JP5192356B2 - 飲料用乳化組成物 - Google Patents
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これらの脂溶性成分を乳化し、水溶化した乳化製剤を用いることにより、例えば、飲料に濁りや香りを付与し、果汁感や呈味感を出させたり、脂溶性の機能性素材を添加して、栄養強化を図ったり、脂溶性の着色料を添加して、飲料を着色することができる。
これらの脂溶性成分は直接飲料に添加することができないため、予めアラビアガムなどの保護コロイド物質や各種の乳化剤により水分散を可能とした乳化製剤として添加されるのが一般的である。
上記のような脂溶性成分は、概して比重が水より小さいため、脂溶性成分だけを乳化した乳化製剤を飲料に添加した場合、飲料の保存中に所謂、ネックリングを生じ、飲料の商品価値を著しく低下させる要因となる。
例えば、臭素化ブロム化油(BVO)は、非常に比重が高いことから、世界各国で使用されていたが、1970年にイギリスにおいて、BVO摂取による体脂肪中の臭素の蓄積を考慮して使用禁止となり、アメリカにおいても食品医薬品局(FDA)により飲料中の最大添加量が15ppm以下と制限され、また、日本においても使用が許可されていない。
SAIBは、日本においては使用制限が無くその使用が認められているものの、多くの国でその使用量が制限されていたり、一部の国では使用が許可されていない。
また、SAIBは、室温において約20,000Pa.sという非常に高い粘度を有し、使用に際しては中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)や植物油、香料などと共に60℃以上に加熱溶解して使用しなければならず、加熱にて容易に揮発、分解する香料や油溶性素材への利用は困難であった。SAIBには匂いが殆どないが、独特の苦味を伴う味を有し、多量に飲料に配合するには不向きであった。更には、SAIBは溶解性が悪く、常温で結晶状の油溶性物質を溶解して乳化させることが非常に困難であるといった問題があった。
また、このような粘度の調整や比重調整のために、本来乳化させたい目的物(香料や油溶性原料など)が乳化製剤に対して多く配合できないという難点があった。
エステルガムもSAIBと同様に、多くの国でその使用量が制限されていたり、日本を始めとして一部の国では使用が許可されておらず、世界各国で共通に使用できる比重調整剤は無く、また、その有害性の観点から、これら合成比重調整剤を使用せず、飲料用の乳化組成物が作られることが待望されていた。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステルなどの合成乳化剤を使用した場合、非常に微細なエマルションを調製することにより、飲料でのネックリングを防止できるが、これらで調製したエマルションでは、飲料に適度な濁りや呈味感を付与することはできない。このような合成乳化剤を使用して、粒子径0.3ミクロン以上のエマルションを調製する場合は、SAIBなどの比重調整剤を添加混合することが必須となっている(特許文献3)。
項1.合成比重調整剤を含有せず、脂溶性成分を8〜18重量%、及びガティガム及び/又は改質アラビアガムを含有し、溶液中に分散又は乳化して得られる脂溶性成分の乳化粒子の平均乳化粒子径が、0.3μm以上0.7μm以下であり、水に0.1%濃度で希釈した場合の水を対照とした吸光度(測定波長720nm、セル幅1cmで測定)が、0.05以上であることを特徴とする飲料用乳化組成物。
項2.改質アラビアガムが、重量平均分子量が150万以上のアラビアガムであるか、又はアラビノガラクタン蛋白量含量が17重量%以上のアラビアガムである、項1記載の飲料用乳化組成物。
項3.天然の比重調整剤も含有しないものである、項1又は2記載の飲料用乳化組成物。
項4.脂溶性成分1重量部に対して、ガティガムを0.2〜1重量部含有する項1〜3に記載の飲料用乳化組成物。
項5.脂溶性成分1重量部に対して、改質アラビアガムを0.7〜2.5重量部含有する項1〜3に記載の飲料用乳化組成物。
項6.項1〜5記載の飲料用乳化組成物を添加した飲料製品。
項7.項1〜5記載の飲料用乳化組成物を飲料に添加して、飲料中に脂溶性成分をネックリングを発生させずに安定的に分散させる方法。
香料としては、脂溶性であれば特に制限はないが、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライムなどの柑橘系の精油、ペパーミント、オールスパイス、ジンジャー、ブラックペッパーなどのスパイス系精油、コーヒーオイル、カカオバター、シソ油、ヤシ油、パーム油などの植物系油脂、バターなどの動物油脂、リナロール、ゲラニオール、L−メントールなどの所謂合成香料のいずれも使用することができる。
着色料としては、油溶性であれば特に制限はなく、アナトー色素、パプリカ色素、マリーゴールド色素、トマト色素、にんじん色素、パームカロチン、デュナリエラカロチン、ヘマトコッカス藻色素などの天然由来のカロテノイド系色素や、β−カロチン、ルテイン、リコピン、α−カロチン、アスタキサンチン、カンタキサンチンなどのカロテノイド類が挙げられる。
ビタミン類としては、脂溶性のビタミン類、例えばビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK1(フィロキノン)、ビタミンK2(メナキノン)、などが挙げられる。
機能性油脂としては、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、α-リノレン酸などのオメガ−3系多価不飽和脂肪酸、アラキドン酸、リノール酸、γ−リノレン酸などのオメガ−6系多価不飽和脂肪酸などが挙げられる。
さらに、脂溶性粉末としては、油脂に溶ける粉末であれば特に制限はないが、セサミン、オクタコサノール、コエンザイムQ10、α−リポ酸などが挙げられる。
これらの脂溶性成分を溶解あるいは希釈する目的で使用される油としては、菜種油、大豆油、オリーブ油、エレミ樹脂、マスティック樹脂等の植物性油脂類、牛脂、豚脂等の動物性油脂類、中鎖トリグリセライド、HLBの低いグリセリン脂肪酸エステルなどが例示される。
本発明の飲料用乳化組成物におけるこれらの脂溶性成分の配合量は8〜18重量%、好ましくは8〜15重量%であり、従来の比重調整剤を使用した飲料用乳化組成物に比べて、高濃度の脂溶性成分を配合することができる。
ガティガムは商業的に入手可能であり、例えば三栄源エフ・エフ・アイ(株)のガティガムSDやGATIFOLIA RDなどが利用される。
本発明の飲料用乳化組成物におけるガティガムの含有量は、脂溶性成分1重量部に対して、0.2〜1重量部、好ましくは0.3〜0.7重量部である。
アラビアガムの重量平均分子量及びアラビノガラクタンタンパク質含量は、MALLS(多角度光散乱光度計)、RI(屈折率)を検出器としてオンラインで接続したゲル濾過クロマトグラフィー法(GPC−MALLS)により求めることができる。
当該改質アラビアガムとは、天然から得られるアラビアガムに、他の添加剤の添加や化学的な修飾することなく、加熱などの加工処理によりアラビアガムの分子同士が自己重合することにより、上記重量平均分子量やアラビノガラクタンタンパク質含量範囲の規定を満たした乳化性に優れたアラビアガムのことである。
改質アラビアガムの製造方法については、上記規定を満たすものが得られる製造方法であれば特に限定されないが、例えば、特表2006−522202号公報に記載された方法、即ちアラビアガムを110℃以上で10時間以上加熱することにより得ることができる。このような改質アラビアガムは商業的に入手可能であり、例えば、三栄源エフエフアイ株式会社のSUPER GUMなどが利用される。
本発明の飲料用エマルションにおける改質アラビアガムの含有量は、脂溶性成分1重量部に対して、0.7〜2.5重量部、好ましくは1〜2重量部である。
好ましくは、ロジンやダンマル樹脂などの天然の比重調整剤も含有しないものであるが、
脂溶性成分の配合量が12重量%を越える場合には、これらの天然の比重調整剤を含有しても良い。
その際のこれらの天然の比重調整剤の含有量は、脂溶性成分1重量部に対して0.3重量部以下で十分あり、0.25重量部以下での使用がさらに好ましい。
次いで、乳化装置を用いて、均一に乳化して、油溶性成分を上記溶媒に溶解した油相成分の乳化粒子の平均粒子径を0.3μm以上0.7μm以下、好ましくは0.35μm以上0.6μm以下の大きさに調製する。
0.3μm未満では飲料の濁りの程度が薄いため充分でなく、また、0.7μmを越えるとネックリングを防止することが難しい。
本発明の乳化組成物を調製する際に使用される乳化装置については、目的の乳化粒子を得ることが可能な乳化装置であれば特に制限はないが、高圧ホモジナイザー、コロイドミル、ナノマイザー、ディスパーミル、ホモミキサーなどを用いることができる。
本発明の飲料用乳化組成物の濁りの程度は、水に0.1%濃度で希釈した場合の水を対照とした吸光度(abs)(測定波長720nm、セル幅1cmで測定)が、0.05以上である必要がある。吸光度の上限は特に制限されないが、0.50が好ましい。
吸光度が0.05未満では、飲料の濁りの程度が薄く充分でないため、商品価値に乏しいものとなる。
本発明の飲料用乳化組成物では、脂溶性成分の乳化粒子の平均粒子径を0.3μm以上0.7μm以下、好ましくは0.35μm以上0.6μm以下の大きさに調製することで、上記の好ましい濁りを飲料に付与することができる。
飲料への本発明の飲料用乳化組成物の添加量は、0.005〜1質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%である。
飲料への本発明の飲料用乳化組成物の添加は、飲料を製造する工程で特に制限されず行なうことができる。
本発明の飲料用乳化組成物を飲料に添加することで、保存中にネックリングなどの飲料の商品価値を著しく低下させる現象を防止することができ、さらに適度な濁りを付与することで、商品価値の高い飲料を調製することができる。
表3の処方に従い、オレンジオイル香料(オレンジ果皮より抽出された精油)20gと中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)80gを均一に混合し、脂溶性成分溶液100gを調製した。ガティガム60g、クエン酸(無水)2g、安息香酸ナトリウム1gを水837gに溶解した後、予め混合しておいた脂溶性成分100gを添加し、攪拌機にて10分間予備攪拌混合した。
次いで、高圧ホモジナイザー15MR-8TA(APV Gaulin社製)を用いて、圧力350kg/cm2で4回処理を行い、脂溶性成分の乳化粒子の平均粒子径が0.42μmの乳化香料組成物を得た。
ガティガムの代わりに改質アラビアガム(180g)を使用した以外は、実施例1と同様に製造した。
ガティガムの代わりにアラビアガム(180g)を使用した以外は、実施例1と同様にして製造した。
比較例2
ガティガムの代わりに水溶性大豆多糖類(150g)を使用した以外は、実施例1と同様にして製造した。
比較例3
ガティガムの代わりにグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリンモノオレエートとポリグリセリンモノステアレートの2:1併用、30g)を使用した以外は、実施例1と同様にして製造した。
比較例4
ガティガムの代わりにグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリンモノオレエートとポリグリセリンモノステアレートの2:1併用、60g)を使用した以外は、実施例1と同様にして製造した。
この清涼飲料水の20℃で1ヶ月間静置保存後の状態安定性を、表2の評価基準に従って評価した。
その結果を表3に示した。
一方、アラビアガムや大豆多糖類、グリセリン脂肪酸エステルを使用した比較例1〜3は、平均乳化粒子径が0.4μm程度であっても、合成比重調整剤を含有しないため、1ヶ月の静置保存により、飲料に多量のネックリングを認めた。
また、グリセリン脂肪酸エステルの濃度を上げて調製した比較例4においては、平均乳化粒子径が0.3μm未満となり、比較例3と比較して、静置保存によるネックリングの生成は大幅に減ったが、飲料の濁りの程度が薄く充分ではなかった。
表4の処方に従い、オレンジオイル香料(オレンジ果皮より抽出された精油)20gと中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)80gとロジン20gを混合し、100℃まで加熱し、均一に溶解し、常温まで冷却し、脂溶性成分溶液120gを調製した。これを改質アラビアガム180g、クエン酸(無水)2g、安息香酸ナトリウム1gを水697gに溶解した後、予め混合しておいた脂溶性成分120gを添加し、攪拌機にて10分間予備攪拌混合した。
次いで、高圧ホモジナイザー15MR-8TA(APV Gaulin社製)を用いて、圧力350kg/cm2で4回処理を行い、脂溶性成分の乳化粒子の平均粒子径が0.47μmの乳化香料組成物を得た。
改質アラビアガムの代わりにガティガム60gを使用した以外は、実施例3と同様に製造した。
改質アラビアガムの代わりにアラビアガム180gを使用した以外は、実施例3と同様に製造した。
表4の処方に従い、中鎖トリグリセライド(MCT)120gとダンマル樹脂30gを混合し、80℃まで加熱して均一に溶解し、常温まで冷却し、脂溶性成分溶液150gを得た。これを改質アラビアガム180g、クエン酸(無水)2g、安息香酸ナトリウム1gを水667gに溶解した後、予め混合しておいた脂溶性成分150gを添加し、攪拌機にて10分間予備攪拌混合した。 次いで、高圧ホモジナイザー15MR-8TA(APV Gaulin社製)を用いて、圧力350kg/cm2で4回処理を行い、脂溶性成分の乳化粒子の平均粒子径が0.52μmの乳化組成物を得た。
改質アラビアガムの代わりにガティガム60gを使用した以外は、実施例5と同様に製造した。
改質アラビアガムの代わりにアラビアガム180gを使用した以外は、実施例5と同様に製造した。
この清涼飲料水の20℃で1ヶ月間静置保存後の状態安定性を、上記表2の評価基準に従って評価した。
その結果を表4に示した。
一方、アラビアガムを使用した比較例5は、天然の比重調整剤(ロジン)を含有していても、1ヶ月保存後のネックリング生成量が多かった。
改質アラビアガムを使用した実施例5、及びガティガムを使用した実施例6ともに、1ヶ月保存後のネックリングは極少量認めるだけで、肉眼で明確な異常とは認められず、商品価値を損なうほどではなかった。また、十分な濁りもあった。
一方、アラビアガムを使用した比較例6は、天然比重調整剤(ダンマル樹脂)を含有していても、1ヶ月保存後のネックリングは生成量が極めて多く、十分な濁りもなかった。
この清涼飲料水の20℃で1ヶ月間静置保存後の状態安定性を、上記表2の評価基準に従って評価した。
その結果を表5に示した。
これに対して、比較例7のように改質アラビアガムを3重量部添加した場合は、ネックリング生成を認めないものの、十分な濁りを得ることはできず、また、比較例8のように0.5重量部添加した場合は、十分な濁りは認めるものの、合成比重調整剤を含有しないため、1ヵ月後に多くのネックリング生成を認めた。
実施例10及び11は、中鎖トリグリセライド1重量部に対して、ガティガムを0.33及び0.67重量部使用して調製しているが、合成比重調整剤を含有しなくても、1ヶ月保存後のネックリング生成はほとんど認めなかった。
これに対して、比較例9のようにガティガムを0.17重量部しか添加しない場合は、十分な濁りは認めるものの、合成比重調整剤を含有しないため、1ヶ月保存後のネックリング生成を認めた。
Claims (4)
- 合成比重調整剤を含有せず、脂溶性成分を8〜18重量%、及びガティガムを脂溶性成分1重量部に対して0.2〜1重量部含有し、溶液中に分散又は乳化して得られる脂溶性成分の乳化粒子の平均乳化粒子径が、0.3μm以上0.7μm以下であり、水に0.1%濃度で希釈した場合の水を対照とした吸光度(測定波長720nm、セル幅1cmで測定)が、0.05以上であることを特徴とする飲料用乳化組成物。
- 天然の比重調整剤も含有しないものである、請求項1記載の飲料用乳化組成物。
- 請求項1又は2記載の飲料用乳化組成物を添加した飲料製品。
- 請求項1又は2記載の飲料用乳化組成物を飲料に添加して、飲料中に脂溶性成分をネックリングを発生させずに安定的に分散させる方法。
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