JP5026091B2 - 金属板材の圧延方法及び圧延装置 - Google Patents
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圧延反りが発生するメカニズムについては、一般に、下記の圧延における上下の非対称要因が原因であると言われている。
1)作業ロールと圧延材との摩擦係数の上下差 Δμ
2)圧延材の上下温度差(変形抵抗の上下差) Δt
3)上下作業ロール周速度の差ΔV
4)幾何学条件
・上下作業ロールの半径差 ΔR
・板入射角(上下パスライン差)α
しかしながら、上記の上下非対称要因が反りに及ぼす影響は、必ずしも全て解明されている訳ではない。
また、特許文献2には、定常的および継続的に生じる反りに対して、反りが生じる部分に高潤滑を実施し反りを防止しようとする技術が開示されている。
また、特許文献3には、圧延パスで突然反りが発生するパスに対しても、制御する方法が開示されている。これは、多パスのリバース圧延において、前パスの圧延時の圧延情報(上下圧延トルクなど)に基づいて、反りの発生要因となる圧延材の変形抵抗の上下面差と摩擦係数の上下面差を分析し、次パス以降に発生する圧延反りの方向および反り量を予測し、これを上下ロール周速度差あるいはピックアップ量によって制御しようとするものである。
一方、圧延時に作業ロールのチョックにかかる圧延方向力を測定してキャンバー制御をする方法及び装置が特許文献4等に開示されているが、特許文献4には反り及び反り制御に関する記載はされていない。
また、特許文献3に記載された方法では、上下ロールの圧延トルクを個別に測定することが必要であるが、特に厚板圧延では、圧延トルクは非常に大きな値を示し、大がかりな測定装置を設置することが必要となる。
そこで、本発明では、上下ロールの圧延トルクを測定せずに、反りのない、あるいは極めて反りの軽微な金属板材を安定して製造することのできる、金属板材の圧延方法および圧延装置を提供することを目的とするものである。
(1)少なくとも作業ロールと補強ロールとを有する金属板材の圧延機を用いて行う金属板材の圧延方法であって、
上下両方の前記作業ロールのロールチョックに圧延中に作用する圧延方向力を測定し、
該圧延方向力の上側と下側との差異を演算し、
この差異に基づいて、前記圧延機の上下非対称成分制御量を演算し、
当該演算値に基づいて、該圧延機を用いた圧延の上下非対称成分を制御し、
制御される前記圧延の上下非対称成分が、
前記圧延機のロール速度の上下非対称成分、
圧延ロールと被圧延材との摩擦係数の上下非対称成分、
被圧延材の上下面温度差の上下非対称成分、及び、
被圧延材の入射角の上下非対称成分、
の何れかまたはこれら2つ以上の組合せであることを特徴とする金属板材の圧延方法。
(2)作業ロールチョックの圧延方向入側または出側に、補強ロールを基準として作業ロールをオフセットすることを特徴とする前記(1)に記載の金属板材の圧延方法。
当該演算値に基づいて前記圧延機の上下非対称成分制御量を演算する演算装置と、
前記上下非対称成分制御量の演算値に基づいて前記圧延機の前記上下非対称成分制御量を制御する制御装置とを備え、
制御される前記上下非対称成分制御量が、
前記圧延機のロール速度の上下非対称成分制御量、
圧延ロールと被圧延材との摩擦係数の上下非対称成分制御量、
被圧延材の上下面温度差の上下非対称成分制御量、及び、
被圧延材の入射角の上下非対称成分制御量、
の何れかまたはこれら2つ以上の組合せであることを特徴とする金属板材の圧延装置。
前記上下非対称成分としては、圧延機のロール速度、圧延ロールと被圧延材との摩擦係数、被圧延材の上下面温度差、及び、被圧延材の入射角のいずれか一つでも組み合わせでもよく、いずれの場合であっても上下ロールの圧延トルクを測定せずに、反りのない、あるいは極めて反りの軽微な金属板材を安定して製造することができる。
一般に、圧延によって反りが生ずる原因としては、1)作業ロールと圧延材との摩擦係数の上下差Δμ、2)圧延材の上下温度差(変形抵抗の上下差)Δt、3)上下作業ロール周速度の差ΔV、4)幾何学条件などがあげられるが、何れの原因の場合でも、最終的には、圧延によって生じる圧延方向の伸び歪に上下差を生じさせることで先進率および後進率が板厚方向に変化し、圧延材の出側速度および入側速度に上下差を生じ、反りが発生することになる。このとき、例えば、反りを生じさせやすい圧延材先端部圧延時は、既に圧延が終了した出側の圧延材長さは短いので出側速度に上下差を生じさせることは比較的自由であるが、入側速度に上下差を生じさせるためには入側に存在する圧延材全体を上下方向に剛体回転させる必要がある。しかしながら先端部圧延時は一般に入側に長い未圧延材が残っているので、圧延材自身の重量とテーブルローラーとの拘束によって、上記剛体回転に抗するモーメントが発生する。このモーメントは、圧延機の作業ロールに反力として伝わることになるので、作業ロールチョック部に作用する圧延方向力に上下差を生じることで最終的には支持されることになる。
前記上下非対称成分としては、圧延機のロール速度、圧延ロールと被圧延材との摩擦係数、被圧延材の上下面温度差、及び、被圧延材の入射角のいずれか一つでも組み合わせでもよく、いずれの場合であっても上下ロールの圧延トルクを測定せずに、反りのない、あるいは極めて反りの軽微な金属板材を安定して製造することができる。
さらに、(2)に記載の本発明の金属板材の圧延方法によると、作業ロールチョックの圧延方向入側または出側に、補強ロールを基準として作業ロールをオフセットすることにより、作業ロールオフセットによってオフセット分力が圧延荷重の水平方向分力として発生するので、該作業ロールチョックの圧延方向位置を安定させることができる。
以上説明したように、前記(1)〜(2)のいずれかに記載の本発明の方法では、反り発生の直接原因となる圧延による伸び歪の上下差を検出・測定し、直ちにこれを均一化するための上下ロールの速度制御を実施するため、実質的に反り発生のない、あるいは極めて反りの軽微な圧延が実現可能となる。
(3)に記載の本発明の金属板材の圧延装置では、上下両方のロールのロールチョックの圧延方向入側と出側の双方に荷重検出装置が備えられているので、入・出側双方の荷重測定値の方向性を考慮して合力を演算することで、入・出側何れの方向に力が作用していても上側および下側それぞれのロールチョックに作用する圧延方向力を求めることができる。また、作業ロールチョックに作用する圧延方向力の上側と下側の差異を演算する演算装置が備えられているので、反りの原因となる圧延方向の伸び歪の上下差に起因して圧延材より上下の作業ロール対に作用するモーメントを検出することができる。さらに、作業ロールチョックに作用する圧延方向力の上下差に基づいて、伸び歪を上下で均等化するための圧延機の上下非対称成分制御量を演算する演算装置と、当該上下非対称成分制御量の演算値に基づいて、該圧延機の当該上下非対称成分制御量を制御する制御装置が配備されているので、前記(1)〜(2)に記載の金属板材の圧延方法である伸び歪の上下差の発生を未然に防ぎ、反りのない、あるいは極めて反りの軽微な金属板材の圧延を実施することが可能となる。
なお、前記上下非対称成分制御量としては、圧延機のロール速度、圧延ロールと被圧延材との摩擦係数、被圧延材の上下面温度差、及び、被圧延材の入射角のいずれか一つでも組み合わせでもよく、いずれの場合であっても上下ロールの圧延トルクを測定せずに、反りのない、あるいは極めて反りの軽微な金属板材を安定して製造することができる。
前記(5)に記載の本発明の金属板材の圧延装置では、作業ロールチョックを圧延方向に押しつけるための装置が油圧装置となっている。油圧装置で作業ロールチョックを押しつけることによって、押さえ力を圧延操業に支障がない程度に低く、しかも作業ロールチョックの圧延方向の振動を軽減してチョック位置を安定化できる程度に高く、制御することが可能となる。
図1には、本発明の圧延方法に関する圧延装置であり、すなわち、本発明の圧延装置の好ましい実施の形態を示す。ここでは上下非対称成分としてロール速度を用いている。なお、図1は基本的に作業側の装置構成のみを図示しているが、駆動側にも同様の装置が存在する。圧延機の上作業ロール1に作用する圧延方向力は基本的には上作業ロールチョック5によって支持されるが、上作業ロールチョックには上作業ロールチョック出側荷重検出装置9と上作業ロール入側荷重検出装置10が配備されており、上作業ロールチョックを圧延方向に固定しているプロジェクトブロック(図示せず)等の部材と上作業ロールチョックの間に作用する力を測定することができる。これらの荷重検出装置は通常は圧縮力を測定する構造とするのが装置構成を簡単にするため好ましい。
上記のような手続きは作業側のみならず駆動側も全く同じ装置構成で演算を実施し、上作業ロール圧延方向力演算装置(駆動側)14’において、その結果が上側の作業ロール圧延方向合力として得られる。
上記のような手続きは作業側のみならず駆動側も全く同じ装置構成で演算を実施し、下作業ロール圧延方向力演算装置(駆動側)15’において、その結果が下側の作業ロール圧延方向合力として得られる。
同様に、作業ロール圧延方向合力演算装置(下側)17において、下作業ロール圧延方向力演算装置(作業側)15の演算結果と下作業ロール圧延方向力演算装置(駆動側)15’の演算結果の和をとることにより、上下作業ロールに作用する圧延方向合力を演算する。
そして上側−下側圧延方向力差演算装置18によって上側の演算結果と下側の演算結果との差をとることにより、これによって作業ロールチョックに作用する圧延方向力の上側と下側の差異が計算されることになる。
そしてこの制御量演算結果に基づいて、上下の潤滑剤の供給量制御装置31によって圧延機の上下の潤滑剤の供給量を制御することで反り発生のない、あるいは極めて反りの軽微な圧延が実現できる。
そしてこの制御量演算結果に基づいて、圧延材上下面の温度制御装置34によって圧延機の圧延材上下面温度差を制御することで反り発生のない、あるいは極めて反りの軽微な圧延が実現できる。
そしてこの制御量演算結果に基づいて、ローラーテーブルの高さ制御装置37によって圧延機のローラーテーブルの高さを制御することで反り発生のない、あるいは極めて反りの軽微な圧延が実現できる。
そしてこの制御量演算結果に基づいて、上下ロール速度制御装置20及び上下の潤滑剤の供給量制御装置31によって上下ロール速度および上下の潤滑剤の供給量を制御することで反り発生のない、あるいは極めて反りの軽微な圧延が実現できる。
入側板厚46mm、板巾2800mmの同一寸法の板について7パスで出側板厚10mmとする圧延を実施したが、圧延した板の57枚の平均反りは、12mmであり、反りとしては小さいものしか発生しなかった。
比較例として、特許文献1に示す板に上下温度差を付与して反りを制御する方法を用いて、同一寸法の板を圧延した。その結果、圧延した板の48枚の平均反りは、68mmであり、反りとしては大きいものが発生した。
なお、圧延機の形式を図4、9〜12に変えても、また、圧延方向力の検出方法を図5〜8に示した方法に変えても、本実施例と変わりのない反りの小さい圧延が実現されるのは言うまでもない。
2 下作業ロール
3 上補強ロール
4 下補強ロール
5 上作業ロールチョック(作業側)
6 下作業ロールチョック(作業側)
7 上補強ロールチョック(作業側)
8 下補強ロールチョック(作業側)
9 上作業ロール出側荷重検出装置(作業側)
10 上作業ロール入側荷重検出装置(作業側)
11 下作業ロール出側荷重検出装置(作業側)
12 下作業ロール入側荷重検出装置(作業側)
13 圧下装置
14 上作業ロール圧延方向力演算装置(作業側)
14’ 上作業ロール圧延方向力演算装置(駆動側)
15 下作業ロール圧延方向力演算装置(作業側)
15’ 下作業ロール圧延方向力演算装置(駆動側)
16 作業ロール圧延方向合力演算装置[加算器](上側)
17 作業ロール圧延方向合力演算装置[加算器](下側)
18 上側−下側圧延方向力差演算装置
19 上下ロール速度制御量演算装置
20 上下ロール速度制御装置
21 金属板材
22 圧延方向
23 ミルハウジング
24 出側プロジェクトブロック
25 入側プロジェクトブロック
26 圧延荷重検出装置
27 入側作業ロールチョック押し付け装置
28 出側作業ロールチョック位置制御装置
29 出側作業ロールチョック位置検出装置
30 上下の潤滑剤の供給量演算装置
31 上下の潤滑剤の供給量制御装置
32 上面の潤滑剤供給装置
32’ 下面の潤滑剤供給装置
33 圧延材上下面温度差の演算装置
34 圧延材上下面の温度制御装置
35 圧延材上面の加熱装置
35’ 圧延材上面の加熱装置
36 ローラーテーブル高さの演算装置
37 ローラーテーブルの高さ制御装置
38 上下可変ローラーテーブル
39 上下作業ロールチョック位置の制御量演算装置
40 上下作業ロールチョック位置の制御装置
41 上作業ロールチョック位置移動装置(材料入側)
41’ 下作業ロールチョック位置移動装置(材料入側)
42 上作業ロールチョック位置移動装置(材料出側)
42’ 下作業ロールチョック位置移動装置(材料出側)
43 上下ロール速度制御および上下の潤滑剤の供給量演算装置
M ミルモータ
Claims (7)
- 少なくとも作業ロールと補強ロールとを有する金属板材の圧延機を用いて行う金属板材の圧延方法であって、
上下両方の前記作業ロールのロールチョックに圧延中に作用する圧延方向力を測定し、
該圧延方向力の上側と下側との差異を演算し、
この差異に基づいて、前記圧延機の上下非対称成分制御量を演算し、
当該演算値に基づいて、該圧延機を用いた圧延の上下非対称成分を制御し、
制御される前記圧延の上下非対称成分が、
前記圧延機のロール速度の上下非対称成分、
圧延ロールと被圧延材との摩擦係数の上下非対称成分、
被圧延材の上下面温度差の上下非対称成分、及び、
被圧延材の入射角の上下非対称成分、
の何れかまたはこれら2つ以上の組合せであることを特徴とする金属板材の圧延方法。 - 作業ロールチョックの圧延方向入側または出側に、補強ロールを基準として作業ロールをオフセットすることを特徴とする請求項1に記載の金属板材の圧延方法。
- 少なくとも作業ロールと補強ロールとを有する金属板材の圧延機を含む圧延装置であって、上下両方の前記作業ロールの上側と下側のロールチョックに圧延中に作用する圧延方向力を測定する該作業ロールチョックの圧延方向入側と出側の双方に設けた荷重検出装置と、
当該荷重検出装置による測定値に基づいて前記作業ロールチョックに圧延中に作用する圧延方向力の上側と下側の差異を演算する演算装置と、
当該演算値に基づいて前記圧延機の上下非対称成分制御量を演算する演算装置と、
前記上下非対称成分制御量の演算値に基づいて前記圧延機の前記上下非対称成分制御量を制御する制御装置とを備え、
制御される前記上下非対称成分制御量が、
前記圧延機のロール速度の上下非対称成分制御量、
圧延ロールと被圧延材との摩擦係数の上下非対称成分制御量、
被圧延材の上下面温度差の上下非対称成分制御量、及び、
被圧延材の入射角の上下非対称成分制御量、
の何れかまたはこれら2つ以上の組合せであることを特徴とする金属板材の圧延装置。 - 作業ロールチョックの圧延方向入側、出側のどちらか一方に、該作業ロールチョックを圧延方向に押しつける装置を有することを特徴とする請求項3に記載の金属板材の圧延装置。
- 作業ロールチョックを圧延方向に押しつける装置が油圧装置であることを特徴とする請求項4に記載の金属板材の圧延装置。
- 作業ロールチョックの圧延方向入側と出側のうち、補強ロールを基準として作業ロールをオフセットしている側とは反対側に、該作業ロールチョックを圧延方向に押しつける油圧装置を備えることを特徴とする請求項5記載の金属板材の圧延装置。
- 補強ロールを基準として作業ロールをオフセットさせ、圧延方向の力を測定する荷重検出装置をオフセットしている方のみに備えたことを特徴とする請求項3に記載の金属板材の圧延装置。
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