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JP5106810B2 - カムシャフト支持構造および内燃機関 - Google Patents

カムシャフト支持構造および内燃機関 Download PDF

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JP5106810B2 JP2006238430A JP2006238430A JP5106810B2 JP 5106810 B2 JP5106810 B2 JP 5106810B2 JP 2006238430 A JP2006238430 A JP 2006238430A JP 2006238430 A JP2006238430 A JP 2006238430A JP 5106810 B2 JP5106810 B2 JP 5106810B2
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Description

この発明は、自動車および自動二輪車用の内燃機関、およびこれらの内燃機関に採用されるカムシャフト支持構造に関するものである。
従来の自動車および自動二輪車用内燃機関に採用されるカムシャフト支持構造が、例えば、特開2005−90696号公報(特許文献1)に記載されている。図12を参照して、同公報に記載されているカムシャフト支持構造は、カムローブ101a、ころ軸受102により支持される円筒状のジャーナル部101b、および端部大径部101cを有するカムシャフト101と、シリンダヘッド108およびキャップ109で構成されるハウジングと、複数のころ103、略半円筒状の保持体104,105、および略半円筒状のレース板106,107とを有し、カムシャフト101をハウジングに対して回転自在に支持するころ軸受102とを備える。
上記構成のレース板106,107は、冷間圧延鋼板(SPC)等の鋼板をプレス加工して製造されるのが一般的である。また、硬度等の所定の機械的性質を得るために熱処理が施されると共に、ころ103の軌道面となる内径面に研削加工を施してころ103がスムーズに回転できるようにしている。
特開2005−90696号公報
上記構成のカムシャフト支持構造において、カムシャフト101は、回転時に所定の方向に偏った荷重が作用するので、その円周方向において、相対的に大きな荷重が負荷される領域(以下、「負荷領域」という)と、相対的に小さな荷重しか負荷されない領域(以下、「非負荷領域」という)とに区分される。
したがって、負荷領域を含む位置に配置されるレース板には大きな荷重が負荷されるので、ころ103のスムーズな回転を維持するためには高い加工精度が要求される。一方、レース板の製造には上記の通り多くの工程が必要となるので、レース板の製造コストはころ軸受102全体の製造コストの中で大きなウェイトを占めている。この傾向は、高精度の加工が必要となる場合には特に顕著となる。
そこで、この発明の目的は、製造コストを抑えつつころがスムーズに回転可能なころ軸受を採用することにより、信頼性の高いカムシャフト支持構造、およびこのようなカムシャフト支持構造を備えた内燃機関を提供することである。
この発明に係るカムシャフト支持構造は、カムシャフトと、カムシャフトを収容するハウジングと、カムシャフトをハウジングに対して回転自在に支持するころ軸受とを備える。ころ軸受に注目すると、円弧形状の外輪部材と、複数のころとを備え、複数のころの径方向外側に位置する軌道面は、ハウジングのカムシャフトを収容する領域に嵌まり込む外輪部材の内径面と、外輪部材の円周方向端部に連なるハウジングの内周面とに形成されている。
上記構成のように、ころの軌道面の一部をハウジングの内周面とすることにより、ころ軸受の部品点数が削減できるので、全体としての製造コストを抑えることが可能となる。その結果、低コストで信頼性の高いカムシャフト支持構造を得ることができる。
好ましくは、外輪部材はカムシャフトの負荷領域を含む位置に配置される。特に、外輪部材をカムシャフトの負荷領域を含む位置に配置することによって、ころのスムーズな回転を維持することができる。
この発明に係る内燃機関は、ハウジングと、ハウジング内に設けられたシリンダと、シリンダに連通する吸気路および排気路を開閉する弁と、弁の開閉のタイミングを制御するカムシャフトと、カムシャフトを回転自在に支持するころ軸受とを備える。ころ軸受に注目すると、円弧形状の外輪部材と、複数のころとを備え、複数のころの径方向外側に位置する軌道面は、ハウジングのカムシャフトを収容する領域に嵌まり込む外輪部材の内径面と、外輪部材の円周方向端部に連なるハウジングの内周面とに形成されている。
上記構成のカムシャフト支持構造を採用することにより、信頼性の高い内燃機関を得ることができる。
この発明によれば、ころの軌道面のうち高い精度が必要な部分(負荷領域)にのみ外輪部材を配置し、その他の部分をハウジングの内周面で構成することにより、製造コストを抑えつつ、ころのスムーズな回転を維持することできる。その結果、低コストで信頼性の高いカムシャフト支持構造および内燃機関を得ることができる。
図9〜図11を参照して、この発明の一実施形態に係る内燃機関11を説明する。なお、図9はこの発明の一実施形態に係る内燃機関11のシリンダの1つを示す断面図、図10は内燃機関11に使用されるクランクシャフト15を示す図、図11は内燃機関11に使用されるカムシャフト19を示す図である。
まず、図9を参照して、内燃機関11は、ハウジングとしてのシリンダブロック12およびシリンダヘッド13と、往復運動を回転運動に変換する運動変換機構と、混合気の吸気および燃焼ガスの排気を行う給排気機構と、点火装置としてのスパークプラグ20とを備えるレシプロエンジンである。
運動変換機構は、シリンダブロック12に収容され、シリンダブロック12内に設けられたシリンダ12aの内部を往復運動するピストン14と、フライホイール(図示省略)やクラッチ(図示省略)を介してトランスミッション(図示省略)に接続されるクランクシャフト15と、一端がピストン14に接続され他端がクランクシャフト15に接続されて、ピストン14の往復運動をクランクシャフト15の回転運動に変換するコンロッド16とを備える。
給排気機構は、シリンダヘッド13に形成され、シリンダ12aに連通する吸気路13aおよび排気路13bと、シリンダ12aおよび吸気路13aの間に配置される弁としての吸気バルブ17と、シリンダ12aおよび排気路13bの間に配置される弁としての排気バルブ18と、吸気バルブ17および排気バルブ18の開閉のタイミングを制御するカムシャフト19とを備える。
吸気バルブ17は、バルブステム17aと、バルブステム17aの一方側端部に設けられたバルブヘッド17bと、吸気バルブ17を吸気路13aを閉鎖する方向に付勢するバルブスプリング17cとを含み、バルブステム17aの他方側端部には、カムシャフト19が接続される。なお、排気バルブ18は、吸気バルブ17と同様の構成であるので、説明を省略する。
図10を参照して、内燃機関11に使用されるクランクシャフト15は、軸部15aと、クランクアーム15bと、隣接するクランクアーム15bの間にコンロッド16を配置するためのクランクピン15cとを有する。このクランクシャフト15は、軸部15aが後述するこの発明の一実施形態に係る針状ころ軸受21によって回転自在に支持されている。また、クランクピン15cは内燃機関11のシリンダ数と同数設けられている。
図11を参照して、内燃機関11に使用されるカムシャフト19は、軸部19aと、複数のカム19bとを含む。軸部19aは、後述するこの発明の一実施形態に係る針状ころ軸受21によって回転自在に支持される。このカムシャフト19は、クランクシャフト15とタイミングベルト(図示省略)によって連結されて、クランクシャフト15の回転に伴って回転する。
カム19bは、吸気バルブ17または排気バルブ18それぞれと接続されているので、バルブ17,18と同数設けられる。また、カム19bは、図9に示すように、相対的に径の大きい長径部19cと相対的に径の小さい短径部19dとを含み、複数のカム19bは、図11に示すように、長径部19cの位置を円周方向にずらして配置される。これにより、複数のカム19bそれぞれに接続されるバルブ17,18をタイミングをずらして開閉することが可能となる。
なお、内燃機関11は、カムシャフト19が、シリンダヘッド13の上側に配置され、かつ、吸気バルブ17側と排気バルブ18側とにそれぞれ設けられるDOHC(Double Over Head Camshaft)方式のエンジンである。
次に、この内燃機関の作動原理を説明する。
まず、この内燃機関11は、ピストン14がシリンダ12a内で最も上昇した位置(上死点)と最も降下した位置(下死点)との間を移動する工程を1工程とすると、吸気工程、圧縮工程、燃焼工程、および排気工程の4工程からなる4サイクルエンジンである。
吸気工程では、吸気バルブ17が開いた状態、かつ、排気バルブ18が閉じた状態で、ピストン14が上死点から下死点まで移動する。これにより、シリンダ12a内部(ピストン14の上側の空間を指す、以下同じ)の容積が増加して内部の圧力が低下するので、混合気が吸気路13aからシリンダ12a内部に流入する。なお、混合気とは、空気(酸素)と霧状にしたガソリンの混合物を指す。
圧縮工程では、吸気バルブ17および排気バルブ18が閉じた状態で、ピストン14が下死点から上死点まで移動する。これにより、シリンダ12a内部の容積が減少して内部の圧力が上昇する。
燃焼工程では、吸気バルブ17および排気バルブ18が閉じた状態で、スパークプラグ20を点火する。これにより、圧縮状態の混合気が燃焼することによって急激に膨張してピストン14を上死点から下死点まで押し下げる。この力をコンロッド16を介してクランクシャフト15に回転運動として伝達することによって、駆動力が発生する。
排気工程では、吸気バルブ17が閉じた状態、かつ、排気バルブ18が開いた状態で、ピストン14が下死点から上死点まで移動する。これにより、シリンダ12a内部の容積が減少して、燃焼ガスが排気路13bに流出する。なお、この工程でピストン14が上死点に達した後は、吸気工程に戻る。
なお、上記の各工程において、「吸気バルブ17が開いた状態」とは、カム19bの長径部19cが吸気バルブ17に当接して、吸気バルブ17をバルブスプリング17cに逆らって下方に押し下げられた状態を指し、「吸気バルブ17が閉じた状態」とは、カム19bの短径部19dが吸気バルブ17に当接して、吸気バルブ17がバルブスプリング17cの復元力によって上方に押し上げられた状態を指す。また、排気バルブ18についても同様であるので、説明は省略する。
上記の各工程において、駆動力が発生するのは燃焼工程のみであり、その他の工程では、他のシリンダで発生した駆動力によってピストン14が往復運動する。そのため、クランクシャフト15の円滑な回転を維持する観点からは、複数のシリンダで燃焼行程のタイミングをずらすことが望ましい。
図1〜図6を参照して、この発明の一実施形態に係るころ軸受としての針状ころ軸受21と、この針状ころ軸受21を使用したカムシャフト支持構造を説明する。なお、図1、図5、および図6はこの発明の一実施形態に係るカムシャフト支持構造の組込み前後の状態を示す図、図2〜図4はこの発明の一実施形態に係る針状ころ軸受21の各構成要素を示す図である。
まず、図1を参照して、この発明の一実施形態に係るカムシャフト支持構造は、カムシャフト19と、カムシャフト19を収容するハウジングとしてのシリンダヘッド13およびベアリングキャップ13cと、カムシャフト19をハウジングに対して回転自在に支持する針状ころ軸受21とを備える。
針状ころ軸受21は、円弧形状の外輪部材22と、ころとしての針状ころ23と、円周上の一箇所に軸受の軸線方向に延びる分割線を有し、複数の針状ころ23の間隔を保持する保持器24とを備える。
なお、カムシャフト19を支持する軸受としては、針状ころ軸受21が採用されるのが一般的である。針状ころ軸受21は、針状ころ23と軌道面とが線接触するので、軸受投影面積が小さい割に高負荷容量と高剛性が得られる利点を有している。したがって、負荷容量を維持しつつ、支持部分の径方向の厚み寸法を削減することができる点で好適である。
図2は外輪部材22の側面図である。図2を参照して、外輪部材22は、中心角180°の半円形状であって、軸方向の両端部から径方向内側に突出して保持器24の軸方向への移動を規制する鍔部22aと、外径面から内径面に貫通する油穴22bとを有する。また、外輪部材22の内径面の軸方向中央部は、針状ころ23の軌道面として機能する。なお、油孔22bは、ハウジングに設けられた油路(図示省略)に対面する位置に設けられて、潤滑油を針状ころ軸受21内部に供給する。また、油穴22bの大きさ、位置、個数は、ハウジングに設けられた油路の大きさ、位置、個数に依存する。
次に、図3および図4を参照して、保持器24を説明する。なお、図3は保持器24の側面図、図4は保持器24の分割部分を含む部分断面図である。保持器24は、円周上の一箇所に軸受の軸線方向に延びる分割線を有する略C型形状であって、針状ころ23を収容するポケット24cが円周方向の等間隔に設けられている。また、この保持器24は、樹脂材料を射出成型して形成される。
また、分割部分の円周方向一方側の切断端面24aには凹部24dが、他方側の切断端面24bには凹部24dに対応する凸部24eが設けられており、凹部24dおよび凸部24eが係合することにより、円環形状の保持器24を得ることができる。なお、この実施形態においては、凸部24eの先端部分の幅が根元部分より大きく、凹部24dは開口部分の幅が最奥部より小さく設定されている。これにより、凹部24dと凸部24eの係合を確実なものとしている。
次に、図1、図5、および図6を参照して、針状ころ軸受21をカムシャフト19に組み込む手順を説明する。
まず、保持器24のポケット24cそれぞれに針状ころ23を組み込む。次に、保持器24の弾性を利用して分割部分を広げ、カムシャフト19に組み込む。さらに、凹部24dと凸部24eとを係合させて、保持器24が外れないようにする。
次に、シリンダヘッド13の上に、保持器24を巻きつけて固定したカムシャフト19、外輪部材22、およびベアリングキャップ13cの順に組込み、シリンダヘッド13とベアリングキャップ13cとをボルト等で固定する。
上記の組み込み手順とすることにより、カムシャフト19と、外輪部材22と、保持器24と、ハウジングとが同心円状に配置され、針状ころ23が安定して回転可能な針状ころ軸受21を得ることができる。
なお、針状ころ23の径方向外側に位置する軌道面は、外輪部材22の内径面と、ハウジングとしてのシリンダヘッド13の内周面とで構成されている。そこで、外輪部材22とシリンダヘッド13の内径面との接続部分が平滑となるように、シリンダヘッド13の内径寸法は、ベアリングキャップ13cの内径寸法より外輪部材22の板厚分だけ小さく設定されている。また、熱膨張や製造誤差を考慮して、外輪部材22とシリンダヘッド13との間には僅かな隙間が設けられている。
このように、針状ころ23の軌道面を外輪部材22の内径面と、外輪部材22の円周方向端部に連なるシリンダヘッド13の内周面とで構成することにより、針状ころ軸受21の製造コストを抑えることができる。なお、外輪部材22は、カムシャフト19を円周方向に負荷領域と非負荷領域に区分した場合に、負荷領域を含む位置に配置するのが望ましい。外輪部材22は、針状ころ23の軌道面に必要とされる機械的性質や表面粗さ等を得るために、後述するように多くの加工工程を経て製造されている。そのため、大きな荷重が負荷される負荷領域を含む位置に配置した場合でも、針状ころ23のスムーズな回転を維持することが可能となる。
なお、「負荷領域」とは、カムシャフト19から針状ころ軸受21に負荷される最大荷重の方向(図5中の仮想線lで示す方向)を中心として左右90°の領域(図5中の円弧αで示す180°の領域)を指す。一方、「非負荷領域」とは、最大荷重の方向と反対側の180°の領域(図5中の円弧βで示す領域)であって、負荷領域と比較して相対的に小さな荷重しか作用しない領域である(荷重が0の場合を含む)。
また、図9に示す内燃機関11において、カムシャフト19から針状ころ軸受21に負荷される最大荷重は、バルブ17,18をバルブスプリング17c,18cに逆らって下方に押し下げる力の反作用であり、その方向は、カムシャフト19がバルブ17,18を押す方向と反対の方向(図9中の矢印の方向)である。
さらに、シリンダヘッド13およびベアリングキャップ13cとで構成されるハウジングの油路(図示省略)と、外輪部材22に設けられた油孔22bとが一致するように組み込む。これにより、軸受内部に供給される潤滑油量が増加し、針状ころ軸受21の潤滑性が向上する。
上記の実施形態におけるカムシャフト支持構造は、針状ころ23の軌道面の一部をシリンダヘッド13の内周面で構成した例を示したが、シリンダヘッド13の内周面に他の部材を嵌め込んで軌道面を構成してもよい。例えば図7に示すように、円弧形状のリング部材25を外輪部材22の円周方向端部に連ねて配置してもよい。このリング部材は非負荷領域に配置されるので、金属を所定の曲率にプレス加工しただけのものであってもよいし、樹脂材料を射出成型して形成してもよい。なお、この実施形態において、リング部材25はハウジングを構成する要素として捉えるべきである。
また、 上記の実施形態においては、カムシャフト19を支持する軸受として針状ころ軸受21を採用した例を示したが、この発明は、他のころ軸受、例えば、円筒ころ軸受や棒状ころ軸受にも適用することができる。
また、上記の実施形態における外輪部材22は、中心角を180°とする半円形状とした例を示したが、これに限ることなく、負荷領域全域を含むことができる大きさであれば任意の中心角の外輪部材22を採用することができる。例えば、負荷領域が小さい環境で使用する場合には中心角の小さい外輪部材を使用し、負荷領域が大きい環境で使用する場合には中心角の大きい外輪部材を使用する等するとよい。同様に、保持器24についても任意の形態のものを採用することができる。
また、上記の実施形態における保持器24は、生産効率が高く、かつ、弾性変形能の高い樹脂製保持器の例を示したが、これに限ることなく、切削加工による削り出し保持器でもよく、または、鋼板をプレス加工したプレス保持器であってもよい。
また、上記の実施形態における針状ころ軸受21は、カムシャフト19を支持する軸受としてだけではなく、図10に示したようなクランクシャフト15の軸部15aやロッカーシャフト等を支持する軸受としても広く使用することが可能である。
また、この発明は、単気筒の内燃機関にも適用可能であるが、図10に示すような多気筒エンジンに採用されるクランクシャフト15の軸部15aや、図11に示すようなカムシャフト19の軸部19bのように、軸方向から針状ころ軸受21を挿入できない箇所を支持する軸受として好適である。
さらに図8を参照して、この発明の他の実施形態に係るカムシャフト支持構造を説明する。なお、このカムシャフト支持構造の基本構成は図5に示すカムシャフト支持構造と共通するので、共通点の説明は省略し、相違点を中心に説明する。
図8を参照して、この発明の他の実施形態に係るカムシャフト支持構造は、ハウジング13,13cと、カムシャフト19と、カムシャフト19をハウジング13,13cに対して回転自在に支持する針状ころ軸受31とを備える。また、針状ころ軸受31に採用される外輪部材32は、中心角180°の半円形状であって、軸方向の両端部から径方向内側に突出して保持器34の軸方向への移動を規制する鍔部32aを有する。この鍔部32aは、外輪部材32の円周方向両端部から円周方向に突出する突出部32cをさらに有する。
上記構成とすることにより、保持器34の軸方向の位置決めをさらに確実に行うことができる。特に、複数のセグメントを円周方向に連ねて構成するセグメント保持器を採用した場合に効果が大きい。なお、この突出部32cは、後述するプレス加工工程において一体形成してもよいし、外輪部材32を形成した後で溶接等により後付けしてもよい。
次に、この発明の一実施形態に係る外輪部材22の製造方法を説明する。まず、出発材料としては、炭素含有量が0.15wt%以上、1.1wt%以下の炭素鋼を使用する。具体的には、炭素含有量が0.15wt%以上、0.5wt%以下のSCM415やS50C等、または、炭素含有量が0.5wt%以上、1.1wt%以下のSAE1070やSK5等が考えられる。
なお、炭素含有量が0.15wt%未満の炭素鋼は、焼入処理によって浸炭硬化層が形成されにくく、外輪部材22に必要な硬度を得るためには、浸炭窒化処理を行う必要がある。浸炭窒化処理は、後述する各焼入処理と比較して設備費用が高額になるので、結果として、針状ころ軸受21の製造コストが上昇する。また、炭素含有量が0.15wt%未満の炭素鋼では浸炭窒化処理によっても十分な浸炭硬化層が得られない場合があり、軌道面に表面起点型の剥離が早期に発生する恐れがある。一方、炭素含有量が1.1wt%を超える炭素鋼はで加工性が著しく低下するので、加工精度が低下したり、加工工数の増加による製造コストの上昇が問題となる。
外輪部材22の具体的な製造工程としては、まず、鋼板を打ち抜き加工して外輪部材22の外形を形成する。なお、順送プレスを用いる場合には、各加工工程の加工位置を決めるためのパイロット穴を形成すると共に、隣接する外輪部材との間に連結部を設けるとよい。
次に、曲げ加工により平板状の外輪部材22が所定の曲率となるように折り曲げると共に、軸方向の両端部を径方向内側に折り曲げて鍔部22aを形成する。この工程では、材料の破損等を防止するために、複数回に分けて曲げ加工を行う。
上記のプレス加工工程終了後、外輪部材22に必要とされる硬度等の所定の機械的性質を得るために、熱処理を行う。なお、軌道輪として機能する外輪部材22の内径面の表面硬さHvは、635以上が必要となる。
外輪部材22が十分な深さの硬化層を得るためには、出発材料の炭素含有量によって適切な熱処理方法を選択する必要がある。具体的には、炭素含有量が0.15wt%以上、0.5wt%以下の材料の場合には浸炭焼入処理を、炭素含有量が0.5wt%以上、1.1wt%以下の材料の場合には光輝焼入処理または高周波焼入処理を施す。
浸炭焼入処理は、高温の鋼に炭素が固溶する現象を利用した熱処理方法であって、鋼内部は炭素量が低いまま、炭素量の多い表面層(浸炭硬化層)を得ることができる。これにより、表面は硬く、内部は軟らかく靭性の高い性質が得られる。また、浸炭窒化処理設備と比較して設備費用が安価である。
光輝焼入処理は、保護雰囲気や真空中で加熱することによって、鋼表面の酸化を防止しながら行う焼入処理を指す。また、浸炭窒化処理設備や浸炭焼入処理設備と比較して設備費用が安価である。
高周波焼入処理は、誘導加熱の原理を利用して、鋼表面を急速に加熱、急冷して焼入硬化層を作る方法である。他の焼入処理設備と比較して設備費用が大幅に安価であると共に、熱処理工程でガスを使用しないので環境に優しいというメリットがある。また、部分的な焼入処理が可能となる点でも有利である。
さらに、焼入によって生じた残留応力や内部ひずみを低減し、靭性の向上や寸法を安定化させるために、上記の焼入処理の後に焼戻を行うのが望ましい。
最後に、針状ころ23の軌道面となる内径面を平滑な面にするために、研削加工が施される。研削方法としては、バレル研磨等が採用される。
なお、上記の加工工程は、この発明に係る外輪部材の製造方法の一例であって、各工程をさらに細分化してもよいし、必要な工程をさらに追加することもできる。また、加工工程の順番も任意に入れ替えることができるものとする。
さらに、上記の各工程は、それぞれ別々の工程として単能プレスで行ってもよいが、順送プレス、または、トランスファプレスによって行うこととしてもよい。これにより、各工程を連続的に行うことができる。また、上記の各工程の全部または一部に相当する加工部を有する外輪部材22の製造装置を使用することにより、生産性を高めることができ、結果として針状ころ軸受21の製品価格を抑えることができる。
なお、本明細書中で「順送プレス」とは、プレス内に複数の加工工程を持ち、材料をプレス入口のフィーダにより各工程を移動させることによって、材料を連続的に加工する方法を指すものとする。また、本明細書中で「トランスファプレス」とは、複数の加工工程を必要とする場合に、各工程を行うステージを必要数分設け、搬送装置によって工程品を移動させながら、各ステージで加工を行う方法を指すものとする。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明は、自動車用エンジンのカムシャフトを支持するカムシャフト支持構造および内燃機関に有利に利用される。
この発明の一実施形態に係るカムシャフト支持構造の組込み前の状態を示す図である。 この発明の一実施形態に係るころ軸受の外輪部材を示す図である。 この発明の一実施形態に係るころ軸受の保持器の側面図を示す図である。 図3の保持器の分割部分を含む部分断面図である。 図1のカムシャフト支持構造の組込み後の状態を軸方向から見た断面図である。 図1のカムシャフト支持構造の組込み後の状態を径方向から見た断面図である。 この発明の他の実施形態に係るカムシャフト支持構造を示す図である。 この発明のさらに他の実施形態に係るカムシャフト支持構造を示す図である。 この発明の一実施形態に係る内燃機関のシリンダ1つを示す断面図である。 図9の内燃機関に採用されるクランクシャフトを示す図である。 図9の内燃機関に採用されるカムシャフトを示す図である。 従来のカムシャフト支持構造を示す図である。
符号の説明
11 内燃機関、12 シリンダブロック、12a シリンダ、13,108 シリンダヘッド、13a 吸気路、13b 排気路、13c ベアリングキャップ、13d 係合溝、14 ピストン、15 クランクシャフト、15a 軸部、15b クランクアーム、15c クランクピン、16 コンロッド、17,18 バルブ、17a,18a バルブステム、17b,18b バルブヘッド、17c,18c バルブスプリング、19,101 カムシャフト、19a 軸部、19b カム、19c 長径部、19d 短径部、101a カムローブ、101b ジャーナル部、101c 端部大径部、20 スパークプラグ、21,31 針状ころ軸受、22,32 外輪部材、22a,32b 鍔部、22b 油穴、32c 突出部、23 針状ころ、24 保持器、24a,24b 切断端面、24c ポケット、25 リング部材、102 ころ軸受、103 ころ、104,105 保持体、106,107 レース板、109 キャップ。

Claims (3)

  1. カムシャフトと、
    前記カムシャフトを収容するハウジングと、
    前記カムシャフトを前記ハウジングに対して回転自在に支持するころ軸受とを備えるカムシャフト支持構造であって、
    前記ころ軸受は、円弧形状の外輪部材と、複数のころとを備え、
    前記複数のころの径方向外側に位置する軌道面は、前記ハウジングの前記カムシャフトを収容する領域に嵌まり込む前記外輪部材の内径面と、前記外輪部材の円周方向端部に連なる前記ハウジングの内周面とに形成され、
    前記外輪部材は、薄板をプレス加工後焼入を施して製造され、軸方向両端部から径方向内側に突出した鍔部を含み、
    前記鍔部は前記外輪部材の円周方向端部から円周方向に突出する突出部を有する、カムシャフト支持構造。
  2. 前記外輪部材は、前記カムシャフトの負荷領域を含む位置に配置される、請求項1に記載のカムシャフト支持構造。
  3. ハウジングと、
    前記ハウジング内に設けられたシリンダと、
    前記シリンダに連通する吸気路および排気路を開閉する弁と、
    前記弁の開閉のタイミングを制御するカムシャフトと、
    前記カムシャフトを回転自在に支持するころ軸受とを備える内燃機関であって、
    前記ころ軸受は、円弧形状の外輪部材と、複数のころとを備え、
    前記複数のころの径方向外側に位置する軌道面は、前記ハウジングの前記カムシャフトを収容する領域に嵌まり込む前記外輪部材の内径面と、前記外輪部材の円周方向端部に連なる前記ハウジングの内周面とに形成され、
    前記外輪部材は、薄板をプレス加工後焼入を施して製造され、軸方向両端部から径方向内側に突出した鍔部を含み、
    前記鍔部は前記外輪部材の円周方向端部から円周方向に突出する突出部を有する、内燃機関。
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