以下、図面を参照して、本発明に係る進路評価装置の実施の形態を説明する。
本実施の形態では、本発明に係る進路評価装置を、車両に搭載される進路評価装置と進路選択装置に適用する。本実施の形態に係る進路評価装置は、自車両周辺(特に、進行方向側)に存在する物体でできる各死角の面積に基づいて複数の進路候補を評価し、各進路候補に対する評価結果を目標進路の生成装置や選択装置などに提供する。本実施の形態に係る進路評価装置には3つの形態があり、第1の実施の形態が死角面積に基づく評価の基本形態であり、第2の実施の形態が評価において自車両からの物体(死角)の相対位置に基づいて重み付けを行う形態であり、第3の実施の形態が評価において信号機の位置に基づいて重み付けを行う形態である。本実施の形態に係る進路選択装置は、複数の進路候補に対する評価結果(死角面積に基づく評価を含む)に基づいて複数の進路候補の中から目標進路となる進路候補を選択し、その目標進路を各種運転支援装置あるいは自動運転装置に提供する。
なお、死角は、目標進路を用いて各種運転支援を行う運転支援装置あるいは自動運転を行う自動運転装置におけるミリ波レーダなどのレーダ、画像センサ、レーザレンジファインダなどの周辺物体検出用のセンサで自車両の周辺(特に、進行方向側)を検出した場合に物体によって検出できない領域である。死角のできる物体としては、自動車、自動二輪車などの移動物体、壁や建物などの人工の静止物体、ブラインドコーナなど形成する自然の静止物体などがある。但し、目標進路情報を運転者に提供(表示など)する場合、その目標進路に基づいて運転者自身が運転操作を行うので、この場合には死角は運転者から見た場合に物体によって運転者が見えない領域である。
図1〜図3を参照して、第1の実施の形態に係る進路評価装置1について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る進路評価装置の構成図である。図2は、安全面だけを考慮して目標進路を選択した場合の前方車両による死角の変化の一例である。図3は、図1の進路評価装置での評価結果に基づいて目標進路を選択した場合の前方車両による死角の変化の一例である。
進路評価装置1は、自車両周辺の各物体による死角面積に基づいて複数の進路候補を評価し、各進路候補に対する死角効率を求める。特に、進路評価装置1は、進路候補に従って進行した場合に死角面積が減少するほど死角効率を高くする。そのために、進路評価装置1は、走行情報取得手段10、進路候補生成手段11、死角効率評価手段12を備えている。進路候補生成手段11及び死角効率評価手段12は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[ReadOnly Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなるECU[Electronic Control Unit]内に構成される。
なお、第1の実施の形態に係る進路評価装置1では、進路候補生成手段11が特許請求の範囲に記載する進路候補取得手段に相当し、死角効率評価手段12が特許請求の範囲に記載する死角面積取得手段及び評価手段に相当する。
走行情報取得手段10は、自車両の走行状態、自車両周辺(特に、自車両の進行方向側)の物体に対するセンシング結果、事前知識などを走行情報として取得する手段である。
自車両の走行状態としては、速度、操舵角、現在位置などがある。これらの情報の検出手段としては、各種センサ、GPS受信装置、カーナビゲーション装置などである。なお、目的地の位置や現在位置から目的地への進路方向などの目的地に関する情報も、自車両の走行に必要な情報として取得される。
自車両周辺の物体に対するセンシング結果としては、物体毎に、位置(自車両からの相対的な距離、方向など)、大きさ(幅方向、奥行き方向、高さ方向)などがあり、特に、移動物体の場合には速度、移動方向などがある。これらの物体のセンシング手段としては、ミリ波レーダなどの各種レーダ、ステレオカメラなどのカメラと画像処理装置(画像センサ)、レーザレンジファインダなどがある。
事前知識は、事前に取得可能な車両走行に必要な各種情報であり、道路地図、各種標識の位置と内容、停止線の位置、横断歩道の位置、信号機の位置などがある。事前知識は進路評価装置1に構成されるデータベースに予め格納され、自車両の現在位置に応じてデータベースからその周辺の情報が取り出される。
進路候補生成手段11は、走行情報取得手段10で取得された自車両の走行状態に基づいて目的地に向かって進行するための将来の進路候補を複数生成する手段である。ここでは、例えば、予測進路の生成方法や予測時間などが異なる動き予測モデルを用いて、複数の進路を予測する。
死角効率評価手段12は、進路候補生成手段11で生成された進路候補毎に、走行情報取得手段10で取得された自車両周辺の各物体でできる死角の面積に基づいて進路候補を評価し、死角効率を算出する手段である。
具体的には、まず、死角効率評価手段12では、自車両周辺の物体毎に、各物体の位置や大きさなどに基づいて、自車両の現在位置において周辺物体に対するセンシング手段でセンシングを行った場合に物体によってできる死角(センシングできない領域)の面積を算出する。
進路候補毎に、死角効率評価手段12では、自車両が進路候補に従って進行した位置を算出する。そして、死角効率評価手段12では、自車両周辺の物体毎に、各物体の位置(移動物体の場合には速度や移動方向に応じた所定時間後(進路の予測時間後)の位置)や大きさなどに基づいて、自車両が進路候補に従って進行した位置において周辺物体に対するセンシング手段でセンシングを行った場合に物体によってできる死角の面積を算出する。さらに、死角効率評価手段12では、自車両周辺の物体毎に、自車両の現在位置における死角面積と自車両が進路候補に従って進行した位置における死角面積との増減量(あるいは、増減率)を算出する。最後に、死角効率評価手段12では、自車両周辺の全ての物体の死角面積の増減量(あるいは、増減率)に基づいて進路候補の死角効率を算出する。
死角効率は、進路候補を評価する指標の一つである。死角効率は、自車両が進路候補に従って進行した前後での死角面積の増減を示すものであり、死角面積の減少率が大きいほど高い値である。したがって、複数の進路候補の中から死角効率の最も高い進路候補が選択され、その選択された進路候補に従って自車両が進行すると、死角面積が最も減少する。目的地への進路方向における死角面積が減るほど、その死角から飛び出してくる可能性のある物体が減る(物体が無くなる場合もある)ので、その物体との衝突確率が低下(衝突確率が0になる場合もある)し、自車両が目的地に向かうための領域を確実に確保することができる。
図2には、自車両MVの前方に一台の車両FVが存在し、前方車両FVで死角(斜線部分)ができている場合を示している。図2(a)に示すように、自車両MVが前方車両FVの後方を走行している場合、安全面だけを考慮して評価を行うと、前方車両FVによる死角BS1から飛び出してくる可能性のある仮想物体との関係で最も衝突確率が低くなるように、自車両MVが真っ直ぐに前方に進む目標進路TCが生成される。図2(b)に示すように、この目標進路TCに従って自車両MVが走行した場合、自車両MVが前方車両FVに接近し、死角BS2が大きくなる。そのため、この大きな死角BS2から物体が飛び出してくることを想定して評価を行うと、自車両MVが目的地の進路方向へ向かって進行するための領域が無くなり、自車両MVが進行することができなくなる。
しかし、図3(a)に示すように、自車両MVが前方車両FVの後方を走行している場合、進路評価装置1で複数の進路候補について評価をそれぞれ行い、その複数の進路候補の評価結果(死角効率)に基づいて進路候補を選択すると、自車両MVが右前方に進む目標進路TCが選択される。ここでは、目的地の進路方向が、右前方方向とする。図3(b)に示すように、この目標進路TCに従って自車両MVが走行した場合、自車両MVが前方車両FVに対して右側に少しずれ、死角BS2の右側が小さくなる。そのため、この死角BS2の右側から飛び出してくる仮想物体が殆ど無くなり、自車両MVが目的地の進路方向へ向かって進行するための領域が確保され、自車両MVが目的地に向かって確実に進行することができる。
図1を参照し、進路評価装置1の動作を図4のフローチャートに沿って説明する。図4は、図1の進路評価装置での動作の流れを示すフローチャートである。進路評価装置1では、以下の動作を一定時間毎に繰り返し行う。
進路評価装置1では、自車両の走行状態、自車両周辺の物体に対するセンシング結果、事前知識などの走行情報を取得する(S10)。
そして、進路評価装置1では、自車両の走行状態に基づいて、目的地に向かって進行するための進路候補を複数生成する(S11)。
さらに、進路評価装置1では、進路候補毎に、周辺の各物体についてのセンシング結果に基づいて進路候補に従って移動した前後の死角面積の増減をそれぞれ算出し、周辺の全ての物体についての死角面積の増減に基づいて死角効率を算出する(S12)。そして、進路評価装置1では、進路候補毎の死角効率を目標進路を取得するための装置に出力する。
この進路評価装置1によれば、死角面積に基づいて進路候補を評価することにより、各進路候補で進行した場合に死角を大きくするのかあるいは死角を小さくするのかを評価できる。さらに、進路評価装置1によれば、進路候補での進行によって死角面積が減少するほど死角効率を高くすることにより、死角を小さくするための進路候補を選択できる。この複数の進路候補に対する死角効率に基づいて進路候補を選択することにより、安全を確保できる範囲内で目的地に向かって進む効率を考慮した適切な目標進路を取得することができ、自車両が目標進路に従って進行した場合に死角が大きくなって目的地に向かって進むことができなくなるようなことを防止できる。この目標進路に従って自車両が進行したとすると、自車両からの死角が小さくなるとともに自車両が目的地に確実に近づく。
図5及び図6を参照して、第2の実施の形態に係る進路評価装置2について説明する。図5は、第2の実施の形態に係る進路評価装置の構成図である。図6は、図5の進路評価装置での評価方法を説明するための二台の前方車両による死角の一例である。
進路評価装置2は、第1の実施の形態に係る進路評価装置1と比較すると、各死角に対して重み付けを行う点が異なる。進路評価装置2では、周辺の複数の物体による死角のうち自車両に近い物体(死角)ほど重み付けを重くする。そのために、進路評価装置2は、走行情報取得手段20、進路候補生成手段21、重み設定手段22、重み付き死角効率評価手段23を備えている。進路候補生成手段21、重み設定手段22及び重み付き死角効率評価手段23は、CPU、ROM、RAMなどからなるECU内に構成される。なお、走行情報取得手段20、進路候補生成手段21は、第1の実施の形態に係る走行情報取得手段10、進路候補生成手段11と同様の手段なので、その説明を省略する。
なお、第2の実施の形態に係る進路評価装置2では、進路候補生成手段21が特許請求の範囲に記載する進路候補取得手段に相当し、重み設定手段22が特許請求の範囲に記載する重み付け手段に相当し、重み付き死角効率評価手段23が特許請求の範囲に記載する死角面積取得手段及び評価手段に相当する。
重み設定手段22は、走行情報取得手段20でセンシングされた自車両周辺の物体毎に、その物体によってできる死角に対して重みを設定する手段である。目的地に向かって進行する場合、とりあえず、自車両から近い物体による死角から飛び出してくる可能性のある仮想物体との関係で安全を確保する必要がある。そのため、死角効率を評価する上で、自車両から近い物体による死角ほど、自車両から遠い物体による死角に比べて重要である。ちなみに、自車両から遠い物体による死角を小さくするために、自車両から近い物体による死角が大きくなってしまった場合、自車両が目的地に向かって進行するための領域が狭くなり、自車両が目的地に向かうための進路候補の選択肢も少なくなる。その結果、長期的にみて、自車両が目的地に向かう効率が低下する。
具体的には、重み設定手段22では、自車両周辺の各物体の位置に基づいて、目的地への進路方向において自車両から近い順に順位付けする。そして、重み設定手段22では、目的地への進路方向において自車両から近いほど、物体(すなわち、死角)に対して高い重みを設定する。
重み付き死角効率評価手段23は、進路候補生成手段21で生成された進路候補毎に、走行情報取得手段20で取得された自車両周辺の各物体でできる死角の面積と重み設定手段22で設定された各物体(各死角)の重みに基づいて進路候補を評価し、死角効率を算出する手段である。
具体的には、まず、重み付き死角効率評価手段23では、第1の実施の形態に係る死角効率評価手段12と同様の処理により、進路候補毎に、自車両周辺の物体毎(死角毎)に進路候補に従って進行した前後での死角面積の増減量(あるいは、増減率)を算出する。そして、重み付き死角効率評価手段23では、進路候補毎に、自車両周辺の物体毎(死角毎)に死角面積の増減量(あるいは、増減率)に重みを加味する。さらに、重み付き死角効率評価手段23では、進路候補毎に、自車両周辺の全ての物体についての重みを加味した死角面積の増減量(あるいは、増減率)に基づいて進路候補の死角効率を算出する。
図6には、自車両MVの前方に二台の車両FV1,FV2が存在し、前方車両FV1,FV2で死角(斜線部分)ができている場合を示している。この場合、進路評価装置2では、前方車両FV1による死角BS1に対して高い重みが設定され、前方車両FV2による死角BS2に対して低い重みが設定される。そのため、進路候補毎に算出される死角効率のうち、前方車両FV1による死角BS1をより多く減少させる進路候補の死角効率が高くなる。したがって、進路評価装置2で複数の進路候補について評価をそれぞれ行い、その複数の進路候補の評価結果(死角効率)に基づいて進路候補を選択すると、自車両MVが右前方に進む目標進路TCが選択される。ここでは、目的地の進路方向が、右前方方向とする。この目標進路TCに従って自車両MVが走行した場合、自車両MVが前方車両FV1に対して右側方にずれ、前方車両FV1による死角BS1が殆ど無くかあるいは完全に無くなる。そのため、この死角BS1から飛び出してくる仮想物体が殆ど無くなりあるいは完全に無くなり、自車両MVが目的地の進路方向へ向かって進行するための領域が確保され、自車両MVが目的地に向かって確実に進行することができる。
図5を参照し、進路評価装置2の動作を図7のフローチャートに沿って説明する。図7は、図5の進路評価装置での動作の流れを示すフローチャートである。進路評価装置2では、以下の動作を一定時間毎に繰り返し行う。
進路評価装置2では、第1の実施の形態に係る進路評価装置1と同様の動作により、走行情報を取得し(S20)、進路候補を複数生成する(S21)。
進路評価装置2では、自車両周辺の物体毎に、センシングされた物体の自車両からの相対位置に基づいて、自車両から近いほどその物体による死角に対して高い重みを設定する(S22)。
さらに、進路評価装置2では、進路候補毎に、周辺の各物体についてのセンシング結果に基づいて進路候補に従って移動した前後の死角面積の増減をそれぞれ算出し、周辺の全ての物体についての死角面積の増減と重みに基づいて死角効率を算出する(S23)。そして、進路評価装置2では、進路候補毎の死角効率を目標進路を取得するための装置に出力する。
この進路評価装置2によれば、第1の実施の形態に係る進路評価装置1と同様の効果を有する上に、以下の効果も有している。進路評価装置2によれば、自車両に近い物体(死角)ほど高い重みを設定し、その重みを加味して死角効率を求めることにより、自車両から近い物体による死角を小さくする進路候補を判別できる。この複数の進路候補に対する死角効率に基づいて進路候補を選択することにより、目的地に向かって進む効率のより高い目標進路を取得することができる。
図8及び図9を参照して、第3の実施の形態に係る進路評価装置3について説明する。図8は、第3の実施の形態に係る進路評価装置の構成図である。図9は、図8の進路評価装置での評価方法を説明するための前方車両と信号機の配置の一例である。
進路評価装置3は、第1の実施の形態に係る進路評価装置1と比較すると、各死角に対して重み付けを行う点が異なる。進路評価装置3では、周辺の複数の物体による死角のうち信号機を含む死角に対する重み付けを重くする。そのために、進路評価装置3は、走行情報取得手段30、進路候補生成手段31、可変重み設定手段32、重み付き死角効率評価手段33を備えている。進路候補生成手段31、可変重み設定手段32及び重み付き死角効率評価手段33は、CPU、ROM、RAMなどからなるECU内に構成される。なお、走行情報取得手段30、進路候補生成手段31は、第1の実施の形態に係る走行情報取得手段10、進路候補生成手段11と同様の手段なので、その説明を省略する。
なお、第3の実施の形態に係る進路評価装置3では、進路候補生成手段31が特許請求の範囲に記載する進路候補取得手段に相当し、可変重み設定手段32が特許請求の範囲に記載する重み付け手段に相当し、重み付き死角効率評価手段33が特許請求の範囲に記載する死角面積取得手段及び評価手段に相当する。
可変重み設定手段32は、走行情報取得手段30でセンシングされた自車両周辺の物体毎に、その物体によってできる死角に対して重みを設定する手段である。信号機の状態は、時々刻々と変化する。そのため、車両が走行する場合、車両側で信号機の状態が認識されていないと、安全上、走行不能となる。そのため、目的地に向かって進行する効率が著しく低下する。そのため、信号機が死角内に極力入らないようにする必要があり、死角効率を評価する上で信号機の位置が重要となる。
具体的には、可変重み設定手段32では、自車両周辺の物体毎に、各物体の位置や大きさなどに基づいて、自車両の現在位置において周辺物体に対するセンシング手段でセンシングを行った場合に物体によってできる死角の範囲(自車両からの相対的な範囲)を算出する。ここでは、進路候補生成手段31で生成された進路候補毎に、進路候補に従って進行する前の死角の範囲と進行した後の死角の範囲をそれぞれ算出する。また、可変重み設定手段32では、事前知識に基づいて、自車両の現在位置周辺の信号機の位置(自車両からの相対位置)を算出する。そして、可変重み設定手段32では、進路候補毎に、各死角の範囲と信号機の位置に基づいて、進路候補に従って進行する前後の死角の範囲内に信号機を含む場合にはその死角に対して高い重みを設定し、それ以外の死角に対して低い重みを設定する。なお、センシング可能な範囲内に信号機が無い場合、全ての死角に一様な重みを設定する。
重み付き死角効率評価手段33は、進路候補生成手段31で生成された進路候補毎に、走行情報取得手段30で取得された自車両周辺の各物体でできる死角の面積と重み設定手段32で設定された各死角の重みに基づいて進路候補を評価し、死角効率を算出する手段である。
具体的には、まず、重み付き死角効率評価手段33では、第1の実施の形態に係る死角効率評価手段12と同様の処理により、進路候補毎に、自車両周辺の物体毎(死角毎)に進路候補に従って進行した前後での死角面積の増減量(あるいは、増減率)を算出する。そして、重み付き死角効率評価手段33では、進路候補毎に、自車両周辺の死角毎に死角面積の増減量(あるいは、増減率)に重みを加味する。さらに、重み付き死角効率評価手段33では、進路候補毎に、自車両周辺の全ての物体についての重みを加味した死角面積の増減量(あるいは、増減率)に基づいて進路候補の死角効率を算出する。
図9には、自車両MVの前方に二台の車両FV1,FV2が存在するとともに、前方に信号機Sが存在する場合を示している。ここでは、目的地の進路方向が、右前方方向とする。したがって、目的地に向かって進む効率面を考慮して評価を行うと、自車両MVが右前方に大きく進みかつ死角が大きく減少する目標進路TC1が生成される。この目標進路TC1に従って自車両MVが走行した場合、前方車両FV2による死角BS2内に信号機Sが入り、自車両MVから信号機Sをセンシングできなくなる。この場合、進路評価装置3では、信号機3を含む死角に対して高い重みが設定される。そのため、進路候補毎に算出される死角効率のうち、信号機Sを含む死角をより多く減少させる(信号機Sを含む死角を全く無くす)進路候補の死角効率が高くなる。したがって、進路評価装置3で複数の進路候補について評価をそれぞれ行い、その複数の進路候補の評価結果(死角効率)に基づいて進路候補を選択すると、自車両MVが右前方に少し進む目標進路TC2が選択される。この目標進路TC2に従って自車両MVが走行した場合、自車両MVが信号機Sの略正面になり、前方車両FV1,FV2でできる死角内には信号機Sが全く入らない。したがって、自車両MVから信号機Sを確実にセンシングすることができる。また、前方車両FV1,FV2による死角(特に、前方車両FV1による死角)も小さくなる。
図8を参照し、進路評価装置3の動作を図10のフローチャートに沿って説明する。図10は、図8の進路評価装置での動作の流れを示すフローチャートである。進路評価装置3では、以下の動作を一定時間毎に繰り返し行う。
進路評価装置3では、第1の実施の形態に係る進路評価装置1と同様の動作により、走行情報を取得し(S30)、進路候補を複数生成する(S31)。
進路評価装置3では、事前知識に基づいて自車両からの信号機の位置を算出し、信号機を含む死角に対して高い重みを設定し、それ以外の死角に低い重みを設定する(S32)。
さらに、進路評価装置3では、進路候補毎に、周辺の各物体についてのセンシング結果に基づいて進路候補に従って移動した前後の死角面積の増減をそれぞれ算出し、周辺の全ての物体についての死角面積の増減と重みに基づいて死角効率を算出する(S33)。そして、進路評価装置3では、進路候補毎の死角効率を目標進路を取得するための装置に出力する。
この進路評価装置3によれば、第1の実施の形態に係る進路評価装置1と同様の効果を有する上に、以下の効果も有している。進路評価装置3によれば、信号機を含む死角に高い重みを設定し、その重みを加味して死角効率を求めることにより、信号機を含む死角を小さくする(死角を無くす)進路候補を判別できる。この複数の進路候補に対する死角効率に基づいて進路候補を選択することにより、信号機を含むような死角を極力形成しない目標進路を取得することができ、目的地に向かって進む効率がより高くなる。
図11を参照して、本実施の形態に係る進路選択装置4について説明する。図11は、本実施の形態に係る進路選択装置の構成図である。
進路選択装置4は、複数の進路候補に対して3つの評価指標(死角効率、進行効率、安全度)をそれぞれ求め、この3つの評価指標に基づいて目標進路を選択する。特に、進路選択装置4では、死角効率を求めるために第1の実施の形態に係る進路評価装置1と同様の手法を用いる。そのために、進路選択装置4は、走行情報取得手段40、進路候補生成手段41、死角効率評価手段42、進行効率評価手段43、安全評価手段44、進路選択手段45を備えている。進路候補生成手段41、死角効率評価手段42、進行効率評価手段43、安全評価手段44及び進路選択手段45は、CPU、ROM、RAMなどからなるECU内に構成される。なお、走行情報取得手段40、進路候補生成手段41は、第1の実施の形態に係る走行情報取得手段10、進路候補生成手段11と同様の手段なので、その説明を省略する。
なお、本実施の形態に係る進路選択装置4では、進路候補生成手段41が特許請求の範囲に記載する進路候補取得手段に相当し、死角効率評価手段42が特許請求の範囲に記載する死角面積取得手段及び評価手段に相当し、進路選択手段45が特許請求の範囲に記載する選択手段に相当する。
死角効率評価手段42は、進路候補生成手段41で生成された進路候補毎に、走行情報取得手段40で取得された自車両周辺の各物体でできる死角の面積に基づいて進路候補を評価し、死角効率を算出する手段である。死角効率評価手段42では、第1の実施の形態に係る進路評価装置1の死角効率評価手段と同様の処理により、進路候補毎の死角効率を算出する。
進行効率評価手段43は、進路候補生成手段41で生成された進路候補毎に、走行情報取得手段40で取得された自車両の走行状態に基づいて目的地に向かって進む距離を評価し、進行効率を算出する手段である。進行効率は、進路候補を評価する指標の一つである。進行効率は、目的地に向かって進んだ距離が長い(目的地に近づく)ほど高い値である。
安全評価手段44は、進路候補生成手段41で生成された進路候補毎に、走行情報取得手段40で取得された自車両の走行状態と自車両周辺の物体のセンシング結果に基づいて安全性を評価し、安全度を算出する手段である。安全度は、進路候補を評価する指標の一つである。安全度は、自車両と自車両周辺の物体自体との衝突確率や死角から飛び出してくる仮想物体との衝突確率が低いほど高い値である。
進路選択手段45は、死角効率評価手段42で評価された進路候補毎の死角効率、進行効率評価手段43で評価された進路候補毎の進行効率、安全評価手段44で評価された進路候補毎の安全度に基づいて、進路候補生成手段41で生成された進路候補毎の中から最適な進路候補(目標進路)を選択する手段である。ここでは、死角効率、進行効率、安全度を均一に評価してもよいし、それぞれ重みを変えて評価してもよい。
図11を参照し、進路選択装置4の動作を図12のフローチャートに沿って説明する。図12は、図11の進路選択装置での動作の流れを示すフローチャートである。進路選択
装置4では、以下の動作を一定時間毎に繰り返し行う。
進路選択装置4では、第1の実施の形態に係る進路評価装置1と同様の動作により、走行情報を取得し(S40)、進路候補を複数生成する(S41)。
さらに、進路評価装置4では、第1の実施の形態に係る進路評価装置1と同様の動作により、進路候補毎に死角効率を算出する(S42)。また、進路評価装置4では、進路候補毎に、自車両の走行状態に基づいて進行効率を算出する(S43)。また、進路評価装置4では、進路候補毎に、自車両の走行状態と周辺の各物体についてのセンシング結果に基づいて安全度を算出する(S44)。
そして、進路評価装置4では、進路候補毎の死角効率、進行効率、安全度に基づいて、複数の進路候補の中から最適な進路候補(目標進路)を選択する(S45)。そして、進路評価装置4では、その目標進路を各種運転支援装置あるいは自動運転装置に出力する。
この進路選択装置4によれば、進路候補毎の死角効率、進行効率、安全度に基づいて目標進路を選択することにより、安全を確保した上で目的地に向かって確実かつ効率的に進む目標進路を取得することができる。特に、進路選択装置4は、第1の実施の形態に係る進路評価装置1の効果も有している。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では進路評価装置及び進路選択装置に適用したが、自車両の目標進路に基づいて各種運転支援を行う運転支援装置、目標進路に関する情報を運転者に提供する情報提供装置あるいは目標進路に沿って自動運転を行う自動運転装置などの他の装置に適用してもよい。
また、本実施の形態に係る進路選択装置では死角効率の他に進行効率と安全度に基づいて複数の進路候補の中から目標進路を選択する構成としたが、死角効率だけを考慮してもよいし、死角効率の他に進行効率と安全度のいずれか一方だけを考慮してもよいし、あるいは、交通ルールの遵守度などの他の評価指標を考慮してもよい。
また、本実施の形態では死角の量として死角の面積(2次元)に基づいて複数の進路候補を評価する構成としたが、死角の量としては体積(3次元)、過体積(4次元以上(例えば、時間などのパラメータを含むもの))でもよい。
また、第3の実施の形態では信号機を含む死角に対して重み付けを重くする構成としたが、車両が走行する上で認識できないと走行効率が低下する虞のある標識、横断歩道、高速道路などの情報電光板などの他の重要な対象を含む死角に対して重み付けを重くしてもよい。特に、情報電光板などのように情報内容が変わるものに対する重み付けを重くすると好適である。
また、第2の実施の形態における自車両からの物体(死角)の相対位置に基づく重み付けと第3の実施の形態における信号機の位置に基づく重み付けを両方行う構成としてもよい。また、他の要因(例えば、死角を形成する物体の大きさ)で重要度の高い物体を設定し、重み付けを行ってもよい。
1,2,3…進路評価装置、4…進路選択装置、10,20,30,40…走行情報取得手段、11,21,31,41…進路候補生成手段、12,42…死角効率評価手段、22…重み設定手段、23,33…重み付き死角効率評価手段、32…可変重み設定手段,43…進行効率評価手段、44…安全評価手段、45…進路選択手段