JP5145831B2 - 燃料電池、燃料電池用拡散層及び燃料電池システム。 - Google Patents
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Description
アノード側:H2 → 2H++2e−
カソード側:1/2O2+2H++2e− → H2O
全反応 :H2+1/2O2 → H2O
すなわち、水素がアノード側のセパレータのガス流路に供給され、拡散層を通って触媒層に供給される。そして、触媒層での電気化学反応によって水素が酸化されてプロトンと電子とが生成する。こうして生成したプロトンは、オキソニウムイオンの形態で水を引き連れながら触媒層および高分子固体電解質内を移動し、カソード側に達する。一方、カソード側に供給された酸素は、オキソニウムイオンと結合し、水が生成する。
酸素極の拡散層は、反応層で生成した水を吸い出し、液体水として保持する拡散層基材と、
該拡散層基材の反応層側に形成され、細孔径分布が2つ以上の極大ピークを有し、該極大ピークの少なくとも1つはガスを通して液体を実質的に通さない細孔径であり、該極大ピークの少なくとも1つは液体を通す細孔径を有する第1のマイクロポーラス層と、
前記拡散層基材の反応層と反対側に形成され、ガスを通して液体を実質的に通さない細孔径を有する第2のマイクロポーラス層と、を備えることを特徴とする。
少なくとも酸素極の拡散層は、反応層で生成した水を吸い出し、液体水として保持する拡散層基材と、該拡散層基材の反応層側に形成され、細孔径分布が2つ以上の極大ピークを有し、該極大ピークの少なくとも1つはガスを通して液体を実質的に通さない細孔径であり、該極大ピークの少なくとも1つは液体を通す細孔径を有する第1のマイクロポーラス層と、
前記拡散層基材の反応層と反対側に形成され、ガスを通して液体を実質的に通さない細孔径を有する第2のマイクロポーラス層とを備え、
前記制御手段は、供給空気のストイキ比を10から200の範囲となるように制御することを特徴とする。
ここで、供給空気のストイキ比とは、発電電流に必要な空気の消費量に対する供給量の割合をいう。
(実施形態1)
実施形態1の燃料電池は、図1に示す燃料電池単層セル10が複数個積層されて構成されている。この燃料電池単層セル10は、ナフィオン(登録商標)からなる高分子電解質膜11が酸素側拡散層12及び水素側拡散層13によって挟持されており、さらにその外側に溝状のガス流路が形成されたセパレータ14、15が図示しない取付治具により圧接されている。
(実施例1)
一次粒子径が16nmのカーボンブラック粉末と、一次粒子径が48nmのカーボンブラック粉末とを1:1の重量比で混合する。そして、この混合物100重量部に対してポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の微粉末を35重量部加えて混合し、成形してカーボン−PTFE自立膜とする。そして、平織りのカーボンクロスを用意し、上記の溶着したカーボン−PTFE自立膜2枚で挟んで345°Cで熱圧着させて一体化する。
なお、拡散層の上に印刷して反応層を形成する替わりに、ポリテトラフルオロエチレン製のシート上に上記触媒ペーストで印刷し、乾燥後、剥離させて自立した反応層膜を作製し、これを拡散層と熱圧着させて反応層を形成してもよい。
比較例1では、マイクロポーラス層を形成するためのカーボンとして、一次粒子径が16nmのカーボンブラックのみを用いた。その他は実施例1の燃料電池単層セルと同様であり、説明を省略する。
比較例2では、マイクロポーラス層を形成するためのカーボンとして、一次粒子径が48nmのカーボンブラックのみを用いた。その他は実施例1の燃料電池単層セルと同様であり、説明を省略する。
(細孔径分布の測定)
上記において作製した実施例1及び比較例1、2に係るカーボン−PTFE自立膜について、その細孔径分布を測定した。その結果、図2に示すように、細孔径分布のピークが比較例1では0.015μm、比較例2では細孔径分布のピークが0.15μmであり、それぞれ単一の細孔径分布のピークを有するのに対し、実施例1では、細孔径分布のピークが0.015μm及び0.15μmの2つのピークを示した。
また、上記のようにして作製した実施例1及び比較例1、2の燃料電池単層セルについて、発電特性を測定した。すなわち、実施例1及び比較例1、2の燃料電池単層セルの空気極側のセパレータのガス流路に、図3に示すように、エアポンプ31と、エアの温度と、エアの湿度とを調節するための制御装置32を接続する。さらに、燃料極側のセパレータのガス流路に、水素ガス供給装置33を接続する。そして、燃料極側セパレータのガス流路に、水素ガス供給装置33から乾燥した水素ガスを導入するとともに、酸素側のセパレータのガス流路に、供給空気のストイキ比が30となるように制御装置32で制御しながら供給し、セル温度を60°Cとし、様々な電流値おけるセル電圧を測定した。
本発明の燃料電池システムの実施例を図7に示す。この燃料電池システムは空冷式であり、燃料電池スタック40と、燃料ガスとしての水素ガスを燃料電池スタック40に供給するための水素ガス供給系50と、酸化ガスとしての空気を燃料電池スタック40に供給するための空気供給系60と、空気供給系60に設けられた送風機61を制御するための制御装置70とを備えている。
また、空気供給系60の送風機61を駆動して、空気を空気マニホールド41から燃料電池スタック40の空気流路に供給する。これにより、燃料電池スタック40内で水素ガスの電気化学的酸化反応及び酸素の電気化学的還元反応が行われ、電流が負荷80に流れる。
空気流路の供給された過剰空気は空気ダクト42から排気されるが、その排気された空気の温度を温度センサ43が感知し、制御装置70に温度に関する信号を伝える。さらに制御装置70では、温度センサ43が感知した温度と設定温度とを比較し、感知温度が設定温度よりも高い場合には送風機61の出力を上げてさらに多くの空気を送り、燃料電池スタック40を空冷する。また、感知温度が設定温度よりも低い場合には送風機61の出力を下げて、空気の流量を下げる。これにより、燃料電池スタック40の温度が上昇する。こうして、制御装置70によって、ストイキ比を調整を行うことができる。
このため、酸素極に空気が供給されても、水は拡散層に保持され、空気中へ蒸発して持ち去られる量が少なくなる。このため、膜−電極接合体の乾燥を高度に防ぐことができる。このため、大きなストイキ比で駆動される空冷式燃料電池であるにもかかわらず、燃料電池スタック40の膜−電極接合体の乾燥が防止され、燃料電池システムの出力の低下が防止される。さらには、第1マイクロポーラス層の細孔径分布が2つ以上の極大ピークを有しているため、低負荷領域での乾燥及び高負荷領域でのフラッディング現象を防止でき、広い負荷範囲において電圧降下の小さい燃料電池システムとなる。
実施例2は、第1のマイクロポーラス層が厚さ方向において異なる細孔径分布を有する拡散層であり、以下のようにして作製される。
一次粒子径が16nmのカーボンブラック粉末100重量部に対してポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の微粉末を35重量部加えて混合し、このカーボン−PTFE混合物を溶着して自立膜とする。さらに、一次粒子径が48nmのカーボンブラック粉末100重量部に対してポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の微粉末を35重量部加えて混合し、このカーボン−PTFE混合物を溶着して自立膜とする。こうして得られた、細孔径分布の異なる2枚のカーボン−PTFE自立膜をホットプレスで貼り合わせることにより、厚さ方向において異なる細孔径分布を有する第1のマイクロポーラス層を作製することができる。さらには、こうして得られた第1のマイクロポーラス層を用い、実施例1と同様の方法によって、実施例2の拡散層が得られる。
実施例3は、第1のマイクロポーラス層が面方向において異なる細孔径分布を有する拡散層であり、以下のようにして作製される。
実施例2と同様の方法により、細孔径分布の異なる2種類のカーボン−PTFE自立膜を用意する。こうして作製した2種類のカーボン−PTFE自立膜を酸素極側反応層付拡散層とし、場所に応じて配置させて(例えば温度が高くなるため乾燥しがちな箇所には、細孔径の小さいカーボン−PTFE自立膜とする等)、ナフィオン(登録商標)からなる高分子電解質膜に圧着させる。こうして、面方向において異なる細孔径分布を有する第1のマイクロポーラス層を作製することができる。さらには、こうして得られた第1のマイクロポーラス層を用い、実施例1と同様の方法によって、実施例3の拡散層が得られる。
実施例4は、厚さ方向に貫通する細孔を有する第1のマイクロポーラス層を設けた拡散層であり、以下のようにして作製される。
一次粒子径が16nmのカーボンブラック粉末100重量部に対してポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の微粉末を35重量部加えて混合し、このカーボン−PTFE混合物を溶着して自立膜とする。この自立膜にレーザ光や針等を用いて厚さ方向に貫通する細孔を形成する。こうして得られた貫通孔付の自立膜を用い、実施例1と同様の方法によって拡散層を作製する。
12d、13b、16d…反応層
12、13、16…拡散層
12a、13a…拡散層基材
12b…第1マイクロポーラス層
12c…第2マイクロポーラス層
31、61、62…空気供給手段(61…エアポンプ、62…供給管)
33、51〜58…水素ガス供給装置(51…水素ボンベ、52〜57…調整弁、58…水素ポンプ)
32、70…制御装置(制御手段)
Claims (10)
- 固体高分子電解質層の両側を、反応層と拡散層とからなる燃料極及び酸素極で挟持した燃料電池において、
前記酸素極の拡散層は、前記反応層で生成した水を吸い出し、液体水として保持する拡散層基材と、
該拡散層基材の前記反応層側に形成され、0.01μm以下に細孔径分布の極大ピークを有しガスを通して前記液体水を実質的に通さない細孔径のカーボン粉末と、0.1μm以上に細孔径分布の極大ピークを有し前記液体水を通す細孔径のカーボン粉末とを有する第1のマイクロポーラス層と、
前記拡散層基材の前記反応層と反対側に形成され、0.01μm以下に細孔径分布の最大ピークを有しガスを通して前記液体水を実質的に通さないカーボン粉末を有する第2のマイクロポーラス層と、を備えることを特徴とする燃料電池。 - 前記第1のマイクロポーラス層は面方向及び厚さ方向において実質的に均一な細孔径分布を有することを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
- 前記第1のマイクロポーラス層は厚さ方向において異なる細孔径分布を有することを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
- 前記第1のマイクロポーラス層は面方向において異なる細孔径分布を有することを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
- 前記第1のマイクロポーラス層は厚さ方向に貫通する1μm以上の径の孔を有することを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
- 前記第1と第2のマイクロポーラス層は、撥水性樹脂が添加されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の燃料電池。
- 前記拡散層基材は金属多孔体からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の燃料電池。
- 反応層で生成した水を吸い出し、液体水として保持する拡散層基材と、
該拡散層基材の一面側に形成され、0.01μm以下に細孔径分布の極大ピークを有しガスを通して前記液体水を実質的に通さない細孔径のカーボン粉末と、0.1μm以上に細孔径分布の該極大ピークを有し前記液体水を通す細孔径のカーボン粉末とを有する第1のマイクロポーラス層と、
該拡散層基材の他面側に形成され、0.01μm以下に細孔径分布の最大ピークを有しガスを通して前記液体水を実質的に通さないカーボン粉末を有する第2のマイクロポーラス層と、を備えることを特徴とする燃料電池用拡散層。 - 固体高分子電解質層の両側を、反応層と拡散層とからなる燃料極及び酸素極で挟持した燃料電池と、前記燃料極に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手投と、前記酸素極に酸化ガス及び冷媒ガスとしての空気を供給する空気供給手段と、空気供給量を制御して前記燃料電池の温度を制御する制御手段とを備えた燃料電池システムにおいて、
少なくとも前記酸素極の拡散層は、前記反応層で生成した水を吸い出し、液体水として保持する拡散層基材と、該拡散層基材の前記反応層側に形成され、0.01μm以下に細孔径分布の極大ピークを有しガスを通して前記液体水を実質的に通さない細孔径のカーボン粉末と、0.1μm以上に細孔径分布の極大ピークを有し前記液体水を通す細孔径のカーボン粉末とを有する第1のマイクロポーラス層と、
前記拡散層基材の前記反応層と反対側に形成され、0.01μm以下に細孔径分布の最大ピークを有しガスを通して前記液体水を実質的に通さないカーボン粉末を有する第2のマイクロポーラス層とを備え、
前記制御手段は、供給空気のストイキ比を10から200の範囲となるように制御することを特徴とする燃料電池システム。 - 前記空気供給手段は、送風機を用いたことを特徴とする請求項9記載の燃料電池システム。
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