携帯電話などの移動機に内蔵されているリチウムイオン電池などの二次電池は、商用電力などから電力供給されるACアダプタなどと接続することによる有線充電によって、又は無線で電力を送電するワイアレス電源などの無線充電によって、二次電池の充電を制御する電流電圧変換回路を経由して、充電される。
従来の二次電池の充電回路を図1、2に示す。図1では、リチウムイオン電池などの充電・放電が可能な二次電池1、商用電力(AC100Vなど)などの外部からの交流電力を5Vなどの直流電力に変換するACアダプタ11、ACアダプタからの電力を二次電池が充電に必要とする電流及び電圧に変換するための電流・電圧変換回路2、二次電池に流れ込む充電電流を測定するための電流検出抵抗3、電流検出抵抗の両端の電圧を測定するための2つの電圧端子、すなわち、電流・電圧変換回路と電流検出抵抗の間と電流・電圧変換回路とに接続する電圧端子21と、電流検出抵抗と二次電池の間と電流・電圧変換回路とに接続する電圧端子22とからなり、ACアダプタ11からの電力を、電流・電圧変換回路2を介して、二次電池1に供給することにより充電を行っている。また、電流・電圧変換回路2は、二次電池1の電池電圧は電圧端子22から、二次電池1に流れ込む充電電流の値は電圧端子22と電圧端子21の値の差を電流検出端子の抵抗値で割ることから算出している。電流・電圧変換回路2はそれら検出された電池電圧と充電電流を使って、二次電池1の電池電圧と充電電圧を監視し、充電制御に使っている。なお、電流・電圧変換回路2は所定の固定された充電条件(上限電圧Va、充電電圧Ia)を回路内で設定している。
図2は、図1で電力の入力電源部分にACアダプタ11の代わりに無線で電力を送電するワイアレス電源(送電側ワイアレス電源12、受電側ワイアレス電源13)を接続している以外は、図1と同様の充電回路を示している。ワイアレス電源は、数100kHzの高周波発生回路と送信コイルからなる送電側ワイアレス電源12と受信コイルと直流を発生させる整流回路からなる受電側ワイアレス電源13からなり、送電コイルと受電コイルとの間を空間経由して、交流磁束を飛ばしてエネルギーを伝送する回路方式である。携帯電話などにワイアレス電源を適用する場合、直径が5cm程度の平型の送電コイルと受電コイルが使われる。送電できる電力としては、典型的には、パワー5W〜30W程度の電力が送電される。
図1、図2での二次電池1の従来の充電フローを図3に示す。ステップS10における充電スタート後、予備充電として、二次電池1の電池電圧V1がある電圧値Vb(例えば、2.5Vなど)以下の場合は、微小電流(例えば、10mAなど)を流す(ステップS12)。
その後、二次電池1の電圧V1がある電圧値Vb以上になった時点で、二次電池1に対して充電電流I1として一定電流であるIaを流しだす(ステップS14)。なお、例えば、二次電池1である携帯電話用のリチウムイオン電池の電池容量が800mAh(mAhは電池容量の単位:電流(mA)×時間(h))である場合、1Cの電流を充電するということ(Iaを1C(C:Capacity)と設定しているとき)は、I1=Ia=800mA(1Cは電池を1時間で放電完了する電流値のこと(1時間放電率))の電流で充電することを意味する。この電流は、電流・電圧変換回路2により制御され、800mAの電流を発生させ二次電池1に供給される。なお、この充電状態を定電流充電(CC充電:Constant Current)という。この状態で二次電池1の電圧がVbから上限電圧Va(Va=4.2V)まで上昇するまで、この定電流充電が継続される。
その後、二次電池1の電池電圧V1が上限電圧値Va(4.2Vなど)に達した時点で(ステップS16:Yes)、二次電池1の電池電圧V1をVaに保持するように定電圧充電(CV充電:Constant Voltage)が行われる(ステップS18)。この充電状態では、二次電池電圧V1を一定値に保持するように、充電電流I1が電流・電圧変換回路2により制御される。この定電圧制御(CV制御)により、二次電池の充電が進むに従い、充電電流I1が低減される(電流値が垂下する)。そして、充電電流I1がある電流値Ib以下(例:50mA)になった時点で(ステップS20:Yes)、充電が完了して、二次電池1は満充電(100%の充電状態)となる(ステップS22)。
以上の一連の充電方式を"CC−CV充電(定電流定電圧充電)"と呼んでいる。
以上のCC−CV充電の動作が、図4において二次電池1の電池電圧V1と充電電流I1との動作軌跡図として示される。図4に示されるように、予備充電後の動作として、まず定電流充電(CC充電)がA点から始まる。定電流Iaの充電を継続するに従って二次電池1の電池電圧V1は上昇していき、軌跡上ではA点からB点に移動していく。電池電圧V1がVa(4.2V)に達した段階(B点)で、定電流充電(CC充電)から定電圧充電(CV充電)に移行する。B点からC点では、二次電池1の電池電圧V1は一定(Va)で、充電が進行するにしたがって、電流I1は減少していく。電流I1がIbの値(例えば、50mAなど)に達した段階で充電が終了し、二次電池1は満充電状態となる。
さらに、以上のCC−CV充電動作が動作波形を示す図5により説明される。図5では、上述した予備充電が完了した後のCC−CV充電動作が示され、予備充電から本充電に切り替わった時点での充電時間をゼロ(0)時として、それ以降の波形が示される。定電流(CC)充電の期間では、充電電流I1は一定値Iaであり、電池電圧V1はVbからVaに増加していく。それによって二次電池1の充電量Qも増えていく。そして、電池電圧V1がVa(4.2V)に達した時点で、定電圧(CV)充電に移行する。定電圧(CV)充電の期間では、電池電圧V1はVaの値で一定になるように、充電量Qの増加に伴いながら充電電流I1が低減されていく。そして、充電電流I1が充電終止電流Ibまで低下した時点で、充電が終了し、二次電池1は満充電(100%)状態となる。
ところで、ACアダプタ11からの電力供給でも、ワイアレス電源12,13からの電力供給でも、従来の充電回路で急速充電を行う場合、充電回路内の電流・電圧変換回路2にあらかじめ上限電圧Vaと充電電流Iaを内部メモリなどに書き込んでおく必要がある(通常、書き換え不可)。このため、一旦、低速充電(1C以下)、通常充電(1C程度)または急速充電(1C以上)のVaとIaを電流・電圧変換回路2に書き込んでしまった場合、安全上の観点で充電を遅くしたい場合や、夜間時のゆっくりした充電などといったいろいろなシーンに応じて通常充電や低速充電など自由に充電条件を変更できないという問題点があった。
さらに、急速充電を行う場合、Iaの値を大きくすることとなるが、従来の回路ではVaは4.2Vで一定としており、Vaを一定にしたままIaを大きくすると、二次電池1の異常時(短絡時など)の安全性が低下することが懸念される。しかしながら、従来の充電回路では充電電流Iaを大きくしても上限電圧Vaは4.2Vに固定されたままであるため、充電動作上の安全性低下の懸念が残っている。
さらに、従来の充電回路では、ACアダプタ11からの電力供給でも、ワイアレス電源12、13からの電力供給でも、それとは独立に充電回路の充電条件が電流・電圧変換回路2に対して固定されたVa,Iaに設定される。従って、入力コネクタ(有線充電時の充電端子のこと)の電流制限やACアダプタの電気容量の制約から、急速充電が難しいACアダプタからの電力給電される場合でも、ワイアレス電源内蔵の幅の広い平板コイル間で大きな電力を送電で急速充電が可能であるワイアレス電源の場合でも、従来の充電回路では充電条件の切り替え(ACアダプタに適した充電条件、ワイアレス電源に適した充電条件)を自動的にできないないという問題があった。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図6を参照して、本発明の一実施例による移動機の構成が説明される。図6は、本発明の一実施例による移動機を示す。
移動機100は、CPU(Central Processing Unit)100aと、RAM(Random Access Memory)100bと、ROM(Read Only Memory)100cと、操作部100dと、無線通信部100eと、アンテナ100fと、ディスプレイ100gと、電源部100hとを含むハードウェア構成を有する。移動機100の各機能は、RAM100bやROM100cに格納されている各機能に係るコンピュータプログラムをCPU100aが実行することにより実現される。ユーザは、移動機100に設けられた操作ボタンなどの操作部100d及び/又は各種アイコンなどを表示するディスプレイ100gなどのユーザインタフェースを介し、移動機100への指示を入力することによって、移動機100の各種機能をCPU100aに実行させる。CPU200aによる実行結果は、ディスプレイ100dなどを介しユーザに提供されてもよい。無線通信部100eは、典型的には、CPU100aにより制御され、アンテナ100fを介しネットワーク(図示せず)及び/又は他の移動機との通信を実行する。上述した移動機100の各要素は、電源部100hにより供給される電力により駆動される。電源部100hは、後述される二次電池などの電源と、当該二次電池の充電を制御する充電回路とを有する。
本実施例による移動機100は、典型的には上述したような携帯電話などの無線通信機能を有する携帯装置に適した構成を有するが、本発明は、これに限定されるものでない。本発明は、充放電可能な二次電池を電源として使用する任意の装置に適用可能である。
次に図7を参照して、本発明の一実施例による移動機100の電源部100hの構成が詳細に説明される。図7は、本発明の一実施例による充電回路を示す。なお、本実施例では、二次電池を充電するための外部電源としてワイアレス電源が使用される場合について説明する。しかしながら、本発明による充電回路は、外部電源としてACアダプタなどの有線充電が使用される場合も同様の構成及び動作となることは以下の説明から明らかであろう。
図7に示される電源部100hは、二次電池101と充電回路とを有し、充電回路は、電流・電圧変換回路102と、電流検出抵抗103と、受電側ワイアレス電源113と、電圧端子121,122と、演算関数回路123と、充電条件入力回路124とを有する。これらの要素は図7に示されるように互いに電気接続される。二次電池101は、外部電源111から商用電力(例えば、AC100Vなど)が供給される送電側ワイアレス電源112を介し無線電力伝送されることにより、充電される。
二次電池101は、リチウムイオン電池などの充電・放電が可能な任意の二次電池であり、典型的には、移動機100に着脱可能に装着される。移動機100の上述した各要素は、二次電池101から供給される電力によって駆動される。
電流・電圧変換回路102は、定電流定電圧充電方式により二次電池101を充電するため、受電側ワイアレス電源113から二次電池101に供給される電力を制御する。本実施例では、電流・電圧変換回路102は、定電流定電圧充電方式の充電パラメータである定電流充電のための電流値Iaと定電圧充電のための電圧値Vaとして、回路内に予め保持された固定値を使用するのでなく、後述される演算関数回路123から提供された可変的な電流値Iaと電圧値Vaとを使用して二次電池101の充電を制御する。すなわち、電流・電圧変換回路102は、演算関数回路123から提供された電流値Iaと電圧値Vaとに基づき、二次電池101の電池電圧が電圧値Vaに到達するまで、まず一定の電流値Iaにより二次電池101を充電する。二次電池101の電池電圧が電圧値Vaに到達すると、次に電池電圧が一定の電圧値Vaを維持するように二次電池101を充電する。この定電圧充電に伴って充電の進捗と共に二次電池101に供給される電流値は低減される。供給される電流値が所定の充電終止電流値まで低下すると、二次電池101は満充電となり、電流・電圧変換回路102は、二次電池101の充電を終了する。
電流検出抵抗103は、図示されるように、二次電池101と電流・電圧変換回路102とを接続する配線上に設けられ、二次電池101に供給される充電電流の電流レベルを測定する。測定された電流レベルは、適宜電流・電圧変換回路102に提供される。
受電側ワイアレス電源113は、送電側ワイアレス電源112から非接触又は無線形式により電力を受電する。典型的には、移動機100を送電側ワイアレス電源112に空間的に接近させると、送電側ワイアレス電源112から送出される交流磁束が、受電側ワイアレス電源113にエネルギーとして伝送され、このエネルギーを利用して受電側ワイアレス電源113から電圧が発生する。この生成された電圧から二次電池101を充電するための電力が提供される。
電圧端子121,122は、図示されるように、電流検出抵抗103の両端と電流・電圧変換回路102と接続するよう設けられ、電流検出抵抗103の両端の電圧を測定する。測定された電圧レベルは、適宜電流・電圧変換回路102に提供される。
演算関数回路123は、図示されるように、充電条件入力回路124から電流値Iaを受け取り、所定の関数を電流値Iaに適用して定電流定電圧充電のための上限電圧Vaを算出する。一実施例では、演算関数回路123は、関数Va=αIa+β(α,βは所定の定数である)を内部に組み込み、充電条件入力回路124から提供された電流値Iaを当該関数に代入することにより上限電圧Vaを算出する。演算関数回路123は、電流値Iaと共に算出した上限電圧Vaを定電流定電圧充電方式の充電パラメータとして電流・電圧変換回路102に提供する。なお、上記関数のパラメータα,βの決定方法については、以下で詳細に説明される。
なお、他の実施例では、演算関数回路123は、上述した関数の代わりに、各電流値Iaとこれらに対応する各上限電圧Vaとを関連付けた所定の対応テーブルを備えるようにしてもよい。この場合、演算関数回路123は、充電条件入力回路124から電流値Iaを受信すると、この対応テーブルを参照して、受信した電流値Iaに対応する上限電圧Vaを決定し、電流値Iaと共に決定した上限電圧Vaを定電流定電圧充電方式の充電パラメータとして電流・電圧変換回路102に提供する。典型的には、この対応テーブルにおける電流値Iaと上限電圧Vaの各組み合わせは、以下で詳細に説明されるような二次電池101を安全に充電することが可能な何れか適当な組み合わせとされる。
充電条件入力回路124は、ユーザが操作部100dを介し提供するなどによって、外部から充電条件として充電電流の電流値Iaを受け取る。典型的には、ユーザは、電流値Iaの値を入力するのでなく、1Cなどの時間放電電流値を入力する。なお、二次電池101が800mhAの電池容量を有するリチウムイオン電池である場合、1C(1時間放電電流値)は800mA、6C(1/6(10分)時間放電電流値)は4800mAに相当する。本実施例では、ユーザが定電流値を指定することが可能となり、この指定された定電流値を充電条件入力回路124から受け取った演算関数回路123により対応する定電圧値が計算され、可変的な充電パラメータにより定電流定電圧充電を実行することが可能となる。例えば、ユーザが二次電池101を急速充電したい場合には、ユーザは相対的に大きな電流値Iaを設定することが可能であり(例えば、Ia=2C〜6Cなど)、通常充電の場合には、ユーザは相対的に小さな電流値Iaを設定することが可能となる(例えば、Ia=1Cなど)。これにより、ユーザのニーズに適合した可変的な充電が可能となる。
本実施例では、充電条件入力回路124は、操作部100dを介しユーザにより直接入力された時間放電電流値に対応した電流値Iaを充電電流として使用するが、本発明はこれに限定されるものでない。好適な実施例では、ユーザに時間放電電流値を指定させる代わりに、充電方法について急速充電を所望するか、又は通常充電を所望するかユーザに選択させるようにしてもよい。ユーザが急速充電を選択した場合には、充電条件入力回路124は、より大きな電流値Iaを設定し、通常充電を選択した場合には、相対的に小さな電流値Iaを設定するようにしてもよい。
さらなる好適な実施例によると、後述されるような有線充電と無線充電の双方に対応可能な移動機では、例えば、図8に示されるような充電条件入力画面がディスプレイ100g上に表示され、ユーザが操作部100dを介し時間放電電流値を直接入力する代わりに、当該画面の選択肢を指定するようにしてもよい。図示される充電条件入力画面では、ユーザは、上述した充電方法に加えて、移動機100をACアダプタに接続することにより有線充電するか、又は移動機100を送電側ワイアレス電源112に接近させることにより無線充電するかなど、移動機100を充電するための充電機器の種別を選択することが要求される。充電条件入力回路124は、回路内部又は移動機100の何れかの記憶手段に保持される充電条件と電流値Iaとの対応関係を示すテーブル(対応情報)を参照して、選択された充電機器と充電方法とに対応する電流値Iaを演算関数回路123に提供するようにしてもよい。なお、ユーザが時間放電電流値のみを指定する実施例では、この対応情報は、時間放電電流値とこれに相当する電流値とを規定した数式などにより構成されてもよい。また、演算関数回路123が電流値(I)の代わりに時間放電電流値(C)により上限電圧を算出する場合には、充電条件入力回路124は、入力された時間放電電流値をそのまま演算関数回路123に提供してもよい。
さらなる好適な実施例では、図9に示されるように、充電条件入力回路124は、充電時刻を考慮してより詳細に電流値Ia(Ia1〜Ia6)を設定するようにしてもよい。充電時刻が夜間に該当する場合、相対的に小さな電流値Iaにより移動機100を時間をかけて充電しても構わない可能性が高いためである。なお、この充電時刻は、ユーザにより入力されてもよいし、又は移動機100のタイマー機能(図示せず)から取得するようにしてもよい。充電時刻がユーザから入力される場合には、図9に示される充電条件入力画面に充電時刻を入力するための表示が設けられるようにしてもよい。
なお、上述した実施例では、演算関数回路123と充電条件入力回路124は、ハードウェア回路により実現されているが、本発明はこれに限定されるものでない。他の実施例では、演算関数回路123と充電条件入力回路124と同様の機能を有するプログラムをROM100cなどの記憶手段に格納し、これをCPU100aが実行することによって、ソフトウェアにより実現することも可能である。
図10を参照して、本発明の一実施例による充電回路による充電制御が説明される。図10は、本発明の一実施例による移動機100の充電制御を示すフロー図である。
ステップS100において、移動機100の二次電池101の充電が開始される。この充電開始は、例えば、ユーザが移動機100をACアダプタなどの外部電源に有線接続することによって、又は送電側ワイアレス電源112などに接近させて無線接続することによって開始される。
ステップS102において、まず二次電池101の現在の電池電圧V1が測定される。測定された電池電圧V1が所定の電圧値Vb(例えば、2.5Vなど)以下である場合、電流・電圧変換回路102は、二次電池101に微小電流(例えば、10mAなど)を供給することによって、電池電圧V1が所定の電圧値Vbを超えるまで予備充電を実行する。
ステップS104において、充電条件入力回路124に電流値Ia(時間放電電流値)が入力される。上述したように、電流値Iaは、外部から直接入力されてもよいし、ユーザが充電条件入力画面を介し入力した充電モード(充電機器、充電方法、充電時刻など)に対応した所定の電流値として設定されてもよい。その後、充電条件入力回路124は、入力された電流値Iaを演算関数回路123に提供する。
ステップS106において、演算関数回路123は、充電条件入力回路124から受け取った電流値Iaを予め保持する所定の関数に適用して、定電流定電圧充電方式に使用される上限電圧Vaを算出する。本実施例では、所定の関数として、Va=αIa+βが使用されるが、他の何れか適切な関数が使用されてもよい。その後、演算関数回路123は、算出した上限電圧Vaと電流値Iaとを電流・電圧変換回路102に提供する。
なお、図示されたフロー図では、ステップS104,S106はステップS102の後に実行されているが、これに限定されるものでない。すなわち、ステップS104,S106は、ステップS102とは独立に実行されてもよい。
ステップS102において電池電圧V1が所定の電圧値Vbを超えると、ステップS108において、電流・電圧変換回路102は、定電流定電圧充電方式に従って、演算関数回路123から受け取った上限電圧Vaと電流値Iaとに基づき定電流充電、すなわち、CC(Constant Current)充電を開始する。電流・電圧変換回路102は、有線又は無線供給された電力を変換して、二次電池102の電池電圧V1が上限電圧Vaに上昇するまで(S110:No)、二次電池101に充電電流I1として一定の電流値Iaを供給し続ける。
ステップS108の定電流充電により電池電圧V1が上限電圧Vaに到達すると(S110:Yes)、電流・電圧変換回路102は、定電流充電から定電圧充電、すなわち、CV(Constant Voltage)充電に移行する。定電圧充電では、電流・電圧変換回路102は、二次電池101の電池電圧V1を上限電圧Vaに保持するように充電電流I1を制御して、制御された充電電流I1を二次電池101に供給し続ける。この定電圧制御では、二次電池101の充電が進捗するに従って、二次電池101に供給される充電電流I1は低下していく。充電電流I1が所定の電流値Ib(例えば、50mAなど)未満になるまで、電流・電圧変換回路102は、定電圧充電を実行し続ける。
充電電流I1が所定の電流値Ib未満になると(ステップS114:Yes)、二次電池101は満充電となり、充電は終了される。
図11は、本発明の一実施例による充電制御を示す遷移図である。図11では、入力された電流値Iaが1Cのケース(Ia1)と2Cのケース(Ia2)とが示される。例えば、Ia1は通常充電に対応し、Ia2は急速充電に対応する電流値としてもよい。各ケースにおいて、それぞれに対応する上限電圧Va1,Va2が決定され、定電流定電圧充電が実行される。
図11に示されるように、二次電池101を予備充電した後(D点)、定電流充電が開始される(A点)。定電流Ia1又はIa2の充電を継続するに従って二次電池101の電池電圧V1は上昇していく(A点からB点)。電池電圧V1が上限電圧Vaに到達すると(B点)、定電流充電から定電圧充電に移行する。その後、電池電圧V1を維持しながら充電が進捗し、これに伴って充電電流I1は低下していく(B点からC点)。充電電流I1が所定の電流値Ibまで低下すると(C点)、二次電池101は満充電となり、充電は終了される。
図12は、本発明の一実施例による充電動作波形を示す。図12では、予備充電が終了し定電流定電圧充電が開始された時点を0として(横軸)、時間の経過に従って充電電流I1と電池電圧V1(縦軸)が定電流定電圧充電によりどのように変化するかが示されている。なお、図12に図示される例では、図11と同様に異なる電流値Ia1,Ia2に対応したケースが示され、破線の部分は電流値Ia1のケースに対応し、実線の部分は電流値Ia2のケースに対応する。
まず、破線のケースに着目すると、時点0から電池電圧V1が上限電圧Va1に到達するまで定電流Ia1が供給される(CC充電)。電池電圧V1が上限電圧Va1に到達すると、定電圧充電に移行し、充電電流I1が所定の電流値Ibに低下するまで定電圧Va1を維持するように二次電池101が充電される。破線のケースでは、時点T1において、充電電流I1が所定の電流値Ibまで低下し、二次電池101が満充電となる。
次に、実線のケースに着目すると、時点0から電池電圧V1が上限電圧Va2に到達するまで定電流Ia2が供給される(CC充電)。電池電圧V1が上限電圧Va2に到達すると、定電圧充電に移行し、充電電流I1が所定の電流値Ibに低下するまで定電圧Va2を維持するように二次電池101が充電される。実線のケースでは、時点T2において、充電電流I1が所定の電流値Ibまで低下し、二次電池101が満充電となる。図示された例では、時点T2は時点T1のほぼ1/2の期間に対応している。
次に図13を参照して、上述した演算関数回路123における充電電流Iaから上限電圧Vaを算出するための関数について説明する。図13は、本発明の一実施例による充電電流及び電圧の可能な組み合わせを示すグラフの一例である。横軸は充電電流Iaのとり得る電流値を表し(0C〜6.5C)、縦軸は上限電圧Vaのとり得る電圧値を表す(0V〜4.3V)。
なお、ここで示した図13は、角型リチウムイオン電池(電池容量:800mhA)の二次電池の場合の測定結果である。組み合わせOKかどうかについては次の方法で測定した。まず様々な組み合わせの電流値Ia及び電圧値Vaの条件下で(グラフ上の適当な格子点など)、二次電池101に対して定電流定電圧充電を実行し、満充電状態にする。各条件下で満充電にされた二次電池101の両極に配線と短絡用スイッチを接続し、短絡用スイッチをオフにして二次電池101の外部短絡を実行する。そして、その時の二次電池101の電池温度を測定する。このとき、微小発熱の振る舞いをして発熱事象が収まる場合、つまり異常発熱(例えば150度以上になる場合)しない場合は組み合わせOKであるとする。このような試験を様々な電流値Ia及び電圧値Vaの組み合わせに対して実行し、安全上問題のない組み合わせOK領域のIaとVaの範囲を決定する。
なおこの方法以外でも、安全上問題のない(安全に充電できる)IaとVaを決定できればよい。また、図13に示されるような充電可能な電流・電圧値の組み合わせは、事前に取得しておくことが好ましい。
充電可能な電流・電圧値の組み合わせとして図13が得られている場合、境界領域と組み合わせOK領域の境界は、Va=(−0.05)Ia+4.30である。その式以下の範囲でVa=αIa+βを決定することにより安全な充電が実現される。例えば、リチウムイオン電池の満充電時の電池電圧として一般的に採用される電池電圧4.2Vに考慮して、一例となる関数として、組み合わせOK領域に含まれ、充電電流Iaが1C(本例では、1C=800mAとなる)のとき上限電圧Vaが4.2Vとなるような下記の充電条件式が充電プロファイルとして演算関数回路123に書き込まれてもよい。
Va=(−0.05)Ia+4.25
この式より、Ia=1Cの場合は、Vaは4.2Vとなり、Ia=6Cの場合は、Vaは4.0Vとなる。この式に基づいて急速充電や通常充電に使用される安全な充電電流Iaと上限電圧Vaとを適切に決定することができる。
しかしながら、本発明は上記関数に限定されるものでなく、短絡時などの異常時に二次電池の安全性を確保することが可能な電流値Iaと上限電圧Vaとの組み合わせを導出可能な任意の関数が使用可能である。さらに、本発明により使用される電流値Iaと上限電圧Vaは、線形及び非線形を含む何れかの関数形式により導出されるものに限定されず、短絡時などの異常時に二次電池の安全性を確保することが可能な電流値Iaと上限電圧Vaとの組み合わせを規定する対応テーブルなどの何れかの方法が使用可能である。
次に図14〜16を参照して、本発明の他の実施例による移動機100の電源部100hの構成が詳細に説明される。図14及び図16は、本発明の他の実施例による充電回路を示す。本実施例による電源部100hは、ACアダプタを介した有線充電とワイアレス電源を介した無線充電の双方の充電方式に対応可能であり、図14は無線充電が適用されたケースを示し、図16は有線充電が適用されたケースを示す。
本実施例による電源部100hは、二次電池201と充電回路とを有し、充電回路は、電流・電圧変換回路202と、電流検出抵抗203と、受電側ワイアレス電源213と、入力コネクタ214,215と、電圧端子221,222と、演算関数回路223と、充電条件入力回路224と、検出端子225,226とを有する。これらの要素は図14,16に示されるように互いに電気接続される。なお、本実施例では、図7に示された電源部100hの各要素に加えて、入力コネクタ214,215と検出端子225,226が設けられる。二次電池201と、電流・電圧変換回路202と、電流検出抵抗203と、受電側ワイアレス電源213と、電圧端子221,222と、演算関数回路223とについては、図7に示された各要素と同様であるため、以下において詳細には説明されない。
検出端子225,226は、移動機100が送電側ワイアレス電源212に接近され(例えば、10cmなど)、受電側ワイアレス電源213における電圧の発生を検出するためのものである。電圧が発生すると、検出端子225,226を介し充電条件入力回路224がこれを検知する。充電条件入力回路224は、例えば、検出端子225を介し検出された電圧レベルVwが0Vから5Vになったことなどを検知するなどによって、移動機100が送電側ワイアレス電源212に接近したことを検知する。移動機100が送電側ワイアレス電源212に接近したことを検知すると、充電条件入力回路224は、無線充電に対応する所定の電流値Iaを設定し、この電流値Iaを演算関数回路223に提供する。演算関数回路223は、上述した実施例と同様にして、受け取った電流値Iaから上限電圧Vaを算出し、電流・電圧変換回路202に定電流定電圧充電のための電流値Ia及び上限電圧Vaとして提供する。なお、無線充電は大きな電力を送電可能であるので、急速充電に適した電源である。従って、充電条件入力回路224は、移動機100が送電側ワイアレス電源212に接近したことを検知した場合には、相対的に大きな電流値Ia(例えば、2C〜6Cなど)を設定するようにしてもよい。
他方、入力コネクタ214,215は、移動機100がACアダプタ211に接続されているか検出するためのものであり、図示されるように、充電条件入力回路224に接続される。充電条件入力回路224は、例えば、入力コネクタ214を介し検出された電圧レベルVcが0Vから5Vになったことなどを検知することによって、移動機100がACアダプタ211に接続されたことを検知する。移動機100がACアダプタ211に接続されたことを検知すると、充電条件入力回路224は、有線充電に対応する所定の電流値Iaを設定し、この電流値Iaを演算関数回路223に提供する。演算関数回路223は、上述した実施例と同様にして、受け取った電流値Iaから上限電圧Vaを算出し、電流・電圧変換回路202に定電流定電圧充電のための電流値Ia及び上限電圧Vaとして提供する。なお、有線充電により供給される電力は、入力コネクタ214,215の電流制限などによって制限を受けるため、通常充電に適した電源として使用される。従って、充電条件入力回路224は、移動機100がACアダプタ211に接続されたことを検知した場合には、相対的に小さな電流値Ia(例えば、1Cなど)を設定するようにしてもよい。
なお、上述した実施例では、外部電源の充電種別(無線充電か有線充電)は、検出端子225,226と入力コネクタ214,215とを介した通電の有無(0V又は5V)の検知により判定されたが(通電端子ベースの検出)、本発明はこれに限定されるものでない。他の実施例では、入力コネクタ214,215を介し供給される電圧レベルと、検出端子225,226を介し供給される電圧レベルとが異なる電圧レベルとなるように、電源部100hが構成され、充電条件入力回路224は、これらの電圧レベルを検出し、電圧レベルの相違に基づき充電種別を判断するようにしてもよい(電圧レベルベースの検出)。例えば、受電側ワイアレス電源213において生成される電圧レベルを5.5Vなどに設定し、ACアダプタ211により供給される5Vと異なる電圧レベルとなるようにしてもよい。この場合、充電条件入力回路224は、5Vと5.5Vの何れの電圧が印加されたか判断し、5Vである場合には移動機100がACアダプタ211に接続されたと判断し、5.5Vである場合には移動機100が送電側ワイアレス電源212に接近したと判断する。一般に、ACアダプタ211の電圧レベルは規格などにより5Vに固定されている場合が多いが、受電側ワイアレス電源213により生成される電圧レベルは充電回路において任意に変更可能である。このため、受電側ワイアレス電源213の出力電圧レベルを調整するようにしてもよい。ただし、電流・電圧変換回路202が必要とする入力電圧が一般的に4.5〜6.0V程度であるため、この範囲内の電圧レベルで変更されるようにしてもよい。
本実施例では、充電条件入力回路224は、ACアダプタ211に接続されたか、又は送電側ワイアレス電源212に接近したかに応じて所定の電流値Iaを設定している。他の実施例では、図7に示された実施例と同様に、移動機100のディスプレイ100gに充電条件入力画面を表示し、ユーザに充電機器以外の充電方法などの他の充電条件を選択させるようにしてもよい。この場合、充電条件入力回路224は、図9に示されるような充電条件と電流値Iaとの対応関係を示すテーブルを参照して、入力コネクタ214,215及び検出端子225,226を介し検知した充電機器と、ユーザにより選択された充電方法(急速充電又は通常充電)とに対応した電流値を設定するようにしてもよい。さらに、充電条件入力回路224は、充電時刻を考慮して電流値をより詳細に設定するようにしてもよい。具体的には、充電条件入力回路224は、移動機100がACアダプタ211に接続されたか、又は送電側ワイアレス電源212に接近したか検出すると共に、充電条件入力画面などを介しユーザにより指示された充電条件を受け付け、検出結果と受け付けた充電条件との両方を考慮して充電電流値を決定するようにしてもよい。例えば、充電条件入力回路224が、ACアダプタ211の接続を検出すると、図8に示される充電条件入力画面の「充電機器」の「ACアダプタ」を予め選択済みとして表示し、ユーザに充電方法のみを選択させるようにしてもよい。同様に、充電条件入力回路224が、送電側ワイアレス電源212への接近を検出すると、図8に示される充電条件入力画面の「充電機器」の「ワイアレス」を予め選択済みとして表示し、ユーザに充電方法のみを選択させるようにしてもよい。さらに、必要に応じて充電方法以外の他の充電条件(時刻、時間放電率など)を入力させるようにしてもよい。充電条件入力回路224は、図9に示される所定の充電条件と充電電流との対応関係を規定した対応情報に基づき、検出又は選択された充電条件の組み合わせに対応する充電電流値を決定するようにしてもよい。
なお、上述した実施例では、演算関数回路223と充電条件入力回路224は、ハードウェア回路により実現されているが、本発明はこれに限定されるものでない。他の実施例では、演算関数回路223と充電条件入力回路224と同様の機能を有するプログラムをROM100cなどの記憶手段に格納し、これをCPU100aが実行することによって、ソフトウェアにより実現することも可能である。
ここで、図15を参照して、上述した実施例に用いられる送信側ワイアレス電源212と受信側ワイアレス電源213の構成がより詳細に説明される。図15では、送信側ワイアレス電源212と受信側ワイアレス電源213について説明するが、上述した送信側ワイアレス電源112と受信側ワイアレス電源113もまた同様の構成を有することができる。図15は、図14及び16のワイアレス電源を詳細に示す。
図示されるように、送電側ワイアレス電源212は、高周波回路212aと送電コイル212bとを有し、商用電力を供給可能な外部電源などに接続される。他方、受電側ワイアレス電源213は、整流回路213aと受電コイル213bとを有し、直流電流を出力する。送電側ワイアレス電源212と受電側ワイアレス電源213とを空間的に接近させると、送電コイル212bから生成された交流磁束によるエネルギーが受電コイル213bに伝送され、エネルギー伝送された受電コイル213bから交流電流が発生する。発生した交流電流は整流回路213aに送出され、直流電流に変換される。携帯電話などにワイアレス電源を適用する場合、典型的には、直径が5cm程度の平型の送電コイルと受電コイルが使われる。送電できる電力としては、パワー5W〜30W程度まで送電することが可能となる。
図17は、上述した実施例による充電制御を利用した場合の具体的な数値例を示す。図17に示される例では、急速充電に適したワイアレス電源(無線充電)と通常充電に適したACアダプタ(有線充電)がそれぞれ移動機100に接続又は接近され、これを上述した通電端子ベースの検出によりワイアレス電源に接近したか、又はACアダプタに接続されたか判断するケースが示される。本例では、電池容量が800mhAのリチウムイオン電池が充電されるケースが想定される。また、図13の組み合わせOK領域に含まれるVa=(−0.05)Ia+4.25の関数が用いられ、ACアダプタなどの有線充電が設定された場合の充電電流値を1Cとし、ワイアレス充電が設定された場合の充電電流値を3Cとして、両方の電流値を異なる値とすることに入力電源に適した充電条件を実現している。なお、Iaが1Cの場合は充電時間は約60分(800mhAの二次電池:1C=800mAのとき)程度であるが、Ia=3C(3C=2400mA)の場合は充電時間は約20分程度となる。
図17において、移動機100にACアダプタ211が接続された場合、図16に示される入力コネクタ213,214が通電状態となって、充電条件入力回路224は、Vc=High(5V)を検知し、有線充電が開始されると判断する(ケース(1))。従って、充電条件入力回路224は、上記設定に基づき充電電流値を1Cに設定し(Ia=1C)、演算関数回路223にこれを提供する。演算関数回路223は、上記関数に基づき、受信した充電電流値Ia=1Cから上限電圧Va=4.2Vを取得し、Ia及びVaを電流・電圧変換回路202に提供する。受け付けたIa及びVaに従って、電流・電圧変換回路202は、二次電池201に定電流定電圧充電を実行する。Ia=1Cの場合、上述したように約60分で充電が完了する。他方、移動機100に送電側ワイアレス電源212が接近された場合、図14に示される検出端子225,226が通電状態となって、充電条件入力回路224は、Vw=High(5V)を検知し、無線充電が開始されると判断する(ケース(2))。従って、充電条件入力回路224は、上記設定に基づき充電電流値を3Cに設定し(Ia=3C)、演算関数回路223にこれを提供する。演算関数回路223は、上記関数に基づき、受信した充電電流値Ia=3Cから上限電圧Va=4.1Vを取得し、Ia及びVaを電流・電圧変換回路202に提供する。受け付けたIa及びVaに従って、電流・電圧変換回路202は、二次電池201に定電流定電圧充電を実行する。Ia=3Cの場合、上述したように約20分で充電が完了する。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。