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JP5198687B2 - 組織状植物蛋白素材およびその製造方法 - Google Patents

組織状植物蛋白素材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、食感が改善された組織状植物蛋白素材およびその製造方法に関する。
植物由来の蛋白質素材等の植物蛋白原料を主原料とし、一軸または二軸押出機(エクストルーダー)を用いて高温、高圧下に押し出し膨化させて得られる組織状植物蛋白素材は、畜肉様の食感を有するので、従来から、ハンバーグやミートボール、ギョーザ、肉まん、シューマイ、メンチカツ、コロッケ、そぼろ等の畜肉を使用した惣菜に配合され広く利用されている。しかし、従来の組織状植物蛋白素材は、畜肉等に比べると食感が軟らかく、配合量が増加すると上記の惣菜の食感を軟らかくしてしまうため、配合量が制限されてしまうという問題がある。
このような事情に鑑み、従来から、組織状植物蛋白素材の食感改良については様々な研究がなされてきた。例えば、特許文献1のように、植物蛋白原料を組織化する際にカルシウム塩を添加することで、硬くて弾力性に富み、噛み応えのある組織状植物蛋白素材を得ることが知られている。また、特許文献2のように、植物蛋白原料を組織化する際にクエン酸を添加することで、硬い咀嚼性ある食感を持った組織状植物蛋白素材が得られることが知られている。しかし、カルシウム塩やクエン酸を添加した場合は、カルシウム塩由来の苦味やクエン酸由来の酸味が出てしまい、苦味や酸味といった異味を呈することなしに食感が改善された組織状植物蛋白素材を得ることはこれまで報告されていない。
特開平06−165644号公報 特開昭56−58460号公報 特開昭62−208241号公報 特開平3−127966号公報
このように、従来の組織状植物蛋白素材における食感を改良する技術では、苦味や酸味を付与せずに、惣菜等に対する配合量の制限を受けにくい、より畜肉に近い硬い食感の組織状植物蛋白素材を得ることは困難であった。
そこで本発明は、より畜肉に近い硬い食感を有し、かつ苦味や酸味の少ない風味の良好な組織状植物蛋白素材を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、植物蛋白原料を含む原料に加水して加圧加熱下に押出し、膨化させて組織状植物蛋白素材を製造する際に、その原料に所定量の糖アルコールを添加し、かつ原料の水分量を調整することにより、苦味や酸味を付与することなく、より畜肉に近い、しっかりとした食感に改善された良好な風味を有する組織状植物蛋白素材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)植物蛋白原料と糖アルコールを含有し、糖アルコールの含量が乾燥重量中0.1重量%以上であり、膨化された組織を有し、かつ1倍以上の吸水率を有することを特徴とする組織状植物蛋白素材、
(2)植物蛋白原料の割合が、組織状植物蛋白素材の乾燥重量中65重量%以上である、前記(1)記載の組織状植物蛋白素材、
(3)植物蛋白原料の割合が、組織状植物蛋白素材の乾燥重量中90重量%以上である、前記(1)記載の組織状植物蛋白素材、
(4)畜肉を原料として含まない、前記(1)記載の組織状植物蛋白素材、
(5)乾燥重量中、糖アルコールを0.1〜20重量%含有する前記(1)記載の組織状植物蛋白素材、
(6)乾燥重量中、糖アルコールを0.7〜4.5重量%含有する前記(1)記載の組織状植物蛋白素材、
(7)植物蛋白原料が大豆蛋白素材を含む前記(1)記載の組織状植物蛋白素材、
(8)糖アルコールがソルビットである前記(1)記載の組織状植物蛋白素材、
(9)吸水率が1.5倍以上である、前記(1)記載の組織状植物蛋白素材、
(10)水分が15重量%以下である、前記(1)記載の組織状植物蛋白素材、
(11)植物蛋白原料と糖アルコールを含有し、糖アルコールの含量が乾燥重量中0.5〜4.5重量%であり、畜肉を原料として含まず、植物蛋白原料の割合が、乾燥重量中90重量%以上であり、膨化された組織を有し、1.5倍以上の吸水率を有し、かつ水分が15重量%以下であることを特徴とする組織状植物蛋白素材、
(12)糖アルコールがソルビットである前記(11)記載の組織状蛋白素材、
(13)植物蛋白原料を含む原料に加水して加圧加熱下に押出し、膨化させる組織状植物蛋白素材の製造方法において、原料全体の乾燥重量に対して0.7〜10重量%の糖アルコールを加え、かつ原料全体の水分を15〜50重量%に調整することを特徴とする前記(1)記載の組織状植物蛋白素材の製造方法、
(14)得られる組織状植物蛋白素材が、前記(11)記載のものである、前記(12)記載の組織状植物蛋白素材の製造方法、
などを提供するものである。
なお、糖アルコールの添加に関し、本発明の目的とは異なるものの、特許文献3には、分離大豆たん白と脂質を必須とする混合物をエクストルーダーで加圧練捏する際に、糖アルコールを添加する加工食品の製造方法が開示され、また特許文献4には、畜肉と植物性蛋白を必須とする混合物をエクストルーダーで組織化する際に糖アルコールであるソルビットを添加する畜肉の組織化方法が、それぞれ開示されている。
しかしながら、特許文献3では原料の水分が60〜85%と多いことから、エクストルーダーで加工してもプリン様凝固物、かまぼこ様凝固物やその他吸水率が1倍未満の膨化していない、本発明とは全く異なる凝固物しか得られない。
また、特許文献4は、牛肉そのものやビーフジャーキーなどの畜肉製品の類似品をエクストルーダーで製造する発明であり、畜肉の食感についての開示のみであり、膨化した組織状植物蛋白素材の食感改良を開示するものではない。ソルビットについても、畜肉の組織化物(畜肉類似品)の食感が硬くなるのを抑制する可塑剤の目的で添加されており、低水分かつ高吸水率の膨化した組織状植物蛋白素材に対する添加効果については不明である。
本発明によれば、より畜肉に近い硬い食感を有し、かつ苦味や酸味の少ない風味の良好な、かつ惣菜等に対する配合量の制限を受けにくい組織状植物蛋白素材を提供することができる。
本発明は組織状植物蛋白素材およびその製造方法に関する。以下、本発明の実施態様について説明する。
(組織状植物蛋白素材)
本発明の組織状植物蛋白素材は、植物蛋白原料と糖アルコールを含有し、糖アルコールの含量が乾燥重量中0.1重量%以上であり、膨化された組織を有し、かつ1倍以上の吸水率を有することを特徴とするものである。本発明の組織状植物蛋白素材は各種の大きさと形状を有し、形状として代表的なものには顆粒状や棒状、また、切断された組織状植物蛋白素材をさらにカッターや粉砕機等で適当な大きさに切断したフレーク状のものがある。いずれも畜肉の代替用途として用いることができるものである。
(製造方法)
本発明の組織状植物蛋白素材の製造方法は、植物蛋白原料を含む上記の原料に加水して、加圧加熱下に押出し、組織を膨化させることを特徴とする。具体的には、一軸または二軸押出機(エクストルーダー)に加水した原料を導入し、押出機内部が加圧加熱された条件下で原料を押出機の出口部分にあるダイから常圧下に押出し、押出物を切断および乾燥する。
(植物蛋白原料)
本発明で用いる植物蛋白原料は、植物由来の蛋白質素材であり、例えば、大豆、えんどう豆、菜種、綿実、落花生、ゴマ、サフラワー、向日葵、コーン、ベニバナ、ココナッツ等の油糧種子、あるいは、米、大麦、小麦等の穀物種子由来の蛋白素材等や、これらの抽出・加工蛋白、例えば、米グルテリン、大麦プロラミン、小麦プロラミン、小麦グルテン、大豆グロブリン、大豆アルブミン落花生アルブミン等、これらの熱処理、酸処理、アルカリ処理、酵素処理蛋白等が挙げられる。入手の容易性および経済性等の点では大豆蛋白素材が好ましい。また、ここでいう大豆蛋白素材は、大豆由来の蛋白質を含む素材であればよく、丸大豆や半割れ大豆などの全脂大豆や、油脂を除去した減脂大豆や脱脂大豆、含水エタノール洗浄や酸性水洗浄等により蛋白質を濃縮した濃縮大豆蛋白、さらには分離大豆蛋白または豆乳、ならびにそれらの加水分解物、オカラ、ホエー等が例示され、これらの少なくとも1種以上を選択できる。とりわけ、コストの面から脱脂大豆を用いることが好ましい。
本発明の組織状植物蛋白素材中における植物蛋白原料の割合は、求める品質により他原料との兼ね合いで適宜設定することができるが、特に組織状植物蛋白素材の乾燥重量中65重量%以上、例えば70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、90重量%以上とすることができる。
(糖アルコール)
本発明で用いる糖アルコールは、アルドースやケトース等の単糖類のカルボニル基が還元されて生成される物質や、二糖類以上の多糖類の還元末端のカルボニル基が還元されて生成する物質であり、例えばソルビトール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、パラチニット、ラクチトール、マルチトール、還元水飴などが使用でき、これらは2種以上を組み合わせることもできる。これらの糖アルコールは、上記の組織状植物蛋白素材の乾燥重量中に0.1重量%以上含有することが重要であり、好ましくは0.25重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、最も好ましくは0.7重量%以上含有させるようにすることが適当である。含有量が少なすぎると、食感改良効果が十分には表れにくい。含有量の上限は特に設定されないが、含有量が最適範囲から高くなるに連れて得られる組織状植物蛋白素材の食感が軟化傾向となり、また糖アルコールの甘みが強くなることが風味上不適となる場合があるため、この場合は20重量%以下、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下に設定すればよい。これらの糖アルコールは、原料中に以下に記載する種々の形態で添加することができる。
(糖アルコールの添加形態)
上記の糖アルコールとしては、単離精製した種々の糖アルコールを使用しても良いし、糖アルコールを含む製剤を用いることもできる。また、糖アルコールは果実類に含有されているため、果汁ジュースなどの飲料等に含まれる糖アルコールを用いることもできる。また、その他の食品として、キャンディー等の菓子類に含まれる糖アルコールを用いることもできる。これらの使用量は、含まれる糖アルコールが上記した範囲となる様に調整される。
(糖アルコールの定量方法)
組織状植物蛋白素材中の糖アルコールの含量は、公定されているか公知の文献に記載されている方法に準じて定量することができる。例えば、食品添加物公定書に示されている方法である強酸性陽イオン交換樹脂のカラムを用いた液体クロマトグラフィーを行なう方法で定量することができる。
(油脂)
組織状植物蛋白素材の原料としては、他に油脂を用いることができる。また、植物蛋白原料として脱脂していない圧扁大豆を併用する場合は、全脂大豆に含まれる油脂を利用することができる。添加する油脂としては大豆油、菜種油、ヒマワリ油、ベニバナ油、コーン油、米糠油、ゴマ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオバター、などの植物油脂、魚油、鯨油、乳脂、牛脂、豚脂などの動物油脂、およびこれらを分別、硬化、エステル交換した油脂などを用いることができる。
油脂を適量用いることにより、以下に記載する押出機からの押出に際し、蛋白素材の膨化を適度に抑制することができる。膨化が適度に抑制されれば食感は適度に硬くなる方向に進む。適度な硬さはより畜肉に近い食感の硬さに近づける効果がある。
添加する油脂の量は特に限定しないが、組織状植物蛋白素材の原料の乾燥重量に対して通常0.01重量%〜6重量%が適当であり、油脂をエマルジョンとして添加する場合には多く含ませることができ、組織状植物蛋白素材の原料の乾燥重量に対して0.1重量%〜12重量%が適当である。添加する油脂の量が多すぎると、膨化が抑制されて、以下に記載する吸水率が低下した、畜肉とは異なる食感となる。
(他の原料)
植物蛋白原料に糖アルコールを加えた原料には、油脂の他、グルテン、卵白、カゼイン等のその他の蛋白や、澱粉、多糖類、調味料、食物繊維、ゲル化剤、その他の公知の添加物を加えることもできる。
ただし、畜肉については動物性の原料であり、これを加えると植物性の蛋白素材とは言い難くなり、また畜肉は衛生面から取扱にくいため含まないことが好ましい。
(押出機)
加圧加熱は、一軸押出機や二軸押出機などの公知の押出機(エクストルーダー)を用い、公知の方法に従って行うことができる。混練が強く安定的に組織化しやすい二軸以上の軸を有する押出機を用いることが好ましく、押出機は、原料供給口、バレル内をスクリューにより原料送り、混合、加圧(圧縮)、加熱機構を有し、先端バレルに装着したダイを有するものを用いることが好ましい。
(加水)
組織状植物蛋白素材の原料を、押出機に供給する際に、加水を行う。本発明の製造方法では、押出機に供給される原料全体の水分が15〜50重量%、好ましくは20〜40重量%となるように加水することが重要である。原料全体の水分が多すぎると、膨化が抑制され、以下に記載する吸水率が低下した、畜肉とは異なる食感の組織状植物蛋白素材が生じ、好ましくない。また、本発明に用いる水は特に制限するものではなく、膨化、風味等に影響のない範囲で水溶性成分を含む水性溶媒を用いることができる。
(組織化条件)
組織状植物蛋白素材の原料を押出機に供給し、加水しながら加圧加熱下にダイより押し出す際の組織化条件は公知の条件に基づいて適宜選択および調整できる。非限定的な例を示すと、加熱条件は先端バレル温度120〜220℃が好ましく、140〜200℃がさらに好ましい。加圧条件はバレル先端のダイ圧力が2〜100kg/cm2が好ましく、5〜40kg/cm2がさらに適当である。
ダイの種類は、押出機のスクリュー送り方向に押し出すダイでも、送り方向の外周方向に押し出す、いわゆるペリフェラルダイでも用いることができる。ダイの径は求める製品の大きさなどにより適宜決めることができる。
(水分)
本発明において、組織状植物蛋白素材をダイより押し出し、切断および乾燥する際の乾燥条件は公知の条件に基づいて適宜選択および調整できる。非限定的な例を示すと、流動層乾燥機を用い、60℃〜100℃の熱風に組織状植物蛋白素材を10分間〜30分間曝すことによって乾燥させることが適当である。また、乾燥後に得られる組織状植物蛋白素材の水分は、保存性の点から15重量%以下が好ましく、1〜12重量%がさらに好ましく、3〜10重量%がさらに適当である。
(吸水率)
本発明の組織状植物蛋白素材は、吸水率が1倍以上であることが特徴である。好ましくは吸水率が1.5倍以上であることが適当である。吸水率が1倍より低いと未膨化のぼそぼそとした畜肉とは異なる食感になってしまい、本発明の特徴とする畜肉に近い食感から異なる食感の組織状植物蛋白素材となる。吸水率の上限は特に限定するものではなく、原料に対する加水量により適宜選択できる。
ここでいう吸水率とは、下記のようにして、求められるものである。すなわち、組織状植物蛋白素材30gに25℃の水150gを加え、10分間吸水させて余剰の水を分離する。吸水後の試料の重さ(W)を測定し、次式により吸水率を求める。
吸水率(倍)=(W−30)/30
(利用)
本発明の組織状植物蛋白素材は、畜肉に近い硬い食感を有しながらも適度に膨化して吸水率が1倍以上あるので、ハンバーグやミートボール、ギョーザ、肉まん、シューマイ、メンチカツ、コロッケ、そぼろなどの畜肉を使用した惣菜の他、ソースやドレッシング等の調味料の具材や、スープや即席麺の具材、ふりかけ、フィリング等、種々の食品に好適に利用することができる。また、組織状植物蛋白素材は、肉粒感の付与、肉汁流出防止、加熱歩留り向上を目的に上記惣菜等に配合されることが多いが、その組織状植物蛋白素材の上記惣菜に対する配合量は、組織状植物蛋白素材を乾燥重量で1重量%以上、好ましくは3重量%以上配合することが適当である。
以下に実施例を示すが、「%」、「部」は特に断りがない限りいずれも重量基準を意味する。
(実験例1) 糖アルコールの使用
n−ヘキサンで脱脂した脱脂大豆粉末100重量部に、表1に示す各糖アルコール0.5〜4重量部および、組織化時の原料水分が30重量%となるように水を押出機に供給して加熱、加圧処理を行い組織化した。糖アルコールは以下の種類のものを用いた。
・ソルビトール
・マルチトール
・エリスリトール
・ラクチトール
・キシリトール
なお、押出機は二軸押出機を以下の条件で使用した。
ダイ:直径2.5mm×10穴、処理量(粉体原料流量):30kg/h、スクリュー回転数:200rpm、バレル入口側温度:80℃、中央部:120℃、出口側:150℃。
得られた組織状植物蛋白素材は、長さ5mm程度となるようにダイス出口直後にカッターで切断し、乾燥機にて水分8重量%となるように熱風で乾燥を行った。
得られた組織状植物蛋白素材を水戻しし、10名の専門パネラーの絶対評価により10点満点の評点法で硬さと風味について官能評価を行った。硬さの評価点については、パネラー個々の経験に基づいて、最も硬いと考えるものを10点とし、軟らかい食感と考えるものほど点数を低くした。風味の評価点については、最も苦味および酸味の少ないと考えるものを10点とし、苦味および酸味の強いと考えるものほど点数を低くした。また、各評価とも、平均点が7.5以上を「◎」、5.0〜7.5を「○」、2.5〜5.0を「△」、2.5未満を「×」で表した。また、吸水率については、以下に示す方法で測定した。
評価結果を、以下の表1に示す。
吸水率は、試料30gに25℃の水150gを加え、10分間吸収させた後、濾布を使用して5分間自然放置させ過剰の水を分離させ、吸水後の試料の重さ(W)を測定し、次式により吸水値を求めることにより算出した。
吸水率(倍)=(W−30)/30
Figure 0005198687
組織状植物蛋白素材Aは、畜肉に比べると食感が軟らかく、従来から存在する組織状植物蛋白素材と同等の食感であった。組織状植物蛋白素材Bは、組織状植物蛋白素材Aに比べ、より畜肉に近い硬いしっかりとした食感であった。組織状植物蛋白素材C、D、Eは、組織状植物蛋白素材AはもちろんのことBと比べても、より畜肉に近い硬いしっかりとした食感になっていた。また、種々の糖アルコールを使用したF、G、H、Iは、いずれも畜肉に近い硬いしっかりとした食感を有する組織状植物蛋白素材であった。また、風味に関しては、糖アルコールを使用することで、組織状植物蛋白素材そのものの苦味および酸味を低減させた組織状植物蛋白素材を得ることが出来た。
(実験例2) 組織化時の原料水分と他素材との比較
実験例1と同様に、表2に示す配合で原料を加熱、加圧処理を行い組織化した。さらに実験例1と同様に乾燥し、パネラーにより評価を行った。
評価結果を、以下の表2に示す。
Figure 0005198687
組織状植物蛋白素材Jは、組織化に必要な水分が足りずに、組織化しなかったため評価できなかった。組織状植物蛋白素材K、Lは、実験例1の組織状植物蛋白素材Cと同様により畜肉に近い硬いしっかりとした食感になっていた。組織状植物蛋白素材Mは、吸水率が1倍未満となっており、未膨化のぼそぼそとした畜肉とは異なる食感になっていた。組織状植物蛋白素材N、Oは、畜肉に近い硬いしっかりとした食感になっていたが、添加したカルシウム塩やクエン酸それぞれの苦味や酸味が強く出てしまっており、好ましくない風味となっていた。
(実験例3) 糖アルコール添加量の増加の影響
糖アルコールの添加量を実験例1よりもさらに増加したときに得られる組織状植物蛋白素材の品質への影響を調べた。
実験例1と同様に、表3に示す配合で原料を加熱、加圧処理を行い組織化した。さらに実験例1と同様に乾燥し、パネラーにより評価を行った。なお、本例ではキシリトールの代わりにマンニトールを使用した。
評価結果を、以下の表3に示す。
Figure 0005198687
表3の結果から、糖アルコールの添加量を5%から増加させるにつれ、風味は優れるものの、硬さが軟化傾向となり、加えて20%まで増加させると風味も甘味によって風味はやや低下する傾向となった。
以上記載したごとく、本発明によれば、惣菜等に対する配合量の制限を受けにくい、より畜肉に近いしっかりとした食感に改善された、苦味や酸味の少ない風味の良好な組織状植物蛋白素材を提供することができる。

Claims (14)

  1. 植物蛋白原料と糖アルコールを含有し、糖アルコールの含量が乾燥重量中0.1重量%以上であり、膨化された組織を有し、かつ1倍以上の吸水率を有することを特徴とする組織状植物蛋白素材。
  2. 植物蛋白原料の割合が、組織状植物蛋白素材の乾燥重量中65重量%以上である、請求項1記載の組織状植物蛋白素材。
  3. 植物蛋白原料の割合が、組織状植物蛋白素材の乾燥重量中90重量%以上である、請求項1記載の組織状植物蛋白素材。
  4. 畜肉を原料として含まない、請求項1記載の組織状植物蛋白素材。
  5. 乾燥重量中、糖アルコールを0.1〜20重量%含有する請求項1記載の組織状植物蛋白素材。
  6. 乾燥重量中、糖アルコールを0.7〜10重量%含有する請求項1記載の組織状植物蛋白素材。
  7. 植物蛋白原料が大豆蛋白素材を含む請求項1記載の組織状植物蛋白素材。
  8. 糖アルコールがソルビットである請求項1記載の組織状植物蛋白素材。
  9. 吸水率が1.5倍以上である、請求項1記載の組織状植物蛋白素材。
  10. 水分が15重量%以下である、請求項1記載の組織状植物蛋白素材。
  11. 植物蛋白原料と糖アルコールを含有し、糖アルコールの含量が乾燥重量中0.5〜4.5重量%であり、畜肉を原料として含まず、植物蛋白原料の割合が、乾燥重量中90重量%以上であり、膨化された組織を有し、1.5倍以上の吸水率を有し、かつ水分が15重量%以下であることを特徴とする組織状植物蛋白素材。
  12. 糖アルコールがソルビットである請求項11記載の組織状植物蛋白素材。
  13. 植物蛋白原料を含む原料に加水して加圧加熱下に押出し、膨化させる組織状植物蛋白素材の製造方法において、原料全体の乾燥重量に対して0.7〜10重量%の糖アルコールを加え、かつ原料全体の水分を15〜50重量%に調整することを特徴とする請求項1記載の組織状植物蛋白素材の製造方法。
  14. 得られる組織状植物蛋白素材が、請求項11記載のものである、請求項13記載の組織状植物蛋白素材の製造方法。
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