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JP5020652B2 - 流体軸受装置 - Google Patents

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JP5020652B2 JP2007025563A JP2007025563A JP5020652B2 JP 5020652 B2 JP5020652 B2 JP 5020652B2 JP 2007025563 A JP2007025563 A JP 2007025563A JP 2007025563 A JP2007025563 A JP 2007025563A JP 5020652 B2 JP5020652 B2 JP 5020652B2
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Description

本発明は、流体軸受装置に関するものである。
流体軸受装置は、軸受隙間に形成される油膜で軸部材を回転自在に支持する軸受装置である。この流体軸受装置は、高速回転、高回転精度、低騒音等の特徴を有するものであり、近年ではその特徴を活かして、情報機器をはじめ種々の電気機器に搭載されるモータ用の軸受装置として、より具体的には、HDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置等のスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、ファンモータなどのモータ用軸受装置として好適に使用されている。
ディスク装置等のスピンドルモータに組み込まれる流体軸受装置として、例えば図7に示す構成が公知である。同図に示す流体軸受装置71では、側部および底部を一体に有する樹脂製のハウジング77の内周に軸受スリーブ78が固定され、軸受スリーブ78の内周には軸部材72が挿入されている。軸部材72が回転すると、軸部材72の外周面と軸受スリーブ78の内周面との間のラジアル軸受隙間に、軸部材72をラジアル方向に支持するラジアル軸受部75,76が形成される。(例えば、特許文献1を参照)。
特開2005−282779号公報
ところで、上記のスピンドルモータ用の流体軸受装置では、軸部材にディスクハブを固定する際や軸受運転中の衝撃付加時に、軸部材を介してハウジングの底部に軸方向の荷重が負荷される場合がある。上記のような有底筒状の樹脂ハウジングは、ハウジングを金属の機械加工品とする場合に比べて低コスト化に有利な反面、荷重負荷時には底部が変形し、スラスト方向における回転精度が低下するおそれが高い。特に負荷荷重が過大である場合には、底部と側部の接続部分が破断して底部が脱落するおそれもある。近年のディスク装置の大容量化等に伴ってディスクハブに搭載されるディスク枚数が増加し(ディスクの多積層化)、底部に作用する負荷荷重が増大する傾向にあり、上記の問題が生じ易くなっている。
本発明の課題は、有底筒状の樹脂ハウジング底部の強度を高め、高い回転精度を誇る流体軸受装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明では、側部および底部を一体に有し、ブラケットの内周に固定される樹脂製のハウジングと、ハウジングの内周に固定され、一方の端面が第1スラスト軸受隙間に面する軸受スリーブと、軸受スリーブの内周面が面するラジアル軸受隙間に生じる油膜で支持すべき軸をラジアル方向に支持するラジアル軸受部とを備える流体軸受装置において、外周面にブラケットに対する固定面を有する軸方向部およびこれと一体の半径方向部からなり、軸方向部が周方向に複数設けられた金属製の補強部材がハウジングの底側コーナー部に配置され、ハウジングが、補強部材をインサート部品として射出成形されていることを特徴とする流体軸受装置を提供する。
上記のように、ハウジングの底側コーナー部に、軸方向部と半径方向部とからなる補強部材を配置することにより、有底筒状の樹脂ハウジングにおける側部と底部の接続部分(連結部分)を補強することができる。そのため、ハウジング底部の強度を高めることができ、軸方向荷重が負荷された場合に底部が変形するのを防止することが、さらには底部が脱落するのを防止することができる。特に、補強部材を金属製とし、これをハウジングの外面側に配置した場合には、ハウジング外面の一部又は全部が金属面に置換されるので、ハウジングをモータブラケットに接着固定する際、相互に固定される樹脂ハウジングの外周面あるいはモータブラケットの内周面に接着強度の向上を図るための別段の工夫(例えば、表面改質処理)を凝らすことなく、両者の固定強度を高めることができる。
補強部材の軸方向部は周方向の複数箇所に設けることが、すなわち周方向で間欠的に設けることができる。例えば、金属製の軸方向部を周方向で連続的に設けた場合(軸方向部を円筒形状とした場合)、一般に樹脂の線膨張係数は金属のそれに比べて十分に大きいので、軸受運転時の温度変化に伴ってハウジングが熱膨張すると、膨張分を外径側に逃がすことができずラジアル軸受隙間の幅精度、すなわちラジアル軸受部における回転精度に悪影響が及ぶおそれがある。これに対し、上記のように軸方向部を周方向の複数箇所に設ければ、補強部材の径方向における剛性が緩和されるので、ラジアル軸受隙間の幅精度に悪影響が及び、ラジアル方向の回転精度が低下するのを回避することができる。
上記のように、荷重負荷時におけるハウジング底部の変形や破断は、側部と底部の接続部分で最も生じ易い。そのため、補強部材の半径方向部は、ハウジングの側部内周面を超える位置まで内径側に延ばして設けるのが望ましい。また、同様の観点から、補強部材の軸方向部は、ハウジングの底部内底面を超える位置まで延ばして設けるのが望ましい。
上記構成において、ハウジングは、補強部材をインサート部品として射出成形することができる。かかる構成とすれば、ハウジングの成形と、補強部材の組み付けとを一工程で行うことができるので、補強部材をハウジングに組み付ける手間を省くことができ、補強部材を設けることによるコスト増を極力抑制することができる。
なお、補強部材は、上記のようにハウジングの外面側に配置することができるが、ハウジング底部の強度を高める観点から言えば、補強部材は必ずしもハウジングの外面側に配置する必要はなく、ハウジングの内面側に配置することも、またハウジングの内部に配置する(ハウジングに埋設する)こともできる。
以上より、本発明によれば、樹脂製のハウジング底部の強度を高めることができ、荷重負荷時に懸念されるスラスト軸受部における回転精度の低下、さらには回転不能となる事態を回避することができる。従って、高い回転精度を誇り、信頼性に富む流体軸受装置を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、流体軸受装置を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に支持する流体軸受装置1と、軸部材2に装着されたディスクハブ3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5とを備えている。ステータコイル4はモータブラケット(ブラケット)6の外周に取り付けられ、ロータマグネット5はディスクハブ3の内周に取り付けられる。流体軸受装置1のハウジング7は、ブラケット6の内周に装着される。ディスクハブ3には、磁気ディスク等のディスクDが一又は複数枚保持される。ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間の電磁力でロータマグネット5が回転し、それによって、ディスクハブ3および軸部材2が一体となって回転する。
図2は、図1に示す流体軸受装置1の拡大断面図を示すもので、本発明にかかる流体軸受装置の第1実施形態を示すものである。この流体軸受装置1は、側部および底部を一体に有するハウジング7と、ハウジング7の内周に固定された軸受スリーブ8と、軸受スリーブ8の内周に挿入された軸部材2と、ハウジング7の開口部をシールするシール部材9と、ハウジング7の底側コーナー部に配置された補強部材12とを主要な構成部品として備える。なお、以下では、説明の便宜上、ハウジング7の開口側を上側、これと軸方向反対側を下側として説明を進める。
軸部材2は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で形成され、軸部2aと、軸部2aの下端に一体又は別体に設けられたフランジ部2bとを備えている。軸部材2は、その全体を金属材料で形成する他、例えばフランジ部2bの全体あるいはその一部(例えば両端面)を樹脂で構成し、金属と樹脂のハイブリッド構造とすることもできる。
軸受スリーブ8は、焼結金属からなる多孔質体、特に銅を主成分とする燒結金属の多孔質体で円筒状に形成される。なお、焼結金属に限らず、黄銅等の軟質金属材料、あるいは焼結金属ではない他の多孔質体(多孔質樹脂等)で軸受スリーブ8を形成することも可能である。
軸受スリーブ8の内周面8aには、第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2のラジアル軸受面となる上下2つの領域(図2の黒塗り部分)が軸方向に離隔して設けられ、該2つの領域には、例えば図3に示すようなヘリングボーン形状に配列された複数の動圧溝8a1、8a2がそれぞれ形成される。上側の動圧溝8a1は、軸方向中心m(上下の傾斜溝間領域の軸方向中央)に対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている。なお、動圧溝は、軸部2aの外周面2a1に形成することもでき、またその形状は、スパイラル形状等、公知のその他の形状とすることもできる。軸受スリーブ8の外周面8dには、両端面8b、8cを連通させる1又は複数本の軸方向溝8d1が形成され、本実施形態で軸方向溝8d1は、円周方向の3箇所に等配されている。
軸受スリーブ8の下側端面8bには第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受面となる領域(図2の黒塗り部分)が設けられ、該領域には、図示は省略するが、例えばスパイラル形状に配列された複数の動圧溝が形成されている。動圧溝は、フランジ部2bの上側端面2b1に形成することもでき、またその形状は、へリングボーン形状等、公知のその他の形状とすることもできる。
ハウジング7は、側部と、側部の下端開口部を封止する底部7cとを一体に有する有底筒状を呈する。本実施形態において、側部は、円筒状の小径部7aと、小径部7aの上側に配置された円筒状の大径部7bとで構成されている。小径部7aの内周面7a1および外周面7a2は、それぞれ、大径部7bの内周面7b1および外周面7b2に比べ小径に形成されている。小径部7aの内周面7a1と大径部7bの内周面7b1とは、軸方向と直交する方向の平坦面状に形成された段差面7eで連続している。
ハウジング7の内底面7c1には、第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受面となる領域(図2の黒塗り部分)が設けられ、該領域には、図示は省略するが、例えばスパイラル形状に配列された複数の動圧溝が形成されている。この動圧溝は、フランジ部2bの下側端面2b2に形成することもでき、またその形状は、ヘリングボーン形状等、公知のその他の形状とすることができる。
ハウジング7の外面の底側コーナー部には、ステンレス鋼等の金属材料で形成され、軸方向部12aと半径方向部12bとを一体に有する断面略L字形状の補強部材12が配置されている。本実施形態において、補強部材12の軸方向部12aは、ハウジング7の底部内底面7c1、さらには第2ラジアル軸受部R2を超える位置まで上方に延び、半径方向部12bは、ハウジング7の小径部内周面7a1、さらには第2スラスト軸受部T2を超える位置まで内径側に延び、その中心には孔が設けられている。軸方向部12aは周方向の複数箇所に設けられ、そのため補強部材12の軸方向部12aは周方向で間欠的な櫛型形状を呈している。
ハウジング7は、上記の補強部材12をインサートして樹脂で射出成形される。成形収縮時の収縮量の差による変形を防止するため、ハウジング7の各部7a〜7cは略均一厚に形成されている。なお、図示は省略するが、ハウジング7を射出成形する際、金型内への樹脂の充填は、例えば、補強部材12の半径方向部12bに形成された孔を介して底部7cの外底面の略中央部から行うことができる。
ハウジング7を形成する樹脂は主に熱可塑性樹脂であり、例えば、非晶性樹脂として、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリエーテルイミド(PEI)等、結晶性樹脂として、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等を用いることができる。また、上記の樹脂に充填する充填材の種類も特に限定されないが、例えば、充填材として、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカー状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボンファイバー、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、金属粉末等の繊維状又は粉末状の導電性充填材を用いることができる。これらの樹脂および充填材は、単独で用い、あるいは、二種以上を混合して使用しても良い。
シール部材9は、例えば、黄銅等の軟質金属材料やその他の金属材料、あるいは樹脂材料で、リング状の第1シール部9aと、第1シール部9aの外径側から下方に張り出した円筒状の第2シール部9bとを一体に備える断面逆L字形状に形成される。第1シール部9aの内周面9a2は軸部2aの外周面2a1との間に所定容積の第1のシール空間S1を形成する。また、第2シール部9bの外周面9b1は、ハウジング7を構成する大径部7bの内周面7b1との間に所定容積の第2のシール空間S2を形成する。本実施形態において、第1シール部9aの内周面9a2およびハウジング7の大径部7bの内周面7b1は、何れも上方を拡径させたテーパ面状に形成され、そのため第1および第2のシール空間S1,S2は下方に向かって漸次縮小したテーパ形状を呈する。
第1シール部9aの下側端面9a1には、下側端面9a1を横断する一又は複数の径方向溝10が形成されている。図示は省略するが、本実施形態で、径方向溝10は円周方向の三箇所に等配されている。
上記の構成部材からなる流体軸受装置1は、ハウジング7内に軸部材2を収容した状態でハウジング7の内周に軸受スリーブ8を固定し、あるいは、内周に軸部材2を挿入した状態で軸受スリーブ8をハウジング7内に挿入した後固定し、さらに軸受スリーブ8にシール部材9を固定することで組み立てることができる。その後、シール部材9で密封されたハウジング7の内部空間に、軸受スリーブ8の内部気孔を含め潤滑油を充満させれば、図2に示す流体軸受装置1が完成する。
なお、ハウジング7と軸受スリーブ8の固定、および軸受スリーブ8とシール部材9の固定は、圧入や接着、さらには圧入接着(接着剤の介在の下で圧入する)で行うことができる。組立後は、シール部材9を構成する第1シール部9aの下側端面9a1が軸受スリーブ8の上側端面8cと当接し、第2シール部9bの下側端面がハウジング7の段差面7eと軸方向隙間11を介して対向する。また、シール部材9は、ハウジング7の大径部7bの内径側に配置される。
以上の構成からなる流体軸受装置1において、軸部材2が回転すると、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる上下2箇所の領域は、それぞれ、軸部2aの外周面2a1とラジアル軸受隙間を介して対向する。そして、軸部材2の回転に伴って、各ラジアル軸受隙間に形成される油膜は、ラジアル軸受面にそれぞれ形成された動圧溝8a1、8a2の動圧作用によってその油膜剛性を高められ、この圧力によって軸部材2がラジアル方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をラジアル方向に回転自在に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが形成される。
また、軸部材2が回転すると、軸受スリーブ8の下側端面8bのスラスト軸受面となる領域は、フランジ部2bの上側端面2b1とスラスト軸受隙間を介して対向し、ハウジング7の内底面7c1のスラスト軸受面となる領域は、フランジ部2bの下側端面2b2とスラスト軸受隙間を介して対向する。そして、軸部材2の回転に伴って、各スラスト軸受隙間に形成される油膜は、スラスト軸受面にそれぞれ形成された動圧溝の動圧作用によってその油膜剛性を高められ、この圧力によって軸部材2が両スラスト方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2を両スラスト方向に回転自在に非接触支持する第1スラスト軸受部T1と第2スラスト軸受部T2とが形成される。
また、軸部材2の回転時には、上述のように、第1および第2のシール空間S1、S2が、ハウジング7の内部側に向かって漸次縮小したテーパ形状を呈しているため、両シール空間S1、S2内の潤滑油は毛細管力による引き込み作用により、シール空間が狭くなる方向、すなわちハウジング7の内部側に向けて引き込まれる。これにより、ハウジング7の内部からの潤滑油の漏れ出しが効果的に防止される。また、シール空間S1、S2は、ハウジング7の内部空間に充満された潤滑油の温度変化に伴う容積変化量を吸収するバッファ機能を有し、想定される温度変化の範囲内では、潤滑油の油面は常にシール空間S1、S2内にある。
なお、第1シール部9aの内周面9a2を円筒面とする一方、これに対向する軸部2aの外周面2a1にテーパ面を形成してもよく、この場合、第1のシール空間S1には、さらに遠心力シールとしての機能も付加されるのでシール効果が一層高まる。
また、上述したように、上側の動圧溝8a1は、軸方向中心mに対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている(図3参照)。そのため、軸部材2の回転時、動圧溝8a1による潤滑油の引き込み力(ポンピング力)は上側領域が下側領域に比べて相対的に大きくなる。そして、この引き込み力の差圧によって、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部2aの外周面2a1との間の隙間に満たされた潤滑油は、第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間→軸受スリーブ8の軸方向溝8d1によって形成される流体通路→第1シール部9aの径方向溝10によって形成される流体通路という経路を循環して、第1ラジアル軸受部R1のラジアル軸受隙間に再び引き込まれる。
このように、潤滑油がハウジング7の内部空間を流動循環するように構成することで、潤滑油の圧力バランスが保たれると同時に、局部的な負圧の発生に伴う気泡の生成、気泡の生成に起因する潤滑油の漏れや振動の発生等の問題を解消することができる。上記の循環経路には、第1のシール空間S1が連通し、さらに軸方向隙間11を介して第2のシール空間S2が連通しているので、何らかの理由で潤滑油中に気泡が混入した場合でも、気泡が潤滑油に伴って循環する際にシール空間S1、S2内の潤滑油の油面(気液界面)から外気に排出される。従って、気泡による悪影響はより一層効果的に防止される。
なお、図示は省略するが、軸方向の流体通路はハウジング7の小径部7aの内周面7a1およびシール部材9の第2シール部9bの内周面9b2に軸方向溝を設けることによって形成することもでき、径方向の流体通路は軸受スリーブ8の上側端面8cに径方向溝を設けることによって形成することもできる。
以上に示す流体軸受装置1では、樹脂からなる有底筒状のハウジング7の底側コーナー部に、軸方向部12aと半径方向部12bとからなる金属製の補強部材12を配置しているので、ハウジング7における側部(小径部7a)と底部7cの連結部分を補強することができる。そのため、ハウジング7の底部7cの強度を高めることができ、軸方向荷重が負荷された場合に、底部7cが変形、さらには脱落するのを防止することができる。従って、第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間の幅精度、すなわち第2スラスト軸受部T2における回転精度が低下するのを防止することができ、軸受としての機能を長期間に亘って高精度に確保することができる。特に本実施形態では、補強部材12の軸方向部12aがハウジング7の底部内底面7c1を超える位置まで上方に延在すると共に、半径方向部12bがハウジング7の小径部内周面7a1を超える位置まで内径側に延在しているので、上記の効果を一層効果的に享受することができる。
また、かかる構成とすることにより、ハウジング7の小径部7aの外周面7a2、すなわちブラケット6(図1参照)に対する固定面の一部あるいは全部が金属面に置換される。そのため、ハウジング7をブラケット6の内周に接着固定する場合でも、ハウジング7の外周面7a2あるいはブラケット6の内周面に表面改質処理等を施すことなく、モータに対する流体軸受装置1の固定強度(接着強度)を高めることができる。
なお、本実施形態において、補強部材12は、ハウジング7のインサート部品であるため、両者を別工程等で組み付ける手間を省いてこの種の補強部材12を設けることによるコスト増を極力抑制することができる。しかしながら、補強部材12をインサート部品とした場合、ハウジング7と補強部材12とが密着状態となるため、仮に軸方向部12aが円筒形状を呈していると、軸受運転時の温度変化に伴って樹脂製のハウジング7が熱膨張した際、ハウジング7の膨張分を外径側に逃がすことができずラジアル軸受隙間の幅精度が悪化するおそれがある。これに対し、本実施形態では、軸方向部12aを周方向の複数箇所に設けているので、補強部材12の径方向の剛性が緩和される。従って、ハウジング7が熱膨張した場合におけるラジアル軸受隙間の幅精度の悪化、すなわちラジアル方向の回転精度の悪化を回避することができる。
また、本実施形態の流体軸受装置1では、シール部材9の内周側だけでなく、外周側にもシール空間が形成されている。シール空間は、ハウジング7の内部空間に充満された潤滑油の温度変化に伴う容積変化量を吸収しうる容積を有するものであり、従って本実施形態の構成であれば、第2のシール空間S2をシール部材9の外周側にも設けている分、第1のシール空間S1の軸方向寸法を図7に示す構成よりも小さくすることが可能である。そのため、例えば、軸受装置(ハウジング7)の軸方向寸法を長大化させることなく軸受スリーブ8の軸方向長さ、換言すると両ラジアル軸受部R1、R2間の軸受スパンを図7に示す流体軸受装置よりも大きくすることができ、モーメント剛性を高めることができる。
図4は、本発明に係る流体軸受装置の第2実施形態を示すものである。同図に示す流体軸受装置21が、図2に示す流体軸受装置1と異なる主な点は、ハウジング7の側部の外径寸法を軸方向全長に亘って同一径とした点にある。また、ハウジング7の側部と底部7cの境界部内周には段部が一体的に設けられている。軸部材2のフランジ部2bは段部の内径側に配置され、段部は軸受スリーブ8の位置決め部として使用することができる。従って、スラスト軸受隙間の幅管理を容易に行い得る。これ以外の構成については、図2に示す実施形態に準ずるので、共通の参照番号を付して重複説明を省略する。
図5は、本発明に係る流体軸受装置の第3実施形態を示すものである。同図に示す流体軸受装置31が図2に示す流体軸受装置1と異なる主な点は、図2、図4に示す実施形態において補強部材12がハウジング7のインサート部品とされていたのに対し、補強部材12がハウジング7の外径側に隙間接着されている点にある。これ以外の構成については、図2に示す実施形態に準ずるので、共通の参照番号を付して重複説明を省略する。
なお、図5に示す構成においても、補強部材12の軸方向部12aは、これを周方向に複数設けた櫛型形状を呈しているが、このように補強部材12をハウジング7に対して隙間接着する場合には、軸方向部12aは円筒形状とすることもできる。軸受運転時の温度変化に伴うハウジング7の膨張量は、ハウジング7と補強部材12の間の接着隙間で吸収することができるからである。
図6(a)は、本発明に係る流体軸受装置の第4実施形態を示すものである。同図に示す流体軸受装置41が以上に示した流体軸受装置と異なる主な点は、補強部材12をハウジング7の外面側ではなく、ハウジング7の内面側に配置した点にある。本実施形態では、図6(b)に示すように、補強部材12の半径方向部12bがフランジ部2bの外周面2b3を超える位置まで内径側に延在し、かつ上側端面12b2がハウジング7の底部内底面7c1と面一に設けられているので、フランジ部2bを介して底部7cに負荷される軸方向荷重は、半径方向部12bで直接受けることができる。従って、荷重負荷時における底部7cの変形を防止することができるのはもちろんのこと、フランジ部2bがハウジング7の内底面7c1に強く圧接した場合に懸念される動圧溝(厳密には動圧溝を区画する「背」の部分)の損傷を防止することができ、第2スラスト軸受部T2における回転性能の低下を効果的に防止することができる。
以上では、補強部材12をハウジング7の外面側あるいは内面側に設けた場合について説明を行ったが、ハウジング底部7cの強度を高める観点から言えば、補強部材12は、ハウジング7に埋設することもできる(図示省略)。
また、図示は省略するが、本発明の構成は、図7に示す形態の流体軸受装置に対しても好適に用いることが可能である。
以上の説明では、ラジアル軸受部R1、R2およびスラスト軸受部T1、T2として、ヘリングボーン形状やスパイラル形状の動圧溝により潤滑油の動圧作用を発生させる構成を例示しているが、ラジアル軸受部R1、R2として、いわゆるステップ軸受、多円弧軸受、あるいは非真円軸受を、スラスト軸受部T1、T2として、いわゆるステップ軸受や波型軸受を採用しても良い。また、ラジアル軸受部R1、R2のように、2つのラジアル軸受部を軸方向に離隔して設けた構成とする他、軸受スリーブ8の内周側の上下領域に亘って1つのラジアル軸受部を設けた構成としても良い。さらには、ラジアル軸受部R1,R2として動圧発生部を有しないいわゆる真円軸受を、またスラスト軸受部として、軸部材の一端を接触支持するピボット軸受を採用することもできる。
本発明に係る流体軸受装置を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの断面図である。 本発明に係る流体軸受装置の第1実施形態を示す断面図である。 軸受スリーブの断面図である。 本発明に係る流体軸受装置の第2実施形態を示す断面図である。 本発明に係る流体軸受装置の第3実施形態を示す断面図である。 (a)図は、本発明に係る流体軸受装置の第4実施形態を示す断面図、(b)図は、(a)図の一部拡大断面である。 従来構成の流体軸受装置を概念的に示す断面図である。
符号の説明
1,21,31,41 流体軸受装置
2 軸部材
7 ハウジング
7a 小径部(側部)
7b 大径部(側部)
7c 底部
8 軸受スリーブ
9 シール部材
9a 第1シール部
9b 第2シール部
12 補強部材
12a 軸方向部
12b 半径方向部
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
S1 第1のシール空間
S2 第2のシール空間

Claims (5)

  1. 側部および底部を一体に有し、ブラケットの内周に固定される樹脂製のハウジングと、ハウジングの内周に固定され、一方の端面が第1スラスト軸受隙間に面する軸受スリーブと、軸受スリーブの内周面が面するラジアル軸受隙間に生じる油膜で支持すべき軸をラジアル方向に支持するラジアル軸受部とを備える流体軸受装置において、
    外周面にブラケットに対する固定面を有する軸方向部およびこれと一体の半径方向部からなり、軸方向部が周方向に複数設けられた金属製の補強部材がハウジングの底側コーナー部に配置され、ハウジングが、補強部材をインサート部品として射出成形されていることを特徴とする流体軸受装置。
  2. 補強部材の軸方向部の外周面とハウジングの外周面と面一に設けられている請求項1に記載の流体軸受装置。
  3. 補強部材の半径方向部が、ハウジングの側部内周面を超える位置まで内径側に延びている請求項1に記載の流体軸受装置。
  4. 補強部材の軸方向部が、ハウジングの底部内底面を超える位置まで延びている請求項1に記載の流体軸受装置。
  5. 支持すべき軸が、ハウジングの底部と軸受スリーブとの間に配置されるフランジ部を有するものであり、補強部材の半径方向部が、フランジ部の外周面を超える位置まで内径側に延びている請求項1に記載の流体軸受装置。
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