本発明は、バイオディーゼル燃料の実用化製造方法及びそのための装置、特に、バイオディーゼル燃料を高速、効率的に製造し、低環境負荷かつ低コストでの製造を可能として、実用上優れた生産効率を有するバイオディーゼル燃料の製造方法及びそのための装置に関する。更に、本発明は、原料油のエステル交換反応、反応生成物の分離、精製、分離した成分の原料油のエステル交換反応部位への返送等を総合的に行い、高速、効率的、かつ低コストでのバイオディーゼル燃料の製造を可能とする、実用上優れた生産効率を有するバイオディーゼル燃料の製造システムに関する。
近年、地球温暖化防止や資源循環の観点から廃棄物系バイオマスからバイオエタノールやバイオディーゼル燃料(BDF)などのバイオ燃料の製造技術に関する技術開発に注目が集まっている。すなわち、地球温暖化が世界的に社会問題化している中、ガソリンエンジンに比べて燃費が良く、CO2の排出量の少ないディーゼルエンジンが見直されている。従来、ディーゼルエンジンの燃料としては、重油、軽油などの化石燃料が使用されていたが、近年、地球温暖化対策の観点でより優れたバイオディーゼル燃料への注目が年々高まりを見せている。バイオディーゼル燃料は、ナタネ油、パーム油、オリーブ油、ヒマワリ油、ココナッツ油、大豆油、コメ油等の植物油、牛脂等の獣脂、魚油や、廃食用油などの生物由来の油脂、或いは、トラップグリース(排水表面に浮かぶ泥状の油脂類)のような低品質廃油脂類を原料として合成されるディーゼル燃料(脂肪酸メチルエステル)であり、欧州、北米、中南米、東南アジアなどですでに普及しつつある。
バイオディーゼル燃料は、油脂類の主成分であるモノグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドを、エタノールのような低級アルコールとエステル交換反応を行なうことにより製造されるが、従来、そのエステル交換反応として、種々の方法が提案されている。例えば、一般的には、油脂類を、NaOH、KOHのようなアルカリ触媒の存在で、メタノールのような低級アルコールを用いてエステル交換反応を行なうアルカリ触媒法が用いられている(特開平7−197047号公報、特開平10−245586号公報、特開2005−350630号公報、特開2005−350631号公報、特開2005−350632号公報)。
また、温度250〜300℃、圧力3〜15Mpaの温度及び圧力により、アルコールを超臨界状態に保ち、油脂類とアルコールを反応させて、油脂類に含まれるトリグリセリドをエステル交換反応に付して、金属アルカリ触媒や、酸触媒を使用することなく、脂肪酸のアルキルエステルを製造する方法(超臨界法)が開示されている(特開2000−109833号公報、特開2000−143586号公報)。更に、油脂類に含まれるトリグリセリドから高い反応効率で脂肪酸の低級アルキルエステルが製造でき、しかも触媒の分離・回収工程を簡略化乃至省略するために、エステル交換反応に触媒としてカリウム化合物又はカルシウム化合物と酸化鉄、或いは、カリウム化合物と酸化ジルコニウムからなる固体塩基性触媒を使用する方法(特開2000−44984号公報)、又は、ペロブスカイト型構造を有する複合金属酸化物を含んでなる触媒を使用する方法(特開2002−294277号公報)のような固定触媒を用いる方法が開示されている。
また、油脂類とアルコールとの間で触媒の存在下にエステル交換反応を行なうに際して、触媒の分離除去設備を要することなく容易に脂肪酸エステルを精製でき、しかも相分離するグリセリン中での触媒の残存の問題も無いように、触媒として、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミンのような揮発性アミンからなる揮発性触媒を用いる方法が開示されている(特開2002−167356号公報)。更に、廃食用油等から高級脂肪酸のメチルエステルとグリセリンとを連続的に製造する方法として、高級脂肪酸グリセライドとメタノールとをアルカリ触媒の存在下で混合し、加温槽で40〜60℃に加温し、ついで40〜60℃の高温雰囲気中に配設した保温槽の伝熱管に通してエステル交換反応を行なわせた後、反応生成物をセパレータに貯蔵してグリセリンと高級脂肪酸のメチルエステルとに分離し、分離したエステルを洗浄水にて洗浄した後、無水グリセリンを添加して脱水する方法が開示されている(特開平10−182518号公報)。
上記のように、バイオディーゼル燃料の製造方法として、油脂類とアルコールとの間でのエステル交換反応については、種々の方法が提案されているが、反応効率や反応の平易化、生成物の分離、精製、或いは、低コスト等の問題から、実用化技術としては、種々の課題を抱えており、現在、エステル交換反応の反応効率等の利点から、アルカリ触媒を用いるアルカリ触媒法が主流となっている。アルカリ触媒法による油脂類からのバイオディーゼル燃料の合成は、一般的には、その油脂に、KOHやNaOHのようなアルカリ触媒とメタノールのような低級アルコールを加え、50〜60℃の温度に加温して約一時間程度、低級アルキルエステル化反応することにより行われている。
アルカリ触媒法による油脂類からのバイオディーゼル燃料の合成に際して、低品質廃油脂類のように原料となる油脂に、遊離脂肪酸や水が多く含まれている場合には、エステル交換反応を問題なく行なうために、該成分を除去するという前処理が必要となる。該前処理としては、原料油脂に酸性触媒とメタノールを加え、60℃から高い場合には180℃まで加温することによって、まず遊離脂肪酸をメチルエステル化して脂肪酸メチルエステル(バイオディーゼル燃料)を合成し、その後、酸性触媒の中和と脱水を行う。アルカリ触媒法においては、予め、該予備的処理を行なった上で、次いで、塩基性触媒とメタノールを添加して、油脂をメチルエステル化して脂肪酸メチルエステル(バイオディーゼル燃料)を合成する二段階の合成方法が行われている。また、原料油から遊離脂肪酸を除去するために、原料油を減圧下で温度50〜150℃以下の条件下で遊離脂肪酸を留去する工程を設ける方法も開示されている(特開2005−350631号公報)。
バイオディーゼル燃料の製造方法において、エステル交換反応によって生成した反応生成物を、分離、精製する方法としては、原料油を低級アルコールでエステル交換反応を行なって生成した反応混合液を分離、精製するために、反応混合液を希硫酸を加えて中和し、中和した反応混合液から硫酸塩水和結晶を濾別し、蒸留や比重分離操作等により、反応混合液からグリセリンのような高比重物質を分離する方法(特開2005−350630号公報)や、エステル交換反応によって生成した反応生成物から、低沸点物質を減圧留去し、残液の軽液をシリカゲルや活性炭のような固体吸着剤に接触させて重液と分離し、精製する方法(特開2007−99882号公報)が開示されている。
そこで、上記のとおり、バイオディーゼル燃料の製造方法として、各種の方法が提案されているが、これらの従来の方法におけるバイオディーゼル燃料の合成反応は、油脂相とメタノールのような低級アルコール相からなる二液相系の反応であり、両相間の物質移動が律速となるため、非常に進行が遅く、目的とした反応収率を得るのに通常一時間程度も要するという問題がある。そのため、二液相間の物質移動を促進させるために、過剰量のメタノールを添加し、加温する必要があった。また、従来の方法では、過剰に添加したメタノールを回収するために、減圧蒸留を行っている。しかし、メタノールは蒸発潜熱が大きいため、メタノールの回収プロセスで非常に多くのエネルギーを要し、コスト面でも環境対策面でも問題があった。更に、脂肪酸と油脂の混合物は、固液混合物やゲル状物質である場合も多く、これらの物質を原料としてバイオディーゼル燃料を合成するときは、固液系の反応になり、二液相系に比べてさらに反応速度が遅くなってしまうという問題もある。更に、バイオディーゼル燃料の合成反応によって生成した生成物の分離、精製についても、簡便な操作で、効率的に行なうことができる方法が見い出されていないという問題もあった。
上記のような従来法の欠点を改善して、より迅速に、油脂から脂肪酸メチルエステルを合成する試みもなされている。例えば、非特許文献1には、テトラヒドロフラン(THF)やメチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)を共溶媒として用いることによって、反応系を均一相として、油脂から脂肪酸メチルエステルを合成する方法が記載されている。しかし、本方法において反応溶液からメタノールを回収するには、依然として減圧蒸留を行わざるを得ず、コスト面及び環境対策面で十分とは言えなかった。
特開平7−197047号公報。
特開平10−182518号公報。
特開平10−245586号公報。
特開2000−44984号公報。
特開2000−109833号公報。
特開2000−143586号公報。
特開2002−167356号公報。
特開2002−294277号公報。
特開2005−350630号公報。
特開2005−350631号公報。
特開2005−350632号公報。
特開2007−99882号公報。
JAOCS, vol. 75, No. 9 (1998)。
本発明の課題は、バイオディーゼル燃料の実用化製造方法及びそのための装置、特に、バイオディーゼル燃料を高速、効率的に製造し、低環境負荷かつ低コストでの製造を可能として、実用上優れた生産効率を有するバイオディーゼル燃料の製造方法及びそのための装置を提供すること、更に、本発明は、原料油のエステル交換反応、反応生成物の分離、精製、分離した成分の原料油のエステル交換反応部位への返送等を総合的に行い、高速、効率的、かつ低コストでのバイオディーゼル燃料の製造を可能とする、実用上優れた生産効率を有するバイオディーゼル燃料の製造システムを提供することにある。
本発明者は、実用上優れた生産効率を有するバイオディーゼル燃料の製造方法について鋭意検討する中で、原料油を、触媒の存在下、エタノールのような低級アルコールでエステル交換反応を行い低級アルコールの脂肪酸エステルを生成することよりなるバイオディ−ゼル燃料の製造に際して、液化ジメチルエーテル(DME)を反応系に添加して均一相を形成し、該均一相系にて、原料油のエステル交換反応を行なうことにより、脂肪酸や油脂とメタノールのような低級アルコールとの反応速度を飛躍的に向上させることができ、効率的な原料油のエステル交換反応を行なうことが可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。この本発明の方法は、原料油がゲル状の油脂類を含む場合であっても、適用することができ、均一相系での反応が可能となる。
また、本発明においては、液化ジメチルエーテル(DME)を溶媒として用いることにより、エステル交換反応によって生成した反応溶液から、グリセリン相と、バイオディーゼル燃料相を効果的に分離することが可能となり、該グリセリン相からの液化ジメチルエーテル(DME)及び低級アルコールの分離、或いは、バイオディーゼル燃料相からの低級アルコールの分離を容易に行うことを可能とし、これらの成分をエステル交換反応工程に返送、再利用して、経済的かつ効率的なバイオディ−ゼル燃料の製造システムを構築することに成功した。
すなわち、本発明は、原料油を、触媒の存在下、低級アルコールでエステル交換反応を行い、低級アルコールの脂肪酸エステルを生成することよりなるバイオディ−ゼル燃料の製造方法において、原料油のエステル交換反応工程を液化ジメチルエーテルを反応系に添加して均一相系にて行うことを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法からなる。該エステル交換反応において用いられる触媒としては、アルカリ触媒、酸触媒、酵素、及びイオン交換樹脂からなる固体触媒等を挙げることができる。本発明において、エステル交換反応に用いる原料油が、遊離脂肪酸及び水を含む廃油脂類である場合には、酸触媒の存在下、遊離脂肪酸を液化ジメチルエーテル(DME)を添加した均一相にて、低級アルコールによりエステル化反応を行い、次いで、液化ジメチルエーテルで溶媒抽出を行なうことにより、脱水処理を行う前処理を行なって、遊離脂肪酸の処理と脱水を行なうことができる。
本発明において、エステル交換反応工程により得られた、バイオディーゼル燃料を含む反応溶液は、静置することにより、グリセリン相と、バイオディーゼル燃料、低級アルコール及び液化ジメチルエーテル(DME)からなるバイオディーゼル燃料相とに容易に分離することができる。該静置分離工程において分離したグリセリン相から、液化ジメチルエーテル(DME)を抽出溶媒として、低級アルコールを抽出分離することにより、液化ジメチルエーテル(DME)及び低級アルコールの混合物を分離することができる。該分離した液化ジメチルエーテル(DME)及び低級アルコールの混合物は、原料油のエステル交換反応工程へ返送することにより、再利用して、経済的、効率的な原料油のエステル交換反応を可能とする。
本発明において、静置分離工程により分離されたバイオディーゼル燃料相は、減圧処理することにより、ジメチルエーテル(DME)ガスを回収し、更に、バイオディーゼル燃料を含む反応溶液を減圧蒸留により低級アルコールを容易に分離することができる。該分離された低級アルコールは、原料油のエステル交換反応工程へ返送することにより、再利用して、経済的、効率的な原料油のエステル交換反応を可能とする。
また、本発明においては、バイオディーゼル燃料相からのジメチルエーテル及び低級アルコール分離工程を経て調製されたバイオディーゼル燃料溶液は、水又は湯で洗浄する洗浄し、更に、該洗浄工程を経て調製されたバイオディーゼル燃料溶液を減圧加熱処理により脱水することにより、バイオディーゼル燃料溶液を精製することにより、高品質のバイオディーゼル燃料を製造することができる。本発明において、バイオディーゼル燃料の製造に用いる低級アルコールは、メタノールであることが、特に好ましい。また、本発明において、バイオディーゼル燃料の製造に用いる原料油としては、食用油、廃食用油、又は低品質廃油脂類等を挙げることができる。
本発明は、上記のような反応、処理手段を総合的に組み合わせて、高速、効率的、かつ低コストでのバイオディーゼル燃料の製造を可能とする、実用上優れた生産効率を有するバイオディーゼル燃料の製造システムを提供する。更に、本発明は、液化ジメチルエーテル(DME)を用いた均一相系でのエステル交換反応を行なうためのエステル交換反応装置、すなわち、攪拌手段を備えた耐圧セル、液化ジメチルエーテル(DME)供給手段、アルカリ触媒及び低級アルコール供給手段を備えたバイオディーゼル燃料の製造のための原料油のエステル交換反応装置を提供する。
すなわち具体的には本発明は、(1)原料油を、触媒の存在下、低級アルコールでエステル交換反応を行い、低級アルコールの脂肪酸エステルを生成することよりなるバイオディ−ゼル燃料の製造方法において、原料油のエステル交換反応工程を液化ジメチルエーテルを反応系に添加して均一相系にて行うことを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法や、
(2)触媒が、アルカリ触媒、酸触媒、酵素、及びイオン交換樹脂からなる固体触媒のいずれかであることを特徴とする上記(1)に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法や、
(3)エステル交換反応に用いる原料油が、遊離脂肪酸及び水を含む廃油脂類を液化ジメチルエーテルで溶媒抽出を行うことにより脱水処理を行い、次いで、得られた遊離脂肪酸及び廃油脂類を含む液化ジメチルエーテル溶液における遊離脂肪酸を、酸触媒の存在下、均一相にて、低級アルコールによりエステル化反応を行う前処理工程により調製されたものであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のバイオディーゼル燃料の製造方法や、
(4)エステル交換反応工程に続いて、エステル交換反応工程により得られた、バイオディーゼル燃料を含む反応溶液を静置し、グリセリン相と、バイオディーゼル燃料、低級アルコール及び液化ジメチルエーテルからなるバイオディーゼル燃料相とに分離することからなる静置分離工程を設けることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載のバイオディーゼル燃料の製造方法や、
(5)静置分離工程に続いて、静置分離工程において分離したグリセリン相から、液化ジメチルエーテルを抽出溶媒として、低級アルコールを抽出分離することからなるグリセリン相からの低級アルコール抽出分離工程を設けることを特徴とする上記(4)記載のバイオディーゼル燃料の製造方法や、
(6)グリセリン相からの低級アルコール抽出分離工程に続いて、分離した液化ジメチルエーテル及び低級アルコールの混合物を、原料油のエステル交換反応工程へ返送することからなる液化ジメチルエーテル及び低級アルコール返送工程を設けることを特徴とする上記(5)記載のバイオディーゼル燃料の製造方法や、
(7)静置分離工程に続いて、静置分離工程により分離されたバイオディーゼル燃料相を、減圧処理することにより、ジメチルエーテルガスを回収し、更に、バイオディーゼル燃料を含む反応溶液を減圧蒸留により低級アルコールを分離することからなるバイオディーゼル燃料相からのジメチルエーテル及び低級アルコール分離工程を設けることを特徴とする上記(4)記載のバイオディーゼル燃料の製造方法や、
(8)バイオディーゼル燃料相からのジメチルエーテル及び低級アルコール分離工程において分離された低級アルコールを、原料油のエステル交換反応工程へ返送することからなるバイオディーゼル燃料相からの低級アルコール返送工程を設けたことを特徴とする上記(7)記載のバイオディーゼル燃料の製造方法や、
(9)バイオディーゼル燃料相からのジメチルエーテル及び低級アルコール分離工程に続いて、バイオディーゼル燃料相からのジメチルエーテル及び低級アルコール分離工程を経て調製されたバイオディーゼル燃料溶液を、水又は湯で洗浄する洗浄工程、及び、該洗浄工程を経て調製されたバイオディーゼル燃料溶液を減圧加熱処理により脱水する工程を設けてバイオディーゼル燃料溶液を精製することを特徴とする上記(7)記載のバイオディーゼル燃料の製造方法や、
(10)バイオディーゼル燃料の製造に用いる低級アルコールが、メタノールであることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれか記載のバイオディーゼル燃料の製造方法や、
(11)バイオディーゼル燃料の製造に用いる原料油が、食用油、廃食用油、又は低品質廃油脂類であることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれか記載のバイオディーゼル燃料の製造方法からなる。
また本発明は、(12)原料油を、アルカリ触媒の存在下、液化ジメチルエーテルを添加した均一相系にて低級アルコールでエステル交換反応を行う、バイオディーゼル原料油のエステル交換反応手段(A1);エステル交換反応手段により得られた、バイオディーゼル燃料を含む反応溶液を、グリセリン相と、バイオディーゼル燃料、低級アルコール及び液化ジメチルエーテルからなるバイオディーゼル燃料相とに分離するバイオディーゼル燃料を含む反応溶液の静置分離手段(A2);静置分離手段において分離したグリセリン相から、液化ジメチルエーテルを抽出溶媒として、低級アルコールを抽出分離するグリセリン相からの低級アルコール抽出分離手段(B1);グリセリン相から分離した液化ジメチルエーテル及び低級アルコールの混合物を、原料油のエステル交換反応手段へ返送する液化ジメチルエーテル及び低級アルコール返送手段(B2);静置分離手段により分離されたバイオディーゼル燃料相を、減圧処理することにより、ジメチルエーテルガスを回収し、更に、バイオディーゼル燃料を含む反応溶液を減圧蒸留により低級アルコールを分離するバイオディーゼル燃料相からのジメチルエーテル及び低級アルコール分離手段(A3);バイオディーゼル燃料相からのジメチルエーテル及び低級アルコール分離手段において分離された低級アルコールを、原料油のエステル交換反応手段へ返送するバイオディーゼル燃料相からの低級アルコール返送手段(C1);バイオディーゼル燃料相からのジメチルエーテル及び低級アルコール分離手段を経て調製されたバイオディーゼル燃料溶液を、水又は湯で洗浄する洗浄手段(A4)、及び、該洗浄手段を経て調製されたバイオディーゼル燃料溶液を減圧加熱処理により脱水する手段(A5)を設けたバイオディーゼル燃料溶液精製手段からなるバイオディーゼル燃料製造システムからなる。
さらに本発明は、(13)攪拌手段を備えた耐圧セル、液化ジメチルエーテル供給手段、アルカリ触媒及び低級アルコール供給手段を供えたことを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造における原料油のエステル交換反応装置からなる。
からなる。
本発明は、バイオディーゼル燃料の製造方法における原料油のエステル交換反応において、ジメチルエーテル(DME)を用いることにより、油脂類と低級アルコールとの反応速度を飛躍的に向上させることができ、例えば、バイオディーゼル燃料の製造方法として実績のあるアルカリ均相法(二液相系)に対して、約100倍以上の反応効率を達成し、バイオディーゼルの製造方法として、より高速、より低い環境負荷で、かつ、より低コストでバイオディーゼル燃料を製造することができ、実用上優れた生産効率を有するバイオディーゼル燃料の製造方法を提供する。
また、本発明は、(1)常温でガスであり、(2)0.5MPa程度の圧力下では液体になる、(3)圧力をコントロールすることで、状態を気体若しくは液体にスイッチできることから、抽出剤として利用すると、抽出後の抽出物と抽出剤の分離が容易になる等のジメチルエーテル(DME)の特性を利用して、原料油のエステル交換反応のみならず、反応生成物の分離、精製、分離を、容易かつ効果的に行い、更には、より低エネルギーでの反応生成物の回収行うことができる手段を提供し、そして、分離した成分の原料油のエステル交換反応部位への返送等を行なうことにより、再利用を可能として、経済的で、実用上優れた生産効率を有するバイオディーゼル燃料の製造システムを提供する。また、本発明のバイオディーゼル燃料の製造システムや装置は、効率的かつ平易な処理操作をとることが可能であることから、小規模化することができ、また、大量の処理にも適応しえる実用的なバイオディーゼル燃料の製造システムや装置を提供する。
本発明は、原料油を、触媒の存在下、低級アルコールでエステル交換反応を行い、低級アルコールの脂肪酸エステルを生成することよりなるバイオディ−ゼル燃料の製造方法において、原料油のエステル交換反応工程を液化ジメチルエーテル(DME)を反応系に添加して均一相系にて行うバイオディーゼル燃料の製造方法からなる。本発明において、液化ジメチルエーテル(DME)及び触媒存在下で、原料油中の脂肪酸及び/又は油脂とメタノールとを、均一相系にてメチルエステル化反応させる工程を有する方法である限り特に制限されず、前記触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ触媒;塩酸、硫酸、フッ酸などの酸触媒;リパーゼ等の酵素や、酸化カルシウム等の無機物や、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂等のイオン交換樹脂などの固体触媒;を例示することができる。
リパーゼ等の酵素を用いる方法は、原料化合物中に油脂と高濃度の脂肪酸が共存している場合であっても、油脂と脂肪酸の両方を同様にエステル化し得る点で好ましいが、酸触媒やアルカリ触媒に比べて高コストである。一方、アルカリ触媒を用いる方法は、固体触媒に比べて低コストであり、エステル化反応も高速で行うことができる点で好ましいが、原料油脂類が、高濃度の遊離脂肪酸を含有していると、そのままエステル化反応を行なうには、後述するような不十分な点がある。また、酸触媒法は、原料化合物が高濃度の脂肪酸を含有している場合であっても、アルカリ触媒を用いる方法のような不十分な点はないが、一般的に、メチルエステル化反応の速度はアルカリ触媒ほど高速ではない。
更に、酵素以外の固体触媒を用いる方法のうち、塩基性点を有する固体触媒(例えば、無機物や陰イオン交換樹脂)は、上記アルカリ触媒と同様の不十分な点を有する。一方、酵素以外の固体触媒を用いる方法のうち、酸性点を有する固体触媒(例えば、陽イオン交換樹脂)は、アルカリ触媒のような不十分な点はないが、一般的に、エステル化反応の速度はアルカリ触媒ほど高速ではない。また、酵素以外の固体触媒を用いる方法は、酸触媒を用いる方法やアルカリ触媒を用いる方法に比べて高コストである。以上のように、各種触媒にはそれぞれメリットデメリットがあるため、状況に応じて適宜好ましい触媒を選択すればよいが、エステル化反応の速度やコストの面から見た場合には、実用的にはアルカリ触媒を用いる方法が好ましい。
また、本発明の製造方法に用いる触媒の量は、用いる触媒の種類や原料物質中の脂肪酸及び/又は油脂の量、反応系のスケール等により適宜調節することが必要となる。なお、酸触媒又はアルカリ触媒と、固体触媒の双方に分類可能な触媒の分類に関していうと、本明細書では、適量であっても液化ジメチルエーテル(DME)に不溶な触媒は固体触媒に分類し、可溶な触媒はその性質に応じて酸触媒又はアルカリ触媒に分類するものとする。また、本明細書におけるバイオディーゼル燃料とは、脂肪酸低級アルキルエステルをいう。バイオディーゼル燃料における脂肪酸低級アルキルエステルとしては、メタノールを用いてエステル交換反応によって生成される脂肪酸メチルエステルの場合が特に好ましい。
本発明の製造方法に用いる原料物質としては、脂肪酸及び/又は油脂の含有物である限り特に制限されず、上記脂肪酸としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、分岐脂肪酸、ヒドロキシル脂肪酸等のいずれであってもよいが、C12〜C28の脂肪酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸を好ましく例示することができ、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトイル酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、アラキドン酸等を好適に例示することができる。また、上記油脂としては、特に制限されず、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド等のいずれであってもよいが、トリグリセリドであることが好ましく、トリグリセリンの構成脂肪酸がC12〜C28の脂肪酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸であるトリグリセリドをより好ましく例示することができる。上記油脂として具体的には、大豆油、ゴマ油、ナタネ油、コメ油、ヌカ油、ツバキ油、サフラワー油 (ベニバナ油)、パーム油、パーム殻油、ヤシ油、綿実油、ヒマワリ油、荏油、オリーブオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、ヘーゼルナッツオイル、ウォルナッツオイル、グレープシードオイル、魚油、肝油、鮫油等の油や、ラード(豚脂)、ヘット(牛脂)、鶏油、シュマルツ、ショートニング、バター、マーガリン、カカオバター、硬化油等の脂肪を例示することができる。この他、非食用の植物油脂も、原料物質として用いることができる。
また、本発明の製造方法に用いる原料物質としては、液体状の原料物質のほか、固体状、ゲル状、泥状等の原料物質や、高濃度の水や脂肪酸を含む原料物質などの低品質な原料物質についても、適切な前処理を施すことによって本発明の製造方法に用いることができる。低品質な原料物質として、廃油脂(含水廃油脂を含む)やトラップグリース(公共下水道排水の前に設置されている阻集器内の排水表面に浮かぶ泥状の油脂含有物)を例示することができる。これらの低品質な脂肪酸や油脂は、これまでほとんどが再利用されることなく廃棄され、環境問題となっていたが、本発明の製造方法においてこれらの低品質の脂肪酸や油脂を原料物質として利用することによって、より低コストで、環境負荷のより少ないバイオディーゼル燃料の製造を実現することができる。
本発明において、低品質廃油脂類のように、エステル交換反応に用いる原料油中に、多量の遊離脂肪酸及び水を含む廃油脂類の場合には、前処理として、例えば、廃油脂類を液化ジメチルエーテルで溶媒抽出を行うことにより、エーテル相(上相)と水相(下相)の二液相を形成させ、前記水相を除去することによって、脱水処理を行うことにより、蒸発潜熱を加えることなく、低エネルギー、低コストにて原料物質を脱水し、次いで、得られた遊離脂肪酸及び廃油脂類を含む液化ジメチルエーテル溶液における遊離脂肪酸を、酸触媒の存在下、均一相にて、低級アルコールによりエステル化反応を行い、遊離脂肪酸等から脂肪酸メチルエステルを生成して原料物質中の遊離脂肪酸濃度を低下させることができ、脱水と遊離脂肪酸の除去とを行なって、エステル交換反応に用いる原料油を調製することができる。
また、原料物質中に繊維質等の固形分などが含まれている場合も、それらの固形分を水相(下相)と共に除去することができる。多量の遊離脂肪酸及び水を含む廃油脂類の場合は、上記のような前処理を行なった後に、本発明のエステル交換反応を行なうことにより、より高速、より低い環境負荷で、かつ、より低コストでバイオディーゼル燃料を製造することができる。
本発明の原料油のエステル交換反応を実施するに際して、原料油や或いは脱水処理(前処理)して得られた原料油中に、遊離脂肪酸があまり含まれていない場合には、それ以上の前処理を行なうことなく直接本発明のエステル交換反応を実施することによって、油脂から脂肪酸低級アルキルエステルを、より高速、より低い環境負荷で、かつ、より低コストで製造することができる。
本発明の方法によれば、上記低品質な原料物質のうち、液体状でない物質(例えば、脂肪酸系の固化剤によってゲル化又は固体化した廃油脂)についても、上述の脱水処理を行うことによって、本発明の製造方法に用い得る原料物質に用いることができる。すなわち、上記低品質な原料物質の場合、水分を含んでいないもの又は水分濃度が低いものについては、それに液化ジメチルエーテル(DME)を含有させて攪拌することによって、好適に液化処理することができ、本発明の製造方法に用い得る原料物質として適用することができる。液化ジメチルエーテル(DME)を用いることにより、得られた処理物を、本発明の製造方法における液化ジメチルエーテル(DME)と原料物質の混合物として、エステル交換反応に適用することができる。なお、上記脱水処理や液化処理等の前処理に用いる液化ジメチルエーテル(DME)の量は、特に制限されず、それぞれの処理対象において、適宜調節することができる。
本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法における原料油のエステル交換反応工程(A1)は、触媒存在下で、原料油である脂肪酸及び/又は油脂の含有物中の脂肪酸及び/又は油脂とメタノールのような低級アルコールとを、液化ジメチルエーテル(DME)を添加した均一相系にて、エステル化反応させる工程である限り特に制限されないが、原料油が、遊離脂肪酸の含有物(油脂を含むものを除く)、又は、遊離脂肪酸及び油脂の含有物である場合は、液化ジメチルエーテル(DME)及び酸触媒の存在下で、脂肪酸の含有物(油脂を含むものを除く)中の遊離脂肪酸を均一相系にて低級アルキルエステル化反応をさせ(前処理)、予め遊離脂肪酸をエステル化することが好ましい。該原料油の前処理は、適宜行うことが好ましいが、例えば、低品質廃油脂類のような場合は、40〜100%の遊離脂肪酸を含有しており、該廃油脂類を原料油として用いる場合は、上記のような前処理が必須となる。
原料油に含まれる遊離脂肪酸の量が低い場合は、前処理の遊離脂肪酸のエステル化反応を行うことなく、直接、原料油を、液化ジメチルエーテル(DME)及びアルカリ触媒存在下で、原料油中の油脂と低級アルコールとを、均一相系にてエステル化反応を行うことができる。なお、本発明の製造方法において用いる液化DMEの量は、原料油や低級アルコールを混合した反応系を、均一相系として反応を行うことができる限り特に制限はされず、対象となる反応において、適宜設定し、調節することができる。
上記前処理工程において、酸触媒による反応を用いる一つの理由は、遊離脂肪酸を直接アルカリ触媒法によるエステル交換反応に付すと、遊離脂肪酸とメタノールが、アルカリ触媒存在下で反応し、脂肪酸メチルエステル(バイオディーゼル燃料)を生成せずに、脂肪酸のアルカリ金属塩(セッケン)と水が生じてしまい(中和反応)、該脂肪酸からバイオディーゼル燃料として利用できる脂肪酸低級アルキルエステルを製造することができないばかりか、中和反応により生じた水によって、アルカリ触媒の触媒作用が低下し、その結果、油脂とメタノールとのメチルエステル化反応が阻害されてしまうという不都合を生ずるからである。これに対して、酸触媒によるエステル化反応を前処理として行なって置くことにより、これらの不都合を生じずに、遊離脂肪酸を多量に含有する原料油からバイオディーゼル燃料を好適に製造することができるからであり、もう一つの理由は、酸性点を有する固体触媒を用いた場合であっても、遊離脂肪酸を多量に含有する原料油からバイオディーゼル燃料を好適に製造することができるが、酸性触媒の方が、酸性点を有する固体触媒よりも低コストであるという利点があるからである。なお、酸触媒を用いて遊離脂肪酸のエステル化反応を行なう場合には、酸触媒として、硫酸を用いることが好ましい。その理由は、硫酸を用い、例えば、常温〜60℃程度で、エステル化反応を行なうと、油脂よりも遊離脂肪酸を優先的にエステル化することができるからである。
本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法における原料油のエステル交換反応工程(A1)は、アルカリ触媒を用いたエステル交換反応が有利に用いられる。アルカリ触媒法を用いる一つの理由は、その実用的な利用に際して、上記のようにアルカリ触媒法の一つの障害になっている原料物質中の遊離脂肪酸の濃度が高い場合の中和反応に対して、前記のように前処理工程を導入することにより、かかる中和反応による弊害を回避することが可能であり、一方、アルカリ触媒法を用いると、酸触媒法を用いた場合よりも、エステル化反応において、速い速度の反応を得ることが可能であるからである。また、もう一つの理由は、塩基性点を有する固体触媒を用いた場合も、エステル化反応の速度は酸触媒を用いた場合よりも一般的に速いが、アルカリ触媒の方が、塩基性点を有する固体触媒よりも低コストであるからである。
本発明において行なわれる原料油のエステル化反応においては、液化ジメチルエーテル(DME)を添加した均一相系が用いられる。該均一相系とは、触媒が固体触媒でない場合は、触媒と、液化ジメチルエーテル(DME)と、脂肪酸及び/又は油脂と、メタノールとが単一の相を形成していることを意味し、触媒が固体触媒である場合は、該触媒以外に、液化ジメチルエーテル(DME)と、脂肪酸及び/又は油脂と、低級アルコールとが単一の相を形成していることを意味する。
また、本発明における「脂肪酸や油脂と低級アルコールとを、均一相系にてエステル化反応させる」とは、脂肪酸や油脂と低級アルコールとのエステル化反応の少なくとも開始時点において均一相系であればよいことをいい、例えば、エステル化反応の開始後に、油脂のエステル化により副生するグリセリンなどによって、均一相系が不均一相系(二相系)となる場合も、本発明における「脂肪酸や油脂と低級アルコールとを、均一相系にてエステル化反応させる」に含まれる。しかしながら、油脂のエステル化反応において、均一相系は長く保つことが好ましく、例えば、油脂のエステル化反応開始後に、低級アルコールを反応系に追加するなどして、エステル化反応開始後もできるだけ長時間、均一相系を維持することが、エステル化反応の速度をより高く保持する観点から好ましい。本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法は、上述のように、液化ジメチルエーテル(DME)を用いた均一相系にて反応させることにより、従来法に比べて顕著に速い速度でバイオディーゼル燃料を製造することが可能となったものである。
本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法においては、原料油のエステル交換反応工程(A1)によって得られた、バイオディーゼル燃料を含む反応溶液を、グリセリン相と、バイオディーゼル燃料、低級アルコール及び液化ジメチルエーテルからなるバイオディーゼル燃料相とに分離する静置分離工程(A2)に付される。該静置分離工程(A2)においては、エステル交換反応工程(A1)によって得られたバイオディーゼル燃料を含む反応溶液を、静置することにより、上相であるバイオディーゼル燃料相と、下相であるグリセリン相に分離する。該分離工程においては、かかる簡便な手段で、グリセリン相とバイオディーゼル燃料相とを、分離することができる。
本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法においては、静置分離工程(A2)によって分離した、グリセリン相を、液化ジメチルエーテル(DME)を抽出溶媒として、低級アルコールを抽出分離する、グリセリン相からの低級アルコール抽出分離工程(B1)に付すことができる。該工程(B1)では、液化ジメチルエーテル(DME)を、分離したグリセリン相に含有させて、該グリセリン相中のメタノールを、液化ジメチルエーテル(DME)を抽出溶媒として溶解させた後、その溶液をグリセリン相と、低級アルコール含有液化ジメチルエーテル(DME)相とに分離する。該工程(B1)では、他工程で分離した液化ジメチルエーテル(DME)を適宜利用することができ、液化ジメチルエーテル(DME)を、工程(A2)で分離したグリセリン相に含有させた後、攪拌して、該グリセリン相中のメタノールを液化ジメチルエーテル(DME)に溶解させた後、その溶液を静置することによってグリセリン相と、低級アルコール含有液化ジメチルエーテル(DME)相とに分離する。該分離工程においては、かかる静置分離という簡便な手段で、グリセリン相と低級アルコール含有液化ジメチルエーテル(DME)相とに、分離することができる。
本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法においては、グリセリン相からの低級アルコール抽出分離工程(B1)によって分離した、低級アルコール含有液化ジメチルエーテル(DME)相(液化ジメチルエーテル(DME)及び低級アルコールの混合物)を、原料油のエステル交換反応工程(A1)へ返送することからなる液化ジメチルエーテル(DME)及び低級アルコール返送工程(B2)により、該液化ジメチルエーテル(DME)及び低級アルコールの混合物を、エステル交換反応工程(A1)へ返送することにより、本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法における、エステル交換反応に用いることができる。本発明においては、該液化ジメチルエーテル(DME)及び低級アルコールの返送利用により、環境負荷やコストの削減を達成することができる。
本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法において、静置分離工程(A2)によって分離した、バイオディーゼル燃料相は、減圧処理することにより、ジメチルエーテルガスを回収し、更に、バイオディーゼル燃料を含む反応溶液を減圧蒸留により低級アルコールを分離することからなるバイオディーゼル燃料相からのジメチルエーテル及び低級アルコール分離工程(A3)に付すことができる。該工程(A3)では、バイオディーゼル燃料を含む反応溶液を減圧するなどして液化DMEを気化させ、そのジメチルエーテル(DME)ガスを回収することでき、かかる簡便な手段によって、液化DMEを分離、回収することが可能である。更に、該工程(A3)では、バイオディーゼル燃料を含む反応液を、減圧蒸留することにより低級アルコールを分離することができ、かかる簡便な手段によって、反応液から低級アルコールを分離、回収することが可能である。
本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法においては、バイオディーゼル燃料相からのジメチルエーテル及び低級アルコール分離工程(A3)によって分離した、低級アルコールを、原料油のエステル交換反応工程(A1)へ返送することからなるバイオディーゼル燃料相からの低級アルコール返送工程(C1)により、該分離された低級アルコールを、エステル交換反応工程(A1)へ返送することにより、本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法における、エステル交換反応に用いることができる。本発明においては、該低級アルコールの返送利用により、環境負荷やコストの削減を達成することができる。
本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法において、バイオディーゼル燃料相からのジメチルエーテル(DME)及び低級アルコール分離工程(A3)によって分離した、バイオディーゼル燃料溶液は、水又は湯で洗浄する洗浄工程(A4)、及び、該洗浄工程を経て調製されたバイオディーゼル燃料溶液を減圧加熱処理により脱水する工程(A5)を設けてバイオディーゼル燃料溶液を精製することができる。本発明においては、該洗浄工程(A4)及び脱水工程(A5)を経て、高品質のバイオディーゼル燃料を製造することを可能とする。
本発明は、上記のような反応、処理手段を総合的に組み合わせて、高速、効率的、かつ低コストでのバイオディーゼル燃料の製造を可能とする、実用上優れた生産効率を有するバイオディーゼル燃料の製造システムを提供する。本発明のバイオディーゼル燃料の製造システムは、次の手段(工程)から構成されるシステムからなる:原料油を、アルカリ触媒の存在下、液化ジメチルエーテルを添加した均一相系にて低級アルコールでエステル交換反応を行う、バイオディーゼル原料油のエステル交換反応手段(A1);エステル交換反応手段により得られた、バイオディーゼル燃料を含む反応溶液を、グリセリン相と、バイオディーゼル燃料、低級アルコール及び液化ジメチルエーテルからなるバイオディーゼル燃料相とに分離するバイオディーゼル燃料を含む反応溶液の静置分離手段(A2);静置分離手段において分離したグリセリン相から、液化ジメチルエーテルを抽出溶媒として、低級アルコールを抽出分離するグリセリン相からの低級アルコール抽出分離手段(B1);グリセリン相から分離した液化ジメチルエーテル及び低級アルコールの混合物を、原料油のエステル交換反応手段へ返送する液化ジメチルエーテル及び低級アルコール返送手段(B2);静置分離手段により分離されたバイオディーゼル燃料相を、減圧処理することにより、ジメチルエーテルガスを回収し、更に、バイオディーゼル燃料を含む反応溶液を減圧蒸留により低級アルコールを分離するバイオディーゼル燃料相からのジメチルエーテル及び低級アルコール分離手段(A3);バイオディーゼル燃料相からのジメチルエーテル及び低級アルコール分離手段において分離された低級アルコールを、原料油のエステル交換反応手段へ返送するバイオディーゼル燃料相からの低級アルコール返送手段(C1);バイオディーゼル燃料相からのジメチルエーテル及び低級アルコール分離手段を経て調製されたバイオディーゼル燃料溶液を、水又は湯で洗浄する洗浄手段(A4)、及び、該洗浄手段を経て調製されたバイオディーゼル燃料溶液を減圧加熱処理により脱水する手段(A5)を設けたバイオディーゼル燃料溶液精製手段からなるバイオディーゼル燃料製造システムである。
本発明のバイオディ−ゼル燃料の製造方法及びバイオディーゼル燃料製造システムを、工程の流れを図(図1)を用いて説明すると:まず、本発明における原料物質(図1の(1))と、触媒、メタノール、液化DME(図1の(2))とをそれぞれ反応器(図1の(3))に入れて攪拌し、メチルエステル化反応を開始することができる(A1)。メチルエステル化反応が終了した後、静置して上相の液化DME相(バイオディーゼル燃料相)と、下相のグリセリン相に相分離させ(図1の(4))、上相の液化DME相(バイオディーゼル燃料相)を回収し(図1の(5))(A2)、回収した液化DME相を減圧してDMEガスを回収し(図1の(6))(A3)、回収したDMEガスを加圧して液化し(図1の(7))、液化したDMEを、前述の下相のグリセリン相に添加し攪拌して、グリセリン相中のメタノールを液化DMEに溶解させた後、その溶液を静置することによってグリセリン相と、メタノール含有液化DME相に分離してグリセリン相のメタノールを抽出し(図1の(8))(B1)、そのメタノール含有液化DME相を反応容器(図1の(3))に戻して再利用することができる(B2)。一方、図1の(5)の液化DME相(バイオディーゼル燃料相)を減圧してDMEガスを除去したバイオディーゼル燃料相を精製し(図1の(9))(A4)、(A5)、バイオディーゼル燃料を得ることができる。なお、図1のまる数字において、(1)は、原料I(廃油脂類);(2)は、原料II(触媒、メタノール、液化DME);(3)は、反応器;(4)は、相分離;(5)は、DMEの回収;(6)は、減圧;(7)は、DMEの液化;(8)は、廃グリセリンからのメタノールの抽出;(9)は、精製、をそれぞれ表す。
本発明は、液化ジメチルエーテル(DME)を用いた均一相系でのエステル交換反応を行なうためのエステル交換反応装置を包含する。本発明のエステル交換反応装置は、基本構造として、攪拌手段を備えた耐圧セル、液化ジメチルエーテル(DME)供給手段、アルカリ触媒及び低級アルコール供給手段を備えており、該装置により、液化ジメチルエーテル(DME)を用いたバイオディーゼル燃料の製造のための原料油のエステル交換反応を、有効に実施することができる。該装置の実施例を図2に示す。図中、Aは、耐圧セル;Bは、ガラスシリンダー(液化DME);Cは、バルブ;Dはコントローラー(温度及び回転数);Eは、バルブ;Fは、送液ポンプ;Gは、バルブ;Hは、攪拌モーター;Iha、熱電対;Jは、攪拌翼;Kは、KOHメタノール溶液をそれぞれ示す。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[液化DMEの添加による反応速度の向上]
(試験方法)
液化DMEを用いることによって、BDF生成反応の反応速度が向上するかどうかを調べるために、図2に示した一連の装置を使用して以下の実験を行った。まず、耐圧ガラスセル(A)に15gのトリオレインを添加し、該セルを氷水に浸して、トリオレインを10℃以下程度に冷却した。その後、バルブ(C)を開いて、ガラスシリンダー(B)中の液化DMEをガラスセル(A)内に導入し、液化DMEがガラスセル(A)に10g入ったところでバルブ(C)を閉めた。次に、温度コントローラー(D)の温度を25℃に設定し、ガラスセル(A)内の溶液が設定温度になるまで加熱攪拌した。
ガラスセル(A)内の溶液が設定温度に到達した後、攪拌速度を300rpmとして、バルブ(E)を開くとともに、送液ポンプ(F)によって3.4gのKOH含有メタノール溶液をガラスセル(A)内に送液して、エステル交換反応(BDF生成反応)を行った。なお、送液したKOH含有メタノール溶液の量は、そのKOH量が上記トリオレインに対して1wt%であり、そのメタノール量が上記トリオレインの6倍モルに相当する量であった。エステル交換反応開始から一定時間(5分間、10分間又は30分間)経過後に、バルブ(G)を開いて、ガラスセル(A)内から液化DMEをDMEガスとして抜いた。その後、ガラスセル(A)内に速やかに1NのHCl水溶液を15mL添加してエステル交換反応を停止させ、次いで、ガラスセル(A)内にテトラヒドロフラン10mLとヘキサン15mLを添加した。ガラスセル(A)内の溶液を15分間ほど攪拌した後、2時間程度静置して相分離し、上相を回収して高速液体クロマトグラフにてトリオレイン(TO)、及び、バイオディーゼル燃料(BDF)の1種であるオレイン酸メチル(OAME)の濃度を測定し、OAMEの回収率(収率)を算出した。なお、OAMEの回収率は、「OAMEのモル数/トリオレインのモル数×3」の式により算出した。また、上記実験において、液化DMEを用いないこと以外は同じ手順で実験を行った。
(結果)
この実験の結果を図3に示す。図3における白矢頭、黒矢頭、白四角、及び、黒四角は、それぞれ、液化DMEを添加した場合のOAME収率、液化DMEを添加した場合のTO残存率、液化DMEを添加しない場合のOAME収率、及び、液化DMEを添加しない場合のTO残存率を表す。図3から分かるように、液化DMEを添加した場合は、反応時間5分でOAME収率が70%を超え、10分ではほぼ80%に達し、30分で82%であった。すなわち、液化DMEを添加した場合は、反応開始から5分間までで、反応の大半が終了していることが示された。さらにいうと、KOH含有メタノールの添加後10秒程度で反応系全体が白濁することから、反応開始から最初の10秒間でOAME生成反応が高速に進行するものと推察される。
一方、液化DMEを添加しない場合は、反応時間10分におけるオレイン酸メチルの収率は0.6%にとどまった。液化DMEを添加した場合と、それを添加していない場合を、反応時間10分で比較すると、液化DMEを添加した場合のOAME収率は添加しない場合のそれの約130倍高かった。これは、反応時間10分までのOAME生成反応の速度が、液化DMEを添加することで130倍にまで向上したことを意味する。以上の結果から、液化DMEを添加して反応系を均一相にすることで、OAME生成反応の速度が極度に向上することが示された。
[BDF生成速度のさらなる向上を目的とするメタノール添加実験]
(試験方法)
OAME生成反応速度のさらなる向上を目的として、図4に示した一連の装置を使用して次の実験を行った:まず、耐圧ガラスセル(A)に15gのトリオレインを添加し、該セルを氷水に浸して、トリオレインを10℃以下程度に冷却した。その後、バルブ(C)を開いて、ガラスシリンダー(B)中の液化DMEをガラスセル(A)内に導入し、液化DMEがガラスセル(A)に10g入ったところでバルブ(C)を閉めた。次に、温度コントローラー(D)の温度を25℃に設定し、ガラスセル(A)内の溶液が設定温度になるまで加熱攪拌した。
ガラスセル(A)内の溶液が設定温度に到達した後、攪拌速度を300rpmとして、バルブ(E)を開くとともに、送液ポンプ(F)によって3.4gのKOH含有メタノール溶液(実施例1で用いたものと同じ)をガラスセル(A)内に送液して、エステル交換反応(BDF生成反応)を開始した。本実験ではKOH含有メタノール溶液の送液終了後、すぐにバルブ(G)を開き、送液ポンプ(H)によって8.3g程度のメタノールをガラスセル(A)へ送液することにより、反応系をより長時間均一相として維持した。エステル交換反応開始から10分間経過後に、バルブ(I)を開いて、ガラスセル(A)内から液化DMEをDMEガスとして抜いた。
その後、ガラスセル(A)内に速やかに1NのHCl水溶液を15mL添加してエステル交換反応を停止させ、次いで、ガラスセル(A)内にテトラヒドロフラン10mLとヘキサン15mLを添加した。ガラスセル(A)内の溶液を15分間ほど攪拌した後、2時間程度静置して相分離し、上相を回収して高速液体クロマトグラフにてトリオレイン(TO)、オレイン酸メチル(OAME)、並びに、反応中間体であるジオレイン(DO)及びモノオレイン(MO)の各濃度を測定した。また、上記実験において、送液ポンプ(H)からのメタノールの送液を行わないこと以外は同じ手順で実験を行い、トリオレイン(TO)、オレイン酸メチル(OAME)、ジオレイン(DO)、モノオレイン(MO)の各濃度を測定した。また、上記実験において温度コントローラー(D)の温度を35℃に設定したこと以外は同じ手順で実験を行い、トリオレイン(TO)、オレイン酸メチル(OAME)、ジオレイン(DO)、モノオレイン(MO)の各濃度を測定した。これらの実験の結果を表1に示す。なお、送液ポンプ(H)からのメタノールの送液を行わない場合は、OAME生成反応の初期のみ、その反応系の相が均一に維持される。
(結果)
結果を、表1に示す。
表1から分かるように、より長時間反応系を均一相(25℃)とする方法は、反応初期のみ反応系を均一相(25℃)とする方法に比べて、反応開始から10分間経過後におけるオレイン酸メチル(OAME)の生成濃度が1割以上高く、また、トリオレイン(TO)やジオレイン(DO)はほとんど存在しなかった。さらに、反応中間体として量が最も多いモノオレインの濃度も1.5%と、反応初期のみ反応系を均一相とする場合にくらべて2割以下にまで減少した。このことから、OAME生成反応開始後に再度メタノールを添加して、反応系をより長時間均一相に保つ方法は、反応速度がさらに顕著に向上することがわかった。また、反応系の温度を35℃にすると、それぞれ25℃の場合に比べて、反応開始から10分経過後におけるオレイン酸メチル(OAME)の生成濃度が高かった。
[副生グリセリン溶液からの液化DMEによるメタノールの回収]
(試験方法)
OAME生成反応の副生成物であるグリセリンの溶液から、液化DMEを用いてメタノールを回収し得るかを調べるために、図5に示した一連の装置を使用して以下の実験を行った:まず、メタノール3.2gとグリセリン9.2gを混合して、副生グリセリンモデル溶液を調製した。この副生グリセリンモデル溶液12.4gを、耐圧ガラスセル(A)に添加し、該セルを氷水に浸して、副生グリセリンモデル溶液を10℃以下程度に冷却した。その後、バルブ(C)を開いて、ガラスシリンダー(B)中の液化DMEをガラスセル(A)内に導入し、液化DMEがガラスセル(A)に15g入ったところでバルブ(C)を閉めた。
次に、温度コントローラー(D)の温度を室温程度に設定し、ガラスセル(A)内の溶液が設定温度になるまで加熱攪拌した。ガラスセル(A)内の溶液は、上相の液化DME相と、下相のグリセリン相に分かれた。次いで、攪拌を停止してガラスセル(A)内の溶液を10分間ほど静置し、バルブ(E)を開くことによりサンプリングライン(F)から流出した液化DME相の溶液をサンプルびん(G)にてサンプリングした。
(結果)
液化DME相からサンプリングした溶液のメタノール濃度を屈折計にて分析したところ、60wt%であった。仕込みのメタノールが26wt%であることから、液化DME相にメタノールが選択的に抽出され、濃縮されたことが示された。つまり、液化DMEを用いて、副生グリセリンモデル溶液からメタノールの抽出・回収が可能であることが示された。
なお、上記の副生グリセリンモデル溶液からのメタノールの回収実験の比較実験として、液化DMEに代えて、2.5g〜17.5gの範囲内のテトラヒドロフラン(THF)を用いて同様の実験を行った。しかし、そのTHFを用いた場合は、液化DMEを用いた場合のように二液相になることはなく、副生グリセリン溶液は均一相のままであった。したがって、THFを用いてメタノールを抽出分離することはできなかった。
[KOHを含む副生グリセリン溶液からの液化DMEによるメタノールの回収]
(試験方法)
上記実施例3において、メタノール3.2gとグリセリン9.2gを含む副生グリセリンモデル溶液から、液化DMEを用いてメタノールを抽出・回収し得ることが示された。そこで、副生グリセリンモデル溶液中に、さらにKOHが含まれている場合も、液化DMEを用いて同様にメタノールを抽出・回収し得るかどうかを調べるために以下の実験を行った。3.82gのメタノール、0.35gのKOH及び8.7gのグリセリンを混合した溶液を副生グリセリンモデル溶液とし、また、用いる液化DMEの量を13.5gとしたこと以外は、上記実施例3と同じ手順で実験を行った。
(結果)
その結果、液化DME相からサンプリングした溶液のメタノール濃度は70wt%であった。仕込みのメタノールが30wt%であることから、この場合においても液化DMEによってメタノールが濃縮されて回収されたことが示された。すなわち、KOHが混入している副生グリセリンモデル溶液からも、液化DMEを用いたメタノールの抽出・回収が可能であることが示された。
[廃食用油ゲルの液化DME処理物からのディーゼル燃料の製造]
(試験方法)
本発明の製造方法の原料物質として、ゲル状の廃油脂をエーテル化合物(液化DME)で液化処理した物質を用いることができるかを調べるために、図6に示した一連の装置を使用して次の実験を行った:まず、トリオレイン100mLと、脂肪酸系の食用油固化剤3gとを混合して、廃食用油モデルゲルを調製した。廃食用油モデルゲル15gを、耐圧ガラスセル(A)に添加し、該セルを氷水に浸して、廃食用油モデルゲルを10℃以下程度に冷却した。その後、バルブ(C)を開いて、ガラスシリンダー(B)中の液化DMEをガラスセル(A)内に導入し、液化DMEがガラスセル(A)に約13g程度入ったところでバルブ(C)を閉めた。次に、温度コントローラー(D)の温度を25℃に設定し、ガラスセル(A)内の溶液が設定温度になるまで加熱攪拌した。
ガラスセル(A)内の溶液が設定温度に到達した後、攪拌速度を450rpmとして、バルブ(E)を開くとともに、送液ポンプ(F)によって3.5gのKOH含有メタノール溶液をガラスセル(A)内に送液して、エステル交換反応(BDF生成反応)を行った。なお、送液したKOH含有メタノール溶液の量は、そのKOH量が上記トリオレインに対して1wt%の量と固化剤中の脂肪酸を調度中和しうる量との和であり、そのメタノール量が上記トリオレインの6倍モルに相当する量であった。
上記KOH含有メタノールの送液終了後、すぐにバルブ(G)を開いて、送液ポンプ(H)によって8.9gのメタノールをガラスセル(A)に添加した。それから10分間経過後に、バルブ(I)を開いて、ガラスセル(A)内から液化DMEをDMEガスとして抜いた。その後、ガラスセル(A)内に速やかに1NのHCl水溶液を15mL添加してエステル交換反応を停止させ、次いで、ガラスセル(A)内にテトラヒドロフラン10mLとヘキサン10mLを添加した。ガラスセル(A)内の溶液を15分間ほど攪拌した後、2時間程度静置して相分離し、上相を回収して高速液体クロマトグラフにてトリオレイン(TO)、ジオレイン(DO)、モノオレイン(MO)、及び、BDFの1種であるオレイン酸メチル(OAME)の各濃度を測定した。
(結果)
その結果、上相中のトリオレインは0.0モル%、ジオレインも0.0モル%、モノオレインは1.6モル%、オレイン酸メチルは98.4モル%であった。脂肪酸系の固化剤によってゲル状になった油脂であっても、エーテル化合物(液化DME)による液化処理を行った後、BDF生成反応を行えば、常温という低い温度条件下でも高い反応収率が得られることが示された。
一方、バルブ(G)からのメタノールの添加を行わず、かつ、上記エステル交換反応(BDF生成反応)の反応時間を15分間としたこと以外は、上記実施例4の実験と同一の方法で実験を行った。上相中のトリオレイン(TO)、ジオレイン(DO)、モノオレイン(MO)、及び、BDFの1種であるオレイン酸メチル(OAME)の各濃度を高速液体クロマトグラフにて測定したところ、トリオレインは4.6モル%、ジオレインは2.4モル%、モノオレインは5.2モル%、オレイン酸メチルは87.8モル%であった。この結果、メタノールをより多く添加すると、BDF生成反応の速度が上昇することがわかった。
[酸触媒を用いた、遊離脂肪酸及び水を含む油脂類の均一相系でのエステル化反応]
(試験方法)
酸触媒を用いた、遊離脂肪酸及び水を含む油脂類のエステル化反応が液化DMEを利用した均一相系にて効率良く行われるかどうかを調べるために、以下の実験を行った。
まず、遊離脂肪酸40質量部、油脂60質量部及び水2.5質量部からなる原料物質に液化DMEを100質量部添加し、攪拌しながら溶液を25℃に制御した。その溶液に、硫酸含有メタノール溶液を添加して酸エステル交換反応(BDF生成反応)を行った。なお、添加した硫酸含有メタノール溶液の量は、その硫酸の量が上記遊離脂肪酸に対して10wt%であり、そのメタノール量が遊離脂肪酸の20倍モルに相当する量であった。エステル交換反応開始から1時間経過後に反応を停止させ、テトラヒドロフランとヘキサンを添加した。該反応溶液を15分間ほど攪拌した後、2時間程度静置して相分離し、上相を回収して高速液体クロマトグラフにて脂肪酸メチルエステル(BDF)の濃度を測定し、原料物質中の遊離脂肪酸のエステル化率を算出した。
また、上記試験方法(試験1)において、液化DMEを用いないこと以外は同じ手順で行った試験(試験2):上記試験方法において、反応系の温度を35℃に変更したこと以外は同じ手順で行った試験(試験3):上記試験方法において、原料物質中の水の量を1.4質量部とし、かつ、反応系の温度を35℃に変更し、さらに、添加する液化DMEの量を60質量部としたこと以外は同じ手順で行った試験(試験4):についても行い、原料物質中の遊離脂肪酸のエステル化率を算出した。
(結果)
その結果を以下の表2に示す。
表2の結果から分かるように、液化DMEを添加して均一相系にてエステル化反応を行うことにより、エステル化率が著しく向上することが示された(試験1及び試験2)。また、反応温度を35℃にすると、25℃の場合よりもエステル化率が向上すること(試験1及び試験3)、原料物質中の水分含量が少ないとエステル化率が向上すること(試験3及び試験4)も示された。
本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法を説明する各処理工程の好ましい態様の工程の流れを示す図である。図1中の各符号はそれぞれ以下のものを示す。1:原料I(廃油脂類)、2:原料II(触媒、メタノール、液化DME)、3:反応器、4:相分離、5:DME相の回収、6:減圧、7:DMEの液化、8:廃グリセリンからのメタノールの抽出、9:精製
液化DMEの添加による反応速度の向上を確認するための実験の実験装置を示す図である。図2中の各符号はそれぞれ以下のものを示す。A:耐圧セル、B:ガラスシリンダー(液化DME)、C:バルブ、D:コントローラー(温度及び回転数)、E:バルブ、F:送液ポンプ、G:バルブ、H:攪拌モーター、I:熱電対、J:攪拌翼、K:KOH含有メタノール溶液
液化DMEの添加による反応速度の向上を確認するための実験の結果を示す図である。図3中の各符号はそれぞれ以下のものを示す。△:オレイン酸メチル(OAME)収率(液化ガス添加)、□:オレイン酸メチル(OAME)収率(液化ガス添加なし)、▲:トリオレイン(TO)残存率(液化ガス添加)、■:トリオレイン(TO)残存率(液化ガス添加なし)
BDF生成速度のさらなる向上を目的とするメタノール添加実験の実験装置を示す図である。図4中の各符号はそれぞれ以下のものを示す。A:耐圧セル、B:ガラスシリンダー(液化DME)、C:バルブ、D:コントローラー(温度及び回転数)、E:バルブ、F:送液ポンプ、G:バルブ、H:送液ポンプ、I:バルブ、J:攪拌モーター、K:攪拌翼、L:熱電対、M:KOH含有メタノール溶液、N:メタノール
副生グリセリン溶液からの液化DMEによるメタノールの回収実験の実験装置を示す図である。図5中の各符号はそれぞれ以下のものを示す。A:耐圧セル、B:ガラスシリンダー(液化DME)、C:バルブ、D:コントローラー(温度及び回転数)、E:バルブ、F:サンプリングライン、G:サンプルびん、H:攪拌モーター、I:熱電対、J:攪拌翼
廃食用油ゲルの液化DME処理物からのディーゼル燃料の製造実験の実験装置を示す図である。図6中の各符号はそれぞれ以下のものを示す。A:耐圧セル、B:ガラスシリンダー(液化DME)、C:バルブ、D:コントローラー(温度及び回転数)、E:バルブ、F:送液ポンプ、G:バルブ、H:送液ポンプ、I:バルブ、J:攪拌モーター、K:攪拌翼、L:熱電対、M:KOH含有メタノール溶液、N:メタノール