5MPa、好ましくは0.3〜2MPa程度で実施するのが好ましい。
また、プロピレン・エチレンランダム共重合体製造時も、重合圧力を一定で行うことも随時変化させることも可能である。本発明のプロピレン系ブロック共重合体を得るためには、0.1〜0.2MPa程度で実施するのが好ましい。
(vi)重合温度
本発明は、重合温度に関しては特に限定されないが、通常20〜100℃、好ましくは40〜80℃の範囲から選択される。この重合温度は重合開始時と重合終了時において同一でも異なっていても良い。
(vii)重合時間
本発明の方法において、重合時間も特に限定されないが、通常30分〜10時間で実施される。一般に、結晶性プロピレン重合体製造は、気相重合で2〜5時間、バルク重合で30分〜2時間、スラリー重合で4〜8時間を標準とし、プロピレン・エチレンランダム共重合体は、気相重合で1〜3時間、バルク重合で20分〜1時間、スラリー重合で1〜3時間を標準とする。
(viii)結晶性プロピレン重合体部分の製造
上記少なくとも2段の逐次の多段重合工程においては、前段の重合工程で、プロピレン及び連鎖移動剤として水素を供給して、前記触媒の存在下でプロピレン単独重合を行い、結晶性プロピレン重合体部分を製造する。
この際、本発明のプロピレン系ブロック共重合体における、結晶性プロピレン重合体部分のMFRを、500g/10min以上にするためのみならず、次いで行われる後段の重合工程においてプロピレン・エチレンランダム共重合体部分のMFRを10−5以下にする必要がある。そのためには、前段の重合工程において、水素とプロピレンとを反応器中に供給し、触媒の存在下に、プロピレンに対する水素濃度を経時的に低下させながらプロピレンを重合させ、結晶性プロピレン重合体が得られたときは、未反応ガス中の水素とプロピレンとのガス濃度比(H/C)を0.1モル比以下に保持することが必要である。
前段の重合工程終了時に、未反応ガス中における水素とプロピレンのガス濃度比(H/C)を制御する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
つまり、前記のとおり、セミバッチ重合においては、結晶性プロピレン重合体製造時、重合圧力を一定で行うことも随時変化させることも可能であるため、未反応ガス中の水素とプロピレンのガス濃度比(H/C)を低下させる方法としては、(i)プロピレンの供給量は一定に保ち、水素の供給量を減少させる方法、(ii)重合圧力を一定にして、プロピレンの供給量を増加させ、水素の供給量を減少させる方法、(iii)プロピレンと水素両方の供給量を減少させる方法、及び(iv)プロピレンと水素両方の供給量を増加させる方法等が挙げられるが、本発明においては、制御の簡易さから、(ii)重合圧力を一定にして、プロピレンの供給量を増加させ、水素の供給量を減少させる方法、つまり、反応器に供給する水素とプロピレンの比(H/C)を漸次低下させながら行う方法が好ましい。
また、バッチ重合においては、製造前に必要量の大半を仕込み、水素の消費速度を調整することにより、未反応ガス中における水素とプロピレンのガス濃度比(H/C)が0.1モル比以下となるように制御をすることができる。
水素の消費は、触媒、重合添加剤の有無、重合時間などにより変化するが、本発明において、結晶性プロピレン重合体製造終了時の水素濃度を低く抑えるためには、水素の消費速度がより大きい方が好ましい。水素の消費速度の点から、触媒については、一般にメタロセン触媒よりもチーグラー触媒が、チーグラー触媒の中でも、いわゆる塩化マグネシウム担持型触媒よりも、三塩化チタン型がより水素の消費が多いため、好ましい。
このようにして、水素量を制御し、前段の重合工程(a)の終了時に、未反応ガス中の水素、プロピレンのガス濃度比(H/C)が0.1モル比以下、好ましくは0.09モル比以下、より好ましくは0.08モル比以下となるように行う必要がある。上限値以上だと、次いで行われるプロピレン・エチレンランダム共重合体製造時に水素を持ち込み、高粘度の共重合体を得られず不都合である。
結晶性プロピレン重合体に必要な水素の供給タイミングとしては、製造前に必要量の大半を仕込むことが好ましい。また、セミバッチ重合時には、プロピレンに対する水素の供給量は徐々に低下させることができる。そうすることで、プロピレンの反応器内の平均滞留時間に対し、水素の平均滞留時間を長く取ることが出来、水素はより効率的に使用され、供給量を低下することが出来、また結果的に水素濃度も最終的に低く抑えることが出来る。また、水素はプロピレン重合終了時に供給されていてもよく、また供給を停止していてもよい。水素供給が停止する場合は、プロピレン重合終了時と同時に供給停止してもよく、重合途中の段階で供給が停止となってもよい。
図1は、プロピレンに対する水素供給が単調低下する実施態様例を模式的に示すものである。横軸(α)はプロピレン重合開始時、(β)は重合終了時を示し、縦軸はプロピレンに対する水素供給量を示す。図1の(1)及び(2)は直線状に低下する場合、(3)〜(5)は曲線状に低下する場合、(6)は断続的に低下する場合を示す。
本発明において、水素供給量の態様のうち、好ましい態様を適宜選択することができるが、工程管理の簡易さから、図1の(1)に示すような、水素供給量が直線状に低下する態様が好ましい。
(ix)プロピレン・エチレンランダム共重合体部分の製造
前段の重合工程(a)において、プロピレンを連続的に供給し結晶性プロピレン重合体を製造し、一度反応器ガスをパージした後、引き続いて、後段の重合工程(b)において、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分を製造する。
後段の重合工程(b)では、プロピレン、エチレンと水素を連続的に供給して、前記触媒(前記前段の重合工程(a)(第1段目)で使用した当該触媒)の存在下にプロピレンとエチレンのランダム共重合を行い、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分を製造し、最終的な生成物として、プロピレン系ブロック共重合体を得る。
この際、本発明のプロピレン系ブロック共重合体におけるプロピレン・エチレンランダム共重合体部分のMFRが10−5以下にする必要があるため、プロセス、触媒の種類にもよるが、連鎖移動剤の水素を比較的低い濃度に調整しMFRをコントロールする必要がある。
プロピレン・エチレンランダム共重合体の製造時は、原則として水素供給はしないが、得られるプロピレン・エチレンランダム共重合体のMFRを微妙に調節する目的で少量供給することができる。水素を供給し過ぎるとMFRが上昇し、フローマーク改良効果が得られない。
また、さらにプロピレン・エチレンランダム共重合体部分を製造時は、プロピレンの供給量は経時的に低下させ、一方、エチレンの供給量は経時的に上昇させながら供給することが必要である。そうすることで、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分のMFRを10−5以下に低下することが可能となる。これは、重合工程(a)から重合工程(b)に、多少なりとも連鎖移動剤の水素を持ち込むが、重合工程(b)の初期には消費され、水素がほとんどない重合後期においてエチレン濃度が高くなることで、連鎖移動に対する重合速度が向上、更なる分子量向上、MFRの低下が可能となったためと考えている。
2.ポリプロピレン系樹脂組成物
(i)成分:成形性改質剤
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物における(i)成分は、良好なフローマーク外観を発現させる目的で用いられ、上記のポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤を用いる。この成形性改質剤は、極めて流動性に優れるプロピレン単独重合体、及び、極めて分子量が大きなプロピレン・エチレン共重合体からなり、両者を兼ね備えることによりその性能が達成される。
(ii)成分:ポリプロピレン系樹脂(ii)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物におけるポリプロピレン系樹脂(ii)(「成分(ii)」ともいう。)は、ポリプロピレン系樹脂組成物の主成分であり、骨格となる樹脂成分である。ポリプロピレン系樹脂(ii)としては、主にプロピレン・エチレンブロック共重合体が使用されるが、その製法は特に限定されず、公知の製造方法がいずれも適用で、また市販品をそのまま利用することができる。これらの中でも、次のようなプロピレン・エチレンブロック共重合体が好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(ii)としては、結晶性ポリプロピレン部(A単位部)とプロピレン・エチレンランダム共重合体部(B単位部)とを含有するブロック共重合体が好ましい。上記A単位部は、通常プロピレンの単独重合、場合によってはプロピレンに少量の他のα−オレフィンを共重合することによって得られる結晶性の重合体であり、その密度は高いことが好ましい。A単位部の結晶性は、アイソタクチック指数(沸騰n−ヘプタン抽出による不溶分)として、通常90%以上、好ましくは95〜100%である。結晶性が小さいとポリプロピレン系樹脂(B)の機械的強度、特に曲げ弾性率に劣るものとなる。
一方、上記B単位部はプロピレンとエチレンとのランダム共重合によって得られるゴム状成分である。A単位部は、通常全重合量の50〜95重量%、好ましくは60〜90重量%、B単位部は、通常全重合量の5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%となるように調整される。A単位部は、オルトジクロルベンゼンによる抽出において、100℃以下で溶出しないが、B単位部は容易に溶出する。従って、製造後の重合体に対しては、上記したオルトジクロルベンゼンによる抽出分析によりポリプロピレン系樹脂(ii)の組成を判定することができる。
本発明の組成物で用いるポリプロピレン系樹脂(ii)の、MFRは、2g/10分以上100g/10分未満が好ましく、より好ましくは、10〜80g/10分である。MFRが2g/10分未満であると、成形性が劣り、100g/10分を超えると耐衝撃性が低下するので好ましくない。
本発明の組成物で用いるポリプロピレン系樹脂(ii)の、ダイスウエル比は、0.98以上1.2未満が好ましく、より好ましくは、1.0 以上1.2未満である。ダイスウエル比が0.9未満であると、成形加工性が悪化する傾向があり、1.2を超えると汎用的な製造プロセスにおいて安価に製造することが困難となる傾向がある。
なお、本発明の組成物で用いるポリプロピレン系樹脂(ii)のダイスウエル比は、ポリプロピレン系樹脂(ii)を、190℃の加熱シリンダーに挿填した後、6分間加熱保持し、直径1mm
、長さ8mmのオリフィスから0.1g/分の速度で押し出して、そのストランド径を測定し、ストランド直径/オリフィス直径により算出し求めた値である。
本発明の組成物で用いるポリプロピレン系樹脂(ii)のQ値は、3以上7未満が好ましく、より好ましくは、3.5〜6.5である。Q値が3未満であると、成形加工性や衝撃特性が低下する傾向があり、7を超えると汎用的な製造プロセスにおいて安価に製造することが困難となる傾向がある。
上記ポリプロピレン系樹脂(ii)の製造は、高立体規則性触媒を用いて重合する方法が好ましく用いられる。触媒及び重合方法としては、前述したプロピレン系ブロック共重合体の成形性改質剤の製造法と同様の手法が用いられる。プロピレン・エチレンランダム共重合体部(B単位部)の多いポリプロピレン系樹脂(ii)の製造においては、特に気相流動床法が好ましい。また、後段反応において新たに電子供与体化合物を添加することにより、粘着、閉塞のトラブルを回避し、重合の操作性を改良することができる。
(iii)成分:エラストマー(iii)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物においては、必要に応じて、エラストマー(iii)(「成分(iii)」ともいう。)を配合することができる。
エラストマー成分(iii)の具体例としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合エラストマー(エチレンプロピレンゴム;EPR)、エチレン・ブテン共重合エラストマー(EBR)、エチレン・ヘキセン共重合エラストマー(EHR)、エチレン・オクテン共重合エラストマー(EOR)等のエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー;エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・イソプレン共重合体等のエチレン・α−オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマー(EPDM);スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック体(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック体の水素添加物(SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック体の水素添加物(SEPS)等のスチレン系エラストマーなどが使用できる。
なお、上記したスチレン・ブタジエン・スチレントリブロック体の水素添加物は、ポリマー主鎖をモノマー単位でみると、スチレン−エチレン−ブテン−スチレンとなるので、通常、SEBSと略称されるものである。
また、これらのエラストマー成分(iii)は、2種類以上を混合して使用することができる。
上記エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーは、各モノマーを触媒の存在下重合することにより製造される。触媒としては、ハロゲン化チタンのようなチタン化合物、アルキルアルミニウム−マグネシウム錯体、のような有機アルミニウム−マグネシウム錯体、アルキルアルミニウム、又はアルキルアルミニウムクロリド等のいわゆるチーグラー型触媒、WO−91/04257号公報等に記載のメタロセン化合物触媒を使用することができる。重合法としては、気相流動床、溶液法、スラリー法等の製造プロセスを適用して重合することができる。市販品を例示すれば、ジェイエスアール社製EDシリーズ、三井化学社製タフマーPシリーズ及びタフマーAシリーズ、デュポンダウ社製エンゲージEGシリーズなどを挙げることができ、これらはいずれも本発明において使用することができる。
上記スチレン系エラストマーにおけるトリブロック共重合体の水素添加物(SEBS、SEPS)の製造法の概要を述べる。これらのトリブロック共重合体は、一般的なアニオンリビング重合法で製造することができ、逐次的にスチレン、ブタジエン、スチレンを重合しトリブロック体を製造した後に、水添する方法(SEBSの製造方法)と、スチレン−ブタジエンのジブロック共重合体をはじめに製造した後、カップリング剤を用いてトリブロック体にした後に、水添する方法がある。また、ブタジエンの代わりにイソプレンを用いることによってスチレン−イソプレン−スチレントリブロック体の水素添加物(SEPS)も同様に製造することができる。
本発明の組成物で用いるエラストマー成分(iii)のMFRは、0.5〜150g/10分が好ましく、より好ましくは0.7〜100g/10分、特に好ましくは0.7〜80g/10分である。本発明の主要用途である自動車外装材を考慮した場合、MFRが上記の範囲であるものが特に好ましい。
(iv)成分:無機充填剤(iv)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物においては、必要に応じて、無機充填剤(iv)(「成分(iv)」ともいう。)を配合することができる。成分(iv)は、曲げ弾性率を向上させ、線膨張係数を低下させるために使用する。本発明の無機充填剤としては、組成、形状等は特に限定されない。ポリマー用充填剤として市販されているものはいずれも使用できる。
具体的には、タルク、マイカ、モンモリロナイト等の板状無機充填剤、短繊維ガラス繊維、長繊維ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、ゾノライト等の繊維状無機充填剤、チタン酸カリウム、マグネシウムオキシサルフェート、窒化珪素、ホウ酸アルミニウム、塩基性硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、ワラストナイト、炭酸カルシウム等の針状(ウイスカー)無機充填剤、沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の粒状無機充填剤、ガラスバルーンのようなバルン状無機充填剤が例示される。その中でも、物性・コスト面のバランスより、タルクが特に好ましい。
充填剤として好ましいタルクを使用する場合は、その平均粒径が10μm以下、好ましくは0.5〜8μmであるものが好ましい。
該平均粒径は、レーザー回折法(例えば堀場製作所製LA920W)や、液層沈降方式光透過法(例えば、島津製作所製CP型等)によって測定した粒度累積分布曲線から読みとった累積量50重量%の粒径値より求めることができる。本発明の実施例での測定値は、前者の方法にて行ったものである。
これらタルクは、天然に産出されたものを機械的に微粉砕化することにより得られたものを、更に精密に、1回又は複数回分級することによって得られる。粉砕機しては、ジョークラシャ−、ハンマークラシャ−、ロールクラシャー、スクリーンミル、ジェット粉砕機、コロイドミル、ローラーミル、振動ミル等を用いることができる。
これらの粉砕されたタルクは、本発明で示される平均粒径に調節するために、サイクロン、サイクロンエアセパレーター、ミクロセパレーター、サイクロンエアセパレーター、シャープカットセパレター、等の装置で1回又は繰り返し湿式又は乾式分級する。特定の粒径に粉砕した後シャープカットセパレターにて分級操作を行うことが好ましい。
これらのタルクは、重合体との接着性或いは分散性を向上させる目的で、各種の有機チタネート系カップリング剤、有機シランカップリング剤、不飽和カルボン酸、又はその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル等によって表面処理したものを用いてもよい。
(v)付加的成分(任意成分)(v)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物中には、上記成分(i)〜(iv)以外に、さらに、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、他の付加的成分(任意成分)(v)(「成分(v)」ともいう。)を添加することができる。
この様な付加的成分(任意成分)(v)としては、フェノール系及びリン系の酸化防止剤、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の耐候劣化防止剤、有機アルミニウム化合物、有機リン化合物等の核剤、ステアリン酸の金属塩に代表される分散剤、キナクリドン、ペリレン、フタロシアニン、酸化チタン、カーボンブラック等の着色物質、を例示できる。
3.ポリプロピレン系樹脂組成物の配合量比
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上記成分(i)〜(v)を適宜に組み合わせて製造される。代表的には、成分(i)と成分(ii)の組成物、成分(i)と成分(ii)と成分(iii)の組成物、成分(i)と成分(ii)と成分(iv)の組成物、成分(i)と成分(ii)と成分(iii)と成分(iv)の組成物などであり、更に通常成分(v)が配合される。
成分(i)と成分(ii)の組成物における配合比にあっては、成分(i)からなる成形性改質剤は、1〜30重量部、好ましくは2〜25重量%
、特に好ましくは3〜20重量%であり、ポリプロピレン系樹脂(ii)は、70〜99重量部、好ましくは75〜98重量% 、特に好ましくは80〜97重量%である。成分(i)からなる成形性改質剤が1重量部未満であると成形外観改良効果が劣り、逆に30重量部を超えると耐衝撃性が劣る。
成分(i)と成分(ii)と成分(iii)の組成物における配合比にあっては、成分(i)と成分(ii)の配合比は上記と同一であり、成分(iii)は、成分(i)及び成分(ii)の合計100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、より好ましくは2〜30重量部であり、特に好ましくは3〜20重量部である。成分(iii)が1重量部未満であると添加効果が充分発揮されず、逆に40重量部を超えると剛性低下が懸念され、またコスト的にも問題がある。しかし目的、用途によっては各種の配合があり、エラストマーの種類により、上記に限定されるものではなく、用途や目的に応じて選択することも重要である。
成分(i)と成分(ii)と成分(iv)の組成物における配合比にあっては、成分(i)と成分(ii)の配合比は上記と同一であり、成分(iv)は、成分(i)及び成分(ii)の合計100重量部に対して、1〜70重量部が好ましく、より好ましくは2〜50重量部であり、特に好ましくは5〜40重量部である。成分(iv)の無機充填剤が1重量部未満であると添加効果が充分発揮されず曲げ弾性率が不足し、逆に70重量部を超えると脆化温度が悪化し、成形性も低下する。
成分(i)と成分(ii)と成分(iii)と成分(iv)の組成物における配合比にあっては、成分(i)と成分(ii)は上記と同一であり、成分(iii)は、成分(i)及び成分(ii)の合計100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、より好ましくは2〜30重量部であり、特に好ましくは3〜20重量部である。また、成分(iv)は、成分(i)、成分(ii)及び成分(iii)の合計100重量部に対して、1〜70重量部が好ましく、より好ましくは2〜50重量部であり、特に好ましくは5〜40重量部である。
4.ポリプロピレン系樹脂組成物の製造
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造は、上記の各構成成分を、上記の割合で、押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等通常の混練機を用いて、設定温度180℃〜250℃にて混練することにより製造できる。これらの混練機の中でも、押出機、特に二軸押出機を用いて製造することが好ましい。
5.ポリプロピレン系樹脂組成物の成形加工
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、所望の成型品に加工される。成形加工法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて各種の成形方法で成形できる。例えば、射出成形法、押出成形法など適用できるが、大型射出成形法に適用した場合、成形加工性、フローマーク特性、ウエルド外観などに優れ、効果が大きい。従って、バンパー、ロッカーモール、サイドモール、オーバーフェンダーをはじめとする自動車外装部品の用途に好適である。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例において行った分析、および評価方法は以下の通りである。
1.メルトフローレート(MFR)
JIS−K−7210、温度230℃、荷重21.18Nに従って測定した(単位:g/10分)。
2.分子量分布(Mw/Mn)
以下に示す装置及び条件によるGPC測定により求めた。
装置:ウォーターズ社製、GPC150C型
カラム:昭和電工社製、AD80M/S、3本
測定温度:140℃
濃度:20mg/10ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
3.プロピレン系ブロック共重合体の物性の分析法
本発明で用いるプロピレン系ブロック共重合体中のプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(以下ゴム成分ということがある。)の比率(Wc)、及びゴム成分中のエチレン含量、固有粘度の測定は、下記の装置、条件を用い、下記の手順で測定する。
(1)使用する分析装置
(i)クロス分別装置
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100(CFCと略す)
(ii)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析
FT−IR、パーキンエルマー社製 1760X
CFCの検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用する。CFCから溶出した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定の間を通じて140℃に温度保持する。FT−IRに取り付けたフローセルは光路長1mm、光路幅5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持する。
(iii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
CFC後段部分のGPCカラムは、昭和電工社製AD806MSを3本直列に接続して使用する。
(2)CFCの測定条件
(i)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(ii)サンプル濃度:4mg/mL
(iii)注入量:0.4mL
(iv)結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
(v)分別方法:
昇温溶出分別時の分別温度は40、100、140℃とし、全部で3つのフラクションに分別する。なお、40℃以下で溶出する成分(フラクション1)、40〜100℃で溶出する成分(フラクション2)、100〜140℃で溶出する成分(フラクション3)の溶出割合(単位:重量%)を各々W40、W100、W140と定義する。W40+W100+W140=100である。また、分別した各フラクションは、そのままFT−IR分析装置へ自動輸送される。
(vi)溶出時溶媒流速:1mL/分
(3)FT−IRの測定条件
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を行い、上述した各フラクション1〜3について、GPC−IRデータを採取する。
(i)検出器:MCT
(ii)分解能:8cm−1
(iii)測定間隔:0.2分(12秒)
(iv)一測定当たりの積算回数:15回
(4)測定結果の後処理と解析
各温度で溶出した成分の溶出量と分子量分布は、FT−IRによって得られる2945cm−1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求める。溶出量は各溶出成分の溶出量の合計が100%となるように規格化する。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式([η]=K×Mα)には以下の数値を用いる。
(i)標準ポリスチレンを使用する較正曲線作成時
K=0.000138、α=0.70
(ii)プロピレン系ブロック共重合体のサンプル測定時
K=0.000103、α=0.78
各溶出成分のエチレン含有量分布(分子量軸に沿ったエチレン含有量の分布)は、FT−IRによって得られる2956cm−1の吸光度と2927cm−1の吸光度との比を用い、ポリエチレンやポリプロピレンや13C−NMR測定等によりエチレン含有量が既知となっているエチレン−プロピレンラバー(EPR)及びそれらの混合物を使用して予め作成しておいた検量線により、エチレン含有量(重量%)に換算して求める。
(5)プロピレン・エチレンランダム共重合体部分の比率(Wc)
本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体中のプロピレン・エチレンランダム共重合体部分の比率(Wc)は、下記式(I)で理論上は定義され、以下のような手順で求められる。
Wc(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/B100 …(I)
式(I)中、W40、W100は、上述した各フラクションでの溶出割合(単位:重量%)であり、A40、A100は、W40、W100に対応する各フラククションにおける実測定の平均エチレン含有量(単位:重量%)であり、B40、B100は、各フラクションに含まれるプロピレン・エチレンランダム共重合体部分のエチレン含有量(単位:重量%)である。A40、A100、B40、B100の求め方は後述する。
(I)式の意味は以下の通りである。すなわち、(I)式右辺の第一項はフラクション1(40℃に可溶な部分)に含まれるプロピレン・エチレンランダム共重合体部分の量を算出する項である。フラクション1がプロピレン・エチレンランダム共重合体のみを含み、プロピレン単独重合体を含まない場合には、W40がそのまま全体の中に占めるフラクション1由来のプロピレン・エチレンランダム共重合体部分含有量に寄与するが、フラクション1にはプロピレン・エチレンランダム共重合体由来の成分のほかに少量のプロピレン単独重合体由来の成分(極端に分子量の低い成分及びアタクチックポリプロピレン)も含まれるため、その部分を補正する必要がある。そこでW40にA40/B40を乗ずることにより、フラクション1のうち、プロピレン・エチレンランダム共重合体成分由来の量を算出する。例えば、フラクション1の平均エチレン含有量(A40)が30重量%であり、フラクション1に含まれるプロピレン・エチレンランダム共重合体のエチレン含有量(B40)が40重量%である場合、フラクション1の30/40=3/4(即ち75重量%)はプロピレン・エチレンランダム共重合体由来、1/4はプロピレン単独重合体由来ということになる。このように右辺第一項でA40/B40を乗ずる操作は、フラクション1の重量%(W40)からプロピレン・エチレンランダム共重合体の寄与を算出することを意味する。右辺第二項も同様であり、各々のフラクションについて、プロピレン・エチレンランダム共重合体の寄与を算出して加え合わせたものがプロピレン・エチレンランダム共重合体部分含有量となる。
(i)上述したように、CFC測定により得られるフラクション1〜2に対応する平均エチレン含有量をそれぞれA40、A100とする(単位はいずれも重量%である)。平均エチレン含有量の求め方は後述する。
(ii)フラクション1の微分分子量分布曲線におけるピーク位置に相当するエチレン含有量をB40とする(単位は重量%である)。フラクション2については、ゴム部分が40℃ですべて溶出してしまうと考えられ、同様の定義で規定することができないので、本発明では実質的にB100=100と定義する。B40、B100は各フラクションに含まれるプロピレン・エチレンランダム共重合体部分のエチレン含有量であるが、この値を分析的に求めることは実質的には不可能である。その理由はフラクションに混在するプロピレン単独重合体とプロピレン・エチレンランダム共重合体を完全に分離・分取する手段がないからである。種々のモデル試料を使用して検討を行った結果、B40はフラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量を使用すると、材料物性の改良効果をうまく説明することができることがわかった。また、B100はエチレン連鎖由来の結晶性を持つこと、および、これらのフラクションに含まれるプロピレン・エチレンランダム共重合体の量がフラクション1に含まれるプロピレン・エチレンランダム共重合体の量に比べて相対的に少ないことの2点の理由により、100と近似する方が、実態にも近く、計算上も殆ど誤差を生じない。そこでB100=100として解析を行うこととしている。
(iii)上記の理由からプロピレン・エチレンランダム共重合体部分の比率(Wc)を以下の式に従い、求める。
Wc(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/100 …(II)
つまり、(II)式右辺の第一項であるW40×A40/B40は結晶性を持たないプロピレン・エチレンランダム共重合体含有量(重量%)を示し、第二項であるW100×A100/100は結晶性を持つプロピレン・エチレンランダム共重合体部分含有量(重量%)を示す。
ここで、B40およびCFC測定により得られる各フラクション1および2の平均エチレン含有量A40、A100は、次のようにして求める。
微分分子量分布曲線のピーク位置に対応するエチレン含有量がB40となる。また、測定時にデータポイントとして取り込まれる、各データポイント毎の重量割合と各データポイント毎のエチレン含有量の積の総和がフラクション1の平均エチレン含有量A40となる。フラクション2の平均エチレン含有量A100も同様に求める。
なお、上記3種類の分別温度を設定した意義は次の通りである。本発明のCFC分析においては、40℃とは結晶性を持たないポリマー(例えば、プロピレン・エチレンランダム共重合体の大部分、もしくはプロピレン単独重合体部分の中でも極端に分子量の低い成分およびアタクチックな成分)のみを分別するのに必要十分な温度条件である意義を有する。100℃とは、40℃では不溶であるが100℃では可溶となる成分(例えばプロピレン・エチレンランダム共重合体中、エチレン及び/またはプロピレンの連鎖に起因して結晶性を有する成分、および結晶性の低いプロピレン単独重合体)のみを溶出させるのに必要十分な温度である。140℃とは、100℃では不溶であるが140℃では可溶となる成分(例えば、プロピレン単独重合体中特に結晶性の高い成分、およびプロピレン・エチレンランダム共重合体中の極端に分子量が高くかつ極めて高いエチレン結晶性を有する成分)のみを溶出させ、かつ分析に使用するプロピレン系ブロック共重合体の全量を回収するのに必要十分な温度である。なお、W140にはプロピレン・エチレンランダム共重合体成分は全く含まれないか、存在しても極めて少量であり実質的には無視できることからプロピレン・エチレンランダム共重合体の比率やプロピレン・エチレンランダム共重合体のエチレン含有量の計算からは排除する。
(6)プロピレン・エチレンランダム共重合体部分のエチレン含有量
本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体におけるプロピレン・エチレンランダム共重合体部分のエチレン含有量は、上述で説明した値を用い、次式から求められる。
プロピレン・エチレンランダム共重合体部分のエチレン含有量(重量%)=(W40×A40+W100×A100)/Wc
但し、Wcは先に求めたプロピレン・エチレンランダム共重合体部分の比率(重量%)である。
(7)固有粘度の測定
本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体における結晶性プロピレン重合体部分とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分の固有粘度[η]homo、[η]copolyは、ウベローデ型粘度計を用いてデカリンを溶媒として温度135℃で測定する。
まず、結晶性プロピレン重合体部分の重合終了後、一部を重合槽よりサンプリングし、固有粘度[η]homoを測定する。次に、結晶性プロピレン重合体部分を重合した後、プロピレン・エチレンランダム共重合体を重合して得られた最終重合物(F)の固有粘度[η]を測定する。[η]copolyは、以下の関係から求める。
[η]=(100−Wc)/100×[η]homo+Wc/100×[η]copoly
<実施例1>
1.固体触媒成分(a)の製造
充分に窒素置換した内容積50リットルの攪拌機付槽に、脱水および脱酸素したn−ヘプタン、20リットルを導入し、次いでMgClを10モル、Ti(O−n−Cを20モル導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)を12リットル導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
次いで、前記攪拌機付槽を用いて該槽に、上記と同様に精製したn−ヘプタンを5リットル導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で3モル導入した。次いでn−ヘプタン2.5リットルにSiCl5モルを混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。
次いで前記攪拌機付槽へn−ヘプタン2.5リットル導入し、フタル酸クロライド0.3モルを混合して、70℃、30分間で導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでTiCl2リットルを導入して110℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄して成分(a)を製造するための固体成分(a1)を得た。この固体成分のチタン含量は2.0重量%であった。
次いで、窒素置換した前記攪拌機付槽にn−ヘプタンを8リットル、上記で合成した固体成分(a1)を400グラム導入し、成分(a2)としてSiCl0.6リットルを導入して90℃で2時間反応させた。反応終了後、さらに成分(a3)として(CH=CH)Si(CH0.54モル、成分(a4)として(t−C)(CH)Si(OCH0.27モルおよび成分(a5)としてAl(C1.5モルを順次導入して30℃で2時間接触させた。接触終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄し、塩化マグネシウムを主体とする成分(a)390gを得た。このもののチタン含量は、1.8重量%であった。
2.プロピレン系ブロック共重合体の製造
内容積400リットルの攪拌機付きステンレス鋼製オートクレーブをプロピレンガスで充分に置換し、重合溶媒として脱水及び脱酸素したn−ヘプタン120リットルを入れた。次に温度70℃の条件下、トリエチルアルミニウム30g、水素147リットル、および前記触媒aを17g加えた。オートクレーブを内温75℃に昇温した後、圧力が0.3MPaGになるようにプロピレンの供給をし、重合を開始した。水素は水素/プロピレンが10.2(L/Kg)で供給を開始し、230分後に0になるように一定比率で低下させた。230分後にプロピレンの導入を停止し、器内の未反応ガスを0.03MPaGまで放出し結晶性プロピレン重合体部分を得た(前段重合工程)。反応器内の水素濃度(水素/プロピレン)は、重合開始時0.24モル比であったが徐々に低下し、プロピレン供給停止時には0.08モル比であった。
次いで、オートクレーブを内温65℃にセットした後、n−ブタノールを12.5cc導入、次いで、プロピレンを5.25Kg/Hrで供給開始120分後に0になるように一定比率で低下、エチレンは0から120分後に2.25Kg/Hrになるように一定比率で上昇させ供給した。120分後エチレン、プロピレンの供給を停止、重合を終了した。圧力はエチレン、プロピレン供給開始時0.03MPaGであったが徐々に上昇し、供給停止時0.1MPaGであった(後段重合工程)。
得られたスラリーは、次の攪拌機付き槽に移送し、ブタノールを2.5リットル加え、70℃で3時間処理し、更に次の攪拌機付き槽に移送、水酸化ナトリウム20gを溶解した純水100リットルを加え、1時間処理した後、水層を静置後分離、触媒残渣を除去した。スラリーは遠心分離機で処理し、ヘプタンを除去、80℃の乾燥機で3時間処理しヘプタンを完全に除去、55.2Kgの(改質剤1)を得た。
3.固体触媒成分(b)の製造
窒素置換した内容積50リットルの撹拌機付槽に脱水及び脱酸素したn−ヘプタン20リットルを導入し、次いで、塩化マグネシウム10モルとテトラブトキシチタン20モルとを導入して95℃で2時間反応させた後、温度を40℃に下げ、メチルヒドロポリシロキサン(粘度20センチストークス)12リットルを導入して更に3時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
引き続いて、前記撹拌機付槽を用いて該槽に脱水及び脱酸素したn−ヘプタン5リットルを導入し、次いで、上記で合成した固体成分をマグネシウム原子換算で3モル導入した。ついで、n−ヘプタン2.5リットルに、四塩化珪素5モルを混合して30℃、30分間かけて導入して、温度を70℃に上げ、3時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
さらに、引き続いて、前記撹拌機付槽を用いて該槽に脱水及び脱酸素したn−ヘプタン2.5リットルを導入し、フタル酸クロライド0.3モルを混合して90℃、30分間で導入し、95℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いで、室温下四塩化チタン2リットルを追加し、100℃に昇温した後2時間反応した。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。さらに、四塩化珪素0.6リットル、n−ヘプタン8リットルを導入し90℃で1時間反応し、n−ヘプタンで十分洗浄し、固体成分を得た。この固体成分中にはチタンが1.30重量%含まれていた。
次に、窒素置換した前記撹拌機付槽にn−ヘプタン8リットル、上記で得た固体成分を400gと、t−ブチル−メチル−ジメトキシシラン0.27モル、ビニルトリメチルシラン0.27モルを導入し、30℃で1時間接触させた。次いで15℃に冷却し、n−ヘプタンに希釈したトリエチルアルミニウム1.5モルを15℃条件下30分かけて導入、導入後30℃に昇温し2時間反応させ、反応液を取り出し、n−ヘプタンで洗浄して固体触媒成分(b)390gを得た。
得られた固体触媒成分(b)中には、チタンが1.22重量%含まれていた。
更に、n−ヘプタンを6リットル、n−ヘプタンに希釈したトリイソブチルアルミニウム1モルを15℃条件下30分かけて導入し、次いでプロピレンを20℃を越えないように制御しつつ約0.4kg/時間で1時間導入して予備重合した。その結果、固体1g当たり0.9gのプロピレンが重合したポリプロピレン含有の固体触媒成分(b)が得られた。
4.成分(ii)ポリプロピレン系樹脂の製造
内容積230リットルの流動床式反応器を2個連結してなる連続反応装置を用いて重合を行った。まず第1反応器で、重合温度75℃、プロピレン分圧1.8MPa、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.047となるように連続的に供給するとともに、トリエチルアルミニウムを5.25g/hrで、固体触媒成分(b)として、上記記載の触媒をポリマー重合速度が20kg/hrになるように供給した。第1反応器で重合したパウダー(結晶性プロピレン重合体)は、反応器内のパウダー保有量を60kgとなるように連続的に抜き出し、第2反応器に連続的に移送した(前段重合工程)。
重合温度80℃で、圧力2.0MPaになるように、プロピレンとエチレンをエチレン/プロピレンのモル比で0.37となるように連続的に供給し、更に、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.016となるように連続的に供給すると共に、活性水素化合物としてエチルアルコールを、トリエチルアルミニウムに対して2.1倍モルになるように供給した。第2反応器で重合したパウダーは、反応器内のパウダー保有量を40kgとなるように連続的にベッセルに抜き出し、水分を含んだ窒素ガスを供給して反応を停止させ、ポリプロピレン系樹脂を得た(後段重合工程)。得られたポリプロピレン系樹脂をベースPPとした。
ベースPPの分析を行ったところ、MFRが31g/10min、ゴム含量が27wt%、ダイスウエル比が1.0、Q値が4.6であった。
5.成形品外観フローマーク発生距離の評価
上記ベースPP(55重量%)、平均粒径が5μmのタルク(15重量%)、MFRが6.3g/10min、密度が0.862g/ccのエチレン・ブテン共重合エラストマー(15重量%)及び上記、改質剤1(15重量%)の混合物100重量部に対して、酸化防止剤として、テトラキス[メチレン−3−(3’5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバガイギー社製、商品名:イルガノックス1010)0.1重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(チバガイギー社製、商品名:イルガホス168)0.05重量部を配合して、ヘンシェルミキサーで5分間混合した後、二軸混練機(神戸製鋼社製:KCM)にて210℃の設定温度で混練造粒することによりポリプロピレン系樹脂組成物を得た。得られたポリプロピレン系樹脂組成物についてフローマーク発生距離を行った。
フローマークの発生距離は、型締め圧170トンの射出成形機で、短辺に幅2mmのフィルムゲートをもつ金型を用いて、350mm×100mm×2mmtなる成形シートを成形温度220℃として射出成形し、フローマークの発生を目視で観察し、ゲートからフローマークが発生した部分までの距離を測定した。
各実施例について、表1に重合条件、表2に生成重合体の物性評価を示した。
<実施例2>
実施例1において、前段重合工程において水素の供給量を水素/プロピレンが11.0(L/Kg)で供給を開始し、230分後に0になるように一定比率で低下、後段重合工程においてプロピレンを6.3Kg/Hrで供給開始120分後に0になるように一定比率で低下、エチレンは0から120分後に2.7Kg/Hrになるように一定比率で上昇させ供給した以外は、実施例1に準じて行いプロピレン・エチレンブロック共重合体(改質剤2)を製造した。前段重合工程の反応器内の水素濃度(水素/プロピレン)は、プロピレン供給停止時には0.09モル比であった。また、得られた製品量は58.5kgであった。
また、フローマークの発生距離の評価は、改質剤1を改質剤2に変更し、実施例1に準じて実施した。
<実施例3>
実施例1において、前段重合工程において水素の供給量を水素/プロピレンが15.0(L/Kg)で供給を開始し、230分後に0になるように一定比率で低下、後段重合工程においてプロピレンを7.35Kg/Hrで供給開始120分後に0になるように一定比率で低下、エチレンは0から120分後に3.15Kg/Hrになるように一定比率で上昇させ供給した以外は、実施例1に準じて行いプロピレン・エチレンブロック共重合体(改質剤3)を製造した。前段重合工程の反応器内の水素濃度(水素/プロピレン)は、プロピレン供給停止時には0.07モル比であった。また、得られた製品量は60.6kgであった。
また、フローマークの発生距離の評価は、改質剤1を改質剤3に変更し、実施例1に準じて実施した。
<実施例4>
実施例1において、前段重合工程において水素の供給量を水素/プロピレンが13.4(L/Kg)で供給を開始し、230分後に0になるように一定比率で低下、後段重合工程においてプロピレンを8.4Kg/Hrで供給開始120分後に0になるように一定比率で低下、エチレンは0から120分後に3.6Kg/Hrになるように一定比率で上昇させ供給した以外は、実施例1に準じて行いプロピレン・エチレンブロック共重合体(改質剤4)を製造した。前段重合工程の反応器内の水素濃度(水素/プロピレン)は、プロピレン供給停止時には0.08モル比であった。また、得られた製品量は58.3kgであった。
また、フローマークの発生距離の評価は、改質剤1を改質剤4に変更し、実施例1に準じて実施した。
<実施例5>
実施例1において、前段重合工程において水素の供給量を水素/プロピレンが13.6(L/Kg)で供給を開始し、230分後に0になるように一定比率で低下、後段重合工程においてプロピレンを6.3Kg/Hrで供給開始120分後に0になるように一定比率で低下、エチレンは0から120分後に2.7Kg/Hrになるように一定比率で上昇させ供給した以外は、実施例1に準じて行いプロピレン・エチレンブロック共重合体(改質剤5)を製造した。前段重合工程の反応器内の水素濃度(水素/プロピレン)は、プロピレン供給停止時には0.08モル比であった。また、得られた製品量は59.7kgであった。
また、フローマークの発生距離の評価は、改質剤1を改質剤5に変更し、実施例1に準じて実施した。
<実施例6>
実施例1において、前段重合工程において水素の供給量を水素/プロピレンが13.4(L/Kg)で供給を開始し、230分後に0になるように一定比率で低下、後段重合工程においてプロピレンを10.2Kg/Hrで供給開始120分後に0になるように一定比率で低下、エチレンは0から120分後に1.8Kg/Hrになるように一定比率で上昇させ供給した以外は、実施例1に準じて行いプロピレン・エチレンブロック共重合体(改質剤6)を製造した。前段重合工程の反応器内の水素濃度(水素/プロピレン)は、プロピレン供給停止時には0.07モル比であった。また、得られた製品量は62.0kgであった。
また、フローマークの発生距離の評価は、改質剤1を改質剤6に変更し、実施例1に準じて実施した。
<実施例7>
実施例1において、前段重合工程において水素の供給量を水素/プロピレンが13.6(L/Kg)で供給を開始し、230分後に0になるように一定比率で低下、後段重合工程においてプロピレンを4.5Kg/Hrで供給開始120分後に0になるように一定比率で低下、エチレンは0から120分後に4.5Kg/Hrになるように一定比率で上昇させ供給した以外は、実施例1に準じて行いプロピレン・エチレンブロック共重合体(改質剤7)を製造した。前段重合工程の反応器内の水素濃度(水素/プロピレン)は、プロピレン供給停止時には0.09モル比であった。また、得られた製品量は61.2kgであった。
また、フローマークの発生距離の評価は、改質剤1を改質剤7に変更し、実施例1に準じて実施した。
<比較例1>
実施例1において、前段重合工程において水素の供給量を水素/プロピレンが10.0(L/Kg)で供給を開始し、230分後に0になるように一定比率で低下、後段重合工程においてプロピレンを2.63Kg/Hrで、エチレンを1.13Kg/Hrで、一定速度で供給し、120分後に供給を停止した以外は、実施例1に準じて行いプロピレン・エチレンブロック共重合体(改質剤8)を製造した。前段重合工程の反応器内の水素濃度(水素/プロピレン)は、プロピレン供給停止時には0.06モル比であった。また、得られた製品量は55.4kgであった。
また、フローマークの発生距離の評価は、改質剤1を改質剤8に変更し、実施例1に準じて実施した。
<比較例2>
実施例1において、前段重合工程において水素の供給量を水素/プロピレンが2.0(L/Kg)で、一定速度で供給し、220分後に供給を停止、後段重合工程においてプロピレンを3.5Kg/Hrで、エチレンを1.5Kg/Hrで、一定速度で供給し、90分後に供給を停止した以外は、実施例1に準じて行いプロピレン・エチレンブロック共重合体(改質剤9)を製造した。前段重合工程の反応器内の水素濃度(水素/プロピレン)は、プロピレン供給停止時には0.14モル比であった。また、得られた製品量は59.6kgであった。
また、フローマークの発生距離の評価は、改質剤1を改質剤9に変更し、実施例1に準じて実施した。
<比較例3>
実施例1において、前段重合工程において水素の供給量を水素/プロピレンが13.6(L/Kg)で供給を開始し、230分後に0になるように一定比率で低下、後段重合工程においてプロピレンを2.7Kg/Hrで供給開始120分後に0になるように一定比率で低下、エチレンは0から120分後に6.3Kg/Hrになるように一定比率で上昇させ供給した以外は、実施例1に準じて行いプロピレン・エチレンブロック共重合体(改質剤10)を製造した。前段重合工程の反応器内の水素濃度(水素/プロピレン)は、プロピレン供給停止時には0.09モル比であった。また、得られた製品量は59.4kgであった。
また、フローマークの発生距離の評価は、改質剤1を改質剤10に変更し、実施例1に準じて実施した。
<比較例4>
実施例1において、前段重合工程において水素の供給量を水素/プロピレンが13.6(L/Kg)で供給を開始し、230分後に0になるように一定比率で低下、後段重合工程においてプロピレンを10.8Kg/Hrで供給開始120分後に0になるように一定比率で低下、エチレンは0から120分後に1.2Kg/Hrになるように一定比率で上昇させ供給した以外は、実施例1に準じて行いプロピレン・エチレンブロック共重合体(改質剤11)を製造した。前段重合工程の反応器内の水素濃度(水素/プロピレン)は、プロピレン供給停止時には0.08モル比であった。また、得られた製品量は60.1kgであった。
また、フローマークの発生距離の評価は、改質剤1を改質剤11に変更し、実施例1に準じて実施した。
<比較例5>
フローマークの発生距離の評価において、改質剤をまったく入れずに行った。すなわち、実施例1において、ゴム含量が27wt%でMFRが31g/10minのプロピレン・エチレンブロック共重合体(73重量%)、平均粒径が5μmのタルク(15重量%)、MFRが6.3g/10min、密度が0.862g/ccのエチレン・ブテン共重合エラストマー(12重量%)の混合物に、酸化防止剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物について行い、その他は実施例1に準じて実施した。



以上の各実施例及び比較例から次の事項が判明した。
(1)実施例1〜7は、高MFRの結晶性プロピレン重合体部、および低MFRのプロピレン・エチレンランダム共重合体部を有するプロピレン・エチレンブロック共重合体からなるポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤の例であり、比較例1,2の比較から、フローマーク発生距離が長い。
(2)比較例1は、プロピレン・エチレンランダム共重合体部のMFRが高い例であり、実施例1〜6との比較から、フローマーク発生距離が短い。
(3)比較例2は、結晶性プロピレン重合体部のMFRが低く、プロピレン・エチレンランダム共重合体部のMFRが高い例であり、実施例1〜6との比較から、フローマーク発生距離が短い。
(4)比較例3,4は、プロピレン・エチレンランダム共重合体部のエチレン含量が10〜40wt%に入っていない例であり、実施例1〜6との比較から、フローマーク発生距離が短い。
水素とプロピレンの比が単調低下する実施態様例を模式的に示す図

Claims (10)

  1. 結晶性プロピレン重合体部分(A)のセグメント70〜95重量%と、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B)のセグメント5〜30重量%とからなり、MFRが10〜98g/10分であることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体(i)。
    ここで、MFR及び(A)のMFRは、JIS−K−7210、温度230℃、荷重21.18Nに従って測定した値を、(B)のMFRは、MFR 、MFR を測定し、log(MFR A+B )=(100−Wc)/100×log(MFR )+Wc/100×log(MFR )の式に従って算出した値を表す。ここで、Wcはプロピレン系ブロック共重合体中のプロピレン・エチレンランダム共重合体(B)の比率である。
    (A)のMFRが500〜893g/10分、
    (B)のMFRが4.6×10 −7 〜1×10−5g/10分、
    (B)中のエチレン含量が10〜50重量%。
  2. 求項1に記載のプロピレン系ブロック共重合体(i)からなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤。
  3. 請求項1又は2に記載のプロピレン系ブロック共重合体(i)以外のポリプロピレン系樹脂(ii)70〜99重量部および請求項1又は2に記載のプロピレン系ブロック共重合体(i)1〜30重量部からなることを特徴とすポリプロピレン系樹脂組成物。
  4. ポリプロピレン系樹脂(ii)のMFR(JIS−K7210、温度230℃、荷重21.18N)が2g/10分以上100g/10分未満、ダイスウエル比が0.98以上1.2未満、GPC測定により求められる分子量分布(Mw/Mn);Q値が3以上7未満であることを特徴とする請求項3に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  5. プロピレン系ブロック共重合体(i)とポリプロピレン系樹脂(ii)の合計100重量部に対して、さらにエチレン系又はスチレン系エラストマー(iii)1〜40重量部配合してなることを特徴とする請求項3又は4のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  6. ポリプロピレン系樹脂(ii)がプロピレン・エチレンブロック共重合体であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  7. さらに、無機充填剤(iv)を、プロピレン系ブロック共重合体(i)とポリプロピレン系樹脂(ii)の合計100重量部に対して、1〜70重量部配合することを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  8. エチレン系又はスチレン系エラストマー(iii)のMFR(JIS−K7210、温度230℃、荷重21.18N)が、0.3〜150g/10分であることを特徴とする請求項5に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  9. 無機充填剤(iv)が、タルクであることを特徴とする請求項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  10. 結晶性プロピレン重合体部分(A)成分を製造する前段の重合工程(a)と、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B)成分を製造する後段の重合工程(b)とを含む少なくとも2段工程からなるセミバッチ法でプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法において、前段の重合工程(a)は、水素とプロピレンとを反応器中に供給し、触媒の存在下に、プロピレンに対する水素濃度を経時的に低下させながらプロピレンを重合させ、結晶性プロピレン重合体が得られたときは、未反応ガス中の水素とプロピレンとのガス濃度比(H/C)を0.1モル比以下に保持し、後段の重合工程(b)ではプロピレンの供給量を経時的に低下、またエチレンの供給量は経時的に上昇させながら供給することを特徴とする請求項に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
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