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JP5185227B2 - 多段変速機 - Google Patents

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JP5185227B2 JP2009178504A JP2009178504A JP5185227B2 JP 5185227 B2 JP5185227 B2 JP 5185227B2 JP 2009178504 A JP2009178504 A JP 2009178504A JP 2009178504 A JP2009178504 A JP 2009178504A JP 5185227 B2 JP5185227 B2 JP 5185227B2
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Description

本発明は、互いに平行な歯車軸にそれぞれ複数の駆動歯車と被動歯車が変速段毎に常時噛み合い状態で軸支された多段変速機に関する。
この常時噛合い式の多段変速機は、駆動歯車と被動歯車の一方が歯車軸に固定され、他方が歯車軸に回転自在に軸支され、係合手段により回転自在の歯車のうち回転軸に係合する歯車を切り換えることで変速を行う。
複数の歯車と歯車軸との間に設けられ互いの係合を行う係合手段を切り換え駆動して変速を行う変速駆動手段にロストモーション機構を組み込んだ構成が、同じ出願人により先に出願された例にある(特許文献1)。
特願2008−246754
同特許文献1に開示された多段変速機の変速駆動手段は、歯車軸の中空中心軸に配設されるコントロールロッドが歯車軸の中空内周面に軸方向に移動自在に摺接する4種類のカムロッドの内側に摺接しており、4種類のカムロッドの内側の左右にロストモーション機構が配置され、各ロストモーション機構は所要のカムロッドと連結している。
ロストモーション機構は、コントロールロッドと各カムロッドとの間に軸方向に作用するスプリングをそれぞれ介装して連動したもので、このロストモーション機構が歯車軸の中空内に収容されている。
コントロールロッドを移動して変速する場合に、このロストモーション機構により、変速前の係合手段による係合が維持された状態から変速後の係合手段の係合状態に移行する時に先の係合維持された係合手段が自然と解除されて滑らかに移行することができ、変速が間断なく円滑に実行される。
加速時のシフトアップおよび減速時のシフトダウンは、上記のように変速が円滑に実行されるが、加速時のシフトダウンや減速時のシフトアップは、変速時に先に係合維持された係合手段が自然と解除されることはないので、そのままでは変速できない。
しかし、変速できないにもかかわらず、ロストモーション機構によりコントロールロッドは移動してしまうので、シフト操作をした運転者は、操作できても変速できないという事態に違和感を覚える。
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、ロストモーション機構を備えて滑らかな変速ができ、かつ加速時のシフトダウン操作や減速時のシフトアップ操作を規制できる多段変速機を供する点にある。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、互いに平行な歯車軸にそれぞれ複数の駆動歯車と被動歯車が変速段毎に常時噛み合い状態で軸支され、前記駆動歯車と前記被動歯車の一方の複数の歯車が歯車軸に固定され、他方の複数の歯車と歯車軸との間に設けられ互いの係合を行う係合手段が変速駆動手段により切り換え駆動されて変速を行う多段変速機において、前記係合手段は、歯車の内燃機関からの動力が伝達される正回転と駆動輪側からの動力が伝達される逆回転の各回転方向でのみそれぞれ係合可能な正回転用と逆回転用の2種類の係合手段があり、各前記係合手段は、各歯車の内周面の周方向複数箇所に周方向に係合面を有して設けられた係合凸部と、前記歯車軸に出没自在に設けられ各歯車の前記係合凸部に係脱可能に係合する係合部材と、前記歯車軸に軸方向に摺動自在に支持され摺接面に複数のカム溝が軸方向所要箇所に形成された複数のカムロッドと、前記歯車軸の所要箇所に径方向に嵌挿され前記軸方向に移動するカムロッドの摺接面と前記カム溝に交互に接して進退し前記係合部材を作動するピン部材とを備え、前記変速駆動手段は、前記複数のカムロッドの内側で前記歯車軸の中空中心軸に設けられるコントロールロッドと、前記コントロールロッドの外周面と前記複数のカムロッドの内側面との間に介装されて前記コントロールロッドと各カムロッドを軸方向に作用するスプリングを介して連動するロストモーション機構とを備え、前記コントロールロッドと一体に移動する規制ロッドが前記カムロッドに摺接して前記歯車軸に設けられ、前記規制ロッドは、摺接した前記カムロッドの前記カム溝とともに前記ピン部材を係合可能な切欠きが各カム溝に対応して形成され、正回転用の前記カムロッドのカム溝に対応する前記規制ロッドの切欠きは、変速段確立状態で当該カム溝よりもシフトアップ時の前記コントロールロッドの移動方向と反対側に長く形成され、逆回転用の前記カムロッドのカム溝に対応する前記規制ロッドの切欠きは、変速段確立状態で当該カム溝よりもシフトダウン時の前記コントロールロッドの移動方向と反対側に長く形成されている多段変速機とした。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の多段変速機において、前記規制ロッドが、正回転用の前記カムロッドと逆回転用の前記カムロッドとの間に挟まれて軸方向に相対的に摺動自在に設けられることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の多段変速機において、前記規制ロッドは、前記コントロールロッドとは別体の部材で形成され、結合手段により前記コントロールロッドと一体に移動するよう結合されることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の多段変速機において、前記結合手段は、半割コッタであり、前記コントロールロッドの外周面に設けられた嵌合溝と前記規制ロッドの内面に設けられた嵌合溝との双方に、前記半割コッタが嵌合して前記コントロールロッドに前記規制ロッドを一体に結合することを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか記載の多段変速機において、前記カムロッドおよび前記規制ロッドは、同じ機能を有するロッドが前記コントロールロッドの外周囲に相対向して対称位置に配設されることを特徴とする。
請求項1記載の多段変速機によれば、コントロールロッドが操作されてロストモーション機構を介して正回転用と逆回転用の2種類の係合手段のいずれかが切換え作動されて変速を行う多段変速機において、コントロールロッドと一体に移動する規制ロッドがカムロッドに摺接して歯車軸に設けられ、正回転用のカムロッドのカム溝に対応する規制ロッドの切欠きは、変速段確立状態で当該カム溝よりもシフトアップ時のコントロールロッドの移動方向と反対側に長尺に形成されているので、内燃機関からの動力が伝達される加速時にシフトアップするためにコントロールロッドを移動すると、規制ロッドの切欠きが係合状態にある係合手段のピン部材よりも移動方向と反対側に余裕を持っているため、規制ロッドと一体のコントロールロッドを移動してシフトアップが円滑に実行されるが、加速時にシフトダウンするためにコントロールロッドを移動しようとすると、規制ロッドの切欠きが係合状態にある係合手段のピン部材よりも移動方向と反対側に余裕がなく、規制ロッドとともにコントロールロッドの移動が規制されることになり、シフトダウン操作自体が規制され、操作しようとした運転者は違和感を覚えることがない。
また、逆回転用のカムロッドのカム溝に対応する規制ロッドの切欠きは、変速段確立状態で当該カム溝よりもシフトダウン時のコントロールロッドの移動方向と反対側に長尺に形成されているので、駆動輪側からの動力が伝達される減速時にシフトダウンするためにコントロールロッドを移動すると、規制ロッドの切欠きが係合状態にある係合手段のピン部材よりも移動方向と反対側に余裕を持っているため、規制ロッドと一体のコントロールロッドを移動してシフトダウンが円滑に実行されるが、減速時にシフトアップするためにコントロールロッドを移動しようとすると、規制ロッドの切欠きが係合状態にある係合手段のピン部材よりも移動方向と反対側に余裕がなく、規制ロッドとともにコントロールロッドの移動が規制されることになり、シフトアップ操作自体が規制され、操作しようとした運転者は違和感を覚えることがない。
請求項2記載の多段変速機によれば、規制ロッドが、正回転用のカムロッドと逆回転用のカムロッドとの間に挟まれて軸方向に相対的に摺動自在に設けられるので、これら規制ロッドと正回転用と逆回転用のカムロッドを支持する歯車軸にはそれぞれに溝を設けることなく共通の軸方向に摺動可能な溝を1本形成すればよく、加工工数が削減できる。
また、正回転用と逆回転用の2本のカムロッドのカム溝にそれぞれ対応する切欠きを1本の規制ロッドに設けて対応することができ、部品点数を削減することができる。
請求項3記載の多段変速機によれば、規制ロッドがコントロールロッドとは別体の部材で形成され、結合手段によりコントロールロッドと一体に移動するよう結合されるので、規制ロッドとコントロールロッドがそれぞれ別に形成され、規制ロッドとコントロールロッドを一体に形成するよりも、容易に加工形成することができる。
請求項4記載の多段変速機によれば、コントロールロッドの外周面に設けられた嵌合溝と規制ロッドの内面に設けられた嵌合溝との双方に半割コッタが嵌合してコントロールロッドに規制ロッドを一体に結合するので、別体のコントロールロッドと規制ロッドを簡単な結合構造で一体に結合することができる。
請求項5記載の多段変速機によれば、カムロッドおよび規制ロッドは、同じ機能を有するロッドがコントロールロッドの外周囲に相対向して対称位置に配設されるので、コントロールロッドの動きをカムロッドおよび規制ロッドに偏りなく伝達することができ、軸心を維持して動きを円滑にすることができる。
本発明の一実施の形態に係る多段変速機の断面図である。 カウンタ歯車軸およびその周りの構造を示す断面図(図4,図5のII−II線断面図)である。 カウンタ歯車軸およびその周りの構造を示す別の断面図(図4,図5のIII−III線断面図)である。 図2,図3のIV−IV線断面図である。 図2,図3のV−V線断面図である。 コントロールロッドとロストモーション機構の分解斜視図である。 コントロールロッドにロストモーション機構組み付けた状態とカムロッド等の分解斜視図である。 規制ロッドの斜視図である。 規制ロッドの左側面図(図8のIX矢視図)である。 カウンタ歯車軸およびピン部材とスプリングの一部の分解斜視図である。 カウンタ歯車軸の左側面図(図10のXI矢視図)である。 揺動爪部材および支軸ピン,ピン部材,スプリングの分解斜視図である。 コントロールロッドに変速駆動手段の一部および係合手段を組み付けた状態を示す斜視図である。 図13に示す状態のカウンタ歯車軸に軸受カラー部材を外装した状態を示す斜視図である。 1速の加速状態におけるカムロッドと規制ロッドおよびピン部材の位置関係を示す説明図である。 2速の加速状態におけるカムロッドと規制ロッドおよびピン部材の位置関係を示す説明図である。 2速の減速状態におけるカムロッドと規制ロッドおよびピン部材の位置関係を示す説明図である。
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図17に基づいて説明する。
本実施の形態に係る多段変速機10は、自動二輪車に搭載される内燃機関に組み込まれて構成されている。
図1は、本多段変速機10の断面図であり、同図1に示すように、該多段変速機10は、内燃機関と共通の機関ケース1に設けられている。
左右割りの左機関ケース1Lと右機関ケース1Rが合体して構成された機関ケース1は、変速室2を形成しており、同変速室2にメイン歯車軸11とカウンタ歯車軸12が互いに平行に左右方向に指向して回転自在に軸支されている。
メイン歯車軸11は、左機関ケース1Lの側壁と右機関ケース1Rの側壁1RRにベアリング3L,3Rを介して回転自在に軸支され、右ベアリング3Rを貫通して変速室2から突出した右端部には多板式の摩擦クラッチ5が設けられている。
摩擦クラッチ5の左側には、図示されないクランク軸の回転が伝達されるプライマリ被動ギヤ4がメイン歯車軸11に回転自在に軸支されている。
内燃機関のクランク軸の回転がプライマリ被動ギヤ4から係合状態の摩擦クラッチ5を介してメイン歯車軸11に伝達される。
他方、カウンタ歯車軸12も、左機関ケース1Lの側壁と右機関ケース1Rの側壁1RRにベアリング7L,7Rを介して回転自在に軸支され、左ベアリング7Lを貫通して変速室2から突出した左端部には出力スプロケット70がスプライン嵌合して固定される。
出力スプロケット70に巻き掛けられた駆動チェーンが後方の図示されない後輪を駆動するスプロケットに巻き掛けられ、カウンタ歯車軸12の回転動力が後輪に伝達され、車両が走行する。
メイン歯車軸11には、左右のベアリング3L,3Rの間に駆動変速歯車m群がメイン歯車軸11と一体に回転可能にメイン歯車軸11に構成されている。
右ベアリング3Rに沿って第1駆動変速歯車m1がメイン歯車軸11に一体に形成され、メイン歯車軸11の同第1駆動変速歯車m1と左ベアリング3Lとの間に形成されたスプラインに右から左へ順に順次径を大きくした第2,第3,第4,第5,第6駆動変速歯車m2,m3,m4,m5,m6がスプライン嵌合されている。
他方、カウンタ歯車軸12には、左右のベアリング7L,7Rの間に被動変速歯車n群が円環状の軸受カラー部材13を介して回転自在に軸支されている。
カウンタ歯車軸12において、右ベアリング7Rの左に介装されたカラー部材14Rを介して外装された右端の軸受カラー部材13と、左ベアリング7Lの右に介装されたカラー部材14Lを介して外装された左端の軸受カラー部材13との間に、等間隔に5つの軸受カラー部材13が外装され、この全部で7つの軸受カラー部材13の隣り合う軸受カラー部材13,13間に跨るようにして右から左へ順に順次径を小さくした第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6が回転自在に軸支されている。
メイン歯車軸11と一体に回転する第1,第2,第3,第4,第5,第6駆動変速歯車m1,m2,m3,m4,m5,m6は、カウンタ歯車軸12に回転自在に軸支される対応する第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6にそれぞれ常時噛み合っている。
第1駆動変速歯車m1と第1被動変速歯車n1の噛合が、最も減速比の大きい1速を構成し、第6駆動変速歯車m6と第6被動変速歯車n6の噛合が、最も減速比の小さい6速を構成し、その間順次減速比が小さくなって2速、3速、4速、5速が構成される。
カウンタ歯車軸12に変速段が奇数段の奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)と変速段が偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)が交互に配列されることになる。
中空筒状をなすカウンタ歯車軸12は、各被動変速歯車nと係合可能な係合手段20が後記するように組み込まれ、後記するように係合手段20の1構成要素である種類ごと2本ずつ4種類の計8本のカムロッドC(Cao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbe)と2本ずつ2種類の計4本の規制ロッドE,Fがカウンタ歯車軸12の中空内周面に形成された後記するカム案内溝12gに嵌合して軸方向に移動自在に設けられる。
このカムロッドCを駆動して変速する変速駆動手段50の1構成要素であるコントロールロッド51が、カウンタ歯車軸12の中空中心軸に挿入されており、コントロールロッド51の軸方向の移動は、規制ロッドE,Fを一体に移動するとともに、ロストモーション機構52,53を介して連動してカムロッドCを軸方向に移動する。
このコントロールロッド51を軸方向に移動する機構が、右機関ケース1Rに設けられている。
コントロールロッド51の軸方向の移動は、ロストモーション機構52,53を介してカムロッドCを軸方向に連動し、このカムロッドCの移動がカウンタ歯車軸12に組み込まれた係合手段20により各被動変速歯車nを選択的にカウンタ歯車軸12と係合して変速を行う。
図6を参照して、変速駆動手段50のコントロールロッド51は、円柱棒状をなし、軸方向の中央に縮径して中央凹部51cが形成され、さらに左右2か所に縮径して形成された外周凹部51a,51bがそれぞれ所定長さに亘って形成されている。
コントロールロッド51の左端部51aaは短く、右端は長尺で雄ねじが形成された雄ねじ端部51bbと、その雄ねじ端部51bbの手前に6角形状のナット部51nが形成されている。
このコントロールロッド51の左右の外周凹部51a,51bにそれぞれ対応してロストモーション機構52,53が組み付けられる。
左右のロストモーション機構52,53は、同じ構造のものを互いに左右対称になるように配設している。
左側のロストモーション機構52は、コントロールロッド51を摺動自在に嵌挿するスプリングホルダ52hが長尺ホルダ52hlと短尺ホルダ52hsの連結で構成され、内周面にコントロールロッド51の外周凹部51aに対応する内周凹部52haが形成されている。
このスプリングホルダ52hにコントロールロッド51を貫通させてスプリングホルダ52hを外周凹部51aに位置させたとき、スプリングホルダ52hの内周凹部52haとコントロールロッド51の外周凹部51aの両空間が共通の空間を構成する。
スプリングホルダ52hの内周凹部52haとコントロールロッド51の外周凹部51aの両空間に跨るようにスプリング受けである左右一対のコッタ52c,52cが対向して嵌挿され、両コッタ52c,52c間にコントロールロッド51に巻回される圧縮コイルスプリング52sが介装されて両コッタ52c,52cを離間する方向に付勢する。
なお、コッタ52cは、スプリングホルダ52hの内周凹部52haの内径を外径とし、コントロールロッド51の外周凹部51aの外径を内径とした中空円板状をなし、組み付けのため半割りにされている。
右側のロストモーション機構53(スプリングホルダ53h,長尺ホルダ53hl,短尺ホルダ53hs,内周凹部53ha,コッタ53c,圧縮コイルスプリング53s)も同じ構造をしてコントロールロッド51の外周凹部51bに配設される。
したがって、コントロールロッド51が軸方向に移動すると、左右のロストモーション機構52,53の圧縮コイルスプリング52s,53sを介してスプリングホルダ52h,53hが軸方向に移動する。
このコントロールロッド51の左右の外周凹部51a,51bに取り付けられたロストモーション機構52,53のスプリングホルダ52h,53hの外周面に、8本のカムロッドC(Cao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbe)が放射位置にあって当接される(図7参照)。
カムロッドCは、断面が矩形で軸方向に長尺に延びる角柱棒状部材であり、スプリングホルダ52h,53hと接する内周側面の反対側の外周側面がカム面を形成しており、カム面にカム溝vが所要3か所に形成され、内周側面にはスプリングホルダ52h,53hのいずれか一方を左右から挟むように係止する一対の係止爪pが突出している。
カムロッドCは、断面が特別な形状をしておらず概ね外形が単純な矩形の角柱棒状部材であるので、カムロッドCを容易に製造することができる。
カム溝v1,v3,v5が奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する3か所に形成された奇数段用カムロッドCao,Cboには、正回転(加速時に被動変速歯車nからカウンタ歯車軸12に力が加わる回転方向)用と逆回転(減速時に被動変速歯車nからカウンタ歯車軸12に力が加わる回転方向)用の2種類があり、一方の正回転奇数段用カムロッドCaoは、内周側面に右側スプリングホルダ53hに係止する係止爪pを有し、他方の逆回転奇数段用カムロッドCboは、内周側面に左側スプリングホルダ52hに係止する係止爪pを有する(図7参照)。
同様に、カム溝v2,v4,v6が偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する3か所に形成された偶数段用カムロッドCae,Cbeには、正回転用と逆回転用の2種類があり、一方の正回転偶数段用カムロッドCaeは、内周側面に左側スプリングホルダ52hに係止する係止爪pを有し、他方の逆回転偶数段用カムロッドCbeは、内周側面に右側スプリングホルダ53hに係止する係止爪pを有する(図7参照)。
したがって、コントロールロッド51の軸方向の移動により、右側のロストモーション機構53の圧縮コイルスプリング53sを介してスプリングホルダ53hとともに正回転奇数段用カムロッドCaoと逆回転偶数段用カムロッドCbeが軸方向に連動し、左側のロストモーション機構52のコイルスプリング52sを介してスプリングホルダ52hとともに逆回転奇数段用カムロッドCboと正回転偶数段用カムロッドCaeが軸方向に連動する。
また、図7に示すように、2種類の規制ロッドE,Fが2本ずつ計4本の規制ロッドがそれぞれ2本のカムロッドCに挟まれるようにして設けられる。
一方の規制ロッドEは、正回転偶数段用カムロッドCaeと逆回転奇数段用カムロッドCboに挟まれ、他方の規制ロッドFは、正回転奇数段用カムロッドCaoと逆回転偶数段用カムロッドCbeに挟まれて装着される。
図8および図9に図示するように、規制ロッドE,Fは、断面が幅狭の扇形状をなして左右方向に長尺の棒状をしており、カムロッドCの矩形断面と比べ径方向長さは略同じで、周方向幅は大きい。
規制ロッドEは、正回転偶数段用カムロッドCaeが摺接する側面と外周面とが交わる側縁に正回転偶数段用カムロッドCaeのカム溝v2,v4,v6に対応して切欠きe2,e4,e6が形成され、逆回転奇数段用カムロッドCboが摺接する側面と外周面とが交わる側縁に逆回転奇数段用カムロッドCboのカム溝v1,v3,v5に対応して切欠きe1,e3,e5が形成されている。
同様に、規制ロッドFは、正回転奇数段用カムロッドCaoが摺接する側面と外周面とが交わる側縁に正回転奇数段用カムロッドCaoのカム溝v1,v3,v5に対応して切欠きf1,f3,f5が形成され、逆回転偶数段用カムロッドCbeが摺接する側面と外周面とが交わる側縁に逆回転偶数段用カムロッドCbeのカム溝v2,v4,v6に対応して切欠きf2,f4,f6が形成されている。
なお、カム溝v1,v2,v3,v4,v5,v6が全て軸方向に短尺の同じ長さを有するのに対して、規制ロッドEの切欠きe1と切欠きe6を除き、他の切欠きe2,e3,e4,e5および規制ロッドFの切欠きf1,f2,f3,f4,f5,f6は、カム溝vより軸方向に2倍程度長尺であり、切欠きe1と切欠きe6はカム溝vと略同じ軸方向長さである。
規制ロッドEは、内周面の軸方向の中央付近の所定位置に所定幅を有して対向する1対の係止爪ep,epが突出形成され、同様に規制ロッドFも内周面の所定位置に1対の係止爪fp,fpが突出形成されている。
規制ロッドE,Fは、図9に示すようにそれぞれ2本のカムロッドC(図9に2点鎖線で示す)に挟まれた状態で、前記左右ロストモーション機構52,53のスプリングホルダ52h,53hに内周面を接して配設されるが、図7に示すように、コントロールロッド51の中央凹部51cに組み付けのため半割りにされたコッタ80が嵌合され、このコッタ80に規制ロッドEの内周面に突出した1対の係止爪ep,epおよび規制ロッドFの内周面に突出した1対の係止爪fp,fpが左右から挟持するように嵌合し、コッタ80を介してコントロールロッド51と規制ロッドE,Fが結合している。
なお、コントロールロッド51の中央凹部51cに嵌合したコッタ80の外周面と一側面にリテーナ81を被せ、コッタ80の他の側面にワッシャ82を当てがった状態で、規制ロッドEの係止爪ep,ep間の嵌合溝および規制ロッドFの係止爪fp,fp間の嵌合溝に嵌合し、リテーナ81とワッシャ82を介装することで、コントロールロッド51と規制ロッドE,Fが一体に結合されている。
したがって、規制ロッドE,Fは、コントロールロッド51と一体に左右軸方向に移動する。
図7に示すように、コントロールロッド51のナット部51nより右側の右端部分には、円筒状をしたコントロールロッド操作子55が、その内側に嵌装されたボールベアリング56を介して取り付けられる。
ボールベアリング56は、軸方向に2個連結したもので、コントロールロッド51のナット部51nより右側の右端部分に嵌入され、雄ねじ端部51bbに螺合されるナット57によりナット部51nとの間で挟まれて締結される。
したがって、コントロールロッド操作子55は、コントロールロッド51の右端部を回転自在に保持している。
このコントロールロッド操作子55の螺着されたナット57より右側に延出した円筒部に直径方向に穿孔したピン孔55hが形成されており、同ピン孔55hにシフトピン58が貫通する。
コントロールロッド操作子55に貫通されたシフトピン58は、図1を参照して、両端を突出させている。
右機関ケース1Rの側壁1RRの右方に突出したガイド部1Raに溝条60が左右方向に指向して形成されており、この溝条60にシフトピン58の突出した一端頭部が摺動自在に嵌合してシフトピン58の回り止めとしている。
側壁1RRには右方に突出して支軸65が植設されて、同支軸65にベアリング66を介してシフトドラム67が回動自在に軸支されており、このシフトドラム67のシフト溝67vにシフトピン58の突出した他端部が摺動自在に嵌合している。
シフトドラム67のシフト溝67vは、ドラム外周面に略一周に亘って螺旋を描くように形成され、その間に所定回動角度(例えば60度)毎に1速から6速までの各変速段位置およびその途中にニュートラル位置が形成されている。
したがって、シフトドラム67の回動は、シフト溝67vに嵌合するシフトピン58をコントロールロッド操作子55とともに軸方向に移動させる。
コントロールロッド操作子55はコントロールロッド51の右端部を回転自在に保持しているので、結局シフトドラム67の回動はコントロールロッド51を軸方向に移動させる。
このシフトドラム67は、図示されないシフトセレクトレバーの手動操作によってシフト伝達手段(図示せず)を介して回動する。
シフト伝達手段は、シフトドラム67を所定角度毎の変速段位置に安定して保持させるシフトカム部材などの機構を備えてシフトセレクトレバーの操作動力をシフトドラム67の側縁に形成されたギヤ67gに伝達してシフトドラム67を順次変速段位置に回動する。
以上のように、変速駆動手段50は、シフトセレクトレバーの手動操作によってシフトドラム67が回動し、シフトドラム67の回動がシフト溝67vに嵌合したシフトピン58を案内して軸方向に移動し、シフトピン58の移動がコントロールロッド操作子55を介してコントロールロッド51を軸方向に移動し、コントロールロッド51の移動がロストモーション機構52,53を介して係合手段20の8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeを連動する。
ロストモーション機構52,53が組み付けられたコントロールロッド51は、カウンタ歯車軸12の中空内に挿入され中心軸に配設される。
この中空円筒状のカウンタ歯車軸12は、内径がロストモーション機構52,53のスプリングホルダ52h,53hの外径に略等しく、コントロールロッド51に取り付けられたスプリングホルダ52h,53hを摺動自在に嵌挿する。
図11のカウンタ歯車軸12の左側面図を参照して、カウンタ歯車軸12の中空の内周面における周方向等間隔の4か所の放射位置に断面が扇形状の4本のカム案内溝12gが軸方向に指向して延出形成されている。
正回転偶数段用カムロッドCaeと逆回転奇数段用カムロッドCboが規制ロッドEを挟み、正回転奇数段用カムロッドCaoと逆回転偶数段用カムロッドCbeが規制ロッドFを挟み束にした状態で、カム案内溝12gに摺動自在に嵌合する。
同種類のカムロッドCと規制ロッドE,Fは、対称位置に配設される。
したがって、コントロールロッド51の動きをカムロッドCおよび規制ロッドE,Fに偏りなく伝達することができ、軸心を維持して動きを円滑にすることができる。
カウンタ歯車軸12における8本のカムロッドCおよび4本の規制ロッドE,Fの回り止めとなるカム案内溝12gは、2本のカムロッドCと1本の規制ロッドE,Fを束にした状態で嵌合されるので、4本で足り、カウンタ歯車軸12の加工工数が削減できる。
カム案内溝12gの深さはカムロッドCおよび規制ロッドE,Fの径方向の長さに略等しく、よってカムロッドCの外周側面であるカム面はカム案内溝12gの底面に略摺接し、内周側面は中空内周面と略同一面をなしてスプリングホルダ52h,53hの外周面に接し、内周側面から突出した係止爪pはスプリングホルダ52h,53hのいずれかを両側から挟むようにして掴む。
中空筒状をなすカウンタ歯車軸12は、軸受カラー部材13を介して被動変速歯車nが軸支される中央円筒部12aの左右両側に外径が縮径された左側円筒部12bと右側円筒部12cが形成されている(図10参照)。
左側円筒部12bにはワッシャ14Lを介してベアリング7Lが嵌合されるとともに、一部スプライン12sが形成されて出力スプロケット70がスプライン嵌合され、他方、右側円筒部12cにはワッシャ14Rを介してベアリング7Rが嵌合される(図1,図2,図3参照)。
カウンタ歯車軸12の中空内は、カム案内溝12gが形成される内径がスプリングホルダ52h,53hの外径に等しい小径内周面と、同小径内周面の両側の内径がカム案内溝12gの底面と略同一周面をなす大径内周面とが形成されている(図2,図3参照)。
右側の拡大内径部の内側に前記コントロールロッド操作子55が半分程挿入されている。
このように、カウンタ歯車軸12の中空内にコントロールロッド51とロストモーション機構52,53と8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeと4本の規制ロッドE,Fが組み込まれると、これら全てが一緒に回転し、コントロールロッド51が軸方向に移動すると、コントロールロッド51と一体に規制ロッドE,Fが軸方向に移動するとともに、左側ロストモーション機構52のコイルスプリング52sを介して逆回転奇数段用カムロッドCboと正回転偶数段用カムロッドCaeが軸方向に連動し、右側ロストモーション機構53のコイルスプリング53sを介して正回転奇数段用カムロッドCaoと逆回転偶数段用カムロッドCbeが軸方向に連動する。
ロストモーション機構52,53がカウンタ歯車軸12の軸方向に並んでコントロールロッド51の外周面と複数のカムロッドCの内側面との間に介装されるので、カウンタ歯車軸12の中空内にあってコントロールロッド51,ロストモーション機構52,53,カムロッドCと径方向に重なる構造で多段変速機10の軸方向の拡大を避け、ロストモーション機構52,53をカウンタ歯車軸12の中空内にコンパクトに収容して、多段変速機10自体の小型化を図ることができる。
ロストモーション機構52,53は、コントロールロッド51上に軸方向に2つ設け、各ロストモーション機構52,53は互いに別のカムロッドCを連動するので、1本のコントロールロッド51の移動に対して複数のカムロッドCに2種類の異なる動きをさせて変速を滑らかにさせることを可能とするとともに、ロストモーション機構52,53を対称な構造として、製造コストを抑えるとともに組立て時の部品管理を容易とする。
図10に示すように、カウンタ歯車軸12の軸受カラー部材13を介して被動変速歯車nが軸支される中央円筒部12aは、外径が大きく厚肉に構成されており、この厚肉の外周部に周方向に一周する幅狭の周方向溝12cvが第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6に対応して軸方向に亘って等間隔に6本形成されるとともに、軸方向に指向した軸方向溝12avが周方向に亘って等間隔に4本形成されている。
さらに、カウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周部には、4本の軸方向溝12avで区画された4つの部分が各周方向溝12cvにおいて周方向溝12cvの溝幅を隣り合う軸方向溝12av,12av間に亘って長尺に左右均等に拡大した長尺矩形凹部12pと、周方向溝12cvの溝幅を隣り合う軸方向溝12av,12av間の一部で左右均等に拡大した短尺矩形凹部12qとが、軸方向に交互に形成されている。
長尺矩形凹部12pの底面の周方向に離れた2か所に軸方向に長尺の楕円形をして周方向溝12cvに跨って若干凹んだスプリング受部12d,12dが形成されている。
また、短尺矩形凹部12qと軸方向溝12avとの間の厚肉部で周方向溝12cv上にピン孔12hが前記カム案内溝12gまで径方向に穿孔されている。
すなわち、カウンタ歯車軸12の中空内周面から周方向の4か所に刻設されたカム案内溝12gの放射方向にピン孔12hが穿孔される。
各周方向溝12cv上にはそれぞれ4か所ピン孔12hが形成される。
スプリング受部12dには、楕円形に巻回された圧縮スプリング22がその端部を嵌装させて設けられる。
ピン孔12hにはピン部材23が摺動自在に嵌挿される。
各カム案内溝12gには1本の規制ロッドE(F)とこれを挟むように2本のカムロッドCが束になって摺動自在に嵌合されるので、ピン孔12hに嵌挿されたピン部材23は中心側端部が対応するカムロッドCのカム面と規制ロッドE(F)の外周面に跨って接し、カムロッドCおよび規制ロッドE(F)の移動でカム溝vと切欠きe(f)がピン孔12hに対応するとピン部材23がカム溝vと切欠きe(f)に落ち込み、カム溝v以外の摺接面および切欠きe(f)以外の外周面が対応するとピン部材は摺接面および外周面に乗り上げ、カムロッドCおよび規制ロッドE(F)の移動により進退する。
ピン孔12h内でのピン部材23の進退は、その遠心側端部を周方向溝12cvの底面より外側に出没させる。
以上のような構造のカウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周部に形成された長尺矩形凹部12pと短尺矩形凹部12qと両凹部間を連通する周方向溝12cvに、揺動爪部材Rが埋設され、軸方向溝12avに揺動爪部材Rを揺動自在に軸支する支軸ピン26が埋設される。
このようにして、全ての揺動爪部材Rが組み付けられた状態を図13に示す。
図12の分解斜視図には、奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する周方向溝12cvおよび長尺矩形凹部12p,短尺矩形凹部12qに埋設される4個の揺動爪部材Rと、偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する周方向溝12cvおよび長尺矩形凹部12p,短尺矩形凹部12qに埋設される4個の揺動爪部材Rとが、互いの相対角度位置関係を維持した姿勢で図示されており、加えて各揺動爪部材Rを軸支する支軸ピン26および各揺動爪部材Rに作用する圧縮スプリング22とピン部材23が示されている。
揺動爪部材Rは、全て同じ形状のものを使用しており、軸方向視で略円弧状をなし、中央に支軸ピン26が貫通する貫通孔の外周部が欠損して軸受凹部Rdが形成されており、同軸受凹部Rdの揺動中心に関して一方の側に幅広矩形の係合爪部Rpが形成され、他方の側には幅狭のピン受部Rrが延出し、その端部は幅広に拡大した幅広端部Rqが形成されている。
揺動爪部材Rは、ピン受部Rrがピン孔12hが形成された周方向溝12cvに揺動自在に嵌合し、一方の係合爪部Rpが長尺矩形凹部12pに揺動自在に嵌合するとともに軸受凹部Rdが軸方向溝12avに合致し、他方の幅広端部Rqが短尺矩形凹部12qに嵌合する。
そして、合致した軸受凹部Rdと軸方向溝12avに支軸ピン26が嵌合される。
揺動爪部材Rは、嵌合する周方向溝12cvに関して左右対称に形成されており、一方の幅広矩形の係合爪部Rpが他方のピン受部Rrおよび幅広端部Rqより重く、支軸ピン26に軸支されてカウンタ歯車軸12とともに回転したとき、遠心力に対して係合爪部Rpが重錘として作用して遠心方向に突出するように揺動爪部材Rを揺動させる。
揺動爪部材Rは、ピン受部Rrが揺動中心に関して反対側の係合爪部Rp側より幅が狭く形成されている。
また、ピン受部Rrは、ピン部材23を受け止めるだけの幅を具えれば足りるので、揺動爪部材Rを小型に形成することができ、かつ他方の係合爪部Rpの遠心力による揺動を容易にすることができる。
周方向に隣り合う揺動爪部材Rは、互いに対称な姿勢にカウンタ歯車軸12に組み付けられるので、互いに所定間隔を存して対向する係合爪部Rp,Rpは共通の長尺矩形凹部12pに嵌合し、他方の互いの近接する幅広端部Rqは共通の短尺矩形凹部12qに嵌合する。
揺動爪部材Rの係合爪部Rpの内側にカウンタ歯車軸12のスプリング受部12dに一端を支持された圧縮スプリング22が介装され、ピン受部Rrの内側にピン孔12hに嵌挿されたピン部材23がカムロッドCとの間に介装される。
このようにして、揺動爪部材Rが、支軸ピン26に揺動自在に軸支されてカウンタ歯車軸12の長尺矩形凹部12p,短尺矩形凹部12q,周方向溝12cvに埋設され、一方の係合爪部Rpが圧縮スプリング22により外側に付勢され、他方のピン受部Rrがピン部材23の進退により押圧されることで、圧縮スプリング22の付勢力および係合爪部Rpの遠心力に抗して揺動爪部材Rが揺動する。
ピン部材23が遠心方向に進行して揺動爪部材Rを揺動したときは、揺動爪部材Rは係合爪部Rpが長尺矩形凹部12pに没してカウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周面より外側に突出するものはない。
また、ピン部材23が退行したときは、圧縮スプリング22により付勢され遠心力が作用する係合爪部Rpがカウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周面より外側に突出し被動変速歯車nと係合可能とする。
揺動爪部材Rの係合爪部Rpの内側面と対向するカウンタ歯車軸12の長尺矩形凹部12pとの間に圧縮スプリング22が介装されるので、軸方向にスプリング専用のスペースが不要であり、カウンタ歯車軸12の軸方向の大型化を避けることができるとともに、圧縮スプリング22を揺動爪部材Rの軸方向幅の中央に配置して揺動爪部材R自体を軸方向両側を対称に形成することができ、よって被動変速歯車nとカウンタ歯車軸12の相対回転方向の両方向で係合および係合解除がなされる2種類の揺動爪部材を同じ形状の揺動爪部材Rとすることができ、形状の異なる揺動爪部材を用意する必要がない。
圧縮スプリング22がカウンタ歯車軸12の軸方向を長径とする楕円形状をなし、楕円形状をした圧縮スプリング22は、長径が揺動爪部材Rのピン受部Rrの幅より大きく、ピン受部Rrを揺動可能に嵌合する周方向に一周に亘って形成される周方向溝12cvを跨いで受け止められるので、カウンタ歯車軸12の加工を容易にするとともに、揺動爪部材Rを安定してカウンタ歯車軸12に組み付けることができる。
奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する4個の揺動爪部材Rと、偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する4個の揺動爪部材Rは、互いに軸中心に90度回転した相対角度位置関係にある。
奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する4個の揺動爪部材Rは、歯車の正回転方向で当接して各奇数段被動変速歯車n1,n3,n5とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する正回転奇数段揺動爪部材Raoと、歯車の逆回転方向で当接して各奇数段被動変速歯車n1,n3,n5とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する逆回転奇数段係合部材Rboとが、それぞれ対称位置に一対ずつ設けられる。
同様に、偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する4個の揺動爪部材Rは、歯車の正回転方向で当接して各偶数段被動変速歯車n2,n4,n6とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する正回転偶数段揺動爪部材Raeと、歯車の逆回転方向で当接して各偶数段被動変速歯車n2,n4,n6とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する逆回転偶数段係合部材Rbeとが、それぞれ対称位置に一対ずつ設けられる。
正回転奇数段揺動爪部材Raoが前記正回転奇数段用カムロッドCaoの移動により進退するピン部材23により揺動し、逆回転奇数段係合部材Rboが前記逆回転奇数段用カムロッドCboの移動により進退するピン部材23により揺動する。
同様に、正回転偶数段揺動爪部材Raeが前記正回転偶数段用カムロッドCaeの移動により進退するピン部材23により揺動し、逆回転偶数段係合部材Rbeが前記逆回転偶数段用カムロッドCbeの移動により進退するピン部材23により揺動する。
カウンタ歯車軸12に係合手段20を組み込む場合、まず右端の軸受カラー部材13を中央円筒部12aの外周端部に外装し、その軸受カラー部材13の内側の軸方向溝12avに支軸ピン26の一端を嵌入するようにして右端の係合手段20を組み込み、次の軸受カラー部材13を前記支軸ピン26の他端を覆うように外装した後、前段と同じようにして次段の係合手段20を組み込むことを、順次繰り返して、最後に左端の軸受カラー部材13を外装して終了する。
図14に示すように、軸受カラー部材13は、中央円筒部12aの長尺矩形凹部12pおよび短尺矩形凹部12q以外の軸方向位置に外装され、それは軸方向溝12avに一列に連続して埋設される支軸ピン26の隣り合う支軸ピン26,26に跨って配置され、支軸ピン26および揺動爪部材Rの脱落を防止する。
カウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの軸方向溝12avに埋設される支軸ピン26は、中央円筒部12aの外周面に接する深さに埋設されるので、軸受カラー部材13が外装されると、ガタなく固定される。
正回転奇数段揺動爪部材Rao(正回転偶数段揺動爪部材Rae)と逆回転奇数段係合部材Rbo(逆回転偶数段係合部材Rbe)は、互いに対向する側に係合爪部Rp,Rpを延出しており、正回転奇数段揺動爪部材Rao(正回転偶数段揺動爪部材Rae)は被動変速歯車n(およびカウンタ歯車軸12)の正回転方向で係合凸部31に当接して係合し、逆回転奇数段係合部材Rbo(逆回転偶数段係合部材Rbe)は被動変速歯車nの逆の回転方向で、係合凸部31に当接して係合する。
なお、正回転奇数段揺動爪部材Rao(正回転偶数段揺動爪部材Rae)は被動変速歯車nの逆の回転方向では係合爪部Rpが外側に突出していても係合せず、同様に、逆回転奇数段係合部材Rbo(逆回転偶数段係合部材Rbe)は被動変速歯車nの正回転方向では係合爪部Rpが外側に突出していても係合しない。
カムロッドCがニュートラル位置にあれば、全ての被動変速歯車nは、それぞれ対応する係合手段20のカムロッドCの移動位置によりピン部材23が突出して揺動爪部材Rのピン受部Rqを内側から押し上げ係合爪部Rpを内側に引っ込めた係合解除状態にあって、カウンタ歯車軸12に対して自由に回転する。
一方、係合手段20のカムロッドCのニュートラル位置以外の移動位置によりピン部材23がカム溝v(および規制ロッドE,Fの切欠きe,f)に入り揺動爪部材Rが揺動して係合爪部Rpを外側に突出した係合可能状態となれば、対応する被動変速歯車nの係合凸部31が係合爪部Rpに当接して、該被動変速歯車nの回転がカウンタ歯車軸12に伝達されるか、またはカウンタ歯車軸12の回転が該被動変速歯車nに伝達される。
前記変速駆動手段50において、シフトセレクトレバーの手動操作によってシフトドラム67を所定量回動し、シフトドラム67の回動がシフト溝67vに嵌合したシフトピン58を介してコントロールロッド51を軸方向に所定量移動し、ロストモーション機構52,53を介して係合手段20の8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeを連動する。
カムロッドC(および規制ロッドE,F)が軸方向に移動することで、カムロッドCのカム面に摺接するピン部材23がカム溝vに入ったり抜けたりして進退し、揺動爪部材Rを揺動して、被動変速歯車nとの係合を解除し、他の被動変速歯車nと係合してカウンタ歯車軸12と係合する被動変速歯車nを変えることで変速が行われる。
内燃機関の動力は、摩擦クラッチ5を介してメイン歯車軸11に伝達されて、第1,第2,第3,第4,第5,第6駆動変速歯車m1,m2,m3,m4,m5,m6を一体に回転しており、これらにそれぞれ常時噛合する第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6をそれぞれの回転速度で回転させている。
図2ないし図5は、1速状態を示しており、図4では第1被動変速歯車n1が矢印方向に回転し、図5では第2被動変速歯車n2が矢印方向に回転しており、第1被動変速歯車n1よりも第2被動変速歯車n2が高速で回転している。
そして、図15は、1速の加速状態(内燃機関からの動力が伝達される状態)におけるカムロッドCae,Cbo,Cao,Cbeと規制ロッドE,Fおよびピン部材23の位置関係を示す説明図である。
シフトアップするにはコントロールロッド51を右方に移動し、シフトダウンするにはコントロールロッド51を左方に移動し、コントロールロッド51の移動に伴い規制ロッドE,Fは一体に移動するとともに、カムロッドCae,Cbo,Cao,Cbeもロストモーション機構52,53を介して連動することになる。
図15に示すように、1速段が確立した状態では、正回転偶数段用カムロッドCaeのカム溝v2,v4に対応する規制ロッドEの切欠きe2,e4は、それぞれカム溝v2,v4よりもシフトアップ時のコントロールロッド51の移動方向である右方と反対側の左方に長尺に形成されている。
同様に、正回転奇数段用カムロッドCaoのカム溝v1,v3,v5に対応する規制ロッドFの切欠きf1,f3,f5は、それぞれカム溝v1,v3,v5よりもシフトアップ時のコントロールロッド51の移動方向である右方と反対側の左方に長尺に形成されている。
一方、逆回転奇数段用カムロッドCboのカム溝v3,v5に対応する規制ロッドEの切欠きe3,e5は、それぞれカム溝v3,v5よりもシフトダウン時のコントロールロッド51の移動方向である左方と反対側の右方に長尺に形成され、逆回転偶数段用カムロッドCbeのカム溝v2,v4,v6に対応する規制ロッドFの切欠きf2,f4,f6は、それぞれカム溝v2,v4,v6よりもシフトダウン時のコントロールロッド51の移動方向である左方と反対側の右方に長尺に形成されている。
なお、特別に規制ロッドEの切欠きe1と切欠きe6は、それぞれ対応する逆回転奇数段用カムロッドCboのカム溝v1と正回転偶数段用カムロッドCaeのカム溝v6と略同じ短尺の幅長となっている。
規制ロッドE,FとカムロッドCとは相対的に左右軸方向に摺動するが、規制ロッドE,Fの切欠きはその幅内にカムロッドCの対応するカム溝vが位置することができる。
そして、カムロッドCの幅より外径が大きいピン部材23は、カムロッドCのカム溝vに入って没しているときには、同時に規制ロッドE,Fの切欠きにも入っている。
図15に示す1速の加速状態では、正回転奇数段用カムロッドCaoのカム溝v1と逆回転奇数段用カムロッドCboのカム溝v1にピン部材23が入っていると同時に、規制ロッドEの切欠きe1と規制ロッドFの切欠きf1にも同じピン部材23が入っている。
その他のピン部材23は、全てカムロッドCのカム溝vに落ち込まずにカムロッドCの摺接面に接して突出している。
すなわち、第1被動変速歯車n1に対応する係合手段20のピン部材23のみが奇数段用カムロッドCao,Cboのカム溝v1,v1に入っており(図2参照)、したがって該係合手段20の奇数段揺動爪部材Rao,Rboが係合爪部Rp,Rpを外側に突出しており、奇数段揺動爪部材Rao,Rboのうち正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpに回転する第1被動変速歯車n1の係合凸部31が係合して(図4参照)、カウンタ歯車軸12を第1被動変速歯車n1とともに第1被動変速歯車n1と同じ回転速度で回転している。
この1速の加速状態では、第2被動変速歯車n2は、対応する係合手段20のピン部材23が偶数段用カムロッドCae,Cbeのカム溝v2から出て突出し(図3参照)、該係合手段20の偶数段揺動爪部材Rae,Rbeが係合爪部Rpを内側に引っ込めているので、空回りしている。
他の第3,第4,第5被動変速歯車n3,n4,n5,n6も同様で空回りしている(図2,図3参照)。
第1被動変速歯車n1の係合凸部31に係合して動力伝達しているのは、正回転奇数段揺動爪部材Raoであり、この第1被動変速歯車n1の動力を受けている正回転奇数段揺動爪部材Raoをピン部材23の突出で揺動して係合を解除させるには相当大きな摩擦抵抗があり、当該ピン部材23を突出させることは困難で、当該ピン部材23は正回転奇数段用カムロッドCaoのカム溝v1および規制ロッドFの切欠きf1に落ち込んだ状態(図15参照)で外端を正回転奇数段揺動爪部材Raoにより押さえ込まれた状態にある。
図15および図16では、揺動爪部材Rで突出を押さえ込まれた状態にあるピン部材23に格子ハッチを施している。
突出を押さえ込まれたピン部材23がカム溝vに入ったカムロッドCおよび切欠きe,fに入った規制ロッドE,Fは、当該ピン部材23により移動が規制される。
したがって、図15に示す1速の加速状態では、突出を押さえ込まれたピン部材23がカム溝v1に入った正回転奇数段用カムロッドCaoは左右軸方向いずれの方向にも移動が規制されている。
また、同じピン部材23が切欠きf1に入った規制ロッドFも移動を規制されるが、切欠きf1がカム溝v1より長尺であり、1速の加速状態では図15に示すように、切欠きf1はカム溝v1より軸方向左方に長尺であるので、規制ロッドFは左方には移動が規制されるが、右方には所定距離移動が許される。
すなわち、規制ロッドFとコッタ80を介して結合されたコントロールロッド51は、左方には移動が規制されるが、右方には所定距離移動が許される。
この1速から加速状態で2速にシフトアップする場合、シフトセレクトレバーの手動操作によってシフトドラム67を回動しコントロールロッド51を軸方向右方に移動しようとするが、規制ロッドFに結合されたコントロールロッド51は右方には移動を許されているので、容易に右方に移動することができる。
なお、1速の加速状態からシフトダウンするようなシフトセレクトレバーの手動操作は、コントロールロッド51が左方への移動を規制されていることからできない。
1速の加速状態からコントロールロッド51が軸方向右方に移動すると、ロストモーション機構52,53のコイルスプリング52s,53sを介して8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeを連動して軸方向右方に移動しようとするが、正回転奇数段用カムロッドCaoは、ピン部材23を介して作動する正回転奇数段揺動爪部材Raoが第1被動変速歯車n1の係合凸部31と係合して第1被動変速歯車n1から動力を受けているので、正回転奇数段揺動爪部材Raoを揺動して係合を解除するのに相当大きな摩擦抵抗があり、当初直ぐには移動せず、よって逆回転偶数段用カムロッドCbeも停止したままであるが、正回転偶数段用カムロッドCaeと逆回転奇数段用カムロッドCboは抵抗なく移動する。
逆回転奇数段用カムロッドCboの移動で1速の逆回転奇数段揺動爪部材Rboが係合爪部Rpを内側に引っ込める。
正回転偶数段用カムロッドCaeの移動で、カム溝v2にピン部材23が入り、よって第2被動変速歯車n2に対応する正回転偶数段揺動爪部材Raeが圧縮スプリング22の付勢力および係合爪部Rpの遠心力により揺動して係合爪部Rpを外側に突出し、第2被動変速歯車n2に係合可能となり、第1被動変速歯車n1とともに回転するカウンタ歯車軸12より高速で回転する第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの外側に突出した係合爪部Rpに追いつき当接する。
この直後から、より高速で回転する第2被動変速歯車n2によりカウンタ歯車軸12が第2被動変速歯車n2と同じ回転速度で回転し始め、第1被動変速歯車n1の係合凸部31から正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpが離れ、実際の1速から2速へのシフトアップが実行される。
第1被動変速歯車n1の係合凸部31から正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpが離れることで、正回転奇数段揺動爪部材Raoを固定する摩擦抵抗が無くなり、ロストモーション機構53のコイルスプリング53sにより付勢されていた正回転奇数段用カムロッドCaoが後れて右方に移動してカム溝v1に入っていたピン部材23が抜け出し、正回転奇数段揺動爪部材Raoを揺動してその係合爪部Rpを内側に引っ込める。
以上のように、1速の加速状態から減速比が1段小さい2速状態にシフトアップする際に、第1被動変速歯車n1の係合凸部31が正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpに当接して係合しカウンタ歯車軸12を第1被動変速歯車n1と同速度で回転させている状態で、より高速で回転する第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの係合爪部Rpに追いつき当接してカウンタ歯車軸12を第2被動変速歯車n2とともにより高速度で回転させて変速するので、第1被動変速歯車n1の係合凸部31から正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpは自然と離れていき係合が円滑に解除されるため、係合解除に力を要せず滑らかに作動して滑らかなシフトアップを行うことができる。
2速から3速、3速から4速、4速から5速、5速から6速の各シフトアップも同様に、被動変速歯車nが揺動爪部材Rに係合している状態で、減速比が1段小さい被動変速歯車nが揺動爪部材Rに係合してシフトアップがなされるので、係合解除に力を要せず滑らかに作動して変速用のクラッチを必要とせず、かつシフトアップ時の切換え時間に全くロスがなく、駆動力の抜けがないとともに変速ショックも小さく、滑らかなシフトアップを行うことができる。
シフトダウンも同様に、被動変速歯車nが揺動爪部材Rに係合している状態で、減速比が1段大きい被動変速歯車nに揺動爪部材Rが係合してシフトダウンがなされるので、係合解除に力を要せず滑らかに作動して変速用のクラッチを必要とせず、かつシフトダウン時の切換え時間に全くロスがなく、駆動力の抜けがないとともに変速ショックも小さく、滑らかなシフトダウンを行うことができる。
図16は、2速の加速状態のカムロッドCと規制ロッドE,Fおよびピン部材23の位置関係を示しており、第2被動変速歯車n2に対応する係合手段20のピン部材23が、正回転偶数段用カムロッドCaeのカム溝v2と逆回転偶数段用カムロッドCbeのカム溝v2に入っていると同時に、同じピン部材23が規制ロッドEの切欠きe2と規制ロッドFの切欠きf2にも入っている。
その他のピン部材23は、全てカムロッドCのカム溝vに落ち込まずにカムロッドCの摺接面に接して突出している。
第2被動変速歯車n2の係合凸部31に係合して動力伝達しているのは、正回転偶数段揺動爪部材Raeであり、同正回転偶数段揺動爪部材Raeを作動するピン部材23(図16で格子ハッチが施されたピン部材23)は、正回転偶数段用カムロッドCaeのカム溝v2と規制ロッドEの切欠きe2とに落ち込んだ状態で外端を正回転偶数段揺動爪部材Raeにより押さえ込まれた状態にある。
したがって、突出を押さえ込まれた当該ピン部材23がカム溝v2に入った正回転偶数段用カムロッドCaeは左右軸方向いずれの方向にも移動が規制されている。
また、同じピン部材23が切欠きe2に入った規制ロッドEも移動を規制されるが、切欠きe2がカム溝v2より長尺であり、2速状態では図16に示すように、切欠きe2は対応するカム溝v2より軸方向左方に長尺であるので、規制ロッドEは左方には移動が規制されるが、右方には所定距離移動が許される。
すなわち、規制ロッドEと結合されたコントロールロッド51は、左方には移動が規制されるが、右方には所定距離移動が許される。
したがって、2速から加速状態で3速にシフトアップしようとして、シフトセレクトレバーを手動操作すると、コントロールロッド51の右方への移動は許されているので、滑らかに操作でき、3速に変速することができる。
しかし、2速の加速状態にあって1速にシフトダウンしようとした場合、シフトセレクトレバーを手動操作してコントロールロッド51を軸方向左方に移動しようとしても、コントロールロッド51はピン部材23により左方の移動が規制されているので、移動できず、よって、シフトセレクトレバーの手動操作自体が規制される。
元来、2速の加速状態では、第2被動変速歯車n2が正回転偶数段用カムロッドCaeに係合した状態が維持されているので、シフトダウン操作をしても第2被動変速歯車n2より回転が遅い第1被動変速歯車n1が正回転偶数段用カムロッドCaeに係合することはなく、よって2速の係合状態は維持されたまま1速に変速することができない。
このように、加速状態ではシフトダウンができないにもかかわらず、従来はコントロールロッド51は左方に移動可能でシフトセレクトレバーの操作も規制されることなく操作できたために、運転者は違和感を覚えることになった。
また、加速中にシフトダウンしも何も起こらないが、その後減速に転じた時点でシフトダウンが起きることになり、この動きに対しても運転者は違和感を覚える。
このような事態を避けるべく、本多段変速機の場合は、加速状態でのシフトダウンのシフトセレクトレバーの手動操作自体を規制することとしたので、運転者は違和感を覚えることがない。
図17は、2速の減速状態(駆動輪側からの動力が伝達される状態)を示しており、図16の2速の加速状態と比べて、格子ハッチが施されたピン部材23が異なる。
すなわち、駆動輪側(カウンタ歯車軸12)からの動力を第2被動変速歯車n2に伝達しているのは、逆回転偶数段揺動爪部材Rbeであり、同逆回転偶数段揺動爪部材Rbeを作動するピン部材23(図17で格子ハッチが施されたピン部材23)は、逆回転偶数段用カムロッドCbeのカム溝v2と規制ロッドFの切欠きf2とに落ち込んだ状態で外端を逆回転偶数段揺動爪部材Rbeにより押さえ込まれた状態にある。
したがって、突出を押さえ込まれた当該ピン部材23が切欠きf2に入った規制ロッドFは、移動が規制されるが、切欠きf2がカム溝v2より長尺であり、2速状態では図17に示すように、切欠きf2は対応するカム溝v2より軸方向右方に長尺であるので、規制ロッドFは右方には移動が規制されるが、左方には所定距離移動が許される。
すなわち、規制ロッドFと結合されたコントロールロッド51は、右方には移動が規制されるが、左方には所定距離移動が許される。
したがって、2速から減速状態で1速にシフトダウンしようとして、シフトセレクトレバーを手動操作すると、コントロールロッド51の左方への移動は許されているので、滑らかに操作でき、1速に変速することができる。
しかし、2速の減速状態にあって3速にシフトアップしようとした場合、シフトセレクトレバーを手動操作してコントロールロッド51を軸方向右方に移動しようとしても、コントロールロッド51はピン部材23により右方の移動が規制されているので、移動できず、よって、シフトセレクトレバーの手動操作自体が規制される。
以上、1速と2速状態について記述したが、他の変速段についても同じであり、ある変速段が確立した状態で、加速時のシフトダウンおよび減速時のシフトアップは、運転者のシフト操作自体を規制して操作できないようにすることで、運転者が違和感を覚えることがないようにしている。
規制ロッドE,Fが正回転用のカムロッドCと逆回転用のカムロッドCに互いに軸方向に摺動自在に挟まれて束となり、束の状態でカウンタ歯車軸12のカム案内溝12gに嵌合されるので、案内溝12gをそれぞれに設ける必要がなく、少なくてすみカウンタ歯車軸12の加工工数が削減できる。
また、正回転用と逆回転用の2本のカムロッドCのカム溝vにそれぞれ対応する切欠きe,fを1本の規制ロッドE,Fに設けて対応することができ、部品点数を削減することができる。
規制ロッドE,Fがコントロールロッド51とは別体の部材で形成され、コッタ80の結合手段によりコントロールロッド51と一体に移動するよう結合したので、規制ロッドE,Fとコントロールロッド51がそれぞれ別に形成され、規制ロッドE,Fとコントロールロッド51を一体に形成するよりも、容易に加工形成することができる。
m…駆動変速歯車、m1〜m6…第1〜第6駆動変速歯車、
n…被動変速歯車、n1〜n6…第1〜第6被動変速歯車、
10…多段変速機、11…メイン歯車軸、12…カウンタ歯車軸、13…軸受カラー部材、
20…係合手段、22…圧縮スプリング、23…ピン部材、26…支軸ピン、
31…係合凸部、
C…カムロッド、Cao…正回転奇数段用カムロッド、Cae…正回転偶数段用カムロッド、Cbo…逆回転奇数段用カムロッド、Cbe…逆回転偶数段用カムロッド、p…係止爪、v1,v2,v3,v4,v5,v6…カム溝、
E…規制ロッド、e,e1,e2,e3,e4,e5,e6…切欠き、
F…規制ロッド、f,f1,f2,f3,f4,f5,f6…切欠き、
R…揺動爪部材、Rao…正回転奇数段揺動爪部材、Rae…正回転偶数段揺動爪部材、Rbo…逆回転奇数段揺動爪部材、Rbe…逆回転偶数段揺動爪部材、Rp…係合爪部、Rr…ピン受部、Rq…幅広端部、
50…変速駆動手段、51…コントロールロッド、51a,51b…外周凹部、52,53…ロストモーション機構、52h,53h…スプリングホルダ、52ha,53ha…内周凹部、52s,53s…コイルスプリング、55…コントロールロッド操作子、56…ボールベアリング、57…ナット、58…シフトピン、59…係合ピン、60…溝条、65…支軸、66…ベアリング、67…シフトドラム、67v…シフト溝、70…出力スプロケット、80…コッタ。

Claims (5)

  1. 互いに平行な歯車軸にそれぞれ複数の駆動歯車と被動歯車が変速段毎に常時噛み合い状態で軸支され、前記駆動歯車と前記被動歯車の一方の複数の歯車が歯車軸に固定され、他方の複数の歯車と歯車軸との間に設けられ互いの係合を行う係合手段が変速駆動手段により切り換え駆動されて変速を行う多段変速機において、
    前記係合手段は、歯車の内燃機関からの動力が伝達される正回転と駆動輪側からの動力が伝達される逆回転の各回転方向でのみそれぞれ係合可能な正回転用と逆回転用の2種類の係合手段があり、
    各前記係合手段は、
    各歯車の内周面の周方向複数箇所に周方向に係合面を有して設けられた係合凸部と、
    前記歯車軸に出没自在に設けられ各歯車の前記係合凸部に係脱可能に係合する係合部材と、
    前記歯車軸に軸方向に摺動自在に支持され摺接面に複数のカム溝が軸方向所要箇所に形成された複数のカムロッドと、
    前記歯車軸の所要箇所に径方向に嵌挿され前記軸方向に移動するカムロッドの摺接面と前記カム溝に交互に接して進退し前記係合部材を作動するピン部材とを備え、
    前記変速駆動手段は、
    前記複数のカムロッドの内側で前記歯車軸の中空中心軸に設けられるコントロールロッドと、
    前記コントロールロッドの外周面と前記複数のカムロッドの内側面との間に介装されて前記コントロールロッドと各カムロッドを軸方向に作用するスプリングを介して連動するロストモーション機構とを備え、
    前記コントロールロッドと一体に移動する規制ロッドが前記カムロッドに摺接して前記歯車軸に設けられ、
    前記規制ロッドは、摺接した前記カムロッドの前記カム溝とともに前記ピン部材を係合可能な切欠きが各カム溝に対応して形成され、
    正回転用の前記カムロッドのカム溝に対応する前記規制ロッドの切欠きは、変速段確立状態で当該カム溝よりもシフトアップ時の前記コントロールロッドの移動方向と反対側に長く形成され、
    逆回転用の前記カムロッドのカム溝に対応する前記規制ロッドの切欠きは、変速段確立状態で当該カム溝よりもシフトダウン時の前記コントロールロッドの移動方向と反対側に長く形成されていることを特徴とする多段変速機。
  2. 前記規制ロッドが、正回転用の前記カムロッドと逆回転用の前記カムロッドとの間に挟まれて軸方向に相対的に摺動自在に設けられることを特徴とする請求項1記載の多段変速機。
  3. 前記規制ロッドは、前記コントロールロッドとは別体の部材で形成され、結合手段により前記コントロールロッドと一体に移動するよう結合されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の多段変速機。
  4. 前記結合手段は、半割コッタであり、
    前記コントロールロッドの外周面に設けられた嵌合溝と前記規制ロッドの内面に設けられた嵌合溝との双方に前記半割コッタが嵌合して前記コントロールロッドに前記規制ロッドを一体に結合することを特徴とする請求項3記載の多段変速機。
  5. 前記カムロッドおよび前記規制ロッドは、同じ機能を有するロッドが前記コントロールロッドの外周囲に相対向して対称位置に配設されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載の多段変速機。
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