JP5008235B2 - ヒートポンプ給湯器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば冷凍サイクル装置用冷媒として利用される混合作動流体を用いるヒートポンプ給湯器に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、冷凍サイクル装置は、圧縮機、必要に応じて四方弁、放熱器(または凝縮器)、キャピラリーチューブや膨張弁等の減圧器、蒸発器、等を配管接続して冷凍サイクルを構成し、その内部に冷媒を循環させることにより、冷却または加熱作用を行っている。
【0003】
これらの冷凍サイクル装置における冷媒としては、フロン類(フロン類はR○○またはR○○○と記すことが、米国ASHRAE34規格により規定されている。以下、R○○またはR○○○と示す)と呼ばれるメタンまたはエタンから誘導されたハロゲン化炭化水素が知られている。
【0004】
上記のような冷凍サイクル装置用冷媒としてはR22(クロロジフルオロメタン、CHClF2、沸点−40.8℃、臨界温度96.2℃、臨界圧力4.99MPa)などが用いられてきた。このR22は塩素と水素を含むフッ化炭化水素類(HCFC冷媒)であり、成層圏オゾン破壊能力があるため、すでにモントリオール議定書によって使用量及び生産量の規制が決定されている。
【0005】
近年、冷凍サイクルを利用した加熱機器の一つであるヒートポンプ給湯器の分野では、R22の代替冷媒として、二酸化炭素(CO2、R744、沸点−78.4℃、臨界温度31.1℃、臨界圧力7.38MPa)が注目されつつある。例えば、斉川、橋本、ヨハネス著の第34回日本伝熱シンポジウム講演論文集 P505(1997)には、CO2を用いた冷凍サイクル装置では、凝縮過程を含まない遷臨界サイクルとなりうること、超臨界域を使用することで、低温の水を高温に加熱するヒートポンプ給湯器に適していることが報告されている。
【0006】
CO2は、地球環境問題においても、成層圏オゾンを破壊せず、地球温暖化に対する影響を示す地球温暖化係数(以下GWPと記す)は1で、R22のGWPの1500と比較すると格段に小さい、優れた冷媒である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、CO2は、R22に比べて動作圧力が2〜5倍も高く、冷凍サイクル装置に用いる場合などには、冷凍サイクル装置を構成する熱交換器や圧縮機の耐圧性確保、および圧縮機のシール性確保が困難である。
【0008】
また、CO2は、R22に比べて吐出温度が高く、圧縮機用潤滑油を劣化させる恐れがある。
【0009】
さらに、CO2は、ナフテン系やパラフィン系の鉱油、アルキルベンゼン油、エーテル油、エステル油、ポリアレキレングリコール油、カーボネート油、等の圧縮機用潤滑油と一定の温度範囲では溶解するが、運転状態の広い温度域においては必ずしも完全溶解しないし、圧縮機用潤滑油との任意の混合割合において必ず完全溶解するわけではない。すなわち、CO2は、共存する圧縮機用潤滑油の圧縮機へのオイルリターンの確保が困難である。
【0010】
本発明は、上記従来のこのような課題を考慮し、たとえば、ヒートポンプ給湯器などの高温加熱用途に用いられる冷凍サイクル装置により適した混合作動流体を用いるヒートポンプ給湯器を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
第一の本発明(請求項1に対応)は、圧縮機、放熱器、減圧器、および蒸発器を接続した冷凍サイクルを備え、
前記冷凍サイクルの内部に、冷媒として、プロピレンとエタンとを含む混合作動流体であって、前記エタンは50重量%以上60重量%以下である、前記混合作動流体を循環させることにより、前記放熱器において水を85℃以上に加熱するヒートポンプ給湯器である。
【0016】
第二の本発明(請求項2に対応)は、動作時における高圧側圧力は、前記混合作動流体の臨界圧力以上である第一の本発明のヒートポンプ給湯器である。
【0017】
第三の本発明(請求項3に対応)は、鉱油および/またはアルキルベンゼン油を圧縮機用潤滑油として用いる第一の本発明のヒートポンプ給湯器である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明および本発明に関連する発明にかかる実施の形態について、図面を参照しつつ説明を行う。
【0019】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における混合作動流体は、(1)エタン(CH3−CH3、R170、沸点−88.8℃、臨界温度32.18℃、臨界圧力4.87MPa)と、(2)プロピレン(CH3−CH=CH2、R1270、沸点−47.7℃、臨界温度92.42℃、臨界圧力4.67MPa)、または、プロパン(CH3−CH2−CH3、R290、沸点−42.1℃、臨界温度96.7℃、臨界圧力4.25MPa)の二つの内の何れかからなる2成分系の作動流体である。本実施の形態における混合作動流体を冷凍サイクル装置の冷媒として用いる場合の優れた特性を以下に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
(表1)は、エタン(R170)とプロピレン(R1270)からなる2成分系の、エタン(R170)が30重量%から100重量%の混合作動流体(100重量%はエタン(R170)単一冷媒)の冷凍性能を、CO2単一冷媒と比較したものである。
【0022】
冷凍性能は、放熱器(または凝縮器)において冷媒と熱交換する外部流体(例えば水)側の条件としては、放熱器(または凝縮器)入口温度を5℃、放熱器(または凝縮器)出口温度を85℃とし、冷媒側の条件としては、蒸発器の蒸発温度を0℃、放熱器(または凝縮器)出口温度を10℃、放熱器(または凝縮器)における外部流体(例えば水)と冷媒との最小温度差が5degとなるように放熱器(または凝縮器)の高圧側圧力を制御して測定したものである。なお、この条件は、ヒートポンプ給湯器などの冷凍サイクル装置において、5℃の外部流体(例えば水)を85℃まで加熱する場合を想定したものである。
【0023】
このような混合作動流体を利用した冷凍サイクル装置において、CO2やエタン(R170)単一冷媒より沸点の高いプロピレン(R1270)を混合することによって、高圧側圧力、低圧側圧力を低減できる。高圧側圧力の低下度合いは低圧側圧力の低下度合いよりも大きく、特に40重量%以上のプロピレン(R1270)を混合することにより、CO2単一冷媒の高圧側圧力と比較して、約1/2以下に圧力を低減できる。
【0024】
また、40重量%以上のプロピレン(R1270)を混合することにより、CO2やエタン(R170)単一冷媒と比較して、成績係数が向上できる。
【0025】
エタンとプロピレン(R1270)の2成分系においては共沸様混合物は構成せず、蒸発温度勾配を有する非共沸混合物となる。しかし、50重量%以下のプロピレン(R1270)を混合した混合物では、蒸発温度勾配はほぼ10deg以下であり、非共沸性が小さく、冷凍サイクル装置での使用に際し、蒸発器への霜の付着などの問題が生じにくい、扱いやすい冷媒である。
【0026】
なお、(表1)の蒸発温度勾配は、蒸発器の配管中の圧力損失を補正したものである。また、CO2単一冷媒に対する吐出温度を低減する効果は、40重量%以上50重量%以下のプロピレン(R1270)を混合した混合物では、約10deg程度ある。
【0027】
エタン(R170)とプロピレン(R1270)の2成分系において、高圧側圧力の低減、成績係数の向上、蒸発器温度勾配、吐出温度の低減の効果を総合的に鑑みると(すなわち、高温加熱用途に適した混合割合を特定すると)、略50重量%以上のエタン(R170)を含む混合物が望ましく、さらに望ましくは、略60重量%以下のエタン(R170)を含む混合物が望ましい。
【0028】
以上の効果は、プロピレン(R1270)と同様にCO2やエタンより沸点、臨界温度が高く、プロピレン(R1270)と同程度の沸点、臨界温度を有するプロパン(R290)を混合する場合にも同様の効果を奏するものである。
【0029】
さらに、エタン(R170)、プロピレン(R1270)、プロパン(R290)の炭化水素類は、CO2単一冷媒と異なり、鉱油および/またはアルキルベンゼン油等の圧縮機用潤滑油と化学構造が近いために、運転状態の広い温度域において溶解性に優れ、圧縮機用潤滑油の圧縮機へのオイルリターンを確保することが容易である。
【0030】
また、プロピレン(R1270)、プロパン(R290)の臨界温度は、CO2やエタン(R170)単一冷媒の臨界温度よりも高いため、これらの炭化水素類を混合した混合物の臨界温度は、CO2やエタン(R170)単一冷媒の臨界温度以上の臨界温度をもつことになる。したがって、CO2やエタン(R170)単一冷媒を用いた冷凍サイクル装置では、凝縮過程を含まない遷臨界サイクルとなりうるのに対して、炭化水素類を混合した混合物を冷媒として用いた冷凍サイクル装置では、温度条件によっては凝縮過程を含む亜臨界サイクルを構成することも可能である。
【0031】
なお、ヒートポンプ給湯器等の高温加熱用途の冷凍サイクル装置で、亜臨界サイクルとなる場合には、凝縮過程での温度勾配がない場合より、ある場合の方が凝縮器での熱交換効率が向上するといったメリットを有する。このため、本実施の形態において特定した高温加熱用途に適した混合割合は、非共沸混合組成となる混合割合を含んでいるものである。
【0032】
したがって、かかるエタン(R170)とプロピレン(R1270)、または、プロパン(R290)からなる混合物は、高温加熱用途の冷凍サイクル装置の冷媒として用いる場合に優れた特性を示し、実用上の機器課題を解決できるものである。さらにこれらの混合物は、成層圏オゾン層に及ぼす影響がなく、GWPがほとんどない炭化水素類のみから構成されるため、地球温暖化に対する影響はほとんどないものである。
【0033】
また、エタン(R170)、プロピレン(R1270)、プロパン(R290)の炭化水素類に、主たる成分となる炭化水素類に対して他の炭化水素類が若干量含有されていても何ら問題ないものである。
【0034】
また、これらの混合物に対して、漏洩検知用にメチルメルカプタンやテトラヒドロチオフェンを主成分とする着臭剤が微少量含まれていても問題ないものである。
【0035】
(実施の形態2)
本発明に関連する発明の実施の形態2における混合作動流体は、(1)ジフルオロメタン(CH2F2、R32、沸点−51.7℃、臨界温度78.1℃、臨界圧力5.78MPa)と、(2)シクロプロパン(C3H6、RC270、沸点−32.9℃、臨界温度125.2℃、臨界圧力5.58MPa)、または、イソブタン(i−C4H8、R600a、沸点−11.6℃、臨界温度134.7℃、臨界圧力3.64MPa)、または、ブタン(n−C4H8、R600、沸点−0.5℃、臨界温度152.0℃、臨界圧力3.80MPa)の三つの内の何れかからなる2成分系の作動流体である。本実施の形態における混合作動流体を冷凍サイクル装置の冷媒として用いる場合の優れた特性を以下に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
(表2)は、ジフルオロメタン(R32)とイソブタン(R600a)とからなる2成分系の、ジフルオロメタン(R32)が60重量%から100重量%の混合作動流体(100重量%はジフルオロメタン(R32)単一冷媒)の冷凍性能を、CO2単一冷媒と比較したものである。
【0038】
冷凍性能は、放熱器(または凝縮器)において冷媒と熱交換する外部流体(例えば水)側の条件としては、放熱器(または凝縮器)入口温度を5℃、放熱器(または凝縮器)出口温度を85℃とし、冷媒側の条件としては、蒸発器の蒸発温度を0℃、放熱器(または凝縮器)出口温度を10℃、放熱器(または凝縮器)における外部流体(例えば水)と冷媒との最小温度差が5degとなるように放熱器(または凝縮器)の高圧側圧力を制御して測定したものである。なお、この条件は、ヒートポンプ給湯器などの冷凍サイクル装置において、5℃の外部流体(例えば水)を85℃まで加熱する場合を想定したものである。
【0039】
このような混合作動流体を利用した冷凍サイクル装置において、CO2単一冷媒より沸点の高いジフルオロメタン(R32)とイソブタン(R600a)を混合することによって、高圧側圧力、低圧側圧力を低減できる。高圧側圧力の低下度合いは低圧側圧力の低下度合いよりも大きく、CO2単一冷媒の高圧側圧力と比較して、約1/3程度に圧力を低減できる。
【0040】
また、10重量%以上20重量%以下のイソブタン(R600a)を混合することにより、CO2やジフルオロメタン(R32)の単一冷媒と比較して、成績係数が向上できる。
【0041】
ジフルオロメタン(R32)とイソブタン(R600a)の2成分系においては、略20重量%以下のイソブタンの混合において、共沸様混合物を構成することが知られており、蒸発温度勾配がほぼ零となる。さらに、30重量%以下のイソブタン(R600a)を混合した混合物では、蒸発温度勾配は10deg以下であり、非共沸性が小さく、冷凍サイクル装置での使用に際し、蒸発器への霜の付着などの問題が生じにくい、扱いやすい冷媒である。
【0042】
なお、(表2)の蒸発温度勾配は、蒸発器の配管中の圧力損失を補正したものである。また、CO2単一冷媒に対する吐出温度を低減する効果は、認められないものの、R32単一冷媒に対しては、吐出温度低減効果がある。
【0043】
ジフルオロメタン(R32)とイソブタン(R600a)の2成分系において、高圧側圧力、低圧側圧力の低減、成績係数の向上、蒸発温度勾配を総合的に鑑みると(すなわち、高温加熱用途に適した混合割合を特定すると)、略70重量%以上のジフルオロメタン(R32)を含む混合物が望ましく、さらに望ましくは、略90重量%以下のジフルオロメタン(R32)を含む混合物が望ましい。
【0044】
以上の効果は、イソブタン(R600a)と同様にCO2単一冷媒より沸点、臨界温度が高く、イソブタン(R600a)と同程度の沸点、臨界温度を有するシクロプロパン(RC270)、ブタン(R600)等の炭化水素類を混合する場合にも同様の効果を奏するものである。
【0045】
さらに、ジフルオロメタン(R32)に混合したシクロプロパン(RC270)、イソブタン(R600a)、ブタン(R600)の炭化水素類は、CO2単一冷媒やジフルオロメタン(R32)と異なり、鉱油および/またはアルキルベンゼン油等の圧縮機用潤滑油と化学構造が近いために、運転状態の広い温度域において溶解性に優れ、圧縮機用潤滑油の圧縮機へのオイルリターンを確保することが容易である。
【0046】
また、ジフルオロメタン(R32)やシクロプロパン(RC270)、イソブタン(R600a)、ブタン(R600)の炭化水素類の臨界温度は、CO2単一冷媒の臨界温度よりも高いため、これらを混合した混合物の臨界温度は、CO2単一冷媒の臨界温度以上の臨界温度をもつことになる。したがって、CO2単一冷媒を用いた冷凍サイクル装置では、凝縮過程を含まない遷臨界サイクルとなりうるのに対して、炭化水素類を混合した混合物を冷媒として用いた冷凍サイクル装置では、温度条件によっては凝縮過程を含む亜臨界サイクルを構成することも可能である。
【0047】
なお、ヒートポンプ給湯器等の高温加熱用途の冷凍サイクル装置で、亜臨界サイクルとなる場合には、凝縮過程での温度勾配がない場合より、ある場合の方が凝縮器での熱交換効率が向上するといったメリットを有する。このため、本実施の形態において特定した高温加熱用途に適した混合割合は、温度勾配が零となる共沸様混合組成のみならず、非共沸混合組成となる混合割合を含んでいるものである。
【0048】
したがって、かかるジフルオロメタン(R32)とシクロプロパン(RC270)、イソブタン(R600a)、ブタン(R600)からなる混合物は、高温加熱用途の冷凍サイクル装置の冷媒として用いる場合に優れた特性を示し、実用上の機器課題を解決できるものである。さらにこれらの混合物は、成層圏オゾン層に及ぼす影響がない。また、GWPが、580であるジフルオロメタン(R32)とGWPがほとんどない炭化水素類のみから構成されるため、R22(GWPは1500)の約1/3に地球温暖化に対する影響を低減できる。
【0049】
また、ジフルオロメタン(R32)と混合されるシクロプロパン(RC270)、イソブタン(R600a)、ブタン(R600)の炭化水素類には、主たる成分となる炭化水素類に対して他の炭化水素類が若干量含有されていても何ら問題ないものである。
【0050】
また、これらの混合物に対して、漏洩検知用にメチルメルカプタンやテトラヒドロチオフェンを主成分とする着臭剤が微少量含まれていても問題ないものである。
【0051】
本実施の形態においては、さらに、ジフルオロメタン(R32)とシクロプロパン(RC270)、イソブタン(R600a)、ブタン(R600)からなる混合物の可燃性について調査した。
【0052】
冷媒の可燃性の判定基準としては、米国ASHRAE34規格に規定されており、毒性のないものはA分類として、その中で可燃性の程度に応じて、A1、A2、A3に分類されている。ここで、R22、R125、R134a等は、実質的に不燃性のA1、R32(ジフルオロメタン)は弱可燃性のA2、炭化水素類は強可燃性のA3、に分類されている。
【0053】
ジフルオロメタン(R32)と、シクロプロパン(RC270)、イソブタン(R600a)、ブタン(R600)の炭化水素類を混合した場合について、米国ASHRAE34規格に基づいた実験を行った結果、炭化水素類が約27重量%までは、A2冷媒として判定することができることが明らかになった。
【0054】
したがって、ジフルオロメタン(R32)とシクロプロパン(RC270)、イソブタン(R600a)、ブタン(R600)の2成分系において、略73重量%以上のジフルオロメタン(R32)を含む混合物がR32単一冷媒と同様の妨爆対策を用いることができてさらに望ましい。
【0055】
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3の空調給湯装置の構成図である図1を参照しながら、本実施の形態の空調給湯装置(冷凍サイクル装置)の構成について説明する。
【0056】
本発明の実施の形態3における空調給湯装置は、1台の室外機に室内機と給湯器とを接続した空調給湯装置である。
【0057】
部屋の内部には、部屋1a,1bの空調用として室内熱交換器2a,2bが設けられ、前記部屋1a,1bとは別に給湯用として給湯熱交換器3が設けられている。室内熱交換器2a、2bにはそれぞれ空調用絞り装置4a、4bが接続され、給湯熱交換器3には給湯用絞り装置5が接続されている。室内熱交換器2a、2b、空調用絞り装置4a、4bは室内ファン(図示省略)などとともに室内機6a、6bを構成し、給湯熱交換器3、給湯用絞り装置5は給湯水量を調節可能な給湯水量調節機構7、貯湯槽(図示省略)などとともに給湯器8を構成している。
【0058】
一方、部屋の外部には、外気と熱交換を行うための室外機9が設けられ、その室外機9には冷媒を圧縮するための圧縮機10が設けられている。その圧縮機10の冷媒出口には、給湯用電磁弁11を介して給湯熱交換器3が接続され、また空調用電磁弁12を介して冷房時と暖房時とで冷媒の流路を切り換える四方弁13が接続され、圧縮機10の冷媒入口側にも、四方弁13が接続されている。室外熱交換器14には室外用絞り装置15が接続され、四方弁13、室外熱交換器14、室外ファン(図示省略)などは、圧縮機10とともに室外機9を構成している。また、四方弁13は、室内熱交換器2a、2b、室外熱交換器14に接続されている。
【0059】
また、冷媒としては、ジフルオロメタン(R32)とイソブタン(R600a)からなり、略73重量%以上のジフルオロメタン(R32)を含む混合作動流体が封入されており、圧縮機用潤滑油としては、アルキルベンゼン油が封入されている。
【0060】
つぎに、本実施の形態の空調給湯装置の動作について説明する。
【0061】
本実施の形態の空調給湯装置は、冷房運転時あるいは冷房給湯運転時には空調用電磁弁12と給湯用電磁弁11を相互に制御して、室外熱交換器14あるいは給湯熱交換器3を放熱器(または凝縮器)として作用させ、室内熱交換器2a、2bを蒸発器として作用させる。
【0062】
すなわち、冷房運転の際、圧縮機10で圧縮されて高温高圧となったガス冷媒は、空調用電磁弁12、四方弁13を経て室外熱交換器14に導入され(この場合、空調用電磁弁12は開状態であり、給湯用電磁弁11は閉状態である)室外の大気に放熱して、比較的温度の低い超臨界状態の冷媒(または液冷媒)となる。
【0063】
一方、冷房給湯の際には、上記高温高圧となったガス冷媒は、圧縮機10から給湯用電磁弁11を経て給湯熱交換器3に導入され(この場合、空調用電磁弁12は閉状態であり、給湯用電磁弁11は開状態である)給湯水に放熱して、比較的温度の低い超臨界状態の冷媒(または液冷媒)となる。
【0064】
このようにして、比較的温度の低い超臨界状態の冷媒(または液冷媒)になった冷媒は、前者の場合には、更に室外用絞り装置15を経て、あるいは後者の場合は、給湯用絞り装置5を経て、その後、前者後者共に空調用絞り装置4a、4bで減圧されて低温低圧の二相状態(液体とガスの混合状態)の冷媒となって、室内熱交換器2a、2bに導入されて部屋1a、1bの室内の空気から吸熱してガス冷媒に戻り、圧縮機10に吸入されて再び圧縮される。
【0065】
このような動作を繰り返すことにより、部屋1a、1bの室内を冷房したり、あるいは部屋1a、1bの室内の冷房排熱を利用して給湯を行うことができる。
【0066】
また、暖房時に関する冷房時との主な相違点は、四方弁13を切り替えて、室内機6a、6b及び室外熱交換器14における冷媒の流れる方向を逆転させる点と、暖房給湯運転の際に、空調用電磁弁12と給湯用電磁弁11が共に開状態である点等であり、その他の動作内容は、基本的には上記の場合とほぼ同様である。
【0067】
本発明の本実施の形態によれば、冷媒として、ジフルオロメタン(R32)とイソブタン(R600a)からなり、略73重量%以上のジフルオロメタン(R32)を含む混合作動流体を用いているために、高温給湯を行う運転時において、冷媒としてCO2を用いる場合に比較して、高効率な運転が可能である。さらに、85℃程度の高い出湯温度の給湯運転の際にも、高圧側圧力を約1/3程度に低減できるために、給湯熱交換器3、室内熱交換器2a、2b、室外熱交換器14、圧縮機10などの冷凍サイクル装置の構成要素の耐圧性確保や、圧縮機10のシール性確保を困難にしたりするといった機器課題を解決できる。
【0068】
さらに、ジフルオロメタン(R32)やシクロプロパン(RC270)、イソブタン(R600a)、ブタン(R600)の炭化水素類の臨界圧力は、CO2単一冷媒の臨界温度よりも低いため、これらを混合した混合物の臨界圧力は、CO2単一冷媒の臨界圧力以下の臨界圧力をもつことになる。したがって、CO2単一冷媒を用いた場合に比較して、容易に高圧側圧力を臨界圧力以上とし、凝縮過程を含まない遷臨界サイクルを達成できるために、高い加熱能力(たとえば、さらに高い出湯温度)の達成が可能となるといったメリットも有する。
【0069】
なお、給湯熱交換器3、室内熱交換器2a、2b、室外熱交換器14において、冷媒と外部流体(水や空気)は互いに対向流となる構成とすることが、熱交換効率を向上させるうえで望ましい。
【0070】
さらに、CO2単一冷媒やジフルオロメタン(R32)を冷媒に用いた場合には、冷媒がアルキルベンゼン油とほとんど相溶性がないため、特に暖房運転時の蒸発器として作用する室外熱交換器14の出口から、圧縮機10の吸入管において、圧縮機用潤滑油の粘度が最高となり、圧縮機用潤滑油が配管中に滞留して圧縮機10に帰還しなくなるものであった。このことは、暖房運転時の外気温度が低くなるにつれて顕著となったが、本実施の形態のようにイソブタン(R600a)を混合すると、潤滑油が圧縮機10に帰還しだし、圧縮機10の油面が上昇することが確認された。このことは、ジフルオロメタン(R32)と共沸様混合物を作るイソブタン(R600a)がアルキルベンゼン油と相溶し、かつ粘度の低いイソブタン(R600a)が低温でのアルキルベンゼン油の粘度を低下させたことが影響していると考えられる。
【0071】
したがって、CO2単一冷媒やジフルオロメタン(R32)を冷媒に用いた場合に生じる、冷媒と圧縮機用潤滑油の溶解性が劣るために、圧縮機用潤滑油の圧縮機へのオイルリターンを確保するという課題を解決できるものである。
【0072】
また、ジフルオロメタン(R32)と混合される炭化水素類は、イソブタン(R600a)の代わりに、シクロプロパン(RC270)、または、ブタン(R600)からなる混合作動流体が封入されている場合にも、同様の効果を期待することができ、さらに、エタン(170)にプロパン(R290)、または、プロピレン(R1270)を混合した混合作動流体が封入されている場合にも、同様の効果を期待することができる。また、圧縮機用潤滑油は、アルキルベンゼン油の代わりに、鉱油を用いても、同様の効果を期待することができる。
【0073】
さらに、可燃性のジフルオロメタン(R32)やイソブタン(R600a)がたとえ装置から漏洩したとしても、循環組成のジフルオロメタン(R32)及びイソブタン(R600a)の2成分からなる混合作動流体は共沸様混合物を作り、漏洩時にジフルオロメタン(R32)とイソブタン(R600a)の混合割合がほとんど変化することがないため、ジフルオロメタン(R32)単一冷媒と同様の妨爆対策を用いることができる。
【0074】
なお、本実施の形態では、室内機は2台の構成の場合を示したが、室内機の台数はこれに限定されるものではない。
【0075】
また、室内機や四方弁13、空調用電磁弁12、給湯用電磁弁11が設けられていない単純なヒートポンプ給湯器の場合でも、同様な効果が得られる。
【0076】
また、本実施の形態では、室内機や室外機は空気と熱交換するものとして説明したが、これに限定される物ではなく、例えば、水などの外部流体と熱交換させる構成としても良い。
【0077】
このように、たとえば、エタンとプロパン、または、プロピレンからなり、略50重量%以上のエタン、かつ望ましくは略60重量%以下のエタンを含む混合作動流体は、本発明に関連する発明である。
【0078】
また、たとえば、ジフルオロメタンとシクロプロパン、または、イソブタン、または、ブタンからなり、略70重量%以上のジフルオロメタン、かつ望ましくは略90重量%以下のジフルオロメタンを含む混合作動流体は、本発明に関連する発明である。
【0079】
また、たとえば、上述の混合作動流体を用いる冷凍サイクル装置は、本発明に関連する発明である。
【0080】
また、たとえば、高圧側圧力が混合作動流体の臨界圧力以上で動作することを特徴とする上述の冷凍サイクル装置は、本発明に関連する発明である。
【0081】
また、たとえば、上述の混合作動流体と鉱油および/またはアルキルベンゼン油の圧縮機用潤滑油を用いる冷凍サイクル装置は、本発明に関連する発明である。
【0082】
よって、本実施の形態は、たとえば以下のような効果を有する。すなわち、
(1)エタンとプロパン、または、プロピレンからなり、略50重量%以上のエタン、かつ望ましくは略60重量%以下のエタンを含む混合物となすことにより、成層圏オゾン層に及ぼす影響や地球温暖化に対する影響をほとんどなくすことができる。
【0083】
(2)冷媒を、ジフルオロメタンとシクロプロパン、または、イソブタン、または、ブタンからなり、略70重量%以上のジフルオロメタン、かつ望ましくは略90重量%以下のジフルオロメタンを含む混合物となすことにより、成層圏オゾン層に及ぼす影響や地球温暖化に対する影響をほとんどなくし、実質的に微可燃化できる。
【0084】
(3)冷凍サイクル装置に用いたときに、高圧側圧力を低減できる。
【0085】
(4)冷凍サイクル装置に用いたときに、圧縮機における吐出温度を低減できる。
【0086】
(5)冷凍サイクル装置に用いたときに、比較的容易に遷臨界サイクルを構成でき、高温加熱が可能となる。
【0087】
(6)炭化水素類が主に圧縮機用潤滑油に溶解し、圧縮機用潤滑油の圧縮機へのオイルリターンを確保することができる。
【0088】
【発明の効果】
以上述べたところから明らかなように、本発明は、高温加熱用途に用いられる冷凍サイクル装置により適した冷媒を用いるヒートポンプ給湯器を得ることができるという長所を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態3の空調給湯装置の構成図
【符号の説明】
1a、1b 部屋
2a、2b 室内熱交換器
3 給湯熱交換器
4a、4b 空調用絞り装置
5 給湯用絞り装置
6a、6b 室内機
7 給湯水量調節機構
8 給湯器
9 室外機
10 圧縮機
11 給湯用電磁弁
12 空調用電磁弁
13 四方弁
14 室外熱交換器
15 室外用絞り装置
Claims (3)
- 圧縮機、放熱器、減圧器、および蒸発器を接続した冷凍サイクルを備え、
前記冷凍サイクルの内部に、冷媒として、プロピレンとエタンとを含む混合作動流体であって、前記エタンは50重量%以上60重量%以下である、前記混合作動流体を循環させることにより、前記放熱器において水を85℃以上に加熱するヒートポンプ給湯器。 - 動作時における高圧側圧力は、前記混合作動流体の臨界圧力以上である請求項1に記載のヒートポンプ給湯器。
- 鉱油および/またはアルキルベンゼン油を圧縮機用潤滑油として用いる請求項1に記載のヒートポンプ給湯器。
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