以下、本発明の実施の形態によるスクロール式流体機械として無給油式のスクロール式空気圧縮機を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
まず、図1ないし図4は本発明の第1の実施の形態を示し、この第1の実施の形態では、1組のスクロールによって空気を圧縮する1段圧縮のスクロール式空気圧縮機について説明する。
図1において、1は空気を圧縮するスクロール式空気圧縮機を示している。このスクロール式圧縮機1は、後述のケーシング2、固定スクロール3、旋回スクロール6、駆動軸8、ボールカップリング機構14により大略構成されている。
2はスクロール式空気圧縮機1の外枠を形成するケーシングで、該ケーシング2は、軸方向の一側がほぼ閉塞され、他側が開口した段付筒状体として形成されている。また、ケーシング2は、大径筒部2Aと、該大径筒部2Aよりも小径な筒状に形成され該大径筒部2Aの軸方向の一側から外側に向けて突出した小径な軸受筒部2Bと、該軸受筒部2Bと前記大径筒部2Aとの間に形成された環状部2Cとにより大略構成されている。さらに、ケーシング2の外周側には、後述のケーシング側収容凹部12が3箇所に設けられている。
3はケーシング2の他側に設けられた固定スクロールである。この固定スクロール3は、ケーシング2の大径筒部2Aを軸方向他側から閉塞するように該大径筒部2Aの開口端に固定されている。また、固定スクロール3は、軸線O−Oを中心としてほぼ円板状に形成された鏡板3Aと、該鏡板3Aの表面に軸方向に立設された渦巻状のラップ部3Bと、該ラップ部3Bを取囲んで鏡板3Aの外周側に設けられた筒部3Cと、鏡板3Aの背面に突設された複数の冷却フィン3Dとによって大略構成されている。
4は固定スクロール3に設けられた例えば2個の吸込口で、該各吸込口4は、鏡板3Aの外周側から筒部3Cにかけて開口し、後述する外周側の圧縮室7に連通している。そして、吸込口4は、吸込フィルタ4Aを通じて外周側の圧縮室7内に空気を流通させるものである。
5は固定スクロール3の鏡板3Aの中心側に設けられた吐出口で、該吐出口5は、最中心側の圧縮室7に連通し、この圧縮室7内の圧縮空気を吐出パイプ5Aから外部に吐出させるものである。
6は固定スクロール3と対向してケーシング2の大径筒部2A内に旋回可能に設けられた旋回スクロールを示している。この旋回スクロール6は、固定スクロール3の鏡板3Aと対向して配置されたほぼ円板状の鏡板6Aと、該鏡板6Aの表面に立設された渦巻状のラップ部6Bと、鏡板6Aの背面に突設された複数の冷却フィン6Cと、該冷却フィン6Cの先端側に位置して固定された背面プレート6Dとによって大略構成されている。
また、背面プレート6Dの中央側には、後述する駆動軸8のクランク8Aと回転可能に連結される筒状のボス部6Eが一体形成されている。さらに、背面プレート6Dの外周側には、後述のスクロール側収容凹部13が周方向の3箇所に設けられている。
7は固定スクロール3と旋回スクロール6との間に設けられた流体室としての複数の圧縮室である。これらの圧縮室7は、旋回スクロール6が旋回運動するときに、ラップ部3B,6Bの外周側から中心側に向けて移動しつつ、これらの間で連続的に縮小される。これにより、各圧縮室7のうち外周側の圧縮室7には、吸込口4から空気が吸込まれ、この空気を中心側の圧縮室7に達するまでに圧縮する。そして、この圧縮空気を吐出口5から吐出し、吐出パイプ5Aを介して外部の空気タンク(図示せず)等に貯える。
8はケーシング2の軸受筒部2Bに軸受9,10を介して回転可能に設けられた駆動軸である。この駆動軸8は、モータ(図示せず)によって駆動されることにより、軸線O−Oを中心として回転し、旋回スクロール6を旋回動作させるものである。
ここで、駆動軸8の他端側には、軸線O−Oに対して一定の寸法だけ径方向に偏心したクランク8Aが設けられ、このクランク8Aは、旋回軸受11を介して旋回スクロール6の背面プレート6Dに設けられたボス部6Eに回転可能に連結されている。また、駆動軸8の一端側は、ケーシング2の外部に突出し、モータの出力側にベルト(図示せず)等を介して接続される。
ここで、旋回軸受11は、駆動軸8のクランク8Aに旋回スクロール6を回転可能に支持するもので、常に回転による負荷や摩擦力が作用している。このために、旋回軸受11は、運転時に温度が上昇するから、冷却風によって冷却する必要がある。特に、無給油式のスクロール式圧縮機1の場合、潤滑油による油冷効果を得ることができないから、旋回軸受11には積極的に冷却風を供給しなくてはならない。
次に、ケーシング2と旋回スクロール6との間にボールカップリング機構14を周方向に間隔をもって3箇所以上、例えば3箇所に独立して配設するための構成と、このボールカップリング機構14の構成について説明する。この場合の3箇所とは、旋回スクロール6をがたつくことなく安定して支持するために最低限必要な数で、冷却風の流れも考慮して選択されている。従って、ボールカップリング機構14を周方向に4箇所以上配置する構成としてもよい。
12はケーシング2の外周側に設けられた3個のケーシング側収容凹部である。これら3個のケーシング側収容凹部12は、図2中に二点鎖線で示すように、駆動軸8を中心とした周方向にほぼ等間隔(約120度間隔)で、ケーシング2の環状部2Cに配設されている。
また、3個のケーシング側収容凹部12は、後述するボールカップリング機構14のケーシング側支持部材15、旋回スクロール側支持部材16のボール支持面16C側および6個のボール17を収容するものである。そこで、各ケーシング側収容凹部12は、旋回スクロール6側となる他側が開口した有底穴として形成され、その内径寸法は、ケーシング側支持部材15が回転不能に嵌合(圧入)する寸法に設定されている。また、各ケーシング側収容凹部12の深さ寸法は、ケーシング側支持部材15と各ボール17と旋回スクロール側支持部材16の蓋部16Bとを収容できる程度に設定されている。さらに、ケーシング側収容凹部12内は、ボールカップリング機構14の摺動部を潤滑するためのグリース等の潤滑剤G(図1中に図示)を収容している。
一方、13は3個のケーシング側収容凹部12と対向するように旋回スクロール6の外周側に設けられた3個のスクロール側収容凹部である。これら3個のスクロール側収容凹部13は、図2に示すように、駆動軸8を中心とした周方向にほぼ等間隔(約120度間隔)で、背面プレート6Dの外周側に配設されている。
また、3個のスクロール側収容凹部13は、旋回スクロール側支持部材16の取付部16A側を収容するものである。そして、各スクロール側収容凹部13は、一側が開口した有底穴として形成され、その内径寸法は、旋回スクロール側支持部材16が回転不能に嵌合(圧入)する寸法に設定されている。また、各スクロール側収容凹部13の深さ寸法は、旋回スクロール側支持部材16の取付部16Aをほぼ半分収容できる程度に設定されている。さらに、スクロール側収容凹部13内は、ボールカップリング機構14の摺動部を潤滑するための潤滑剤Gを収容している。
14はケーシング2と旋回スクロール6との間に設けられた3個のボールカップリング機構を示している。これら3個のボールカップリング機構14は、旋回スクロール6の自転を防止すると共に、各圧縮室7の圧力によって旋回スクロール6に作用するスラスト荷重を支持するものである。
そして、各ボールカップリング機構14は、図3、図4に示す如く、後述のケーシング側支持部材15、旋回スクロール側支持部材16、ボール17、ボール規制溝18,19、シール部材20により大略構成されている。
15はケーシング側収容凹部12内に設けられたケーシング側支持部材である。このケーシング側支持部材15は、例えば圧入等の手段を用いてケーシング側収容凹部12の奥部に回転不能に嵌合されている。また、ケーシング側支持部材15は、短尺な段付円筒状に形成され、小径側のボール支持面15Aは、後述のボール17に当接している。
また、ケーシング側支持部材15には、ボール支持面15Aの中心側に開口する中心側潤滑剤貯留部15Bと、後述のボール規制溝18よりも外径側に位置する外周側潤滑剤貯留部15Cとが設けられている。そして、各潤滑剤貯留部15B,15Cは、各ボール17を円滑に転動するためのグリース等の潤滑剤Gを貯えるものである。
一方、16はスクロール側収容凹部13内に設けられた旋回スクロール側支持部材である。この旋回スクロール側支持部材16は、例えば旋回スクロール側収容凹部13に半分程度まで圧入等の手段を用いて回転不能に嵌合されている。また、旋回スクロール側支持部材16は、スクロール側収容凹部13内に挿嵌する中空な円筒状の取付部16Aと、該取付部16Aの一端側を閉塞した蓋部16Bとにより有蓋円筒状に形成されている。さらに、蓋部16Bの一端面は、ケーシング側支持部材15のボール支持面15Aとの間でボール17を挟持するボール支持面16Cとなっている。
また、取付部16Aは、ボール支持面16Cと軸方向の反対側に位置する反対側部位をなすもので、旋回スクロール側収容凹部13に収容されている。さらに、取付部16A内の空所は、多くの潤滑剤Gを貯えることができる潤滑剤貯留部16Dとなり、この潤滑剤貯留部16Dは、蓋部16B中央の連通穴16Eを介してケーシング側収容凹部12内(潤滑剤貯留部15B,15C)と連通している。
17はケーシング側支持部材15のボール支持面15Aと旋回スクロール側支持部材16のボール支持面16Cとの間に設けられた複数のボールである。これらのボール17は、鋼球等を用いて形成され、例えば6個設けられている。また、各ボール17は、後述のボール規制溝18,19に沿って転動することにより、該各ボール規制溝18,19によって転動する範囲が規制された状態となっている。
ここで、ボール17は、その個数を増やすことにより、1個あたりが支持する荷重が小さくなり、これに応じて直径寸法を小さくすることができる。これにより、ボール17の質量が小さくなり、ボール17に作用する慣性モーメントが小さくなるから、該ボール17がボール規制溝18,19に対して滑るのを防止できる。
18はケーシング側支持部材15のボール支持面15Aに設けられたボール規制手段としてのボール規制溝である。このボール規制溝18は、ボール17が転動する範囲を規制するもので、該ボール17の数に対応するように6個設けられている。詳しくは、ボール規制溝18は、図4に示すように、例えば円形をしたボール支持面15Aに周方向に等間隔で6個(約60度間隔)配置されている。また、各ボール規制溝18は、旋回スクロール6の旋回動作だけを許可するようにボール17を案内する円環状のガイド溝として凹設されている。
19は旋回スクロール側支持部材16のボール支持面16Cに設けられたボール規制手段としてのボール規制溝である。このボール規制溝19は、前述したボール規制溝18と同様に、円環状のガイド溝として形成され、ボール支持面16Cに周方向に等間隔で6個配置されている。
20は旋回スクロール側支持部材16の外周側に設けられたシール部材である。このシール部材20は、内部の潤滑剤Gが漏れ出さないように、ケーシング側収容凹部12の開口部と旋回スクロール側支持部材16の外周との間をシールするものである。このシール部材20は、ケーシング側収容凹部12に対して旋回スクロール側支持部材16が旋回動作した場合でも、該ケーシング側収容凹部12を閉塞できるように径寸法が設定されている。
そして、このように構成された3個のボールカップリング機構14は、6個のボール17を各支持部材15,16のボール規制溝18,19に沿って転動することにより、旋回スクロール6が自転するのを防止しつつ、この旋回スクロール6を旋回動作させることができる。また、圧縮運転時に旋回スクロール6に作用するスラスト荷重は、6個(合計18個)のボール17を介して支持することができる。
第1の実施の形態によるスクロール式圧縮機1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
まず、電動モータにより駆動軸8を回転し、旋回軸受11を介して旋回スクロール6を旋回動作させると、固定スクロール3のラップ部3Bと旋回スクロール6のラップ部6Bとの間に画成された圧縮室7が連続的に縮小する。これにより、吸込口4から吸込んだ外気は、各圧縮室7で順次圧縮することにより、圧縮空気として吐出口5から吐出し、外部の空気タンク等に貯留することができる。
この圧縮運転時に、各ボールカップリング機構14は、旋回スクロール6の自転を防止しつつ、この旋回スクロール6を固定スクロール3に対して旋回動作させている。また、圧縮運転時には、各圧縮室7の圧力がスラスト荷重となって旋回スクロール6に作用するが、このスラスト荷重は、6個のボール17に分散しつつ、3箇所のボールカップリング機構14で安定して支持することができる。
一方、圧縮運転時には、各部が摩擦熱、圧縮熱等によって温度上昇する。特に、旋回軸受11は、常に回転して負荷や摩擦力も作用するから、冷却風によって冷却する必要がある。そこで、3箇所のボールカップリング機構14は、合計で18個のボール17で旋回スクロール6を支持しているが、周方向に間隔をもって3箇所に独立した状態で配置している。
これにより、冷却ファン(図示せず)からの冷却風は、各ボールカップリング機構14の間を通じ、ケーシング2と旋回スクロール6との間で流通することができ、この冷却風により旋回軸受11を積極的に冷却することができる。
かくして、第1の実施の形態によれば、ボールカップリング機構14の6個のボール17は、各支持部材15,16のボール支持面15A,16Cに設けたボール規制溝18,19で転動することにより、旋回スクロール6の自転を防止しつつ、該旋回スクロール6を固定スクロール3に対して旋回動作させることができる。また、各圧縮室7による圧力が旋回スクロール6にスラスト荷重として作用するが、このときの荷重は複数のボール17を介して安定的に支持することができる。
しかも、第1の実施の形態では、ケーシング側支持部材15のボール支持面15Aと旋回スクロール側支持部材16のボール支持面16Cとの間には、6個のボール17を設けている。また、このボールカップリング機構14は、旋回スクロール6の外周側に位置して周方向に間隔をもって3箇所に独立して配置している。従って、各ボールカップリング機構14は、大きなスラスト荷重が作用した場合でも、このときの荷重を多く(18個)のボール17を介して支持することができる。
この結果、1個のボール17に作用する荷重を軽減することができるから、各ボールカップリング機構14の耐久性を向上することができる。また、各ボール17を小径化して質量を小さくできるから、ボール17の慣性モーメントを小さくでき、ボール規制溝18,19との滑りを防止して動作性能、信頼性等を向上することができる。
しかも、旋回スクロール6の周方向に間隔をもって独立して配置した3箇所のボールカップリング機構14は、それぞれの間で冷却風を流通させることができる。従って、旋回スクロール6の背面側に設けた旋回軸受11に向け、各ボールカップリング機構14の間を通じて冷却風を供給することができる。これにより、上述した作用効果に付加して、無給油式のスクロール式圧縮機1では温度上昇し易い旋回軸受11を効果的に冷却でき、その寿命を延ばすことができる。
一方、3箇所以上に設けたボールカップリング機構14は、それぞれのボールカップリング機構14でボール規制溝18,19等の寸法を合せるだけでよいから、容易に加工精度を高めることができる。これにより、複数個のボール16に対してスラスト荷重を均等に作用させることができるから、大きなスラスト荷重が作用するスクロール式空気圧縮機1にも好適に用いることができる。
また、ケーシング側収容凹部12内には、ケーシング側支持部材15、旋回スクロール側支持部材16の蓋部16Bおよび各ボール17を収容することができる。また、ボール17等の摺動部を潤滑する潤滑剤Gも収容することができる。この上で、ケーシング側収容凹部12の開口部とケーシング側支持部材15の外周との間は、シール部材20によりシールする構成とした。従って、ケーシング側支持部材15の各潤滑剤貯留部15B,15C等に安定的に潤滑剤Gを保持することができ、また、シール部材20によって異物の侵入を防止でき、ボールカップリング機構14の寿命を延ばすことができる。
さらに、中空状に形成した旋回スクロール側支持部材16の取付部16A内にも、その空所を利用して潤滑剤Gを収容する潤滑剤貯留部16Dを設けているから、この潤滑剤貯留部16Dに貯えた潤滑剤Gを連通穴16Eを介して各ボール17側に供給することができる。
次に、図5および図6は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、ケーシングと支持部材との間には、支持部材の回転を規制する回転規制部を設ける構成としたことにある。また、ケーシング側収容凹部の底面に当接するケーシング側支持部材の当接面を球面形状に形成している。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図5において、21はケーシング2の外周側に設けられた第2の実施の形態による3個のケーシング側収容凹部である。これらのケーシング側収容凹部21は、第1の実施の形態によるケーシング側収容凹部12とほぼ同様に、駆動軸8を中心とした周方向にほぼ等間隔に配設されている。また、ケーシング側収容凹部21は、後述するボールカップリング機構22のケーシング側支持部材23と各ボール17と旋回スクロール側支持部材16の蓋部16Bとを収容している。
しかし、第2の実施の形態によるケーシング側収容凹部21は、その内周面に軸方向に延びる回転規制部としての係合溝21Aを有している点と、内径寸法が後述のケーシング側支持部材23が動ける程度に遊嵌されている点とで、第1の実施の形態によるケーシング側収容凹部12と相違している。
22は第2の実施の形態によるボールカップリング機構、23はケーシング側収容凹部21内に設けられたボールカップリング機構22のケーシング側支持部材を示している。このケーシング側支持部材23は、短尺な段付円筒状に形成され、小径側がボール支持面23Aとなっている。一方、ケーシング側支持部材23の大径側の端面は、球面形状の当接面23Bとなってケーシング側収容凹部21の底面に当接している。これにより、ケーシング側支持部材23に対して6個のボール17をバランスよく均等なスラスト荷重で当接させることができる。
さらに、ケーシング側支持部材23の外周側には、ケーシング側収容凹部21の係合溝21Aと係合して回転規制部を構成する係合突起23Cが突設されている。また、ケーシング側支持部材23には、潤滑剤貯留部23Dが設けられている。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、ケーシング側収容凹部21の底面に当接するケーシング側支持部材23の当接面23Bを球面形状にしているから、ケーシング側支持部材23をスラスト荷重の作用の仕方に応じて傾転させることができる。この結果、ケーシング側支持部材23に対して6個のボール17をバランスよく均等なスラスト荷重で当接させることができる。
しかも、ケーシング側収容凹部21に係合溝21Aを設け、ケーシング側支持部材23に該係合溝21Aと係合して回転規制部を構成する係合突起23Cを突設しているから、ケーシング側支持部材23の回転を規制でき、該ケーシング側支持部材23の位置ずれを防止して旋回スクロール6を正確に旋回動作させることができる。
次に、図7および図8は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、ボール規制手段が設けられた板体を支持部材のボール支持面側に一体的に取付ける構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図7において、31はケーシング2の環状部2Cに設けられた3個のケーシング側収容凹部である(1個のみ図示)。これら3個のケーシング側収容凹部31は、後述するボールカップリング機構33のケーシング側支持部材34、旋回スクロール側支持部材37を構成するスラスト受部38の蓋部38Bおよび各ボール40を収容するものである。また、各ケーシング側収容凹部31は、他側が開口した段付の有底穴として形成されている。
一方、32は旋回スクロール6の背面プレート6Dに設けられた3個のスクロール側収容凹部である(1個のみ図示)。これら3個のスクロール側収容凹部32は、第1の実施の形態によるスクロール側収容凹部13とほぼ同様に、旋回スクロール側支持部材37を構成するスラスト受部38の取付部38Aをほぼ半分収容できる程度の深さ寸法をもった有底穴として形成されている。
33はケーシング2と旋回スクロール6との間に設けられた第3の実施の形態による3個のボールカップリング機構を示している(1個のみ図示)。これら3個のボールカップリング機構14は、後述のケーシング側支持部材34、旋回スクロール側支持部材37、ボール40、ボール規制穴41,42、シール部材43により大略構成されている。
34はケーシング側収容凹部32内に設けられたケーシング側支持部材である。このケーシング側支持部材34は、例えば圧入等の手段を用いてケーシング側収容凹部32の奥部に回転不能に嵌合されている。また、ケーシング側支持部材34は、図8に示す如く、短尺な段付円筒状に形成され、他端面の1段下がった位置にボール支持面35Aを有するスラスト受部35と、該スラスト受部35の他端面にボルト止め等の手段を用いて一体的に取付けられた円板状の規制板36とにより構成されている。また、スラスト受部35の中心部には潤滑剤貯留部35Bが設けられている。
一方、37はスクロール側収容凹部32内に設けられた旋回スクロール側支持部材である。この旋回スクロール側支持部材37は、例えば旋回スクロール側収容凹部32に半分程度まで圧入等の手段を用いて回転不能に嵌合されている。また、旋回スクロール側支持部材37は、後述のスラスト受部38、規制板39等により構成されている。
38は旋回スクロール側支持部材37のスラスト受部で、該スラスト受部38は、スクロール側収容凹部32内に挿嵌する中空な円筒状の取付部38Aと、該取付部38Aの一端側を閉塞したフランジ状の蓋部38Bとにより有蓋円筒状に形成されている。また、スラスト受部38の一端面には、1段下がった位置にボール支持面38Cが設けられている。さらに、取付部38Aの内部は潤滑剤貯留部38Dとなり、該潤滑剤貯留部38Dは連通穴38E、ボール支持面38Cと規制板39との隙間を通じてケーシング側収容凹部31内と連通している。
また、39は旋回スクロール側支持部材37を構成する規制板で、該規制板39は、スラスト受部38の一端面にボルト止め等の手段を用いて一体的に取付けられている。
40は6個のボールを示している。これらのボール40は、後述のボール規制穴41,42に取囲まれた状態で、ケーシング側支持部材34を構成するスラスト受部35のボール支持面35Aと旋回スクロール側支持部材37を構成するスラスト受部38のボール支持面38Cとの間に設けられている。
41はケーシング側支持部材34の規制板36に設けられた6個のボール規制手段としてのボール規制穴である。このボール規制穴41は、ボール40の周囲を取囲むことにより、前述したボール規制溝18と同様に、旋回スクロール6の旋回動作だけを許可するように該ボール40を案内するものである。
42は旋回スクロール側支持部材37の規制板39に設けられた6個のボール規制手段としてのボール規制穴である。このボール規制穴42は、前述したボール規制穴41と同様に形成されている。
43は旋回スクロール側支持部材37の外周側に止め輪44を用いて取付けられたシール部材である。このシール部材43は、内部の潤滑剤Gが漏れ出さないように、ケーシング側収容凹部31の開口部と旋回スクロール側支持部材37の外周との間を閉塞(シール)するものである。
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、ケーシング側支持部材34、旋回スクロール側支持部材37を複数の部品に分けることにより、加工精度を高めることができ、また個々の部品だけを交換することができる。
次に、図9は本発明の第4の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、各ボールカップリング機構には、各ボールを一対の支持部材のボール支持面間に挟んだ状態で、各支持部材を相対移動可能に連結する連結部材をそれぞれ設け、各連結部材により各ボールカップリング機構をサブアッセンブリした状態で、各支持部材をスクロールおよび/またはケーシングに対して取付ける構成としたことにある。なお、第4の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図9において、51はケーシング2の環状部2Cに設けられた3個のケーシング側収容凹部、52は旋回スクロール6の背面プレート6Dに設けられた3個のスクロール側収容凹部をそれぞれ示している(いずれも1個のみ図示)。これら3個の収容凹部51,52は、段付の有底穴として形成されている。
53はケーシング2と旋回スクロール6との間に設けられた第4の実施の形態による3個のボールカップリング機構を示している(1個のみ図示)。これら3個のボールカップリング機構53は、後述のケーシング側支持部材54、旋回スクロール側支持部材55、ボール56、ボール規制溝57,58、連結部材59により大略構成されている。
ここで、第4の実施の形態によるボールカップリング機構53は、別の場所で予めサブアッセンブリされており、ケーシング2、旋回スクロール6に対し1つのユニットとして簡単に組付けることができる。
54はケーシング側収容凹部51に設けられたケーシング側支持部材である。このケーシング側支持部材54は、例えば圧入等の手段を用いてケーシング側収容凹部51の奥部に回転不能に嵌合されている。また、ケーシング側支持部材54は、ボール支持面54A側が大径部54Bとなり、反対側が圧入される小径部54Cとなっている。また、大径部54Bの外周面は、小径部54Cに向けて縮径するような球面部54Dを形成している。
一方、55はスクロール側収容凹部52内に回転不能に挿嵌された旋回スクロール側支持部材である。この旋回スクロール側支持部材55は、前述したケーシング側支持部材54とほぼ同様に、ボール支持面55A、大径部55B、小径部55C、球面部55Dにより構成されている。
56はケーシング側支持部材54のボール支持面54Aと旋回スクロール側支持部材55のボール支持面55Aとの間に設けられた6個のボールを示している。
57はケーシング側支持部材54のボール支持面54Aに設けられた6個のボール規制手段としてのボール規制溝である。このボール規制溝57は、前述した第1の実施の形態によるボール規制溝18と同様に、旋回スクロール6の旋回動作だけを許可するようにボール56を案内するものである。
58は旋回スクロール側支持部材55のボール支持面55Aに設けられた6個のボール規制手段としてのボール規制溝である。このボール規制溝58は、前述したボール規制溝57と同様に形成されている。
59は各支持部材54,55間に亘って設けられた第4の実施の形態による連結部材である。この連結部材59は、各ボール56を前記一対の支持部材54,55のボール支持面54A,55A間に挟んだ状態で、該各支持部材54,55を相対移動可能に連結するものである。これにより、連結部材59は、各支持部材54,55、各ボール56を予めサブアッセンブリ(別組立)することができる。
そして、連結部材59は、ケーシング側支持部材54の球面部54Dに液密に摺接する球面筒60Aを有するケーシング側筒部60と、旋回スクロール側支持部材55の球面部55Dに液密に摺接する球面筒61Aを有するスクロール側筒部61とにより構成されている。
また、ケーシング側筒部60とスクロール側筒部61とは、各ボール56を支持部材54,55のボール支持面54A,55A間に挟み、潤滑剤を充填した状態で、接着、溶着等の固着手段を用いて1つの筒体として固着されている。これにより、連結部材59は、内部に潤滑剤を保持しつつ、各支持部材54,55を相対移動させることができる。
かくして、このように構成された第4の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、各ボール56を一対の支持部材54,55のボール支持面54A,55A間に挟んだ状態で、該各支持部材54,55間を連結部材59で相対移動可能に連結することができる。これにより、各ボールカップリング機構53は、連結部材59によってサブアッセンブリすることができる。従って、組立作業では、予めサブアッセンブリした各支持部材54,55をケーシング側収容凹部51,スクロール側収容凹部52に対して取付けるだけでよいから、組立作業性を向上することができる。
次に、図10は本発明の第5の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、カップ状の連結部材によってケーシング側支持部材と旋回スクロール側支持部材を相対移動可能に連結する構成としたことにある。なお、第5の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図10において、71はケーシング2の環状部2Cに設けられた3個のケーシング側収容凹部、72は旋回スクロール6の背面プレート6Dに設けられた3個のスクロール側収容凹部をそれぞれ示している(いずれも1個のみ図示)。
73はケーシング2と旋回スクロール6との間に設けられた第5の実施の形態による3個のボールカップリング機構を示している(1個のみ図示)。これら3個のボールカップリング機構73は、後述のケーシング側支持部材74、旋回スクロール側支持部材75、ボール76、ボール規制溝77,78、連結部材79により大略構成されている。
ここで、第5の実施の形態によるボールカップリング機構73は、前述した第4の実施の形態によるボールカップリング機構53と同様に、別の場所で予めサブアッセンブリされており、1つのユニットとして簡単に組付けることができる。
74はケーシング側収容凹部71に設けられたケーシング側支持部材である。このケーシング側支持部材74は、例えば圧入等の手段を用いてケーシング側収容凹部71に回転不能に嵌合されている。また、ケーシング側支持部材74は、ボール支持面74Aが設けられた大径部74Bと、ボール支持面74Aと反対側に位置して圧入される小径部74Cとにより段付の円柱状に形成されている。また、大径部74Bの外周側には、ボール支持面74Aに連続するようにフランジ部74Dが拡径している。
一方、75はスクロール側収容凹部72内に回転不能に挿嵌された旋回スクロール側支持部材である。この旋回スクロール側支持部材75は、前述したケーシング側支持部材74とほぼ同様に、ボール支持面75A、大径部75B、小径部75C、フランジ部75Dにより構成されている。
76はケーシング側支持部材74のボール支持面74Aと旋回スクロール側支持部材75のボール支持面75Aとの間に設けられた6個のボールを示している。
77はケーシング側支持部材74のボール支持面74Aに設けられた6個のボール規制手段としてのボール規制溝である。このボール規制溝77は、前述した第1の実施の形態によるボール規制溝18と同様に、旋回スクロール6の旋回動作だけを許可するようにボール76を案内するものである。
78は旋回スクロール側支持部材75のボール支持面75Aに設けられた6個のボール規制手段としてのボール規制溝である。このボール規制溝78は、前述したボール規制溝77と同様に形成されている。
79は各支持部材74,75間に亘って設けられた第5の実施の形態による連結部材である。この連結部材79は、各ボール76を前記一対の支持部材74,75のボール支持面74A,75A間に挟んだ状態で、該各支持部材74,75を相対移動可能に連結するものである。これにより、連結部材79は、各支持部材74,75、各ボール76を予めサブアッセンブリすることができる。
そして、連結部材79は、旋回スクロール側支持部材75のフランジ部75Dに液密に摺接する環状の摺接面部80Aを有するカップ部80と、ケーシング側支持部材74のフランジ部74Dに液密に摺接する環状の摺接面部81Aを有する蓋部81とにより構成されている。また、カップ部80と蓋部81とは、各ボール76を支持部材74,75のボール支持面74A,75A間に挟み、潤滑剤を充填した状態で、接着、溶着等の固着手段を用いて1つのカップ状容器として固着されている。
かくして、このように構成された第5の実施の形態においても、前述した第4の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
次に、図11は本発明の第6の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、弾性材料からなる連結部材によってケーシング側支持部材と旋回スクロール側支持部材を相対移動可能に連結する構成としたことにある。なお、第6の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図11において、91はケーシング2の環状部2Cに設けられた3個のケーシング側収容凹部、92は旋回スクロール6の背面プレート6Dに設けられた3個のスクロール側収容凹部をそれぞれ示している(いずれも1個のみ図示)。
93はケーシング2と旋回スクロール6との間に設けられた第6の実施の形態による3個のボールカップリング機構を示している(1個のみ図示)。これら3個のボールカップリング機構93は、後述のケーシング側支持部材94、旋回スクロール側支持部材95、ボール96、ボール規制溝97,98、連結部材99により大略構成されている。
ここで、第6の実施の形態によるボールカップリング機構93は、前述した第4の実施の形態によるボールカップリング機構53と同様に、別の場所で予めサブアッセンブリされており、1つのユニットとして簡単に組付けることができる。
94はケーシング側収容凹部91に設けられたケーシング側支持部材である。このケーシング側支持部材94は、例えば圧入等の手段を用いてケーシング側収容凹部91に回転不能に嵌合されている。また、ケーシング側支持部材94は、ボール支持面94Aが設けられた大径部94Bと、ボール支持面94Aと反対側に位置して圧入される小径部94Cとにより段付の円柱状に形成されている。また、大径部94Bの外周側には、全周に亘って環状凹溝94Dが形成され、該環状凹溝94Dには、後述の連結部材99のケーシング側係合部99Aが液密に係合する。
一方、95はスクロール側収容凹部92内に回転不能に挿嵌された旋回スクロール側支持部材である。この旋回スクロール側支持部材95は、前述したケーシング側支持部材94とほぼ同様に、ボール支持面95A、大径部95B、小径部95C、環状凹溝95Dにより構成されている。
96はケーシング側支持部材94のボール支持面94Aと旋回スクロール側支持部材95のボール支持面95Aとの間に設けられた6個のボールを示している。
97はケーシング側支持部材94のボール支持面94Aに設けられた6個のボール規制手段としてのボール規制溝である。このボール規制溝97は、前述した第1の実施の形態によるボール規制溝18と同様に、旋回スクロール6の旋回動作だけを許可するようにボール96を案内するものである。
98は旋回スクロール側支持部材95のボール支持面95Aに設けられた6個のボール規制手段としてのボール規制溝である。このボール規制溝98は、前述したボール規制溝97と同様に形成されている。
99は各支持部材94,95間に亘って設けられた第6の実施の形態による連結部材である。この連結部材99は、各ボール96を前記一対の支持部材94,95のボール支持面94A,95A間に挟んだ状態で、該各支持部材94,95を相対移動可能に連結するものである。これにより、連結部材99は、各支持部材94,95、各ボール96を予めサブアッセンブリすることができる。
また、連結部材99は、ゴム等の弾性材料を用いて筒状に形成され、その端部には、ケーシング側係合部99Aとスクロール側係合部99Bとが全周に亘って内向きに突設されている。そして、連結部材99は、各ボール96を支持部材94,95のボール支持面94A,95A間に挟み、潤滑剤を充填した状態で、一方のケーシング側係合部99Aをケーシング側支持部材94の環状凹溝94Dに液密に係合し、他方のスクロール側係合部99Bを旋回スクロール側支持部材95の環状凹溝95Dに液密に係合することにより、1つのユニットとして組付けることができる。
かくして、このように構成された第6の実施の形態においても、前述した第4の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、連結部材99を弾性材料から筒状に形成しているから、該連結部材99を各支持部材94,95に容易に取付けることができる。
次に、図12は本発明の第7の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、スクロール側収容凹部内にボールカップリング機構の旋回スクロール側支持部材とケーシング側支持部材のボール支持面側と各ボールとを収容する構成としたことにある。なお、第7の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図12において、101はケーシング2の環状部2Cに設けられた3個のケーシング側収容凹部である(1個のみ図示)。これら3個のケーシング側収容凹部101は、後述するボールカップリング機構103を構成するケーシング側支持部材105をほぼ半分収容できる程度の深さ寸法をもった有底穴として形成されている。
一方、102は旋回スクロール6の背面プレート6Dに設けられた3個のスクロール側収容凹部である(1個のみ図示)。これら3個のスクロール側収容凹部102は、後述の旋回スクロール側支持部材104、ケーシング側支持部材105のボール支持面側および各ボール106を収容するものである。また、各スクロール側収容凹部102は、一側が開口した有底穴として形成されている。
103はケーシング2と旋回スクロール6との間に設けられた第7の実施の形態による3個のボールカップリング機構を示している(1個のみ図示)。これら3個のボールカップリング機構103は、第1の実施の形態によるボールカップリング機構14を軸方向で反転したもので、該ボールカップリング機構14とほぼ同様に、旋回スクロール側支持部材104、ケーシング側支持部材105、ボール106、ボール規制溝107,108、シール部材109により大略構成されている。
かくして、このように構成された第7の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、旋回動作を行う旋回スクロール6側には小さく軽量な旋回スクロール側支持部材104を配置しているから、遠心力による負荷を小さくすることができる。また、スクロール側収容凹部102内に収容した潤滑剤は、旋回動作によって各ボール106の接触部に積極的に供給することができる。
次に、図13は本発明の第8の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、2段圧縮ツインラップ型のスクロール式空気圧縮機の固定スクロールと旋回スクロールとの間にボールカップリング機構を設ける構成としたことにある。
図13において、111はスクロール式流体機械としての2段圧縮ツインラップ型のスクロール式空気圧縮機を示している。このスクロール式空気圧縮機111は、後述のケーシング112、固定スクロール113,115、旋回スクロール117,119、モータ121、回転軸122、偏心ブッシュ125,127、駆動軸129、ボールカップリング機構132等により大略構成されている。
112は略筒状のケーシングで、該ケーシング112は、中間ケース112Aと、該中間ケース112Aの軸方向一側(右側)に設けられた低圧側ケース112Bと、中間ケース112Aの軸方向他側(左側)に設けられた高圧側ケース112Cとによって構成されている。
113はケーシング112の低圧側ケース112Bに取付けられた低圧側の固定スクロールである。この固定スクロール113は、略円板状の鏡板113Aと、該鏡板113Aの表面に立設された渦巻状のラップ部113Bと、鏡板113Aの外周側から軸方向に突出し、ラップ部113Bを取囲む位置で径方向外向きに延びた略筒状のフランジ部113Cとにより大略構成されている。また、鏡板113Aには、外周側に位置して空気の吸込口(図示せず)と、中央に位置して圧縮空気を吐出する吐出口114とが設けられている。さらに、フランジ部113Cには、後述のボールカップリング機構132の固定スクロール側支持部材134を収容する固定スクロール側収容凹部130が周方向に間隔をもって例えば3箇所に設けられている。
一方、115はケーシング112の高圧側ケース112Cに取付けられた高圧側の固定スクロールである。この固定スクロール115は、低圧側の固定スクロール113とほぼ同様に、鏡板115A、ラップ部115B、フランジ部115C等によって構成され、吸込口(図示せず)、吐出口116を有している。
そして、低圧側の固定スクロール113の吐出口114は、例えば配管、冷却器等を経由して高圧側の固定スクロール115の吸込口に接続され、その吐出口116は、空気タンク(図示せず)等に接続されている。これにより、2段式の圧縮機として構成されている。
117は低圧側の固定スクロール113と対面してケーシング112内に旋回可能に設けられた低圧側の旋回スクロールである。この旋回スクロール117は、固定スクロール113と所定寸法偏心して配置された略円板状の鏡板117Aと、該鏡板117Aの表面に立設された渦巻状のラップ部117Bと、前記鏡板117Aの背面中央に設けられたボス部117C等とによって構成されている。ここで、旋回スクロール117のラップ部117Bは、固定スクロール113のラップ部113Bと重なり合った状態で配置され、これらのラップ部113B,117B間には複数の圧縮室118が画成されている。
また、鏡板117Aの外周側には、後述のボールカップリング機構132の旋回スクロール側支持部材133等を収容する旋回スクロール側収容凹部131が周方向に間隔をもって例えば3箇所に設けられている。
一方、119はケーシング112内に設けられた高圧側の旋回スクロールである。この旋回スクロール119は、低圧側の旋回スクロール117とほぼ同様に形成された鏡板119A、ラップ部119B、ボス部119Cからなり、前記ラップ部119Bは、固定スクロール115のラップ部115Bとの間に複数の圧縮室120を画成している。
121はケーシング112の中間ケース112A内に設けられたモータで、該モータ121は、筒状のステータ、ロータ等により構成されている。また、122はモータ121のロータに取付けられた回転軸で、該回転軸122は、例えば段付円筒状の中空ロッドからなり、軸受123,124を介してケーシング112に回転可能に支持されている。
125は回転軸122の高圧側の端部に固着して取付けられた略円筒状の偏心ブッシュで、該偏心ブッシュ125の内周側には、偏心軸受126が偏心した状態で嵌合されている。一方、127は回転軸122の低圧側の端部に固着して取付けられた偏心ブッシュで、該偏心ブッシュ127の内周側には、偏心軸受128が偏心した状態で嵌合されている。
129は旋回スクロール117,119を旋回駆動する駆動軸で、該駆動軸129は、偏心軸受126,128を介して回転軸122内に回転可能に支持されている。また、駆動軸129の低圧側の突出端は、例えば圧入等の手段によって低圧側の旋回スクロール117のボス部117Cに挿嵌されている。一方、駆動軸129の高圧側の突出端は、例えば圧入等の手段によって高圧側の旋回スクロール119のボス部119Cに挿嵌されている。これにより、駆動軸129は、回転軸122が回転するときに、一定の旋回半径をもって旋回スクロール117,119を旋回運動させる。
次に、旋回スクロール117,119の自転を防止するための機構およびその取付構造について説明する。
130は低圧側の固定スクロール113を構成するフランジ部113Cに設けられた3個の固定スクロール側収容凹部である(1個のみ図示)。これら3個の固定スクロール側収容凹部130は、後述するボールカップリング機構132を構成する固定スクロール側支持部材134の大部分を収容できる程度の深さ寸法をもった有底穴として形成されている。
一方、131は低圧側の旋回スクロール117を構成する鏡板117Aの外周側に設けられた3個の旋回スクロール側収容凹部である(1個のみ図示)。これら3個の旋回スクロール側収容凹部131は、後述の旋回スクロール側支持部材133、固定スクロール側支持部材134のボール支持面側および各ボール135を収容する有底穴として形成されている。
132は低圧側の固定スクロール113と旋回スクロール117との間に設けられた第8の実施の形態による3個のボールカップリング機構を示している(1個のみ図示)。これら3個のボールカップリング機構132は、第1の実施の形態によるボールカップリング機構14とほぼ同様に、旋回スクロール側支持部材133、固定スクロール側支持部材134、ボール135、ボール規制溝136,137、シール部材138により大略構成されている。
かくして、このように構成された第8の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、固定スクロール113と旋回スクロール117との間に設けた各ボールカップリング機構132により、各旋回スクロール117,119の自転を防止することができる。また、ツインラップ型のスクロール式空気圧縮機111は、高圧側の圧縮室120側の圧力による荷重が駆動軸129を介して低圧側の旋回スクロール117に伝達され、低圧側の圧縮室118側の圧力による荷重を差し引いた分がスラスト荷重となって作用する。しかし、固定スクロール113と旋回スクロール117との間に設けた各ボールカップリング機構132は、高圧側からのスラスト荷重を確実に支持することができる。
なお、第1の実施の形態では、ボールカップリング機構14を周方向に間隔をもって3箇所に独立して配置した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばボールカップリング機構14を周方向に間隔をもって4箇所、または5箇所以上に独立して配置する構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
また、第1の実施の形態では、ボールカップリング機構14には、各支持部材15,16間に6個のボール17を設ける構成としている。しかし、本発明はこれに限るものではなく、各支持部材15,16間に2個、3個、4個、5個または7個以上のボール17を設ける構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
一方、第1の実施の形態では、別部材からなるケーシング側支持部材15をケーシング2の環状部2Cに取付け、別部材からなる旋回スクロール側支持部材16を旋回スクロール6の背面プレート6Dに取付けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばケーシング側支持部材をケーシングに一体形成する構成としてもよい。また、旋回スクロール側支持部材を旋回スクロールに一体形成する構成としてもよい。これらの構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
また、第1の実施の形態では、ケーシング2に固定された固定スクロールに対して旋回スクロール6を旋回動作させるスクロール式空気圧縮機1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば特開平9−133087号公報に示すように、互いに対向して配置された2つのスクロールをそれぞれ回転駆動する全系回転式スクロール流体機械等に適用してもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
さらに、各実施の形態では、スクロール式流体機械としてスクロール式空気圧縮機1、ツインラップ型のスクロール式空気圧縮機111を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、冷媒を圧縮する冷媒圧縮機、真空ポンプ、膨張機等を含めて他のスクロール式流体機械に適用してもよい。