JP5173444B2 - 封着パネルの製造方法及びそれを用いたプラズマディスプレイパネルの製造方法 - Google Patents
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一般にPDPは、前面基板と背面基板とが封着材を介して貼り合わされ、内部に放電ガスが封入されたものである。PDPとして、前面基板に維持電極および走査電極が形成され、背面基板にアドレス電極が形成された3電極面放電型が主流となっている。走査電極とアドレス電極との間に電圧を印加して放電を発生させると、封入された放電ガスがプラズマ化して紫外線が放出される。この紫外線により、背面基板に形成された蛍光体が励起されて、可視光が放出されるようになっている。
一方、封着材として熱硬化性樹脂材料を採用すると、パネル封着時の加熱により、樹脂材料自体の蒸発しやすい成分または樹脂材料に含まれる水分や不純物ガス(以下「高蒸気圧成分」という)が、パネル内部に放出される虞がある。
この構成によれば、脱ガス工程において、封着材となる紫外線硬化性樹脂を減圧雰囲気下で加熱することで、封着材自体の蒸発しやすい成分または封着材に含まれる水分や不純物ガスを、封着材を第2基板に塗布する前に放出した後、脱ガス工程を経た封着材を用いて、塗布工程が行われる。その後、真空中または制御された雰囲気中で、第1基板と第2基板とを貼り合わせるパネル化工程が行われる。これにより、パネル化工程において、真空中または制御された雰囲気中に曝されても、封着材の塗布後に封着材自体の蒸発しやすい成分または封着材に含まれる水分や不純物ガス等が、封着材から放出されるのを防止することが可能になる。その結果、パネル化工程を行う際に、真空中または制御された雰囲気中とされている室内や、この室内に配された両基板が汚染されることを防ぐことができる。また上述したように、封着材に紫外線硬化性樹脂を用いることで、封着時の高温加熱が必要なくなるため、封着後のエージング時間を大幅に短縮することができる。したがって、スループット向上および省エネルギーを実現することができる。
この構成によれば、脱ガス工程における温度を140℃以上、圧力を10kPa以下、時間を10分以上にそれぞれ設定することで、封着材自体または封着材に含まれる水分や不純物ガスを効率良く放出させることができる。一方、圧力を100Pa以上に設定することで、減圧により生じる封着材の硬化を防止することができる。
この構成によれば、脱ガス条件によらず排気速度を一定にすることが可能になる。そのため、封着材自体または封着材に含まれる水分や不純物ガスを効率よく放出させることができる。
この構成によれば、スループット向上および省エネルギーを実現した低コストなプラズマディスプレイパネルを製造することができる。
この構成によれば、封着材となる紫外線硬化性樹脂に予め脱ガス処理を施した後、第2基板に塗布され、真空中または制御された雰囲気中で、第1基板と第2基板とを貼り合わせるために用いられるので、封着した後に、封着材自体の蒸発しやすい成分または封着材に含まれる水分や不純物ガス等が、封着材から放出されるのを防止することが可能になる。その結果、第1基板と第2基板とを貼り合わせるパネル化工程が行われる、真空中または制御された雰囲気中とされている室内や、この室内に配された両基板が汚染されることを防ぐことができる。また上述したように、封着材に紫外線硬化性樹脂を用いることで、封着時の高温加熱が必要なくなるため、封着後のエージング時間を大幅に短縮することができる。したがって、スループット向上および省エネルギーを実現することができる。
この構成によれば、温度を140℃以上、圧力を10kPa以下、時間を10分以上に設定して脱ガス処理を行うことで、封着材自体または封着材に含まれる水分や不純物ガスを効率良く放出させることができる。一方、圧力を100Pa以上に設定することで、減圧により生じる封着材の硬化を防止することができる。
なお、本明細書において基板の「内面」とは、当該基板の両表面のうち、当該基板と対をなす基板との対向面をいうものとする。
(プラズマディスプレイパネル)
図1は、3電極AC型プラズマディスプレイパネルの分解斜視図である。このプラズマディスプレイパネル(以下「PDP」という。)100は、対向配置された背面基板2および前面基板1と、両基板1,2の間に形成された複数の放電室16とを備えている。
そのアドレス電極11を覆うように、誘電体層19が形成されている。また、隣接するアドレス電極11の間における誘電体層19の上面には、アドレス電極11と平行に隔壁(リブ)15が形成されている。さらに、隣接する隔壁15の間における誘電体層19の上面および隔壁15の側面に、蛍光体17が配設されている。この蛍光体17は、赤、緑、青の何れかの蛍光を発光するものである。
図2(b)は、図2(a)のA−A線における側面断面図である。図2(b)に示すように、前面基板1と背面基板2とが貼り合わされることにより、隣接する隔壁15の間に放電室16が形成されている。この放電室16の内部には、NeおよびXeの混合ガス等の放電ガスが封入されている。
上述した封着材20の材料として、蒸発しやすい成分や水分、不純物ガスの放出が少なく、パネル貼り合わせ強度を確保することが可能な材料を採用する必要がある。このような材料として、本実施形態では封着時に加熱を必要とせず、常温下で紫外線を照射することにより粘度が上昇して硬化する紫外線硬化性エポキシ樹脂(カチオン系)を用いている。また、カチオン系の他に、ラジカル系等を用いることも可能であり、紫外線硬化性樹脂全般を適用することが可能である。
次に、本発明の封着パネルの製造方法として、PDPの製造方法について説明する。図3は、第1実施形態に係るPDPの製造方法のフローチャートである。PDPの製造工程は、脱ガス工程(S40)と、パネル工程(S50)と、モジュール・セット工程(S52)との3つに大きく分けられる。そのパネル工程(S50)は、前面基板工程(S60)と、背面基板工程(S70)と、パネル化工程(S80)との3つに分けられる。
また、背面基板ライン70は、封着材20が塗布された背面基板2を受け入れる背面板仕込室(真空排気室)76が設けられている。
次に、アドレス電極11を保護するため誘電体層19を形成する(S74)。次に、放電空間および蛍光体17の発光面積を増加させるため、隔壁15をサンドブラスト法等によって形成する(S75)。サンドブラスト法は、隔壁15の材料となるガラスペーストを背面基板2上に塗布し、乾燥後にマスク材をパターニングし、アルミナやガラスビーズ等の研磨剤を高圧で吹き付けることにより、所定形状の隔壁15を形成する方法である。
次に、背面基板2の内面に封着材20を塗布する(塗布工程)。具体的には、ニードルディスペンス法により、後述する脱ガス工程(S40)を経た封着材20を背面基板2の周縁部に連続的に塗布していく。なお、封着材20の塗布方法は、スクリーン印刷法等を採用することも可能である。
ここで、本実施形態の脱ガス工程について説明する。
上述の真空排気工程では、封着材20自体の蒸発しやすい成分が封着材20から蒸発するとともに、封着材20に含まれる水分や不純物ガス(H2やN2、CO、CO2等)の高蒸気圧成分が封着材20から離脱する虞がある。封着材20から離脱した高蒸気圧成分は、背面板仕込室76に滞留して背面基板2の内面に付着したり、背面基板2の搬送先である封着室82内に付着したりする場合がある。さらに両基板1,2を封着する際に、背面基板2から離脱した高蒸気圧成分が、前面基板1の保護膜14に付着して、前面基板1も汚染されてしまうという問題がある。
本願の発明者は、上述した脱ガス工程における最適な脱ガス条件を求めるために、脱ガス処理による封着材からの高蒸気圧成分の放出量を測定する試験を行った。
まず、本願の発明者は、脱ガス処理前の封着材と、脱ガス処理後の封着材とに対してそれぞれ加熱処理を行い、この時に両者から放出される高蒸気圧成分の放出量を比較した。なお、本試験においては、高蒸気圧成分の放出量を、封着材の重量変化として測定し、この重量変化から蒸発速度を算出した。また、本試験における脱ガス処理は、蒸着室内を150℃で加熱するとともに、1kPaの減圧雰囲気下で、30分間保持した。
次に、本願の発明者は、脱ガス工程における温度・圧力・時間をそれぞれ変化させて、封着材に含まれる高蒸気圧成分による基板の汚染の程度を測定する試験を行った。
図6に示すように、脱ガス処理の温度が上昇するにつれ、接触角は減少傾向にあることがわかる。具体的には、脱ガス処理の温度を40℃で行った場合、接触角が約12°まで増加したが、脱ガス処理の温度が80℃付近から接触角は急激に減少し、脱ガス処理の温度が140℃以上の範囲では接触角が4°程度に収まっている。つまり、温度140℃以上で脱ガス処理を行うことで、封着材に含まれる高蒸気圧成分のほとんどが離脱するため、脱ガス処理後の封着材からは高蒸気圧成分がほとんど放出されないことがわかる。これにより、背面基板に封着材を塗布した後、室内を減圧したとしても、高蒸気圧成分が室内や対向配置された前面基板に付着することがない。一方、脱ガス処理の温度が200℃を超えた範囲では、高熱により封着材が硬化し始める箇所が確認された。以上の結果から脱ガス工程における最適な温度条件としては、140℃以上200℃以下程度であることが好ましい。
図7は、圧力(Pa)に対する接触角(°)の変化を示したグラフである。
図7に示すように、圧力100000Paの場合には接触角が約5.5°まで上昇したが、10Pa〜10000Paの範囲では、圧力上昇に伴う接触角の変化はほとんど確認されなかった。しかし、圧力10000Pa以上の範囲では、接触角が徐々に増加傾向にあることがわかる。一方、圧力が100Pa未満の範囲では、減圧により封着材が硬化し始める箇所が確認された。以上の結果から、脱ガス工程における最適な圧力条件としては、100Pa以上10000Pa以下程度が好ましい。
図8は、処理時間(分)に対する接触角(°)の変化を示したグラフである。
図8に示すように、処理時間0分、つまり脱ガス処理を行わなかった場合、接触角は11.7°であったが、処理時間が3分の場合では、接触角が6.8°、5分の場合では5.2°と急激に減少していることがわかる。さらに、脱ガス処理の処理時間が10分以上の範囲では、接触角が約4.8°程度に収まっている。つまり、処理時間が10分以上で脱ガス処理を行うことで、封着材に含まれる高蒸気圧成分が確実に放出されていることがわかる。これにより、背面基板に封着材を塗布した後、室内を減圧したとしても、高蒸気圧成分が室内や対向配置された前面基板に付着することがない。一方、熱処理時間が120分を超えた範囲では、長時間の脱ガス処理により封着材が硬化し始める箇所が確認された。以上の結果から、脱ガス工程における最適な熱処理時間の条件としては、10分以上120分以下程度が好ましい。
また、本願の発明者は、上述したPDPの製造方法のうち、脱ガス工程の処理条件を様々な条件に設定してサンプルのPDPを作成し、各工程後の前面基板における接触角の測定試験を行った。
図9に示すように、サンプルPDPの製造方法は、上述したPDPの製造方法と同様に、脱ガス工程(S100)、封着材塗布工程(S101)、真空排気工程(S102)、放電ガス注入工程(S103)、重ね合わせ工程(S104)、紫外線照射工程(S105)を経て作成する。そして、上述した方法で作成されたサンプルPDPを、大気中で温度72℃、72時間放置(S106)した。なお、真空排気工程は、ガラス基板同士を10cm程度離して対向させた状態で行い、スクロールポンプにより室温で1分間、約20Pa程度まで減圧した。また、放電ガス注入工程では、放電ガスとしてNe−4%Xeを400Torr導入した。
まず、真空排気後において、条件1の場合は接触角が10°まで増加した。また、条件2の場合も同様に、真空排気後に接触角が10°まで増加しており、封着材に含まれる高蒸気圧成分を脱ガスすることができなかった。その結果、放出された高蒸気圧成分が室内や前面基板に付着して汚染されてしまった。
この構成によれば、脱ガス工程において、封着材20となる紫外線硬化性樹脂を減圧雰囲気下で加熱することで、封着材20に含まれる高蒸気圧成分を、封着材20を背面基板2に塗布する前に放出しておくことができる。これにより、封着材20の塗布後に封着材20に含まれる高蒸気圧成分が放出されるのを防止することが可能になり、室内(背面板仕込室78や封着室82)や両基板1,2が汚染されることを防ぐことができる。
また、封着材20に紫外線硬化性樹脂を用いることで、封着時の高温加熱が必要なくなるため、封着後のエージング時間を大幅に短縮することができる。
このように、本実施形態によれば、封着工程でのパネル内部の清浄化を不要にすることが可能になるとともに、封着後のエージング時間を大幅に短縮することができるため、スループット向上および省エネルギーを実現して低コストのPDP100を製造することができる。
また、電界放出ディスプレイパネルは、画素ごとに配置された電子放出源(エミッター)から真空中に電子を放ち、蛍光体にぶつけて発光させるものである。電界放出ディスプレイパネルとして、突起状の電子放出素子を備えたFED(Field Emission Display)や、表面伝導型の電子放出素子を備えたSED(Surface−Conduction Electron−Emitter Display)等が挙げられる。
このように、有機ELや電界放出ディスプレイパネルに本発明を適用した場合でも、封着材に含まれる高蒸気圧成分が放出されるのを防止することが可能になり、室内や両基板が汚染されることを防ぐことができる。
Claims (4)
- 第1基板および第2基板が、封着材を介して貼り合わされた封着パネルの製造方法であって、
前記第2基板における前記第1基板との対向面に、紫外線硬化性樹脂からなる前記封着材を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程に先立って、前記封着材を減圧雰囲気下で所定時間加熱する脱ガス工程とを有し、
前記脱ガス工程を経た封着材を用いて、前記塗布工程を行った後に、真空中または制御された雰囲気中において、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせるパネル化工程を、さらに有することを特徴とする封着パネルの製造方法。 - 前記脱ガス工程では、前記封着材を140℃以上で加熱するとともに、100Pa以上10kPa以下の減圧雰囲気下で10分以上保持することを特徴とする請求項1記載の封着パネルの製造方法。
- 前記脱ガス工程では、前記封着材を配置したチャンバ内を排気しながら前記チャンバ内に乾燥ガスを供給して、前記チャンバ内の圧力を調整することを特徴とする請求項1または請求項2記載の封着パネルの製造方法。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の封着パネルの製造方法を用いたことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
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