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JP5016157B2 - 冷凍機用潤滑油組成物及びそれを用いた冷凍機用作動流体組成物 - Google Patents

冷凍機用潤滑油組成物及びそれを用いた冷凍機用作動流体組成物 Download PDF

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JP5016157B2
JP5016157B2 JP2000224842A JP2000224842A JP5016157B2 JP 5016157 B2 JP5016157 B2 JP 5016157B2 JP 2000224842 A JP2000224842 A JP 2000224842A JP 2000224842 A JP2000224842 A JP 2000224842A JP 5016157 B2 JP5016157 B2 JP 5016157B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷凍機用潤滑油組成物及びそれを用いた冷凍機用作動流体組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、塩素を有しない炭素数1の冷媒、特にジフルオロメタンに対して優れた相溶性を示す冷凍機用潤滑油組成物、及びこの冷凍機用潤滑油組成物と上記冷媒を含み、耐摩耗性,潤滑特性,電気特性及び安定性などに優れた冷凍機用作動流体組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に圧縮型冷凍機は少なくとも圧縮機、凝縮器、膨張機構(膨張弁など)、蒸発器、あるいは更に乾燥機から構成され、冷媒と潤滑油の混合液体がこの密閉された系内を循環する構造となっている。このような圧縮型冷凍機においては、装置の種類にもよるが、一般に、圧縮機内では高温、冷却器内では低温となるので、冷媒と潤滑油は低温から高温まで幅広い温度範囲内で相分離することなく、この系内を循環することが必要である。一般に、冷媒と潤滑油とは低温側と高温側に相分離する領域を有し、そして、低温側の分離領域の最高温度としては、5℃以下が望ましく、3℃以下が好ましい。より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−2℃以下、もっとも好ましくは−5℃以下である。もし、冷凍機の運転中に相分離が生じると、装置の寿命や効率に著しい悪影響を及ぼす。例えば、圧縮機部分で冷媒と潤滑油の相分離が生じると、可動部が潤滑不良となって、焼き付きなどを起こして装置の寿命を著しく短くし、一方蒸発器内で相分離が生じると、粘度の高い潤滑油が存在するため熱交換の効率低下をもたらす。
【0003】
従来、圧縮型冷凍機、特に空気調整器の冷媒としては、クロロジフルオロメタン(以下、R22と称する。)やクロロジフルオロメタンとクロロペンタフルオロエタンの重量比48.8:51.2の混合物(以下、R502と称する。)が多く用いられ、また潤滑油としては、前記の要求特性を満たす種々の鉱油や合成油が用いられてきた。しかしながら、R22やR502は、成層圏に存在するオゾン層を破壊するなど環境汚染をもたらすおそれがあることから、最近、世界的にその規制が厳しくなりつつある。そのため、新しい冷媒として1,1,1,2−テトラフルオロエタン、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン(以下、それぞれR134a、R32、R125、R143aと称することがある。)に代表されるハイドロフルオロカーボンが注目されるようになってきた。このハイドロフルオロカーボン、特にR134a、R32、R125、R143aはオゾン層を破壊するおそれがなく、圧縮型冷凍機用冷媒として好ましいものである。
【0004】
また、省エネルギーの観点から、さらなる対応が求められるようになり、上記新しい冷媒の中で、特にジフルオロメタン(R32)が注目されている。しかしながら、このR32冷媒は、従来の冷媒と比較して、使用圧力及び温度が共に高く、新たに潤滑上の問題が生じる可能性が高い。これまで、前記の新しい冷媒用として検討されてきた冷凍機用潤滑油においては、該R32に対して充分な相溶性を示すものはないのが実状であり、R134a、R407c、(R32とR125とR134aとの重量比23:24:52の混合物)、R410A(R32とR125との重量比50:50の混合物)と同等レベルの相溶性を示す冷凍機用潤滑油の開発が待たれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、塩素を有しない炭素数1の冷媒、特にジフルオロメタン(R32)に対して優れた相溶性を示す冷凍機用潤滑油組成物、及びこの冷凍機用潤滑油組成物と上記冷媒を含み、耐摩耗性、潤滑特性及び安定性などに優れた冷凍機用作動流体組成物を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これまで、ポリビニルエーテル誘導体などのポリエーテル化合物、あるいはポリオールエステル誘導体などの含酸素化合物のR32冷媒雰囲気下での相溶性について検討してきたが、これらの化合物は必ずしもR32に対して充分な相溶性を有しているとは言えなかった。
本発明者らは、前記目的を達成するために、さらに鋭意研究を進めた結果、所定の粘度を有するポリビニルエーテル系誘導体に、所定の粘度を有するポリカーボネート系含酸素化合物、特に1分子中にカーボネート結合2個以上を有するポリカーボネート化合物を、特定の割合で混合したものが、低温領域において、塩素を有しない炭素数1の冷媒、特にR32に対して優れた相溶性を有すること、そして、このものと上記冷媒を含むものが、冷凍機用作動流体組成物として前記目的に適合し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、基油として、(a)40℃における動粘度が3〜500mm2 /sのポリビニルエーテル系誘導体と、基油全量に基づき、(b)40℃における動粘度が3〜500mm2 /sのポリカーボネート系含酸素化合物0.1重量%以上60重量%未満を含む冷凍機用潤滑油組成物であって、塩素を有しない炭素数1の冷媒に対し、合計量に基づき3〜50重量%の範囲で含有させた場合、そのいずれかの含有率において、低温側の2層分離温度が5℃以下であることを特徴とする冷凍機用潤滑油組成物を提供するものである。
特に好ましくは、上記(b)成分のポリカーボネート系含酸素化合物が、1分子中にカーボネート結合を2個以上有するポリカーボネートであって、(イ)一般式(I)
【0008】
【化5】
Figure 0005016157
【0009】
(式中、Zは炭素数1〜12のn価のアルコールから水酸基を除いた残基、R1 は炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、R2 は炭素数1〜12の一価の炭化水素基又はR4 (O−R3 p −(ただし、R4 は水素原子又は炭素数1〜12の一価の炭化水素基、R3 は炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、pは1〜20の整数を示す。)で示されるエーテル結合を含む基、kは1〜30の整数、mは1〜50の整数、nは1〜6の整数を示す。)
で表される化合物、及び(ロ)一般式(II)
【0010】
【化6】
Figure 0005016157
【0011】
(式中、R5 は炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、qは1〜20の整数を示し、Z、R1 、R2 、k、m及びnは前記と同じである。)
で表される化合物の中から選ばれる少なくとも一種である冷凍機用潤滑油組成物を提供するものである。
また、本発明は、(A)塩素を有しない炭素数1の冷媒、及び(B)上記冷凍機用潤滑油組成物を必須成分として含むことを特徴とする冷凍機用作動流体組成物をも提供するものである。
本発明の冷凍機用潤滑油組成物の使用条件としては、冷媒として塩素を有しない炭素数1の冷媒、特に塩素を含まないフッ化炭化水素系冷媒を使用し、内圧が高く、使用温度も高くなる傾向がある。従って、圧縮機構の金属摺動部をなす部材間の硬度差を必要に応じてHRC相当で10以上に設定し、硬度の小さな部材の側は通常の硬度によって従来通りの耐摩耗性を確保しながら、他方の部材の耐摩耗性を従来よりも十分に向上させることにより、金属摺動部の必要な箇所の耐摩耗性が向上して、フッ化炭化水素系の冷媒が塩素を含まずこれの潤滑効果が望めないことへの対抗性が得られる。その上、硬度の大きい側の摺動部材が硬度の小さい側の摺動部材の摩耗を助長しやすいことについては、正リン酸エステル,亜リン酸エステル,および酸性リン酸エステルのうちの少なくとも一種を添加することで、これらの極圧剤としての働きによってフッ化炭化素系冷媒が塩素を含まないことによる潤滑不足を補うものと考えられる。
【0012】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の冷凍機用潤滑油組成物について説明する。
本発明の冷凍機用潤滑油組成物は、基油として、(a)40℃における動粘度が3〜500mm2 /sのポリビニルエーテル系誘導体と、基油全量に基づき、(b)40℃における動粘度が3〜500mm2 /sのポリカーボネート系含酸素化合物0.1重量%以上60重量%未満を含むものである。
そして、塩素を有しない炭素数1の冷媒、例えばR32に対し、合計量に基づき3〜50重量%の範囲で含有させた場合、そのいずれかの含有率において、5℃以下の温度で相溶している(液相が一様である)。ここで、5℃以下の温度で潤滑油と冷媒とが相溶できる潤滑油の含有率は、上記3〜50重量%のいずれかであればよいが、好ましくは10重量%又は15重量%、特に好ましくは3〜50重量%の範囲全体にわたっていることが望ましい。この相溶温度、つまり低温側二層分離温度が5℃を超えると冷凍機の運転中に相分離が生じるおそれがある。冷凍機の運転中に相分離が生じると、装置の寿命や効率に著しい悪影響を及ぼす。例えば、圧縮機部分で冷凍と潤滑油の相分離が生じると可動部が潤滑不良となって、焼きつきなどを起こして装置の寿命を著しく短くし、一方蒸発器内で相分離が生じると、粘度の高い潤滑油が存在するため熱交換の効率低下をもたらす。
【0013】
このような理由から、上記低温側分離領域の最高温度としては、5℃以下が必要であり、3℃以下が好ましい。より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−2℃以下、もっとも好ましくは−5℃以下である。
本発明の冷凍機用潤滑油組成物における基油の(a)成分として用いられるポリビニルエーテル系誘導体としては、例えば一般式(III)
【0014】
【化7】
Figure 0005016157
【0015】
(式中、R7 、R8 、R9 はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、R10は炭素数1〜10の二価の炭化水素基、R11は炭素数1〜20の炭化水素基、aはその平均値が0〜10の数を示し、R7 〜R11は構成単位毎に同一であってもそれぞれ異なっていてもよく、またR10Oが複数ある場合には、複数のR10Oは同一でも異なっていてもよい。)
で表される構成単位を有するポリビニルエーテル系化合物(I)が挙げられる。
また、上記一般式(III)で表される構成単位と、一般式(IV)
【0016】
【化8】
Figure 0005016157
【0017】
(式中、R12〜R15は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、またR12〜R15は構成単位毎に同一であってもそれぞれ異なっていてもよい。)
で表される構成単位とを有するブロック又はランダム共重合体からなるポリビニルエーテル系化合物(2)も使用することができる。
【0018】
上記一般式(III)におけるR7 、R8 及びR9 はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜8、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。ここで炭化水素基とは、具体的にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基,各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、各種メチルフェニル基,各種エチルフェニル基,各種ジメチルフェニル基のアリール基、ベンジル基、各種フェニルエチル基,各種メチルベンジル基のアリールアルキル基を示す。なお、これらのR7 、R8 、R9 としては、特に水素原子が好ましい。
【0019】
一方、一般式(III)中のR10は、炭素数1〜10、好ましくは2〜10の二価の炭化水素基を示すが、ここで炭素数1〜10の二価の炭化水素基とは、具体的にはメチレン基、エチレン基、フェニルエチレン基、1,2−プロピレン基、2−フェニル−1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種ヘプチレン基、各種オクチレン基、各種ノニレン基、各種デシレン基の二価の脂肪族基、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素に2個の結合部位を有する脂環式基、各種フェニレン基、各種メチルフェニレン基、各種エチルフェニレン基、各種ジメチルフェニレン基、各種ナフチレン基などの二価の芳香族炭化水素基、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどのアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分と芳香族部分にそれぞれ一価の結合部位を有するアルキル芳香族基、キシレン、ジエチルベンゼンなどのポリアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分に2個の結合部位を有するアルキル芳香族基などがある。これらの中で炭素数2から4の脂肪族基が特に好ましい。
【0020】
なお、一般式(III)におけるaはR10Oの繰り返し数を示し、その平均値が0〜10、好ましくは0〜5の範囲の数である。R10Oが複数ある場合には、複数のR10Oは同一でも異なっていてもよい。
さらに、一般式(III)におけるR11は炭素数1〜20、好ましくは1〜10の炭化水素基を示すが、この炭化水素基とは、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基,各種プロピルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基、各種プロピルフェニル基、各種トリメチルフェニル基、各種ブチルフェニル基、各種ナフチル基などのアリール基、ベンジル基、各種フェニルエチル基,各種メチルベンジル基,各種フェニルプロピル基,各種フェニルブチル基のアリールアルキル基などを示す。
【0021】
なお、該R7 〜R11は構成単位毎に同一であっても異なっていてもよい。
上記一般式(IV) において、R12〜R15は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、上記一般式(III)におけるR11の説明において例示したものと同じものを挙げることができる。なお、R12〜R15は構成単位毎に同一であってもそれぞれ異なっていてもよい。
【0022】
該一般式(III)で表される構成単位と一般式(IV) で表される構成単位とを有するブロック又はランダム共重合体からなるポリビニルエーテル系化合物(2)は、その炭素/酸素モル比が4.2〜7.0の範囲にあるものが好ましく用いられる。このモル比が4.2未満では、吸湿性が高く、7.0を超えると、冷媒との相溶性が低下する場合がある。
さらに本発明においては、上記ポリビニルエーテル系化合物(I)と上記ポリビニルエーテル系化合物(2)との混合物も使用することができる。
本発明に用いられるポリビニルエーテル系化合物(1)及び(2)は、それぞれ対応するビニルエーテル系モノマーの重合、及び対応するオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーと対応するビニルエーテル系モノマーとの共重合により製造することができる。
本発明に用いられるポリビニルエーテル系誘導体としては、次の末端構造を有するもの、すなわちその一つの末端が、一般式(V)又は(VI)
【0023】
【化9】
Figure 0005016157
【0024】
(式中、R16、R17及びR18は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R16,R17及びR18はたがいに同一でも異なっていてもよく、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、R21、R22、R23及びR24はたがいに同一でも異なっていてもよい。R19は炭素数1〜10の二価の炭化水素基、R20は炭素数1〜20の炭化水素基、bはその平均値が0〜10の数を示し、R19Oが複数ある場合には、複数のR19Oは同一でも異なっていてもよい。)
で表され、かつ残りの末端が一般式(VII)又は(VIII)
【0025】
【化10】
Figure 0005016157
【0026】
(式中、R25、R26及びR27は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R25、R26及びR27はたがいに同一でも異なっていてもよく、R30、R31、R32及びR33は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、R30、R31、R32及びR33はたがいに同一でも異なっていてもよい。R28は炭素数1〜10の二価の炭化水素基、R29は炭素数1〜20の炭化水素基、cはその平均値が0〜10の数を示し、R28Oが複数ある場合には、複数のR28Oは同一でも異なっていてもよい。)
で表される構造を有するもの、及びその一つの末端が上記一般式(V)又は (VI) で表され、かつ残りの末端が一般式(IX)
【0027】
【化11】
Figure 0005016157
【0028】
(式中、R34、R35及びR36は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。)
で表される構造を有するものが好ましい。
このようなポリビニルエーテル系化合物の中で、特に次に挙げるものが本発明においては好適である。
(1)その一つの末端が一般式(V)又は (VI) で表され、かつ残りの末端が一般式(VII)又は(VIII)で表される構造を有し、一般式(III)におけるR7 、R8 及びR9 が共に水素原子、aが0〜4の数、R10が炭素数2〜4の二価の炭化水素基及びR11が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(2)一般式(III)で表される構成単位のみを有するものであって、その一つの末端が一般式(V)で表され、かつ残りの末端が一般式(VII)で表される構造を有し、一般式(III)におけるR7 、R8 、及びR9 が共に水素原子、aが0〜4の数、R10が炭素数2〜4の二価の炭化水素基及びR11が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
【0029】
(3)その一つの末端が一般式(V)又は (VI) で表され、かつ残りの末端が一般式(IX)で表される構造を有し、一般式(III)におけるR7 、R8 及びR9 が共に水素原子、aが0〜4の数、R10が炭素数2〜4の二価の炭化水素基及びR11が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(4)一般式(III)で表される構成単位のみを有するものであって、その一つの末端が一般式(V)で表され、かつ残りの末端が一般式(VIII)で表される構造を有し、一般式(III)におけるR7 ,R8 及びR9 が共に水素原子、aが0〜4の数、R10が炭素数2〜4の二価の炭化水素基及びR11が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
また本発明においては、前記一般式(III)で表される構成単位を有し、その一つの末端が一般式(V)で表され、かつ残りの末端が一般式(X)
【0030】
【化12】
Figure 0005016157
【0031】
(式中、R37、R38及びR39は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一であっても異なっていてもよく、R40及びR42はそれぞれ炭素数2〜10の二価の炭化水素基を示し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよく、R41及びR43はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基を示し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよく、d及びeはそれぞれその平均値が0〜10の数を示し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよく、また複数のR40Oがある場合には複数のR40Oは同一であっても異なっていてもよいし、複数のR42Oがある場合には複数のR42Oは同一であっても異なっていてもよい。)
で表される構造を有するポリビニルエーテル系化合物も使用することができる。
さらに、本発明においては、一般式(XI)又は(XII)
【0032】
【化13】
Figure 0005016157
【0033】
(式中、R44は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。)
で表される構成単位からなり、かつ重量平均分子量が300〜5000であって、片端末が一般式(XIII)又は(XIV)
【0034】
【化14】
Figure 0005016157
【0035】
(式中、R45は炭素数1〜3のアルキル基、R46は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。)
で表される構造を有するアルキルビニルエーテルの単独重合物又は共重合物からなるポリビニルエーテル系化合物も使用することができる。
なお、上記のポリビニルエーテル系誘導体については、特開平6−128578号公報又は特願平5−125649号,特願平5−125650号,特願平5−303736号各明細書のそれぞれに詳細に記載されているものをいずれも使用することができる。
この(a)成分のポリビニルエーテル系誘導体は、40℃における動粘度が3〜500mm2 /sであり、好ましくは5〜200mm2 /s、より好ましくは5〜150mm2 /sである。
一方、基油の(b)成分として用いられるポリカーボネート系含酸素化合物としては、1分子中にカーボネート結合を2個以上有するポリカーボネート、すなわち一般式(I)
【0036】
【化15】
Figure 0005016157
【0037】
(式中、Zは炭素数1〜12のn価のアルコールから水酸基を除いた残基、R1 は炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、R2 は炭素数1〜12の一価の炭化水素基又はR4 (O−R3 p −(ただし、R4 は水素原子又は炭素数1〜12の一価の炭化水素基、R3 は炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、pは1〜20の整数を示す。)で示すエーテル結合を含む基、kは1〜30の整数、mは1〜50の整数、nは1〜6の整数を示す。)
で表される化合物、及び(ロ)一般式(II)
【0038】
【化16】
Figure 0005016157
【0039】
(式中、R5 は炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、qは1〜20の整数を示し、Z、R1 、R2 、k,m及びnは前記と同じである。)
で表される化合物の中から選ばれる少なくとも一種を好ましく挙げることができる。
前記一般式(I)及び一般式(II)において、Zは炭素数1〜12の一価〜六価のアルコールから、水酸基を除いた残基であるが、特に炭素数1〜12の一価のアルコールから、水酸基を除いた残基が好ましい。
【0040】
Zを残基とする炭素数1〜12の一価〜六価のアルコールとしては、一価のアルコールとして、例えばメチルアルコール、エチルアルコール,n−又はイソプロピルアルコール、各種ブチルアルコール、各種ペンチルアルコール、各種ヘキシルアルコール、各種オクチルアルコール、各種デシルアルコール、各種ドデシルアルコールなどの脂肪族一価アルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコールなどの脂環式一価アルコール、フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ナフトールなどの芳香族アルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなどの芳香脂肪族アルコールなどを、二価のアルコールとして、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチレングリコール、テトラメチレングリコールなどの脂肪族アルコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式アルコール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ジヒドロキシジフェニルなどの芳香族アルコール、三価のアルコールとして、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールブタン、1,3,5−ペンタントリオールなどの脂肪族アルコール、シクロヘキサントリオール、シクロヘキサントリメタノールなどの脂環式アルコール、ピロガロール、メチルピロガロールなどの芳香族アルコールなどを、四価〜六価のアルコールとして、例えばペンタエリスリトール、ジグリセリン、トリグリセリン、ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどの脂肪族アルコールなどを挙げることができる。
このようなポリカーボネート化合物としては、前記一般式(I)で表される化合物として、一般式(I−a)
【0041】
【化17】
Figure 0005016157
【0042】
(式中、R6 は炭素数1〜12の一価のアルコールから水酸基を除いた残基、R1 、R2 、k及びmは前記と同じである。)
で表される化合物を、一般式(II)で表される化合物として、一般式(II−a)
【0043】
【化18】
Figure 0005016157
【0044】
(式中、R1 、R2 、R5 、R6 、k,m及びqは前記と同じである。)
で表される化合物を挙げることができる。
前記一般式(I−a)及び一般式(II−a)において、R6 で示される炭素数1〜12の一価のアルコールから水酸基を除いた残基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基などの脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、デカヒドロナフチル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、各種トリル基、各種キシリル基、メシチル基、各種ナフチル基などの芳香族炭化水素基、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、各種ナフチルメチル基などの芳香脂肪族炭化水素基などを挙げることができる。これらの中で、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
1 は炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基であるが、中でも炭素数2〜6のものが好ましく、特にエチレン基及びプロピレン基が、性能及び製造の容易さなどの点から好適である。さらにR2 は炭素数1〜12の一価の炭化水素基又はR4 (O−R3 p −(ただし、R4 は水素原子又は炭素数1〜12、好ましくは1〜6の一価の炭化水素基、R3 は炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、pは1〜20の整数を示す。)で示されるエーテル結合を含む基であり、上記炭素数1〜12の一価の炭化水素基としては、前記R6 の説明で例示したものと同じものを挙げることができる。また、R3 で示される炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基としては、前記R1 の場合と同様の理由から、炭素数2〜6のものが好ましく、特にエチレン基及びプロピレン基が好ましい。
【0045】
このR2 としては、特に炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
一般式(II−a)において、R5 で示される炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基としては、前記R1 の場合と同様の理由から、炭素数2〜6のものが好ましく、特にエチレン基及びプロピレン基が好ましい。
このようなポリカーボネート化合物は、各種の方法により製造することができるが、通常炭酸ジエステル又はホスゲンなどの炭酸エステル形成性誘導体とアルキレングリコール又はポリオキシアルキレングリコールを、公知の方法に従って反応させることにより、目的のポリカーボネート化合物を製造することができる。
【0046】
本発明の冷凍機用潤滑油組成物においては、基油の(b)成分として、前記一般式(I)で表されるポリカーボネート化合物を一種含んでいてもよいし、二種以上を含んでいてもよく、また、一般式(II)で表されるポリカーボネート化合物を一種含んでいてもよいし、二種以上を含んでいてもよい。あるいは、一般式(I)で表されるポリカーボネート化合物一種以上と、一般式(II)で表されるポリカーボネート化合物一種以上とを含んでいてもよい。
この(b)成分のポリカーボネート化合物は、40℃における動粘度が3〜500mm2 /sであり、好ましくは5〜200mm2 /s、より好ましくは5〜150mm2 /sである。
本発明の冷凍機用潤滑油組成物は、基油として、前述の(a)成分であるポリビニルエーテル系誘導体と、基油全量に基づき、(b)成分である前述のポリカーボネート系含酸素化合物を0.1重量%以上60重量%未満、好ましくは0.5〜55重量%、より好ましくは1.0〜50重量%の割合で含むものであるが、該基油には、これら以外に、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオールエステルなどのポリエステル、炭酸エステル、鉱油、ポリα−オレフィンなどの炭化水素化合物などを含んでいてもよい。
【0047】
本発明の冷凍機用潤滑油組成物における基油は、40℃における動粘度が7〜100mm2/s の範囲にあるものが好ましく、中でも8〜90mm2/s の範囲にあるものが好適であり、かつ粘度指数が40以上のものが好ましく、中でも、50〜130、特に60〜120の範囲にあるものが好ましい。
本発明の冷凍機用潤滑油組成物には、酸捕捉剤、さらには極圧剤、油性剤、酸化防止剤を含有させるのが好ましい。
酸捕捉剤としては、例えばグリシジルエーテル基含有化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステル類、エポキシ化油脂、エポキシシクロアルキル基含有化合物などが挙げられる。また、極圧剤としては例えば、モノスルフィド類、ポリスルフィド類、スルホキシド類、スルホン類、チオスルフィネート類、硫化油脂、チオカーボネート類、チオフェン類、チアゾール類、メタンスルホン酸エステル類などの有機硫黄化合物系のもの、リン酸モノエステル類、リン酸ジエステル類、リン酸トリエステル類(トリクレジルホスフェートなど)などのリン酸エステル系のもの、亜リン酸モノエステル類、亜リン酸ジエステル類、亜リン酸トリエステル類などの亜リン酸エステル系のもの、チオリン酸トリエステル類などのチオリン酸エステル系のもの、高級脂肪酸,ヒドロキシアリール脂肪酸類,多価アルコールエステル類,アクリル酸エステル類などのエステル系のもの、塩素化炭化水素類,塩素化カルボン酸誘導体などの有機塩素系のもの、フッ素化脂肪族カルボン酸類、フッ素化エチレン樹脂、フッ素化アルキルポリシロキサン類、フッ素化黒鉛などの有機フッ素化系のもの、高級アルコールなどのアルコール系のもの、ナフテン酸塩類(ナフテン酸鉛など)、脂肪酸塩類(脂肪酸鉛など)、チオリン酸塩類(ジアルキルジチオリン酸亜鉛など)、チオカルバミン酸塩類,有機モリブデン化合物、有機スズ化合物、有機ゲルマニウム化合物、ホウ酸エステルなどの金属化合物系のものなどが挙げられる。さらに、酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールなどのフェノール系や、α−ナフチルアミンなどのアミン系のものなどが挙げられる。
さらに油性剤としては、(x)3〜6価の脂肪族多価アルコールのエーテル化物や(y)3〜6価の脂肪族多価アルコールの二分子縮合物もしくは三分子縮合物のエーテル化物が好ましく挙げられる。
次に、これら(x)成分と(y)成分について説明する。(x)成分の3〜6価の脂肪族多価アルコールのエーテル化物は、例えば、下記一般式(XV−a)〜(XV−f)で表されるものが好適である。
【0048】
【化19】
Figure 0005016157
【0049】
〔式中、R47〜R52は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、同一でも異なっていてもよい。また、−(Ra O)x −Rb (Ra は炭素数2〜6のアルキレン基、Rb は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基又はアラルキル基、xは1〜10の整数を示す。)で表されるグリコールエーテル残基を示す。〕。
3〜6価の脂肪族多価アルコールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、ソルビトール、マンニトールなどを挙げることができる。上記一般式(XV−a)〜(XV−f)において、R47〜R52は例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基,イソプロピル基,各種ブチル基,各種ペンチル基,各種ヘキシル基,各種ヘプチル基,各種オクチル基,各種ノニル基,各種デシル基,各種ウンデシル基,各種ドデシル基,各種トリデシル基,各種テトラデシル基,各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基、フェニル基、ベンジル基などを挙げることができる。また、水素原子の場合、即ち部分エーテル化物も包含する。
【0050】
(y)成分の3〜6価の脂肪族多価アルコールの二分子縮合物もしくは三分子縮合物のエーテル化物については、例えば、一般式(XV−a)に対応するアルコールのエーテル化物は一般式(XV−g)と(XV−h)で表され、一般式(XV−d)に対応するアルコールのエーテル化物は一般式(XV−i)と(XV−j)で表される。
【0051】
【化20】
Figure 0005016157
【0052】
(式中、R47〜R54は前記R47〜R52と同じであり、それらは同一でも異なっていてもよい。)
3〜6価の脂肪族多価アルコールの二分子縮合物,三分子縮合物の具体例としては、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ジソルビトール、トリグリセリン、トリトリメチロールプロパン、トリペンタエリスリトール、トリソルビトールなどを挙げることができる。
【0053】
前記一般式(XV−a)〜(XV−j)で表される(x),(y)成分の具体例としては、グリセリンのトリヘキシルエーテル、グリセリンのジメチルオクチルトリエーテル、グリセリンのジ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルトリエーテル、グリセリンのジフェニルオクチルトリエーテル、グリセリンのジ(フェニルオキシイソプロピレン)ドデシルトリエーテル、トリメチロールプロパンのトリヘキシルエーテル、トリメチロールプロパンのジメチルオクチルトリエーテル、トリメチロールプロパンのジ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルトリエーテル、ペンタエリスリトールのテトラヘキシルエーテル、ペンタエリスリトールのトリメチルオクチルテトラエーテル、ペンタエリスリトールのトリ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルテトラエーテル、ソルビトールのヘキサプロピルエーテル、ソルビトールのテトラメチルオクチルペンタエーテル、ソルビトールのヘキサ(メチルオキシイソプロピレン)エーテル、ジグリセリンのテトラブチルエーテル、ジグリセリンのジメチルジオクチルテトラエーテル、ジグリセリンのトリ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルテトラエーテル、トリグリセリンのペンタエチルエーテル,トリグリセリンのトリメチルジオクチルペンタエーテル、トリグリセリンのテトラ(メチルオキシイソプロピレン)デシルペンタエーテル、ジトリメチロールプロパンのテトラブチルエーテル,ジトリメチロールプロパンのジメチルジオクチルテトラエーテル、ジトリメチロールプロパンのトリ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルテトラエーテル、トリトリメチロールプロパンのペンタエチルエーテル、トリトリメチロールプロパンのトリメチルジオクチルペンタエーテル、トリトリメチロールプロパンのテトラ(メチルオキシイソプロピレン)デシルペンタエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサプロピルエーテル、ジペンタエリスリトールのペンタメチルオクチルヘキサエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサ(メチルオキシイソプロピレン)エーテル、トリペンタエリスリトールのオクタプロピルエーテル、トリペンタエリスリトールのペンタメチルオクチルヘキサエーテル、トリペンタエリスリトールのヘキサ(メチルオキシイソプロピレン)エーテル、ジソルビトールのオクタメチルジオクチルデカエーテル,ジソルビトールのデカ(メチルオキシイソプロピレン)エーテルなど挙げることができる。その中で、グリセリンのジフェニルオクチルトリエーテル、トリメチロールプロパンのジ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルトリエーテル、ペンタエリスリトールのテトラヘキシルエーテル,ソルビトールのヘキサプロピルエーテル、ジグリセリンのジメチルジオクチルテトラエーテル、トリグリセリンのテトラ(メチルオキシイソプロピレン)デシルペンタエーテル、、ペンタエリスリトールのヘキサプロピルエーテル、トリペンタエリスリトールのペンタメチルオクチルヘキサエーテルが好ましい。
【0054】
また、(x)、(y)成分の40℃における動粘度は、5〜200mm2 /s、好ましくは10〜100mm2 /sの範囲である。5mm2 /s未満では、潤滑性の改善効果及びキャピラリ閉塞防止効果が少なく、200mm2 /s超えると、冷媒との相溶性(二層分離温度)を低下させるので好ましくない。本発明の冷凍機用潤滑油組成物においては、前記の(x)、(y)成分一種でも、あるいは二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、その配合量は、組成物全量基準で0.1〜30重量%の範囲にあるのが好ましい。この配合量が0.1重量%未満では本発明の目的が充分に発揮されず、30重量%を超えるとその量の割には効果の向上がみられず、また基油に対する溶解性が低下する場合がある。さらに好ましい配合量は0.1〜15重量%の範囲であり、特に0.5〜10重量%の範囲が好適である。
【0055】
本発明の冷凍機用潤滑油組成物には、従来潤滑油に使用されているその他の添加剤、例えば金属不活性化剤、消泡剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、油性剤、耐摩耗添加剤、防錆剤、腐食防止剤、流動点降下剤などを所望に応じ、含有させることができる。
金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール誘導体などが、消泡剤などとしては、シリコーンオイル(ジメチルポリシロキサンなど)、ポリメタクリレート類などが、清浄分散剤としてはスルホネート類、フェネート類、コハク酸イミド類などが、粘度指数向上剤としては、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ジエン水素化共重合体などが挙げられる。
【0056】
次に、本発明冷凍機用作動流体組成物は、(A)塩素を有しない炭素数1の冷媒、及び(B)前述の本発明の冷凍機用潤滑油組成物を含むものである。
上記(A)成分の塩素を有しない炭素数1の冷媒としては、ジフルオロメタン(R32)を挙げることができる。該(A)成分と(B)成分との含有割合は、通常重量比で、5:95ないし99:1、好ましくは10:90ないし99:1の範囲で選定される。冷媒の量が上記範囲より少ない場合は冷凍能力の低下が見られ、また上記範囲よりも多い場合は潤滑性能が低下し好ましくない。
本発明の冷凍機用潤滑油組成物は、種々の冷凍機に使用可能であるが、特に、圧縮型冷凍機の圧縮式冷凍サイクルに好ましく適用できる。例えば、特開平4−183788号公報、同8−259975号公報、同8−240362号公報、同8−253779号公報、同8−240352号公報、同5−17792号公報、同8−226717号公報、及び同8−231972号公報などに開示されている冷凍装置に好適であり、本発明の冷凍機用潤滑油組成物は、例えば添付図1〜3の各々で示されるような油分離器及び/又はホットガスラインを有する圧縮式冷凍サイクルに適用する場合にもその効果を有効に奏する。
なお、図1は、油分離器及びホットガスラインを有する「圧縮機−凝縮機−膨張弁−蒸発機」の圧縮式冷凍サイクルの一例を示す流れ図、図2は、油分離器を有する「圧縮機−凝縮機−膨張弁−蒸発機」の圧縮式冷凍サイクルの一例を示す流れ図で、図3は、ホットガスラインを有する「圧縮機−凝縮機−膨張弁−蒸発機」の圧縮式冷凍サイクルの一例を示す流れ図である。符号1は圧縮機、2は凝縮機、3は膨張弁、4は蒸発機、5は油分離器、6はホットガスライン、7はホットガスライン用弁である。通常、圧縮式冷凍サイクルは、図4で示すような圧縮機−凝縮機−膨張弁−蒸発機からなる。また、冷凍機用の潤滑油は、一般に、冷凍機に使用される冷媒と相溶性が良好なものが使用される。しかし、上記の冷凍サイクルで(A)成分を主成分とする冷媒を用いたときに、冷凍機を一般に使用されている冷凍機油で潤滑すると耐摩耗性が不十分であったり、安定性が不足して長期安定使用ができなかった。特に、電気冷蔵庫や小型エアコンディショナーなどの冷凍サイクルのように、膨張弁としてキャピラリーチューブを使用する場合にこの傾向が著しい。本発明の冷凍機用潤滑油組成物は、油分離器及び/又はホットガスラインを有する圧縮式冷凍サイクルを(A)成分を主成分とする冷媒使用して運転する場合にも、冷凍機用潤滑油組成物として有効である。
【0057】
本発明の冷凍機用作動流体組成物においては、前記(A)成分と(B)成分との相溶性が極めてよく、特に低温側分離領域の最高温度としては5℃以下であり、好ましくは3℃以下、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−2℃以下、もっとも好ましくは−5℃以下である。
本発明の冷凍機用作動流体組成物は、このように、低温側の分離領域の最高温度が5℃以下であるので、冷凍機の運転中に低温側において相分離することがなく、冷凍機の安定した運転を可能とする。
【0058】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、基油の動粘度及び粘度指数、潤滑油の諸特性は、下記の要領に従って求めた。
<基油>
(1)動粘度
JIS K2283−1983に準じ、ガラス製毛管式粘度計を用いて、温度40℃及び100℃の動粘度を測定した。
<潤滑油>
(2)動粘度
JIS K2283−1983に準じ、ガラス製毛管式粘度計を用いて、温度40℃の動粘度を測定した。
(3)相溶性試験
所定量の試料を耐圧ガラスアンプルに加え、これを真空配管及びジフルオロメタン(R32)冷媒配管に接続した。アンプルを室温で真空脱気後、冷却して所定量のジフルオロメタン(R32)冷媒を採取した。次いで、アンプルを封じ、恒温槽中で、低温側の相溶性について、室温から−50℃まで徐々に冷却することで、相分離が始まる温度を測定した。低温側では相分離温度が低いほど、好ましい。
(4)潤滑性
密閉式ファレックス摩擦試験機でASTM,D−3233法に準拠して焼付荷重を求めた。なお、試験条件は、油量300ml、冷媒R32、圧力0.8MPaG、温度50℃であった。
(5)安定性(シールドチューブ試験)
内容積200mlのオートクレーブに潤滑油サンプル40gとR32冷媒ガス40g及び銅、アルミニウム、鉄の金属触媒を加え、系内の水分が2000ppmになるように水を添加した。オートクレーブを密閉し175℃、21日間保持後、潤滑油サンプルを分析した。
【0059】
製造例1
攪拌器,温度計,窒素導入管及び留出物濃縮用の蒸留ヘッドを装備したガラス製1リットルの4つ口フラスコに、炭酸ジメチル360.6g(4.0モル)、ジプロピレングリコール268.8g(2.0モル)、触媒として28重量%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液3.9g(0.02モル)を入れ、窒素ガスを50ミリリットル/分で流しながら、オイルバス中で、120℃,5時間加熱した。エタノールが留出しなくなったところで、加熱を止め、トルエン500ミリリットルを加えた。得られた生成物のトルエン溶液を、純水300ミリリットルで5回洗浄することで、洗浄水がアルカリ性を示さなくなった。次にロータリーエバポレーターを用いてアスピレーター減圧下、120℃で30分、さらに真空ポンプ減圧下133Pa、30分かけてトルエンを完全に留去し、目的物である、
【0060】
【化21】
Figure 0005016157
【0061】
で示されるジプロピレングリコールのポリカーボネート(末端メチル体)295gを得た。以下、このものをPC−1と称す。
製造例2
製造例1において、ジプロピレングリコール268.8gの代わりに、3−メチル−1,5−ペンタンジオール236.3g(2.0モル)を用いた以外は、製造例1と同様な方法により、目的物である、
【0062】
【化22】
Figure 0005016157
【0063】
で示される3−メチル−1,5−ペンタンジオールのポリカーボネート(末端メチル体)255gを得た。以下、このものをPC−2と称す。
第1表に、上記PC−1及びPC−2の動粘度及び粘度指数を、PVE−1、PVE−2及びPVE−3のデータと共に示す。
【0064】
【表1】
Figure 0005016157
【0065】
(注)
PVE−1:ポリ〔エチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル(モル比9/1)〕共重合体
PVE−2:ポリ〔エチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル(モル比8/2)〕共重合体
PVE−3:ポリエチルビニルエーテル
PC−1:製造例1で得たれたポリカーボネート
PC−2:製造例2で得られたポリカーボネート
実施例1〜5
第2表に示す種類の基油(a)と基油(b)とを該表に示す割合で混合して潤滑油を調製し、その諸特性を求めた。結果を第2表に示す。
比較例1〜3
第2表に示す種類のポリビニルエーテル単独からなる潤滑油の諸特性を求めた。結果を第2表に示す。
【0066】
【表2】
Figure 0005016157
【0067】
【表3】
Figure 0005016157
【0068】
(注)
1)臨界溶解温度における重量%は、〔試料/(試料+R32)〕×100の値である。
【0069】
【発明の効果】
本発明の冷凍機用潤滑油組成物は、基油としてポリビニルエーテル系誘導体とポリカーボネート系含酸素化合物、好ましくは特定構造のポリカーボネート化合物を含むものであって、塩素を有しない炭素数1の冷媒、特にジフルオロメタンに対して優れた相溶性を示す。
この冷凍機用潤滑油組成物と該冷媒を含む本発明の冷凍機用作動流体組成物は、耐摩耗性、潤滑特性及び安定性などに優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 油分離器及びホットガスラインを有する「圧縮機−凝縮機−膨張弁−蒸発機」の圧縮式冷凍サイクルの一例を示す流れ図である。
【図2】 油分離器を有する「圧縮機−凝縮機−膨張弁−蒸発機」の圧縮式冷凍サイクルの一例を示す流れ図である。
【図3】 ホットガスラインを有する「圧縮機−凝縮機−膨張弁−蒸発機」の圧縮式冷凍サイクルの一例を示す流れ図である。
【図4】 「圧縮機−凝縮機−膨張弁−蒸発機」の圧縮式冷凍サイクルの一例を示す流れ図である。
【符号の説明】
1:圧縮機
2:凝縮機
3:膨張弁
4:蒸発機
5:油分離器
6:ホットガスライン
7:ホットガスライン用弁

Claims (10)

  1. 基油として、(a)40℃における動粘度が3〜500mm2 /sのポリビニルエーテル系誘導体と、基油全量に基づき、(b)40℃における動粘度3〜500mm2 /sのポリカーボネート系含酸素化合物0.1重量%以上60重量%未満を含む冷凍機用潤滑油組成物であって、冷媒であるジフルオロメタンに対し、合計量に基づき3〜50重量%の範囲で含有させた場合、そのいずれかの含有率において、低温側の2層分離温度が5℃以下であり、
    前記(b)成分のポリカーボネート系含酸素化合物が、1分子中にカーボネート結合を2個以上有するポリカーボネートであって、(イ)一般式(I)
    Figure 0005016157
    (式中、Zは炭素数1〜12のn価のアルコールから水酸基を除いた残基、R 1 は炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、R 2 は炭素数1〜12の一価の炭化水素基又はR 4 (O−R 3 p −(ただし、R 4 は水素原子又は炭素数1〜12の一価の炭化水素基、R 3 は炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、pは1〜20の整数を示す。)で示されるエーテル結合を含む基、kは1〜30の整数、mは1〜50の整数、nは1〜6の整数を示す。)で表される化合物、及び(ロ)一般式(II)
    Figure 0005016157
    (式中、R 5 は炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、qは1〜20の整数を示し、Z、R 1 、R 2 、k、m及びnは前記と同じである。)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、冷媒としてジフルオロメタンを用いる冷凍機用潤滑油組成物。
  2. 一般式(I)で表される化合物が、一般式(I−a)
    Figure 0005016157
    (式中、R6 は炭素数1〜12の一価アルコールから水酸基を除いた残基、R1、R2 、k及びmは前記と同じである。)で表される化合物、及び/又は一般式(II)で表される化合物が、一般式(II−a)
    Figure 0005016157
    (式中、R1 、R2 、R5 、R6 、k、m及びqは前記と同じである。)で表される化合物である請求項記載の冷凍機用潤滑油組成物。
  3. 一般式(I−a)及び一般式(II−a)において、R1 が炭素数2〜6のアルキレン基である請求項記載の冷凍機用潤滑油組成物。
  4. 1 がエチレン基又はプロピレン基である請求項記載の冷凍機用潤滑油組成物。
  5. 一般式(I−a)及び一般式(II−a)において、R2 及び/又はR6 が、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基である請求項2、3又は4記載の冷凍機用潤滑油組成物。
  6. 基油が、40℃における動粘度7〜100mm2 /s及び粘度指数40以上のものである請求項1ないしのいずれかに記載の冷凍機用潤滑油組成物。
  7. 酸捕捉剤を含む請求項1ないしのいずれかに記載の冷凍機用潤滑油組成物。
  8. 極圧剤,油性剤及び酸化防止剤からなる添加剤のうち少なくとも一種の添加剤を含む請求項1ないしのいずれかに記載の冷凍機用潤滑油組成物。
  9. (A)冷媒であるジフルオロメタン、及び(B)請求項1ないしのいずれかに記載の冷凍機用潤滑油組成物を含むことを特徴とする冷凍機用作動流体組成物。
  10. (A)成分と(B)成分とを、重量比5:95ないし99:1の割合で含む請求項記載の冷凍機用作動流体組成物。
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