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JP5152994B2 - チタン合金インゴットの溶製方法 - Google Patents

チタン合金インゴットの溶製方法 Download PDF

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Description

本発明は、電子ビーム溶解による金属インゴットの溶製方法であって、特に塊状の合金原料を用いた合金インゴットの溶製方法に関する。
従来、金属チタンは航空機に多く用いられてきたが、近年用途開発が進み、自動車や二輪車、建材や道路、あるいはスポーツ用品等の民生用にも広く用いられている。このような金属チタンは、反応容器内で四塩化チタンをマグネシウムによって還元する、所謂クロール法によって工業的に製造されている。
クロール法では、多孔質の金属塊であるスポンジチタンが生成し、製造されたスポンジチタンを破砕整粒後、加圧成形されたブリケットを組み合わせて電極とし、これを真空アーク溶解することによりチタンインゴットを製造している。
しかしながら、最近では原料を電極に加工しなくとも顆粒状あるいは塊状原料がそのまま使用できる電子ビーム溶解炉が脚光を浴びている。電子ビーム溶解炉の中でもハースを用いた電子ビーム溶解炉は、高密度介在物(High Density Inclusion、以下、HDIと略称する場合がある)や低密度介在物(Low Density Inclusion、以下、LDIと略称する場合がある)と呼ばれる介在物の分離性に優れているので、スクラップや戻り材を原料に使用して、グレードの高いチタンインゴットを製造することも可能になっている。
電子ビーム溶解炉では、スポンジチタンのような顆粒状金属、スポンジチタンをプレス成型して固めたブリケットや前記スポンジチタンあるいはブリケットを組み合わせて構成した棒状原料等の塊状金属等、種々の形態の原料を用いてチタンインゴットを製造することができる。
また、チタンインゴットのみならず、チタン合金インゴットを溶製する場合には、粉状の合金原料と顆粒状のスポンジチタンの混合原料を電子ビーム溶解炉に供給する方法も知られている。前記合金成分が酸素や鉄の場合には、粉状の酸化チタンや酸化鉄が合金原料として用いられる場合が多く、一般的には、顆粒状のスポンジチタンやスクラップと混合して電子ビーム溶解炉に供給される。
しかしながら、顆粒状金属に配合した粉状の合金原料の一部が原料供給装置内に残留してハース内への供給が滞ることが多々あり、溶製されたチタン合金の組成が目標値から外れる場合があった。
また、粉状の合金原料をハースに保持された溶融チタンプールに投入する際に、前記粉状の合金原料の一部が雰囲気中に飛散して、予定した量の粉状の合金原料を溶融チタンプールに供給することができない場合があった。
このような問題点に対して、ソーダガラス中に懸濁させた粉状合金原料を表面に塗布した顆粒状のスポンジチタン原料を準備することで、目標の組成から外れることなく歩留まり良く電子ビーム溶解炉に溶解原料を供給する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、有機溶媒に懸濁させた粉状原料と顆粒状のスポンジチタンを混練してコンパクトに成型することで、歩留まり良く電子ビーム溶解炉に供給することができる技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、これらの技術では、ソーダガラスや有機溶媒等、原料以外の第三成分を添加することになるので、純度の高い合金インゴットを製造するには必ずしも有効な方法ではないと思われる。
一方、表面に酸化チタン粉をまぶした顆粒状のスポンジチタンを真空中で高温に加熱して、表面の酸化チタンをスポンジチタンに焼結させることにより、粉状の合金成分をスポンジチタンに効率よく配合するという技術も知られている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この方法は設備と時間の点で自由度に制約があるために必ずしも効率的ではなく改善が望まれている。
また、スポンジチタンのような顆粒状金属と合金粉を混合して構成したブリケットを電子ビーム溶解炉あるいはVAR溶解炉に供給する技術も知られている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、前記したスポンジチタンのような顆粒状金属と酸化チタンあるいは酸化鉄のような粉状の酸化物を混合して構成したブリケットは、成型性や強度の点で改善の余地が残されていた。
このように、酸化チタンや酸化鉄のような粉状の酸化物とスポンジチタンのような顆粒状金属を歩留まり良くまた再現性よく溶解炉に供給する技術が望まれている。
特開平01−156434号公報 特開平01−156436号公報 特開2001−279345号公報 特開2005−298855号公報
本発明は、電子ビーム溶解による金属インゴットの溶製方法において、粉状の合金原料と顆粒状金属原料を歩留まり良く、また均一に電子ビーム溶解炉に供給する技術の提供を目的とするものである。
かかる実情に鑑み前記課題の解決手段について鋭意検討を重ねてきたところ、電子ビーム溶解炉を用いた金属インゴットの溶製方法において、粉状の酸化物を成型・焼結して塊状酸化物とした後、前記塊状酸化物(板状ペレット)と顆粒状金属を混合して、前記電子ビーム溶解炉に保持したハースに供給することにより、ハース内の溶湯面上をバイパスして下流に設けた鋳型に前記塊状酸化物が未溶解のまま流出することなく、ハース内の溶湯中に滞留する間に完全溶解して鋳型に排出させることができ、更には、前記ハースに向かって供給された酸化物や金属がハース内に投入される前に空中に飛散することなく、全量をハース内の溶湯に供給できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
すなわち、本願発明は、電子ビーム溶解炉を用いたチタン合金インゴットの溶製方法において、粉状酸化チタンまたは酸化鉄を一旦顆粒状に加工した後、成型・焼結して、直径12〜25mm、厚さ2〜10mm、見掛け密度2.0〜4.0g/cm であって相当直径(ここで、相当直径とは、板状ペレットの厚み方向と直交する断面の面積に等しい円の直径を意味する)に対する厚みの比0.2〜0.5である板状焼結ペレットを得、板状焼結ペレットと顆粒状スポンジチタンまたは顆粒状リサイクルチタンとを混合し、これらの混合物を溶解原料として電子ビーム溶解炉に供給することを特徴とするものである。
また、本願発明は、前記塊状酸化物が板状ペレットであることを特徴とするものであって、前記板状ペレットの見かけ密度が2.0g/cm〜4.0g/cmの範囲にあり、かつ、前記板状ペレットの相当直径に対する厚みの比が、0.2〜0.5の範囲とすることを特徴とするものである。
加えて本願発明は、電子ビーム溶解炉を構成するハースに保持された溶湯面の下流近傍に電子ビームの照射密度を高めてガードゾーンを設けたことを特徴とするものであって、前記ガードゾーンに照射する電子ビームの密度が、前記ガードゾーン以外の領域に照射する電子ビームの照射密度に比べて3〜15倍大きいことを特徴とするものである。
更に、電子ビーム溶解炉を構成するハースの下流側に設けたガードゾーンに照射する電子ビームは、ハース下流側から上流側に向けて、ハース内の溶湯流れ方向と直交するように走査しつつ、ハース下流側から上流側に向けて照射することを特徴とするものである。
また、電子ビーム溶解炉を構成するハースに供給された板状の酸化物ペレットを浮遊させつつ溶湯流に載置させて下流側に移動させ下流側に形成したガードゾーン内にて減速させた後、前記酸化物ペレットを溶解消滅させることを特徴とするものである。
本発明によって塊状酸化物(板状焼結ペレット)と顆粒状金属との混合物を電子ビーム溶解炉内に配置したハースの溶湯面に供給することによって、更には、前記ハース下流に電子ビームの照射密度を高めたガードゾーンを設けることによって、前記酸化物原料がハース溶湯面上をバイパスして未溶解のまま鋳型に流出することなく、ハース内の溶湯中に滞留している間に完全溶解して鋳型に排出させることができ、加えてハースに供給した塊状酸化物(板状焼結ペレット)と顆粒状金属をロスなく、全量ハース内の溶湯中に供給して溶解することができるという効果を奏するものである。
本発明の電子ビーム溶解炉の模式図である。 図1の電子ビーム溶解炉のハースに設けるガードゾーンの模式図である。
本願発明の最良の実施形態について以下に詳細に説明する。
本願発明に用いる溶解原料は、粉状の酸化物を成型・焼結して塊状酸化物とし、前記塊状酸化物に顆粒状金属原料を混合して用いることが好ましい。
本願発明に用いる粉状の酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄を好適に用いることができる。前記粉状酸化物の純度は、溶製するインゴットの純度に応じて適宜選択すればよいが、本願発明においては純度が99%以上の粉状酸化物を用いることが好ましい。前記のような粉状酸化物を用いることにより、純度の高いチタン合金インゴットを溶製することができる。
また、前記粉状酸化物の比表面積は、1〜20m/gの範囲から選択することが好ましい。本願発明においては、前記粉状酸化物を、そのまま圧縮成型するに先立って、一旦、顆粒状に加工しておくことが好ましい。粉状酸化物を顆粒状に加工しておくことにより流動性が向上するため、圧縮成型作業を円滑に進めることができるという効果を奏するものである。
前記の顆粒状酸化物は、粉状酸化物にPVA(ポリビニルアルコール)のようなバインダーを適宜配合してスラリーとした後、スプレー乾燥し、高温に加熱して脱灰することにより純度の高い顆粒状酸化物を製造することができる。
前記した顆粒状酸化物の粒度は30〜100μmの範囲となるように構成することが好ましい。前記した粒度範囲に顆粒状酸化物を構成することにより、圧縮成型のための型に前記顆粒状酸化物を効率よく充填することができるという効果を奏するものである。
また、前記顆粒状酸化物の純度がそれほど厳しく要求されない場合には、粉状酸化物の製造工程で発生する純度の低い塊状付着物を粉砕・整粒して用いることもできる。このような原料を用いることにより、安価でしかもスプレー乾燥工程も不要となる。
前記の方法で製造された顆粒状酸化物は所定の大きさにプレス成型後、高温にて焼結して板状ペレットに成型することが好ましい。
本願発明では、前記板状ペレットの見かけ密度は、2.0〜4.0g/cmの範囲に構成することが好ましい。前記範囲に構成することで、ハース内の溶湯面に供給された板状ペレットは、円滑に溶解してハース内の溶湯と短時間のうちに合体させることができる。
前記板状ペレットの密度が2.0g/cmよりも小さい場合には、ハース内の溶湯面に達した場合にも、長時間に亘り溶湯面を浮遊し、完全溶解前に鋳型に流出する場合があり好ましくない。一方、前記板状ペレットの密度が4.0g/cm以上の場合には、ハース内の溶湯面に達した時点で比較的容易に溶湯内に溶解沈降するため好ましいが、それに先立って行う成型・焼結時には、高圧や高温が必要となり好ましくない。
また本願発明では、前記ペレットは板状に成型することが好ましい。また、前記板状ペレットの相当直径に対する厚みの比は、0.2〜0.5の範囲となるように構成しておくことが好ましい。
前記板状ペレットの相当直径に対する厚みの比が、0.5よりも大きくなると、溶湯面に達した時点で自己崩壊して空間部に飛散するという現象が予備試験により観察されている。また、ハース内に供給してから溶湯流に溶解消滅するまでに鋳型に排出されるという現象も観察されている。
一方、塊状ペレットの厚みが薄くなりすぎるとハースに原料を供給するアルキメデス缶内において破損して、顆粒状金属との混合比が低下し均一な組成を有する原料をハースに供給することが困難となる。よって、本願発明においては、板状ペレットの相当直径に対する厚みの比は0.2よりも大きくなるように設定しておくことが好ましい。
前記したように、塊状酸化物を板状に成型しておくことにより、電子ビーム溶解炉のハースに保持した溶湯面に達した後、短時間のうちに高温に昇温されて、ハース溶湯内に円滑に溶解させることができるという効果を奏するものである。
前記の板状ペレットの製造に際しては、前記のプレス成型に代えて顆粒状原料を打錠器のような自動成型器に供給することにより、効率よく成型することができる。
前記した板状ペレットの焼結雰囲気は、不活性ガス雰囲気が好ましく、アルゴンガス雰囲気で焼結することがより好ましいとされる。このような高温でしかも不活性ガス中で焼結することにより緻密な酸化物焼結体を製造することができる。
なお、塊状酸化物である板状ペレットの相当直径は、顆粒状金属の粒度範囲と整合するように構成しておくことが好ましい。このような大きさに成型しておくことにより、塊状酸化物と顆粒状金属から構成された溶解原料の均一性を向上させることができ、その結果、溶製される金属インゴットの合金組成の変動も最小限に抑制することができるという効果を奏するものである。
塊状酸化物(板状焼結ペレット)を酸化鉄で構成する場合には、周知のように酸化鉄はFe、Fe、あるいはFeOのような複数の酸化物形態が存在するので、溶解原料に用いる前に、予め酸化鉄中の化合物成分を分析し、Fe以外の酸化鉄が含まれている場合には、大気中あるいは酸化性雰囲気中にて、高温処理しておくことが好ましい。その結果、溶製される合金中の酸素および鉄の組成を精度良く制御することができるという効果を奏する。
前記した方法により製造された塊状酸化物(板状焼結ペレット)は、顆粒状金属と均一に混合した後、電子ビーム溶解炉内に溶解ハースに供給することにより均一な合金インゴットを溶製することができる。
また、本願発明に用いる顆粒状金属は、スポンジチタンのみならず、切粉や鍛造片等のリサイクルチタンを用いることもできる。本願発明にいては、前記顆粒状金属の粒度は、1〜25.4mmの範囲に整粒しておくことが好ましい。前記した粒度範囲に整粒しておくことにより、顆粒状金属に配合する塊状酸化物(板状焼結ペレット)の分散性を高めることができる。
本願発明に用いる塊状酸化物(板状焼結ペレット)は、前記の顆粒状金属の中心部に配置した塊状体を溶解原料として用いることもできる。このような合金成分と溶製金属を一体化した原料を用いることにより、経時的に組成変動の小さい合金インゴットを安定して製造することができるという効果を奏するものである。
次いで、前記した溶解原料を用いて合金インゴットを溶製する好ましい方法について、図1を用いて詳細に説明する。図1は、本願発明に用いる電子ビーム溶解炉Mの構成例を表している。本実施態様においては、顆粒状金属がスポンジチタンで、塊状酸化物(板状焼結ペレット)が酸化チタンで構成した板状の酸化チタンペレットである場合を念頭において以下に説明する。
符号1は、アルキメデス缶と呼ばれる円筒状回転式の原料排出装置であり、アルキメデス缶1の内部には螺旋状に仕切りが設けられており、缶内に充填された物体は、アルキメデス缶1の回転によって螺旋状の仕切り内を供給口から排出口へ順次移送される仕組みとなっている。アルキメデス缶1の内部には、溶解原料3(スポンジチタンと板状酸化チタンペレットから構成された顆粒状混合物)が充填されており、アルキメデス缶1の回転に伴い連続的に原料フィーダー2に排出される。なお、溶解原料3を構成するスポンジチタンと板状酸化チタンペレットは、アルキメデス缶1に供給される前に予め混合器を用いて充分に混合しておくことが好ましい。
本実施形態におけるアルキメデス缶1は、水平回転式の原料切り出し装置であって、前記アルキメデス缶1の内面には、らせん状のリブが配設されており前記リブにより、アルキメデス缶内に充填された原料が逆混合することなく、押し出し流れに近い状態で原料を電子ビーム溶解炉に供給することができる。その結果、原料組成の均一なインゴットを溶製できるという効果を奏するものである。
原料フィーダー2に排出された溶解原料3は、前記原料フィーダー2の下流に配置したハース4に供給される。前記ハース4に供給された溶解原料3は、電子ビーム照射手段10から溶湯5の表面に照射される電子ビームおよび溶湯5からの熱供給を受けて、前記ハース4内に保持された溶湯5中を滞留している間に完全に溶解して、溶湯5と一体化する。
この際、前記したハース4に保持した溶湯5の下流側には、図2に示すように他のハース領域に比べて電子ビームの照射密度を高めたガードゾーン55を設けるように操業することが好ましい。図2において、ハース4内の縦線の描画密度が、電子ビームの照射密度を模式的に表現している。
前記ガードゾーン55に照射する電子ビームの照射密度は、その他の領域にあるハース内の溶湯5に照射される電子ビームの密度に比べて、3〜15倍だけ大きく照射することが好ましく、4〜8倍大きく照射することがさらに好ましい。その結果、前記ガードゾーン55の温度を、その他のハース内の溶湯5に比べて高温に保持することができ、溶解原料がハースに滞留している間に確実に溶解させることができるという効果を奏する。
前記のガードゾーン55を設けることにより、ハース4内に溶湯5に供給された溶解原料3の一部が未溶解のままバイパスして下流側に流出しようとした場合においても、前記ガードゾーンに入ると、そこでバイパスしようとした溶解原料3がトラップされて完全に溶解されて溶湯5と一体化されるという効果を奏するものである。なお、前記ガードゾーン55では、ハース4内の溶湯5の流れと逆行するように溶湯流れの下流側から上流側に向かって、電子ビームを走査させつつ照射することが好ましい。前記したような電子ビームの走査方式を採用することで、溶湯表面を未溶解物がバイパスして鋳型へ流入する現象を抑制できるのみならず、比重の小さいLDIの流出も効果的に抑制することができるという効果を奏するものである。
本願発明においては、電子ビーム溶解炉を構成するハースに供給された板状の酸化物ペレットを浮遊させつつ溶湯流に載置させて下流側に移動させ下流側に形成したガードゾーン内にて減速させた後、前記酸化物ペレットを溶解消滅させることが好ましい。
これは、ガードゾーンに照射する電子ビームの走査間隔や照射密度あるいはハースの下流側から上流側方向の照射速度を調節することで達成することができる。
ハースから鋳型プール6に排出された溶湯は、水冷鋳型7からの冷却を受けてインゴット8が形成する。前記水冷鋳型7により形成されたインゴット8は、前記インゴット8の下端部に係合された引き抜き装置9により下方に連続的に引き抜かれる。
以上述べたように本願発明によれば、粉状の酸化物を成型焼結して塊状とし、前記塊状酸化物と顆粒状金属との混合物を溶解原料とすることにより、原料供給装置内への溶解原料の残留を極力回避することができるのみならず、前記原料供給装置からハース内の溶湯に供給された原料の自己崩壊による飛散を効果的に抑制できるという効果を奏するものである。
その結果、ハース内の溶湯に対する溶解原料の歩留まり低下を抑制することができるのみならず、溶製されるインゴット中の成分変動も効果的に抑制できるという効果を奏するものである。
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例および比較例における各サンプルの製造条件は、以下に整理した通りである。
1.原料
1)スポンジチタン
純度:99.7%
粒度:25.4mm
嵩密度:1.3〜2.0g/cm
2)酸化チタン(東邦チタニウム株式会社製)
純度:99.9%
比表面積:2〜3m/g
3)顆粒状試料製造装置
バインダー:ポリビニルアルコール
装置:スプレー乾燥器
4)焼結ペレット
焼結温度:600〜1000℃
焼結体形状:円板状
直径:12〜25mm
厚み:2〜10mm
2.溶解装置
1)原料供給装置:アルキメデス缶(横型回転式供給装置)
2)溶解炉:ハース式電子ビーム溶解炉
3.溶解条件
1)溶解電力:1100〜1400kW
2)真空度:1×10−5〜8×10−3Torr
3)鋳型径:660mm
4)溶解速度:500Kg/Hr
A.酸化チタンペレット供給時の溶湯内での挙動
[実施例1]
上記の条件で、酸化チタンの粉末試料にPVAを添加した後、スプレー乾燥して平均粒径が50μmの顆粒状酸化チタンを得た。次いで、前記顆粒状酸化チタンを円板状にプレス成型した後高温にて焼結して、φ12×6mm(0.5)およびφ20×6mm(0.30)の酸化チタンペレットを製造した。前記括弧内の数値は、酸化チタンペレットの径に対する厚みの比を表す。製造したそれぞれの大きさの円板状酸化チタンペレットについて、見掛け密度が、2.3g/cm3、3.5g/cm、および3.9g/cmの3水準の円板状酸化チタンペレットを準備し、本発明の範囲内の6種類の酸化チタンペレット(実施例1)を作製した。
[比較例1]
さらに、酸化チタンペレットの大きさをφ20×11mm(径に対する厚さ比0.55)、φ15×10mm(同0.67)に変更し、見掛け密度が1.8g/cm、2.3g/cm、3.5g/cm、3.9g/cmおよび4.2g/cmに変更した以外は実施例1と同じ条件で、本発明の範囲外の10種類の酸化チタンペレット(比較例1)を作製した。
[比較例2]
酸化チタンペレットの見掛け密度を1.8g/cmおよび4.2g/cmにした以外は実施例1と同じ条件で、本発明の範囲外の4種類の酸化チタンペレット(比較例2)を作製した。
これら円板状酸化チタンペレットを電子ビーム溶解炉のハース溶湯に供給して、ハース内でのペレットの挙動を観察した。その結果、実施例1の各酸化チタンペレットは、いずれも自己崩壊することなく、ハース下流から鋳型に排出される前に溶湯表面から溶解消滅する様子が観察された。比較例1の各酸化チタンペレットは、溶湯表面に到達した際に自己崩壊してハースの外部のその一部が飛散した。一部崩壊しない試料もあったが、完全溶解する前に、溶湯表面を浮遊して鋳型に排出されて、インゴットに混入してしまった。比較例2の各酸化チタンペレットは、溶湯表面に到達した際に自己崩壊してハースの外部のその一部が飛散した。これら実験結果を、下記の表1に示す。なお、○は、ハースの溶湯に供給した溶解原料が全量溶解できた例を、△および×は、ハースの溶湯に供給した溶解原料の一部が飛散もしくは自己崩壊、あるいはハースに供給される前に破損してアルキメデス缶に残留し全量溶解できなかった例を表している。
Figure 0005152994
表1に示すように、ペレットの粒径に対する厚さの比と見掛け密度を本願発明の範囲に選択することにより、ハースに供給した際の自己崩壊がなく、しかも組成の均一なチタン合金インゴットを溶製することができるという効果を奏するものである。
B.溶湯のガードゾーンおよび溶解速度によるインゴット酸素含有率への影響
[実施例2]
実施例1で作製した各酸化チタンペレットとスポンジチタンを混合してアルキメデス缶内に充填後、電子ビーム溶解炉内のハースに供給して、酸素含有率の高いチタンインゴットを溶製した。溶製されたインゴット中の酸素含有率を調査したところ、酸化チタンペレットの溶け残りは観察されず、インゴット頂部と底部における酸素含有率の差異は相対誤差において±30%の範囲にあった。
[実施例3]
実施例2において、ハース下流側出口から上流側に向かってハース全長の1/8の幅の電子ビームの照射密度を5倍に高めたガードゾーンを更に設けた以外は同様にして、酸素含有率の高いチタンインゴットを溶製した。溶製されたインゴット中の酸素含有率を調査したところ、インゴット頂部と底部における酸素含有率の差異は相対誤差において±25%の範囲にあり、インゴット中の酸素含有率の変動幅が実施例2と比較して更に改善されていることが確認された。
[実施例4]
実施例3において、溶解速度を2倍に増加させた以外は同様にして、酸素含有率の高いチタンインゴットを溶製した。その結果、ハース内の溶湯に供給したチタン溶解原料は、鋳型プールに排出される前に全量溶解消滅した。溶製されたインゴット中の酸素含有率を調査したところ、インゴット頂部と底部における酸素含有率の差異は相対誤差において±23%の範囲にあり、実施例2および3と同等レベルの品質を有するインゴットを溶製できることが確認された。
[比較例3]
実施例4において、ハース下流側にガードゾーンを設けない点を除き、同一条件下でハース溶湯に酸化チタンペレットを供給した。その結果、未溶解の酸化チタンペレットが鋳型プール内に流出する様子が確認された。
[比較例4]
実施例1において、相当直径が0.1の酸化チタンペレットをアルキメデス缶に充填してハースに供給しようとしたが、ハースへ供給される前に、酸化チタンペレットの大半が破損し、また、その一部がアルキメデス缶内に残留して均一な組成の原料をハースに供給することができなかった。
本発明は、合金組成が均一でしかも歩留まりの優れた合金インゴットを溶製する技術に好適であり、特に、電子ビーム溶解炉を用いた合金の溶製に好適である。
M 電子ビーム溶解炉
1 アルキメデス缶
2 原料フィーダー
3 溶解原料
4 ハース
5 溶湯
55 ガードゾーン
6 鋳型プール
7 水冷鋳型
8 インゴット
9 引き抜き装置
10 電子ビーム照射手段



以上

Claims (6)

  1. 電子ビーム溶解炉を用いたチタン合金インゴットの溶製方法において、
    粉状酸化チタンまたは酸化鉄を一旦顆粒状に加工した後、成型・焼結して、直径12〜25mm、厚さ2〜10mm、見掛け密度2.0〜4.0g/cm であって相当直径(ここで、相当直径とは、板状ペレットの厚み方向と直交する断面の面積に等しい円の直径を意味する)に対する厚みの比0.2〜0.5である板状焼結ペレットを得、
    前記板状焼結ペレットと顆粒状スポンジチタンまたは顆粒状リサイクルチタンとを混合し、
    これらの混合物を溶解原料として電子ビーム溶解炉に供給することを特徴とするチタン合金インゴットの溶製方法。
  2. 前記酸化物と顆粒状チタンとの混合物を電子ビーム溶解炉のハースに保持された溶湯面に供給することを特徴とする請求項1に記載のチタン合金インゴットの溶製方法。
  3. 前記ハースに保持された溶湯流の下流近傍に電子ビームの照射密度を高めた高温領域(以降、「ガードゾーン」と呼ぶ場合がある)を設けたことを特徴とする請求項2に記載のチタン合金インゴットの溶製方法。
  4. 前記ガードゾーンに照射する電子ビームの照射密度が、前記ガードゾーン以外のハース領域に照射する電子ビームの照射密度に比べて、3〜15倍であることを特徴とする請求項3に記載のチタン合金インゴットの溶製方法。
  5. 前記ガードゾーンに照射する電子ビームは、ハース下流側から上流側に向けて照射することを特徴とする請求項4に記載のチタン合金インゴットの溶製方法。
  6. 前記ハースに供給された板状の酸化物ペレットを浮遊させつつ溶湯流に載置させて下流側に移動させ下流側に形成したガードゾーン内にて減速させた後、前記酸化物ペレットを溶解消滅させることを特徴とする請求項5に記載のチタン合金インゴットの溶製方法。
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