以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、インク滴を吐出して画像を記録するインクジェット記録装置に適用した場合について説明する。
第1実施形態は、搬送速度変動により発生する印字濃度ムラを解消(少なくとも抑制)するために、用紙Pを搬送するための駆動ロールの基準位置信号を用いて画像記録タイミングを生成するための印字クロックの生成を開始するインクジェット記録装置に本発明を適用したものである。
図1には、本実施の形態に係るインクジェット記録装置12が示されている。インクジェット記録装置12の筐体14内の下部には給紙トレイ16が備えられており、給紙トレイ16内に積層された用紙Pをピックアップロール18で1枚ずつ取り出すことができる。取り出された用紙Pは、所定の搬送経路22を構成する複数の搬送ローラ対20で搬送される。以下、単に「搬送方向」というときは、記録媒体である用紙Pの搬送方向をいい、「上流」、「下流」というときはそれぞれ、搬送方向の上流及び下流を意味するものとする。
給紙トレイ16の上方には、搬送手段としての駆動ロール24及び従動ロール26に張架された無端状の搬送ベルト28が配置されている。搬送ベルト28の上方には記録ヘッドアレイ30が配置されており、搬送ベルト28の平坦部分28Fに対向している。この対向した領域が、記録ヘッドアレイ30からインク滴が吐出される吐出領域SEとなっている。搬送経路22を搬送された用紙Pは、搬送ベルト28で保持されてこの吐出領域SEに至り、記録ヘッドアレイ30に対向した状態で、記録ヘッドアレイ30から画像情報に応じたインク滴が付着される。
そして、用紙Pを搬送ベルト28で保持した状態で搬送させることで、吐出領域SE内に用紙Pを通過させて画像記録を行うことができる。なお、用紙Pを搬送ベルト28で保持した状態で周回させることで、吐出領域SE内に複数回通過させて、いわゆるマルチパスによる画像記録を行うこともできる。
なお、記録媒体である用紙Pを記録ヘッドアレイ30へ搬送する手段としては、搬送ベルト28に限られない。たとえば円筒状あるいは円柱状に形成された搬送ローラの外周に、記録媒体(用紙P)を吸着保持して回転させる構成でもよい。ただし、本実施形態のように搬送ベルト28を使用すると平坦部分28Fが構成されるので、この平坦部分28Fに対応させて記録ヘッドアレイ30を配置でき、好ましいものである。
記録ヘッドアレイ30は、本実施形態では、有効な記録領域が用紙Pの幅(搬送方向と直交する方向の長さ)以上とされた長尺状とされ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の4色それぞれに対応した4つのインクジェット記録ヘッド32が搬送方向に沿って配置されており、フルカラーの画像を記録可能になっている。なお、それぞれのインクジェット記録ヘッド32においてインク滴を吐出する方法は特に限定されず、いわゆるサーマル方式や圧電方式等、公知のものを適用できる。
各インクジェット記録ヘッド32は、後述する記録ヘッドコントローラ78(図4参照)によって作動が制御されるようになっている。記録ヘッドコントローラ78は、例えば、画像情報に応じてインク滴の吐出タイミングや使用するインク吐出口(ノズル)を決め、駆動信号をインクジェット記録ヘッド32に送る。なお、記録ヘッドアレイ30は、搬送方向と直交する方向に不動とされていてもよいが、必要に応じて移動するように構成しておくと、マルチパスによる画像記録で、より解像度の高い画像を記録したり、インクジェット記録ヘッド32の不具合を記録結果に反映させないようにしたりできる。
図示は省略したが、記録ヘッドアレイ30の近傍(搬送方向の上流側及び加硫側の少なくとも一方側)に、記録ヘッドアレイ30と、搬送ベルト28との間の間隙に移動して所定のメンテナンス動作(バキューム、ダミージェット、ワイピング、キャッピング等)を行うためのメンテナンスユニットが配置されている。
一方、記録ヘッドアレイ30の下流側には、CCDにより構成されたラインセンサ84が記録ヘッドアレイ30によって用紙Pに記録された画像を撮像可能に配置されている。ラインセンサ84は、本実施形態では、有効な撮像領域が用紙Pの幅(搬送方向と直交する方向の長さ)以上とされた長尺状とされ、フルカラーの画像を読み取り可能となっている。なお、本実施形態に係るラインセンサ84は、撮像画像の解像度がインクジェット記録ヘッド32による画像記録の解像度に対して4倍程度(ノズル解像度に対して2倍程度)となるものが適用されている。なお、ラインセンサ84としてCCDラインセンサを適用しているが、これに限らず、CMOSイメージ・センサ等の他の固体撮像素子を適用することもできる。また、ラインセンサ84は、後述するセンサコントローラ86(図7参照。)によって作動が制御されるようになっている。
また、図示は省略したが、記録ヘッドアレイ30の上流側に、電源が接続された帯電ロールが配置される。帯電ロールは、駆動ロール24との間で搬送ベルト28及び用紙Pを挟みつつ従動し、用紙Pを搬送ベルト28に押圧する押圧位置と、搬送ベルト28から離間した離間位置との間を移動可能とされている。押圧位置では、用紙Pに電荷を与えて搬送ベルト28に静電吸着させるようになっている。
記録ヘッドアレイ30のラインセンサ84よりも下流側には、アルミプレート等で形成された剥離プレート40が配置されており、用紙Pを搬送ベルト28から剥離することができる。剥離された用紙Pは、剥離プレート40の下流側で排出経路44を構成する複数の排出ローラ対42で搬送され、筐体14の上部に設けられた排紙トレイ46に排出される。
剥離プレート40の下方には、駆動ロール24との間で搬送ベルト28を挟持可能なクリーニングロール48が配置されており、搬送ベルト28の表面をクリーニングするようになっている。
給紙トレイ16と搬送ベルト28の間には、複数の反転用ローラ対50で構成された反転経路52が設けられており、片面に画像記録された用紙Pを反転させて搬送ベルト28に保持させることで、用紙Pの両面への画像記録を容易に行えるようになっている。
搬送ベルト28と排紙トレイ46の間には、4色の各インクをそれぞれ貯留するインクタンク54が設けられている。インクタンク54のインクは、図示しないインク供給配管によって、記録ヘッドアレイ30に供給される。インクとしては、水性インク、油性インク、溶剤系インク等、公知の各種インクを使用できる。
次に、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッド32の構成を説明する。
図2に示されるように、各色のインクジェット記録ヘッド32は、各々画像記録用のインク滴を吐出する複数のノズルNが所定方向に対して直線状に同一の間隔(ピッチ)Sで配置されたノズル群Gから構成されている。インクジェット記録ヘッド32は、搬送方向に対して傾斜角θを有するように配列される。なお、間隔S、傾斜角θ、ノズル数は表記のために例示したもので、その数は図面のものに限定されない。
また、本実施形態では、以下に詳述するように画像記録タイミングを調整するため、図3に示す2次元配列のノズルNを有するインクジェット記録ヘッド32を取り付け可能である。図3に示されるように、このインクジェット記録ヘッド32は、図2に示す直線状に配置されたノズル群GをノズルNの配列方向と交差する方向に複数(図3では3つ)配設される。すなわち、複数のノズルNが所定方向に対して直線状に同一の間隔(ピッチ)Sで配置されたノズル群Gを有する複数のヘッドユニット32A,32B,32Cが、隣接するヘッドユニットに配置されているノズル群Gの搬送方向Hに対して重なり合わないように配列されている。なお、ヘッドユニット32A〜32Cは同一仕様のものであるが、以下の説明で、ヘッドユニット個別の説明をするとき、便宜上、インクジェット記録ヘッド32をヘッドユニット32A〜32Cの何れかとして区別して表記する場合がある。
次に、図4を参照して、本実施形態に係るインクジェット記録装置12の電気系の要部構成を説明する。
図4に示されるように、本実施形態に係るインクジェット記録装置12には、装置全体の動作を司るCPU(中央処理装置)70と、各種プログラムの実行時におけるワークエリア等として用いられるRAM72と、各種プログラムやパラメータ情報等が予め記憶されたROM74と、不揮発性で、かつ書き換え可能なメモリ76とが備えられている。また、インクジェット記録装置12には、インクジェット記録ヘッド32の作動を制御する記録ヘッドコントローラ78と、ピックアップロール18、搬送ローラ対20、駆動ロール24等の各部を回転駆動させる複数のモータ(図示省略)の作動を制御するモータコントローラ80と、ラインセンサ84の作動を制御するセンサコントローラ86と、パーソナル・コンピュータ等の外部装置を電気的かつ機械的に接続する外部インタフェース88も備えられている。また、センサコントローラ86には、用紙Pの先端位置検出のための用紙検出センサ34,用紙Pの表面速度検出のための表面速度検出センサ36,駆動ロール24の基準位置を検出するための基準位置検出センサ38,駆動ロール24の回転位置を検出するためのエンコーダ39も接続されている。これらの用紙検出センサ34,表面速度検出センサ36,基準位置検出センサ38,エンコーダ39は、記録ヘッドコントローラ78に直接接続することができる。
CPU70、RAM72、ROM74、メモリ76、記録ヘッドコントローラ78、モータコントローラ80、センサコントローラ86、及び外部インタフェース88は、システムバスBUSを介して電気的に相互に接続されている。従って、CPU70は、RAM72、ROM74、及びメモリ76に対するアクセスと、記録ヘッドコントローラ78、モータコントローラ80、及びセンサコントローラ86の作動の制御と、ラインセンサ84等のセンサからの出力信号の取得と、外部インタフェース88を介した外部装置との間の各種情報の授受と、を各々行うことができる。なお、本実施形態に係るインクジェット記録装置12には、以上の構成の他に、帯電ロールに電圧を印加する電源装置等、多数の電気系の構成要素が含まれているが、周知または一般的なものであるため詳細な説明を省略する。
以上の構成による本実施形態のインクジェット記録装置12では、給紙トレイ16から取り出された用紙Pが搬送され、搬送ベルト28に至る。そして、帯電ロールによって搬送ベルト28に押し付けられて帯電ロールからの印加電圧によって搬送ベルト28に吸着(密着)して保持される。この状態で、搬送ベルトの循環によって用紙Pが吐出領域SEを通過しつつ、記録ヘッドアレイ30からインク滴が吐出されて、用紙P上に画像が記録される。そして、画像記録された用紙Pは、剥離プレート40で搬送ベルト28から剥離され、排出ローラ対42で搬送されて排紙トレイ46に排出される。
ここで、紙送り速度の速度ムラは、周期性を有している。これは、例えば、駆動ロールの偏芯、ギアバッククラッシュ、周回するベルトの厚さの不均一性などが挙げられる。そこで、各インクジェット記録ヘッド32の位置と搬送速度変動(速度ムラ)の周期で画像記録タイミング(印字タイミング)を補正することで、印字濃度ムラを解消(少なくとも抑制)できるという結論に至った。
図5には、偏芯した駆動ロールによる搬送ベルト28の搬送速度変動(速度ムラ)とインクジェット記録ヘッド32の位置関係を示した。縦軸は、搬送速度変動(速度ムラ)を正規化したものであり、横軸は、駆動ロール24の基準位置からの距離を示したものである。図からも理解されるように、各インクジェット記録ヘッド32のヘッド位置における搬送速度変動の特性は、周期性を有しており、特性の曲線形状は一致する。従って、搬送速度変動は、基準となる特性について1周期分の補正のみでよく、継続的に補正することができる。
このことから、本実施形態では、閉ループを有するベルトまたはドラムを用いて用紙Pを搬送する画像記録装置(インクジェット記録装置12)で、複数の記録ヘッド(インクジェット記録ヘッド32)を搭載した場合に、以下に詳述するように、ベルト等の駆動ロールまたはドラムの基準位置を検出する機構、搬送速度(ベルトまたはドラムの表面速度)を検出する機構、ベルトまたはドラムの基準位置から画像記録タイミング補正(印字タイミング補正)を行う機構、を有することを画像記録装置(インクジェット記録装置12)の基本構成としている。
これらの構成を用いて、駆動ロール(またはドラム)の基準位置に対してタイミング補正データを生成し、インクジェット記録ヘッド32の位置に対する位相補正を行った後、各インクジェット記録ヘッド32の記録タイミング(印字タイミング)を生成し、制御する。
なお、インクジェット記録ヘッド32の位置に伴う搬送速度変動の位相ズレは、印字タイミングの速度ムラ補正が行われれば、同時に補正される。
次に、図面を参照して、搬送速度変動により発生する印字濃度ムラを解消(少なくとも抑制)する、本実施形態に係るインクジェット記録装置12における電気系の記録ヘッドコントローラ78の詳細を説明する。
図6に示すように、記録ヘッドコントローラ78は、画像記録タイミング制御機構60及び印字駆動装置66を含んで構成されており、印字駆動装置66の出力側は、対応する色のインクジェット記録ヘッド32へ接続されている。画像記録タイミング制御機構60は、用紙Pの搬送速度変動による印字密度が変動することにより生じる印字濃度むらを補正するために、用紙Pの搬送速度変動を相殺(少なくとも抑制)するように、インクジェット記録ヘッド32における画像記録タイミング(印字タイミング)を制御するものである。印字駆動装置66は、制御された画像記録タイミング信号と、画像データを合成した駆動信号を生成し、その駆動信号をインクジェット記録ヘッド32に送る。
画像記録タイミング制御機構60は、補正印字クロック生成機構62及び各色毎に設けられた印字タイミング生成機構64を含んでいる。画像記録タイミング制御機構60はラインセンサ84に接続され、ラインセンサ84からの信号が入力される。また、補正印字クロック生成機構62には、表面速度検出センサ36,基準位置検出センサ38,エンコーダ39が接続される。
補正印字クロック生成機構62は、表面速度検出センサ36による用紙Pまたは搬送ベルト28の表面速度データ信号、基準位置検出センサ38による駆動ロール24の基準位置信号、及びエンコーダ39による駆動ロール24の回転位置信号が入力され、これらの信号に基づき、印字クロック信号を生成して、印字タイミング生成機構64の各々へ出力する。この印字タイミング生成機構64の各々には、用紙検出センサ34が接続され、用紙Pの先端位置検出信号が入力される。印字タイミング生成機構64は、補正印字クロック生成機構62からの印字クロック信号と用紙検出センサ34からの先端位置検出信号に基づき印字タイミング信号を生成し、印字駆動装置66へ出力する。
なお、本実施形態では、エンコーダ39による駆動ロール24の回転位置信号入力は必須ではないため、省略が可能である。
ここで、本実施形態に係るインクジェット記録装置12では、基準位置検出センサ38による駆動ロール24の基準位置信号を用いて印字クロックを生成開始するものである。
図7に示すように、補正印字クロック生成機構62は、補正データ生成部100と、補正データ格納メモリ102と,補正クロック生成部104と,アドレス制御部106とを備えている。補正データ生成部100は、表面速度検出センサ36より得られた表面速度データから基準位置検出センサ38より得られた駆動ロール基準位置信号を起点に1周期分(駆動ロール24の1回転分)の補正データを生成し補正データ格納メモリ102に格納するためのものである。
補正データ格納メモリ102は、補正データを格納するメモリであり、例えばアドレス0に駆動ロール基準位置に対応する補正データから順に格納される。アドレス制御部106は補正データ格納メモリ102にアクセスするアドレスを生成する。この補正データ格納メモリ102では、補正クロック生成部104が出力する補正データ要求信号によりアドレスを1ずつインクリメントする。但し最後のデータを読み込んだ後は駆動ロール基準位置であるアドレス0に戻る。補正クロック生成部104は、駆動ロール基準位置信号をトリガにして補正データをもとに補正印字クロック信号を生成する。
図8には、駆動ロール基準位置を起点として表面速度検出センサ36から出力される表面速度データ信号について最大値を「1」に正規化した変動特性110及び補正量の関係を示した。補正データ生成部100では、表面速度データ信号をデジタルデータ(表面速度データ)に変換すると共に、表面速度データの変動幅が所定範囲内であるときに、同一の補正量に設定する。すなわち、変動幅が所定範囲内である表面速度データについて所定変動幅内の所定値(平均値、最大値や最小値。図8では平均値を採用)として扱うように、該当する時間内の変動量を、その所定変動幅内の所定値に対応する補正量Dが得られる単位時間における印字周波数を1単位としてR回繰り返す領域112を求める。このときに、補正量D,繰り返し回数Rが求まる。これらの補正量D,繰り返し回数Rは、変動特性110の変化が急峻なときには繰り返し回数Rが少なく、変化が緩慢なときには繰り返し回数Rが多くなる。従って、速度変動に応じたきめ細かなデータ設定が可能となる。
駆動ロール24に偏心等がなく表面速度データ信号に変動がない場合、基本印字周波数F(例えば、18kHz)により生成される印字クロックで画像記録タイミング信号を生成することができる。変動特性110のように表面速度データに変動があるとき、補正量Dだけ基本印字周波数Fに加算する必要がある。そこで、補正データ生成部100は、図9に示すように、基本印字周波数Fに補正量D(補正周波数)を加算した値の速度データV(=F+D)と繰り返し回数Rを補正データとして補正データ格納メモリ102に格納する。なお、補正データ格納メモリ102には、駆動ロール基準位置を起点すなわちアドレス「0」として1周期分(駆動ロール24の1回転分)の補正データを格納する。このため、繰り返し回数Rの時間計が一周期の時間に対応する。アドレス「0」から補正データ格納メモリ102の補正データ(図9では速度データVと繰り返し数R)を順次読み出すことで、一周期の補正データを取り出すことができる。
上記では、補正データ格納メモリ102に格納する補正データの生成について、表面速度検出センサ36により得られる表面速度データ信号による変動特性110を用いた例を説明したが、補正データの生成に関係する変動特性110の検出は、これに限定されない。例えば、図10に示すテスト印字を行い、これを計測して求めても良い。
各色のインクジェット記録ヘッド32が単一のノズル群Gから構成された1次元ノズルの場合(図2参照)、図10(A)に示すように、各色についてグレイパターンまたはラダーパターンを印字し、テストチャートを作成する。搬送速度変動を有する場合、印字されたグレイパターンまたはラダーパターンは、搬送方向に周期的な濃淡となって現れる。このため、搬送方向について濃度分布を計測することで、その周期的な濃度分布が変動特性110に対応することになる。
また、2次元配列のノズルNを有するインクジェット記録ヘッド32の場合(図3参照)、上述のようにグレイパターン等を印字して計測することができない。このため、図10(B)に示すように、搬送方向と交差方向の主走査方向に同じ位置のノズルNで一定間隔おき(ドットピッチ)に印字する。この印字されたドット間隔を計測することで、搬送速度変動に対応するテストパターン(ドット)によるライン間隔ムラを検出する。すなわち、搬送速度変動を有する場合、印字されたドット間隔は、搬送方向に周期的な長短となって現れる。このため、搬送方向について間隔の距離分布を計測することで、その周期的な距離分布が変動特性110に対応することになる。従って、各色毎に、ノズルNで印字された1ドットラインのドット間隔を測定し搬送速度変動を検出することにより変動特性110及び各ヘッドの位相を検出することができる。
図11に示すように、補正印字クロック生成機構62(図7)に含まれる補正クロック生成部104は、速度データレジスタ120と、繰り返し数カウンタ122と、補正データ要求部124と、クロック生成部126とを備えている。補正クロック生成部104は、基準位置検出センサ38よる駆動ロール基準位置信号をトリガにして補正データ格納メモリ102からの補正データを基にして補正印字クロック信号を生成するためのものである。
速度データレジスタ120は、補正データのうちの速度データVを格納するためのレジスタであり、補正データ格納メモリ102から出力された速度データVを一時的に記憶し、クロック生成部126へ出力する。この速度データVを用いて、クロック生成部126は、補正印字クロック信号を生成し、出力する。繰り返し数カウンタ122は、補正データのうちの繰り返し回数Rをダウンカウントするものであり、補正データ格納メモリ102から出力された繰り返し回数Rを初期カウンタ値にセットした後にカウンタ値が「0」になるまでダウンカウントし、カウンタ値を補正データ要求部124へ出力する。このカウンタ値は、カウンタ値が「0」になるまで補正データ要求部124に出力されるので、繰り返し回数が残存することを表す残存信号と考えることができる。
補正データ要求部124は、基準位置検出センサ38よる駆動ロール基準位置信号及び繰り返し数カウンタ122のカウンタ値により補正データ要求信号を生成する。すなわち、カウンタ値が「0」になると補正データ要求信号を生成して出力する。これにより、補正データ要求部124は、駆動ロール基準位置を起点として、補正データ格納メモリ102からの補正データの出力要求を表す補正データ要求信号を、補正データ格納メモリ102のアドレス数分だけ順次生成してアドレス制御部106へ出力することができる。
以上の構成による補正クロック生成部104では、まず基準位置検出センサ38からの駆動ロール基準位置信号により補正データ要求部124がアドレス制御部106へ補正データ要求信号を生成し出力する。これを受けて補正データ格納メモリ102から補正データ(速度データVと繰り返し回数R)が出力される。速度データVは、速度データレジスタ120に格納されてクロック生成部126において補正印字クロック信号が生成され出力される。このとき、繰り返し回数Rの回数分だけ補正印字クロック信号の生成が繰り返される。繰り返しが終了すると、補正データ要求部124で補正データ要求信号による次の補正データを取得する。これをアドレス分だけ繰り返すことで、一周期の補正印字クロック信号を生成することができる。
図6に示すように、各色の印字タイミング生成機構64は、遅延回路64Aを備えている。この遅延回路64Aの遅延時間は各色のインクジェット記録ヘッド32の設置位置により、用紙Pが搬送されたときに同一画像が同一の位置に画像記録される位相時間が設定されている。この印字タイミング生成機構64では、補正印字クロック生成機構62からの補正印字クロック信号を、用紙Pを検出してから所定時間経過してから、すなわち遅延回路64Aの遅延時間分だけ遅延させて印字タイミング信号として出力するようになっている。
このように、印字タイミング生成機構64では、基準位置検出センサ38からの駆動ロール基準位置信号をトリガとして補正印字クロック信号を生成する。この補正印字クロック信号は、用紙検出センサ34により検出される用紙先端を表す用紙検出信号の入力後、各インクジェット記録ヘッド32毎にヘッド位置遅延分だけ印字タイミング信号を出力しないようになる。また、印字タイミング生成機構64は、所定時間遅延された所定数分の印字クロック信号を印字タイミング信号として出力する。この所定数分の印字クロック信号は、駆動ロール24の1回転すなわち一周期に対応するクロック数である。
図12には、補正印字クロック生成機構62及び印字タイミング生成機構64におけるタイミングチャートを示した。補正印字クロック生成機構62では基準位置検出センサ38からの駆動ロール基準位置信号により補正印字クロック信号が生成される。この補正印字クロック信号は、印字タイミング生成機構64へ出力される。印字タイミング生成機構64の各々では、インクジェット記録ヘッド32の設置位置の距離に応じた時間分だけ遅延されて印字タイミング信号が生成される。図12では、各インクジェット記録ヘッド32について搬送方向の色順すなわちYMCKの各色の順に遅延時間が長くなる印字タイミング信号の各々を時系列的に示している。印字タイミング生成機構64は、駆動ロール24の1回転すなわち一周期に対応する所定数分の印字クロック信号を、印字タイミング信号として出力する。
図6に示すように、各色の印字駆動装置66の入力側は、画像記録タイミング制御機構60、具体的には各色の印字タイミング生成機構64が接続されると共に、画像データが入力されるように接続される。また出力側は、各色のインクジェット記録ヘッド32に接続される。印字駆動装置66では、画像記録タイミング制御機構60から出力された印字タイミング信号(画像記録タイミング信号)と、画像データとから、用紙Pに所定の画像を記録させるための駆動信号(ここでは、各ノズル毎に液滴を吐出させるための信号)を生成してインクジェット記録ヘッド32へ出力する。
次に、搬送速度変動により発生する印字濃度ムラを解消(少なくとも抑制)するインクジェット記録装置12の作用を説明する。
本実施形態のインクジェット記録装置12では、給紙トレイ16から取り出された用紙Pが搬送され、搬送ベルト28に至る。そして、帯電ロールによって搬送ベルト28に押し付けられて帯電ロールからの印加電圧によって搬送ベルト28に吸着(密着)して保持される。この状態で、搬送ベルトの循環によって用紙Pが吐出領域SEを通過しつつ、記録ヘッドアレイ30からインク滴が吐出されて、用紙P上に画像が記録される。この画像記録時には、用紙Pの搬送速度変動に応じて画像記録タイミングが調整される。1パスのみで画像記録する場合には、剥離プレート40で用紙Pを搬送ベルト28から剥離し、排出ローラ対42で搬送して排紙トレイ46に排出する。一方、マルチパスで画像記録を行う場合には、必要な回数に達するまで用紙Pを周回させて吐出領域SEを通過させた後、剥離プレート40で用紙Pを搬送ベルト28から剥離し、排出ローラ対42で搬送して排紙トレイ46に排出する。
画像記録時には、用紙Pの搬送速度変動に応じた画像記録タイミングの調整が、記録ヘッドコントローラ78の画像記録タイミング制御機構60において実行される。
画像記録タイミング制御機構60では、補正印字クロック生成機構62において搬送速度変動に応じて補正された印字クロック信号を生成して、印字タイミング生成機構64の各々へ出力する。補正印字クロック生成機構62の補正データ格納メモリ102には補正データ生成部100により予め求められたまたは計測された、駆動ロール基準位置を起点に1周期分(駆動ロール24の1回転分)の補正データが格納されている。補正クロック生成部104は、基準位置検出センサ38の駆動ロール基準位置信号をトリガにして補正データをもとに補正印字クロック信号を生成し、印字タイミング生成機構64へ出力する。補正データは、速度データVと繰り返し回数Rからなり、補正データ格納メモリ102から出力された速度データVによりクロック生成部126で補正印字クロック信号を生成し、繰り返し回数Rだけ出力する。速度データVを繰り返し回数Rだけ出力すると、補正データ要求部124から補正データ要求信号が出力され、順次補正データが補正データ格納メモリ102から出力される。これにより、駆動ロール基準位置を起点として生成される補正印字クロック信号を出力することができる。印字タイミング生成機構64では、基準位置検出センサ38からの駆動ロール基準位置信号をトリガとして補正印字クロック信号を生成し、インクジェット記録ヘッド32へ出力する。
以上詳細に説明したように、本実施形態に係るインクジェット記録装置12に含まれる画像記録タイミング制御機構60では、駆動ロール24の偏心等により生じる周期性を有する搬送速度変動を、予め補正データとして記憶し、その補正データを用いて駆動ロール基準位置から画像記録タイミングを制御しているので、搬送速度変動により発生する印字濃度ムラを解消(少なくとも抑制)するインクジェット記録装置12を提供することができる。
また、本実施形態によれば、搬送速度変動により発生する画像記録タイミングのズレを解消でき、各色のインクジェット記録ヘッド32の間隔に制限を加えることがないので、装置を小型化することができる。
さらに、インクジェット記録ヘッド32が2次元ヘッドの場合、ヘッド間隔を駆動ロールの2πrの間隔に配置してもノズル毎の印字位置ずれが発生してしまうが、本実施形態によれば、ヘッド間隔やノズル配置に関係なく印字位置の補正が可能となる。このため、インクジェット記録ヘッド32の間隔を詰めることが可能となり、装置の小型化が可能。
なお、従来のヘッド間隔を駆動ロール周長の整数倍にする装置の場合、ヘッド間隔を短くすると駆動ロール径を小さくする必要があり、駆動力の確保が困難であるが、本実施形態のインクジェット記録装置12では、ヘッド間隔と独立にベルト駆動力の面から駆動ロール径を決定することができる。
なお、本実施形態の表面速度検出センサ36は本発明の検出手段に対応する。また、本実施形態の記録ヘッドコントローラ78及び画像記録タイミング制御機構60は本発明の制御手段に対応する。また、補正印字クロック生成機構62は本発明の印字クロック生成手段に対応し、印字タイミング生成機構64は印字タイミング生成手段に対応する。また、補正データ格納メモリ102は本発明の記憶手段に対応し、用紙検出センサ34は本発明の先端位置検出手段に対応する。また、基準位置検出センサ38は本発明の基準位置検出手段の一例に対応する。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態は、搬送速度変動により発生する印字濃度ムラを解消(少なくとも抑制)するために、用紙Pを搬送するための駆動ロール24に取り付けたエンコーダ39のエンコーダ信号を用いて画像記録タイミングを生成するための印字クロックの生成を開始するものである。なお、本実施の形態は、上記実施の形態と略同様の構成のため、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図13に示すように、本実施の形態の補正印字クロック生成機構63は、エンコーダ39から出力されるエンコーダ信号が入力されるエンコーダ基準位置信号生成部130を備えている。エンコーダ基準位置信号生成部130の出力側は、補正データ生成部100及び補正クロック生成部104に接続される。図13の補正印字クロック生成機構63と図7の補正印字クロック生成機構62の差異は、補正印字クロック生成機構62が基準位置検出センサ38からの駆動ロール基準位置信号を補正データ生成部100及び補正クロック生成部104に直接入力したのに対して、補正印字クロック生成機構63がエンコーダ信号から基準位置信号を生成するエンコーダ基準位置信号生成部130を加えた点である。このエンコーダ基準位置信号生成部130は、エンコーダ39からのエンコーダ信号が周期的に速度変動をする場合、予め定めた基準位置を検出してエンコーダ基準位置信号として出力する機能部である。なお、エンコーダ39,エンコーダ基準位置信号生成部130は、本発明の基準位置検出手段の一例に対応する。
なお、エンコーダ39は、取り付け誤差のため駆動ロール24の中心軸に対して偏心が生じてしまう。これにより、エンコーダ39から出力される信号は、図15に示すように、偏心量に応じて周期性を有する信号となる。
図14に示すように、エンコーダ基準位置信号生成部130は、指定値レジスタ132と、指定値比較部134と,エンコーダ信号サンプリング部136と,第1レジスタ138と,第2レジスタ140と,サンプリング値比較部142と、AND回路等の積算部144とを備えている。
指定値レジスタ132は、エンコーダ基準位置を指定する指定値データを格納するためのメモリであり、指定値データは予め定めた値が入力されて格納される。
エンコーダ信号サンプリング部136は、システムクロック(例えば40MHz)でエンコーダ信号を所定時間だけサンプリングする。サンプリング値を第1レジスタ138に格納する。これと共に第1レジスタ138のサンプリング値を第2レジスタ140に格納する。このサンプリング値は、エンコーダ39の回転位置に応じて変動し、エンコーダ39を1回転する間に増減する周期性を有する。第1レジスタ138のサンプリング値を第2レジスタ140に格納するのは、システムクロック分遅延させるためである。すなわち、第1レジスタ138に現在のサンプリング値、第2レジスタ140に前回のサンプリング値が格納される。
サンプリング値比較部142は、第1レジスタ138と第2レジスタ140に格納してあるサンプリング値を比較する。例えば、サンプリング値が増加している場合(第1レジスタ138のサンプリング値>第2レジスタ140のサンプリング値)を判定する。比較する回数は1回でもよいが、ノイズ対策のためには指定回数(例えば10回)を実行することが好ましい。
指定値比較部134は、指定値レジスタ132に格納済みの指定値と第1レジスタ138に格納済みのサンプリング値を比較する。例えば、指定値を第1レジスタ138の値が越えたがどうか(指定値<第1レジスタ138の値)を判定する。比較する回数は1回でもよいが、ノイズ対策のためには指定回数(例えば10回)を実行することが好ましい。
積算部144は、指定値比較部134の比較結果及びサンプリング値比較部142の比較結果が共に肯定されたときにエンコーダ基準位置信号を出力する信号生成部である。
上記構成のエンコーダ基準位置信号生成部130の動作を図16を参照して説明する。まず、エンコーダ信号サンプリング部136においてエンコーダ信号をサンプリングし、第1レジスタ138,第2レジスタ140へサンプリング値を格納する(ステップ150)。次に、サンプリング値比較部142においてサンプリング値を比較し、増加か否かを判断する(ステップ152)。減少の場合は否定判断として、サンプリングを継続する(そのままステップ150へ戻る)。一方、増加の場合は肯定判断として、積算部144へサンプリング比較結果信号を出力する。サンプリング値が増加の場合、指定値比較部134において指定値と現在のサンプリング値を比較し、サンプリング値が指定値を超えたか否かを判断する(ステップ154)。指定値以下のサンプリング値であるときは否定判断として、サンプリングを継続する(そのままステップ150へ戻る)。一方、指定値を超えたサンプリング値であるときは肯定判断として、積算部144がエンコーダ基準位置信号を生成して出力する(ステップ156)。
このようにして、本実施形態では、基準位置検出センサ38を備えることなく、エンコーダ39からのエンコーダ信号を用いて生成したエンコーダ基準位置信号を、駆動ロール基準位置信号に代えて利用することができる。
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
また、上記の実施形態は、請求項にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
例えば、上記実施形態では、補正印字クロック生成機構62に備えた補正データ格納メモリ102への補正データの格納を、例えばインクジェット記録装置12の工場出荷前等の事前に行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、予め定められた期間毎に自動的に行う形態や、ユーザによって実行指示が行われた任意のタイミングで行う形態等、他のタイミングで行う形態とすることもできる。この場合も、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
その他、上記実施形態で説明したインクジェット記録装置12、インクジェット記録ヘッド32、及び記録ヘッドコントローラ78の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
また、上記実施形態では、本発明の液滴としてインクを用いる場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、インクに代えて、例えば、反応液を用いることもできる。詳細には、記録媒体上でインク液滴と反応液滴とを混合することにより画質がさらに向上するため、反応液滴をノズルで吐出させる際、本発明を上記と同様に適用することができる。その他、インクジェット方法により、液晶表示素子の配向膜形成材料の塗布、フラックスの塗布、接着剤の塗布、プリント基板の配線材料の塗布、などにも本発明を上記と同様に適用することができる。