以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
<インクジェット記録装置の全体構成>
まず、本発明の画像形成方法に用いるインクジェット記録装置について、全体構成を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置1を模式的に示す構成図である。同図に示すインクジェット記録装置1は、記録媒体22の記録面に画像を形成する装置であり、主として給紙部10、処理液付与部12、描画部14、乾燥部16、定着部18及び排出部20で構成される。給紙部10には記録媒体22(枚葉紙)が積層されており、この記録媒体22が給紙部10から処理液付与部12に送られ、処理液付与部12で記録面に処理液が付与された後、描画部14で記録面に色インクが付与される。インクが付与された記録媒体22は、定着部18で画像が堅牢化された後、排出部20によって搬送される。
また、インクジェット記録装置1は、各部の間に中間搬送部24、26、28を備え、この中間搬送部24、26、28によって記録媒体22の受け渡しが行われるようになっている。即ち、処理液付与部12と描画部14との間には、第1の中間搬送部24が設けられ、この第1中間搬送部24によって処理液付与部12から描画部14への記録媒体22の受け渡しが行われる。同様に、描画部14と乾燥部16との間には、第2の中間搬送部26が設けられ、この第2中間搬送部26によって描画部14から乾燥部16への記録媒体22の受け渡しが行われる。更に、乾燥部16と定着部18との間には、第3の中間搬送部28が設けられ、この第3中間搬送部28によって乾燥部16から定着部18への記録媒体22の受け渡しが行われる。
以下、インクジェット記録装置1の各部(給紙部10、処理液付与部12、描画部14、乾燥部16、定着部18、排出部20、第1〜第3の中間搬送部24、26、28)について説明する。
(給紙部)
給紙部10は、記録媒体22を描画部14に供給する機構である。給紙部10には、給紙トレイ50が設けられ、この給紙トレイ50から記録媒体22が一枚ずつ処理液付与部12に給紙される。なお、本例では記録媒体22としてユーライト(マットコート紙)を用いるが、それ以外の各種媒体への適用が可能である。
(処理液付与部)
処理液付与部12は、記録媒体22の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部14で付与されるインク中の色材(顔料)を凝集または析出させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
本実施形態に用いる処理液として、インクのpHを変化させることにより、インクに含有される顔料およびポリマー微粒子を凝集させ、凝集物を生じさせるような処理液が好ましい。
処理液の成分として、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、燐酸、ポリ燐酸、メタ燐酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等の中から選ばれることが好ましい。
また、本実施形態に係る処理液の好ましい例として、多価金属塩あるいはポリアリルアミンを添加した処理液を挙げることができる。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
本実施形態に係る処理液はインクとのpH凝集性能の観点からpHは1〜6であることが好ましく、pHは2〜5であることがより好ましく、pHは3〜5であることが特に好ましい。
本実施形態に係る処理液の中における、インクの顔料およびポリマー微粒子を凝集させる成分の添加量としては、液体の全重量に対し、0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましい。0.01重量%以下の場合は処理液とインクが接触時に、濃度拡散が十分に進まずpH変化による凝集作用が十分に発生しないことがある。また20重量%以上であると、塗設された用紙の光沢性を変化させる場合がある。
処理液は非カール性溶剤を添加することが好ましく、その非カール性溶剤の具体的な例としては、アルコール(例えば、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。
なお、上記の有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、これらの有機溶剤は、処理液中に、1〜50質量%含有されることが好ましい。
図1に示すように、処理液付与部12は、渡し胴52、処理液ドラム54、処理液塗布装置56、温風噴出しノズル58及びIRヒータ60を備えている。渡し胴52は、給紙部10の給紙トレイ50と処理液ドラム54の間に配置され、後述のモータドライバ108(図13参照)によってその回転が駆動制御される。給紙部10から給紙された記録媒体22は、この渡し胴52によって受け取られ、処理液ドラム54に受け渡される。なお、渡し胴52の代わりに、後述する中間搬送部を設けてもよい。
処理液ドラム54は、記録媒体22を保持し、回転搬送させるドラムであり、後述のモータドライバ108(図13参照)によってその回転が駆動制御される。また、処理液ドラム54は、その外周面に爪形状の保持手段(後述する図4の保持手段73と同様の手段)を備え、この保持手段によって記録媒体22の先端を保持できるようになっている。記録媒体22は、保持手段によって先端が保持された状態で、処理液ドラム54を回転させることによって回転搬送される。その際、記録媒体22の記録面が外側を向くようにして搬送されるようになっている。なお、処理液ドラム54は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体22を処理液ドラム54の周面に密着保持することができる。
処理液ドラム54の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置56、温風噴出しノズル58及びIRヒータ60が設けられる。処理液塗布装置56、温風噴出しノズル58及びIRヒータ60は、処理液ドラム54の回転方向(図1において反時計回り方向)に上流側から順に配設されており、記録媒体22は、まず処理液塗布装置56によって記録面に処理液が塗布される。
図2は、処理液塗布装置56の構成図である。図2に示すように、処理液塗布装置56は、ゴムローラ62、アニロックスローラ64、スキージ66、処理液容器68で構成される。処理液容器68には処理液が貯留され、この処理液にアニロックスローラ64の一部が浸漬される。アニロックスローラ64には、スキージ66とゴムローラ62が圧接されており、ゴムローラ62は、処理液ドラム54に保持されて回転搬送される記録媒体22に当接されるとともに、処理液ドラム54の回転方向と逆方向(同図において時計回り方向)に所定の一定速度で回転駆動される。
上記の如く構成された処理液塗布装置56によれば、処理液がアニロックスローラ64とスキージ66によって計量されながら、ゴムローラ62によって記録媒体22に塗布される。その際、処理液の膜厚は、描画部14のインクジェットヘッド72C,72M,72Y,72K(図1参照)から打滴されるインクの液滴径より十分に小さいことが望ましい。例えば、インクの打滴量が2plのときには、液滴の平均直径は15.6μmである。このとき、処理液の膜厚が大きい場合には、インクドットが記録媒体22の表面に接触することなく、処理液内で浮遊する。そこで、インクの打滴量が2plのときに着弾ドット径を30μm以上得るためには、処理液の膜厚を3μm以下にすることが望ましい。
処理液塗布装置56で処理液が塗布された記録媒体22は、図3に示す温風噴出しノズル58、IRヒータ60の位置に搬送される。温風噴出しノズル58は高温(たとえば70℃)の温風を一定の風量(たとえば9m3/分)で記録媒体22に向けて吹き付けるように構成され、IRヒータ60は高温(たとえば180℃)に制御される。この温風噴出しノズル58とIRヒータ60による加熱によって、処理液の溶媒中の水分が蒸発され、処理液の薄膜層が記録面に形成される。このように処理液を薄層化することによって、描画部14で打滴するインクのドットが記録媒体22の記録面と接触し、必要なドット径が得られるとともに、薄層化した処理液成分と反応して色材凝集が起こり、記録媒体22の記録面に固定する作用が得られやすい。なお、処理液ドラム54を所定の温度(たとえば50℃)に制御するようにしてもよい。
(中間搬送部)
次に、第1の中間搬送部24の構造について説明する。なお、第2の中間搬送部26、第3の中間搬送部28は、第1の中間搬送部24と同様の構成であり、その説明を省略する。
図4に示すように、第1の中間搬送部24は主として、中間搬送体30と搬送ガイド32で構成される。中間搬送体30は、前段のドラムから記録媒体22を受け取り、回転搬送させた後、後段のドラムに受け渡すためのドラムである。中間搬送体30は、不図示のモータによって回転するようになっており、不図示の中間搬送体回転駆動部によってその回転が駆動制御される。
中間搬送体30の外周面には、爪形状の保持手段34(図4の保持手段73と同様の手段)が90°間隔で設けられている。保持手段34は、円軌跡を描きながら回転するようになっており、この保持手段34の動作によって記録媒体22の先端が保持される。したがって、保持手段34で記録媒体22の先端を保持した状態で中間搬送体30を回転させることによって、記録媒体22を回転搬送させることができる。その際、記録媒体22の記録面が内側、非記録面が外側を向くようにして回転搬送される。なお、本実施形態では、中間搬送体30に2つの保持手段34を設けたが、保持手段34の数はこれに限定するものではない。
中間搬送体30の表面には複数の送風口(不図示)が形成されている。中間搬送体30の内部はブロワ(不図示)に接続されており、このブロワによって中間搬送体30にエアが送気される。エアは温風とすることが好ましく、たとえば70℃の温風が風量1m3/分で送気される。これにより、中間搬送体30の表面の送風口から温風が吹き出され、記録媒体22が浮上支持されるとともに、記録面の乾燥処理が行われる。よって、記録媒体22の記録面が中間搬送体30に接触することを防止でき、中間搬送体30への処理液の付着を回避できる。
搬送ガイド32は、円弧形状のガイド面44を有し、このガイド面44が、中間搬送体30の下側半分の周面に沿って配置されている。したがって、中間搬送体30によって浮上支持された記録媒体22は、その記録面の反対面(以下、非記録面という)がガイド面44に接触しながら搬送される。これにより、記録媒体22に搬送方向の逆方向のテンション(以下、バックテンションという)をかけることができ、搬送中の記録媒体22に浮き皺が発生することを防止できる。
バックテンションを付与する手段としては、静電吸着方式、負圧吸引方式の他、ガイド面44を表面処理して表面粗さを大きくしたり、ガイド面44をゴムなどの摩擦係数が大きい部材で形成したりしてもよい。
第1の中間搬送部24によって搬送された記録媒体22は、後段のドラム(即ち、描画ドラム70)に受け渡される。その際、中間搬送部24の保持手段34と描画部14の保持手段73を同期させることによって、記録媒体22の受け渡しが行われる。受け渡された記録媒体22は、描画ドラム70によって保持されて回転搬送される。その際、受け渡し直後の記録媒体22は、後端側が搬送ガイド32に密着して搬送されているので、受け渡しの際に浮き皺などの故障が発生することを防止できる。
(描画部)
図4に示すように、描画部14は、描画ドラム70と、この描画ドラム70の外周面に対向する位置に近接配置されたインクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kで構成される。インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kはそれぞれ、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の4色のインクに対応しており、描画ドラム70の回転方向(図4において反時計回り方向)に上流側から順に配置される。
描画ドラム70は、その外周面に記録媒体22を保持し、回転搬送させるドラムであり、後述のモータドライバ108(図13参照)によってその回転が駆動制御される。また、描画ドラム70は、その外周面に爪形状の保持手段73を備え、この保持手段73によって記録媒体22の先端を保持できるようになっている。記録媒体22は、保持手段73によって先端が保持された状態で、描画ドラム70を回転させることによって回転搬送される。その際、記録媒体22の記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kからインクが付与される。
インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kはそれぞれ、記録媒体22における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)であり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kは、記録媒体22の搬送方向(描画ドラム70の回転方向)と直交する方向に延在するように固定設置される。
このように構成された各インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kから、対応する色インクの液滴が、描画ドラム70の外周面に保持された記録媒体22の記録面に向かって吐出される。これにより、処理液付与部12で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体22上での色材流れなどが防止され、記録媒体22の記録面に画像が形成される。その際、描画部14の描画ドラム70は、処理液付与部12の処理液ドラム54に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kに処理液が付着することがなく、インクの不吐出要因を低減することができる。
なお、インクと処理液の反応の一例として、処理液に酸を含有させPHダウンにより顔料分散を破壊し凝集するメカニズムを用い、色材滲み、各色インク間の混色、インク滴の着弾時の液合一による打滴干渉を回避することが考えられる。
記録媒体22の画像形成領域の全幅をカバーするノズル列を有するフルラインヘッドがインク色毎に設けられる構成によれば、描画ドラム70によって記録媒体22を一定の速度で搬送し、この搬送方向(副走査方向)について、記録媒体22と各インクジェットヘッド172C、72M、72Y、72Kを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体22の画像形成領域に画像を記録することができる。かかるフルライン型(ページワイド)ヘッドによるシングルパス方式の画像形成は、記録媒体の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドによるマルチパス方式を適用する場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
また、各インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kの打滴タイミングは、描画ドラム70に配置された回転速度を検出するエンコーダ(不図示))に同期させる。これにより、高精度に着弾位置を決定することができる。また、予め描画ドラム70のフレなどによる速度変動を学習し、エンコーダで得られた打滴タイミングを補正して、描画ドラム70のフレ、回転軸の精度、描画ドラム70の外周面の速度に依存せずに打滴ムラを低減させることができる。
更に、各インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kのノズル面の清掃、増粘インク排出などのメンテナンス動作は、ヘッドユニットを描画ドラム70から退避させて実施するとよい。
また、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。なお、インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kのより詳細な説明については、後述する。
ここで、本実施形態に係るインクジェット記録装置に使用する水性インクについて詳細に説明する。
本実施形態における水性インクは、樹脂分散剤(A)と、前記樹脂分散剤(A)によって分散された顔料(B)と、自己分散性ポリマー微粒子(C)と、水性液媒体(D)とを少なくとも含む専用インクとして構成される。
(樹脂分散剤(A))
前記樹脂分散剤(A)は、水性液媒体(D)中での顔料(B)の分散剤として用いるものであり、顔料Bを分散しうる樹脂であれば如何なる樹脂でもかまわないが、樹脂分散剤(A)の構造は、疎水性構造単位(a)と、親水性構造単位(b)とを有することが好ましい。必要に応じて、樹脂分散剤(A)は、前記疎水性構造単位(a)及び前記親水性構造単位(b)とは異なる構造単位(c)を含むことができる。
前記親水性構造単位(b)及び疎水性構造単位(a)の組成としては、それぞれの親水性、疎水性の程度にもよるが、疎水性構造単位(a)が樹脂分散剤(A)全体の質量に対して80質量%を超えて含有されることが好ましく、85質量%以上がより好ましい。即ち、親水性構造単位(b)は15質量%以下にする必要があり、親水性構造単位(b)が15質量%よりも多い場合には、顔料の分散に寄与せず単独で水性液媒体(D)中に溶解する成分が増加し、顔料(B)の分散性等の諸性能を悪化させ、インクジェット記録用インクの吐出性を悪化させる原因となる。
<疎水性構造単位(a)>
本実施形態における樹脂分散剤(A)は、疎水性構造単位(a)のうち、樹脂分散剤(A)の主鎖を形成する原子と直接に結合していない芳香環を有する疎水性構造単位(a1)を少なくとも含む。
ここでいう「直接に結合していない」とは、芳香環と樹脂の主鎖構造を形成する原子とが、連結基を介して結合した構造となっていることを表す。このような形態を有することで、樹脂分散剤(A)中の親水性構造単位と疎水性の芳香環との間に適切な距離が維持されるため、樹脂分散剤(A)と顔料(B)とに相互作用が生じやすくなり、強固に吸着し、結果分散性が向上する。
〈芳香環を有する疎水性構造単位(a1)〉
前記樹脂分散剤(A)の主鎖を形成する原子と直接に結合していない芳香環を有する疎水性構造単位(a1)は、顔料の分散安定性、吐出安定性、洗浄性の観点から、前記樹脂分散剤(A)の全質量のうち40質量%以上75質量%未満であることが好ましく、40質量%以上70質量%未満であることがより好ましく、40質量%以上60質量%未満であることが特に好ましい。
前記樹脂分散剤(A)の主鎖を形成する原子と直接に結合していない芳香環が、顔料の分散安定性、吐出安定性、洗浄性、耐擦過性の向上の点で、樹脂分散剤(A)中15質量%以上27質量%以下であることが好ましく、15質量%以上25質量%以下がより好ましく、15質量%以上20質量%以下が特に好ましい。
上記範囲とすることにより、顔料の分散安定性、吐出安定性、洗浄性、耐擦過性を向上することができる。
本実施形態においては、前記疎水性構造単位(a)における前記芳香環を含む疎水性構造単位(a1)は、下記一般式(1)で表される構造で樹脂分散剤(A)に導入された形態が好ましい。
一般式(1)中、R1は水素原子、メチル基、またはハロゲン原子を表し、L1は(主鎖側)−COO−、−OCO−、−CONR2−、−O−、または置換もしくは無置換のフェニレン基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を表す。L2は単結合または、炭素数1〜30の2価の連結基を表し、2価の連結基である場合、その好ましい範囲は好ましくは炭素数1〜25の連結基であり、特に好ましくは炭素数1〜20の連結基である。ここで、前記置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基等、シアノ基等が挙げられるが、特に限定されない。Ar1は芳香環から誘導される1価の基を表す。
上記一般式(1)の中でも、R1が水素原子またはメチル基であり、L1が(主鎖側)−COO−であり、L2がアルキレンオキシ基および/またはアルキレン基を含む炭素数1〜25の2価の連結基である構造単位の組合せが好ましく、より好ましくは、R1が水素原子またはメチル基であり、L1が(主鎖側)−COO−であり、L2が(主鎖側)−(CH2−CH2−O)n−である(nは平均の繰り返し単位数をあらわし、n=1〜6である)構造単位の組合せである。
疎水性構造単位(a1)中に含まれる前記Ar1における芳香環としては、特に限定されないが、ベンゼン環、炭素数8以上の縮環型芳香環、芳香環が縮環したヘテロ環、または二個以上連結したベンゼン環が挙げられる。
前記炭素数8以上の縮環型芳香環とは、少なくとも二個以上のベンゼン環が縮環した芳香環、及び/又は、少なくとも一種以上の芳香環と該芳香環に縮環した脂環式炭化水素で環が構成される、炭素数8以上の芳香族化合物である。具体的な例としては、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アセナフテンなどが挙げられる。
前記芳香環が縮環したヘテロ環とは、ヘテロ原子を含まない芳香族化合物(好ましくはベンゼン環)と、ヘテロ原子を有する環状化合物とが少なくとも縮環した化合物である。ここで、ヘテロ原子を有する環状化合物は5員環または6員環であることが好ましい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子が好ましい。ヘテロ原子を有する環状化合物は複数のヘテロ原子を有していても良く、この場合、ヘテロ原子は互いに同じでも異なっていてもよい。芳香環が縮環したヘテロ環の具体例としては、フタルイミド、アクリドン、カルバゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
以下に、前記ベンゼン環、炭素数8以上の縮環型芳香環、芳香環が縮環したヘテロ環、または二個以上連結したベンゼン環から誘導される1価の基を含む疎水性構造単位(a1)を形成しうるモノマーの具体例を挙げるが、本発明の実施に際しては以下の具体例に制限されるものではない。
本実施形態において、前記樹脂分散剤(A)の主鎖を形成する原子と直接に結合していない芳香環を有する疎水性構造単位(a1)のなかでも、分散安定性の観点から、ベンジルメタアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、及びフェノキシエチルメタクリレートのいずれか1以上に由来する構造単位であることが好ましい(アクリル酸またはメタクリル酸の、炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する疎水性構造単位(a2))。
前記樹脂分散剤(A)に含まれるアクリル酸またはメタクリル酸の、炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する疎水性構造単位(a2)は、樹脂分散剤(A)中に少なくとも15質量%以上であることが必要であり、好ましくは20質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以上50質量%以下である。
これら(メタ)アクリレート類の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記アルキル基の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがさらに好ましい。
<親水性構造単位(b)>
本実施形態における樹脂分散剤(A)を構成する親水性構造単位(b)について説明する。
該親水性構造単位(b)は、前記樹脂(A)の全質量に対して、0質量%超15質量%以下含有され、2質量%以上15質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下が好ましく、8質量%以上12質量%以下がより好ましい。
前記樹脂(A)は、親水性構造単位(b)としてアクリル酸及び/またはメタクリル酸(b1)を少なくとも含む。
(親水性構造単位(b1))
前記親水性構造単位(b1)の含有量は、後述の構造単位(b2)の量または疎水性構造単位(a)の量か、あるいはその両方により変更する必要がある。
即ち、本実施形態における樹脂分散剤(A)は、疎水性構造単位(a)として80質量%を超える量を含み、かつ親水性構造単位(b)を15質量%以下とする量とすればよく、前記疎水性構造単位(a1)と(a2)、親水性構造単位(b1)と(b2)及び構造単位(c)により決定されるものである。
例えば、樹脂分散剤(A)が、疎水性構造単位(a1)、(a2)と親水性構造単位(b1)と構造単位(b2)のみから構成される場合において、アクリル酸及び/またはメタクリル酸(b1)の含有量は、「100−(疎水性構造単位(a1)・(a2)の質量%)−(構造単位(b2)の質量%)」で求めることができる。このとき、(b1)と(b2)の和は15質量%以下でなければならない。
また、樹脂分散剤(A)が疎水性構造単位(a1)、(a2)と、親水性構造単位(b1)と、構造単位(c)とからなるとき、親水性構造単位(b1)の含有量は、「100−(疎水性構造単位(a1)・(a2)の質量%)−(構造単位(c)の質量%)」で求めることができる。
また、樹脂分散剤(A)は疎水性構造単位(a1)、疎水性構造単位(a2)、親水性構造単位(b1)のみから構成されることも可能である。
親水性構造単位(b1)は、アクリル酸及び/またはメタクリル酸を重合することにより得ることができる。
なお、アクリル酸またはメタクリル酸は、単独で又は混合して用いることができる。
本実施形態における樹脂分散剤(A)の酸価は、顔料分散性、保存安定性の観点から、30mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以上、85mgKOH/g未満であることがより好ましく、50mgKOH/g以上、85mgKOH/gであることが特に好ましい。
なお、ここでいう酸価とは、樹脂分散剤(A)の1gを完全に中和するのに要するKOHの質量(mg)で定義され、JIS規格(JISK0070、1992)記載の方法により測定することができる。
(前記構造単位(b2))
前記構造単位(b2)は非イオン性の親水性基を含有して成ることが好ましい。また、構造単位(b2)は、これに対応するモノマーを重合することにより形成することができるが、ポリマーの重合後、ポリマー鎖に親水性官能基を導入してもよい。
前記構造単位(b2)を形成するモノマーは、重合体を形成しうる官能基と非イオン性の親水性の官能基とを有していれば特に制限はなく、公知の如何なるモノマー類をも用いることができるが、入手性、取り扱い性、汎用性の観点からビニルモノマー類が好ましい。
これらビニルモノマー類の例として、親水性の官能基を有する(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル類が挙げられる。
親水性の官能基としては、水酸基、アミノ基、(窒素原子が無置換の)アミド基及び、後述するようなポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のアルキレンオキシド重合体が挙げられる。
これらのうち、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、アミノプロピルアクリレート、アルキレンオキシド重合体を含有する(メタ)アクリレートが特に好ましい。
前記構造単位(b2)は、アルキレンオキシド重合体構造を有する親水性の構造単位を含むことが好ましい。
前記アルキレンオキシド重合体のアルキレンとしては、親水性の観点から炭素数1〜6が好ましく、炭素数2〜6がより好ましく、炭素数2〜4が特に好ましい。
また、前記アルキレンオキシド重合体の重合度としては、1〜120が好ましく、1〜60がより好ましく、1〜30が特に好ましい。
前記構造単位(b2)は、水酸基を含む親水性の構造単位であることも好ましい態様である。
前記構造単位(b2)中の水酸基数としては、特に限定されず、樹脂(A)の親水性、重合時の溶媒や他のモノマーとの相溶性の観点から、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
<構造単位(c)>
本実記形態における樹脂分散剤(A)は、前述の通り、前記疎水性構造単位(a1)、前記疎水性構造単位(a2)及び前記親水性構造単位(b)とは異なる構造を有する構造単位(c)(以下、単に「構造単位(c)」という。)を含有することもできる。
前記疎水性構造単位(a1)、疎水性構造単位(a2)及び親水性構造単位(b)とは異なる構造単位(c)とは、前記(a1)、(a2)又は(b)とは異なる構造を有する構造単位(c)を言い、該構造単位(c)は疎水性の構造単位であることが好ましい。
前記構造単位(c)は、疎水性の構造単位であるが、疎水性構造単位(a1)、疎水性構造単位(a2)とは異なる構造を有する構造単位である必要がある。
前記構造単位(c)は、前記樹脂分散剤(A)に全質量中35質量%以下とすることが好ましく、20質量%以下とすることがより好ましく、15質量%以下とすることが更に好ましい。
前記構造単位(c)はこれに対応するモノマーを重合することにより形成することができる。また、樹脂の重合後に、ポリマー鎖に疎水性官能基を導入してもよい。
前記構造単位(c)が疎水性の構造単位である場合のモノマーは、重合体を形成しうる官能基と疎水性の官能基とを有していれば特に制限はなく、公知の如何なるモノマー類をも用いることができる。
前記疎水性の構造単位を形成しうるモノマーとしては、入手性、取り扱い性、汎用性の観点から、ビニルモノマー類、((メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエステル類等)が好ましい。
(メタ)アクリルアミド類としては、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
スチレン類としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、n−ブチルスチレン、tert−ブチルスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、およびα−メチルスチレン、ビニルナフタレン等などが挙げられ、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、および安息香酸ビニルなどのビニルエステル類が挙げられ、中でも、ビニルアセテートが好ましい。
これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本実施形態における樹脂分散剤(A)は、各構造単位が不規則的に導入されたランダム共重合体であっても、規則的に導入されたブロック共重合体であっても良く、ブロック共重合体である場合の各構造単位は、如何なる導入順序で合成されたものであっても良く、同一の構成成分を2度以上用いてもよいが、ランダム共重合体であることが汎用性、製造性の点で好ましい。
さらに、本実施形態で用いる樹脂分散剤(A)の分子量範囲は、重量平均分子量(Mw)で、好ましくは3万〜15万であり、より好ましくは3万〜10万であり、さらに好ましくは3万〜8万である。
前記分子量を上記範囲とすることにより、分散剤としての立体反発効果が良好な傾向となり、また立体効果により顔料への吸着に時間がかからなくなる傾向の観点から好ましい。
また、本実施形態で用いる樹脂の分子量分布(重量平均分子量値/数平均分子量値で表される)は、1〜6であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
前記分子量分布を上記範囲とすることは、インクの分散安定性、吐出安定性の観点から好ましい。ここで数平均分子量及び、重量平均分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用い換算して表した分子量である。
本実施形態に用いられる樹脂分散剤(A)は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合により合成することができる。重合反応は回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行うことができる。
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、光または放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶剤の単独あるいは2種以上の混合物でも良いし、水との混合溶媒としても良い。
重合温度は生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、通常、0℃〜100℃程度であるが、50〜100℃の範囲で重合を行うことが好ましい。
反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は、1〜100kg/cm2、特に、1〜30kg/cm2程度が好ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。得られた樹脂は再沈殿などの精製を行っても良い。
本実施形態における樹脂分散剤(A)として好ましい具体例を以下に示すが、本発明の実施に際しては、以下に限定されるものではない。
<顔料(B)と樹脂分散剤(A)の比率>
顔料(B)と樹脂分散剤(A)の比率は、重量比で100:25〜100:140が好ましく、さらに好ましくは100:25〜100:50である。樹脂分散剤が100:25以上の場合は分散安定性と耐擦性が良化する傾向となる。樹脂分散剤が100:140以下の場合も、分散安定性が良化する傾向となる。
<顔料(B)>
本実施形態において、顔料(B)とは化学大辞典第3版1994年4月1日発行(編集 大木道則他)の518頁に記載のように、水、有機溶剤にほとんど不溶の有色物質(無機顔料では白色も含む)の総称であり、本発明の実施に際しては、有機顔料と無機顔料とを用いることができる。
また、本実施形態において、「樹脂分散剤(A)によって分散された顔料(B)」とは、樹脂分散剤(A)によって分散保持されている顔料をいい、水性液媒体(D)に樹脂分散剤(A)を用いて分散保持されている顔料として用いることが好ましい。水性液媒体(D)中には更に分散剤を含んでいても、含んでいなくともよい。
本実施形態において、樹脂分散剤(A)によって分散された顔料(B)としては、樹脂分散剤(A)によって分散保持されている顔料であれば、特に限定されないが、中でも、顔料分散の安定性、吐出安定性の観点から、転相法により作製されたマイクロカプセル化顔料であることが一層好ましい。
本実施形態に含有される顔料(B)として、マイクロカプセル化顔料を好ましい例として挙げることができる。マイクロカプセル化顔料とは、顔料が樹脂分散剤(A)で被覆された顔料である。
マイクロカプセル化顔料の樹脂は、前記樹脂分散剤(A)を用いる必要があるが、更に、水に対して自己分散能又は溶解能を有し、かつアニオン性基(酸性)を有する高分子の化合物を樹脂分散剤(A)以外の樹脂に用いることが好ましい。
(マイクロカプセル化顔料の製造)
マイクロカプセル化顔料は、樹脂分散剤(A)等の前記成分を用いて、従来の物理的、化学的方法によって製造することができる。例えば、特開平9−151342号、特開平10−140065号、特開平11−209672号、特開平11−172180号、特開平10−25440号、または特開平11−43636号に開示されている方法によって製造することができる。マイクロカプセル化顔料の製造方法について以下に概説する。
マイクロカプセル化顔料の製造方法としては、特開平9−151342号及び特開平10−140065号記載の転相法と酸析法等を用いることができ、中でも、転相法が分散安定性の点で好ましい。
a)転相法
本実施形態において、転相法とは、基本的には、自己分散能または溶解能を有する樹脂と顔料との混合溶融物を水に分散させる、自己分散化(転相乳化)方法をいう。また、この混合溶融物には、前記した硬化剤または高分子化合物を含んでなるものであってもよい。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、また溶解して混合した状態、またはこれら両者の状態のいずれの状態をも含むものをいう。「転相法」のより具体的な製造方法は、特開平10−140065号に開示されているものと同様であってよい。
b)酸析法
本実施形態において、酸析法とは、樹脂と顔料とからなる含水ケーキを用意し、その含水ケーキ中の、樹脂が含有してなるアニオン性基の一部又は全部を、塩基性化合物を用いて中和することによって、マイクロカプセル化顔料を製造する方法をいう。
酸析法は具体的には、(1)樹脂と顔料とをアルカリ性水性媒体中に分散し、又、必要に応じて加熱処理を行なって樹脂のゲル化を図る工程と、(2)pHを中性または酸性にすることによって樹脂を疎水化して、樹脂を顔料に強く固着する工程と、(3)必要に応じて、濾過および水洗を行なって、含水ケーキを得る工程と、(4)含水ケーキを中の、樹脂が含有してなるアニオン性基の一部または全部を、塩基性化合物を用いて中和し、その後、水性媒体中に再分散する工程と、(5)必要に応じて加熱処理を行ない樹脂のゲル化を図る工程と、を含んでなるものである。
上記の、転相法及び酸析法のより具体的な製造方法は、特開平9−151342号、特開平10−140065号に開示されているものと同様であってよい。特開平11−209672号公報及び特開平11−172180号公報に記載の着色剤の製造方法も本発明の実施において用いることができる。
本発明の実施形態において好ましい製法の概要は、基本的には次の製造工程からなる。
(1)アニオン性基を有する樹脂またはそれを有機溶剤に溶解した溶液と塩基性化合物水溶液とを混合して中和することと、(2)この混合液に顔料を混合して懸濁液とした後に、分散機等で顔料を分散して顔料分散液を得ることと、(3)必要に応じて、溶剤を蒸留して除くことによって、顔料を、アニオン性基を有する樹脂で被覆した水性分散体を得ることとを含んでなるものである。
本発明の実施形態において、前記における混練、分散処理は、たとえばボールミル、ロールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、高速攪拌型分散機、超音波ホモジナイザ−などを用いて行うことができる。
<顔料B>
本発明の実施形態において使用可能な顔料としては、イエローインクの顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、14C、16、17、24、34、35、37、42、53、55、65、73、74、75、81、83、93、95、97、98、100、101、104、108、109、110、114、117、120、128、129、138、150、151、153、154、155、180等が挙げられる。
また、マゼンタインクの顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、48(Ca)、48(Mn)、48:2、48:3、48:4、49、49:1、50、51、52、52:2、53:1、53、55、57(Ca)、57:1、60、60:1、63:1、63:2、64、64:1、81、83、87、88、89、90、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、163、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、209、219等が挙げられ、特に、C.I.ピグメントレッド122が好ましい。
また、シアンインクの顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17:1、22、25、56、60、C.I.バットブルー4、60、63等が挙げられ、特に、C.I.ピグメントブルー15:3が好ましい。
その他のカラーインクの顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19(キナクリドンレッド)、23、38等も挙げられる。その他顔料表面を樹脂等で処理したグラフトカーボン等の加工顔料等も使用できる。
黒色系のものとしては、例えばカーボンブラックが挙げられる。かかるカーボンブラックの具体例としては、三菱化学製のNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B 等が、コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、Raven700等が、キャボット社製のRegal 400R、Regal330R、Regal660R、Mogul L、Monarch700、Monarch800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等が、デグッサ社製のColor Black
FW1、ColorBlack FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、ColorBlack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U 、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black4A、Special Black4等が挙げられる。
上記の顔料は、単独種で使用してもよく、また上記した各群内もしくは各群間より複数種選択してこれらを組み合わせて使用してもよい。
本実施形態における水性インク中の顔料(B)の含有量としては、水性インクの分散安定性、濃度の観点から、1〜10質量%が好ましく、2〜8質量%がより好ましく、2〜6質量%が特に好ましい。
<自己分散性ポリマー微粒子>
本実施形態に用いられる水性インクは、自己分散性ポリマー微粒子の少なくとも1種を含有する。本実施形態における自己分散性ポリマー微粒子とは、他の界面活性剤の不存在下に、pr樹脂自身が有する官能基(特に、酸性基またはその塩)によって、水性媒体中で分散状態となりうる水不溶性ポリマーであって、遊離の乳化剤を含有しない水不溶性ポリマーの微粒子を意味する。
ここで分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルジョン)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含むものである。
本実施形態における水不溶性ポリマーにおいては、水溶性インクに含有されたときのインク凝集速度とインク定着性の観点から、水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態となりうる水不溶性ポリマーであることが好ましい。
本実施形態における自己分散性ポリマー微粒子の分散状態とは、水不溶性ポリマー30gを70gの有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン)に溶解した溶液、該水不溶性ポリマーの塩生成基を100%中和できる中和剤(塩生成基がアニオン性であれば水酸化ナトリウム、カチオン性であれば酢酸)、及び水200gを混合、攪拌(装置:攪拌羽根付き攪拌装置、回転数200rpm、30分間、25℃)した後、該混合液から該有機溶媒を除去した後でも、分散状態が25℃で少なくとも1週間安定に存在することを目視で確認することができる状態をいう。
また、水不溶性ポリマーとは、樹脂を105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が10g以下である樹脂をいい、その溶解量が好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である。前記溶解量は、水不溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて、水酸化ナトリウム又は酢酸で100%中和した時の溶解量である。
前記水性媒体は、水を含んで構成され、必要に応じて親水性有機溶媒を含んでいてもよい。本発明の実施形態においては、水と水に対して0.2質量%以下の親水性有機溶媒とから構成されることが好ましく、水から構成されることがより好ましい。
前記水不溶性ポリマーの主鎖骨格としては、特に制限は無く、例えば、ビニルポリマー、縮合系ポリマー(エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース、ポリエーテル、ポリウレア、ポリイミド、ポリカーボネート等)を用いることができる。その中で、特にビニルポリマーが好ましい。
ビニルポリマー及びビニルポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−181549号公報及び特開2002−88294号公報に記載されているものを挙げることができる。また、解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する連鎖移動剤や重合開始剤、イニファーターを用いたビニルモノマーのラジカル重合や、開始剤或いは停止剤のどちらかに解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する化合物を用いたイオン重合によって高分子鎖の末端に解離性基を導入したビニルポリマーも使用できる。
また、縮合系ポリマーと縮合系ポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−247787号公報に記載されているものを挙げることができる。
本発明の実施形態における自己分散性ポリマー微粒子は、自己分散性の観点から、親水性の構成単位と芳香族基含有モノマーに由来する構成単位とを含む水不溶性ポリマーを含むことが好ましい。
前記親水性の構成単位は、親水性基含有モノマーに由来するものであれば特に制限はなく、1種の親水性基含有モノマーに由来するものであっても、2種以上の親水性基含有モノマーに由来するものであってもよい。前記親水性基としては、特に制限はなく、解離性基であってもノニオン性親水性基であってもよい。
本実施形態において前記親水性基は、自己分散促進の観点、形成された乳化又は分散状態の安定性の観点から、解離性基であることが好ましく、アニオン性の解離基であることがより好ましい。前記解離性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、インク組成物を構成した場合の定着性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
本実施形態における親水性基含有モノマーは、自己分散性と凝集性の観点から、解離性基含有モノマーであることが好ましく、解離性基とエチレン性不飽和結合とを有する解離性基含有モノマーであることが好ましい。
解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとして具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとして具体的には、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとして具体的には、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記解離性基含有モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
本実施形態における自己分散性ポリマー微粒子は、自己分散性と反応液と接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有し、酸価(mgKOH/g)が25〜100である第1のポリマーを含むことが好ましい。更に前記酸価は、自己分散性と反応液と接触したときの凝集速度の観点から、25〜80であることがより好ましく、30〜65であることが特に好ましい。酸価が25以上であることで自己分散性の安定性が良好になる。また酸価が100以下であることで、凝集性が向上する。
前記芳香族基含有モノマーは、芳香族基と重合性基とを含む化合物であれば特に制限はない。前記芳香族基は芳香族炭化水素に由来する基であっても、芳香族複素環に由来する基であってもよい。本発明の実施形態においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、芳香族炭化水素に由来する芳香族基であることが好ましい。
また前記重合性基は、縮重合性の重合性基であっても、付加重合性の重合性基であってもよい。本実施形態においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、付加重合性の重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を含む基であることがより好ましい。
本実施形態における芳香族基含有モノマーは、芳香族炭化水素に由来する芳香族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーであることがより好ましい。本実施形態において前記芳香族基含有モノマーは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記芳香族基含有モノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー等が挙げられる。中でも、ポリマー鎖の親水性と疎水性のバランスとインク定着性の観点から、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びフェニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートであることがより好ましく、フェノキシエチルアクリレートであることが特に好ましい。
尚、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
本実施形態における自己分散性ポリマー微粒子は、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含み、その含有量が10質量%〜95質量%であることが好ましい。芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量が10質量%〜95質量%であることで、自己乳化又は分散状態の安定性が向上し、更にインク粘度の上昇を抑制することができる。
本発明の実施においては、自己分散状態の安定性、芳香環同士の疎水性相互作用による水性媒体中での粒子形状の安定化、粒子の適度な疎水化による水溶性成分量の低下の観点から、15質量%〜90質量%であることがより好ましく、15質量%〜80質量%であることがより好ましく、25質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
本実施形態における自己分散性ポリマー微粒子は、例えば、芳香族基含有モノマーからなる構成単位と、解離性基含有モノマーからなる構成単位とから構成することができるが、必要に応じて、その他の構成単位を更に含んで構成することができる。
前記その他の構成単位を形成するモノマーとしては、前記芳香族基含有モノマーと解離性基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限はない。中でも、ポリマー骨格の柔軟性やガラス転移温度(Tg)制御の容易さの観点から、アルキル基含有モノマーであることが好ましい。
前記アルキル基含有モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−,イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−、イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
本実施形態における自己分散性ポリマー微粒子を構成する水不溶性ポリマーの分子量範囲は、重量平均分子量で、3000〜20万であることが好ましく、5000〜15万であることがより好ましく、10000〜10万であることが更に好ましい。重量平均分子量を3000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。尚、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)によって測定することできる。
本実施形態における自己分散性ポリマー微粒子を構成する水不溶性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーを共重合比率として15〜90質量%とカルボキシル基含有モノマーとアルキル基含有モノマーとを含み、酸価が25〜100であって、重量平均分子量が3000〜20万であることが好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーを共重合比率として15〜80質量%とカルボキシル基含有モノマーとアルキル基含有モノマーとを含み、酸価が25〜95であって、重量平均分子量が5000〜15万であることがより好ましい。
以下に、自己分散性ポリマー微粒子を構成する水不溶性ポリマーの具体例として、例示化合物B−01〜B−19を挙げるが、本発明の実施に際しては、これらに限定されるものではない。尚、括弧内は共重合成分の質量比を表す。
B−01:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(50/45/5)
B−02:フェノキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(30/35/29/6)
B−03:フェノキシエチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(50/44/6)
B−04:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(30/55/10/5)
B−05:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(35/59/6)
B−06:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(10/50/35/5)
B−07:ベンジルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(55/40/5)
B−08:フェノキシエチルメタクリレート/ベンジルアクリレート/メタクリル酸 共重合体(45/47/8)
B−09:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/ブチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(5/48/40/7)
B−10:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(35/30/30/5)
B−11:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸 共重合体(12/50/30/8)
B−12:ベンジルアクリレート/イソブチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(93/2/5)
B−13:スチレン/フェノキシエチルメタクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(50/5/20/25)
B−14:スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(62/35/3)
B−15:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/51/4)
B−16:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/49/6)
B−17:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/48/7)
B−18:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/47/8)
B−19:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/45/10)
本実施形態における自己分散性ポリマー微粒子を構成する水不溶性ポリマーの製造方法としては特に制限はなく、例えば、重合性界面活性剤の存在下に、乳化重合を行い、界面活性剤と水不溶性ポリマーとを共有結合させる方法、上記親水性基含有モノマーと芳香族基含有モノマーとを含むモノマー混合物を溶液重合法、塊状重合法等の公知の重合法により、共重合させる方法を挙げることができる。前記重合法の中でも、凝集速度及び水性インクとしたときの打滴安定性の観点から、溶液重合法が好ましく、有機溶媒を用いた溶液重合法がより好ましい。
本実施形態における自己分散性ポリマー微粒子は、凝集速度の観点から、有機溶媒中で合成された第1のポリマーを含み、前記第1のポリマーはカルボキシル基を有し、酸価が20〜100であって、前記第1のポリマーのカルボキシル基の少なくとも一部は中和され、水を連続相とする樹脂分散物として調製されたものであることが好ましい。
すなわち、本実施形態における自己分散性ポリマー微粒子の製造方法は、有機溶媒中で前記第1のポリマーを合成する工程と、前記第1の樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部が中和された水性分散物とする分散工程とを含むことが好ましい。
前記分散工程は、次の工程(1)及び工程(2)を含むことが好ましい。
工程(1):第1のポリマー(水不溶性ポリマー)、有機溶媒、中和剤、及び水性媒体を含有する混合物を、攪拌する工程。
工程(2):前記混合物から、前記有機溶媒を除去する工程。
前記工程(1)は、まず前記第1のポリマー(水不溶性ポリマー)を有機溶媒に溶解させ、次に中和剤と水性媒体を徐々に加えて混合、攪拌して分散体を得る処理であることが好ましい。このように、有機溶媒中に溶解した水不溶性ポリマー溶液中に中和剤と水性媒体を添加することで、強いせん断力を必要とせずに、より保存安定性の高い粒径の自己分散ポリマー粒子を得ることができる。該混合物の攪拌方法に特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。
有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましく挙げられる。アルコール系溶媒としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒とイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましい。また、油系から水系への転相時への極性変化を穏和にする目的で、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンを併用することも好ましい。該溶剤を併用することで、凝集沈降や粒子同士の融着が無く、分散安定性の高い微粒径の自己分散性ポリマー微粒子を得ることができる。
中和剤は、解離性基の一部又は全部が中和され、自己分散ポリマーが水中で安定した乳化又は分散状態を形成するために用いられる。本実施形態の自己分散ポリマーが解離性基としてアニオン性の解離基(例えば、カルボキシル基)を有する場合、用いられる中和剤としては有機アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物等の塩基性化合物が挙げられる。有機アミン化合物の例としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチル−エタノールアミン、N,N−ジエチル−エタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアニン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。中でも、本実施形態の自己分散性ポリマー微粒子の水中への分散安定化の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
これら塩基性化合物は、解離性基100モル%に対して、5〜120モル%使用することが好ましく、10〜110モル%であることがより好ましく、15〜100モル%であることが更に好ましい。15モル%以上とすることで、水中での粒子の分散を安定化する効果が発現し、100モル%以下とすることで、水溶性成分を低下させる効果がある。
前記工程(2)においては、前記工程(1)で得られた分散体から、減圧蒸留等の常法により有機溶剤を留去して水系へと転相することで自己分散ポリマー粒子の水性分散物を得ることができる。得られた水性分散物中の有機溶媒は実質的に除去されており、有機溶媒の量は、好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
本実施形態における自己分散性ポリマー微粒子の平均粒径は、10〜400nmの範囲であることが好ましく、10〜200nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。10nm以上の平均粒径であることで製造適性が向上する。また、400nm以下の平均粒径とすることで保存安定性が向上する。
また、自己分散性ポリマー微粒子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、水不溶性粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
尚、自己分散性ポリマー微粒子の平均粒径及び粒径分布は、例えば、光散乱法を用いて測定することができる。
本実施形態の自己分散性ポリマー微粒子は、例えば、水性インク組成物に好適に含有させることができ、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
<水性液媒体(D)>
インクジェット記録方式の水性インクにおいて、水性液媒体(D)とは、水及び水溶性有機溶媒の混合物を表す。水溶性有機溶媒(以下、「水溶性有機溶剤」ともいう。)は乾燥防止剤、湿潤剤あるいは浸透促進剤の目的で使用される。
ノズルのインク噴射口において該インクジェット用インクが乾燥することによる目詰まりを防止する目的で乾燥防止剤が用いられ、乾燥防止剤や湿潤剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。また、インクジェット用インクを記録媒体(紙等)により良く浸透させる目的で浸透促進剤として、水溶性有機溶剤が好適に使用される。
水溶性有機溶剤の例として、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール等のアルカンジオール(多価アルコール類);ヴルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の糖類;糖アルコール類;ピアルロン酸類;尿素類等のいわゆる固体湿潤剤;エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルポキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
乾燥防止剤や湿潤剤の目的としては,多価アルコール類が有用であり、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
浸透剤の目的としては、ポリオール化合物が好ましく、脂肪族ジオールとしては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが好ましい例として挙げることができる。
水溶性有機溶媒は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても構わない。水溶性有機溶媒の含有量としては、インク中、1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。
水の添加量は、インク中、特に制限は無いが、好ましくは、10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。更に好ましくは、50質量%以上70質量%以下である。
本実施形態における水性液媒体(D)は、インク中、分散安定性、吐出安定性の観点から、好ましくは 60質量%以上95質量%以下、より好ましくは70質量%以上95質量%以下である。
<界面活性剤>
本実施形態における水性インクには、界面活性剤(以下、表面張力調整剤ともいう。)を添加することが好ましい。界面活性剤としてはノニオン、カチオン、アニオン、ベタイン界面活性剤が挙げられる。表面張力の調整剤の添加量は、インクジェットで良好に打滴するために、本実施形態における水性インクの表面張力を20〜60mN/mに調整する量が好ましく、より好ましくは20〜45mN/m、更に好ましくは25〜40mN/mに調整できる量である。
界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれも使用することができる。更には、上記高分子物質(高分子分散剤)を界面活性剤としても使用することもできる。
アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルポコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテ硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルポコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、t−オクチルフェノキシエトキシポリエトキシエチル硫酸ナトリウム塩等が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、t−オクチルフェノキシエチルポリエトキシエタノール、ノニルフェノキシエチルポリエトキシエタノール等が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられ、具体的には、例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド等が挙げられる。
本発明の実施形態におけるインクジェット記録用水性インクに添加する界面活性剤の量は、特に限定されるものではないが、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは1〜3質量%である。
<その他成分>
本発明の実施形態に使用される水性インクはその他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防黴剤、pH調整剤、防錆剤、酸化防止剤、乳化安定剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。
防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、ソルビン酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。これらはインク中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
pH調整剤としては、調合される記録用インクに悪影響を及ぼさずにpHを所望の値に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3プロパンジオールなど)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アンモニウム水酸化物(例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物)、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、りん系酸化防止剤などが挙げられる。
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
(乾燥部)
乾燥部16は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる工程であり、図1に示すように、乾燥ドラム76と、この乾燥ドラム76の外周面に対向する位置に配置された第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82で構成される。第1のIRヒータ78は、温風噴出しノズル80に対して、乾燥ドラム76の回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側に設けられ、第2のIRヒータ82は温風噴出しノズル80の下流側に設けられる。
乾燥ドラム76は、その外周面に記録媒体22を保持して回転搬送させるドラムであり、後述のモータドライバ108(図13参照)によってその回転が駆動制御される。また、乾燥ドラム76は、その外周面に爪形状の保持手段(図4の保持手段73と同様の手段)を備え、この保持手段によって記録媒体22の先端を保持できるようになっている。記録媒体22は、保持手段によって先端が保持された状態で、乾燥ドラム76を回転させることによって回転搬送される。その際、記録媒体22の記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82による乾燥処理が行われる。
温風噴出しノズル80は、所定の温度(たとえば50℃〜70℃)に制御された温風を一定の風量(12m3/分)で記録媒体22に向けて吹き付けるように構成され、第1のIRヒータ78と第2のIRヒータ82はそれぞれ所定の温度(たとえば180℃)に制御される。これらの第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82によって、乾燥ドラム76に保持された記録媒体22の記録面のインク溶媒に含まれる水分が蒸発され、乾燥処理が行われる。その際、乾燥部16の乾燥ドラム76は、描画部14の描画ドラム70に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kにおいて、熱乾燥によるヘッドメニスカス部の乾燥によるインクの不吐出を低減することができる。また、乾燥部16の温度設定に自由度があり、最適な乾燥温度を設定することができる。
なお、蒸発した水分は不図示の排出手段によりエアとともに機外に排出するとよい。また、回収されたエアを冷却器(ラジエータ)などで冷却して、液体として回収してもよい。
また、上記の乾燥ドラム76は、その外周面を所定の温度(たとえば60℃以下)に制御するとよい。
更に、乾燥ドラム76は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体22を乾燥ドラム76の周面に密着保持することができる。
(定着部)
図6に示すように、定着部18は、定着ドラム84、第1定着ローラ86、第2定着ローラ88及びインライン検出部90で構成される。第1定着ローラ86、第2定着ローラ88及びインライン検出部90は、定着ドラム84の周面に対向する位置に配置され、定着ドラム84の回転方向(図6において反時計回り方向)の上流側から順に配置される。
定着ドラム84は、その外周面に記録媒体22を保持して回転搬送させるドラムであり、後述のモータドライバ108(図13参照)によってその回転が駆動制御される。また、定着ドラム84は、その外周面に爪形状の保持手段(図4の保持手段73と同様の手段)を備え、この保持手段によって記録媒体22の先端を保持できるようになっている。記録媒体22は、保持手段によって先端が保持された状態で定着ドラム84を回転させることによって、回転搬送される。その際、記録媒体22の記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、第1定着ローラ86及び第2定着ローラ88による定着処理と、インライン検出部90による検査が行われる。
第1定着ローラ86及び第2定着ローラ88は、記録媒体22に形成された画像を定着させるためのローラ部材であり、記録媒体22を加圧・加熱するように構成される。即ち、第1定着ローラ86及び第2定着ローラ88はそれぞれ、定着ドラム84に対して圧接するように配置されており、定着ドラム84との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体22は、第1定着ローラ86と定着ドラム84との間、及び、第2定着ローラ88と定着ドラム84との間に挟まれ、所定のニップ圧(たとえば1MPa)でニップされ、定着処理が行われる。なお、第1定着ローラ86、第2定着ローラ88と、定着ドラム84との一方の表面に弾性層を形成し、記録媒体22に対して均一なニップ幅を持つ構成とするとよい。
また、第1定着ローラ86及び第2定着ローラ88は、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成され、所定の温度(たとえば60〜80℃)に制御される。この加熱ローラで記録媒体22を加熱することによって、インクに含まれるラテックスのTg温度(ガラス転移点温度)以上の熱エネルギーが付与され、ラテックス粒子が溶融される。これにより、記録媒体22の凹凸に押し込み定着が行われるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、光沢性が得られる。
なお、上記の実施形態では、加熱と加圧の両方を行う例を示したが、一方のみを行うようにしてもよい。また、第1定着ローラ86、第2定着ローラ88は、画像層厚みやラテックス粒子のTg特性により、複数段設けた構成でもよい。更に、定着ドラム84の表面を所定の温度(たとえば60℃)に制御するようにしてもよい。
一方、インライン検出部90は、記録媒体22に定着された画像について、チェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
インライン検出部90は、描画部14の印字結果(各インクジェットヘッド72C、72M、72Y、72Kの打滴結果)を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出異常や、打滴画像のムラ(濃度ムラ)をチェックする手段として機能する。
例えば、記録媒体22の画像記録領域又は非画像部にテストパターンを形成し、インライン検出部90によってテストパターンを読み取り、その読取結果に基づいて、濃度むらの検出、各ノズルについて吐出異常の有無の判定など、インライン検出が行われるように構成されている。
本例に適用されるインライン検出部90は、複数の検出画素(光電変換素子)が記録媒体22の幅方向に沿って一列又は複数列に並べられたラインCCD(又は、複数の検出画素が2次元状に配置されたエリアセンサ)と、ラインCCD(又は、エリアセンサ)によって記録媒体22の幅方向を一括して読取れるように配置されたレンズと、を含む構成である。なお、記録可能幅を一括読取可能な検査視野を持つラインセンサに代えて、これよりも狭い読取範囲のセンサを用い、読取位置を移動(走査)しながら読み取る態様も可能である。
上記の如く構成された定着部18によれば、乾燥部16で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子が第1定着ローラ86、第2定着ローラ88によって加圧・加熱されて溶融されるので、記録媒体22に固定定着させることができる。また、定着部18によれば、定着ドラム84が他のドラムに対して構造上分離されているので、定着部18の温度設定を、描画部14や乾燥部16と分離して自由に設定することができる。
なお、上記の定着ドラム84は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体22を定着ドラム84の周面に密着保持することができる。
(排出部)
図1に示すように、定着部18に続いて排出部20が設けられている。排出部20は、排出トレイ92を備えており、この排出トレイ92と定着部18の定着ドラム84との間に、これらに対接するように渡し胴94、搬送ベルト96、張架ローラ98が設けられている。記録媒体22は、渡し胴94により搬送ベルト96に送られ、排出トレイ92に排出される。
(インクヘッドの構造)
次に、各インクヘッドの構造について説明する。色別のインクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号500によってインクヘッドを示すものとする。
図7(a)はインクヘッド500の構造例を示す平面透視図であり、図7(b) はその一部の拡大図である。記録媒体22上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、インクヘッド500におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のインクヘッド500は、図7(a)、(b) に示したように、インク吐出口であるノズル502と、各ノズル502に対応する圧力室504等からなる複数のインク室ユニット(記録素子単位としての液滴吐出素子)508を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(記録媒体22の搬送方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録媒体22の搬送方向(図7中矢印S)と略直交する方向(図7中矢印M)に記録媒体22の画像形成領域の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は図示の例に限定されない。例えば、図7(a) の構成に代えて、図8に示すように、複数のノズル502が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール500’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで長尺化することにより、全体として記録媒体22の画像形成領域の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル502に対応して設けられている圧力室504は、その平面形状が概略正方形となっており(図7(a)、(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル502への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)506が設けられている。なお、圧力室504の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図9は、インクヘッド500における記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル502に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図7(a) 中の9−9線に沿う断面図)である。
図9に示したように、各圧力室504は供給口506を介して共通流路510と連通されている。共通流路510はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路510を介して各圧力室504に供給される。
圧力室504の一部の面(図9において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)512には個別電極514を備えたアクチュエータ516が接合されている。個別電極514と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ516が変形して圧力室504の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル502からインクが吐出される。なお、アクチュエータ516には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ516の変位が元に戻る際に、共通流路510から供給口506を通って新しいインクが圧力室504に再充填される。
入力画像からデジタルハーフトーニング処理によって生成されるドットデータに応じて各ノズル502に対応したアクチュエータ516の駆動を制御することにより、ノズル502からインク滴を吐出させることができる。記録媒体22を一定の速度で副走査方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル502のインク吐出タイミングを制御することによって、記録媒体22上に所望の画像を記録することができる。
上述した構造を有するインク室ユニット508を図10に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット508を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影(正射影)されたノズルのピッチPNはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル502が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影される実質的なノズル列の高密度化を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、記録媒体22の搬送方向と直交する方向に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図10に示すようなマトリクス状に配置されたノズル502を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル502-11 、502-12 、502-13 、502-14、502-15 、502-16 を1つのブロックとし(他にはノズル502-21 、…、502-26 を1つのブロック、ノズル502-31 、…、502-36 を1つのブロック、…として)、記録媒体22の搬送速度に応じてノズル502-11 、502-12、…、502-16 を順次駆動することで記録媒体22の搬送方向と直交する方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと記録媒体22とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。即ち、本実施形態では、記録媒体22の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。
また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ516の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
(インク供給系の構成)
図11はインクジェット記録装置1におけるインク供給系の構成を示した概要図である。ここでは、インク供給系について説明するが、処理液をインクジェットヘッドと同様の吐出ヘッドによって打滴する場合には図11と同様な処理液供給系を設けてもよい。
インクタンク560はヘッド500にインクを供給する基タンクである。インクタンク560の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
図11に示したように、インクタンク560とヘッド500の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ562が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下とすることが好ましい。図11には示さないが、ヘッド500の近傍又はヘッド500と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置1には、ノズル502の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ564と、ノズル面500Aの清掃手段としてのクリーニングワイパ566とが設けられている。これらキャップ564及びクリーニングワイパ566を含むメンテナンスユニット(回復手段)は、不図示の移動機構によってヘッド500に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド500下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ564は、図示せぬ昇降機構によってヘッド500に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ564を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド500に密着させることにより、ノズル面500Aをキャップ564で覆う。
クリーニングワイパ566は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬワイパ移動機構によりヘッド500のノズル面500A(ノズルプレート表面)に摺動可能である。ノズルプレート表面にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングワイパ566をノズルプレートに摺動させることでノズル面を拭き取る。
印字中又は待機中において、特定のノズルの使用頻度が低くなり、ノズル近傍のインク粘度が上昇した場合、その劣化インクを排出すべくキャップ564(インク受けとして兼用)に向かって予備吐出(パージ)が行われる。
ヘッド500は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用のアクチュエータ516が動作してもノズル502からインクを吐出できなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(アクチュエータ516の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、アクチュエータ516を動作させ、粘度上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。
また、ノズル面500Aの清掃手段として設けられているクリーニングワイパ566等のワイパによってノズルプレート表面の汚れを清掃した後に、このワイパ摺擦動作によってノズル502内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。
その一方で、ノズル502や圧力室504に気泡が混入したり、ノズル502内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなる。このような場合、ヘッド500のノズル面500Aに吸引手段たるキャップ564を当接させて、吸引ポンプ567で圧力室504内のインク(気泡が混入したインク又は増粘インク)を吸引する。かかる吸引動作によって吸引除去されたインクは回収タンク568へ送られる。回収タンク568に集められたインクは、再利用してもよいし、再利用不能な場合は廃棄してもよい。 上記の吸引動作は、圧力室504内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きいため、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出による回復を行うことが好ましい。なお、上記の吸引動作は、ヘッド500へのインク初期装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも行われる。また、予備吐出や吸引動作などヘッド500のメンテナンスは、ヘッド500を描画ドラム70の直上の画像形成位置(印字位置)から所定のメンテナンス位置(例えば、描画ドラム70軸方向のドラム外の位置)へ退避させた状態で実行するように構成されている。
<ヘッド交換時期の判定方法の例1>
通常のメンテナンスでは復帰しないノズル抜け又は吐出曲がりの発生数をインライン検出部90にて検出し、これを時間軸に対してトレースしていく。図12にその例を示す。横軸は時間、縦軸は通常のメンテナンスで復帰しないノズル抜けや吐出曲がりの発生数を示す。
通常のメンテナンスは、クリーニングワイパ566等によるノズル面の拭き取り(ワイピング)、パージ(予備吐出、空打ち)、ノズル吸引の少なくとも1つの動作を含む吐出性能の回復動作であり、好ましくは、これらの動作が適宜組み合わせされ、必要に応じて複数回の動作が行われる。この通常のメンテナンス動作は、装置のプログラムに基づく動作シーケンスやオペレータの指示入力に応動して自動的に実施されるものであり、一般的には、装置立ち上げ時、インクタンクの交換時、新たな印刷ジョブを開始するとき、一定枚数を印刷したとき、一定時間の非印刷状態が続いたときなど、適宜のタイミングで実施される。
これに対して、ヘッド交換や集中メンテナンスの作業は、オペレータやサービスマンが装置の外装パネル(筐体)等を開け、必要に応じて部品の取り外しや分解、洗浄、交換等の個別的な対処作業を行い、吐出性能の回復を図るものである。
ヘッドの交換或いは集中メンテナンスの作業中は、長時間印刷不能となり、当該作業後にはヘッドの吐出性能を初期の状態(装置購入時と概ね等価な状態)に復帰させることができる点で本質的に同等の作業である。ここでは、説明の便宜上、「ヘッド交換」を例に述べるが、「ヘッド交換」に代えて、集中メンテナンスを行うことも同等である。
図12に示すように、初期の状態(装置購入時、或いはヘッド交換時)からの経過時間を横軸、縦軸に通常のメンテナンス実施後に検出される吐出異常の発生数をプロットしたとき、発生数が加速しだしたところ(グラフの変曲点)をヘッドの交換点とする。
通常のメンテナンス動作後に、全ノズルについて、個々のノズルでラインパターンを記録するテストパターンを描画し、これをインライン検出部90により読み取ることで、不吐出、並びに、異常な吐出曲がり(着弾位置のずれが所定の許容値を超えるもの)の発生数をカウントし、その値を測定日時(経過時間)とともに記憶手段(例えば、装置内の不揮発性メモリなど)に蓄積することにより、図12のようなグラフが得られる。
図示のように、時間の経過ととともに、通常のメンテナンスでは回復しない不良ノズルの数が増加していく傾向にあり、ある時点(図12においてAで示す変曲点)で吐出異常の発生数が急激に増加する。A点に至るまでは、概ね一定の傾きで線形に増加しており、A点後は傾きが急に大きくなる。このような急激な増加傾向を察知して、ヘッド交換を促すものとする。
吐出異常の発生数をトレースし、規定値を超える大きな傾きが検出されたときに、ヘッド交換を促す警告を出力する。或いはまた、かかる警告に代えて、又はこれと併せて、自動的に所定の強制メンテナンスモードに移行するように制御してもよい。
ここでいう強制メンテナンスモードは、通常のメンテナンス動作よりも一層強力な回復処理・回復動作を行うものとしてプログラムされているものである。
<ヘッド交換時期の判定方法の例2>
また、別の方法として、以下の方法を適用できる。
ここでは、ノズル抜け(不吐出)又は異常な吐出曲がりを包括して「吐出異常」という用語で表すものとする。複数のノズルを有するヘッドにおいてヘッド交換(初期性能回復)後、1個の吐出異常が発生する時間をtとする。ヘッドの全ノズル数(ノズル総数)をaとすると、x時間後の吐出異常発生量nは確率的にn=x/tと表すことができる。
即ち、x時間後にはa個中x/t個のノズルに吐出異常が発生することが見込まれる。一方、吐出異常による濃度ムラを近傍ノズルの打滴により補正するムラ補正処理の仕様として、例えば、隣り合う5ノズル中の1ノズルに異常が発生したところを補正機能の働く限度として設計されおり、それ以上多くのノズルに異常が発生する場合には、当該補正機能で対応できない。このような自動補正機能を搭載した装置の場合、隣り合う4ノズル内で同時に複数のノズルが吐出異常になるとムラ補正が困難になる。
既に1個又は複数個の吐出異常が発生し、次の吐出異常が発生する点(ノズル位置)がそれまでの吐出異常点から4ノズル分内に入る確率は、8n/(a−n)であり、この確率がb%になる個数の吐出異常が発生した時点、即ち、8n/(a−n)=b/100となった時点でヘッド交換の時期と判断する。
1個の吐出異常が発生する時間「t」は、使用方法、使用環境によって変わってくるが、この発生する時間は、それまでのデータを蓄積し、吐出抜け、吐出曲がりが発生するごとに再計算をかけることが好ましい。つまり、吐出異常の発生数をカウントする都度、その発生数と経過時間のデータを蓄積し、「t」の値を再計算することにより、より妥当な値に修正することが好ましい。更に、後述の遠隔監視システム(図22)によって、各装置のデータを収集し、機種毎に不良発生時間tを計算してその結果を提供する態様も好ましい。
また、時間に応じて吐出異常が発生する確率が加速する場合には、加速度も盛り込むことが好ましい。
ヘッド交換時期の判断基準となる確率b%の値は、任意に設定できるが、好ましくは0.5%〜20%の範囲であり、更に好ましくは1%〜10%の範囲である。特に好ましくは3%〜7%の範囲である。この範囲を下回るとヘッドを頻繁に交換しなければならなくなり、この範囲を上回るとムラ補正不可能な吐出異常が発生しても警告を出さないことが頻発することになりかねない。プリント物に問題が起こらない範囲で、なるべく印刷機を止めず、生産性を維持し、交換頻度を抑える観点から基準値(b%)を上記範囲に設定することが望ましい。
<制御系の説明>
図13は、インクジェット記録装置1の制御部220のシステム構成を示す要部ブロック図である。
制御部220は、通信インターフェース102、システムコントローラ104、画像メモリ106、モータドライバ108、ヒータードライバ110、プリント制御部112、画像バッファメモリ114、ヘッドドライバ116等を備え、図1で説明したように、給紙部10、処理液付与部12、描画部14、乾燥部16、定着部18及び排出部20、記録媒体22の搬送、加熱、描画、インライン検出部90による検出等を制御する。
システムコントローラ104は、通信インターフェース102、画像メモリ106、モータドライバ108、ヒータードライバ110等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ104は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ118との間の通信制御、画像メモリ106の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ298やヒータ299を制御する制御信号を生成する。
通信インターフェース102は、ホストコンピュータ118から送られてくる画像データを受信し、システムコントローラ104に送信する。通信インターフェース102としては、USB、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを用いることができる。更に、通信を高速化するためのバッファメモリを搭載してもよい。
画像メモリ106は、通信インターフェース102を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ104を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ106は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
ホストコンピュータ118から送り出された画像データは通信インターフェース102を介してインクジェット記録装置1に取り込まれ、システムコントローラ104を通じて、画像メモリ106に記憶される。
モータドライバ108は、システムコントローラ104からの指示にしたがってモータ298を駆動するドライバ(駆動回路)である。
ヒータードライバ110は、システムコントローラ104からの指示にしたがって後乾燥部746等のヒータ299を駆動するドライバである。
プリント制御部112は、システムコントローラ104の制御に従い、画像メモリ106内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、濃度むら補正などの処理を行う信号処理機能を有し、画像データから生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ116に供給する制御部である。
プリント制御部112において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ116を介してインクジェットヘッド500のインク液滴の吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドット配置が実現される。
ユーザインターフェースとしての操作部196は、オペレータが各種入力を行うための入力装置197と表示部(ディスプレイ)198を含んで構成される。入力装置197には、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタンなど各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置197を操作することにより、印刷条件の入力や付属情報の入力・編集、情報の検索などを行うことができ、入力内容や検索結果、ヘッド交換時期を伝える警告表示など等の各種情報は表示部198の表示を通じて確認することができる。すなわち、表示部198は、ヘッド交換を促す警告メッセージ等を表示する警告報知手段として機能する。
なお、本例では、システムコントローラ104とプリント制御部112の組合せが「画像形成制御手段」に相当し、システムコントローラ104が「判断手段」として機能する。
ここで、図14は、プリント制御部112のシステム構成を示す要部ブロック図である。
プリント制御部112は、図14に示すように、画像データ転送部120と、濃度補正処理部122と、第1濃度むら補正情報算出部124と、第2濃度むら補正情報算出部126と、第3濃度むら補正情報算出部128と、2値化処理部130とを有する。また、プリント制御部112には、画像バッファメモリ114が備えられている。
画像バッファメモリ114は、プリント制御部112における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ114に一時的に格納される。なお、図13及び図14において画像バッファメモリ114はプリント制御部112に付随する態様で示されているが、画像メモリ106と兼用することも可能である。また、プリント制御部112とシステムコントローラ104とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像データ転送部120は、システムコントローラ104から供給(入力)された画像データを受け取り、濃度補正処理部122または2値化処理部130に送る。画像データ転送部120が、供給された画像データの種類に応じて画像データを濃度補正処理部122に送るか、2値化処理部130に送るかを切り換える。
また、必要に応じて、一時的に画像バッファメモリ114に画像データを格納し、画像バッファメモリ114から取り出して、濃度補正処理部122、2値化処理部130に送ることもある。
濃度補正処理部122は、画像データ転送部120から転送された画像データに、後述する第2濃度むら補正情報算出部126または第3濃度むら補正情報算出部128から供給された濃度むら補正情報に基づいて、濃度むら補正処理を施し、むら補正処理済み画像データを2値化処理部130に送る。
第1濃度むら補正情報算出部124は、インライン検出部90で読み取られた第1テストパターンに基づいて、吐出部の着弾位置誤差に起因する高周波な濃度むら第1濃度むら補正情報として算出する。更に、第1濃度むら補正情報算出部124は、算出した第1濃度むら補正情報を第3濃度むら補正情報算出部128に送る。また、第1濃度むら補正情報算出部124は、必要に応じて濃度補正処理部122にも第1濃度むら補正情報を送る。
第2濃度むら補正情報算出部126は、インライン検出部90で読み取られた第2テストパターンに基づいて、吐出部から吐出される液滴径(又は、その液滴の着弾径)の変化に起因する低周波な濃度むら第2濃度むら補正情報として算出する。第2濃度むら補正情報算出部126は、算出した第2濃度むら補正情報を第3濃度むら補正情報算出部128に送る。
第3濃度むら補正情報算出部128は、第1濃度むら補正情報算出部124から送られた第1濃度むら補正情報と、第2濃度むら補正情報算出部126から送られた第2濃度むら補正情報とに基づいて、第3濃度むら補正情報を算出する。第3濃度むら補正情報算出部128は、算出した第3濃度むら補正情報を濃度補正処理部122に送る。
ここで、第1濃度むら補正情報、第2濃度むら補正情報及び第3濃度むら補正情報の算出方法については、後ほど詳細に説明する。
次に、2値化処理部130は、画像データ転送部120から直接送られる画像データ、または、濃度補正処理部から送られるむら補正処理済み画像データに2値化処理を施し、印字制御信号を生成する。つまり、2値化処理部130は、供給された画像データを記録媒体上に記録するために、画像データからヘッド500の各吐出部の各吐出タイミングでのON/OFF(つまり、吐出パターン)を決定し、印字制御信号として生成する。2値化処理部130は、生成した印字制御信号をヘッドドライバ116に送る。
なお、2値化処理部130で、画像データから吐出制御信号を生成する方法には、種々の処理方法を用いることができ、例えば、ディザ法、誤差拡散法などを用いることができる。
次に、ヘッドドライバ116は、プリント制御部112から与えられる吐出制御信号(印字データ)に基づいて各色のヘッド(72K,72C,72M,72Y)の各吐出部のアクチュエータを駆動する。ヘッドドライバ116にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
インクジェット記録装置1は、基本的に以上のような構成である。
次に、インクジェット記録装置1による、第3濃度むら補正情報の作成方法について説明する。ここで、第3濃度むら補正情報の作成方法は、インクジェットヘッド72K,72C,72M,72Yのいずれでも同様の方法で行うため、以下、代表してヘッド500で説明する。
図15(A)は、ヘッド500の各吐出部(ノズル502)と、インク液滴の着弾位置との関係を示す側面図であり、図15(B)は、図15(A)の上面図である。なお、図15では、説明の便宜上、ノズル配列を1列に簡略化し、この列状に配置された複数の吐出部(ノズル502)を一端から他端までを順にA1、A2、A3・・・、Anと定義する。
図15(A)及び図15(B)に示すように、1つの吐出部(図15(A)及び(B)中、吐出部の番号A5の吐出部502)から吐出されるインク液滴が他の吐出部から吐出されるインク液滴と異なる方向に吐出されると、インク液滴の打滴点の位置がずれ、つまり、インク液滴の着弾位置がずれ、形成された画像に濃度むらが生じる。
また、図15(A)及び図15(B)に示すように、1つの吐出部(図15(A)及び(B)中、吐出部の番号A11の吐出部)から吐出されるインク液滴のインク量が所望の量よりも少なくなると、その吐出部(番号A11)から吐出されたインク液滴により形成された打滴点は、他の吐出部から吐出されたインク液滴の打滴点よりもサイズが小さくなる。このように、打滴点のサイズが所望のサイズと異なるサイズとなるときも、形成された画像に濃度むらが生じる。
上述した第3濃度むら補正情報は、これら濃度むらの原因となる着弾位置、インク量など、吐出部から吐出されるインク液滴の吐出特性を補正する補正情報である。
この第3補正むら情報に基づいて画像データを補正することで、濃度むらがある記録ヘッドユニットを用いて画像を記録した場合でも、濃度むらのないように見える画像を記録媒体上に作成することができる。
図16は、第3濃度むら補正情報の作成方法の工程を示すフロー図である。図17(A)は、第1テストパターンの一例を示す模式図であり、図17(B)は、図17(A)の部分拡大図ある。また、図18は、第2テストパターンの一例を示す模式図である。また、図19(A)は、第1濃度ムラ補正情報の一例を示すグラフであり、図19(B)は、第2濃度ムラ補正情報の一例を示すグラフであり、図19(C)は、第1濃度ムラ補正情報の一例を示すグラフである。
まず、ヘッド500で記録媒体22に第1テストパターンを描画する(図16のステップS12)。
具体的には、上述したように列状に配置された複数の吐出部を一端から他端までを順にA1、A2、A3・・・、Anと定義したとき(図15参照)に、これら吐出部を、吐出部の番号に基づいて4k−3、4k−2、4k−1、4k(k=1,2,3,・・・・)の4つのグループに分け、吐出部の番号が4k−3となる吐出部からインク液滴を連続的に吐出させ、記録媒体P上に吐出部毎の直線を形成し、その後、吐出部の番号が4k−2となる吐出部からインク液滴を連続的に吐出させ、記録媒体P上に吐出部毎の直線を形成し、その後、同様に、吐出部の番号が4k−1の吐出部、吐出部の番号が4kの吐出部についても、記録媒体P上に吐出部毎の直線を形成する。
また、一定間隔離間した吐出部をグループ化することで、隣接した吐出部からインクを吐出することなく直線を形成することができる。これにより、直線同士が重なることを防止できる。
なお、本実施形態では、記録媒体22を搬送方向、つまりヘッド500の長手方向(ノズル502の並び方向)に直交する方向に搬送しつつ、ヘッド500の各吐出部からインク液滴を吐出させて記録媒体22上に打滴点を形成する。
以上のようにして、図17(A)及び図17(B)に示すように、記録媒体22上には、吐出部の4つのグループに対応して、4つ(G1,G2,G3,G4)形成され、それぞれのグループには、各吐出部に対応した直線が形成された第1テストパターンを形成する。
ここでは、吐出部の番号(ノズル番号)を4で割った余りの数(剰余数)によってノズル群を4つのグループに分けることにより、概ね一定間隔離間したノズルのグループ化を行ったが、同様の方法により、ノズル番号を整数D(2以上の整数)で割った余りの数EによってD個のグループに分けることができる。
次に、上記のように記録媒体22に形成された第1テストパターンをインライン検出部90により読み取る(図16のステップS14)。
具体的には、記録媒体22は、第1テストパターンが形成された後、搬送部(第2の中間搬送部26及び第3の中間搬送部28等)により、更に搬送され、インライン検出部90に対向した位置を通過する。
インライン検出部90は、対向する位置を通過する記録媒体22に形成された画像を読み取ることで、第1テストパターンを読み取る。なお、この際、インライン検出部90は、第1テストパターンを高解像度で読み取る。また、インライン検出部90は、読み取った画像データを、制御部220の第1濃度むら補正情報算出部124(図14参照)に送る。
次に、第1濃度むら補正情報算出部124が、第1テストパターンに基づいて、第1濃度むら補正情報を算出する(図16のステップS16)。
まず、第1濃度むら補正情報算出部124は、各吐出部毎に直線が形成された第1テストパターンを読み取った画像データから、各吐出部のインク液滴の着弾位置(吐出特性)を算出する。
ここで、着弾位置は、例えば、特開2006−264069号公報に記載されているように、各直線の濃度プロファイルを検出し、その検出結果から各直線の中心を算出することで、各吐出部から吐出されたインク液滴の着弾位置を算出することできる。
また、中心位置の算出方法は特に限定されず、インク液滴の両端を検出し、その中間点を中心としても、濃度が最も高い位置を中心としてもよい。
また、この着弾位置は、各直線の複数点で中心を算出し、その中心を結んで近似直線を算出することが好ましい。複数点の中心を結んで近似直線を算出することで、インク液滴の着弾位置をより正確に検出することができる。
また、近似直線を延長させることで、各グループ間の相対的な位置関係も正確に検出することができる。なお、相対的な位置関係は、第1テストパターンの作成時に基準の吐出部を設定し、その吐出部により形成する直線は4つ全てのグループで形成するようにすればよい。
第1濃度むら補正情報算出部124は、算出した各吐出部の着弾位置情報に基づいて、第1濃度むら補正情報を算出する。ここで、第1濃度むら補正情報は、各吐出部の着弾位置情報に起因した濃度むらを補正する情報(各吐出部に対するパラメータや補正係数)である。
ここで、算出した各吐出部の着弾位置情報から、第1濃度むら補正情報を算出する算出方法は特に限定されず、特開2006−264069号公報に記載されているように、着弾位置情報に基づいて、吐出部に対応するエリアの濃度がリファレンス濃度に近づくように平均値処理を施すことで、第1濃度むら補正情報を算出してもよく、特開2006−347164号公報に記載されているように、着弾位置情報に基づいて、当該吐出部と隣接する複数の吐出部との間で数値計算処理を行い、第1濃度むら補正情報を算出してもよい。
次に、ヘッド500で記録媒体22上に第2テストパターンを描画する(図16のステップS18)。
具体的には、ヘッド500の全吐出部からインク液滴を吐出させ、複数種類の濃度の単色ベタ画像(一定領域内の濃度が一定の画像)を記録する。本実施形態では、図18に示すように、画像領域G5に濃度20%のベタ画像を形成し、画像領域G6に濃度40%のベタ画像を形成し、画像領域G7に濃度60%のベタ画像を形成し、画像領域G8に濃度80%のベタ画像を形成し、画像領域G9に濃度100%のベタ画像を形成する。
ここで、プリント制御部112は、第1濃度むら補正情報算出部124(図14参照)で算出された第1濃度むら補正情報を用いて第2テストパターンを補正し、濃度むら補正済みの第2テストパターンを吐出制御信号に変換し、その吐出制御信号に基づいて、第2テストパターンを記録媒体上に描画する。
具体的には、図14に示した画像データ転送部120は、システムコントローラ104から送られてきた第2テストパターン(5つの濃度の異なるベタ画像)の画像データを濃度補正処理部122に送る。濃度補正処理部122は、第1濃度むら補正情報を用いて第2テストパターンに濃度むら補正処理を施す。つまり、濃度補正処理部122は、記録媒体上に記録される第2テストパターンに着弾位置誤差による濃度むらが出ないように、第2テストパターンの画像データに吐出部の着弾位置誤差を加味した濃度ムラ補正処理を施す。
濃度補正処理部122は、濃度補正処理済みの第2テストパターンの画像データを2値化処理部130に送る。
2値化処置部130は、濃度補正処理済みの第2テストパターンの画像データを2値化処理し、吐出制御信号を生成する。更に生成して吐出制御信号をヘッドドライバ116に送り、ヘッド500が吐出制御信号に基づいて記録媒体上に画像を記録することで、第2テストパターンが描画される。
次に、記録媒体22に形成された第2テストパターンをインライン検出部90により読み取る(図16のステップS20)。
具体的には、記録媒体22は、第2テストパターンが形成された後、搬送部により、更に搬送され、インライン検出部90に対向した位置を通過する。
インライン検出部90は、対向する位置を通過する記録媒体22に形成された画像を読み取ることで、第2テストパターンを読み取る。なお、この際、インライン検出部90は、第1テストパターンを読み取った解像度より低解像度で第2テストパターンを読み取る。
また、インライン検出部90は、読み取った画像データを、プリント制御部112の第2濃度むら補正情報算出部126(図14参照)に送る。
次に、第2濃度むら補正情報算出部126が、第2テストパターンに基づいて、第2濃度むら補正情報を算出する(図16のステップS22)。
第2濃度むら補正情報算出部126は、濃度の異なる複数のベタ画像が形成された第2テストパターンを読み取った画像データから、濃度変化を算出する。
次に、算出した濃度変化から、各吐出部の吐出液滴量(吐出特性)を算出する。
ここで、上述したように、第2テストパターンは、第1濃度むら補正情報に基づいて濃度むら補正を施しているため、各吐出部から均一な液滴量のインク液滴が吐出されている場合は、濃度変化のない一定濃度の画像が形成される。そのため、このベタ画像に濃度変化を、各吐出部から吐出される液滴量にバラツキとして検出することができ、濃度変化と、第1テストパターンで算出した着弾位置情報に基づいて、各吐出部から吐出されるインクの液滴量を算出することができる。また、これにより、各吐出部から吐出されるインクの液滴量のバラツキ(変化量)に起因する濃度ムラを算出することができる。
また、異なる画像濃度のベタ画像を作成し、複数の算出値に基づいて、各吐出部から吐出されるインクの液滴量を算出することで、より正確にインクの液滴量のばらつきに起因する濃度むらを算出することができる。また、各濃度における、インクの液滴量のばらつきに起因する濃度むらも算出することができる。
次に、第2濃度むら補正情報算出部126は、算出した各吐出部から吐出されるインク液滴量のばらつきに起因する濃度変化に基づいて、第2濃度むら補正情報を算出する。ここで、第2濃度むら補正情報は、各吐出部により吐出されるインク液滴の液量のばらつきに起因した濃度むらを補正する情報(各吐出部に対するパラメータや補正係数)である。
例えば、吐出部から吐出される液適量が平均よりも少ない場合は、ある画像濃度に対して、他の吐出部よりも多い頻度でインク液滴を吐出ように設定した補正情報や、吐出部から吐出される液適量が平均よりも多い場合は、ある画像濃度に対して、他の吐出部よりも少ない頻度でインク液滴を吐出ように設定した補正情報を算出する。また、ある領域の濃度が低い場合は、該当する領域の吐出部のインク吐出頻度を高くし、ある領域の濃度が高い場合は、該当する領域の吐出部のインク吐出頻度を低くするような補正係数を算出する。
また、1つの徒手部の吐出頻度で補正することに限定されず、隣接する吐出部等も用いて、肉眼上では、所望の濃度の画像が形成されているように視認されるように、またに肉眼上で、むらと認識されてないような変化量となるように補正係数を算出すればよい。
次に、第3濃度むら補正情報算出部128により第3濃度むら補正情報を算出する(図16のステップS24)。
第3濃度むら補正情報算出部128は、第1濃度むら補正情報算出部124で算出された第1濃度むら補正情報と、第2濃度むら補正情報算出部126で算出された第2濃度むら補正情報とに基づいて、第3濃度むら補正情報を算出する。第3濃度むら補正情報は、第1濃度むら補正情報と第2濃度むら補正情報とに基づいて、算出することで、吐出部から吐出されるインク液滴の着弾位置と、吐出部から吐出されるインク液滴の液適量の両方に起因する濃度むらを補正することができる補正情報となる。
具体的には、第1濃度むら補正情報として算出した図19(A)に示す吐出頻度と濃度との関係と、第2濃度むら補正情報として算出した図19(B)に示す吐出頻度と濃度との関係の両方を用い、図19(C)に示すような吐出頻度と濃度との関係を第3濃度むら補正情報として算出する。
なお、第3濃度むら補正情報Fcの算出(合成)は、第1濃度むら補正情報Faを変数として第2濃度むら補正情報Fbに合成(つまり、Fc=Fb(Fa))としても、第2濃度むら補正情報Fbを変数として第1濃度むら補正情報Faに合成(つまり、Fc=Fa(Fb))としてもよい。
画像記録装置は、以上のようにして、第3濃度むら補正情報を算出する。
次に、インクジェット記録装置1によりプリント、印刷物を作成する方法を説明することで、本発明の画像形成方法及び画像形成装置についてより詳細に説明する。
図20は、プリントに用いる画像データの処理工程を示すフロー図である。
まず、ホストコンピュータ118から通信インターフェース102を介してシステムコントローラ104に画像データ入力される。
その後、システムコントローラ104からプリント制御部112の画像データ転送部120に画像データが入力される(ステップS32)。
画像データ転送部120は、入力された画像データを濃度補正処理部122に送る。
濃度補正処理部122は、第3濃度むら補正情報を用いて、送られた画像データに濃度ムラ補正を施し、むら補正済み画像データを作成する(ステップS34)。
濃度補正処理部122は、作成したむら補正済み画像データを2値化処理部130に送る。
2値化処理部130は、むら補正済み画像データに2値化処置を施し、吐出制御信号を生成する(ステップS36)。その後、2値化処理部130は、吐出制御信号をヘッドドライバ116に送る。
以上のようにして、画像データは処理され、ヘッドドライバ116に送られる。
(インクジェット記録装置1による記録動作の実施例)
次に、インクジェット記録装置1による記録動作の実施例を説明する。
図1に示したインクジェット記録装置1の給紙部10から描画ドラム70上に繰り出された記録媒体22に対して、処理液ドラム54(直径450mm)上で、処理液塗布装置56によって処理液を全面に薄膜塗布(2μm厚)を行った。その際、処理液塗布装置56としてグラビアローラを使用した。
次いで、処理液を塗布した記録媒体22を温風噴出しノズル58(70℃温風9m3/分吹き付け)とIRヒータ60(180℃)によって乾燥処理し、処理液中の溶媒の一部を乾燥させた。この記録媒体22を第1の中間搬送部24を介して描画部14に搬送し、画像信号に応じてCMY(シアン・マゼンダ・イエロー)のそれぞれの水性インクをヘッド72から吐出して打滴した。インク吐出体積はハイライト部では1.4pl、高濃度部では3pl(2drops)で、記録密度は主走査・副走査方向共に1200dpiで記録されるようにした。
その際、不吐出ノズルが発生した場合は、不吐出ノズルの隣接ノズルにおいて5pl(3drops)を使用して、不吐出によるスジムラを見えにくくする処理を行った。また、処理液ドラム54、乾燥ドラム76を描画ドラム70と別に設けたことにより、処理液の乾燥を高速で行う場合にも、その熱や風の悪影響が描画部に及ぶ事が無く、安定吐出が達成された。
次に、乾燥ドラム76上で第1のIRヒータ78(表面温度180℃)、温風噴出しノズル80(70℃温風×12m3/分の風量)、第2のIRヒータ82(表面温度180℃)で乾燥させた。乾燥時間は約2秒である。
次に、画像形成された記録媒体22を50℃の定着ドラム84と、80℃の第1定着ローラ86及び第2定着ローラ88とによって、0.30MPaのニップ圧で加熱定着した。その際、第1定着ローラ86、第2定着ローラ88としては、金属製の心金に硬度30°のシリコンゴムを6mmの厚さで設け、その上にソフトPFA被覆(50μm厚)を施し、インク画像に対する密着性及び剥離性に優れたものを使用した。
記録媒体22は、各ドラム54、70、76、84によるドラム搬送によって535mm/sの搬送速度で搬送されるようにした。
インクジェット記録装置1は、以上のようにして、記録媒体22上に画像を描画(記録)し、プリント、印刷物を作製する。
以上のように、実施形態によれば、着弾位置誤差に起因する濃度むらを補正する第1濃度むら補正情報と、インク液適量に起因する濃度むらを補正する第2濃度むら補正情報とを別々に算出し、この2つの補正情報を用いて、第3濃度むら補正情報を算出することで、着弾位置誤差、インク液滴量に起因する両方の誤差を好適に補正することができ、濃度むらの少ない、またはない画像を記録することができる。
なお、上述では、第1濃度むら補正情報で補正する濃度むらを着弾位置誤差に起因する濃度むらとしたが、本発明はこれに限定されず、第1濃度むらには、種々の原因に起因する高周波なむら(濃度変化が急激なむら)が含まれる。また、第2濃度むら補正情報で補正する濃度むらをインク液滴量としたがこれに限定されず、各吐出部から吐出されるインクの濃度むら等、種々の低周波な濃度むら(濃度変化が緩やかなむら)が含まれる。
また、高周波な濃度むらと、低周波な濃度むらとを別々に算出することで、画像読み込み量、画像処理量を少なくすることができ、かつ好適に濃度むらを補正することができる。
具体的には、着弾位置誤差は、打滴点の解像度よりも高い解像度(例えば、2400dpi)で画像データを取得し算出する必要があるが、低周波な濃度むらは、人間が視認できるむらを読み取ることができる解像度でよいため、ベタ画像から低周波な濃度むらを検出する場合は、低い解像度(100〜600dpi)で読み取った画像データに基づいて算出することで、低周波な濃度むらを補正することができる。
このように、それぞれの特性にあわせて、読み取る画像の解像度も変化させることで、画像読み込み量、画像処理量を少なくすることができる。
ここで、インライン検出部90は、第1テストパターンを読み取る解像度は、第2テストパターンを読み取る解像度よりも2倍以上高いことが好ましい。
第1テストパターンの読取解像度を、第2テストパターンの読取解像度の2倍以上とすることで、着弾位置誤差を正確に算出することができ、かつ、第2テストパターンの処理量を少なくすることができる。
なお、上述したように、第1テストパターンを読み取る解像度は、記録ヘッドにより記録される画像の解像度よりも高くすることが好ましい。
記録された画像の解像度よりも高い解像度で読み取ることで着弾位置誤差を正確に算出することができる。
また、第1濃度むら補正情報と、第2濃度むら補正情報とは同時に算出する必要はなく、別々のタイミングで検出してもよい。例えば、第2濃度むら補正情報のみを更新し、第1濃度むら補正情報は、前回(更新時に現在算出されている)濃度むら補正情報を用いてもよい。
第1濃度むら補正情報は、第2濃度むら補正情報よりも更新頻度を少なくすることが好ましい。上述したように、第1濃度むら補正情報は、画像を高解像度で読み取る必要があるため、画像読み込み量、画像処理量が多くなる。しかしながら、第1濃度むら補正情報で補正する高周波な濃度むらの原因、例えば、着弾位置誤差等は、記録ヘッドのノズルが開口されている面の経時劣化等影響により経時的に変化するが、その変化は比較的に緩やかな変化であるため、第1濃度むら補正情報は、頻繁に変化するものではない。これに対して、第2濃度むら補正情報で補正する低周波な濃度むらの原因、例えばインク液滴の滴下量は、温度変化にも依存をするため、短期間で更新する必要がある。
したがって、第2濃度むら補正情報のみを更新することで、画像処理量を少なくすることができ、短時間で第3濃度むら補正情報を算出することができる。また、第1濃度むら補正情報を更新せずに、第2濃度むら補正情報のみを更新することでも適切な濃度むら補正をすることができる。
このように、第1濃度むら補正情報と第2濃度むら補正情報とを別々に算出することで、必要な情報のみを更新することが可能になり、少ない処理量で、適切な補正情報を算出することが可能となる。
また、インクジェット記録装置1では、高周波な濃度むらを補正した状態でテストパターンを作成できるため、第2テストパターンの画像データを第1濃度むら補正情報により補正して、補正済みの第2テストパターンの画像データを用いて、第2テストパターンを作成したが、本発明はこれに限定されず、第1濃度むら補正情報で補正せずに第2テストパターンを作成してもよい。
このように、第1濃度むら補正情報で補正せずに第2テストパターンを作成する場合は、第2テストパターン作成時のデータの処理量を減らすことができる。なお、この場合は、第3濃度むら補正情報算出時に、データの処理量が増加する場合はある。
<インライン検出部の構成例>
図21は、インライン検出部90の構成図である。インライン検出部90は、ラインCCD570(「画像読取手段」に相当)と、そのラインCCD570の受光面に画像を結像させるレンズ572、光路を折り曲げるミラー573とを一体とした読取センサ部574が、並列に配置され、記録媒体上の画像を夫々読み取る。ラインCCD570はRGB3色のカラーフィルタを備えた色別のフォトセル(画素)アレイを有し、RGBの色分解によりカラー画像の読み取りが可能である。例えば、RGB3ライン夫々のフォトセルアレイの隣には、1ライン中の偶数画素と奇数画素の電荷とを夫々、別々に転送するCCDアナログシフトレジスタを備える。
具体的には、画素ピッチ9.325μm、7600画素×RGB、素子長(フォトセルの配列方向のセンサ幅)70.87mmのNECエレクトロニクス株式会社のラインCCD「μPD8827A」(商品名)を用いることができる。
ラインCCD570は、フォトセルの配列方向と記録媒体が搬送されるドラムの軸が平行になる配置形態で、固定される。
レンズ572は搬送ドラム(図1の符号84)上に巻かれた記録媒体上の画像を所定の縮小率で結像させる縮小光学系のレンズである。例えば、0.19倍に画像を縮小するレンズを採用した場合、記録媒体上の373mm幅がラインCCD570上に結像される。このとき、記録媒体上の読み取り解像度は518dpiとなる。
図21のようにラインCCD570と、レンズ572、ミラー573とを一体とした読取センサ部574を搬送ドラムの軸と平行に移動調整可能とし、2つの読取センサ部574の位置を調整して、夫々の読取センサ部574が読み取る画像が僅かに重なる配置とする。また、図21には示されていないが、検出のための照明手段として、例えば、キセノン蛍光ランプがブラケット575の裏面、記録媒体側に配置され、定期的に白色基準板が画像と照明の間に挿入され、白基準を測定する。その状態でランプを消灯して、黒基準レベルを測定する。
ラインCCD570の読み取り幅(一度に検査できる範囲)は、記録媒体における画像記録領域の幅との関係で多様な設計が可能である。レンズ性能と解像度の観点から、例えば、ラインCCD570の読み取り幅は、画像記録領域の幅(検査対象となり得る最大の幅)の1/2程度としている。
ラインCCD570によって得られた画像データは、A/Dコンバータ等によってデジタルデータに変換され一時的なメモリへ格納された後、システムコントローラ104を介して処理され、メモリ(例えば、図13において画像メモリ106と兼用されるメモリ)へ格納される。
<実施形態の変形例1>
また、インクジェット記録装置1では、記録媒体上に記録された第1テストパターンと第2テストパターンとを1つのインライン検出部90により読み取ったが、本発明の実施に際しては、これに限定されず、第1テストパターンを読み取るスキャナ(検出部)と、第2テストパターンを読み取るスキャナ(検出部)を別々に設けてもよい。
このように、スキャナを別々に設けることで、目的に特化したスキャナを配置することができる。つまり、第1テストパターンを読み取るスキャナは、打滴点の位置を好適に算出できるように画像を読み取るスキャナ(例えば、濃度階調は低いが、高解像度で画像を読み取るスキャナ)とし、第2テストパターンを読み取るスキャナは、濃度変化を好適に算出できるように画像を読み取るスキャナ(例えば、解像度は高くないが、高い濃度階調で画像を読み取るスキャナ)とすることができる。
これにより、濃度むらをより正確に検出することができる。また、スキャナのモードの切り替えが不要になるため、操作がより簡単になる。
なお、別々のスキャナを設ける場合は、第1テストパターンを読み取るスキャナは、第2テストパターンを読み取るスキャナよりも高解像度で画像を読み取るスキャナを用いることが好ましい。
<実施形態の変形例2>
上述したインクジェット記録装置1では、装置内部の記録媒体の搬送経路上にスキャナを設け(つまり、インライン検出タイプとし)たが、本発明の実施に際してはこれに限定されず、スキャナを記録媒体の搬送経路以外の位置、例えば画像記録装置の筐体の外側に設け(つまり、オフラインスキャナとし)、画像記録装置で画像を描画した被記録媒体を、画像記録装置の筐体の外側に設けたスキャナにより読み取り、上記と同様の方法で濃度ムラを検出してもよい。
例えば、第1テストパターンを読み取るスキャナは、オフラインスキャナとし、第2テストパターンを読み取るスキャナをオンラインスキャナとし、第1テストパターンを読み取るスキャナは、複数の画像記録装置に共通に1つのスキャナとすることで、画像を高精度に読み取るスキャナの数を減らすことで、装置コストを下げることができる。
また、上述したように第1濃度むら補正情報は、急激には変化しないため、第2濃度むら補正情報よりも算出頻度は少なくてよいため、別部材として、算出に時間がかかっても装置駆動上の問題は少ない。
<実施形態の変形例3>
上述した実施形態では、第1テストパターンとして、4つに分けた直線を形成したが、本発明はこれに限定されず、2つに分けて直線を形成しても、3つに分けて直線を形成しても、5つ以上に分けて直線を形成してもよい。
なお、上記実施形態では、各ノズルについてそれぞれ1ノズルからの連続打滴による直線のパターンを形成したが、1つの打滴点に基づいて、着弾位置を検出してもよい。
また、隣接する打滴点が記録媒体上で接触しない状態、つまり打滴点と隣接する打滴点とが非接触であれば、全吐出部により形成される打滴点を被記録媒体の搬送方向に垂直な方向において同一直線上に形成してもよい。
例えば、吐出するインク液滴の大きさを調整できる、つまり、打滴点の大きさを調整できる場合は、吐出するインク液滴を小さくして打滴点を小さくすることで、打滴点と隣接する打滴点とを接触させないようにしてもよい。
このように、打滴点と隣接する打滴点を接触させないことで、各打滴点の基準方向の両端を正確に算出することができる。
<実施形態の変形例4>
上述した実施形態では、2値化処理部で画像データを2値化することで、吐出制御信号を生成したが、本発明の実施に際しては、これに限定されず、記録ヘッドの吐出性能にあわせてN値(N≧2)化すればよい。例えば、記録ヘッドが大ドットと小ドットを吐出できる場合は、大ドット、小ドット、吐出しない、の3つの値からなる吐出制御信号を生成するために画像データに3値化処理を施せばよい。
<実施形態の変形例4>
上記実施形態では、描画部の記録ヘッドを吐出部が1列にライン状に配置されたフルラインヘッド型を例に説明したが、単列配置に限定されず、図7で説明したように、ノズル502を二次元配置し、1列の打滴点を複数列の吐出部で形成することで、より高い解像度の画像を形成することが可能となる。
また、本実施形態では、複数色(YMCK)のインクを用いてカラー画像を形成する装置構成を説明したが、1色のみ(例えば、K(黒)インク)を吐出する記録ヘッドのみ、つまり、単色の記録ヘッドユニットとし、単色の画像を描画する画像形成装置として用いることもできる。
<遠隔監視システムの構成>
次に、上述したインクジェット記録装置1をネットワーク経由で遠隔監視するシステムの例を説明する。
図22は遠隔監視システム600の構成図である。ここでは、複数台のインクジェット記録装置1A、1B、1Cを遠隔監視センタのコンピュータ(以下「遠隔監視センタ装置」という。)610によって集中管理するシステムを例に説明する。なお、図22では3台のインクジェット記録装置1A、1B、1Cを示すが、監視対象とするインクジェット記録装置の台数について特に制限はない。
各インクジェット記録装置1A、1B、1Cは、通信回線620を介して遠隔監視センタ装置610に通信可能に接続される。通信回線620の形態は特に限定されず、構内LANでもよいし、インターネットのような広域通信網(WAN)であってもよい。通信方式は特に限定されず、有線、無線を問わず、これらの組合せでもよい。
各インクジェット記録装置1A、1B、1Cはそれぞれ、自装置のインライン検出部90で読み取った情報を通信回線620経由で遠隔監視センタ装置610に送る。遠隔監視センタ装置610は、各インクジェット記録装置1A、1B、1Cから収集した情報を記憶装置612に格納し、装置別及び機種別に吐出異常の発生量、時間、発生確率等に関するデータを蓄積する。
遠隔監視センタ装置610は、収集した情報に基づいて吐出異常の発生予測の演算に用いる時間t(1個の吐出異常が発生する時間)の計算を行い、必要に応じてその情報を各インクジェット記録装置1A、1B、1Cに対して提供する。
これにより、各インクジェット記録装置1A、1B、1Cは、最新のパラメータを用いて吐出異常の発生予測を行うことが可能である。
インクジェット記録装置1A、1B、1Cにおいて、ヘッド交換等が必要な状態であると判断され、その旨の警告が発せられると自動的に、或いは、この警告を受けてオペレータが所定の操作を行うことにより、当該装置から遠隔監視センタ装置610に対してメンテナンスサービスを求める情報が送られる。
遠隔監視センタ装置610は、メンテナンスサービスを提供するサービスセンタのコンピュータ(以下「サービスセンタ装置」という。)630と通信可能に接続されており、サービスマンによるヘッド交換或いは集中メンテナンスが必要と判断されたインクジェット記録装置1A、1B、1Cについて、サービスマンの出動を要請する情報を作成し、このメンテナンス依頼情報をサービスセンタ装置630に送る。
サービスセンタ装置630は、メンテナンス依頼情報を統括的に管理して、サービスマンを派遣する業務を支援する。こうして、サービスセンタから該当する装置のもとへサービスマンが派遣され、サービスマンによってヘッド交換など所要のメンテナンス作業が行われる。
なお、遠隔監視センタ装置610とサービスセンタ装置630とは構内LANで接続されていてもよいし、インターネットのような広域通信網(WAN)を介して接続されてもよい。また、遠隔監視センタ装置610とサービスセンタ装置630を共通のコンピュータで実現する態様も可能であり、図13で説明したホストコンピュータ118を遠隔監視センタ装置610として兼用する構成も可能である。
<シアンインク組成物の作成例>
次に、本実施形態に好適なインク及び処理液の具体例について説明する。
以下に合成例を示す。
(樹脂分散剤P−1の合成)
下記スキームに従って合成した。
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコにメチルエチルケトン88gを加え窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン50gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、メチルメタクリレート30gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間反応した後メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温し4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥してP−1を96g得た。
得られた樹脂の組成は1H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は44600であった。更に、JIS規格(JISK0070:1992)記載の方法により、このポリマーの酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン360.0gを仕込んで、75℃まで昇温した。反応容器内温度を75℃に保ちながら、フェノキシエチルアクリレート180.0g、メチルメタクリレート162.0g、アクリル酸18.0g、メチルエチルケトン72g、及び「V−601」(和光純薬(株)製)1.44gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、「V−601」0.72g、メチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌後、更に「V−601」0.72g、イソプロパノール36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した後、85℃に昇温して、更に2時間攪拌を続けた。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は64000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出、使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))、酸価は38.9(mgKOH/g)であった。
次に、重合溶液668.3gを秤量し、イソプロパノール388.3g、1mol/L NaOH水溶液145.7mlを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次に蒸留水720.1gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化せしめた。その後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保った後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で913.7g留去し、固形分濃度28.0%の自己分散性ポリマー微粒子(B−01)の水分散物(エマルジョン)を得た。なお、下記に示した化合物例(B−01)の各構成単位の数字は質量比を表す。以下、各構造式に関しても同様である。
(シアン顔料含有樹脂粒子の分散物の作成)
ピグメントブルー15:3(大日精化株式会社製 フタロシアニンブル−A220) 10質量部と、P−1樹脂分散剤5質量部と、メチルエチルケトン42質量部と、1規定 NaOH水溶液 5.8質量部と、イオン交換水86.9質量部を混合し、ビーズミルで0.1mmΦジルコニアビーズを使い、2〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下55℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2質量%の顔料含有樹脂粒子の分散物を得た。
(シアンインク組成物C-1の調製)
次に、得られた顔料含有樹脂粒子の分散物、自己分散性ポリマー微粒子(B−01)の水分散物(エマルジョン)を使い、以下の組成でインク組成物を調製した。
上記顔料含有樹脂粒子の分散物 39.2質量部
上記自己分散性ポリマー微粒子(B−01)の水分散物 28.6質量部
GP−250(トリオキシプロピレングリセリルエーテル、
サンニックスGP250、三洋化成工業(株)製)) 10 質量部
DEGmEE(ジエチレングリコールモノエチルエーテル) 5 質量部
オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) 1 質量部
イオン交換水 16.2質量部
(マゼンタインク組成物M-1の調製)
シアン顔料分散物の調製の際にピグメントブルー15:3(大日精化株式会社製 フタロシアニンブル−A220)をチバ・スペシャリティーケミカルズ社のCromophtal Jet Magenta DMQ(PR-122)とした以外はシアンインク組成物の調製と同様にしてマゼンタインク組成物M-1を作成した。
(イエローインク組成物Y-1の調製)
シアン顔料分散物の調製の際にピグメントブルー15:3(大日精化株式会社製 フタロシアニンブル−A220)をチバ・スペシャリティーケミカルズ社のIrgalite Yellow GS(PY74)とした以外はシアンインク組成物の調製と同様にしてイエローインク組成物Y-1を作成した。
(ブラックインク組成物Bk-1の調製)
シアン顔料分散物の調製の際にピグメントブルー15:3(大日精化株式会社製 フタロシアニンブル−A220)を三菱化学社製カーボンブラック MA100とした以外はシアンインク組成物の調製と同様にしてブラックインク組成物Bk-1を作成した。
(凝集処理剤の調整)
以下の組成で材料を混合し、調整を行った。
・マロン酸(和光純薬製) :22.5w%
・ GP250(トリオキシプロピレングリセリルエーテル、
サンニックスGP250、三洋化成工業(株)製) :10.0w%
・界面活性剤1(下記[化11]構造式) : 0.01w%
・イオン交換水 :67.49w%
上記反応液の物性値を測定したところ、粘度2.3mPa・s、表面張力42mN/m、pH0.9であった。
以上説明したように、本発明を適用した実施形態によって、最適なタイミングで集中メンテナンスまたはヘッド交換を行うことができる。
なお、本発明の適用範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
<付記>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(発明1):記録媒体に向けてインクを吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドと前記記録媒体を相対的に移動させる移動手段と、画像データに基づいて前記記録ヘッドを制御することにより当該画像データに対応した画像を前記記録媒体上に形成させる画像形成制御手段と、前記ノズルの不吐出及び吐出方向ずれのうち少なくとも一つを含む吐出異常を検出する吐出異常検出手段と、前記吐出異常に起因する画像欠陥を補う補正手段と、前記吐出異常件検出手段による検出結果に基づき、前記補正手段による補正が可能なヘッド状態であるか否かを判断する判断手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
本発明に係る画像形成装置の一態様としてのインクジェット記録装置は、ドットを形成するためのインク液滴を吐出するためのノズル(吐出口)及び吐出圧を発生させる圧力発生素子(圧電アクチュエータや加熱発泡用の発熱体)を含む液滴吐出素子(インク液室ユニット)を高密度に多数配置した液体吐出ヘッド(記録ヘッド)を備えるとともに、入力画像から生成されたインク吐出用データ(ドット画像データ)に基づいて前記液体吐出ヘッドからの液滴の吐出を制御する吐出制御手段とを備え、ノズルから吐出した液滴によって記録媒体上に画像を形成する。
例えば、画像入力手段を介して入力された画像データ(印字データ)に基づいて色変換やハーフトーニング処理が行われ、インク色に応じたインク吐出データが生成される。このインク吐出データに基づいて、液体吐出ヘッドの各ノズルに対応する圧力発生素子の駆動が制御され、ノズルからインク滴が吐出される。
高解像度の画像出力を実現するためには、インク液を吐出するノズル(吐出口)と、該ノズルに対応した圧力室及び圧力発生素子とを含んで構成される液滴吐出素子(インク室ユニット)を高密度に多数配置した記録ヘッドを用いる態様が好ましい。
かかるインクジェット方式の記録ヘッドの構成例として、記録媒体の全幅に対応する長さにわたって複数の吐出口(ノズル)を配列させたノズル列を有するフルライン型のヘッドを用いることができる。この場合、記録媒体の全幅に対応する長さに満たないノズル列を有する比較的短尺の吐出ヘッドモジュールを複数個組み合わせ、これらを繋ぎ合わせることで全体として記録媒体の全幅に対応する長さのノズル列を構成する態様がある。
フルライン型のヘッドは、通常、記録媒体の相対的な送り方向(相対的搬送方向)と直交する方向に沿って配置されるが、搬送方向と直交する方向に対して、ある所定の角度を持たせた斜め方向に沿ってヘッドを配置する態様もあり得る。
記録媒体と記録ヘッドを相対的に移動させる搬送手段は、停止した(固定された)ヘッドに対して記録媒体を搬送する態様、停止した記録媒体に対してヘッドを移動させる態様、或いは、ヘッドと記録媒体の両方を移動させる態様の何れをも含む。なお、インクジェット方式の記録ヘッドを用いてカラー画像を形成する場合は、複数色のインク(記録液)の色別に記録ヘッドを配置してもよいし、1つの記録ヘッドから複数色のインクを吐出可能な構成としてもよい。
搬送手段の形態には、円筒形状を有し、所定の回転軸の周りを回転可能に構成された搬送ドラム(搬送ローラ)や、搬送ベルトなどの形態が挙げられる。
「記録媒体」は、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、配線パターン等が形成されるプリント基板、その他材質や形状を問わず、様々な媒体を含む。
(発明2):発明1に記載の画像形成装置において、前記判断手段は、ノズル面のワイピング、予備吐出、ノズル吸引のうち少なくとも1つを含む通常メンテナンス動作では復帰しない前記吐出異常の発生数を時間の経過とともに記憶し、前記発生数が規定値を超えて加速しだしたところで、前記補正手段による補正効果が期待できないヘッド状態であると判断することを特徴とする画像形成装置。
通常メンテナンス動作は、例えば、装置の立ち上げ時や印刷ジョブの開始前などに実施されるヘッドメンテナンスの動作であり、所定のプログラムに基づいて実施される。
吐出異常の発生数が加速的に増加し始めると、補正手段による補正では対応できない可能性が高いため、このような場合にヘッド交換や集中メンテナンスを促す態様が好ましい。
(発明3):発明1に記載の画像形成装置において、1個の吐出異常が発生する時間をt、全ノズル数をa、x時間後の吐出異常の発生量n=x/tとするとき、前記判断手段は、次に吐出異常となるノズルの位置がそれまでの吐出異常となったノズルから4ノズル分以内に入る確率8n/(a−n)がb%(ただし、0.5≦b≦20)になる個数の吐出異常が発生した時点で、前記補正手段による補正効果が期待できないヘッド状態であると判断することを特徴とする画像形成装置。
記録ヘッドにおける実質的なノズル列の並びにおいて吐出異常が発生したノズルの周囲近傍のノズルによってその画像欠陥を補うように補正が行われる場合、吐出異常のノズル位置が近接していると、補正手段による補正で対応できない可能性が高くなる。このような状況を確率論的に予測して、適度な判定基準の確率b%に基づき、ヘッド交換や集中メンテナンスのタイミングを決定する態様が好ましい。
判定基準の確率b%を適切な範囲に設定することにより、補正不可能となる直前にヘッド交換や集中メンテナンスを促すことが可能となる。
(発明4):発明1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、インクを凝集させる処理液を記録媒体上に付与する処理液付与手段を備え、前記処理液が付与された記録媒体に向けて前記記録ヘッドからインクが吐出されることを特徴とする画像形成装置。
処理液との反応によってインクを凝集させる方式を採用した画像形成装置は、処理液を用いないタイプと比較して、吐出異常が発生し易い傾向にあるため、本発明の適用がより効果的である。
(発明5):発明1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記記録媒体上にシングルパスで画像を形成するものであることを特徴とする画像形成装置。
1回の走査で画像を形成するシングルパス方式は、記録ヘッドのノズルに吐出異常が発生すると、同ノズルが記録すべき打滴点を他のノズルによって直接打滴することができないため、一般的には近隣ノズルからのインク吐出量や打滴配置を修正して、画像欠陥を補う補正が行われる。このような装置態様において、本発明の適用が効果的である。
(発明6):発明1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記吐出異常検出手段は、前記記録ヘッドにより前記記録媒体上に形成された画像を当該記録媒体の搬送中に読み取る画像読取手段を含んで構成されることを特徴とする画像形成装置。
インライン検出方式を採用することにより、検出の自動化が可能である。
(発明7)発明1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記補正手段は、前記記録ヘッドの各ノズルからインクを吐出させることにより前記記録媒体上に形成した第1テストパターンの読み取り結果から前記ノズルの第1記録特性情報を取得する第1記録特性情報取得手段と、前記第1記録特性情報から第1濃度むら補正情報を求める第1濃度むら補正情報算出手段と、前記記録ヘッドの各ノズルからインクを吐出させることにより前記記録媒体上に形成した前記第1テストパターンとは異なる第2テストパターンの読み取り結果から前記ノズルの第2記録特性情報を取得する第2記録特性情報取得手段と、前記第2記録特性情報から第2濃度むら補正情報を求める第2濃度むら補正情報算出手段と、前記第1濃度むら補正情報と前記第2濃度むら補正情報とから第3濃度むら補正情報を求める第3濃度むら補正情報算出手段と、前記第3濃度むら補正情報から、画像データを補正し、濃度むら補正済み画像データを算出する濃度補正処理手段と、前記むら補正済み画像データから前記ノズルの吐出パターンを算出する吐出制御信号算出手段と、を含んで構成されることを特徴とする画像形成装置。
画像欠陥(濃度むら)を補正する方法としては、種々の補正方法を適用することが可能であるが、例えば、発明7に記載の態様とすることが好ましい。
また、発明7に関連して、本明細書は、記録媒体に向けてインク液滴を吐出させる記録素子を複数有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドと前記記録媒体とを相対的に移動させる移動手段と、記録ヘッドと記録媒体とを相対的に移動させつつ、前記記録ヘッドから前記記録媒体に向けてインク液滴を吐出させて、前記記録媒体上に画像を記録させる記録動作制御手段と、前記記録ヘッドの各記録素子からインク液滴が吐出され、記録媒体上に形成された第1テストパターンを読み取る第1テストパターン読取手段と、前記第1テストパターンの読み取り結果から前記記録素子の第1記録特性情報を取得する第1記録特性情報取得手段と、前記第1記録特性情報から第1濃度むら補正情報を求める第1濃度むら補正情報算出手段と、前記記録ヘッドの各記録素子からインク液滴が吐出され、前記記録媒体に形成された前記第1テストパターンとは異なる前記第2テストパターンを読み取る第2テストパターン読取手段と、前記第2テストパターンの読み取り結果から前記記録素子の第2記録特性情報を取得する第2記録特性情報取得手段と、前記第2記録特性情報から第2濃度むら補正情報を求める第2濃度むら補正情報算出手段と、前記第1濃度むら補正情報と前記第2濃度むら補正情報とから第3濃度むら補正情報を求める第3濃度むら補正情報算出手段と、前記第3濃度むら補正情報から、画像データを補正し、濃度むら補正済み画像データを算出する濃度補正処理手段と、前記むら補正済み画像データから前記記録素子の吐出パターンを算出する吐出パターン算出手段とを有することを特徴とする画像記録装置を提供する。
ここで、第1濃度むら補正情報算出手段は、各記録素子から吐出されるインク液滴が記録媒体上に着弾する位置を算出し、算出した着弾位置情報に基づいて第1濃度むら補正情報を算出し、第2濃度むら補正情報算出手段は、前記第2テストパターンの濃度変化に基づいて、各記録素子から吐出されるインクの液滴量の変化に起因する濃度ムラを検出し、検出した各記録素子から吐出されるインクの液滴量に起因する濃度ムラに基づいて第2濃度むら補正情報を算出することが好ましい。
また、前記第1テストパターン読取手段と前記第2テストパターン読取手段は、解像度切り替え可能な同一の手段であることが好ましい。
また、前記第1テストパターン読取手段と前記第2テストパターン読取手段とは、前記移動手段による前記記録媒体の搬送経路上に配置されていないことが好ましい。
また、前記第1テストパターン読取手段と前記第2テストパターン読取手段とは、前記移動手段による前記記録媒体の搬送経路上に配置されていることが好ましい。
また、前記第1テストパターン読取手段は、前記移動手段による前記記録媒体の搬送経路上に配置されておらず、
前記第2テストパターン読取手段は、前記移動手段による前記記録媒体の搬送経路上に配置されていることも好ましい。
(発明8):発明1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記補正手段による補正効果が期待できないヘッド状態であると判断された場合に、その旨を示す情報を出力する情報出力手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
判断手段による判断結果を出力することにより、その出力情報に基づいて、警告の報知や特定の動作モードへの移行などの制御が可能となる。
(発明9):発明8に記載の画像形成装置において、前記情報出力手段は、前記記録ヘッドの交換及び集中メンテナンスの実施を促す警告を報知する報知手段を含んで構成されることを特徴とする画像形成装置。
かかる態様によれば、効率的なヘッド交換や集中メンテナスを実施することが可能となる。
(発明10):発明8又は9に記載の画像形成装置において、前記情報出力手段から出力される信号に基づき、自動的に所定の強制メンテナンスモードに移行することを特徴とする画像形成装置。
ヘッド交換等の時期を知らせる警告の提示に代えて、又はこれと併せて、自動的に強制メンテナンスモードに移行する制御を行う態様も可能である。
(発明11):発明1乃至10のいずれか1項に記載の画像形成装置において、外部装置との通信接続が可能な通信手段を具備し、前記通信手段を介して通信可能に接続された前記外部装置に対して、前記吐出異常検出手段により得られた情報を送信し得る構成を有することを特徴とする画像形成装置。
(発明12):発明11に記載の画像形成装置と、前記画像形成装置の前記吐出異常検出手段により得られた情報を収集して管理する前記外部装置としての遠隔監視用情報管理装置と、を備えたことを特徴とする遠隔監視システム。
(発明13):発明12に記載の遠隔監視システムにおいて、前記補正手段による補正効果が期待できないヘッド状態であると判断された画像形成装置についてサービスマンの出動を要請する情報を発生させるメンテナンスサービス要請情報発生手段を備えることを特徴とする遠隔監視システム。
メンテナンスサービス要請情報発生手段は、画像形成装置に備える構成も可能であるし、遠隔監視用情報管理装置に備える構成も可能である。
(発明14):発明12又は13に記載の遠隔監視システムを用い、前記補正手段による補正効果が期待できないヘッド状態であると判断された画像形成装置について、サービスマンを派遣して、当該サービスマンによりヘッド交換及び集中メンテナンスのうち少なくとも一つのメンテナンス作業を実施させることを特徴とするメンテナンスサービス提供方法。
(発明15):記録媒体に向けてインクを吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドと前記記録媒体とを相対的に移動させつつ、前記ノズルからインクを吐出させることにより前記記録媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、前記ノズルの不吐出及び吐出方向ずれのうち少なくとも一つを含む吐出異常を検出する吐出異常検出工程と、前記吐出異常に起因する画像欠陥を補う補正工程と、前記吐出異常検出工程による検出結果に基づき、前記補正工程による補正が可能なヘッド状態であるか否かを判断する判断工程と、を含むことを特徴とする画像形成方法。
画像欠陥を補正する方法として、以下のような方法を用いることが好ましい。
すなわち、本明細書は、記録媒体に向けてインク液滴を吐出させる記録素子を複数有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドと前記記録媒体とを相対的に移動させる移動手段とを有し、前記移動手段により前記記録ヘッドと前記記録媒体とを相対的に移動させつつ、前記記録素子から前記記録媒体に向けてインク液滴を吐出させて、前記記録媒体上に画像を記録する画像記録方法であって、前記記録ヘッドの各記録素子からインク液滴を吐出させ、第1テストパターンを前記記録媒体上に形成し、作製した前記第1テストパターンを読み取り、読み取り結果から前記記録素子の第1記録特性情報を取得する第1記録特性情報取得工程と、前記第1記録特性情報から第1濃度むら補正情報を求める第1濃度むら補正情報算出工程と、前記記録ヘッドの各記録素子からインク液滴を吐出させ、前記第1テストパターンとは異なる前記第2テストパターンを前記記録媒体に形成し、前記第2テストパターンを読み取り、読み取り結果から前記記録素子の第2記録特性情報を取得する第2記録特性情報取得工程と、前記第2記録特性情報から第2濃度むら補正情報を求める第2濃度むら補正情報算出工程と、前記第1濃度むら補正情報と前記第2濃度むら補正情報とから第3濃度むら補正情報を求める第3濃度むら補正情報算出工程と、前記第3濃度むら補正情報から、画像データを補正し、濃度むら補正済み画像データを算出する濃度補正処理工程と、前記むら補正済み画像データから前記記録素子の吐出パターンを算出する吐出制御信号算出工程とを有することを特徴とする画像記録方法を提供する。
ここで、第2濃度むら補正情報算出工程は、第1濃度むら補正情報算出工程で算出する濃度むらよりも、周波数の低い濃度むらを算出することが好ましい。
また、第1記録特性情報は、各記録素子から吐出されるインク液滴が記録媒体上に着弾する位置の情報であることが好ましい。
第2濃度むら補正情報取得工程は、第1濃度むら補正情報を用いて前記第2テストパターンを作製することが好ましい。
前記第2記録特性情報取得工程は、前記第1記録特性情報取得工程で第1濃度むら補正情報を取得するよりも高い頻度で、第2濃度むら補正情報を取得することが好ましい。
第1特性情報取得工程は、前記第1テストパターンの画像データの解像度より高い解像度で前記第1テストパターンを読み取り、第2特性情報取得工程は、第1特性情報取得工程よりも低い解像度で前記第2テストパターンを読み取ることが好ましい。
第1特性情報取得工程は、前記第1テストパターンの画像データの解像度の2倍以上で前記第1テストパターンを読み取ることが好ましい。
第1記録特性情報及び第2記録特性情報は、記録素子毎の濃度情報であることが好ましい。
1…インクジェット記録装置、22…記録媒体、56…処理液付与装置、70…描画ドラム、72C、72M、72Y、72K…インクジェットヘッド、90…インライン検出部、104…システムコントローラ、112…プリント制御部、502…ノズル、570…ラインCCD、600…遠隔監視システム、610…遠隔監視センタ装置、620…通信回線