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JP5018946B2 - アンテナ - Google Patents

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Description

本発明はアンテナに関し、特に、専用のアンテナエレメントを用いない簡易な構成で実現可能なアンテナに関する。
従来、テレビジョン放送やFM放送等の様々な放送波を受信するアンテナとして、様々な形態のアンテナが用いられている。例えば、テレビジョン放送やFM放送の受信用には、ダイポールアンテナや八木・宇田アンテナ等がよく用いられる。一方で、これらの様々な放送波又は放送波に載せられた信号を、室内や車内、あるいは徒歩での移動中に受信する機会も増えてきている。このような場合に使用するアンテナとしては、組み立てや取り付け等の取り扱いが容易であるものが求められる。例えば特許文献1には、アンテナエレメントを単純な構造で実現したモノポールアンテナについて記載されている。
特開2004−328364号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたモノポールアンテナを含め、従来のアンテナには、電波を受信するためのアンテナエレメントは必ず必要であった。言い換えると、電波を受信するための専用のアンテナエレメントを持たないアンテナはこれまでに存在しなかった。
本発明は、専用のアンテナエレメントを用いない簡易な機構で実現するアンテナを提供することにある。
発明者は、その研究の過程で偶然にも、専用のアンテナエレメントを持たせる必要がなく、従って部品点数が少なくて機構も簡易なアンテナを見つけ出した。
本発明のアンテナは、始点から折り返し点までの第1線路長を有する第1導体と、折り返し点から始点方向への第2線路長を有して、折り返し点において第1導体と電気的に接続された第2導体とを含む。そして、本発明のアンテナは、第1周波数の第1受信信号を、第1線路長と第2線路長とを合わせた長さに相当する第1アンテナ長の導体で受信する。また、第2周波数の第2受信信号は、第1線路長と第2線路長とのいずれか一方のみの長さに相当する第2アンテナ長の導体で受信する構成とした。さらに、第1導体と前記第2導体の一方は同軸線の芯線で構成し、他方は同軸線の外部導体で構成した。
このように構成したことで、始点が給電点となって、第1導体と第2導体とによって第1周波数又は第2周波数の電波の双方が1つのアンテナで受信されるようになる。
また、受信に要する長さを、従来その受信に必要と考えられていたアンテナ長よりも短い長さとすることができ、小型化できるようになる。
本発明によれば、専用のアンテナエレメントを用いない簡易な機構で、アンテナを構成することができる。
本発明のケーブルアンテナの構成例を示す説明図である。 本発明のケーブルアンテナの原理を示す説明図である。 本発明のケーブルアンテナの設計例を示す説明図である。 本発明のケーブルアンテナが第2周波数の電波に共振する場合の等価回路を示す説明図である。 本発明のケーブルアンテナが第1周波数の電波に共振する場合の等価回路を示す説明図である。 本発明の第1の実施の形態によるケーブルアンテナの構成例を示す説明図である。 本発明の第1の実施の形態によるケーブルアンテナの共振周波数の例を示すグラフである。 本発明の第1の実施の形態によるケーブルアンテナの第1線路長を半分の長さとした場合の構成例を示す説明図である。 本発明の第1の実施の形態によるケーブルアンテナのFM/VHF帯におけるピークゲイン測定結果を示すグラフ及び表である。 本発明の第2の実施の形態によるケーブルアンテナの構成例を示す説明図である。 本発明の第2の実施の形態によるケーブルアンテナのFM/VHF帯におけるVSWR特性の例を示すグラフ及び表である。 本発明の第2の実施の形態によるケーブルアンテナのFM/VHF帯におけるピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。 本発明の第2の実施の形態によるケーブルアンテナのUHF帯におけるピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。 従来のダイポールアンテナのFM/VHF帯におけるピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。 従来のダイポールアンテナのUHF帯におけるピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。 本発明の第2の実施の形態によるケーブルアンテナのFM/VHF帯におけるピークゲイン及び平均ゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。 本発明の第2の実施の形態によるケーブルアンテナのUHF帯におけるピークゲイン及び平均ゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。 本発明の変形例1による、ケーブルアンテナを機器本体へ組み込んだ場合の構成例を示す説明図である。 本発明の変形例2による携帯端末搭載アンテナの構成例を示す説明図である。 本発明の変形例2による携帯端末搭載アンテナのUHF帯におけるピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。 本発明の変形例3によるダイポールアンテナの構成例を示す説明図である。 本発明の変形例3によるダイポールアンテナのFM/VHF帯におけるピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。 本発明の変形例4によるケーブルアンテナの構成例を示す説明図である。 本発明の変形例4によるケーブルアンテナの線路長を示す説明図である。 本発明の変形例4によるケーブルアンテナが受信する電波の周波数帯を模式的に示した説明図である。 評価用ダイポールアンテナ(折り返しなし)の構成例を示す説明図である。 評価用ダイポールアンテナ(折り返しなし)のVSWR特性を示すグラフである。 評価用ダイポールアンテナ(1回折り返し)の構成例を示す説明図である。 評価用ダイポールアンテナ(1回折り返し)のVSWR特性を示すグラフである。 評価用ダイポールアンテナ(2回折り返し)の構成例を示す説明図である。 評価用ダイポールアンテナ(2回折り返し)のVSWR特性を示すグラフである。
以下、発明を実施するための形態(以下、本例とも称する)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.アンテナの基本構成及び基本原理の説明
2.第1の実施の形態(高周波減衰部材を使用してアンテナ長を決定する場合の構成例)
3.第2の実施の形態(高周波減衰部材を使用しない場合の構成例)
4.第1の実施の形態又は第2の実施の形態の各種変形例
<1.アンテナの基本構成及び基本原理の説明>
[アンテナの基本構成例]
図1は、本発明のアンテナの一実施形態としての、同軸線(同軸ケーブル)を使用したケーブルアンテナの構成例を示したものである。図1に示したケーブルアンテナ10は、図示せぬ受信機器と接続されるコネクタ1と接続された、同軸線2のみで構成される。コネクタ1としては、高周波信号の損失が少ないものを選択することが望ましい。同軸線2の、コネクタ1と接続された側と反対側の先端部3は、エラストマー等の樹脂によりモールド成形されて成る。そしてその内部においては、保護被覆2a及びシールド線2b(第1又は第2導体)を取り除いてあり、コア材2c(誘体)と芯線2d(第1又は第2導体)とが露出されている。そして、コア材2cから伸びた芯線2dの先端部分を、はんだ付け等によってシールド線2bに接続してある。
先端部3からコネクタ1側に向かって所定の長さの位置には、中継部4を構成してある。中継部4も、先端部3と同様にモールド形成されている。その内部では、同軸線2の保護被覆2a及びシールド線(外部導体)2bを取り除いてあり、コア材2c(誘体)が露出した状態となっている。そしてこの部分が、本例のケーブルアンテナ10の給電点Fpとなる。このように構成したことにより、始点としての給電点Fpから折り返し点としての先端部3までの間の同軸線2(詳しくは、シールド線2bと芯線2d)が、アンテナエレメントとして機能するようになる。また、コネクタ1側に接続された同軸線2のシールド線2bはグランド(以下、GNDと称する)として機能するようになり、この部分には、イメージ電流(電気影像電流)が流れる。すなわち、アンテナエレメントとその電気影像によりλ/2ダイポールアンテナが構成される。
このとき、アンテナエレメントとして機能する部分のシールド線2bと芯線2dとの間には、始点から折り返し点までの間にわたって等価的にインピーダンス接続が存在し、そのインピーダンス値は、低い周波数(第1周波数)と高い周波数(第2周波数)とに対して相互に異なる。図示の構成では、潜在的な容量リアクタンス(容量成分)に応じて、周波数の高い側では高周波的に接続(短絡:容量結合)され、相対的に低いインピーダンスとなる。この結果、2種類の周波数に対応する2種類のアンテナ長(2共振)が存在する。以下、図2を参照して、アンテナエレメントとして機能する部分に等価的に存在する高周波的なインピーダンス接続とアンテナ長との関係について説明する。図2は、ケーブルアンテナ10においてアンテナとして機能するエレメントを実線で示し、先端部3での折り返し部分を2点の●(黒丸)で示した図である。
まず、高い周波数(第2周波数)を受信する場合には、図1及び図2(a)に示すように、上述のインピーダンス接続部(高周波的な接続部)において、シールド線2bと芯線2dとの間で、高周波的な容量結合が起こる。このような容量結合が生じることで、給電点Fpから折り返し点までの線路長である第1線路長L1がアンテナ長(第2アンテナ長)となって、電波を受信する。この第1線路長L1は、前述のGNDとして機能する部分のシールド線2bの切れ目から、アンテナエレメントとして機能する部分の先端部3での折り返し点までの長さに等しい。
一方、低い周波数(第1周波数)を受信する場合には、その周波数に対応して容量結合が小さくなって、インピーダンス接続部のインピーダンスが高くなる。このため、図1及び図2(b)に示すように、第1線路長L1と、折り返し点で折り返された部分の線路長(第2線路長)L2とを足した線路長が、アンテナ長(第1アンテナ長)となる。第2線路長L2は、先端部3での折り返し点から、中継部4内のアンテナエレメントとして機能する部分のシールド線2bの切れ目までの長さに等しいものとなる。
このように構成したケーブルアンテナ10において、第1線路長と第2線路長を受信したい電波の周波数の波長に基づいて決定することで、2つの異なる任意の周波数の電波を受信させることが可能となる。なお、図1では同軸線2を使用してケーブルアンテナ10を構成した例を挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、フィーダー線等の、2つの導線(導体)がほぼ並行に配置された他の線材を使用しても、同様なケーブルアンテナ10を作成することが可能である。
[アンテナの設計例]
次に、図3を参照して、受信したい2つの周波数から、ケーブルアンテナ10の実際の線路長を決定する方法について説明する。図3では、説明を簡単にするため、同軸線2の保護被覆2a(図1参照)の図示を省略している。また、図3では、説明を分かり易くするためにコア材2cを同軸線2の中央部分で切断したように図示してあるが、本来は、図1に示すように先端部3の途中までコア材2cが伸びているものとする。
図3に示した例において、受信させたい2つの周波数の波長を、それぞれ波長λ1、波長λ2とし、波長の長さは、波長λ1>波長λ2であるものとする。すなわち、例えば100MHzと200MHzの電波を受信させる場合は、波長λ1=3m、波長λ2=1.5mとなる。
次に、波長λ1と波長λ2を受信するためのアンテナ長を規定する。具体的には、波長λ1と波長λ2のそれぞれの共振長がλ/4となるように、アンテナエレメントとして機能する部分の長さ(第1線路長)を決定する(図3(a)参照)。波長λ1は3mであるため、波長λ1の共振長(第1アンテナ長)は0.75mとなり、波長λ2は1.5mであるため、波長λ2の共振長(第2アンテナ長)は0.375mとなる。つまり、第1線路長を0.75mにすればその部分が100MHzの電波に共振し、0.375mにすれば200MHzの電波に共振する。
しかし、上述したように、本例のケーブルアンテナ10では、周波数の高い第2周波数を受信する場合にはアンテナエレメントとして機能する部分において高周波的に容量結合が発生し、周波数の低い第1周波数を受信する場合には容量結合は発生しない。この特性を考えると、第2アンテナ長(0.375m)を第1線路長L1とし、第1アンテナ長(0.75m)から第2アンテナ長(0.375m)を引いた長さを折り返し点から折り返せば、第1線路長L1の長さで2つの周波数を受信できる。(図3(b)参照)これにより、第1アンテナ長の半分の長さである第2アンテナ長で第1線路長を構成しても、第1アンテナ長が受信すべき第1周波数を受信することができるようになる。すなわち、波長の長い低い周波数の電波を受信するために必要な線路長を、一般に必要であると考えられる線路長の1/2の長さにすることができる。
なお、GNDとして機能する部分の長さは、第1周波数の波長λ1の1/4以上であることが望ましい。つまり、図3に示した例においては、0.75m以上であることが好ましい。このとき、GNDとして機能する部分の同軸線2の長さをきっちり1/4λ1で切っても良いが、切らずに長いままとしてもよい。
図4及び図5は、本例のケーブルアンテナ10を図3(b)に示したように構成した場合の、ケーブルアンテナ10の等価回路を示したものである。図4は、波長λ1を有する第1周波数に共振する場合の等価回路図であり、図5は、波長λ2を有する第2周波数に共振する場合の等価回路図である。ケーブルアンテナ10で第1周波数を受信する場合には、図4(a)に示すように、アンテナが折り返された部分での高周波的な容量結合が少ない。このため、図4(b)に示すように、折り返し分を伸ばした線路長(=1/4λ1)と、GNDとして機能する1/4λ1の線路長とを足した長さ(1/2λ1)とが、波長λ1を有する第1周波数に共振する。
一方、周波数の高い第2周波数を受信する場合には、図5(a)に示すように、アンテナが折り返された部分での高周波的な容量結合により、図5(b)に示すように、第1線路長L1(1/4λ2)と、GNDとして機能する1/4λ1の線路長とを足した長さ(1/2λ2)が、波長λ2を有する第2周波数に共振する。
なお、図3〜図5では、第2アンテナ長が第1アンテナ長のちょうど半分になる(波長λ1と波長λ2が1:2の関係である)例を挙げているが、これに限定されるものではない。波長λ1と波長λ2が1:2以外の関係であっても、第2アンテナ長を第1線路長L1とし、第1アンテナ長から第2アンテナ長を引いた長さを折り返し点から折り返すことで、本例のケーブルアンテナ10を構成することができる。このような場合には、第1線路長L1が、1/4λではなく1/2λや3/4λ等の長さとなる。また、実際の第1線路長又は第2線路長やGNDとして機能する部分の線路長は、使用される機器のGNDサイズにより調整されるものとする。
<2.第1の実施の形態>
[アンテナの構成例]
次に、本例の第1の実施の形態として、高周波減衰部材を使用してアンテナ長を決定する場合のケーブルアンテナ10の構成例について、図6を参照して説明する。なお、図6において図1と対応する箇所には同一の符号を付してあり、詳細な説明は省略する。図6に示した例では、高周波減衰部材としてフェライトコア5を使用している。このフェライトコア5を、給電点Fp(中継部4)からコネクタ1の方向に向かって、第1周波数λ1の1/4以上の長さの所望の位置に配置することにより、フェライトコア5からコネクタ1までの間の同軸線2には電波が載らなくなる。これにより、フェライトコア5からコネクタ1までの線路長を考慮することなくアンテナ長を決定することができるようになる。
[アンテナ特性の検証]
発明者は、本発明の理論の確かさを検証するため、このように構成したケーブルアンテナ10において給電点Fpからフェライトコア5までの長さ(線路長)L11を固定し、第1線路長L1の長さを可変させた上で、電波を受信させる実験を行った。まずは、第1線路長L1を第1アンテナ長の半分の長さ(=第2アンテナ長)にせず、第1アンテナ長に基づいて決定した場合の特性について検証した。理論上は、第1線路長L1+線路長L11が1つの周波数に共振し、第1線路長L1+第2線路長L2+線路長L11が別の周波数に共振することになる。この実験では、85MHzに共振することを目的としたため、給電点Fpからフェライトコア5までの長さL11を98cmに固定している。
図7は、第1線路長L1を83cmにした場合と、70cmにした場合における、共振点の位置を示したものである。図7の横軸は周波数(MHz)を示し、縦軸は定在波比(以下、SWR:Standing Wave Ratioと称する)を示す。第1線路長L1を83cmにした場合のSWRは実線で示し、70cmとした場合のSWRは破線で示してある。第1線路長L1を83cmにした場合には、約54MHzと約84MHzの地点でSWRが4以下となっており、共振が取れていることが分かる。また、第1線路長L1を70cmにした場合には、約64MHzと約96MHzの地点でSWRが4以下となっており、共振が取れていることが分かる。すなわち、同軸線2で構成したケーブルアンテナ10が、2つの異なる周波数に共振していることが検証された。
次に、第1線路長L1を第1アンテナ長の半分の長さ(=第2アンテナ長)にした場合の特性の確認も行った。図8は、この場合のケーブルアンテナ10の構成例を示した図である。図8において、図1や図6と対応する箇所には同一の符号を付してあり、重複する説明は省略する。図8に示したケーブルアンテナ10では、図7に示した例と同様に線路長L11は98cmとし、第1線路長L1を45cmとした。すなわち、第1線路長L1を、85MHzを受信するのに必要と考えられる83cmの、約半分の長さとした。
図9(a)は、図8に示したように構成したケーブルアンテナ10の、垂直偏波及び水平偏波におけるピークゲインを示したグラフである。横軸は周波数(MHz)を示し、縦軸はピークゲイン(dBd)を示す。測定対象の周波数帯は、FM/VHF帯(70MHz〜220MHz)とした。垂直偏波は破線で示し、水平偏波は実線で示してある。図9(b)及び図9(c)に、図9(a)に示したグラフ中の各測定点における値を示した。図9(b)は垂直偏波でのピークゲインの値を示し、図9(c)は垂直偏波でのピークゲインの値を示す。なお、図9(b)及び図9(c)には、図9(a)の横軸に示した周波数のうち、76MHz〜107MHzまでの間の周波数における測定値のみを示している。
図9(a)及び図9(b)に示すように、85MHz付近では、垂直偏波でのピークゲインは86MHzで−11.90dBdとなり、95MHzでは−6.85dBdとなっている。水平偏波でのピークゲインも、図9(a)及び図9(c)に示すように、86MHzで−16.70dBdとなり、95MHzでは−13.05dBdとなっている。すなわち、これらの周波数近傍の共振により、本例のケーブルアンテナ10が、FM/VHF帯において、垂直偏波と水平偏波の両方を受信できていることが分かる。
[第1の実施の形態による効果]
上述した実施の形態によれば、同軸線2の保護被覆2a及びシールド線2bを取り除いた部分が給電点Fpとなり、先端部3でシールド線2bに接続された芯線2d及びシールド線2bとが電波を受信するようになる。従って、専用のアンテナエレメントや接続用の基板等を用いることのない簡易な構造であるから、安価にアンテナを構成することができる。
また上述した実施の形態では、受信する周波数に応じて、折り返し点(先端部3)までの第1線路長L1と、折り返し部分を伸ばした線路長(第1線路長+第2線路長)とが、それぞれ別の周波数に共振する。具体的には、波長の長い第1周波数を受信する場合には第1線路長+第2線路長が第1アンテナ長となり、波長の短い第2周波数を受信する場合は第1線路長が第2アンテナ長となる。すなわち、折り返しの構成により、第1線路長分のケーブル長で、周波数の高さに応じて2つの異なるアンテナ長(第1アンテナ長/第2アンテナ長)を構成でき、2種類の周波数の電波を受信できるようになる。つまり、低い周波数(第1周波数)を受信させたい場合にも、その受信のために要する長さ(ケーブル長)を、実際に必要なアンテナ長(第1線路長+第2線路長)の半分の長さ(第1線路長)とすることができる。すなわち、アンテナを小型化することができるようになる。
また、第1線路長と第2線路長の長さや、折り返し点での折りしろの長さを調整することにより、受信周波数を任意の周波数に変更することができる。
さらに、給電点Fpとコネクタ1との間の所望の位置に、高周波遮断部材としてフェライトコア5を取り付けることで、フェライトコア5からコネクタ1までの間に電波が載らなくなる。つまり、アンテナ長の設計時に、フェライトコア5からコネクタ1までの間の同軸線2の長さを考慮しなくてもよくなる。これにより、フェライトコア5からコネクタ1までの間の同軸線2の長さを任意の値に設定できるようになるため、本例のケーブルアンテナ10や受信装置の配置位置の、自由度を高めることができる。
また、給電点Fpとコネクタ1との間の所望の位置に、フェライトコア5を取り付けることにより、フェライトコア5が高周波遮断部材として機能するため、受信装置で発生したノイズがアンテナ部分に載ってしまうことを防止できる。
<3.第2の実施の形態>
[アンテナの構成例]
次に、本例の第2の実施の形態として、高周波減衰部材を使用せずにアンテナ長を決定する場合のケーブルアンテナ10の構成例について、図10を参照して説明する。図10において図1、図6、図8と対応する箇所には同一の符号を付してあり、重複する説明は省略する。図10に示すように、高周波減衰部材を使用しない場合には、同軸線2全体に電波が乗るようになる。このため、GNDとして機能する部分の長さは、λの単位で切るようにすることが好ましい。図10に示したケーブルアンテナ10では、GNDとして機能する部分(線路長L11)にも積極的に電波を載せるため、アンテナエレメントとして機能する第1線路長L1を1/4λとしたのに対して、線路長L11は3/4λとした。ここでは、第2アンテナ長(第1線路長のみを使用)を持つ導体が85MHzに共振するように、第1線路長を83cmとした。従って、線路長L11の長さは216cmとなる。
図11は、ケーブルアンテナ10を図10に示したように構成した場合における電圧定在波比(以下、VSWR: Voltage Standing Wave Ratioと称する)を示したものである。横軸は周波数(MHz)を示し、縦軸はVSWRを示す。また、図11(a)に示したグラフ上の複数の測定点の周波数とVSWRの値を、図11(b)示してある。
図11(a)及び図11(b)に示すように、測定点MK2(80MHz)でVSWRが2.33となっており、ケーブルアンテナ10が80MHzに共振していることが分かる。また、一点鎖線で示したUHF帯(470MHz〜770MHz)においても、特に測定点MK6(570MHz)〜測定点MK7(770MHz)においてVSWRが3以下となっている。すなわち、FM/VHF帯の高調波に相当するUHF帯でも、ケーブルアンテナ10が共振していることが分かる。
図12及び図13は、図10に示すアンテナ構成にしたケーブルアンテナ10での、垂直偏波及び水平偏波におけるピークゲインを示したグラフである。図12はFM/VHF帯でのピークゲインの値を示し、図13はUHF帯でのピークゲインの値を示す。図12(a)及び図13(a)は、横軸に周波数(MHz)、縦軸にピークゲイン(dBd)をとったグラフであり、垂直偏波を破線で示し、水平偏波を実線で示してある。図12(b)及び図13(b)は、図12(a)又は図13(a)に示したグラフ中の各測定点における値を示す表である。なお、図12(b)には、図12(a)の横軸に示した周波数のうち、76MHz〜107MHzまでの間(図12(a)中に縦の破線で示した範囲)の周波数における測定値のみを示してある。
図12(a)及び図12(b)に示したFM/VHF帯のうち、特に76MHz〜107MHzの間においては、垂直偏波、水平偏波ともにピークゲインは−15dB以下となっている。また、図13(a)及び図13(b)に示したUHF帯においても、垂直偏波、水平偏波ともにピークゲインはおおよそ−15dB以下となっている。すなわち、これらの周波数近傍の共振により、本例のケーブルアンテナ10が、FM/VHF帯とUHF帯の両方の帯域において、垂直偏波と水平偏波の両方を受信できていることが分かる。
テレビジョン放送受信用に建物の屋根等にアンテナが設けられる場合には、そのアンテナは、例えば東京タワー等の電波塔が見える位置に配置される。この場合は、電波塔とアンテナとの間に障害物が存在しないため、電波塔から送信された電波の偏向方向が途中で変わってしまうようなことは発生しない。これに対して、室内や車内、あるいは携帯型端末において使用されるアンテナに届く電波は、電波塔との間に存在する建物等の障害物に反射したものである場合が多い。このため、このような環境で使用されるアンテナには、垂直偏波と水平偏波の両方を受信できることが求められる。つまり、本例のケーブルアンテナ10は、この要件を満たしていることになる。
図14及び図15は、UHF帯の電波である500MHz受信用に設計された従来のダイポールアンテナでの、各周波数帯におけるピークゲインの測定結果を示した図である。図14はFM/VHF帯でのピークゲインの値を示し、図15はUHF帯でのピークゲインの値を示す。図14(a)及び図15(a)は、横軸に周波数(MHz)、縦軸にピークゲイン(dBd)をとったグラフであり、垂直偏波を破線で示し、水平偏波を実線で示してある。図14(b)及び図15(b)は、図14(a)又は図15(a)に示したグラフ中の各測定点における値を示す表である。なお、図14(b)には、図14(a)の横軸に示した周波数のうち、76MHz〜107MHzまでの間(図14(a)中に縦の破線で示した範囲)の周波数における測定値のみを示してある。
このように、500MHz受信用に設計されたダイポールアンテナでは、図14(a)及び図14(b)に示すように、VHF帯では垂直偏波、水平偏波ともにピークゲインの値が−20dB以上であり、アンテナゲインが取れていないことが分かる。このようなダイポールアンテナにおいても、アンテナ長を長くすればVHF帯も受信することが可能になるが、この場合はアンテナ自体の大型化を避けることができない。
また、UHF帯においては、図15(a)及び図15(b)に示すように、実線で示した水平偏波は比較的よく受信できているが、破線で示した垂直偏波では各周波数帯でのピークゲインは−15dB以下であり、受信できていないことが分かる。
次に、図16及び図17を参照して、図10に示すアンテナ構成にしたケーブルアンテナ10における指向性特性について説明する。図16はFM/VHF帯での指向性特性を示し、図17はUHF帯での指向性特性を示す。図16及び図17において、垂直偏波の指向性特性を破線で示し、水平偏波の指向性特性を実線で示している。
まず、図16を参照して、FM/VHF帯でのケーブルアンテナ10の指向性特性について説明する。図16(a)は周波数が76MHzの場合の放射パターンを示し、(b)は周波数が78.5MHzの場合の放射パターンを示し、(c)は周波数が81MHzの場合の放射パターンを示し、(d)は周波数が83.5MHzの場合の放射パターンを示す。また、図16(e)は周波数が86MHzの場合の放射パターンを示し、(f)は周波数が95MHzの場合の放射パターンを示し、(g)は周波数が101MHzの場合の放射パターンを示し、(h)は周波数が107MHzの場合の放射パターンを示す。また、図16(i)に、図16(a)〜(h)に示した垂直偏波でのピークゲイン(dBd)及び平均ゲイン(dBd)の値を示している。図16(j)には、図16(a)〜(h)に示した水平偏波でのピークゲイン(dBd)及び平均ゲイン(dBd)の値を示している。
FM/VHF帯の周波数は、折り返し分を含んだ第1アンテナ長が共振する周波数である。そしてその指向性特性は、図16(a)〜(h)に示すように、垂直面においては円となり、水平方向においては綺麗な8の字を描いていることが分かる。
次に、図17を参照して、UHF帯でのケーブルアンテナ10の指向性特性について説明する。図17(a)は周波数が470MHzの場合の放射パターンを示し、(b)は周波数が520MHzの場合の放射パターンを示し、(c)は周波数が570MHzの場合の放射パターンを示し、(d)は周波数が620MHzの場合の放射パターンを示す。また、図17(e)は周波数が670MHzの場合の放射パターンを示し、(f)は周波数が720MHzの場合の放射パターンを示し、(g)は周波数が770MHzの場合の放射パターンを示し、(h)は周波数が906MHzの場合の放射パターンを示す。また、図17(i)に、図17(a)〜(h)に示した垂直偏波でのピークゲイン(dBd)及び平均ゲイン(dBd)の値を示している。図17(j)には、図17(a)〜(h)に示した水平偏波でのピークゲイン(dBd)及び平均ゲイン(dBd)の値を示している。
UHF帯の周波数は、折り返し分を含まない第2アンテナ長が共振する周波数である(実際には第1アンテナ長に対する共振周波数の高調波として受信する部分が含まれる可能性もあるが、以下の説明では無視する)。そして図17(a)〜(h)に示すように、ゲインの得られない角度が垂直偏波と水平偏波とで異なっていることが分かる。つまり、垂直偏波のゲインが少ない角度においては水平偏波のゲインが高く、逆に、水平偏波のゲインが少ない角度においては垂直偏波のゲインが高くなっている。これにより、垂直偏波を拾えない角度においても水平偏波を拾うことができ、水平偏波を拾えない角度においても垂直偏波を拾うことができるようになる。従って、建物等に反射して電波の偏波方向が変化するような、室内等でケーブルアンテナ10を使用する場合であっても、比較的良好な受信特性を得ることができる。
なお、図16及び図17に例を示した指向性特性は、第1の実施の形態におけるケーブルアンテナ10においても得られるものである。
[第2の実施の形態による効果]
上述した実施の形態によれば、高周波遮断部材を用いずにケーブルアンテナ10を構成した場合にも、周波数の高さに応じて、第1線路長分のケーブル長で、第1アンテナ長又は第2アンテナ長を構成して、異なる周波数に共振するようになる。すなわち、第1の実施の形態において得られる効果と同等の効果を得ることができる。
<4.第1の実施の形態又は第2の実施の形態の各種変形例>
(1)変形例1(その他の周波数帯を受信するアンテナへの適用例)
なお、上述した実施の形態では、テレビジョン放送の周波数であるVHF帯、UHF帯の受信用として受信機器の外にアンテナを引き出した場合を想定しているが、これに限定されるものではない。例えば、同様な同軸線の構成により、1.575GHz帯を受信するGPSのアンテナ等を構成してもよい。この場合は、アンテナとして機能する部分(アンテナエレメント部)を2.38cm、GNDとして機能する部分(同軸線部)を4.75cm以上とすればよい。また、無線LANのアンテナに適用することも可能であり、例えば2.4GHz帯を受信するアンテナを構成する場合は、アンテナエレメント部を1.6cm、同軸線部を3.1cm以上とすればよい。
そして、このように構成したアンテナをノート型PC等の携帯受信機器本体(セット)へ組み込むようにしてもよい。図18に、ケーブルアンテナ10をセットに組み込んだ場合の構成例を示す。図18(a)はテレビジョン受像器に組み込んだ場合の例を示し、図18(b)は携帯端末に組み込んだ場合の例を示している。図18(a)および(b)ではケーブルアンテナ10を実線で示している。このように、ケーブルアンテナ10を画面の周囲を囲むように取り付けることで、ダイポールアンテナが形成される。すなわち、セットのグランドに依存しない平衡型のアンテナが形成される。したがって、調整が容易であり、機器からのノイズにも非常に耐性のあるアンテナを構成することができる。ケーブルアンテナ10を組み込む対象の機器としては、テレビジョン受像器、パーソナルコンピュータのモニタ、ポータブルメディアプレーヤ、タブレット型の携帯端末等が考えられる。
(2)変形例2(携帯端末に搭載のアンテナへの適用例)
図19(a)及び(b)に、上述した各実施の形態におけるアンテナを、携帯電話端末等の携帯端末に搭載する場合の構成例を示す。図19(a)はアンテナエレメントとして機能する部分を斜視図で示してあり、図19(b)は断面図で示してある。図19(a)に示すように、アンテナ20のアンテナエレメントとして機能する部分は筒状の金属体21で構成してあり、その中心に芯線22を通してある。芯線22はセット24と接続させてあり、その先端部分は、折り返して金属体21と接続させてある。芯線22と筒状の金属体21との間は、図19(b)に示すように、樹脂等の絶縁材料23で充填している。図19(a)に示すように、金属体21をセット24に接触させず、少し間隔を空けることで、セット24と金属体21との間の芯線22が露出した部分が給電点Fpとなる。このように構成することにより、給電点Fpから先端部分までの第1線路長L1と、先端の折り返し部分から金属体21の給電点Fp側の端部までの第2線路長L2とがアンテナ長となって電波を受信する。本例では、セット24を、全面にグランドパターンを形成した基板で構成し、そのサイズは縦9.5cm、横4.5cmとした。また、筒状の金属体21の長さは6cmとした。
図20(a)は、図19に示したアンテナ20の、垂直偏波及び水平偏波におけるピークゲインを示したグラフである。横軸は周波数(MHz)を示し、縦軸はピークゲイン(dBd)を示す。測定対象の周波数帯は、UHF帯とした。垂直偏波は破線で示し、水平偏波は実線で示してある。図20(b)及び図20(c)に、図20(a)に示したグラフ中の各測定点における値を示した。図20(b)は垂直偏波でのピークゲインの値を示し、図20(c)は水平偏波でのピークゲインの値を示す。
図20(a)及び図20(b)に示すように、垂直偏波でのピークゲインは570MHzで−14.95dBdとなり、720MHzでは−10.40dBdとなっている。水平偏波でのピークゲインも、図20(a)及び図20(c)に示すように、570MHzで−2.55dBdとなり、720MHzでは−4.75dBdとなっている。すなわち、これらの周波数近傍の共振により、図19に示すアンテナ20が、UHF帯において、垂直偏波と水平偏波の両方を受信できていることが分かる。
本来、UHF帯を受信するアンテナを構成する場合には、そのアンテナ長は12cm程度の長さとする必要がある。このため、例えばワンセグ対応の携帯電話端末では、伸縮可能なロッドアンテナが採用されることが多かった。しかし、本例のアンテナによれば、必要とされるアンテナ長の半分の長さでアンテナを構成しても、受信すべき周波数(本例ではUHF帯)を受信できるようになる。すなわち、アンテナの先端部分を伸ばして使用するロッドアンテナを採用しなくても良くなるため、ユーザの使い勝手も向上させることができる。
(3)変形例3(ダイポールアンテナへの適用例)
図21に、上述した各実施の形態におけるアンテナを、ダイポールアンテナに適用する場合の構成例を示す。ダイポールアンテナ30の、コネクタ1に接続された同軸線2の他端の先端部分には、高周波減衰部材としてのフェライトコア5を挿入してある。フェライトコア5の先の部分では、同軸線2の芯線2dとシールド線2bとをそれぞれ銅線6で引き出してあり、それぞれの銅線6を、反対方向(図では上下方向)に開いた2本の同軸線2の芯線2dに接続させている。この2本の同軸線2の先端部分では、芯線2dとシールド線2bとを接続させてあり、同軸線2の根本の部分では、保護被覆及びシールド線2bを取り除いてコア材2cと芯線2dとを露出させている。このように構成することで、根本の部分が給電点Fpとなり、2本の同軸線2がアンテナエレメントとして機能する。図21では、アンテナエレメントとして機能する部分を折り返しの実線で示している。アンテナエレメント部分の長さは、合わせて1mとなるようにした。
図22(a)は、図21に示したダイポールアンテナ30の、垂直偏波及び水平偏波におけるピークゲインを示したグラフである。横軸は周波数(MHz)を示し、縦軸はピークゲイン(dBd)を示す。測定対象の周波数帯は、FM/VHF帯とした。垂直偏波は破線で示し、水平偏波は実線で示してある。図22(b)及び図22(c)に、図22(a)に示したグラフ中の各測定点における値を示した。図22(b)は垂直偏波でのピークゲインの値を示し、図22(c)は水平偏波でのピークゲインの値を示す。なお、図22(b)及び図22(c)には、図22(a)の横軸に示した周波数のうち、76MHz〜107MHzまでの間の周波数における測定値のみを示している。
図22(a)及び(c)に示すように、特に水平偏波において、多くの帯域でピークゲインが−15dB以下となっている。さらに、155MHz付近と95MHz付近の2箇所で共振が得られていることが分かる。本来であれば、FM/VHF帯を受信するアンテナを構成する場合には、そのアンテナ長は2m程度の長さとする必要がある。しかし、本例によるダイポールアンテナによれば、その半分の1mでFM/VHF帯を受信することができるようになる。さらに、受信したい電波の波長から割り出したアンテナ長の半分の長さで、本来受信したい周波数だけでなく、それより低い周波数も受信することができる。
(4)変形例4(折り返し構造を複数設ける例)
上述した各実施の形態においては、同軸線2の先端部分で芯線2dをシールド線2bに接続する「折り返し構造」を一箇所のみに設けた例を挙げたが、この「折り返し構造」を複数箇所に設ける構成としてもよい。このように構成することにより、一つのアンテナでさらに多くの周波数帯の電波を受信できるようになる。まずは、図23〜図25を参照して、折り返し構造を複数持つアンテナによる多共振の原理を説明し、次に、図26〜図31を参照して検証データの説明を行う。
図23は、折り返し構造を2箇所設けたアンテナ40の構成例を図示したものである。図23に示したケーブルアンテナ40も同軸線2αのみで形成されるが、折り返し構造を2箇所設けるため、シールド線を2つ有するように構成している。すなわち、コア材2αc−1を覆うシールド線2αb−1の外側に、さらにコア材2αc−2を設けてあり、その外側にシールド線2αb−2を巻いてある。シールド線2αb−2の外側は保護被覆2αaで覆ってある。図2の右側に示す同軸線2αの先端部分(先端部3)および、先端部分から他端に向かって所定の長さの位置(中継部4)では、芯線2αd−1を覆うコア材2αc−1を露出させてある。そして、露出されたそれぞれの箇所は、エラストマー等の樹脂によりモールド成形してある。
モールド成形された先端部3の内部では、芯線2αdと内側のシールド材2αb−1とを接続させてあり、中継部4では、内側のシールド材2αb−1と外側のシールド材2αb−2とを銅線6で接続させてある。すなわち、同軸線2αの先端部分と、先端から他端に向かって所定の長さの位置の2箇所に、折り返し構造を設けている。
このように構成することで、給電点Fpとなる中継部4から先端部3の折り返し点までの線路長である第1線路長L1が第2アンテナ長となり、共振周波数f1(波長:λ10)の電波を受信する。また、先端の折り返し点から給電点Fpまでの線路長である第2線路長L2と第1線路長L1とを足した長さが第1アンテナ長となり、共振周波数f2(波長:λ10×2)の電波を受信する。さらに、給電点Fpから、先端部分におけるシールド線2αb−2の端までの線路長である第3線路長L3と、第1線路長L1および第2線路長L2を足した長さが第3アンテナ長となり、共振周波数f3(波長:λ10×3)の電波を受信する。つまり、図23に示すケーブルアンテナ40で受信可能な各周波数の大きさは、共振周波数f1>共振周波数f2>共振周波数f3の関係となる。
なお、図23では折り返し構造を2箇所設けた場合を例に挙げて説明したが、3箇所や4箇所等、より多くの箇所に折り返し構造を設けるようにしてもよい。多くの折り返し構造を設けることで、さらに多くの周波数帯の電波を受信できるようになる。
折り返し構造が複数設けられたアンテナが、複数の異なる周波数帯の電波に共振する原理について、図24を参照して説明する。図24は、折り返し構造を複数有するアンテナの、アンテナエレメントとして機能する部分を、実線で示したものである。図24では、説明の便宜上、折り返し構造を3つ設けた例を挙げている。
折り返し構造を設けた各箇所には、前述したように、始点から折り返し点までの間にわたって等価的にインピーダンス接続が存在する。図24では、このインピーダンス接続部分に、すなわち線路長L1とL2の間の部分、線路長L2とL3の間の部分、および線路長L3とL4の間の部分に静電容量部が形成される。これらの静電容量部の静電容量を、静電容量C1、静電容量C2、静電容量C3と示している。芯線2dから遠くなるほど(径方向へ外側に行くほど)同軸線2αの径が大きくなって、芯線とシールド線との間又はシールド線とシールド線との間にあるコア材(絶縁体)の体積が増えるため、インピーダンス接続部における静電容量も、同軸線2αの外側に行くほど大きくなる。すなわち、静電容量C1〜静電容量C3の大きさは、静電容量C1<静電容量C2<静電容量C3の関係となる。
したがって、静電容量C1を通す程に高い共振周波数f1の場合には、静電容量C2と静電容量C3で示される静電容量部は短絡して見えるため、図23の例で説明すると第1線路長L1のみのアンテナ長(第2アンテナ長)を利用して受信する。また、共振周波数f1よりわずかに低く、かつ静電容量C3が短絡して見える程度の共振周波数f2の場合には、第1線路長L1+第2線路長L2のアンテナ長(第1アンテナ長)を利用して受信する。共振周波数f2より低い共振周波数f3の場合には、第1線路長L1+第2線路長L2+第3線路長L3のアンテナ長(第3アンテナ長)を利用して受信する。すなわち、周波数の高さに応じて、一本の同軸線2αを構成する各線路長の異なる部分がアンテナ長となるため、高さの異なる複数の周波数の電波を受信できるようになる。
図25は、ケーブルアンテナ40の周波数特性を模式的に示したものである。図25の横軸は周波数(MHz)を示し、縦軸はVSWRを示す。原理上は、ケーブルアンテナ40では、図25に示すように、波長λ10の共振周波数f1と、波長がλ10の2倍である共振周波数f2と、波長がλ10の3倍である共振周波数f3の3箇所で共振が得られることになる。
この原理が正しいことを証明するため、発明者等は、評価用アンテナを作成してVSWRの測定を行った。評価用アンテナとしては、ダイポールアンテナを使用した。ダイポールアンテナは左右の導線の長さが一致しているため、より正確なデータが得られると考えられるためである。評価用ダイポールアンテナとしては、折り返し構造を設けていないもの、折り返し構造を一箇所だけ設けたもの、折り返し構造を2箇所設けたものの3種類を用意した。これらの評価用アンテナは、線間インピーダンスが50Ωの同軸線2を使用して作成した。
図26に示す評価用ダイポールアンテナは、折り返し構造を設けていないものである。つまり、従来のダイポールアンテナと同様の構成としたものである。図26において図21と対応する箇所には同一の符号を付してあり、重複する説明は省略する。同軸線2の芯線2dとシールド線2bとをそれぞれ銅線6で引き出してあり、それぞれの銅線6を、反対方向に開いている。アンテナエレメントとしての2本の銅線6と同軸線2との間には、バラン7を挿入している。アンテナエレメントとしての2本の銅線6の長さは、合わせて15cmとなるようにした。図27は、図26に示した評価用ダイポールアンテナのアンテナ特性を示すグラフである。横軸は周波数(MHz)を示し、縦軸はVSWRを示す。図27には、計算上得られる500MHzに近い480MHzのあたりで共振が得られていることが示されている。
図28(a)に示す評価用ダイポールアンテナは、折り返し構造を1箇所設けたものである。図28において、図21と図27に対応する箇所には同一の符号を付してあり、重複する説明は省略する。図21に示した構成と同様に、アンテナエレメント部分を同軸線2で構成してあり、両先端部分で芯線2dとシールド線2bとを接続してある。このように構成することで、給電点Fpから折り返し地点までの線路長である実線で示した第1線路長L1と、折り返し地点から給電点Fpまでの線路長である破線で示した第2線路長L2とがアンテナエレメントとして機能する。具体的には、図28(b)に示すように、第1線路長L1が共振周波数f1に共振し、第1線路長L1と第2線路長L2とを合わせた長さで共振周波数f2に共振する。
図29は、図28(a)に示した評価用ダイポールアンテナのアンテナ特性を示すグラフである。横軸は周波数(MHz)を示し、縦軸はVSWRを示す。図29には、15cmのアンテナ長で本来受信できる450MHz付近の周波数だけでなく、それより低い240MHz付近でも共振がとれていることが示されている。つまり、図28に示した第1線路長L1が450MHz付近の周波数(共振周波数f1)に共振し、第1線路長L1+第2線路長L2が240MHz付近の周波数(共振周波数f2)に共振していることが分かる。
図30(a)に示す評価用ダイポールアンテナは、折り返し構造を2箇所設けたものである。図30(a)において図23と対応する箇所には同一の符号を付してあり、重複する説明は省略する。図23に示したケーブルアンテナ40と同様に、シールド線を二重にしてあり、先端部分において芯線2αd−1を内側のシールド線2αb−1に接続してある。また、給電点Fpの部分では、内側のシールド線2αb−1と外側のシールド線2αb−2とを接続してある。すなわち、同軸線2αの先端部分と給電点Fpの部分の2箇所に折り返し構造を設けている。このように構成することで、実線で示した第1線路長L1と破線で示した第2線路長L2だけでなく、さらに折り返した部分の給電点Fpから先端までの線路長である、一点鎖線で示した第3線路長L3も、アンテナ長となって電波を受信する。具体的には、図30(b)に示すように、第1線路長L1が共振周波数f1に共振し、第1線路長L1と第2線路長L2とを合わせた長さで共振周波数f2に共振し、第1線路長L1と第2線路長L2と第3線路長L3とを合わせた長さで共振周波数f3に共振する。
図31は、図30(a)に示した評価用ダイポールアンテナのアンテナ特性を示すグラフである。横軸は周波数(MHz)を示し、縦軸はVSWRを示す。図31には、15cmのアンテナ長で本来受信できる450MHz付近の周波数だけでなく、それより低い240MHz付近と、さらに低い210MHz付近でも共振がとれていることが示されている。つまり、図30に示した評価用アンテナの第1線路長L1が450MHz付近の周波数(共振周波数f1)に共振し、第1線路長L1+第2線路長L2が240MHz付近の周波数(共振周波数f2)に共振していることが分かる。そしてさらに、第1線路長L1+第2線路長L2+第3線路長L3が210MHz付近の周波数(共振周波数f3)に共振していることが分かる。
なお、アンテナの被覆の誘電体の誘電率等を調整することで、原理上得られると想定される共振点とさらに近い点で共振を得られるようになる。
このように、折り返し構造を複数箇所設けた本願発明の変形例であるケーブルアンテナ40によれば、一本の同軸線2αのみで、折り返し構造の数に応じた複数の異なる周波数帯の電波を受信することができるようになる。
また、アンテナの先端部分及び/又は給電点Fpの部分に折り返し構造を設けることで、アンテナエレメントとして機能する部分の実質的な長さを短縮することができる。例えば、FM帯の電波を1/2波長アンテナで受信する場合には、そのアンテナ長を2m程度とする必要がある。ところが、折り返し構造を2つ設けたケーブルアンテナ40の、第1線路長L1+第2線路長L2+第3線路長L3の線路長でFM帯の電波を受信するようにすれば、アンテナ長を1/3の67cm程度に短縮することができる。また、例えば、VHF帯の電波を使って携帯電話端末に映像配信を行うマルチメディア放送用のアンテナに、本発明のケーブルアンテナ40を採用すれば、小型でありながらも広い周波数帯の電波を受信可能なアンテナを構成することができる。
1…コネクタ、2…同軸線、2a,2αa…保護被覆、2b…シールド線、2c…コア材、2d…芯線、3…先端部、4…中継部、5…フェライトコア、6…銅線、7…バラン、10…ケーブルアンテナ、20…アンテナ、21…金属体、22…芯線、23…絶縁材料、24…セット、30ダイポールアンテナ40…アンテナ、C1〜C3…静電容量、Fp…給電点、L1…第1線路長、L1…第1線路長、L2…第2線路長、L3…第3線路長、L11…線路長、f1〜f3…共振周波数

Claims (8)

  1. 始点から折り返し点までの第1線路長を有する第1導体と、
    前記折り返し点から前記始点の方向への第2線路長を有して、前記折り返し点において接続された第2導体と、
    を備え、
    第1周波数の第1受信信号は、前記第1線路長と前記第2線路長とを合わせた長さに相当する第1アンテナ長の導体が受信し、
    第2周波数の第2受信信号は、前記第1線路長と前記第2線路長のうちいずれか一方のみの長さに相当する第2アンテナ長の導体が受信し、
    前記第1導体と前記第2導体の一方は、同軸線の芯線であり、他方は、前記同軸線の外部導体である、
    アンテナ。
  2. 前記第1周波数と前記第2周波数とに対して相互にインピーダンス値が異なるインピーダンス接続が、前記第1導体と前記第2導体の一方の前記始点側端近傍と他方との間に、等価的に存在する、
    請求項1に記載のアンテナ。
  3. 前記インピーダンス接続は、高周波的な容量結合である、
    請求項2に記載のアンテナ。
  4. 前記始点においては、前記同軸線の保護被覆及び前記外部導体が取り除かれている
    請求項1から3のいずれかに記載のアンテナ。
  5. 前記第1線路長は、前記第2周波数の波長の略λ/4〜3λ/4λである
    請求項1からのいずれかに記載のアンテナ。
  6. 前記始点から、前記折り返し点がある方向とは反対の方向に、前記第1線路長と同等以上の長さの位置に、高周波電流を減衰させる高周波減衰部材が配置される
    請求項1からのいずれかに記載のアンテナ。
  7. 前記始点において前記第2導体と電気的に接続された、前記始点から前記折り返し点の方向への第3線路長を有する第3導体をさらに備え、
    第3周波数の第3受信信号は、前記第1線路長と前記第2線路長と前記第3線路長とを合わせた長さに相当する第3アンテナ長の導体が受信する、
    請求項1から6に記載のアンテナ。
  8. 前記第1周波数と前記第2周波数と前記第3周波数に対して相互にインピーダンス値が異なるインピーダンス接続が、前記第1導体と前記第2導体の一方の前記始点側端近傍と他方との間と、前記第2導体と前記第3導体の一方の前記始点側端近傍と他方との間に存在し、前記第1導体と前記第2導体の一方の前記始点側端近傍と他方との間に存在するインピーダンス接続部分の静電容量の大きさは、前記第2導体と前記第3導体の一方の前記始点側端近傍と他方との間に存在するインピーダンス接続部分の静電容量よりも小さい、
    請求項に記載のアンテナ。
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